説明

ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンの安定化方法。

【課題】 光学材料分野で好適に使用される、ポリウレタン系材料、ポリイソシアヌレート系材料等の原料として広く用いられているビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンの 長期の保存安定性及び、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンとポリチオール化合物を含む重合性組成物を重合させて得られる光学樹脂の色相改善に効果的な添加剤を提供する。
【解決手段】 ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンの保存安定剤として、トリフェニルホスファイトを10ppm〜5000ppm添加する。安定剤を添加することにより、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンの黄変及び白濁を防止する事が可能となり、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンとポリチオール化合物を含む重合性組成物を重合させて得られる光学樹脂の色相改善が可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンにトリフェニルホスファイトを10〜5000ppm添加することを特徴とするビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンの安定化方法。更に、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンとトリフェニルホスファイトからなる組成物および該組成物を重合して得られる光学樹脂、光学レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンは分子内に有するイソシアナト基の高い反応性により、不安定で保存中に着色し易い欠点を有している。そのため、着色を抑制する安定化剤の添加が不可欠である。従来、ポリイソシアネート化合物の安定化剤としては種々の化合物が知られており、代表的な安定化剤として知られているものは、フェノール、2,6−ジターシャリーブチルフェノール−p−クレゾール等のフェノール類(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献12参照)、トリエチルフォスフィン等のりん化合物(特許文献8、特許文献12参照)、その他にも、尿素類、カーバメート類、酸アミド類(特許文献9、特許文献10参照)、過塩素酸やトリフロロメタンスルフォン酸等の酸性物質(特許文献6参照)、二酸化炭素や二酸化硫黄(特許文献5参照)、有機アミン類(特許文献11参照)、酸クロリド類、有機スズ化合物(特許文献7参照)、等多数の安定化剤が知られている。しかしながら、これらの安定化剤によっても、ポリイソシアネート化合物の着色を完全に抑制することは困難であり、未だ満足な結果を得るには至っていない。更に、安定剤の添加されていないビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンや、上記安定剤を添加したビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンとポリチオール化合物を重合して得られる光学樹脂は、得られる光学樹脂の色相が悪化することがあった。
【特許文献1】特開平05−078304号公報
【特許文献2】特開平05−078441号公報
【特許文献3】特開平13−114861号公報
【特許文献4】米国特許第3715381号公報
【特許文献5】米国特許第3247236号公報
【特許文献6】独国特許第2837770号公報
【特許文献7】EP特許第203874号公報
【特許文献8】特公昭45−33438号公報
【特許文献9】特公昭45−7044号公報
【特許文献10】特公昭50−36546号公報
【特許文献11】特公昭50−101344号公報
【特許文献12】特開平03−124722号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンは分子内に有するイソシアナト基の高い反応性のため、保存中のビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンの黄変や、ポリチオール化合物との重合により得られる光学樹脂の色相が悪化するなどの問題を有し、長期間にわたるビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンの安定的な保存技術の確立及び、ポリチオール化合物との重合により得られる光学樹脂色相の改善が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上述の問題を解決するために鋭意検討した結果、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンの安定化剤としてトリフェニルホスファイトが優れた黄変抑制及び、光学樹脂色相改善の効果を有している事を見出した。
【0005】
即ち、本発明は、(1)ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンに10〜5000ppmのトリフェニルホスファイトを添加することを特徴とするビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンの安定化方法に関する。以下、(2)から(5)はそれぞれ本発明の好ましい実施様態の1つである。
(2)ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンにトリフェニルホスファイトを10〜5000ppm添加したビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン組成物。
(3)(2)記載の組成物とポリチオール化合物を含む重合性組成物。
(4)(3)記載の重合性組成物を重合させて得られる光学樹脂。
(5)(4)記載の光学樹脂からなる光学レンズ。
【発明の効果】
【0006】
ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンに、トリフェニルホスファイトを10〜5000ppm添加することで、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンの黄変防止に有効であり、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンとトリフェニルホスファイトからなる組成物とポリチオール化合物を含む重合性組成物を重合させて得られる光学樹脂の色相を改善できることを見出した。ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンとトリフェニルホスファイトからなる組成物は、プラスチックレンズ等の光学ウレタン樹脂原料として特に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下本発明を詳細に説明する。
【0008】
本発明は、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンに10〜5000ppmのトリフェニルホスファイトを添加することを特徴とするビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンの安定化方法であり、安定剤としてトリフェニルホスファイトを添加することにより、長期間に渡り色相の安定したビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンの保存が可能となり、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンとトリフェニルホスファイトからなる組成物とポリチオール化合物を含む重合性組成物は、光学樹脂、光学レンズに好適である。
【0009】
本発明において、2,5体、2,6体及びその混合物であるビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンに添加するトリフェニルホスファイト量は10〜5000ppmが好ましく、より好ましくは、100〜2000pppmである。トリフェニルホスファイト添加量が10ppm未満では、充分な安定化作用が発揮できず、5000ppmを超えるとビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンの色相に悪影響を与える場合があり好ましくない。
【0010】
本発明において、用いられるポリチオール化合物は、2官能以上のポリチオールであり、具体的には2官能以上のポリチオール化合物として、例えば、1,1−メタンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,1−プロパンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、2,2−プロパンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,2,3−プロパントリチオール、1,1−シクロヘキサンジチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジチオール、3,4−ジメトキシブタン−1,2−ジチオール、2−メチルシクロヘキサン−2,3−ジチオール、1,1−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、チオリンゴ酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(2−メルカプトアセテート)、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(3−メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,2−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,3−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,2−ビス(メルカプトメチル)−1,3−プロパンジチオール、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパンビス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパンビス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、テトラキス(メルカプトメチル)メタン等の脂肪族ポリチオール化合物、
【0011】
1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3−トリメルカプトベンゼン、1,2,4−トリメルカプトベンゼン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチルメルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン等、及びこれらの核アルキル化物等のメルカプト基以外に硫黄原子を含有する芳香族ポリチオール化合物、
【0012】
ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2−メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3−メルカプトプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)エタン、1,2−ビス(3−メルカプトプロピル)エタン、1,3−ビス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,3−ビス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,3−ビス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−メルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−メルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−メルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2−メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3−メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、ビス(1,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5−ジメルカプト−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプトメチル−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)ジスルフィド等のメルカプト基以外に硫黄原子を含有する脂肪族ポリチオール化合物、及びこれらのチオグリコール酸及びメルカプトプロピオン酸のエステル、
【0013】
ヒドロキシメチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシプロピルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシプロピルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシプロピルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシプロピルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(2−メルカプトアセテート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ジチアン−2,5−ジオールビス(2−メルカプトアセテート)、1,4−ジチアン−2,5−ジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、チオジグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、4,4−チオジブチル酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、4,4−ジチオジブチル酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジグリコール酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、ジチオグリコール酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)等のその他のメルカプト基以外に硫黄原子とエステル結合を含有する脂肪族ポリチオール化合物、3,4−チオフェンジチオール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール等のメルカプト基以外に硫黄原子を含有する複素環化合物、
【0014】
2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、グリセリンジ(メルカプトアセテート)、1−ヒドロキシ−4−メルカプトシクロヘキサン、2,4−ジメルカプトフェノール、2−メルカプトハイドロキノン、4−メルカプトフェノール、3,4−ジメルカプト−2−プロパノール、1,3−ジメルカプト−2−プロパノール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、1,2−ジメルカプト−1,3−ブタンジオール、ペンタエリスリトールトリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールモノ(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールトリス(チオグリコレート)、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチル−トリス(メルカプトエチルチオメチル)メタン、1−ヒドロキシエチルチオ−3−メルカプトエチルチオベンゼン等のメルカプト基以外にヒドロキシ基を含有する化合物、
【0015】
1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2−テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアシクロヘキサン、1,1,5,5−テトラキス(メルカプトメチルチオ)−3−チアペンタン、1,1,6,6−テトラキス(メルカプトメチルチオ)−3,4−ジチアヘキサン、2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エタンチオール、2−(4,5−ジメルカプト−2−チアペンチル)−1,3−ジチアシクロペンタン、2,2−ビス(メルカプトメチル)−1,3−ジチアシクロペンタン、2,5−ビス(4,4−ビス(メルカプトメチルチオ)−2−チアブチル)−1,4−ジチアン、2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−プロパンジチオール、3−メルカプトメチルチオ−1,7−ジメルカプト−2,6−ジチアヘプタン、3,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,9−ジメルカプト−2,5,8−トリチアノナン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,9−ジメルカプト−2,5,8−トリチアノナン、3−メルカプトメチルチオ−1,6−ジメルカプト−2,5−ジチアヘキサン、2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタン、更にこれらのオリゴマー等のジチオアセタールもしくはジチオケタール骨格を有する化合物、
【0016】
トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、トリス(メルカプトエチルチオ)メタン、1,1,5,5−テトラキス(メルカプトメチルチオ)−2,4−ジチアペンタン、ビス[4,4−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアブチル](メルカプトメチルチオ)メタン、トリス[4,4−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアブチル]メタン、2,4,6−トリス(メルカプトメチルチオ)−1,3,5−トリチアシクロヘキサン、2,4−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3,5−トリチアシクロヘキサン、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)−2−チアプロパン、ビス(メルカプトメチル)メチルチオ−1,3,5−トリチアシクロヘキサン、トリス[(4−メルカプトメチル−2,5−ジチアシクロヘキシル−1−イル)メチルチオ]メタン、2,4−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアシクロペンタン、2−メルカプトエチルチオ−4−メルカプトメチル−1,3−ジチアシクロペンタン、2−(2,3−ジメルカプトプロピルチオ)−1,3−ジチアシクロペンタン、4−メルカプトメチル−2−(2,3−ジメルカプトプロピルチオ)−1,3−ジチアシクロペンタン、4−メルカプトメチル−2−(1,3−ジメルカプト−2−プロピルチオ)−1,3−ジチアシクロペンタン、トリス[2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)−1−チアエチル]メタン、トリス[3,3−ビス(メルカプトメチルチオ)−2−チアプロピル]メタン、トリス[4,4−ビス(メルカプトメチルチオ)−3−チアブチル]メタン、2,4,6−トリス[3,3−ビス(メルカプトメチルチオ)−2−チアプロピル]−1,3,5−トリチアシクロヘキサン、テトラキス[3,3−ビス(メルカプトメチルチオ)−2−チアプロピル]メタン等、さらにこれらのオリゴマー等のオルトカルボン酸トリチオエステル骨格を有する化合物、
【0017】
3,3’−ジ(メルカプトメチルチオ)−1,5−ジメルカプト−2,4−ジチアペンタン、2,2’−ジ(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアシクロペンタン、2,7−ジ(メルカプトメチル)−1,4,5,9−テトラチアスピロ[4,4]ノナン、3,9−ジメルカプト−1,5,7,11−テトラチアスピロ[5,5]ウンデカン、更にこれらのオリゴマー等オルト炭酸テトラチオエステル骨格を有する化合物等が挙げられるが、これらの例示化合物のみに限定されるものではない。これら例示化合物は、単独でも2種類以上混合して使用しても良い。
【0018】
本発明の重合に用いる硬化触媒としては3級アミン類、4級アンモニウム塩類、4級ホスホニウム塩類、ルイス酸類、ラジカル重合触媒類、カチオン重合触媒類等が通常用いられる。
【0019】
硬化触媒の具体例としては、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、トリエチレンジアミン、トリフェニルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、ジエチルベンジルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、N−メチルジシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N−イソプロピルモルホリン、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、β−ピコリン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−メチルピペリジン、2,2’−ビピリジル、ヘキサメチレンテトラミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセン等の3級アミン類、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩類、テトラメチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイド等の4級ホスホニウム塩類、ジメチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジラウレート、テトラクロロ錫、ジブチル錫オキサイド、ジアセトキシテトラメチルジスタノキサン、ジアセトキシテトラエチルジスタノキサン、ジアセトキシテトラプロピルジスタノキサン、ジアセトキシテトラブチルジスタノキサン、塩化亜鉛、アセチルアセトン亜鉛、塩化アルミニウム、フッ化アルミニウム、トリフェニルアルミニウム、テトラクロロチタン、酢酸カルシウム等のルイス酸、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、n−ブチル−4,4’−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のラジカル重合触媒、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロ燐酸、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロ砒酸、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモン、トリフェニルスルフォニウムテトラフルオロ硼酸、トリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロ燐酸、トリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロ砒酸等のカチオン重合触媒が挙げられるが、これら例示化合物のみに限定されるものではない。
【0020】
これら例示化合物の内、好ましいものはジメチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジラウレート、テトラクロロ錫、ジブチル錫オキサイド、ジアセトキシテトラブチルジスタノキサン等の有機錫化合物が挙げられ、ポットライフ面を考慮すれば、特に好ましいものとしては、ジメチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジクロライドが挙げられる。2種以上を混合して用いても良いが、活性の異なる2種類以上の硬化触媒を併用すると得られる樹脂の色相や光学歪が良好となる場合がある。
【0021】
硬化触媒の添加量は、本発明に係る組成物の総重量に対して0.0001〜1重量%の範囲で用いるのが好ましく、0.001〜0.5重量%の範囲で使用するとより好ましい。硬化触媒の添加量が0.0001〜1重量%の場合は重合性が良好であり、調合時のポットライフや得られる樹脂の透明性、光学物性、又は耐熱性、耐候性、耐熱黄変性の点で好ましい。
【0022】
本発明の樹脂(例えば、プラスチックレンズ)を得る際の代表的な重合方法としては、注型重合が挙げられる。即ち、ガスケットまたはテープ等で保持された成型モールド間に、硬化触媒を含有する本発明に係る組成物を注入する。この時、必要に応じて、減圧下での脱泡処理や加圧、減圧等の濾過処理等を行うと得られる樹脂の色相、脈離、濁り等について良好に得られる場合がある。
【0023】
次いで、オーブン中または水中等の加熱可能装置内で加熱することにより硬化させ、樹脂を取り出すことができる。
【0024】
成型モールドに注入された本発明の組成物(ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンとトリフェニルホスファイト及び、ポリチオール化合物を含む重合性組成物に重合触媒、離型剤、紫外線吸収剤等を添加した組成物)の加熱重合条件は、本発明の組成物の組成、硬化触媒の種類、モールドの形状等によって大きく条件が異なるため限定できないが、およそ−50〜200℃の温度で1〜100時間かけて行われる。
【0025】
場合によっては、10℃〜150℃の温度範囲で保持または徐々に昇温し、1〜80時間で重合させると好ましい。
【0026】
本発明の樹脂成形の際には、目的に応じて公知の成形法と同様に、内部可塑剤、外部可塑剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色防止剤、染料、充填剤、外部または内部離型剤、密着性向上剤などの種々の物質を添加してもよい。
【0027】
また、取り出した樹脂については、必要に応じて、アニール等の処理を行ってもよい。アニール温度は50℃〜200℃の間で行われるが、得られる樹脂の色相、耐熱性等及び樹脂を製造する上での作業性を考慮すれば90℃〜150℃で行うと好ましい。100℃〜130℃であればより好ましい。本樹脂は、注型重合時のモールドを変えることにより種々の形態の成形体として得ることができ、高度な屈折率や透明性を必要とする、各種レンズ、光ディスク基盤、プラスチック光ファイバー、発光ダイオード(LED)等の光学材料としての各種の用途に使用することが可能である。用いたレンズでは、必要に応じ、反射防止、高硬度付与、耐摩耗性向上、耐薬品性向上、防曇性付与、あるいは、帯電防止処理、ハードコート処理、無反射コート処理、染色処理等の物理的あるいは化学的処理を施すことができる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例を用いてより具体的に説明する。但し、本発明は実施例により制限されない。なお、以下の実施例、比較例においては、以下の方法で測定を行った。
(保存方法、試験期間) 安定剤を添加した保存試験サンプルは、ガラス容器中に窒素置
換後に密栓し、室温にて半年毎に色相を測定した。保存期間は最長18ヶ月の試験期間とした。
(経時着色測定)時着色測定判定方法は、一定期間保管したビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンの色相を目視で評価する。具体的にはJISK1556の5.1による色相APHA測定でビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンをAPHA測定管に入れ、標準液と見比べてAPHA値を求める。
(樹脂色相)ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンとポリチオール及び、重合触媒、紫外線吸収剤、離型剤等を混合し、減圧脱泡した後ガラスモールドとガスケットからなる厚さ9mm,直径70mmのモールドに注入し室温から120℃まで20時間で重合させ、冷却後離型した樹脂の色相をミノルタ製色彩色差計CR−300にて樹脂の黄色度(イエローインデックス=YI)を測定した。
【0029】
[実施例1]
ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(純度99.8%、加水分解性塩素0.02%、JISK1556の5.1による色相APHA10)に安定化剤トリフェニルホスファイト500ppmを添加し、ガラス容器中窒素置換後に密栓し20℃で保管した。半年毎に目視による白濁有無及びAPHAを測定したところ、18ヶ月目まで白濁はなく、APHA10の良好な保存安定性を示した。次に、試験期間の終了したこのビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン組成物35.4gに、重合触媒としてジブチル錫ジクロライド42mgと紫外線吸収剤として商品名viosorb583を35mg、内部離型剤として商品名ZelecUN84mgを添加、溶解させ続いてペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)16.7g、1,8−ジメルカプト−4−(メルカプトメチル)−3,6−ジチアオクタン17.9gを追加し、混合したものを真空度0.4kPaで混合しながら1時間脱気を行った。脱気終了後テフロン(登録商標)フィルターを使用して濾過し、濾過したろ液をガスケットとガラス板からなるモールド型に注入し、注入後のモールド型をオーブン内へセットし、25℃〜120℃まで20時間で昇温し重合を行った。重合終了後オーブン内の温度を室温まで戻し、型から、樹脂(平板状)を取りだし、ミノルタ製色彩色差計CR−300にて平板の色相を測定した。測定の結果、樹脂のイエローインデックス値は3.5であり良好な色相の樹脂が得られた。結果を表1に示す。
【0030】
[実施例2]
ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(純度99.8%、加水分解性塩素0.02%、JISK1556の5.1による色相APHA10)に安定化剤トリフェニルホスファイト1000ppmを添加し、ガラス容器中窒素置換後に密栓し20℃で保管した。半年毎に目視による白濁有無及びAPHAを測定したところ、18ヶ月目まで白濁はなく、APHA10の良好な保存安定性を示した。次に、試験期間の終了したこのビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン組成物35.4gに、重合触媒としてジブチル錫ジクロライド42mgと紫外線吸収剤として商品名viosorb583を35mg、内部離型剤として商品名ZelecUN84mgを添加、溶解させ続いてペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)16.7g、1,8−ジメルカプト−4−(メルカプトメチル)−3,6−ジチアオクタン17.9gを追加し、混合したものを真空度0.4kPaで混合しながら1時間脱気を行った。脱気終了後テフロン(登録商標)フィルターを使用して濾過し、濾過したろ液をガスケットとガラス板からなるモールド型に注入し、注入後のモールド型をオーブン内へセットし、25℃〜120℃まで20時間で昇温し重合を行った。重合終了後オーブン内の温度を室温まで戻し、型から、樹脂(平板状)を取りだし、ミノルタ製色彩色差計CR−300にて平板の色相を測定した。測定の結果、樹脂のイエローインデックス値は3.5であり良好な色相の樹脂が得られた。結果を表1に示す。
【0031】
[実施例3]
ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(純度99.8%、加水分解性塩素0.02%、JISK1556の5.1による色相APHA10)に安定化剤トリフェニルホスファイト2000ppmを添加し、ガラス容器中窒素置換後に密栓し20℃で保管した。半年毎に目視による白濁有無及びAPHAを測定したところ、18ヶ月目まで白濁はなく、APHA10の良好な保存安定性を示した。次に、試験期間の終了したこのビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン組成物35.4gに、重合触媒としてジブチル錫ジクロライド42mgと紫外線吸収剤として商品名viosorb583を35mg、内部離型剤として商品名ZelecUN84mgを添加、溶解させ続いてペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)16.7g、1,8−ジメルカプト−4−(メルカプトメチル)−3,6−ジチアオクタン17.9gを追加し、混合したものを真空度0.4kPaで混合しながら1時間脱気を行った。脱気終了後テフロン(登録商標)フィルターを使用して濾過し、濾過したろ液をガスケットとガラス板からなるモールド型に注入し、注入後のモールド型をオーブン内へセットし、25℃〜120℃まで20時間で昇温し重合を行った。重合終了後オーブン内の温度を室温まで戻し、型から、樹脂(平板状)を取りだし、ミノルタ製色彩色差計CR−300にて平板の色相を測定した。測定の結果、樹脂のイエローインデックス値は3.6であり良好な色相の樹脂が得られた。結果を表1に示す。
【0032】
[比較例1]
ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(純度99.8%、加水分解性塩素0.02%、JISK1556の5.1による色相APHA10)に安定化剤を加えずガラス容器中窒素置換後に密栓し20℃で保管した。半年毎に目視による白濁有無及びAPHAを測定したところ18ヶ月目まで白濁は無かったが、APHAが15に上昇し保存中の着色が観察された。次に、試験期間の終了したビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン35.4gに、重合触媒としてジブチル錫ジクロライド42mgと紫外線吸収剤として商品名viosorb583を35mg、内部離型剤として商品名ZelecUN84mgを添加、溶解させ続いてペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)16.7g、1,8−ジメルカプト−4−(メルカプトメチル)−3,6−ジチアオクタン17.9gを追加し、混合したものを真空度0.4kPaで混合しながら1時間脱気を行った。脱気終了後テフロン(登録商標)フィルターを使用して濾過し、濾過したろ液をガスケットとガラス板からなるモールド型に注入し、注入後のモールド型をオーブン内へセットし、25℃〜120℃まで20時間で昇温し重合を行った。重合終了後オーブン内の温度を室温まで戻し、型から、樹脂(平板状)を取りだし、ミノルタ製色彩色差計CR−300にて平板の色相を測定した。測定の結果、樹脂のイエローインデックス値は4.3であり、安定剤添加品と比較すると樹脂色相が悪化した。結果を表1に示す。
【0033】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0034】
トリフェニルホスファイトを10〜5000ppm添加したビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンは、長期間の保存において良好な色相安定性を有し、ポリチオール化合物との重合組成物は、高度な屈折率や透明性を必要とする、各種レンズ、光ディスク基盤、プラスチック光ファイバー、発光ダイオード(LED)等の光学材料としての各種の用途に使用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンに10〜5000ppmのトリフェニルホスファイトを添加することを特徴とするビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンの安定化方法。
【請求項2】
ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンと10〜5000ppmのトリフェニルホスファイトからなる組成物。
【請求項3】
請求項2記載の組成物とポリチオール化合物を含む重合性組成物。
【請求項4】
請求項3記載の重合性組成物を重合させて得られる光学樹脂。
【請求項5】
請求項4の光学樹脂からなる光学レンズ。


【公開番号】特開2008−143872(P2008−143872A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−335585(P2006−335585)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】