説明

ビス(トリメチルシリルオキシ)シリルアルキルグリセロールメタクリレートの製造方法

【課題】 SiAGMA型化合物を製造するための改善された方法、とりわけ、二官能価副生物の形成を最小限に抑える方法を提供すること。
【解決手段】(a)置換エポキシドを含有する第1の反応混合物を、少なくとも1種のエポキシド開環触媒および少なくとも1種のアクリル酸と反応させて、置換グリセロールアクリレート約60〜約85モル%と該置換エポキシドとを含有する第1の反応生成物を形成する工程と、(b)前記第1の反応生成物を求核化合物で処理して、前記置換エポキシドを実質的に含有せず、かつ、前記置換グリセロールアクリレートと該置換エポキシドの求核誘導体とを含有する第2の反応生成物を形成する工程と、(c)前記第2の反応生成物を処理して、前記求核誘導体を除去し、二官能価不純物を約5重量%未満で含有する置換グリセロールアクリレートを生成する工程と、を具備する、方法。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、シリコーンモノマー、とりわけビス(トリメチルシリルオキシ)シリルアルキルグリセロールメタクリレート(bis(trimethylsilyloxy)silylalkyl glycerol methacrylates)の製造方法に関する。
【0002】
〔発明の背景〕
シリコーンを含有する種々のモノマーは、眼科用用具(とりわけ、酸素透過性が改善されたソフトコンタクトレンズ)のような医療用具を製造する場合の出発材料として有用であることが分かっている。適切なモノマーの1つのタイプには、トリスおよびビス(トリメチルシリルオキシ)シリルアルキルグリセロールメタクリレート(SiAGMA)が包含される。SiAGMAを製造するための1つの方法には、SiAGMAのエポキシドを、メタクリル酸、およびメタクリル酸のナトリウム塩、カリウム塩またはリチウム塩、およびヒドロキノンモノメチルエーテルのような抑制剤と反応させることが包含される。反応条件には、約15時間の間加熱することが包含され、約75〜95%の純度を有するSiAGMAと、ジメタクリレート(dimethacrylated)副生物を含有する多数種の副生物とが生成される。コンタクトレンズのような眼科用用具を製造するために使用されるモノマー混合物の中に、ジメタクリレート副生物が含有される場合、該ジメタクリレート副生物は、架橋剤として作用することがある。該ジメタクリレート副生物は、少量でも、結果として得られる用具の弾性率(modulus)を変えることがある。したがって、これら二官能価副生物の濃度は、厳しく制御するか、または最小限に抑える必要がある。一般には、扱い難いシリカゲルカラムクロマトグラフィ工程によって、それら二官能価副生物を除去することが行われている。
【0003】
このように、当該技術分野においては、SiAGMA型化合物を製造するための改善された方法、とりわけ、二官能価副生物の形成を最小限に抑える方法の必要性が存続している。
【0004】
〔発明の概要〕
本発明は、
(a)置換エポキシドを含有する第1の反応混合物を、少なくとも1種のエポキシド開環触媒および少なくとも1種のアクリル酸と反応させて、置換グリセロールアクリレート約50〜約85モル%と該置換エポキシドとを含有する第1の反応生成物を形成する工程と、
(b)前記第1の生成混合物を求核化合物で処理して、前記置換エポキシドを実質的に含有せず、かつ、前記置換グリセロールアクリレートと該置換エポキシドの求核誘導体とを含有する第2の反応生成物を形成する工程と、
(c)前記第2の反応生成物を処理して、前記求核誘導体を除去し、二官能価不純物を約5重量%未満で含有する置換グリセロールアクリレートを生成する工程と
を具備する、方法に関する。
【0005】
〔発明の記述〕
適切な置換エポキシドには、下の式I:
【化1】

(式中、R1は、求核化合物と反応しないいずれかの置換基である)の置換エポキシドが包含される。好ましいエポキシドには、下の式II:
【化2】

(式中、R2は、少なくとも1種のSi含有成分、好ましくは少なくとも1種のシリコーンで置換されたC1〜C12アルキル基である)で示されるエポキシドが包含される。適切なSi含有化合物には、式III:
【化3】

[式中、A1およびA2は、同一であるかまたは相違し、かつ、低級アルキル基から選ばれ、また、Bは、構造:
【化4】

(式中、R3、R4およびR5は、同一であるかまたは相違し、かつ、低級アルキル置換基、フェニル置換基、ベンジル置換基、およびトリアルキルシロキシ置換基を包含する群から選ばれる)の基である]の化合物が包含される。本明細書で使用する用語「低級アルキル置換基(lower alkyl)」は、1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基をいう。適切なエポキシドの具体的な諸例には、式IV:
【化5】

(式中、R6およびR7は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基から独立的に選ばれ、nは1〜12の間の整数であり、xは0〜3の間の整数である)の化合物が含有される。更にいっそう具体的には、該エポキシドは、(3−グリシドキシプロピル)ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン((3-glycidoxypropyl)bis(trimethylsiloxy)methylsilane)であることがある。
【0006】
エポキシドは、過酸化物によるアルケンの酸化、トランスハロヒドリン(trans halohydrin)成分が存在する分子内SN2反応による形成、求核酸化剤(例えば、過酸化水素の塩基性溶液)を、α,β-不飽和カルボニル化合物に添加すること、および、スルホニウムイリド(sulfonium ylide)の、カルボニル化合物との反応、を含む多くの方法で形成することができるが、それら方法に限定されない。代替的に、Si含有基で置換されたエポキシドは、アリル官能価を有する既に形成されたエポキシドのハイドロシリレーション(hydrosilylation)を行うことによって調製することができる。そのような諸方法は、当業者には周知であり、エポキシドとSi含有基で置換されたエポキシドとの合成経路に関するこのリストは、決して、本発明の範囲をこれらの製法に限定するものではない。
【0007】
本発明の方法によると、前記エポキシドは、少なくとも1種のアクリル酸および少なくとも1種のエポキシド開環触媒と反応させる。適切なアクリル酸は、1〜4個の間の炭素原子を含有する。前記酸は、メタクリル酸であるのが好ましい。該エポキシドと該アクリル酸との間の反応は等モルである場合があるが、該反応は、過剰のアクリル酸を用いて行うのが好都合である場合がある。したがって、該アクリル酸は、エポキシド1モル当りアクリル酸約1〜約3モルの量で用いることができる。
【0008】
本発明の第1の工程で使用するエポキシド開環触媒は、エポキシド環を開環するのに当該技術分野で知られている触媒であれば如何なるものでもよい。適切なエポキシド開環触媒には、ルイス酸、ルイス塩基、ブレンステッド酸およびポルフィリン錯体、およびそれらの組合せ等が包含される。エポキシド開環触媒の好ましい種類には、アクリル酸のアルカリ金属塩が包含される。適切なアルカリ金属には、LiおよびKおよびNaが包含され、また、適切なアクリル酸は、1〜4個の間の炭素原子を含有する。前記アルカリ金属塩は、メタクリル酸のLi塩またはK塩であるのが好ましい。該エポキシド開環触媒は、前記反応に触媒作用を及ぼすのに十分な量で、好ましくは該エポキシドを基準にして約0.5当量以下の量で添加する。
【0009】
抑制剤もまた、前記反応物と一緒に含有させることができる。重合速度を低下させることのできる抑制剤であれば如何なるものも使用することができる。適切な抑制剤には、ヒドロキノンモノメチルエーテル(hydroquinone monomethyl ether)、ブチル化ヒドロキシトルエン(butylated hydroxytoluene)、およびそれらの混合物等が包含される。該抑制剤は、約10,000ppm以下の量で、好ましくは約1〜約1,000ppmの間の量で添加することができる。
【0010】
前記第1の反応は、約50〜85%、好ましくは約70〜85%の間の、置換エポキシドの百分率転化率を与えるのに十分な時間および温度で行う。適切な温度には、高温、好ましくは約60℃より高い温度、いっそう好ましくは約80℃〜約110℃の間の温度が包含される。適切な反応時間には、約8時間以下、好ましくは約6時間以下、いっそう好ましくは約2時間〜約6時間の間の時間が包含される。当業者は、その温度と反応時間とは反比例し、かつ、反応温度がより高ければ反応時間を短くすることができ、逆もまた同様であることを認識するであろう。更に、例えば、触媒濃度を低下させることのような、反応速度を遅くする他の反応条件もまた、本発明の方法において使用することができる。
【0011】
前記第1の反応工程からの生成物混合物(第1の反応生成物)は、残存しているあらゆる置換エポキシドと選択的に反応する求核化合物と反応させる。更に、適切な求核原子は、選択される精製工程を含む処理によって、第2の反応生成物から直ちに除去されることが望ましい。適切な求核化合物には、第一級アミン含有化合物、第二級アミン含有化合物および第三級アミン含有化合物が包含されるが、第一級アミン含有化合物および第二級アミン含有化合物が好ましい。求核化合物の具体的な諸例には、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、フタルイミドおよびそれらの混合物が包含される。該求核化合物は、第1の反応工程の後に残存する全ての未反応エポキシドとほぼ等しいモルである量で使用する。
【0012】
第2の反応工程は、選択された求核化合物の沸点より低い温度で行うことができ、しかも、周囲温度または高温で容易に行われる。適切な温度には、約25℃〜約90℃の間の温度が包含される。第2の反応工程のための反応圧力は、決定的に重要という訳ではなく、周囲圧力を使用することができる。当業者は、その圧力と反応時間とは反比例し、かつ、反応圧力がより高ければ反応時間を短くすることができ、逆もまた同様であることを認識するであろう。第2の反応工程は、実質的に全てのエポキシドを、前記置換エポキシドの求核誘導体に転化するのに十分な時間の間行うことが好ましい。適切な第2の反応時間には、約16時間以下の時間、好ましくは約4時間〜約16時間の間の時間が包含される。
【0013】
第2の反応工程による生成物は、酸抽出、イオン交換樹脂を用いた処理、イオン交換塔を用いた処理、およびそれらの組合せ等を含む種々の方法によって、精製して、求核誘導体を除去することができる。これらの精製方法のための一般に用いられる条件は、当該技術分野において知られている。
【0014】
前記反応を、以前用いられていた反応時間よりも短い反応時間の間行い、次いで、前記第1の反応混合物を求核化合物で処理することによって、二官能価副生物に関して純度が改善されたSiAGMAを生成することができることが見出だされた。とりわけ、本発明の方法によって生成されるSiAGMA化合物は、諸二官能価成分を有しており、これらの二官能価成分は、ジメタクリレート約5重量%未満の量で架橋剤として作用する。
【0015】
本発明を例示するために、次の諸実施例を含める。これらの実施例は、本発明を制限する訳ではない。それらは、本発明の実施方法を提案することを意図しているに過ぎない。コンタクトレンズに精通している者だけでなく他の専門家も、本発明を実施する他の諸方法を見出だすかもしれない。しかし、それらの方法は、本発明の範囲内に入るものと見なされる。
【0016】
次の省略形は、以下の諸実施例において用いる。
SiMAA2:
ビス(トリメチルシリルオキシ)メチルシリルプロピルグリセロールメタクリレート(bis(trimethylsilyloxy)methylsilylpropylglycerol methacrylate))(ケミアブ・インデックス名は、2−プロペン酸,2−メチル,2−ヒドロキシ−3−[3−[1,3,3,3−テトラメチル−1−[(トリメチルシリル)オキシ]ジシロキサニル]プロポキシ]プロピルエステル(2-propenoic acid,2-methyl,2-hydroxy-3-[3-[1,3,3,3-tetramethyl-1-[(trimethylsilyl)oxy]disiloxanyl]propoxy]propyl ester)である)
MEHQ:
ヒドロキノンモノメチルエーテル(hydroquinone monomethyl ether)エポキシド(3−グリシドキシプロピル)ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン((3-glycidoxypropyl)bis(trimethylsiloxy)methylsilane)
【0017】
百分率転化率は、次のとおり、ガスクロマトグラフィーを用いて決定した。100μLの試料を1mLのイソプロピルアルコール(IPA)の中に分散させた。それらの分散済み試料は、ガスクロマトグラフィー−フレームイオン化検出器(GC-FID)と以下に記載の条件とを用いて分析した。
キャリヤーガス: ヘリウム
キャリヤーガス圧力: 70psi
全流量: 75mL/分
セプタム・パージ(Septum purge): 3〜5mL/分
水素圧: 60psi
空気圧: 30psi
検出器: 280℃のフレームイオン化検出器
入口温度: 280℃
自動試料採取器洗浄溶媒: イソプロピルアルコール
カラム: Restek RTX-5 30m×0.25mm×1.0μm (5%ジフェニル,95%ジメチルポリシロキサン)
注入容量: 2μL(100:1)スプリット(split)
温度プログラム:
初期温度: 60℃
勾配 : 10℃/分
最終温度: 325℃
最終時間: 5分
平衡状態: 7分
【0018】
〔実施例1〕
電磁撹拌棒と乾燥管と熱電対とを備えた250mL三つ口丸底反応フラスコに、0.60gのメタクリル酸カリウム(4.8ミリモル、0.08当量)および10.36gのメタクリル酸(0.12ミリモル、2当量)を添加した。該反応フラスコに、MEHQ(45mg、0.36ミリモル、0.006当量)を添加した。その反応を撹拌した。撹拌しながら、20.0gのエポキシド[シラー社(Silar)から入手、0.060モル]を添加した。その混合物を100℃に加熱した。
【0019】
5.5時間後、前記反応混合物の少量のアリコート(約200μL)を取り去って、ヘキサン(約1mL)で希釈し、次いで、約1mLの0.5MNaOH水溶液および約1mLの2.5重量%NaCl水溶液で連続的に洗浄した。その有機層は、ガスクロマトグラフィーによって分析して、出発エポキシドを24.5%、およびSiMAA2を75.5%含有することが分かった。他の生成物は、ガスクロマトグラフィーによっては観察されなかった。
【0020】
前記反応混合物は、次いで、除熱して、該混合物を移して希釈するためのヘキサン約100mLを用いて分液漏斗へ移した。ヘキサン層は、2×約75mLの0.5MNaOH水溶液および約75mLの2.5重量%NaCl水溶液を用いて、連続的に洗浄した。該有機層は、次いで、Na2SO4で乾燥させ、濾過した。濾液は、回転蒸発装置で55℃で濃縮した。この濃縮物は、ガスクロマトグラフィーによって分析したとき、出発エポキシドを25%、およびSiMAA2を約74%含有することが分かった。
【0021】
エポキシドとSiMAA2との溶液に、6.60mLのイソプロピルアミン(0.076モル、5.1当量)を添加した。該反応混合物は、電磁撹拌棒を用いて40℃で一晩中、撹拌した。反応溶液からアリコートを取り去って、ガスクロマトグラフィーによって分析した。ガスクロマトグラフィーの結果によって、該反応溶液は出発エポキシドを全く含有していないことが確認された。該反応容器から電磁撹拌棒を取り除き、回転式蒸発装置(rotovap)で該溶液を濃縮して、過剰のイソプロピルアミン(沸点33〜34℃)を除去した。その濃縮溶液は、回転式蒸発装置から取り去って、約50mLのメタノールで希釈した。これに、アンバーライト(Amberlite)(登録商標)IR120を添加し、更に該混合物が約7のpHになるまで樹脂を添加した。該混合物は、電磁撹拌棒を用いて1時間の間撹拌し続けた。1時間後、該混合物を濾過し、濾液は回転式蒸発装置で濃縮し、SiMAA2が得られた。結果として得られたSiMAA2は、液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC-MS)によって純度を分析した。純度の結果は、表1に記載し、実施例2および実施例3に記述する他の反応条件を用いて製造したSiMAA2の純度と比較する。
【0022】
〔実施例2〕
電磁撹拌棒と乾燥管と熱電対とを備えた5000mL三つ口丸底反応フラスコに、92gのメタクリル酸リチウム(1モル、0.17当量)および1023gのメタクリル酸(11.91モル、2当量)を添加した。該反応フラスコに、MEHQ(4.65g、0.037モル、0.006当量)を添加した。その反応を撹拌した。撹拌しながら、2000gのエポキシド[シラー社(Silar)から入手、5.95モル]を添加した。その反応混合物を90℃に加熱した。
【0023】
約15時間の後、前記反応混合物は、除熱して、約50℃まで冷却し、該混合物を移して希釈するためのヘキサン約3200mLを用いて分液漏斗へ移した。ヘキサン層は、4×約3200mLおよび1×2000mLの0.5MNaOH水溶液、ならびに約75mLの2.5重量%NaCl水溶液を用いて、連続的に洗浄した。該有機層は、次いで、Na2SO4で乾燥させて、濾過した。
【0024】
その濾液に、フラッシュ等級(flash grade)シリカゲルを添加した。その不均質混合物は、室温で3時間の間撹拌し、フリットガラス漏斗で濾過した。該濾液は、次いで、回転蒸発装置で55℃で濃縮して、SiMAA2を得た。結果として得られたSiMAA2は、液体クロマトグラフィー/質量分析法によって純度を分析した。純度の結果は、下の表1に記載する。
【0025】
〔実施例3〕
電磁撹拌棒と乾燥管と熱電対とを備えた5000ml三つ口丸底反応フラスコに、59gのメタクリル酸カリウム(0.476モル、0.08当量)および1023gのメタクリル酸(11.91モル、2当量)を添加した。該反応フラスコに、MEHQ(4.65g、0.037モル、0.006当量)を添加した。その反応を撹拌した。撹拌しながら、2000gのエポキシド[シラー社(Silar)から入手、5.95モル]を添加した。その反応混合物を100℃に加熱した。
【0026】
約15時間の後、前記反応混合物は、除熱して、室温まで冷却し、該混合物を移して希釈するためのヘキサン約2000mlを用いて分液漏斗へ移した。ヘキサン層は、3×約5000mLの0.5MNaOH水溶液、および3×約3500mLの2.5重量%NaCl水溶液を用いて、連続的に洗浄した。該有機層は、次いで、Na2SO4で乾燥させて、濾過した。該濾液は、次いで、回転蒸発装置で55℃で濃縮して、SiMAA2を得た。結果として得られたSiMAA2は、液体クロマトグラフィー/質量分析法によって純度を分析した。純度の結果は、下の表1に記載する。
【0027】
【表1】

【0028】
〔実施の態様〕
(1)(a)置換エポキシドを含有する第1の反応混合物を、少なくとも1種のエポキシド開環触媒および少なくとも1種のアクリル酸と反応させて、置換グリセロールアクリレート50〜85モル%と該置換エポキシドとを含有する第1の反応生成物を形成する工程と、
(b)前記第1の反応生成物を求核化合物で処理して、前記置換エポキシドを実質的に含有せず、かつ、前記置換グリセロールアクリレートと該置換エポキシドの求核誘導体とを含有する第2の反応生成物を形成する工程と、
(c)前記第2の反応生成物を処理して、前記求核誘導体を除去し、二官能価不純物を約5重量%未満で含有する置換グリセロールアクリレートを生成する工程と
を具備する、方法。
(2)実施態様1記載の方法であって、
前記置換エポキシドは、式II:
【化6】

式中、R2は、少なくとも1種のSi含有成分で置換されたC1〜C12アルキル基から成る群から選ばれる、前記式の少なくとも1種の化合物を含有する、方法。
(3)実施態様2記載の方法であって、
2は、少なくとも1種のシロキサンで置換されたC1〜C6アルキル基から成る群から選定する、方法。
(4)実施態様1記載の方法であって、
前記置換エポキシドは、式IV:
【化7】

式中、R6およびR7は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基から独立的に選ばれ、nは、1〜12の間の整数であり、xは、0〜3の間の整数である、前記式の少なくとも1種の化合物を含有する、方法。
(5)実施態様2記載の方法であって、
前記Si含有成分は、式III:
【化8】

を有し、式中、A1およびA2は、同一であるかまたは相違し、かつ、低級アルキル基から選ばれ、また、Bは、構造:
【化9】

の群であり、式中、R3、R4およびR5は、同一であるかまたは相違し、かつ、低級アルキル置換基、フェニル置換基、ベンジル置換基、およびトリアルキルシロキシ置換基を包含する群から選ばれる基である、方法。
【0029】
(6)実施態様1記載の方法であって、
前記置換エポキシドは、(3−グリシドキシプロピル)ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン((3-glycidoxypropyl)bis(trimethylsiloxy)methylsilane)を含有する、方法。
(7)実施態様1記載の方法であって、
前記アクリル酸は、メタクリル酸を含有する、方法。
(8)実施態様1記載の方法であって、
前記アクリル酸は、置換エポキシド1モル当りアクリル酸1〜3モルの間の量で用いる、方法。
(9)実施態様1記載の方法であって、
前記エポキシド開環触媒は、ルイス酸、ルイス塩基、ブレンステッド酸、およびポルフィリン錯体から成る群から選定する、方法。
(10)実施態様1記載の方法であって、
前記エポキシド開環触媒は、アルカリ金属塩を含有する、方法。
【0030】
(11)実施態様10記載の方法であって、
前記アルカリ金属塩は、Li、KおよびNaから成る群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属を含有する、方法。
(12)実施態様10記載の方法であって、
前記の少なくとも1種のアクリル酸アルカリ土類塩は、1〜4個の間の炭素原子を含有し、かつ、前記の少なくとも1種のアクリル酸は、1〜4個の間の炭素原子を含有する、方法。
(13)実施態様10記載の方法であって、
前記のアルカリ金属塩は、メタクリル酸のLi塩またはK塩である、方法。
(14)実施態様10記載の方法であって、
前記のアルカリ金属塩は、前記エポキシドを基準としてほぼ0.5当量以下の量で存在させる、方法。
(15)実施態様1記載の方法であって、
前記第1の反応混合物は、少なくとも1種の抑制剤を更に含有する、方法。
【0031】
(16)実施態様15記載の方法であって、
前記抑制剤は、ヒドロキノンモノメチルエーテル(hydroquinone monomethyl ether)、ブチル化ヒドロキシトルエン(butylated hydroxytoluene)、およびそれらの混合物から成る群から選定する、方法。
(17)実施態様15記載の方法であって、
前記抑制剤は、ほぼ10,000ppm以下の量で添加する、方法。
(18)実施態様15記載の方法であって、
前記抑制剤は、約1〜約1,000ppmの間の量で添加する、方法。
(19)実施態様1記載の方法であって、
工程(a)の反応条件には、80℃〜110℃の間の温度と、2〜6時間の間の反応時間とが包含される、方法。
(20)実施態様1記載の方法であって、
前記求核化合物は、第一級アミン含有化合物、第二級アミン含有化合物、第三級アミン含有化合物およびそれらの混合物から成る群から選定する、方法。
【0032】
(21)実施態様20記載の方法であって、
前記求核化合物は、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、フタルイミドおよびそれらの混合物から成る群から選定する、方法。
(22)実施態様1記載の方法であって、
工程(c)には、酸抽出、イオン交換樹脂を用いた処理、イオン交換塔を用いた処理、およびそれらの組合せが包含される、方法。
(23)実施態様1記載の方法であって、
前記第1の反応生成物は、置換グリセロールアクリレート60%〜80%を含有する、方法。
(24)(a)置換エポキシドを含有する第1の反応混合物を、少なくとも1種のアルカリ金属塩および少なくとも1種のアクリル酸と、ほぼ60℃より高い温度でほぼ6時間以下の間反応させて、置換グリセロールアクリレート50〜85モル%と該置換エポキシドとを含有する第1の反応生成物を形成する工程と、
(b)前記第1の反応生成物を求核化合物で、20℃〜90℃の間の温度でほぼ16時間以下の間反応させて、前記置換エポキシドを実質的に含有せず、かつ、前記置換グリセロールアクリレートと該置換エポキシドの求核誘導体とを含有する第2の反応生成物を形成する工程と、
(c)前記第2の反応生成物を処理して、前記求核誘導体を除去し、二官能価不純物をほぼ5重量%未満で含有する置換グリセロールアクリレートを生成する工程と、
を具備する、方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)置換エポキシドを含有する第1の反応混合物を、少なくとも1種のエポキシド開環触媒および少なくとも1種のアクリル酸と反応させて、置換グリセロールアクリレート50〜85モル%と該置換エポキシドとを含有する第1の反応生成物を形成する工程と、
(b)前記第1の反応生成物を求核化合物で処理して、前記置換エポキシドを実質的に含有せず、かつ、前記置換グリセロールアクリレートと該置換エポキシドの求核誘導体とを含有する第2の反応生成物を形成する工程と、
(c)前記第2の反応生成物を処理して、前記求核誘導体を除去し、二官能価不純物を約5重量%未満で含有する置換グリセロールアクリレートを生成する工程と、
を具備する、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、
前記置換エポキシドは、式II:
【化1】

式中、R2は、少なくとも1種のSi含有成分で置換されたC1〜C12アルキル基から成る群から選ばれる、前記式の少なくとも1種の化合物を含有する、方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法であって、
2は、少なくとも1種のシロキサンで置換されたC1〜C6アルキル基から成る群から選定する、方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法であって、
前記置換エポキシドは、式IV:
【化2】

式中、R6およびR7は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基から独立的に選ばれ、nは、1〜12の間の整数であり、xは、0〜3の間の整数である、前記式の少なくとも1種の化合物を含有する、方法。
【請求項5】
請求項2記載の方法であって、
前記Si含有成分は、式III:
【化3】

を有し、式中、A1およびA2は、同一であるかまたは相違し、かつ、低級アルキル基から選ばれ、また、Bは、構造:
【化4】

の群であり、式中、R3、R4およびR5は、同一であるかまたは相違し、かつ、低級アルキル置換基、フェニル置換基、ベンジル置換基、およびトリアルキルシロキシ置換基を包含する群から選ばれる基である、方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法であって、
前記置換エポキシドは、(3−グリシドキシプロピル)ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン((3-glycidoxypropyl)bis(trimethylsiloxy)methylsilane)を含有する、方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法であって、
前記アクリル酸は、メタクリル酸を含有する、方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法であって、
前記アクリル酸は、置換エポキシド1モル当りアクリル酸1〜3モルの間の量で用いる、方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法であって、
前記エポキシド開環触媒は、ルイス酸、ルイス塩基、ブレンステッド酸、およびポルフィリン錯体から成る群から選定する、方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法であって、
前記エポキシド開環触媒は、アルカリ金属塩を含有する、方法。
【請求項11】
請求項10記載の方法であって、
前記アルカリ金属塩は、Li、KおよびNaから成る群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属を含有する、方法。
【請求項12】
請求項10記載の方法であって、
前記の少なくとも1種のアクリル酸アルカリ土類塩は、1〜4個の間の炭素原子を含有し、かつ、前記の少なくとも1種のアクリル酸は、1〜4個の間の炭素原子を含有する、方法。
【請求項13】
請求項10記載の方法であって、
前記のアルカリ金属塩は、メタクリル酸のLi塩またはK塩である、方法。
【請求項14】
請求項10記載の方法であって、
前記のアルカリ金属塩は、前記エポキシドを基準としてほぼ0.5当量以下の量で存在させる、方法。
【請求項15】
請求項1記載の方法であって、
前記第1の反応混合物は、少なくとも1種の抑制剤を更に含有する、方法。
【請求項16】
請求項15記載の方法であって、
前記抑制剤は、ヒドロキノンモノメチルエーテル(hydroquinone monomethyl ether)、ブチル化ヒドロキシトルエン(butylated hydroxytoluene)、およびそれらの混合物から成る群から選定する、方法。
【請求項17】
請求項15記載の方法であって、
前記抑制剤は、ほぼ10,000ppm以下の量で添加する、方法。
【請求項18】
請求項15記載の方法であって、
前記抑制剤は、1〜1,000ppmの間の量で添加する、方法。
【請求項19】
請求項1記載の方法であって、
工程(a)の反応条件には、80℃〜110℃の間の温度と、2〜6時間の間の反応時間とが包含される、方法。
【請求項20】
請求項1記載の方法であって、
前記求核化合物は、第一級アミン含有化合物、第二級アミン含有化合物、第三級アミン含有化合物およびそれらの混合物から成る群から選定する、方法。
【請求項21】
請求項20記載の方法であって、
前記求核化合物は、イソプロピルアミン(isopropylamine)、ジイソプロピルアミン(diisopropylamine)、フタルイミド(phthalimide)およびそれらの混合物から成る群から選定する、方法。
【請求項22】
請求項1記載の方法であって、
工程(c)には、酸抽出、イオン交換樹脂を用いた処理、イオン交換塔を用いた処理、およびそれらの組合せが包含される、方法。
【請求項23】
請求項1記載の方法であって、
前記第1の反応生成物は、置換グリセロールアクリレート60%〜80%を含有する、方法。
【請求項24】
(a)置換エポキシドを含有する第1の反応混合物を、少なくとも1種のアルカリ金属塩および少なくとも1種のアクリル酸と、ほぼ60℃より高い温度でほぼ6時間以下の間反応させて、置換グリセロールアクリレート50〜85モル%と該置換エポキシドとを含有する第1の反応生成物を形成する工程と、
(b)前記第1の反応生成物を求核化合物で、20℃〜90℃の間の温度でほぼ16時間以下の間反応させて、前記置換エポキシドを実質的に含有せず、かつ、前記置換グリセロールアクリレートと該置換エポキシドの求核誘導体とを含有する第2の反応生成物を形成する工程と、
(c)前記第2の反応生成物を処理して、前記求核誘導体を除去し、二官能価不純物をほぼ5重量%未満で含有する置換グリセロールアクリレートを生成する工程と、
を具備する、方法。

【公表番号】特表2007−521300(P2007−521300A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518724(P2006−518724)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/020937
【国際公開番号】WO2005/005444
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(500092561)ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド (153)
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
【住所又は居所原語表記】7500 Centurion Parkway−Suite 100, Jacksonville, Florida 32256, U.S.A.
【Fターム(参考)】