説明

ビタミン類の担持体

【課題】 ビタミン類を安定的に担持する化粧品又はダイエット食品に有用なビタミン類の担持体を提供すること。
【解決手段】 微生物が産生する微生物セルロースゲルの、自由水を全量脱水し、吸着水を50%未満の脱水とした状態にして、酸化還元電位100mV以下の水に、ビタミン類を溶解又は乳化液として、ビタミン類を吸着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品又はダイエット食品に有用なビタミン類の担持体に関する。
また、本発明は、微生物が産生する微生物セルロースゲルを脱水した状態にして、ビタミン類を水に溶解又は乳化液として、吸着させてなるビタミン類の担持体に関する。
更に詳しくは、本発明は、微生物セルロースゲルの、自由水を全量脱水し、吸着水を50%未満の脱水とした状態にして、ビタミン類を酸化還元電位100mV以下の水に溶解又は乳化液として、吸着させて担持させることにより含水ゲルにビタミン類を安定に保つことができ、化粧品又はダイエット食品に用いるビタミン類の担持体に関する。
【背景技術】
【0002】
古くから、ビタミンA群は熱や光により酸化され易くて不安定であり、ビタミンB群は、乾燥状態では比較的安定であるが、水溶液では不安定であることが知られている。ビタミンC群は、水溶液で不安定であり、ビタミンD群は、空気、酸素に不安定である。ビタミンE群は、光により酸化され易いので、化学的修飾により安定化することも提案されているが、カプセル化は使用上に制限があり、それ自体を安定に供給し使用できる技術の開発が望まれている。
上述するビタミン類は、美容と健康に貴重な存在とされているが、不安定なために化粧品等に用いても効果を充分期待することは難しかった。
【0003】
特開平03−139288号公報により、アスコルビン酸の安定化にリン酸マグネシウム塩や配糖体が開発されており、直接還元性を示さないα−グリコシル−L-アスコルビン酸として安定化する方法が知られているが、コスト面及び安全面からビタミン類がそれ自体を安定に使用できる方法の開発が熱望されている。
微生物が産生するセルロースゲルは、微生物セルロースが1重量%、水分が99重量%であり、微生物セルロースは7〜10nmの太さのナノファイバーで、その三次元構造が水を吸着して含水ゲルを構成する点において、親水性高分子により分子状態でのゲル体と類型性を有するが、微生物セルロースゲルはナノ構造体に基づくことに相違点がある。
【0004】
微生物によるセルロースゲルは、ナタデココに代表される可食性ゲルとして、例えば特開平07−059523号公報、特開平07−079797号公報のように知られているが、特開平07−268128号公報では、微生物セルロースゲルを乾燥してもゲル復元性が低下しないように、水溶性安定剤を浸透して乾燥体としている。特開2004−016742号公報では、微生物セルロースゲルの乾燥体に揮発性の薬剤を担持させて安定に揮散する担持体としている。特開2001−120197号公報では、機能性素材を培地に添加して微生物を培養する方法で、機能性素材を含有する微生物セルロースゲルを得ている。このように微生物セルロースによる担持機能を開発されているが、ビタミンの担持については未だ知られていない。
【0005】
【特許文献1】特開平03−139288号公報
【特許文献2】特開平07−059523号公報
【特許文献3】特開平07−079797号公報
【特許文献4】特開平07−268128号公報
【特許文献5】特開2004−016742号公報
【特許文献6】特開2001−120197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ビタミン類は、美容と健康に貴重な存在とされながらも、ビタミンB群、ビタミンC群は水溶液で不安定であり、ビタミンA群、ビタミンD群、ビタミンE群は光や空気・酸素に不安定であり、効果を充分に期待することが難しかった。しかし、ビタミン類は、野菜、胚芽、大豆等に安定に存在しており、天然に保たれている仕組みを実現して、ビタミン類を安定にすることが課題であった。
そこで、本発明者は、物質本来が固有に有する酸化還元電位を有しており、例えば水道水の酸化還元電位は500〜700mV、天然水の酸化還元電位は150〜250mVであるのに対して、果物ジュースの酸化還元電位は100mV、野菜の酸化還元電位は−40〜−50mVであって、天然の果実や野菜にはビタミンが安定に含まれていることに着目し、従来のカプセルタイプのビタミンサプリメントの安定化を高めて、新規の化粧品やダイエット食品に提供することを課題とするものである。
すなわち、本発明では、水、とりわけ酸化還元電位100mV以下の水に対してビタミン類を溶解又は乳化せしめた液を、微生物セルロースによるゲル中に担持させることにより、天然の仕組みの類似構成を再現した微生物セルロースゲルをビタミン類の安定な担持体として新規の化粧品やダイエット食品に提供することを課題とするものである。
さらに、ダイエット食品用途の場合、製造中の加熱工程における熱、酸素等の影響を抑制し、かつ経口摂取後、含有されるビタミン類が体内に効率よく吸収されるように安定化することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成を基本として上記の課題を解決したものである。
(1)微生物が産生する微生物セルロースゲルの自由水を全量脱水し、吸着水の50%未満の量を脱水した状態にして、酸化還元電位100mV以下の水に、ビタミン類を溶解又は乳化せしめた液を吸着させてなることを特徴とするビタミン類の担持体。
(2)上記液が、β-1,3-β-1,6-D-グルカンを含有することを特徴とする上記(1)に記載のビタミン類の担持体。
(3)ビタミン類がβ-1,3-β-1,6-D-グルカンに担持されてなることを特徴とする上記(2)に記載のビタミン類の担持体。
(4)上記β-1,3-β-1,6-D-グルカンが、Aureobasidium pullulansの菌株が産生するものであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のビタミン類の担持体。
(5)上記セルロースゲルが、糖アルコールを含有することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のビタミン類の担持体。
(6)上記糖アルコールが、オリゴサッカライド、ソルビトール又はキシリトール等から選ばれたものを使用することを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のビタミン類の担持体
(7)上記微生物が産生するセルロースゲルが、ナタデココ由来のものであることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載のビタミン類の担持体。
(8)上記微生物が、アセトバクター・キシリナムであることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載のビタミン類の担持体。
(9)上記セルロースゲルが、離解処理を受けたものであることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載のビタミン類の担持体。
(10)上記ビタミン類が、ビタミンA群、ビタミンB群、ビタミンC群、ビタミンD群、ビタミンE群より選ばれたビタミンであることを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれかに記載のビタミン類の担持体。
(11)上記(1)〜(10)のいずれかに記載の担持体が、化粧品又はダイエット食品に用いることを特徴とするビタミン類の担持体。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、従来ビタミン類の安定化は困難であったが、ビタミン類を酸化還元電位100mV以下の水に溶解又は乳液として、微生物セルロースによるナノファイバーに担持させることにより、含水ゲル状態でも安定に保つことができるように改善された。
本発明で担持体として使用する微生物セルロースゲルとβ-1,3-β-1,6-D-グルカンは、ともに人体に対し安全であり、さらにダイエット食品用途ではβ-1,3-β-1,6-D-グルカンの配合により腸管等への免疫賦活効果や、抗腫瘍活性効果、毒素の体外排泄促進作用を発揮せしめることも出来る。
特にβ-1,3-β-1,6-D-グルカンを配合することによりその効果を一層高めることが出来る。
本発明におけるような微生物セルロースゲルを使用した場合に、ビタミン類をきわめて安定に担持できるために、従来ビタミン類を配合した製品、例えばビタミン類を配合した化粧品やダイエット食品の製造工程でも熱、光、酸素等の作用で、ビタミンが失活することがなくなり、しかも製品としても保存寿命を著しく延長することが可能となって、その利用性は高い。
そして、本発明による上記担持体は、保湿用化粧品としても有効であるが、食品としてゼロカロリーであることからダイエット食品としても注目される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明では、微生物により産生されるセルロースゲルは、ナタデココ由来のものを好ましく用いることができる。
すなわち、本発明におけるナタデココを原料として微生物セルロースゲル体を製造するには、カルボン酸を用いてpH3〜5に調整したココナッツ水に、スクロースを8〜20重量%溶解して培地として、セルロース産生菌としてアセトバクター・キシリナム菌を3〜8重量%植菌し、28〜30℃で10〜12日の静置培養により微生物セルロースゲルを生成する。
【0010】
上記微生物セルロースゲルは、洗浄・殺菌・除菌処理を施すが、洗浄処理は、酢酸が検出されなくなるまで充分に水洗をする。殺菌処理は、95〜100℃で20〜30分の熱湯処理でよい。除菌処理は、水酸化ナトリウム0.1%水溶液80℃30分の処理でアセトバクター菌を溶出して除去することができる。
ゲル体の、透明度をよくするにはエタノールを培地に添加して、ナノファイバーの分散性を高めることで得られる。
過剰の水分は、遠心脱水により除去するとよい。吸着水の50%未満を脱水するには、ゲル体のままでもよいが、細かく切断して、ホモミキサーにより離解して乾燥する方法が好ましい。乾燥は、温風乾燥機又は凍結乾燥機により自由水を全量脱水して、吸着水の脱水を50%未満とするが、脱水の品質管理は重量測定により行う。
【0011】
微生物が産生するセルロースは、7〜10nmの太さのナノファイバーの三次元空隙構造が水を吸着して含水ゲルを構成する。含水ゲルに含まれる水の内訳は、〔表1〕に示すように自由水と吸着水に分けられ、その割合は、自由水と吸着水で概ね、重量比で85:15である。
このときのミクロ構造は、図1に示すように、自由水はナノファイバーの三次元空隙構造の外にフリーに存在する水分子(状態B),吸着水はナノファイバーの三次元空隙構造内に封じ込められた水分子(状態A)と考えられるが、三次元空隙構造内に封じ込められた水分子からなる吸着水の脱水が50%以上になる(状態C)と、不可逆的に影響してゲルの復元が難しくなる。
【0012】
上記脱水の工程は、上述するように遠心分離を利用して一時脱水を行い、第一段階として加熱乾燥して、ナノファイバーの三次元空隙構造の外にフリーに存在する水分(自由水)を除去し、第二段階として三次元空隙構造内に封じ込められた吸着水の脱水を行うが、ナノファイバーの三次元空隙構造の外に存在する自由水の脱水は、ゲル物性に可逆的であるから問題はないが、三次元空隙構造内に封じ込められた水分子からなる吸着水の脱水は50%以上になると、不可逆的にゲルへの復元が難しくなる。
このときの加熱乾燥時間と、重量減の関係は図2に示すが、この図2によれば、乾燥温度が70℃であれば、約10分程度で、自由水の殆どが乾燥除去できるが、ナノファイバーの三次元空隙構造内に封じ込められた水分子(吸着水)の除去はきわめて緩慢であることがわかる。
吸着水を脱水した乾燥状態から、吸水して完全に復元する(すなわち、状態Bに戻す)ことは不可能であるが、ある程度の状態まで復元することは可能で、そのためには糖アルコールとしてオリゴサッカライド、ソルビトール又はキシリトール等から選ばれたものを使用することが有効である。
【0013】
これは、自由水、次いで吸着水の脱水によって、微生物セルロースによるナノファイバーが接合して太くなり、三次元空隙構造が潰れるためで、吸水性が著しく低下する。吸着水が50%以上残留する状態であれば、復元性と担持性は保持される。
担持効果を得るためには、吸着水の脱水を50%未満として、吸着水を担持液と入れ替えることが重要である。三次元空隙構造内に閉じこめられた吸着水を脱水することなく、三次元空隙構造外の自由水だけを入れ替えたのでは、ビタミンの担持効果が得られないし、三次元空隙構造内に閉じこめられた吸着水を50%以上脱水した場合には吸水性が著しく低下して上述のように担持効果が得られない。
【0014】
飽和に含水したゲル体自体の重量を100重量%とすると、水分が99重量%、微生物セルロースが約1重量%であり、上記水分の内訳は、上述するように重量比で、自由水が85、吸着水15である。飽和含水ゲル重量を基準として把握するのがよい。吸着水の50%未満を脱水した状態にするには、飽和含水状態の重量を基準として7.5〜15重量%に乾燥すればよい。過剰の水を遠心脱水により除いて基準値を設定する。基準値に対して吸着水の残留量を乾燥の温度と時間により重量で調節する。
【0015】
スクロースに酵素を作用した場合、スクロースホスホリラーゼではα-1,4-グルカン(澱粉)が産生する。アセトバクター・キシリナムではβ-1,4-グルカン(セルロース)を産生する。このことを確認するために、後述する実施例では、微生物産生ゲルを凍結乾燥を行い、粉末にして、NMRによるスペクトル分析をしたところ、本発明で得られた産生成分(図3)は、純粋セルロース品(図4)との対比結果からβ-1,4-グルカン(セルロース)であることが確認された。
【0016】
セルロースを産生する菌株には、Acetobacter属、Rhizobium属、Agrobacterum属、Sarcina属、Achromobacter属、Alcaligenes属等が知られており、本発明で好ましく使用できるAcetobacter属のアセトバクター・キシリナムとしてATCC10821、ATCC31174、ATCC23768、ATCC23769、ATCC14851、ATCC11142、ATCC11172、IFO3288、IFO13772等の受託番号の菌株がある。
ビタミン類を溶解又は乳液とする水を、酸化還元電位100mV以下とすることは水に溶解したビタミン類を安定にする要件の1つである。天然果汁の多くは酸化還元電位が100mVであり、野菜は−40〜−50mVであるため、酸化還元電位100mV以下の水を用いることにした。
【0017】
酸化還元電位100mV以下の水は、高周波低電圧処理による還元水、膜式脱気装置による脱酸素水、電解の陰極より得られるアルカリイオン水、石英斑岩処理水等を用いることができる。
ビタミン類を、還元水、脱酸素水、アルカリイオン水、石英斑岩処理水より選ばれた酸化還元電位100mV以下の水に溶解するか又は乳化液とすることでビタミンの分解を抑えて、更に微生物セルロースに吸着させて水溶性ビタミンの担持体とすることにより安定化を達成することができる。
【0018】
上記のビタミン類を溶解した溶液、又は油溶性ビタミン類を界面活性剤を使用して水に乳化した液体を微生物セルロースゲルに担持するとき、中間媒体としてβ-1,3-β-1,6-D-グルカンを配合することがさらに好ましい。
本発明で使用するβ-1,3-β-1,6-D-グルカンは、自然界に存在するキノコ類に含まれる主鎖にβ-1,3-グルカンを、分岐にβ-1,6-グルカンの結合を有するβ-1,3-β-1,6-D-グルカンであって、水溶性のものが都合が良い。この中でもとりわけ、黒酵母類、特に好ましくはAureobasidium pullulansの菌株が産生するβ-1,3-β-1,6-D-グルカンが特に好ましい。これは、この菌株で産生されたβ-1,3-β-1,6-D-グルカンは、取り扱い性や加工性の点で好都合だからである。また、この構造のグルカンは生体内で摂取カロリーを発生させることはなく、ダイエット食品のような美容食品に配合するのに最適である。
【0019】
本発明の担持体にβ-1,3-β-1,6-D-グルカンを配合すると、ビタミン類がβ-1,3-β-1,6-D-グルカンに担持され、この担持体が微生物セルロースゲルの構造内に取り込まれて安定化する。
β-1,3-β-1,6-D-グルカンを媒介とする担持構造にすると、ビタミン類が熱、光、酸素等の外部環境因子の影響を一層受けにくくなり、安定化するので好ましい。
ダイエット食品の用途の場合、微生物セルロースゲルが体内の水分で膨潤して満腹感をもたらすと同時に、生体活動に必要なビタミン類が体内に吸収されるまで安定化される利点を有する。β-1,3-β-1,6-D-グルカンを配合すると、ビタミン類が一層安定化される。また、該グルカンが担持していたビタミン類を放出する際に、交換作用として体内毒素を分子に取り込み体外に排泄する作用も有するので美容効果が促進される。
【0020】
本発明で使用するビタミン類は、水溶性ビタミンは水溶液として用い、油溶性ビタミンはスクワラン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、オリーブ油等に溶解して非イオン界面活性剤で乳化液として用いる。
ビタミンA群には、レチノール、レチナール、ビタミンA、パルミチン酸レチノール等があり、ビタミンB群にはビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB12、パントテン酸等があり、ビタミンC群にはL-アスコルビン酸、L−デヒドロアスコルビン酸、アスコルビゲン−A等があり、ビタミンD群にはビタミンD、ビタミンD、ジヒドロタキステロール等があり、ビタミンE群にはα−、β−、γ−、δ−トコフェロールがある。本発明のビタミン類としてこれらから選ばれる1種又は2種以上を使用することが出来る。
【0021】
化粧品では、水分と同時にビタミン類の1種類又は2種類以上を用いることに特徴があり、フェイスマスクのパック剤等のシート状化粧料に配合すると効果的であるが、一般化粧料に用いてもよい。ダイエット食品では、少量食して満腹感が得られるゼロカロリーの食品とすることができる。ダイエット食品は特に限定されないが、好ましくはパン類、菓子類、サプリメント類、飲料類等を例示できる。
【0022】
(実施例1〜5、比較例1〜10)
(ゲル体の製造例)
酢酸0.5重量%、ショ糖10重量%をココナッツ水に配合したpH3.5の水溶液に、アセトバクター・キシリナム5重量%を植菌して、温度29℃で12日間50×50cmのトレーに30mmの深さに注液して静置培養を行い、厚さ20mmで50×50cmの微生物セルロースのゲル体を作成した。
【0023】
(脱水ゲル体の製造例)
2日間流水に浸漬して酢酸が検出されなくなるまで洗浄した。次いで0.1重量%の水酸化ナトリウム水溶液を用いて95℃で30分の処理を行って、殺菌・除菌処理をした。
ゲル体を遠心脱水して飽和含水ゲル重量として脱水管理の基準とした。上記ゲル体10部をソルビトール0.5重量%水溶液10部に浸漬してホモミキサーに3分間かけて離解処理を行い、凍結乾燥機により−40℃で凍結し、減圧して40℃で乾燥を4時間行って、当初の飽和含水ゲル重量(100重量部)に対して吸着水の脱水が40%に相当する、吸着水量9重量部(60%を残留)の脱水ゲル体を得た。
上記ゲル体を乾燥時間70℃で、乾燥時間と脱水重量の関係を図2に示す。
また、得られた微生物産生ゲルの凍結乾燥を行い、粉末にして、ゲル成分のNMRスペクトルを図3に示す。
また、構造確認のためのβ-1,4-グルカン試薬(純粋のセルロース)のNMRスペクトルを図4に示す。
この結果、本発明の目的とする微生物産生成分はであることが確認された。
【0024】
(ビタミン類の吸着)
各種のビタミン類を〔表1〕に示す処方(なお、表中の「水ORP」は酸化還元電位(単
位はmV)を示す)で、酸化還元電位5の脱酸素水に溶解又は乳液として、上記脱水ゲル体に9重量部を噴霧添加して均一に撹拌して浸透・吸着させた。
紫外線分光分析器によりビタミン類の安定性を測定した結果を〔表1〕に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
(安定化効果)
比較例1〜6はいずれも分解があり、水溶液での安定性が悪いことが示されているが、本発明の担持体(実施例1〜6)は、明らかに安定化が達成されている。
更に含水ゲルとして使用できるので、化粧料として肌の保湿性を有する美白剤として期待される。
【0027】
(ゲル担持体の使用効果)
2日間流水に浸漬して酢酸が検出されなくなるまで洗浄した。次いで0.1重量%の水酸化ナトリウム水溶液を用いて95℃で30分の処理を行って、殺菌・除菌処理をした。
ゲル体を遠心脱水して飽和含水ゲル重量として脱水管理の基準値とした。
上記ゲル体をホモミキサーに3分間かけて離解処理を行い、70℃で18分乾燥して、当初の飽和含水ゲル重量(100重量部)に対して吸着水の脱水が40%相当の吸着水9重量部(60%を残留)の脱水ゲル体を得た。
ビタミン類は、〔表1〕に示すように、水溶性ビタミンは酸化還元電位5の脱酸素水の
1重量%液として、上記脱水ゲル体に9重量部を添加して撹拌し、浸透・吸着させた。不溶性ビタミンはスクワランに溶解して、非イオン界面活性剤を用いて酸化還元電位4の脱酸素水にビタミン濃度1重量%に乳化液として、上記脱水ゲル体に9重量部を添加して撹拌し、浸透・吸着させた。
ビタミンの安定性は、上記担持体の配合当日のビタミンの濃度に対して、6ヶ月後のビタミン濃度を、UVスペクトルの吸収分析値による百分率で表1に示した。
実施例1〜5では、安定に担持されている。比較例1〜10は、いずれも不安定で分解している。
【0028】
(実施例6)
酸化還元電位24mVの脱酸素水にL-アスコルビン酸を溶解(3.5重量%)して、水溶液を調整した。上記製造例で製造された脱水ゲル体100重量部にL-アスコルビン酸水溶液10重量部を噴霧添加して均一に撹拌して浸透・吸着させ担持体を製造した。
この担持体をクッキー用生地100重量部に30重量部だけ配合して混練した。この混練物を所定の形状に成形した。この成形物をベーキング装置によりクッキーを製造した。熱処理後のL-アスコルビン酸の残存率を測定したところ、62%であった。
このクッキーを空腹時に食用したところ、間もなく満腹感が得られた。また、L-アスコルビン酸の体内吸収性が高く、1週間連用することにより美白効果が認められた。
【0029】
(実施例7)
酸化還元電位24mVの脱酸素水にL-アスコルビン酸と、β-1,3-β-1,6-D-グルカンを溶解(L-アスコルビン酸濃度3.5重量%、β-1,3-β-1,6-D-グルカン濃度1.4重量%)して、水溶液を調整した。上記製造例の脱水ゲル体100重量部にL-アスコルビン酸水溶液10重量部を噴霧添加して均一に撹拌して浸透・吸着させて担持体を製造した。
この担持体をクッキー用生地100重量部に20重量部だけ配合して混練した。この混練物を所定の形状に成形した。この成形物をベーキング装置によりクッキーを製造した。熱処理後のL-アスコルビン酸の残存率は74%であり、実施例6の場合よりさらに向上した。
このクッキーを1週間連用したところ、美白効果のみならずグルカンの体内毒素包接と排泄効果により、美容効果が一層高められた。
【0030】
(比較例11)
酸化還元電位24mVの脱酸素水にL-アスコルビン酸を溶解(3.5重量%)して、水溶液を調整した。
この溶液をクッキー用生地100重量部に50重量部だけ配合して混練した。この混練物を所定の形状に成形した。この成形物をベーキング装置によりクッキーを製造した。熱処理後のL-アスコルビン酸の残存率を測定したところ、12%と著しく低下していた。このクッキーを1週間連用しても美白効果は認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】ナノファイバーに含まれる自由水及び吸着水の態様概念図
【図2】ゲル体を乾燥時間70℃で、乾燥時間と脱水重量の関係を示す。
【図3】本発明で得られたゲル成分のNMRスペクトルを示す
【図4】β-1,4-グルカン試薬(純粋のセルロース)のNMRスペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物が産生する微生物セルロースゲルの自由水を全量脱水し、吸着水の50%未満の量を脱水した状態にして、酸化還元電位100mV以下の水にビタミン類を溶解又は乳化せしめた液を吸着させてなることを特徴とするビタミン類の担持体。
【請求項2】
上記液が、β-1,3-β-1,6-D-グルカンを含有することを特徴とする請求項1に記載のビタミン類の担持体。
【請求項3】
上記ビタミン類が、β-1,3-β-1,6-D-グルカンに担持されてなることを特徴とする請求項2に記載のビタミン類の担持体。
【請求項4】
上記β-1,3-β-1,6-D-グルカンが、Aureobasidium pullulansの菌株が産生するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のビタミン類の担持体。
【請求項5】
上記セルロースゲルが、糖アルコールを含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のビタミン類の担持体。
【請求項6】
上記糖アルコールが、オリゴサッカライド、ソルビトール又はキシリトール等から選ばれたものを使用することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のビタミン類の担持体。
【請求項7】
上記微生物が産生するセルロースゲルが、ナタデココ由来のものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のビタミン類の担持体。
【請求項8】
上記微生物が、アセトバクター・キシリナムであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のビタミン類の担持体。
【請求項9】
上記セルロースゲルが、離解処理を受けたものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のビタミン類の担持体。
【請求項10】
上記ビタミン類が、ビタミンA群、ビタミンB群、ビタミンC群、ビタミンD群又はビタミンE群より選ばれたビタミンであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のビタミン類の担持体。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の担持体が、化粧品又はダイエット食品に用いられることを特徴とするビタミン類の担持体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−88150(P2008−88150A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−8922(P2007−8922)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(000212005)
【Fターム(参考)】