説明

ビス(チオヒドラジド)アミド化合物による併用癌療法

癌を有する被験体を処置する方法には、約243 μmol/m2〜315μmol/m2の量のタキサン(たとえば、パクリタキセル約210〜270 mg/m2と同等)と、約1473μmol/m2〜約1722 μmol/m2の量のビス(チオヒドラジドアミド)(たとえば、化合物(1)約590〜690 mg/m2)を、被験体に3〜5週間同時投与する段階が含まれる。ビス(チオヒドラジドアミド)は、構造式(I)で表され、Yは共有結合であるか、もしくは置換されてもよい直鎖ヒドロカルビル基であるか、またはYはそれが結合する双方の>C=Z基と合わせて、置換されてもよい芳香族基である。R1-R4は独立して-H、置換されてもよい脂肪族基、置換されてもよいアリール基であるか、またはR1およびR3はそれらが結合する炭素および窒素原子と合わせて、および/またはR2およびR4は、それらが結合する炭素および窒素原子と合わせて、芳香環に任意で縮合した非芳香族複素環を形成する。R7-R8は、独立して-H、置換されてもよい脂肪族基、または置換されてもよいアリール基である。ZはOまたはSである。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願
本出願は、2005年4月15日に提出された米国特許仮出願第60/672,139号の恩典を主張する。上記出願の全教示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の背景
タキサンは、重要なクラスの抗癌剤である。特にTaxol(商標)(パクリタキセル)は、特に卵巣癌、転移性乳癌、非小細胞肺癌(NSCLC)およびAIDS関連カポジ肉腫の処置において有効な抗癌剤である。しかし、当技術分野において、治療に反応する患者の集団および付与される生存恩恵の双方に関して、パクリタキセル治療の有効性の改善に関するかなりの要求が存在する。その上、Taxolの投与は、ナチュラルキラー(NK)細胞活性の低減による免疫機能の低減を含む、副作用を有する。
【0003】
有効性を改善する試みで、パクリタキセルは時に、他の抗癌剤と併用して用いられる。たとえば、NSCLCの処置におけるカルボプラチン。そのような併用は、相加的な恩恵または反応率の増加を有しうるが、それぞれの物質の副作用プロフィールを複合する傾向があり得る。他の物質が研究されており、たとえば、ビス(チオヒドラジドアミド)は、その全教示が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第6,800,660号(特許文献1)、第6,762,204号(特許文献2)、2003年1月15日に提出された米国特許出願第10/345,885号(特許文献3)、および2004年1月15日に提出された米国特許出願第10/758,589号(特許文献4)において記述されるように、動物モデルにおいて試験されている。
【0004】
しかし、患者が苦しむ副作用がさらに増加することなく、パクリタキセルの抗腫瘍効果を増強することができる特定の併用治療がなおも緊急に必要である。
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,800,660号
【特許文献2】米国特許第6,762,204号
【特許文献3】米国特許出願第10/345,885号
【特許文献4】米国特許出願第10/758,589号
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
ある特定のビス(チオヒドラジド)アミドとタキサンとの併用は、副作用をさらに増加させることなく、癌を有する被験体を処置するために驚くほど有効であることがこのたび判明している。本明細書において開示した特定の併用治療は、Hsp70レベルを上昇させることによって(実施例3を参照されたい)、有意な抗癌作用を示すことによって(実施例4〜5を参照されたい)、およびTaxol(商標)の投与に典型的に関連するナチュラルキラー(NK)細胞活性の低減のような副作用を停止または逆転させることによって(実施例4〜5を参照されたい)、驚くべき生物活性を示す。
【0007】
癌を有する被験体を処置する方法には、約243 μmol/m2〜315μmol/m2の量のタキサン(パクリタキセル約210〜270 mg/m2と同等)と、約1473μmol/m2〜約1722 μmol/m2の量のビス(チオヒドラジドアミド)(たとえば、化合物(1)約590〜690 mg/m2)を、被験体に3〜5週間同時投与する段階が含まれる。ビス(チオヒドラジドアミド)は、構造式Iで表される:

式中、
Yは共有結合であるか、もしくは置換されてもよい直鎖ヒドロカルビル基であるか、またはYはそれが結合する双方の>C=Z基と合わせて、置換されてもよい芳香族基である。
R1-R4は独立して-H、置換されてもよい脂肪族基、置換されてもよいアリール基であるか、またはR1およびR3はそれらが結合する炭素および窒素原子と合わせて、および/またはR2およびR4は、それらが結合する炭素および窒素原子と合わせて、芳香環に任意で縮合した非芳香族複素環を形成する。
R7-R8は、独立して-H、置換されてもよい脂肪族基、または置換されてもよいアリール基である。
ZはOまたはSである。
【0008】
様々な態様において、癌を有する被験体を処置する方法には、それぞれ有効量の白金抗癌化合物、タキサンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒化合物、および構造式Iによって表されるビス(チオヒドラジドアミド)またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒化合物を被験体に投与する段階が含まれる。
【0009】
様々な態様において、癌を有する被験体を処置する方法には、約205 μmol/m2の量のタキサン(たとえば、パクリタキセルの約175 mg/m2)と、約220μmol/m2〜約1310 μmol/m2の量の、構造式Iによって表されるビス(チオヒドラジドアミド)またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒化合物(たとえば、化合物(1)約88〜525 mg/m2)を、被験体に3週間毎に1回、独立してまたは共に投与する段階が含まれる。
【0010】
様々な態様において、薬学的組成物には、薬学的に許容される担体または希釈剤が含まれる。いくつかの態様において、ビス(チオヒドラジドアミド)対タキサンのモル比は、約5.5:1〜約5.9:1、ある特定の態様において約2.7:1〜約2.9:1、および特定の態様において約4.1:1〜約4.5:1となりうる。
【0011】
様々な態様において、本発明には、先に記述したモル比のそれぞれでタキサンと併用して癌を処置するための薬剤を製造するためにビス(チオヒドラジドアミド)の使用が含まれる。いくつかの態様において、本発明には、先に記述したモル比のそれぞれにおいて癌を処置するための薬剤を製造するためにビス(チオヒドラジドアミド)とタキサンとの使用が含まれる。
【0012】
本発明において用いられるタキサン、たとえばパクリタキセルは以下の詳細な説明の節において記述される。
【0013】
様々な態様において、ビス(チオヒドラジド)アミドまたはタキサン抗癌剤のいずれかの薬学的に許容される塩または溶媒化合物は、任意で薬学的に許容される担体または希釈剤と共に用いられうる。ある特定の態様において、薬学的組成物には、ビス(チオヒドラジド)アミド、タキサン、および薬学的に許容される担体または希釈剤が含まれる。
【0014】
本方法は、実施例において証明されるように、主張される癌を処置するために、およびTaxol(商標)の投与に典型的に関連するナチュラルキラー(NK)細胞活性の低減のような、副作用を停止または逆転させるために特に有効である。
【0015】
発明の詳細な説明
本発明の好ましい態様を以下に説明する。
【0016】
様々な態様において、癌を有する被験体を処置する方法には、約243 μmol/m2〜315μmol/m2の量のタキサン(パクリタキセル約210〜270 mg/m2と同等)、および約1473μmol/m2〜約1722 μmol/m2の量のビス(チオヒドラジドアミド)(たとえば、構造式Iによって表されるような)(たとえば、化合物(1)約590〜690 mg/m2)を、3〜5週間被験体に同時投与する段階が含まれる。
【0017】
被験体、たとえば典型的にヒト被験体は、本明細書に記述の任意の癌に対して処置されうる。典型的に、癌は軟部組織肉腫(たとえば、典型的にGIST以外の軟部組織肉腫)、または転移性黒色腫でありうる。いくつかの態様において、癌は転移性黒色腫である。
【0018】
いくつかの態様において、タキサンおよびビス(チオ-ヒドラジド)アミドはそれぞれ、4週間の期間の3週間のあいだ、等しい用量で週に1回、3回投与されうる。好ましい態様において、4週間の投与期間は、癌が寛解するまで反復されうる。
【0019】
タキサンは、本明細書において定義される任意のタキサンでありうる。特定の態様において、タキサンは、約94μmol/m2(80 mg/m2)の用量で週に1回静脈内投与されるパクリタキセルである。
【0020】
様々な態様において、ビス(チオヒドラジドアミド)は、約500μmol/m2〜約562μmol/m2の用量を週に1回静脈内投与され、または典型的に約532μmol/m2(たとえば、化合物(1)約590〜690 mg/m2)の用量を週に1回静脈内投与される。
【0021】
いくつかの態様において、被験体は転移性黒色腫のために処置される。ある特定の態様において、被験体はGIST以外の軟部組織肉腫のために処置される。
【0022】
好ましい態様において、癌を有するヒト被験体を処置する方法には、約94μmol/m2の量のパクリタキセルと、約532μmol/m2の量の、以下の構造式によって表されるビス(チオヒドラジドアミド)またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒化合物を、4週間の期間において等しい用量で週に1回、3回被験体に静脈内投与する段階が含まれる:

典型的に、癌は軟部組織肉腫(たとえば、典型的にはGIST以外の軟部組織肉腫)または転移性黒色腫である。
【0023】
様々な態様において、被験体は、ビス(チオヒドラジドアミド)約220μmol/m2〜約1310 μmol/m2(たとえば、化合物(1)約88〜525 mg/m2)を3週間毎に1回、一般的に約220μmol/m2〜約1093 μmol/m2(たとえば、化合物(1)約88〜438 mg/m2)を3週間毎に1回、典型的に約624μmol/m2〜約1124 μmol/m2(たとえば、化合物(1)約250〜450 mg/m2)、より典型的に約811μmol/m2〜約936 μmol/m2(たとえば、化合物(1)約325〜375 mg/m2)、または特定の態様において、約874μmol/m2(たとえば、化合物(1)約350 mg/m2)を静脈内投与されうる。特定の態様において、被験体は、ビス(チオヒドラジドアミド)の約582μmol/m2〜約664 μmol/m2(たとえば、化合物(1)約233〜266 mg/m2)を3週間毎に1回静脈内投与されうる。ある特定の態様において、ビス(チオヒドラジドアミド)の量は約664 μmol/m2(たとえば、化合物(1)約266 mg/m2)である。
【0024】
様々な態様において、被験体は、パクリタキセルとしてタキサンを約200μmol/m2〜約263μmol/m2(たとえば、パクリタキセル約175〜255 mg/m2)3週間毎に1回静脈内投与されうる。いくつかの態様において、被験体は、パクリタキセルとしてタキサンを約200μmol/m2〜約234μmol/m2(たとえば、パクリタキセル約175〜200 mg/m2)3週間毎に1回静脈内投与されうる。特定の態様において、パクリタキセルは約234μmol/m2(200 mg/m2)の量で投与される。ある特定の態様において、パクリタキセルは約205μmol/m2(175 mg/m2)の量で投与される。
【0025】
様々な態様において、タキサン、たとえばパクリタキセル、およびビス(チオヒドラジドアミド)、たとえば化合物(1)は、単一の薬学的組成物において共に投与されうる。
【0026】
様々な態様において、癌を有する被験体を処置する方法には、約205μmol/m2の量のタキサン(たとえば、パクリタキセルの約175 mg/m2)、および約220μmol/m2〜約1310 μmol/m2の量の、構造式Iによって表されるビス(チオヒドラジドアミド)またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒化合物(たとえば、化合物(1)約88〜525 mg/m2)を3週間毎に1回、独立してまたは共に被験体に投与する段階が含まれる。典型的に、タキサンは、約205μmol/m2の量で静脈内投与されるパクリタキセルである。ビス(チオヒドラジドアミド)は、典型的に約220μmol/m2〜約1093μmol/m2(たとえば、化合物(1)の約88〜438 mg/m2)、より典型的に約749μmol/m2〜約999μmol/m2(たとえば、化合物(1)の約300〜400 mg/m2)、いくつかの態様において約811μmol/m2〜約936μmol/m2(たとえば、化合物(1)の約325〜375 mg/m2)を静脈内投与されうる。ある特定の態様において、ビス(チオヒドラジドアミド)は、約874μmol/m2(約350 mg/m2)で静脈内投与される化合物(1)でありうる。
【0027】
特定の態様において、癌を有する被験体を処置する方法には、パクリタキセル約205μmol/m2(175 mg/m2);および式(1)またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒化合物約874μmol/m2(350 mg/m2)を3週間のあいだに1回被験体に静脈内投与する段階が含まれ、癌はGIST以外の軟部組織肉腫、または転移性黒色腫である。
【0028】
様々な態様において、薬学的組成物には、薬学的に許容される担体または希釈剤、およびビス(チオヒドラジドアミド)対タキサンのモル比約5.5:1〜約5.9:1が含まれ、ビス(チオヒドラジドアミド)は構造式Iによって表されるか、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒化合物である。いくつかの態様において、ビス(チオヒドラジドアミド)対タキサンのモル比は、約5.6:1〜約5.8:1であり、またはより典型的に約5.7:1である。ある特定の態様において、タキサンはパクリタキセルまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒化合物である。特定の態様において、ビス(チオヒドラジドアミド)は、化合物(1)である。
【0029】
様々な態様において、薬学的組成物には、薬学的に許容される担体または希釈剤、およびビス(チオヒドラジドアミド)対タキサンのモル比約2.6:1〜約3.0:1が含まれ、ビス(チオヒドラジドアミド)は構造式Iによって表されるか、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒化合物である。いくつかの態様において、ビス(チオヒドラジドアミド)対タキサンのモル比は、約2.7:1〜約2.9:1であり、またはより典型的に約2.8:1である。ある特定の態様において、タキサンはパクリタキセルまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒化合物である。特定の態様において、ビス(チオヒドラジドアミド)は、化合物(1)である。
【0030】
様々な態様において、薬学的組成物には、薬学的に許容される担体または希釈剤、およびビス(チオヒドラジドアミド)対タキサンのモル比約4.1:1〜約4.5:1が含まれ、ビス(チオヒドラジドアミド)は構造式Iによって表されるか、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒化合物である。いくつかの態様において、ビス(チオヒドラジドアミド)対タキサンのモル比は、約4.2:1〜約4.4:1であり、またはより典型的に約4.3:1である。ある特定の態様において、タキサンはパクリタキセルまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒化合物である。特定の態様において、ビス(チオヒドラジドアミド)は、化合物(1)である。
【0031】
様々な態様において、本発明には、ビス(チオヒドラジドアミド)対タキサンのモル比約5.5:1〜約5.9:1、典型的に約5.6:1〜約5.8:1、より典型的に約5.7:1で、タキサンと併用して癌を処置するための薬剤を製造するためにビス(チオヒドラジドアミド)を用いることが含まれ、ビス(チオヒドラジドアミド)は構造式Iによって表される。いくつかの態様において、ビス(チオヒドラジドアミド)対タキサンのモル比は、約2.6:1〜約3.0:1であり、典型的に約2.7:1〜約2.9:1、より典型的に約2.8:1である。いくつかの態様において、ビス(チオヒドラジドアミド)対タキサンのモル比は、約4.1:1〜約4.5:1となりえて、典型的に約4.2:1〜約4.4:1、より典型的に約4.3:1でありうる。
【0032】
様々な態様において、本発明には、ビス(チオヒドラジドアミド)対タキサンのモル比約5.5:1〜約5.9:1、典型的に約5.6:1〜約5.8:1、より典型的に約5.7:1で、癌を処置するための薬剤を製造するためにビス(チオヒドラジドアミド)およびタキサンを用いることが含まれ、ビス(チオヒドラジドアミド)は構造式Iで表される。いくつかの態様において、ビス(チオヒドラジドアミド)対タキサンのモル比は、約2.6:1〜約3.0:1であり、典型的に約2.7:1〜約2.9:1、より典型的に約2.8:1である。いくつかの態様において、ビス(チオヒドラジドアミド)対タキサンのモル比は、約4.1:1〜約4.5:1となりえて、典型的に約4.2:1〜約4.4:1、より典型的に約4.3:1でありうる。
【0033】
開示の発明において用いられるビス(チオヒドラジドアミド)は、構造式Iによって表されるか、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒化合物である。
【0034】
一つの態様において、構造式IにおけるYは共有結合、-C(R5R6)-、-(CH2CH2)-、トランス-(CH=CH)-、シス-(CH=CH)-、または-(C≡C)-基、好ましくは-C(R5R6)-である。R1-R4は、構造式Iに関して先に記述した通りである。R5およびR6は、それぞれ独立して-H、脂肪族、または置換脂肪族基であるか、またはR5は-Hであって、R6は置換されてもよいアリール基であるか、またはR5およびR6は合わせて、置換されてもよいC2-C6アルキレン基である。薬学的に許容される陽イオンは、以下に詳細に記述されるとおりである。
【0035】
特異的態様において、Yはそれが結合する双方の>C=Z基と合わせて、置換されてもよい芳香族基である。この場合、ある特定のビス(チオヒドラジドアミド)は、構造式IIによって表される:

式中、環Aは置換または非置換であり、Vは-CHまたは-N-である。構造式IIにおける他の変数は、構造式IまたはIIIに関して本明細書に記述されるとおりである。
【0036】
特定の態様において、ビス(チオヒドラジドアミド)は、構造式IIIによって表される:

式中、R1-R8および薬学的に許容される陽イオンは、構造式Iに関して先に記述した通りである。
【0037】
構造式I〜IIIにおいて、R1およびR2は、同じまたは異なり、および/またはR3およびR4は、同じまたは異なり、好ましくはR1およびR2は同じであって、R3およびR4は同じである。構造式IおよびIIIにおいて、Zは好ましくはOである。典型的に、構造式IおよびIIIにおいて、ZはOであり:R1およびR2は同じであり;ならびにR3およびR4は同じである。より好ましくは、ZはOであり;R1およびR2は同じであり;R3およびR4は同じであり;ならびにR7およびR8は同じである。
【0038】
他の態様において、ビス(チオヒドラジドアミド)は、構造式IIIによって表され;式中R1およびR2は、それぞれ置換されてもよいアリール基、好ましくは置換されてもよいフェニル基であり;R3およびR4はそれぞれ、置換されてもよい脂肪族基、好ましくはアルキル基、より好ましくはメチルまたはエチルであり;ならびにR5およびR6は先に記述されたとおりであるが、R5は、好ましくは-Hであり、およびR6は好ましくは-H、脂肪族または置換脂肪族基である。
【0039】
または、R1およびR2は、それぞれ置換されてもよいアリール基であり;R3およびR4はそれぞれ、置換されてもよい脂肪族基であり;R5は-Hであり、ならびにR6は-H、脂肪族または置換脂肪族基である。好ましくは、R1およびR2は、それぞれ置換されてもよいアリール基であり;R3およびR4はそれぞれ、アルキル基であり;R5は-Hであり、ならびにR6は-Hまたはメチルである。さらにより好ましくは、R1およびR2は、それぞれ置換されてもよいフェニル基であり;R3およびR4はそれぞれ、メチルまたはエチルであり;R5は-Hであり、ならびにR6は-Hまたはメチルである。R1およびR2によって表されるアリール基、ならびにR3、R4およびR6によって表される脂肪族基の適した置換基は、アリールおよび脂肪族基に関して以下に記述されるとおりである。
【0040】
もう一つの態様において、ビス(チオヒドラジドアミド)は、構造式IIIによって表され;R1およびR2は、それぞれ置換されてもよい脂肪族基、好ましくは少なくとも一つのアルキル基によって置換されてもよいC3-C8シクロアルキル基であり、より好ましくはシクロプロピルまたは1-メチルシクロプロピルであり;R3およびR4は構造式Iに関して先に記述されたとおりであり、好ましくは、いずれも置換されてもよいアルキル基であり;ならびにR5およびR6は先に記述されたとおりであるが、R5は、好ましくは-Hであり、およびR6は好ましくは-H、脂肪族または置換脂肪族基であり、より好ましくは、-Hまたはメチルである。
【0041】
またはビス(チオヒドラジドアミド)は、構造式IIIによって表され;R1およびR2は、それぞれ置換されてもよい脂肪族基であり;R3およびR4は、構造式Iに関して先に記述したとおりであり、好ましくは、いずれも置換されてもよいアルキル基であり;R5は-Hであり、およびR6は好ましくは-H、または置換されてもよい脂肪族基である。好ましくは、R1およびR2はいずれも、少なくとも一つのアルキル基によって置換されてもよいC3-C8シクロアルキル基であり;R3およびR4はいずれも、構造式Iに関して先に記述されたとおりであり、好ましくはアルキル基であり;ならびにR5は、-Hであり、およびR6は、-Hまたは脂肪族もしくは置換脂肪族基である。より好ましくは、R1およびR2は、少なくとも一つのアルキル基によって置換されてもよいC3-C8シクロアルキル基であり;R3およびR4は、いずれもアルキル基であり;R5は、-Hであり、およびR6は、-Hまたはメチルである。さらにより好ましくは、R1およびR2はいずれも、シクロプロピルまたは1-メチルシクロプロピルであり;R3およびR4は、いずれもアルキル基であり、好ましくはメチルまたはエチルであり;R5は、-Hであり、およびR6は、-Hまたはメチルである。
【0042】
特異的態様において、ビス(チオヒドラジドアミド)は、構造式IVによって表される:

式中、R1およびR2は、いずれもフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、ならびにR5およびR6は、いずれも-Hである;R1およびR2は、いずれもフェニルであり、R3およびR4は、いずれもエチルであり、ならびにR5およびR6は、いずれも-Hである;R1およびR2は、いずれも4-シアノフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5はメチルであり、ならびにR6は、-Hである;R1およびR2は、いずれも4-メトキシフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、ならびにR5およびR6は、いずれも-Hである;R1およびR2は、いずれもフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5は、メチルであり、ならびにR6は、-Hである;R1およびR2は、いずれもフェニルであり、R3およびR4は、いずれもエチルであり、R5は、メチルであり、ならびにR6は、-Hである;R1およびR2は、いずれも4-シアノフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、ならびにR5およびR6は、いずれも-Hである;R1およびR2は、いずれも2,5-ジメトキシフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、ならびにR5およびR6は、いずれも-Hである;R1およびR2は、いずれも2,5-ジメトキシフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5は、メチルであり、ならびにR6は、-Hである;R1およびR2は、いずれも3-シアノフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、ならびにR5およびR6は、いずれも-Hである;R1およびR2は、いずれも3-フルオロフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、ならびにR5およびR6は、いずれも-Hである;R1およびR2は、いずれも4-クロロフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5はメチルであり、ならびにR6は-Hである;R1およびR2は、いずれも2-ジメトキシフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、ならびにR5およびR6は、いずれも-Hである;R1およびR2は、いずれも3-メトキシフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、ならびにR5およびR6は、いずれも-Hである;R1およびR2は、いずれも2,3-ジメトキシフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、ならびにR5およびR6は、いずれも-Hである;R1およびR2は、いずれも2,3-ジメトキシフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5はメチルであり、ならびにR6は-Hである;R1およびR2は、いずれも2,5-ジフルオロフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、ならびにR5およびR6は、いずれも-Hである;R1およびR2は、いずれも2,5-ジフルオロフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5はメチルであり、ならびにR6は-Hである;R1およびR2は、いずれも2,5-ジクロロフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、ならびにR5およびR6は、いずれも-Hである;R1およびR2は、いずれも2,5-ジメチルフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、ならびにR5およびR6は、いずれも-Hである;R1およびR2は、いずれも2,5-ジメトキシフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、ならびにR5およびR6は、いずれも-Hである;R1およびR2は、いずれもフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、ならびにR5およびR6は、いずれも-Hである;R1およびR2は、いずれも2,5-ジメトキシフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5はメチルであり、ならびにR6は-Hである;R1およびR2は、いずれもシクロプロピルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、ならびにR5およびR6は、いずれも-Hである;R1およびR2は、いずれもシクロプロピルであり、R3およびR4は、いずれもエチルであり、ならびにR5およびR6は、いずれも-Hである;R1およびR2は、いずれもシクロプロピルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5はメチルであり、およびR6は-Hである;R1およびR2は、いずれも1-メチルシクロプロピルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、ならびにR5およびR6は、いずれも-Hである;R1およびR2は、いずれも1-メチルシクロプロピルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5は、メチルであり、ならびにR6は、-Hである;R1およびR2は、いずれも1-メチルシクロプロピルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、ならびにR5はエチルであり、ならびにR6は-Hである;R1およびR2は、いずれも1-メチルシクロプロピルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5はn-プロピルであり、ならびにR6は-Hである;R1およびR2は、いずれも1-メチルシクロプロピルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、ならびにR5およびR6は、いずれもメチルである;R1およびR2は、いずれも1-メチルシクロプロピルであり、R3およびR4は、いずれもエチルであり、ならびにR5およびR6は、いずれも-Hである;R1およびR2は、いずれも1-メチルシクロプロピルであり、R3は、メチルであり、R4は、エチルであり、ならびにR5およびR6は、いずれも-Hである;R1およびR2は、いずれも2-メチルシクロプロピルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、ならびにR5およびR6は、いずれも-Hである;R1およびR2は、いずれも2-フェニルシクロプロピルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、ならびにR5およびR6は、いずれも-Hである;R1およびR2は、いずれも1-フェニルシクロプロピルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、ならびにR5およびR6は、いずれも-Hである;R1およびR2は、いずれもシクロブチルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、ならびにR5およびR6は、いずれも-Hである;R1およびR2は、いずれもシクロペンチルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、ならびにR5およびR6は、いずれも-Hである;R1およびR2は、いずれもシクロヘキシルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、ならびにR5およびR6は、いずれも-Hである;R1およびR2は、いずれもシクロヘキシルであり、R3およびR4は、いずれもフェニルであり、ならびにR5およびR6は、いずれも-Hである;R1およびR2は、いずれもメチルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、ならびにR5およびR6は、いずれも-Hである;R1およびR2は、いずれもメチルであり、R3およびR4は、いずれもt-ブチルであり、ならびにR5およびR6は、いずれも-Hである;R1およびR2は、いずれもメチルであり、R3およびR4は、いずれもフェニルであり、ならびにR5およびR6は、いずれも-Hである;R1およびR2は、いずれもt-ブチルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、ならびにR5およびR6は、いずれも-Hである;R1およびR2は、いずれもエチルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、ならびにR5およびR6は、いずれも-Hである;またはR1およびR2は、いずれもn-プロピルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、ならびにR5およびR6は、いずれも-Hである。
【0043】
特異的態様において、ビス(チオヒドラジドアミド)は、構造式Vによって表される:

式中、R1およびR2は、いずれもフェニルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもo-CH3-フェニルである;R1およびR2は、いずれもo-CH3C(O)O-フェニルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもフェニルである;R1およびR2は、いずれもフェニルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもメチルである;R1およびR2は、いずれもフェニルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもエチルである;R1およびR2は、いずれもフェニルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもn-プロピルである;R1およびR2は、いずれもp-シアノフェニルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもメチルである;R1およびR2は、いずれもp-ニトロフェニルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもメチルである;R1およびR2は、いずれも2,5-ジメトキシフェニルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもメチルである;R1およびR2は、いずれもフェニルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもn-ブチルである;R1およびR2は、いずれもp-クロロフェニルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもメチルである;R1およびR2は、いずれも3-ニトロフェニルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもメチルである;R1およびR2は、いずれも3-シアノフェニルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもメチルである;R1およびR2は、いずれも3-フルオロフェニルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもメチルである;R1およびR2は、いずれも2-フラニルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもフェニルである;R1およびR2は、いずれも2-メトキシフェニルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもメチルである;R1およびR2は、いずれも3-メトキシフェニルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもメチルである;R1およびR2は、いずれも2,3-ジメトキシフェニルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもメチルである;R1およびR2は、いずれも2-メトキシ-5-クロロフェニルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもエチルである;R1およびR2は、いずれも2,5-ジフルオロフェニルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもメチルである;R1およびR2は、いずれも2,5-ジクロロフェニルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもメチルである;R1およびR2は、いずれも2,5-ジメチルフェニルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもメチルである;R1およびR2は、いずれも2-メトキシ-5-クロロフェニルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもメチルである;R1およびR2は、いずれも3,6-ジメトキシフェニルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもメチルである;R1およびR2は、いずれもフェニルであり、ならびにR3およびR4は、いずれも2-エチルフェニルである;R1およびR2は、いずれも2-メチル-5-ピリジルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもメチルである;R1およびR2は、いずれも2,5-ジメトキシフェニルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもメチルである;R1およびR2は、いずれもメチルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもp-CF3-フェニルである;R1およびR2は、いずれもメチルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもo-CH3-フェニルである;R1およびR2は、いずれも-(CH2)3COOHであり、ならびにR3およびR4は、いずれもフェニルである;R1およびR2は、いずれも以下の構造式によって表され:

、ならびにR3およびR4は、いずれもフェニルである;R1およびR2は、いずれもn-ブチルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもフェニルである;R1およびR2は、いずれもn-ペンチルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもフェニルである;R1およびR2は、いずれもメチルであり、ならびにR3およびR4は、いずれも2-ピリジルである;R1およびR2は、いずれもシクロヘキシルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもフェニルである;R1およびR2は、いずれもメチルであり、ならびにR3およびR4は、いずれも2-エチルフェニルである;R1およびR2は、いずれもメチルであり、ならびにR3およびR4は、いずれも2,6-ジクロロフェニルである;R1-R4は全てメチルである;R1およびR2は、いずれもメチルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもt-ブチルである;R1およびR2は、いずれもエチルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもメチルである;R1およびR2は、いずれもt-ブチルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもメチルである;R1およびR2は、いずれもシクロプロピルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもメチルである;R1およびR2は、いずれもシクロプロピルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもエチルである;R1およびR2は、いずれも1-メチルシクロプロピルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもメチルである;R1およびR2は、いずれも2-メチルシクロプロピルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもメチルである;R1およびR2は、いずれも1-フェニルシクロプロピルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもメチルである;R1およびR2は、いずれも2-フェニルシクロプロピルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもメチルである;R1およびR2は、いずれもシクロブチルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもメチルである;R1およびR2は、いずれもシクロペンチルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもメチルである;R1は、シクロプロピルであり、R2は、フェニルであり、ならびにR3およびR4は、いずれもメチルである。
【0044】
ビス(チオヒドラジドアミド)の好ましい例には、化合物(1)〜(18)ならびにその薬学的に許容される塩および溶媒化合物が含まれる:




【0045】
ビス(チオヒドラジドアミド)の特定の例には、化合物(1)、(17)、および(18)ならびにその薬学的に許容される塩および溶媒化合物が含まれる。
【0046】
本開示の発明において用いられるタキサンには、Taxol(商標)およびTaxol(商標)類似体が含まれる。Taxol(商標)または「パクリタキセル」は、微小管形成を増強および安定化することによって作用しうる周知の抗癌剤である。このように、「Taxol(商標)類似体」という用語は、本明細書において基本Taxol(商標)骨格を有し、微小管の形成を安定化する化合物を意味すると定義される。「ドセタキソール」とも呼ばれるTaxotere(商標)を含むTaxol(商標)の多くの類似体が公知である。Taxol(商標)およびTaxotere(商標)はそれぞれ下記の構造式を有する:

;および

【0047】
本開示の発明において用いられるタキサンは、構造式VIにおいて以下に示される共通の構造特徴として基本タキサン骨格を有する:

二重結合は、構造式VIによって表されるタキサン骨格におけるシクロヘキサン環から省略されている。基本タキサン骨格には、Taxol(商標)類似体および以下の構造式VIIおよびVIIIにおいて示されるように、一つまたは双方のシクロヘキサン環にゼロまたは一つの二重結合が含まれうると理解されるべきである。多くの原子もまた、Taxol(商標)類似体において構造の変化が一般的に起こる部位を示すために、構造式VIから省略されている。
【0048】
広く多様な置換基が、生物活性に有害な影響を及ぼすことなく、タキサン骨格を修飾することができる。同様に、Taxol(商標)類似体のゼロ、一つ、または双方のシクロヘキサン環は、表記の位置で二重結合を有しうる。たとえば、タキサン骨格上での単なる酸素原子による置換は、ヒドロキシル、アシル、アルコキシ、または他の酸素含有置換基がその部位に一般的に認められることを示している。タキサン骨格におけるこれらおよび他の置換は、微小管形成を増強および安定化する能力を失うことなく行うことができると理解される。このように、「Taxol(商標)類似体」という用語は本明細書において、基本Taxol(商標)骨格を有し、微小管形成を安定化させる化合物を意味すると定義される。タキサンという用語は、本明細書において、Taxol(商標)および本明細書において記述される「Taxol(商標)類似体」のような化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒化合物が含まれると定義される。
【0049】
典型的に、本開示の発明において用いられるタキサンは、構造式VIIまたはVIIIによって表される:

式中、
R10は、置換されてもよい低級アルキル基、置換されてもよいフェニル基、-SR19、-NHR19または-OR19である。
R11は、置換されてもよい低級アルキル基、置換されてもよいアリール基である。
R12は、-H、-OH、低級アルキル、置換低級アルキル、低級アルコキシ、置換低級アルコキシ、O-C(O)-(低級アルキル)、O-C(O)-(置換低級アルキル)、-O-CH2-O-(低級アルキル)-S-CH2-O-(低級アルキル)である。
R13は、-H、-CH3、またはR14と合わせて、-CH2-である。
R14は、-H、-OH、低級アルコキシ、O-C(O)-(低級アルキル)、置換低級アルコキシ、O-C(O)-(置換低級アルキル)、-O-CH2-O-P(O)(OH)2、-O-CH2-O-(低級アルキル)、-O-CH2-S-(低級アルキル)、またはR20と合わせて、二重結合である。
R15は、-H、低級アシル、低級アルキル、置換低級アルキル、アルコキシメチル、アルクチオメチル、-OC(O)-O(低級アルキル)、-OC(O)-O(置換低級アルキル)、-OC(O)-NH(低級アルキル)、または-OC(O)-NH(置換低級アルキル)である。
R16は、フェニルまたは置換フェニルである。
R17は、-H、低級アシル、置換低級アシル、低級アルキル、置換低級アルキル、(低級アルコキシ)メチル、または(低級アルキル)チオメチルである。
R18は、-H、-CH3、またはR17ならびにR17およびR18が結合する炭素原子と合わせて、5員環または6員環の非芳香族複素環式環である。
R19は、置換されてもよい低級アルキル基、置換されてもよいフェニル基である。
R20は、-Hまたはハロゲンである。
R21は、-H、低級アルキル、置換低級アルキル、低級アシル、または置換低級アシルである。
【0050】
好ましくは構造式VIIおよびVIIIの変項は以下のように定義される:R10は、フェニル、tert-ブトキシ、S-CH2-CH-(CH3)2、-S-CH(CH3)3、-S-(CH2)3CH3、-O-CH(CH3)3、-NH-CH(CH3)3、-CH=C(CH3)2、またはパラ-クロロフェニルであり;R11はフェニル、(CH3)2CHCH2-、-2-フラニル、シクロプロピル、またはパラ-トルイルであり;R12は、-H、-OH、CH3CO-、または-(CH2)2-N-モルホリノであり;R13は、メチルであり、またはR13およびR14は合わせて、-CH2-であり;
R14は、-H、-CH2SCH3、または-CH2-O-P(O)(OH)2であり;R15はCH3CO-であり;
R16はフェニルであり;R17は、-Hであり、またはR17およびR18は合わせて、-O-CO-O-であり;
R18は、-Hであり;R20は、-Hまたは-Fであり、およびR21は、-H、-C(O)-CHBr-(CH2)13-CH3、または-C(O)-(CH2)14-CH3、-C(O)-CH2-CH(OH)-COOH、-C(O)-CH2-O-C(O)-CH2CH(NH2)-CONH2、-C(O)-CH2-O--CH2CH2OCH3、または-C(O)-O-C(O)-CH2CH3である。
【0051】
Taxol(商標)類似体の特異的例には、以下の化合物が含まれる:







【0052】
Taxol(商標)類似体はまた、ポリアクリルアミドのような薬学的に許容されるポリマーに結合されうる、またはポリマーから懸垂されうる。このタイプのポリマーの一つの例は、以下のTaxol(商標)類似体22であり、これはポリマー骨格から懸垂したTaxol類似体基を含むポリマー構造を有する。ポリマーは、示される三つの単量体単位のターポリマーである。本明細書において用いられるように、「Taxol(商標)類似体」という用語には、そのようなポリマーが含まれる。

【0053】
「直鎖ヒドロカルビル基」は、連結基によって置換されてもよい一つまたは複数(好ましくは一つ)の内部メチレン基を有し、yが正の整数(たとえば、1〜10)、好ましくは1〜6、より好ましくは1または2であるアルキレン基、すなわち-(CH2)y-である。「連結基」は、直鎖ヒドロカルビルにおけるメチレンを置換する官能基を指す。適した連結基の例には、ケトン(-C(O)-)、アルケン、アルキン、フェニレン、エーテル(-O-)、チオエーテル(-S-)、またはアミン(-N(Ra)-)が含まれ、式中Raは以下に定義されるとおりである。好ましい連結器は-C(R5R6)-であり、式中R5およびR6は、先に定義されるとおりである。アルキレン基およびヒドロカルビル基の適した置換基は、ビス(チオヒドラジド)アミドおよびタキサンの抗癌活性を実質的に妨害しない置換基である。R5およびR6は、Yによって表されるアルキレンまたはヒドロカルビル基の好ましい置換基である。
【0054】
脂肪族基は、完全に飽和であるか、または一つもしくは複数の不飽和単位を含む、直鎖、分岐、または環状の非芳香族炭化水素である。典型的に、直鎖または分岐脂肪族基は、炭素原子1〜約20個、好ましくは1〜約10個を有し、環状脂肪族基は、炭素原子3〜約10個、好ましくは3〜約8個を有する。脂肪族基は、好ましくは直鎖または分岐アルキル基、たとえばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ペンチル、もしくはオクチル、または炭素原子3〜約8個のシクロアルキル基である。C1-C20直鎖または分岐アルキル基、またはC3-C8環状アルキル基も同様に、「低級アルキル」基と呼ばれる。
【0055】
「芳香族基」という用語は、「アリール」、「アリール環」、「芳香環」、「アリール基」、および「芳香族基」と互換的に用いられる可能性がある。芳香族基には、フェニル、ナフチル、およびアントラシルのような炭素環芳香族基、イミダゾリル、チエニル、フラニル、ピリジル、ピリミジル、ピラニル、ピラゾリル、ピロリル、ピラジニル、チアゾール、オキサゾリル、およびテトラゾールのようなヘテロアリール基が含まれる。「ヘテロアリール基」という用語は、「ヘテロアリール」、「ヘテロアリール環」、「複素芳香環」、および「複素芳香族基」と互換的に用いられる可能性がある。本明細書において用いられるように、「ヘテロアリール」という用語は、窒素、硫黄、および酸素のような少なくとも一つのヘテロ原子を含み、環あたりヘテロ原子1、2、3または4個が含まれてもよい単環または多環の芳香族複素環を意味する。芳香族基にはまた、炭素環式芳香環またはヘテロアリール環が一つまたは複数の他のヘテロアリール環に縮合している縮合多環式芳香環系が含まれる。例には、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、インドリル、キノリニル、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンズイミダゾール、キノリニル、イソキノリニル、およびイソインドリルが含まれる。
【0056】
「アリーレン」という用語は、他の二つの結合によって分子の残りに接続しているアリール基を指す。例として、1,4-フェニレン基の構造を以下に示す:

【0057】
アリーレン基の置換基は、アリール基に関して以下に記述されるとおりである。
【0058】
非芳香族複素環は、窒素、酸素、または硫黄のような一つまたは複数のヘテロ原子を環に含む非芳香環である。環は、5員環、6員環、7員環、または8員環となりうる。例には、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、モルホリノ、チオモルホリノ、ピロリジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、およびチアゾリジニルが含まれる。
【0059】
脂肪族基(アルキレン基を含む)、非芳香族複素環基、ベンジルまたはアリール基(炭素環およびへテロアリール)上の適した置換基は、ビス(チオヒドラジド)アミドおよびタキサンの抗癌活性を実質的に妨害しない置換基である。置換基は、置換基を有さない化合物と比較して置換基を有する化合物において抗癌活性が約50%より大きく低減される場合に、抗癌活性を妨害する。適した置換基の例には、-Ra、-OH、-Br、-Cl、-I、-F、-ORa、-O-CORa、-CORa、-CN、-NO2、-COOH、-SO3H、-NH2、-NHRa、-N(RaRb)、-COORa、-CHO、-CONH2、-CONHRa、-CON(RaRb)、-NHCORa、-NRcCORa、-NHCONH2、-NHCONRaH、-NHCON(RaRb)、-NRcCONH2、-NRcCONRaH、-NRcCON(RaRb)、-C(=NH)-NH2、-C(=NH)-NHRa、-C(=NH)-N(RaRb)、-C(=NRc)-NH2、-C(=NRc)-NHRa、-C(=NRc)-N(RaRb)、-NH-C(=NH)-NH2、-NH-C(=NH)-NHRa、-NH-C(=NH)-N(RaRb)、-NH-C(=NRc)-NH2、-NH-C(=NRc)-NHRa、-NH-C(=NRc)-N(RaRb)、-NRdH-C(=NH)-NH2、-NRd-C(=NH)-NHRa、-NRd-C(=NH)-N(RaRb)、-NRd-C(=NRc)-NH2、-NRd-C(=NRc)-NHRa、-NRd-C(=NRc)-N(RaRb)、-NHNH2、-NHNHRa、-NHRaRb、-SO2NH2、-SO2NHRa、-SO2NRaRb、-CH=CHRa、-CH=CRaRb、-CRc=CRaRb、-CRc=CHRa、-CRc=CRaRb、-CCRa、-SH、-SRa、-S(O)Ra、-S(O)2Raが含まれる。 Ra〜Rdはそれぞれ、独立して、アルキル基、芳香族基、非芳香族複素環基、もしくは-N(RaRb)であり、または合わせて置換されてもよい非芳香族複素環基を形成する。 Ra〜Rdによって表されるアルキル、芳香族、および非芳香族複素環基、ならびに-N(RaRb)によって表される非芳香族複素環基はそれぞれ、任意で、および独立してR#によって表される一つまたは複数の基によって置換される。
【0060】
R#は、R+、-OR+、-O(ハロアルキル)、-SR+、-NO2、-CN、-NCS、-N(R+)2、-NHCO2R+、-NHC(O)R+、-NHNHC(O)R+、-NHC(O)N(R+)2、-NHNHC(O)N(R+)2、-NHNHCO2R+、-C(O)C(O)R+、-C(O)CH2C(O)R+、-CO2R+、-C(O)R+、-C(O)N(R+)2、-OC(O)R+、-OC(O)N(R+)2、-S(O)2R+、-SO2N(R+)2、-S(O)R+、-NHSO2N(R+)2、-NHSO2R+、-C(=S)N(R+)2、または-C(=NH)-N(R+)2である。
【0061】
R+は、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、ハロ、-CN、-NO2、アミン、アルキルアミン、またはジアルキルアミンによって置換されてもよい-H、C1-C4アルキル基、単環式ヘテロアリール基、非芳香族複素環基、またはフェニル基である。任意で、基-N(R+)2は、非芳香族複素環基であるが、ただし二級環アミンを含むR+および-N(R+)2によって表される非芳香族複素環基は、任意でアシル化またはアルキル化される。
【0062】
R1-R4によって表されるフェニル基を含む、フェニル基に関する好ましい置換基には、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、C1-C4ハロアルキル、C1-C4ハロアルコキシ、フェニル、ベンジル、ピリジル、-OH、-NH2、-F、-Cl、-Br、-I、-NO2、または-CNが含まれる。
【0063】
R1-R4によって表される脂肪族基を含む、脂肪族基の好ましい置換基には、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、C1-C4ハロアルキル、C1-C4ハロアルコキシ、フェニル、ベンジル、ピリジル、-OH、-NH2、-F、-Cl、-Br、-I、-NO2、または-CNが含まれる。
【0064】
R1およびR2によって表されるシクロアルキル基を含むシクロアルキル基に関する好ましい置換基は、メチル、またはエチル基のようなアルキル基である。
【0065】
同様に、本明細書において用いられるビス(チオヒドラジド)アミドおよびタキサンの薬学的に許容される塩も本発明に含まれる。これらの化合物は、適した有機または無機塩基と反応して、塩基付加塩を形成することができる、一つまたは複数の十分に酸性のプロトンを有しうる。塩基付加塩には、水酸化アンモニウム、水酸化アルカリ、または水酸化アルカリ金属、炭酸塩、重炭酸塩等のような無機塩基、およびアルコキシド、アルキルアミド、アルキルおよびアリールアミン等のような有機塩基に由来する塩が含まれる。本発明の塩を調製するために有用なそのような塩基には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸カリウム等が含まれる。
【0066】
たとえば、本明細書において用いられるビス(チオヒドラジド)アミドおよびタキサンの薬学的に許容される塩(たとえば、構造式I〜VI、化合物1〜18、およびTaxol(商標)類似体1〜22によって表される塩)は、一価の塩を形成するために、適した塩基の1等量と化合物との反応によって形成される塩(すなわち、化合物は、薬学的に許容される対陽イオン、たとえば一価の陽イオンに釣り合う一つの陰電荷を有する)であり、または二価の塩を形成するために適した塩基2等量との反応によって形成される塩(すなわち、化合物は、薬学的に許容される対陽イオン2個、たとえば薬学的に許容される一価陽イオン2個もしくは薬学的に許容される二価の陽イオン1個につりあう二電子陰電荷を有する)である。ビス(チオヒドラジドアミド)の二価の塩が好ましい。「薬学的に許容される」は、陽イオンが被験体の投与に適していることを意味する。例には、Li+、Na+、K+、Mg2+、Ca2+、およびNR4+が含まれ、それぞれのRは独立して水素、置換されてもよい脂肪族基(たとえば、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、またはアンモニウムアルキル基)、もしくは置換されてもよいアリール基であり、または二つのR基は合わせて、芳香環に任意で縮合される置換されてもよい非芳香族複素環を形成する。一般的に、薬学的に許容される陽イオンは、Li+、Na+、K+、NH3(C2H5OH)+、またはN(CH3)3(C2H5OH)+であり、より典型的に、塩は、二ナトリウム塩、または二カリウム塩、好ましくは二ナトリウム塩である。
【0067】
アミンのような十分に塩基性の基を有する、本明細書において用いられるビス(チオヒドラジド)アミドおよびタキサンは、有機または無機酸と反応して、酸付加塩を形成することができる。塩基性基を有する化合物から酸付加塩を形成するために一般的に用いられる酸は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸等のような無機酸、およびp-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p-ブロモフェニル-スルホン酸、カルボン酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、酢酸等のような有機酸である。そのような塩の例には、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオラート(propiolate)、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-ジオエート、ヘキシン-1,6-ジオエート、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、マンデル酸塩等が含まれる。
【0068】
本明細書において記述されるビス(チオヒドラジドアミド)化合物の特定の塩は、2004年6月23日に提出された同時係属中の同一出願人による米国特許出願第60/582,596号において記述される方法に従って調製されうる。
【0069】
中性のビス(チオヒドラジド)アミドは、いずれも「Synthesis of Taxol Enhancers」と題する米国特許第6,800,660号および第6,762,204号において記述される方法に従って、ならびに2003年1月15日に提出された同時係属中の同一出願人による米国特許出願第10/345,885号、および2004年1月15日に提出された第10/758,589号において記述される方法に従っても調製されうる。本出願において参照されるそれぞれの文書の全教示は、参照により明白に本明細書に組み入れられる。
【0070】
同様に、本発明において用いられるある特定の化合物は、異なる立体異性体(たとえば、ジアステレオマーおよびエナンチオマー)として得てもよく、および本発明には開示の化合物の全ての異性体型およびラセミ混合物、ならびに双方の純粋な異性体およびラセミ混合物を含むその混合物によって被験体を処置する方法が含まれると理解されるであろう。立体異性体はクロマトグラフィーのような任意の適した方法を用いて分離および単離されうる。
【0071】
本明細書において用いられるように、「被験体」は、哺乳動物、好ましくはヒトであるが、獣医師による処置を必要とする動物、たとえばコンパニオン動物(たとえば、イヌ、ネコ等)、農場動物(たとえば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ等)、および実験動物(たとえば、ラット、マウス、モルモット等)でありうる。
【0072】
本明細書において用いられるビス(チオヒドラジド)アミドおよびタキサンは、癌性障害を処置するために従来の任意の薬物投与法によって、たとえばカプセル剤、懸濁剤、または錠剤において経口で、または非経口投与によって被験体に投与されうる。非経口投与には、たとえば筋肉内、静脈内、皮下、または腹腔内注射のような、全身投与が含まれうる。特異的態様において、経口、非経口、または局所投与は、癌の処置のための好ましい投与経路である。好ましくは投与様式は静脈内である。
【0073】
ビス(チオヒドラジド)アミドまたはタキサン抗癌化合物の有効量は、抗癌効果が通常達成される量である。本方法における特定の化合物(たとえば、ビス(チオヒドラジド)アミドまたはタキサン抗癌化合物)に関して、「有効量」は、特定の化合物を単独で投与した場合と比較して、本方法において特定の化合物を他の化合物と同時投与した場合により大きい抗癌効果が達成される量である。本方法の化合物は、同じ薬学的組成物の一部として、または異なる薬学的組成物として、被験体に同時投与されうる。異なる薬学的組成物として投与する場合、本方法の化合物は、併用した化合物の増強効果が保持される限り、同時にまたは異なる時期に投与されうる。
【0074】
本明細書において用いられるように、「癌を有する被験体を処置する」または類似の用語には、以下の一つまたは複数を部分的または実質的に達成することが含まれる:癌の成長または転移を停止させる、癌の程度を低減させる(たとえば、腫瘍の大きさを低減させる、または罹患部位の数を低減させる)、癌の成長速度を阻害する、および癌に関連する臨床症状または指標(組織または血清成分など)を回復または改善すること。
【0075】
様々な態様において、癌には、ヒトの肉腫および癌腫、たとえば線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、頚癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫、網膜芽腫;白血病、たとえば急性リンパ球性白血病および急性骨髄性白血病(骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、および赤白血病)、慢性白血病(慢性骨髄性(顆粒球性)白血病および慢性リンパ球性白血病);ならびに真性赤血球増加症、リンパ腫(ホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、および重鎖病が含まれうる。
【0076】
いくつかの態様において、癌には白血病、たとえば急性および/または慢性白血病、たとえばリンパ球性白血病(たとえば、p388(マウス)細胞株によって例示されるように)、大顆粒リンパ球性白血病、およびリンパ芽球性白血病;T-細胞白血病、たとえばT細胞白血病(たとえば、CEM、Jurkat、およびHSB-2(急性)、YAC-1(マウス)細胞株によって例示されるように)、T-リンパ球性白血病、およびT-リンパ芽球性白血病;B細胞白血病(SB(急性)細胞株によって例示されるように)、およびBリンパ球性白血病;混合細胞白血病、たとえばBおよびT細胞白血病、ならびにBおよびTリンパ球性白血病;骨髄性白血病、たとえば顆粒球性白血病、骨髄球性白血病(たとえば、HL-60(前骨髄球)細胞株によって例示されるような)、および骨髄性白血病(たとえば、K562(慢性)細胞株によって例示されるような);好中球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病(たとえば、THP-1(急性)細胞株によって例示されるような);骨髄単球性白血病;ネーゲリ型骨髄性白血病;ならびに非リンパ急性白血病が含まれうる。白血病の他の例は、The Chemotherapy Sourcebook, Michael C. Perry Ed., Williams & Williams (1992)の第60章、およびHolland Frie Cancer Medicine 5th Ed., Bast et al. Eds., B.C. Decker Inc. (2000)の第36章に記述されている。先行参考文献の教示全体が、参照により本明細書に組み入れられる。
【0077】
ある特定の態様において、癌には、多発性骨髄腫、T-白血病(たとえば、JurkatおよびCEM細胞株によって例示されるように);B-白血病(たとえば、SB細胞株によって例示されるように);前骨髄球(たとえば、HL-60細胞株によって例示されるように);子宮肉腫(たとえばMES-SA細胞株によって例示されるように);単球性白血病(たとえば、THP-1(急性)細胞株によって例示されるように);およびリンパ腫(たとえば、U937細胞株によって例示されるように)のような非固形腫瘍が含まれうる。
【0078】
いくつかの態様において、癌には結腸癌、膵臓癌、黒色腫、腎癌、肉腫、乳癌、卵巣癌、肺癌、胃癌、膀胱癌、および頚癌が含まれうる。
【0079】
いくつかの態様において、本開示の方法は、その癌が「多剤耐性」となった被験体を処置するために特に有効となりうる。当初抗癌剤に反応した癌は、抗癌剤がもはや癌を有する被験体を処置するために有効ではなくなった場合に、抗癌剤に対して耐性となる。たとえば、多くの腫瘍が、大きさの減少または寛解に至ることによって、当初抗癌剤による処置に反応しうるが、結局薬物に対して耐性を生じる結果となる。薬剤耐性腫瘍は、寛解に至ったように思われる後での、抗癌剤の増加用量の投与にもかかわらず、その成長の再開および/または再発を特徴とする。二つまたはそれより多い抗癌剤に対して耐性を引き起こした癌は、「多剤耐性」であると言われる。たとえば、癌は3剤またはそれより多い抗癌剤に対して耐性となることは一般的であり、しばしば5剤、またはそれより多い抗癌剤に対して、および時に10剤またはそれより多い抗癌剤に対して耐性となる。
【0080】
本明細書において用いられるビス(チオヒドラジド)アミドおよびタキサンは、癌治療処置のための薬学的組成物の一部として、許容される薬学的担体または希釈剤と共に被験体に投与されうる。投与される化合物の製剤は、選択される投与経路(たとえば、溶液、乳剤、カプセル等)に応じて変化するであろう。適した薬学的に許容される担体は、化合物の生物活性を不当に阻害しない不活性成分を含んでもよい。薬学的に許容される担体は、生体適合性でなければならず、すなわち非毒性、非炎症性、非免疫原性でなければならず、被験体に投与した場合に他の望ましくない反応が全くない。Remington's Pharmaceutical Sciences、同書に記述されるような標準的な薬学的処方技術を用いることができる。非経口投与のための適した薬学的担体には、たとえば滅菌水、生理食塩液、静菌生理食塩液(約0.9% mg/mlベンジルアルコールを含む生理食塩液)、リン酸緩衝生理食塩液、ハンクス液、リンゲル-乳糖等が含まれる。組成物を封入するための方法(たとえば、硬ゼラチンまたはシクロデキストランのコーティングのような)は、当技術分野において公知である(Baker, et al, "Controlled Release of Biological Active Agents", John Wiley and Sons, 1986)。
【0081】
ある特定の態様において、本発明の一つまたは複数の化合物と、一つまたは複数の他の治療(たとえば、予防または治療物質)が、周期的に施される。周期的治療は、第一の治療(たとえば、第一の予防または治療物質)を一定期間施す段階の後に、第二の治療(たとえば第二の予防または治療物質)を一定期間施す段階の後に、第三の治療(たとえば、第三の予防または治療物質)を一定期間施す段階等を必然的に伴い、およびこの連続的投与、すなわち物質の一つに対する耐性の発生を低減させるため、物質の一つの副作用を回避または低減するため、および/または処置の有効性を改善するための、周期を繰り返す段階を必然的に伴う。
【0082】
様々な段階において、本明細書に記述の方法には、ビス(チオヒドラジド)アミド/タキサンの併用の前、または同時に、投与に対する急性の刺激またはアレルギー反応を低減させることができる物質、たとえばDecadron(登録商標)(デキサメタゾン、たとえば10 mgを静脈内)のような抗炎症剤、Benadryl(登録商標)(ジフェンヒドラミン、たとえば、50 mgを静脈内)のような抗ヒスタミン剤、Zantac(登録商標)(塩酸ラニチジン、たとえば50 mgを静脈内)のような制酸剤を投与する段階が含まれうる。
【0083】
実施例
実施例1:熱ショックタンパク質70(Hsp 70)の測定
血漿Hsp70は、サンドイッチELISAキット(Stressgen Bioreagents Victoria, British Columbia, CANADA)によって、施設内の改変プロトコールに従って測定した。簡単に説明すると、血漿標本におけるHsp70と、Hsp70標準物質の連続濃度を、その上に抗Hsp70抗体をコーティングした96ウェルプレート上で捕獲した。捕獲されたHsp70をビオチン化抗Hsp70抗体の後に、ユーロピウム結合ストレプトアビジンとインキュベートすることによって検出した。それぞれのインキュベーション後、未結合の材料を洗浄によって除去した。最後に抗体-Hsp70複合体を、ユーロピウムの時間分解型蛍光光度法によって測定した。Hsp70の濃度は検量線から計算した。
【0084】
実施例2:ナチュラルキラー細胞の細胞傷害活性の測定
以下の技法を用いて、被験体におけるNK細胞活性をアッセイした。技法は、その全教示が参照により本明細書に組み入れられる、Kantakamalakul W, Jaroenpool J, Pattanapanyasat K. A novel enhanced green fluorescent protein (EGFP)-K562 flow cytometric method for measuring natural killer (NK) cell cytotoxic activity. J Immunol Methods. 2003 Jan 15; 272:189-197から改作される。
【0085】
材料および方法:
ヒト赤白血病細胞株K562をAmerican Type Culture Collection(CCL-243, American Type Culture Collection, Manassas, VA)から得て、10%熱不活化仔ウシ胎児血清(Gibco)、2 mM L-グルタミン、100μg/mlストレプトマイシンおよび100 IU/mlペニシリンを添加したRPMI-1640培地(Cat#l 1875-093 Gibco Invitrogen Corp, Carlsbad, CA)において37℃、5%CO2で培養した。K562細胞に、緑色蛍光タンパク質(eGFP)をコードするレトロウイルスベクターを形質導入した。安定な細胞株を抗生物質G418によって選択した。約99.6%のG418耐性細胞が、切片(section)後eGFP陽性であった。
【0086】
被験体の末梢血単核球(PBMC)は、臨床試験施設によって調製され、ヘパリンナトリウム(製品番号:362753, Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ)を加えたBD Vacutainer Cell Preparation Tubeに入れられた。
【0087】
濃度1×106個/mlから開始したエフェクター細胞(患者のPBMC)の連続2倍希釈液800μlを四つの個々のポリスチレン12×75 mm試験管に加えた。対数成長期の標的細胞(K562/eGFP)を増殖培地(RPMI-1640)によって濃度1×105個/mlとなるように調節して、標的細胞100μlを試験管に加えて、エフェクター/標的(E/T)比80:1、40:1、20:1、10:1を提供した。エフェクター細胞単独および標的細胞単独を対照として用いた。試験管は全て、37℃、5%CO2において約3.5時間インキュベートした。濃度1 mg/mlのヨウ化プロピジウム(PI)10マイクロリットルを、エフェクターを含む各試験管および標的対照試験管に加えて、室温で15分間インキュベートした。
【0088】
細胞傷害活性は、FACScaliburフローサイトメーター(Becton Dickinson)によって分析した。前方および側方散乱(FSC/SSC)シグナルの直線増幅と共に、緑色および赤色蛍光のeGFPおよびPI放出の対数増幅を得た。獲得に関してゲートを設定せずに試料試験管あたり事象1000個を分析のために採取した。eGFP対PIに関する2-パラメータドットプロットのデータ分析を、CELL Quest(Becton Dickinson Biosciences)ソフトウェアを用いて行って、生存および死亡標的細胞を計数した。破片および死細胞は、前方光散乱の閾値を設定することによって除外した。
【0089】
実施例3:開示の併用治療はHsp70を誘導する
ビス(チオヒドラジド)アミド(化合物(1))およびタキサン(パクリタキセル)を、様々な進行固形腫瘍を有するヒト被験体への併用投与に関するフェーズI試験を行った。化合物(1)とパクリタキセルを3週間毎に3時間かけて静脈内に同時投与した。開始用量は、化合物(1)が44 ミリグラム/メートル2(mg/m2、または110マイクロモル/メートル2 (μmol/m2))およびパクリタキセルが135 mg/m2(158μmol/m2)であった。次に、パクリタキセルを175 g/m2(205μmol/m2)まで増加した後、化合物(1)を増加して、各用量レベルで患者3〜6人における第一サイクルの毒性に基づいて最大認容量を確立した。薬物動態(PK)試験は、サイクル1のあいだに、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)を用いて行い、血漿中の双方の化合物を測定した。熱ショックタンパク質70(Hsp70)を、処置の前後で血漿中で測定した。患者35人を、135 mg/m2(158μmol/m2)のパクリタキセルおよび44 mg/m2の化合物(1)、ならびに175 mg/m2(205μmol/m2)のパクリタキセルおよび44〜525 mg/m2(110〜1311μmol/m2)の化合物(1)を含む8用量レベルで評価した。表1は、mg/m2およびμmol/m2での#1〜#8の異なる8用量を示す。
【0090】
【表1】

【0091】
化合物(1)に特異的に帰することができる重篤な効果を認めなかった。パクリタキセルの用量規定毒性が、上位3用量レベルのそれぞれにおいて患者1人に起こり(好中球減少症、関節痛、および粘膜炎を伴う発熱性好中球減少症)、それによってコホートの拡大が起こった。化合物(1)は、パクリタキセルの用量によって影響を受けない線形のPKを示し、0.94±0.23時間の終末相半減期で血漿から急速に消失され、全身クリアランスは、28±8 リットル/時間/メートル2(L/h/m2)であった。その見かけの分布容積は全身の水分量(Vss 23±16 L/m2)と同等であった。パクリタキセルのPKは、クリアランスの減少、ならびにピーク血漿濃度およびVssの増加に向けての有意な傾向によって示されるように、終末相半減期に影響を及ぼすことなく化合物(1)の用量に中等度に依存するように思われた。これらの知見は、パクリタキセル肝代謝の競合的阻害と一貫する。より高い用量レベルでの毒性の増加は、パクリタキセルの全身曝露の中等度の増加と一貫した。血漿中のHsp70タンパク質の誘導は用量依存的であり、投与後約8時間〜約24時間をピークとした。
【0092】
図1A、1B、および1Cは、投与後1時間(図1A)、5時間(1B)、および8時間(図1C)での化合物(1)/パクリタキセル併用治療の投与に関連したHsp70血漿レベルの増加百分率を示す棒グラフである。Hsp70レベルの有意な増加が化合物(1)の用量88 mg/m2(220μmol/m2)で患者少なくとも1人に起こったが、Hsp70レベルはほぼ倍加して、増加百分率は約90%であった。化合物(1)の用量175 mg/m2(437μmol/m2)では、Hsp70濃度は患者2人において倍より多く増加し;化合物(1)の用量263 mg/m2(657 μmol/m2)では、Hsp70濃度は患者2人においてほぼ倍加して、第3の患者では250%より多く増加した;化合物(1)の用量350 mg/m2(874 μmol/m2)では、Hsp70濃度は全ての患者において200%より多く増加して、患者2人では500%も増加した;化合物(1)の用量438 mg/m2(1094 μmol/m2)では、Hsp70濃度は患者2人においてほぼ倍加して、患者1人では2005まで増加し、もう一人の患者では500%も増加した。
【0093】
進行までの時間は、患者の無作為化から、患者がRECIST(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors Group)基準に従って腫瘍の進行を有すると最初に記録されるまでの時間として測定されるであろう;その全教示が参照により本明細書に組み入れられる、Therasse P, Arbuck SG, Eisenhauer EA, Wanders J, Kaplan RS, Rubinstein L, et al. New guidelines to evaluate the response to treatment in solid tumors. J Natl Cancer Inst 2000;92:205-16を参照されたい。いかなる原因による死亡も進行したと見なされるであろう。
【0094】
進行までの時間は、無作為化試料と共に有効性試料に関して行うことができる。処置群を、ログランク検定を用いて比較して、進行までの時間に関するカプラン-マイヤー曲線を表すことができる。
【0095】
このように、ビ(チオ-ヒドラジド)アミドおよびタキサンの併用は、患者における血漿Hsp70レベルを劇的に増加させ、パクリタキセルの用量175 mg/m2(205μmol/m2)と化合物(1)の88〜438 mg/m2(220〜1094 μmol/m2)の用量との併用を行った患者では有意に増加した。その上、併用は認容性が良好であり、有害事象はパクリタキセル単独に関して予測される事象と一貫した。
【0096】
実施例4:2段階フェーズ2試験は、開示の併用治療が進行転移性黒色腫の処置にとって有効であることを示す。
進行転移性黒色腫を有する患者における化合物(1)とパクリタキセルに関する以下の試験は、化合物(1)とパクリタキセルの併用投与によって用量関連Hsp70誘導が起こったという上記のフェーズI試験の結果によって示された生物活性に基づいて開始した。
【0097】
試験には、段階1の毎週投与スケジュールの初回安全性評価が含まれる。化合物(1)106 mg/m2(265μmol/m2)とパクリタキセル80 mg/m2(94μmol/m2)を、4週間の期間のうち、3週間のあいだ週1回投与した。次に、化合物(1)の用量を、213 mg/m2(532μmol/m2)に増加して、パクリタキセル80 mg/m2(94μmol/m2)と併用した。より高い認容用量レベルが全体で患者20人に拡大された(段階1)。
【0098】
全体で患者7人を初回の安全性評価において処置して、低用量レベルでは3人、高用量レベルで4人を処置した。いずれの群にも容量制限毒性が認められなかったことから、より高容量を関心対象用量として選択して、さらなる患者を登録して、段階1を完了した。認められた有害事象は、パクリタキセルの化学療法投与に関して予測されたとおりであった。評価可能な患者20人中11人が55%NPRに関して3ヶ月で安定であった。
【0099】
7人またはそれより多い患者が安定な疾患の反応またはそれよりよい反応を有すれば、または少なくとも2人の患者が、部分反応またはそれよりよい反応を有する場合、試験は段階2まで継続されるであろう。毎週投与スケジュールが予めヒトにおいて試験されていなかったことから、登録した最初の患者6人に関して安全性の査定を行った。一次エンドポイントは、3ヶ月での非進行率(NPR)および反応率である。薬物動態パラメータには、投与前および投与後の血液中のNK細胞活性、ならびに可能であれば腫瘍の生検が含まれる。
【0100】
表2は、異なる被験体に関して2回目の投与後7日目にアッセイした場合の抗癌有効性およびNK細胞活性結果の有意な予備的な結果を示す。エフェクター/標的データは、被験体のPBMC細胞対NKアッセイ標的細胞の比を示す。投与前および投与後の欄の値は、パクリタキセルおよび化合物(1)の投与前に溶解した腫瘍細胞の百分率を示す。最善の反応は、患者の腫瘍の評価を示し;SDはベースラインと比較して長径の合計の20%未満の増加および30%未満の減少を示し;およびPD=ベースラインと比較して長径の合計の少なくとも20%増加である。NK活性は、投与前後のNK活性の変化を示す。
【0101】
表2は、試験を終了した患者(#12〜#20、#22)に関して患者3人がベースラインと比較して長径の合計の20%未満の増加および30%未満の減少を有したが、患者7人は、ベースラインと比較して長径の合計の少なくとも20%増加を有したことを示している。NK細胞活性に関して、当初の患者の4人が、投与前および投与後処置のあいだで統計学的に有意な増加を示した。
【0102】
【表2】

【0103】
併用治療は、毎週のスケジュールで良好に認容された。無作為化部分での登録は、パクリタキセルと併用した化合物(1)の活性対パクリタキセル単独の活性を査定するであろう。
【0104】
段階2は、薬剤の併用をパクリタキセル単独と比較する無作為化2-アーム試験となるように計画する。段階2まで継続するための基準は、2ヶ月での非進行率(NPR)が>=50%である。全体で患者78人が2:1(併用:対照)となるように無作為化される。一次エンドポイントは、進行までの期間であり;二次エンドポイントは進行率、生存、およびクオリティオブライフである。薬物動態パラメータには、血液中のNK細胞活性の投与前および投与後の測定が含まれ、可能であれば腫瘍の生検が含まれるであろう。
【0105】
実施例5:フェーズ2試験は、開示の併用治療が軟部組織肉腫を処置するために有効であることを示す。
軟部組織肉腫を有する患者における化合物(1)とパクリタキセルに関する以下の試験は、化合物(1)とパクリタキセルとの併用投与によって用量関連Hsp70誘導が起こる、という上記のフェーズI試験の結果によって示された生物活性に基づいて開始された。
【0106】
試験は、2段階設計であり、第一段階において患者30人を登録して、ある特定の継続基準を満たす場合、患者50人を追加して全体で80人とする。主要な参加基準は、最近進行している証拠を有する、消化管間質腫瘍(GIST)以外の難治性または再発性軟部組織肉腫である。患者を、4週間毎のサイクルの3週間のあいだ週に1回、化合物(1)213 mg/m2およびパクリタキセル80 mg/m2によって処置した。たとえば、化合物を28日サイクルの1、8、および15日目に4週間のあいだ3週間、1時間のIV注入として共に投与する。段階1の完全な増員まで患者30人が登録している。
【0107】
本明細書において用いられるように、「軟部組織肉腫」(STS)は、体の様々な部分を支持する、接続する、および取り巻く、筋肉、脂肪、腱、神経、および血管、リンパ節等のような軟部組織において始まる癌である。そのようなSTSは、典型的に約半数が脚において起こるが、体のいかなる場所にも起こりうる。様々な態様において、STSには、脂肪肉腫、線維肉腫、悪性線維様組織球腫、平滑筋肉腫、神経線維肉腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫等から選択される一つまたは複数の癌が含まれうる。
【0108】
表3は、異なる被験体に関して2回目の投与後7日目にアッセイした場合の抗癌有効性およびNK細胞活性結果の有意な予備的な結果を示す。エフェクター/標的データは、被験体のPBMC細胞対NKアッセイ標的細胞の比を示す。投与前および投与後の欄の値は、パクリタキセルおよび化合物(1)の投与前に溶解した腫瘍細胞の百分率を示す。最善の反応は、患者の腫瘍の評価を示し;PR=ベースラインと比較して長径の合計における少なくとも30%減少;SDはベースラインと比較して長径の合計の20%未満の増加および30%未満の減少を示し;およびPD=ベースラインと比較して長径の合計の少なくとも20%増加である。NK活性は、投与前後のNK活性の変化を示す。
【0109】
表3は、試験を終了した患者(#23〜#29、#31〜33)に関して患者5人がベースラインと比較して長径の合計の20%未満の増加および30%未満の減少を有したが、患者5人は、ベースラインと比較して長径の合計の少なくとも20%増加を有したことを示している。NK細胞活性に関して、当初の患者の7人が、投与前および投与後処置のあいだで統計学的に有意な増加を示したまたは変化がなかったのに対し、投与前および投与後処置の間で減少統計学的に有意な増加を示したのは当初の患者の4人に過ぎなかった。
【0110】
【表3】

【0111】
患者は現在、3ヶ月を通して評価中である。認められた有害事象は、類似のスケジュールでのパクリタキセル投与に関して典型的であった。NK活性の査定は進行中である。週1回パクリタキセルスケジュールに化合物(1)を加えることは、良好に認容された。段階1の増員は完了し、患者は現在、試験継続決定のために評価中である。
【0112】
本発明は、その好ましい態様を参照して特に示し、記述してきたが、形および詳細に様々な変更を行ってもよく、それらも添付の特許請求の範囲に含まれる本発明の範囲に含まれることは当業者によって理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】図1A、1B、および1Cは、投与後1時間(図1A)、5時間(1B)、および8時間(1C)での化合物(1)/パクリタキセル併用治療の投与に関連したHsp70血漿レベルの増加百分率を示す棒グラフである。
【図1A】

【図1B】

【図1C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
約243 μmol/m2〜315μmol/m2の量のタキサンと、約1473μmol/m2〜約1722 μmol/m2の量の、以下の構造式によって表されるビス(チオヒドラジドアミド)またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒化合物を、被験体に3〜5週間同時投与する段階を含む、癌を有する被験体を処置する方法:

式中、
Yは共有結合であるか、もしくは置換されてもよい直鎖ヒドロカルビル基であるか、またはYはそれが結合する双方の>C=Z基と合わせて、置換されてもよい芳香族基であり;
R1-R4は独立して-H、置換されてもよい脂肪族基、置換されてもよいアリール基であるか、またはR1およびR3はそれらが結合する炭素および窒素原子と合わせて、および/またはR2およびR4はそれらが結合する炭素および窒素原子と合わせて、芳香環に任意で縮合した非芳香族複素環を形成し;
R7-R8は、独立して-H、置換されてもよい脂肪族基、または置換されてもよいアリール基であり;ならびに
ZはOまたはSである。
【請求項2】
被験体がヒトである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
癌が転移性黒色腫、または消化管間質腫瘍以外の軟部組織肉腫である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
タキサンおよびビス(チオ-ヒドラジド)アミドがそれぞれ、4週間の期間の3週間のあいだに等しい用量で週1回3回投与される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
癌が寛解するまで4週間の投与期間を繰り返す段階をさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
タキサンが、約94μmol/m2の用量を週に1回静脈内投与されるパクリタキセルである、請求項4記載の方法。
【請求項7】
ビス(チオヒドラジドアミド)が、約500μmol/m2の〜約562μmol/m2の用量で週に1回静脈内投与される、請求項4記載の方法。
【請求項8】
ビス(チオヒドラジドアミド)が、約532μmol/m2の用量で週に1回静脈内投与される、請求項5記載の方法。
【請求項9】
被験体が転移性黒色腫のために処置される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
被験体が消化管間質腫瘍以外の軟部組織肉腫のために処置される、請求項8記載の方法。
【請求項11】
ビス(チオヒドラジドアミド)が、以下の構造式によって表されるか、またはその二ナトリウム塩もしくは二カリウム塩である、請求項1記載の方法:

式中、
R1およびR2は、いずれもフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5およびR6は、いずれも-Hであり;
R1およびR2は、いずれもフェニルであり、R3およびR4は、いずれもエチルであり、R5およびR6は、いずれも-Hであり;
R1およびR2は、いずれも4-シアノフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5はメチルであり、R6は-Hであり;
R1およびR2は、いずれも4-メトキシフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5およびR6は、いずれも-Hであり;
R1およびR2は、いずれもフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5はメチルであり、R6は-Hであり;
R1およびR2は、いずれもフェニルであり、R3およびR4は、いずれもエチルであり、R5はメチルであり、R6は-Hであり;
R1およびR2は、いずれも4-シアノフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5およびR6は、いずれも-Hであり;
R1およびR2は、いずれも2,5-ジメトキシフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5およびR6は、いずれも-Hであり;
R1およびR2は、いずれも2,5-ジメトキシフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5はメチルであり、R6は-Hであり;
R1およびR2は、いずれも3-シアノフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5およびR6は、いずれも-Hであり;
R1およびR2は、いずれも3-フルオロフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5およびR6は、いずれも-Hであり;
R1およびR2は、いずれも4-クロロフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5はメチルであり、R6は-Hであり;
R1およびR2は、いずれも2-ジメトキシフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5およびR6は、いずれも-Hであり;
R1およびR2は、いずれも3-メトキシフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5およびR6は、いずれも-Hであり;
R1およびR2は、いずれも2,3-ジメトキシフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5およびR6は、いずれも-Hであり;
R1およびR2は、いずれも2,3-ジメトキシフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5はメチルであり、R6は-Hであり;
R1およびR2は、いずれも2,5-ジフルオロフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5およびR6は、いずれも-Hであり;
R1およびR2は、いずれも2,5-ジフルオロフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5はメチルであり、R6は-Hであり;
R1およびR2は、いずれも2,5-ジクロロフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5およびR6は、いずれも-Hであり;
R1およびR2は、いずれも2,5-ジメチルフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5およびR6は、いずれも-Hであり;
R1およびR2は、いずれも2,5-ジメトキシフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5およびR6は、いずれも-Hであり;
R1およびR2は、いずれもフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5およびR6は、いずれも-Hであり;
R1およびR2は、いずれも2,5-ジメトキシフェニルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5はメチルであり、R6は-Hであり;
R1およびR2は、いずれもシクロプロピルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5およびR6は、いずれも-Hであり;
R1およびR2は、いずれもシクロプロピルであり、R3およびR4は、いずれもエチルであり、R5およびR6は、いずれも-Hであり;
R1およびR2は、いずれもシクロプロピルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5はメチルであり、R6は-Hであり;
R1およびR2は、いずれも1-メチルシクロプロピルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5およびR6は、いずれも-Hであり;
R1およびR2は、いずれも1-メチルシクロプロピルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5はメチルであり、およびR6は-Hであり;
R1およびR2は、いずれも1-メチルシクロプロピルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5はエチルであり、およびR6は-Hであり;
R1およびR2は、いずれも1-メチルシクロプロピルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5はn-プロピルであり、およびR6は-Hであり;
R1およびR2は、いずれも1-メチルシクロプロピルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5およびR6は、いずれもメチルであり;
R1およびR2は、いずれも1-メチルシクロプロピルであり、R3およびR4は、いずれもエチルであり、R5およびR6は、いずれも-Hであり;
R1およびR2は、いずれも1-メチルシクロプロピルであり、R3はメチルであり、およびR4はエチルであり、R5およびR6は、いずれも-Hであり;
R1およびR2は、いずれも2-メチルシクロプロピルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5およびR6は、いずれも-Hであり;
R1およびR2は、いずれも2-フェニルシクロプロピルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5およびR6は、いずれも-Hであり;
R1およびR2は、いずれも1-フェニルシクロプロピルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5およびR6は、いずれも-Hであり;
R1およびR2は、いずれもシクロブチルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5およびR6は、いずれも-Hであり;
R1およびR2は、いずれもシクロペンチルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5およびR6は、いずれも-Hであり;
R1およびR2は、いずれもシクロヘキシルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5およびR6は、いずれも-Hであり;
R1およびR2は、いずれもシクロヘキシルであり、R3およびR4は、いずれもフェニルであり、R5およびR6は、いずれも-Hであり;
R1およびR2は、いずれもメチルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5およびR6は、いずれも-Hであり;
R1およびR2は、いずれもメチルであり、R3およびR4は、いずれもt-ブチルであり、R5およびR6は、いずれも-Hであり;
R1およびR2は、いずれもメチルであり、R3およびR4は、いずれもフェニルであり、R5およびR6は、いずれも-Hであり;
R1およびR2は、いずれもt-ブチルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5およびR6は、いずれも-Hであり;
R1およびR2は、エチルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5およびR6は、いずれも-Hであり;または
R1およびR2は、いずれもn-プロピルであり、R3およびR4は、いずれもメチルであり、R5およびR6は、いずれも-Hである。
【請求項12】
ビス(チオヒドラジドアミド)が、以下、またはその二ナトリウム塩、もしくは二カリウム塩である、請求項1記載の方法:

【請求項13】
ビス(チオヒドラジドアミド)が、以下、またはその二ナトリウム塩、もしくは二カリウム塩である、請求項1記載の方法:

【請求項14】
約94μmol/m2の量のパクリタキセルと、約532μmol/m2の量の、以下の構造式によって表されるビス(チオヒドラジドアミド)またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒化合物を、4週間の期間において等しい用量で週1回3回、被験体に静脈内投与する段階を含む、癌を有するヒト被験体を処置する方法であって、
癌が転移性黒色腫であるか、または消化管間質腫瘍以外の軟部組織肉腫である、方法:

【請求項15】
被験体が転移性黒色腫に関して処置される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
a)約205μmol/m2の量のタキサン;および
b)約220μmol/m2〜約1310μmol/m2の量の、以下の構造式によって表されるビス(チオヒドラジドアミド)またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒化合物
を独立してまたは共に、3週間毎に1回、被験体に投与する段階を含む、癌を有する被験体を処置する方法:

式中、
Yは共有結合であるか、もしくは置換されてもよい直鎖ヒドロカルビル基であるか、またはYはそれが結合する双方の>C=Z基と合わせて、置換されてもよい芳香族基であり;
R1-R4は独立して-H、置換されてもよい脂肪族基、置換されてもよいアリール基であるか、またはR1およびR3はそれらが結合する炭素および窒素原子と合わせて、および/またはR2およびR4はそれらが結合する炭素および窒素原子と合わせて、芳香環に任意で縮合した非芳香族複素環を形成し;
R7-R8は、独立して-H、置換されてもよい脂肪族基、または置換されてもよいアリール基であり;ならびに
ZはOまたはSである。
【請求項17】
被験体がヒトである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
癌が転移性黒色腫であるか、または消化管間質腫瘍以外の軟部組織肉腫である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
タキサンが、約205μmol/m2の量を静脈内投与されるパクリタキセルである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
ビス(チオヒドラジドアミド)が、約220μmol/m2〜約1093μmol/m2で静脈内投与される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
ビス(チオヒドラジドアミド)が、約749μmol/m2〜約999μmol/m2の量である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
ビス(チオヒドラジドアミド)が、約811μmol/m2〜約936μmol/m2の量である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
a)約205μmol/m2の量のパクリタキセル;および
b)約874μmol/m2の量の、以下の構造式によって表されるビス(チオヒドラジドアミド)またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒化合物を、3週間ごとに単回投与で被験体に静脈内投与する段階を含む、癌を有する被験体を処置する方法であって、
癌が転移性黒色腫であるか、または消化管間質腫瘍以外の軟部組織肉腫である、方法:

【請求項24】
薬学的に許容される担体または希釈剤;および
モル比約5.5:1〜約5.9:1のビス(チオヒドラジドアミド)対タキサン
を含む、薬学的組成物であって、
ビス(チオヒドラジドアミド)が以下の構造式によって表されるか、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒化合物である、薬学的組成物:

式中、
Yは共有結合であるか、もしくは置換されてもよい直鎖ヒドロカルビル基であるか、またはYはそれが結合する双方の>C=Z基と合わせて、置換されてもよい芳香族基であり;
R1-R4は独立して-H、置換されてもよい脂肪族基、置換されてもよいアリール基であるか、またはR1およびR3はそれらが結合する炭素および窒素原子と合わせて、および/またはR2およびR4は、それらが結合する炭素および窒素原子と合わせて、芳香環に任意で縮合した非芳香族複素環を形成し;
R7-R8は、独立して-H、置換されてもよい脂肪族基、または置換されてもよいアリール基であり;ならびに
ZはOまたはSである。
【請求項25】
ビス(チオヒドラジドアミド)対タキサンのモル比が約5.6:1〜約5.8:1であって、タキサンがパクリタキセルまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒化合物である、請求項24記載の薬学的組成物。
【請求項26】
ビス(チオヒドラジドアミド)が以下の構造式によって表される化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒化合物であり、パクリタキセルに対するモル比が約5.7:1である、請求項25記載の薬学的組成物:

【請求項27】
薬学的に許容される担体または希釈剤;および
モル比約2.6:1〜3.0:1のビス(チオヒドラジドアミド)対タキサン
を含む、薬学的組成物であって、
ビス(チオヒドラジドアミド)が以下の構造式によって表されるか、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒化合物である、薬学的組成物:

式中、
Yは共有結合であるか、もしくは置換されてもよい直鎖ヒドロカルビル基であり、またはYはそれが結合する双方の>C=Z基と合わせて、置換されてもよい芳香族基であり;
R1-R4は独立して-H、置換されてもよい脂肪族基、置換されてもよいアリール基であるか、またはR1およびR3はそれらが結合する炭素および窒素原子と合わせて、および/またはR2およびR4は、それらが結合する炭素および窒素原子と合わせて、芳香環に任意で縮合した非芳香族複素環を形成し;
R7-R8は、独立して-H、置換されてもよい脂肪族基、または置換されてもよいアリール基であり;ならびに
ZはOまたはSである。
【請求項28】
ビス(チオヒドラジドアミド)対タキサンのモル比が約2.7:1〜約2.9:1であって、タキサンがパクリタキセルまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒化合物である、請求項27記載の薬学的組成物。
【請求項29】
ビス(チオヒドラジドアミド)が以下の構造式によって表される化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒化合物であり、パクリタキセルに対するモル比が約2.8:1である、請求項28記載の薬学的組成物:

【請求項30】
薬学的に許容される担体または希釈剤;および
モル比約4.1:1〜4.5:1のビス(チオヒドラジドアミド)対タキサン
を含む、薬学的組成物であって、
ビス(チオヒドラジドアミド)が以下の構造式によって表されるか、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒化合物である、薬学的組成物:

式中、
Yは共有結合であるか、もしくは置換されてもよい直鎖ヒドロカルビル基であるか、またはYはそれが結合する双方の>C=Z基と合わせて、置換されてもよい芳香族基であり;
R1-R4は独立して-H、置換されてもよい脂肪族基、置換されてもよいアリール基であるか、またはR1およびR3はそれらが結合する炭素および窒素原子と合わせて、および/またはR2およびR4は、それらが結合する炭素および窒素原子と合わせて、芳香環に任意で縮合した非芳香族複素環を形成し;
R7-R8は、独立して-H、置換されてもよい脂肪族基、または置換されてもよいアリール基であり;ならびに
ZはOまたはSである。
【請求項31】
ビス(チオヒドラジドアミド)対タキサンのモル比が約4.2:1〜約4.4:1であって、タキサンがパクリタキセルまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒化合物である、請求項24記載の薬学的組成物。
【請求項32】
ビス(チオヒドラジドアミド)が以下の構造式によって表される化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒化合物であり、パクリタキセルに対するモル比が約4.3:1である、請求項25記載の薬学的組成物:


【公表番号】特表2008−536875(P2008−536875A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−506821(P2008−506821)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/014531
【国際公開番号】WO2006/113695
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(504151848)シンタ ファーマシューティカルズ コーポレーション (72)
【Fターム(参考)】