説明

ビタミン類を富化した鶏卵およびその鶏卵の生産方法並びにその鶏卵を生産するために用いる飼料

【課題】 本発明はビタミン類を富化した鶏卵およびその鶏卵の生産方法並びにその鶏卵を生産するために用いる飼料に関する。
【解決手段】 ビタミンB1 40〜600mg/kg、ビタミンB2 3.6〜150mg/kg、葉酸 1.6〜100mg/kg、ビタミンB12 4.8〜600μg/kg、ビオチン 72〜13000μg/kg、パントテン酸 16〜400mg/kg、ビタミンA 6000〜66000IU/kg、ビタミンE 40〜500mg/kg、ビタミンD 3000〜12000IU/kg、およびビタミンK 16〜600mg/kg含有する飼料を、産卵鶏に給餌することで、ビタミンB1 、ビタミンB2、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、パントテン酸、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンD、およびビタミンKのそれぞれの含有量が富化された鶏卵を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビタミン類を富化した鶏卵およびその鶏卵の生産方法並びにその鶏卵を生産するために用いる飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
人が健康な身体を維持するためには、炭水化物、たんぱく質、脂肪、ビタミン類、ミネラル類の栄養素をバランス良く摂取することが必要である。しかしながら現代の多様化した生活パターンによる、無関心、多忙、飽食あるいは逆に節食、などの理由によりこれらの栄養素をバランスよく食物から摂取することが出来なかったり、また高齢者にあっては、食物の摂取量が減じることがあったりして、栄養バランスを維持することが困難な状況が起こり得る。
【0003】
これらの栄養素のうち、ビタミン類は、微量で人および動物における生体内の代謝・生理機能等の生理作用を司り、その欠乏又は過剰によって生体に重大な障害を与えることのある、人および動物にとって必須の物質である。そして、このビタミン類には、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、ビオチン、パントテン酸、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、およびビタミンKが挙げられる。
【0004】
ビタミンB1は、糖質の代謝、神経機能正常化に関与する物質であり、豚のヒレ肉、タイ、ウナギ、玄米、鶏レバーなどの食物から摂取することができる。
ビタミンB2は、脂質、たんぱく質の代謝促進、成長促進、過酸化脂質の分解に関与する物質であり、豚レバー、イワシ、牛乳、カレイ、ブリ、ウナギなどの食物から摂取することができる。
ナイアシンは糖質、脂質、たんぱく質の代謝促進に関与する物質であり、マグロ、カツオ、サバ、豚レバーなどの食物から摂取することができる。
ビタミンB6は、アミノ酸の代謝、神経伝達物質合成に関与する物質であり、マグロ、カツオ、バナナ、牛レバー、サツマイモなどの食物から摂取することができる。
ビタミンB12は、補酵素として様々な反応に関与し、正常な赤血球の生成、神経機能維持に関与する物質であり、牛レバー、シジミ、アサリ、牡蠣、サンマなどの食物から摂取することができる。
【0005】
葉酸は、赤血球の生成、DNA合成の促進、胎児の先天異常予防に関与する物質であり、牛レバー、モロヘイヤ、春菊、ホウレン草、アスパラガス、トウモロコシなどの食物から摂取することができる。
ビオチンは、糖質、脂質、たんぱく質の代謝促進に関与する物質であり、鶏レバー、牛レバー、イワシ、玉ネギ、鮭、大豆などの食物から摂取することができる。
パントテン酸は、糖質、脂質、たんぱく質の代謝促進に関与する物質であり、牛レバー、鮭、サツマイモ、シイタケなどの食物から摂取することができる。
ビタミンAは、目の網膜色素の成分であり、皮膚、粘膜の健康保護,抗がん作用に関与する物質であり、ウナギ、ニンジン、鶏レバー、ホウレン草、小松菜、海苔などの食物から摂取することができる。
ビタミンCは、コラーゲン合成、筋肉、血管、皮膚、骨の強化、過酸化脂質の除去、抗がん作用に関与する物質であり、柿、レモン、キウイ、パセリ、ブロッコリーなどの食物から摂取することができる。
【0006】
ビタミンDは、カルシウムの吸収促進、骨の成長促進、血中カルシウム濃度の調整に関与する物質であり、鮭、ウナギ、シイタケ、キクラゲ、イワシなどの食物から摂取することができる。
ビタミンEは、細胞膜の酸化予防、過酸化脂質の抑制、老化防止、赤血球の溶血防止に関与する物質であり、ヒマワリ油、アーモンド、カボチャ、タラコなどの食物から摂取することができる。
ビタミンKは、血液凝固因子の生成、カルシウム結合促進、たんぱく質の生成に関与する物質であり、納豆、ブロッコリー、ホウレン草、海苔、ワカメなどの食物から摂取することができる。
【0007】
従来これらのビタミン類を補給するための手段として、これらビタミン類の1種又は数種のものを組み合わせたビタミン剤、または成人一人当たりのビタミン類の必要量を配合した総合ビタミン剤の種々のものが販売されている。さらにまたこれらのビタミン類または栄養素を含有する栄養補助食品(dietary supplimentまたはnutritional suppliment)についても種々のものが販売されている。しかしながらこれらのビタミン剤または栄養補助食品を服用または使用する場合に服用又は使用管理を厳格に行わないとビタミン類の過剰摂取の危険がありうる。
【0008】
例えばビタミンDを過剰摂取すると、吐き気や嘔吐、口の渇きなどの症状が現れ、また血管、肝臓、肺などの臓器にカルシウムが異常に沈着する現象が表れることがある。またビタミンB1の過剰摂取の場合、稀に浮腫や脈拍の増加、神経過敏などの症状が表れることがある。ビタミンB2の過剰摂取の場合、稀にかゆみ、ちくちくした痛み、痺れや灼熱感などが表れることがある。さらにビタミンB6の過剰摂取の場合、神経系に不調を来たすことがあり、また手足のしびれや痛み、不眠などの症状が表れることがある。
【0009】
一方、ビタミン類などの栄養素を強化した飼料を家禽に給餌し、これらの栄養素を家禽が産卵する家禽卵に移行させ、栄養素が強化された家禽卵を生産する方法と栄養素が強化された家禽卵がこれまでに提案されている。
【0010】
例えば、採卵用家禽にビタミンK1または/およびビタミンK3を10ppm以上含有する飼料を与えて飼育することを特徴とするビタミンK高濃度含有家禽卵の生産方法(特許文献1参照)、主成分である穀類とカルシウム源と、カルシウム不溶化防止剤と、ビタミンDを含むビタミン類とを含有する養鶏用飼料よりなり、この飼料を給餌して鶏卵中におけるカルシウムとビタミンDとを共に強化すること(特許文献2参照)、採卵用家禽飼料にビタミンD類とビタミンK類とを同時に強化して産卵鶏を飼育し、ビタミンD類とビタミンK類とが強化された鶏卵を生産する方法と、ビタミンD類とビタミンK類とが強化された鶏卵(特許文献3参照)、白色系卵採卵用鶏にビタミンK3を10〜100ppm含有する飼料を与えて飼育することを特徴とするビタミンK2高含有白色系鶏卵の生産方法(特許文献4参照)などが知られている。
【0011】
しかしながらこれらの文献に記載された方法またはその方法によって生産された鶏卵は、せいぜい1種または2種の栄養素が強化された鶏卵の生産方法であるかまたは鶏卵であった。しかも上記した特許文献2のたとえば第2頁右欄第2〜5行の「従来より養鶏用飼料が単にカルシウム源やビタミン類を含んでいても、鶏卵に含まれるカルシウムやビタミンの増量にはつながらないことが問題であった」と述べられているように養鶏用飼料にビタミン類が含有されていても鶏卵に含まれるビタミンの増量に必ずしも繋がらないことが知られており、まして多種類のビタミンを飼料中に添加して鶏卵中に移行させようとしても、飼料中に含まれる物質、特にビタミン類による拮抗作用などにより鶏卵中へ全く移行しなかったり、鶏の体内で代謝をうけて消滅又は変性されたり、移行しても移行量の変動幅が大きくなったりして所望する栄養素の一定量を鶏卵中に含有させることが困難であった。
【0012】
例えば、ビタミンAの場合の鶏卵(1個)中への移行の変動幅は、0.15〜124.8μgREの範囲であり、その他ビタミンD 0.125〜22μg、ビタミンE 0.297〜1.4mg、ビタミンB1 0.038〜0.34mg、リボフラビン 0.076〜0.3mg、パントテン酸 464〜810μg、ビタミンB12 130〜730μgとかなり変動幅が大きく、これらビタミン類の鶏卵中での含有量のコントロールが困難あることを示すものである。
【特許文献1】特開昭63−248354号公報
【特許文献2】特開平9−327267号公報
【特許文献3】特開平10−56978号公報
【特許文献4】特開2000−125781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、このように困難な事情に拘らず、鶏卵中に人体に必須であるビタミン類の、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、ビオチン、パントテン酸、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、およびビタミンKをバランスよく含ませることが出来れば、これらビタミン類を過不足無く、また過剰摂取の恐れ無しに、この鶏卵を食することによって摂取することができるところから、かかる鶏卵とその生産方法、およびその鶏卵を生産するための飼料の解明が求められるところである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、代謝作用や拮抗作用を有することから鶏卵中への移行量の変動幅が大きいビタミン類を、鶏卵中に特定量で含有する鶏卵およびその生産方法について、鋭意研究の結果、本発明を完成させたのである。
【0015】
すなわち本発明者らは、ビタミン類のビタミンB1、ビタミンB2、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、パントテン酸、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンD、およびビタミンKのそれぞれを特定範囲の量で含有する飼料を、産卵鶏に給餌することにより、ビタミンB1、ビタミンB2、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、パントテン酸、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンD、およびビタミンKが富化された鶏卵が生産されることを見出したのである。
【0016】
本発明によれば、飼料中に、ビタミンB1 40〜600mg/kg、ビタミンB2 3.6〜150mg/kg、葉酸 1.6〜100mg/kg、ビタミンB12 4.8〜600μg/kg、ビオチン 72〜13000μg/kg、パントテン酸 16〜400mg/kg、ビタミンA 6000〜66000IU/kg、ビタミンE 40〜500mg/kg、ビタミンD 3000〜12000IU/kg、およびビタミンK 16〜600mg/kgのそれぞれを含有する飼料を産卵鶏に給餌することにより、ビタミンB1 0.24〜2mg/可食部全卵100g、ビタミンB2 0.264〜2.2mg/可食部全卵100g、葉酸 48〜400μg/可食部全卵100g、ビタミンB12 0.48〜7μg/可食部全卵100g、ビオチン 11.2〜160μg/可食部全卵100g、パントテン酸 1.32〜11mg/可食部全卵100g、ビタミンA 108〜900μgRE/可食部全卵100g、ビタミンE 1.92〜20mg/可食部全卵100g、ビタミンD 1.2〜7.5μg/可食部全卵100g、およびビタミンK 19.2〜140μg/可食部全卵100gのそれぞれを含有する鶏卵が得られることが見出されたのである。
【0017】
すなわち本発明は、ビタミンB1 40〜600mg/kg、ビタミンB2 3.6〜150mg/kg、葉酸 1.6〜100mg/kg、ビタミンB12 4.8〜600μg/kg、ビオチン 72〜13000μg/kg、パントテン酸 16〜400mg/kg、ビタミンA 6000〜66000IU/kg、ビタミンE 40〜500mg/kg、ビタミンD 3000〜12000IU/kg、およびビタミンK 16〜600mg/kg含有する飼料を、産卵鶏に給餌することを特徴とする、ビタミンB1 、ビタミンB2、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、パントテン酸、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンD、およびビタミンKのそれぞれの含有量が富化された鶏卵を生産する方法に関する。
【0018】
また本発明は、飼料中に、ビタミンB1 40〜600mg/kg、ビタミンB2 3.6〜150mg/kg、葉酸 1.6〜100mg/kg、ビタミンB12 4.8〜600μg/kg、ビオチン 72〜13000μg/kg、パントテン酸 16〜400mg/kg、ビタミンA 6000〜66000IU/kg、ビタミンE 40〜500mg/kg、ビタミンD 3000〜12000IU/kg、およびビタミンK 16〜600mg/kg含有することを特徴とする、ビタミンB1 、ビタミンB2、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、パントテン酸、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンD、およびビタミンKのそれぞれの含有量が富化された鶏卵を生産するための飼料に関する。
【0019】
さらにまた本発明は、上記した特定の範囲のビタミンB1 、ビタミンB2、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、パントテン酸、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンD、およびビタミンKの含有量を有する飼料を産卵鶏に給餌することによって生産される、ビタミンB1 0.24〜2mg/可食部全卵100g、ビタミンB2 0.264〜2.2mg/可食部全卵100g、葉酸 48〜400μg/可食部全卵100g、ビタミンB12 0.48〜7μg/可食部全卵100g、ビオチン 11.2〜160μg/可食部全卵100g、パントテン酸 1.32〜11mg/可食部全卵100g、ビタミンA 108〜900μgRE/可食部全卵100g、ビタミンE 1.92〜20mg/可食部全卵100g、ビタミンD 1.2〜7.5μg/可食部全卵100g、およびビタミンK 19.2〜140μg/可食部全卵100gのそれぞれを含有することを特徴とする鶏卵にも関する。
【0020】
さらに本発明は特定的には、ビタミンB1 50〜450mg/kg、ビタミンB2 5〜50mg/kg、葉酸 3〜20mg/kg、ビタミンB12 6〜450μg/kg、ビオチン 90〜9750μg/kg、パントテン酸 20〜270mg/kg、ビタミンA 7500〜50000IU/kg、ビタミンE 50〜450mg/kg、ビタミンD 3500〜10000IU/kg、およびビタミンK 20〜500mg/kg含有する飼料を、産卵鶏に給餌することを特徴とする、ビタミンB1 、ビタミンB2、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、パントテン酸、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンD、およびビタミンKのそれぞれの含有量が富化された鶏卵を生産する方法に関する。
【0021】
また本発明は特定的には、飼料中に、ビタミンB1 50〜450mg/kg、ビタミンB2 5〜50mg/kg、葉酸 3〜20mg/kg、ビタミンB12 6〜450μg/kg、ビオチン 90〜9750μg/kg、パントテン酸 20〜270mg/kg、ビタミンA 7500〜50000IU/kg、ビタミンE 50〜450mg/kg、ビタミンD 3500〜10000IU/kg、およびビタミンK 20〜500mg/kg含有することを特徴とする、ビタミンB1 、ビタミンB2、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、パントテン酸、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンD、およびビタミンKのそれぞれの含有量が富化された鶏卵を生産するための飼料に関する。
【0022】
さらにまた本発明は、上記した特定の範囲のビタミンB1 、ビタミンB2、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、パントテン酸、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンD、およびビタミンKの含有量を有する飼料を産卵鶏に給餌することによって生産される、ビタミンB1 0.3〜1.5mg/可食部全卵100g、ビタミンB2 0.33〜1.65mg/可食部全卵100g、葉酸 60〜300μg/可食部全卵100g、ビタミンB12 0.6〜
6μg/可食部全卵100g、ビオチン 14〜140μg/可食部全卵100g、パン
トテン酸 1.65〜8.25mg/可食部全卵100g、ビタミンA 135〜675μgRE/可食部全卵100g、ビタミンE 2.4〜16mg/可食部全卵100g、ビタミンD 1.5〜6μg/可食部全卵100g、およびビタミンK 24〜105μg/可食部全卵100gのそれぞれを含有することを特徴とする鶏卵にも関する。
【0023】
さらに本発明の好ましい特定例では、ビタミンB1 50〜350mg/kg、ビタミンB2 5〜30mg/kg、葉酸 3〜15mg/kg、ビタミンB12 6〜400μg/kg、ビオチン 90〜4000μg/kg、パントテン酸 20〜150mg/kg、ビタミンA 7500〜30000IU/kg、ビタミンE 50〜400mg/kg、ビタミンD 3500〜9500IU/kg、およびビタミンK 20〜400mg/kg含有する飼料を、産卵鶏に給餌することを特徴とする、ビタミンB1 、ビタミンB2、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、パントテン酸、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンDおよびビタミンKのそれぞれの含有量が富化された鶏卵を生産する方法に関する。
【0024】
さらに本発明の好ましい特定例では、飼料中にビタミンB1 50〜350mg/kg、ビタミンB2 5〜30mg/kg、葉酸 3〜15mg/kg、ビタミンB12 6〜400μg/kg、ビオチン 90〜4000μg/kg、パントテン酸 20〜150mg/kg、ビタミンA 7500〜30000IU/kg、ビタミンE 50〜400mg/kg、ビタミンD 3500〜9500IU/kg、およびビタミンK 20〜400mg/kg含有することを特徴とする、ビタミンB1 、ビタミンB2、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、パントテン酸、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンDおよびビタミンKのそれぞれの含有量が富化された鶏卵を生産するための飼料に関する。
【0025】
さらにまた本発明の好ましい特定例では、上記した特定の範囲のビタミンB1 、ビタミンB2、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、パントテン酸、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンD、およびビタミンKの含有量を有する飼料を産卵鶏に給餌することによって生産される、ビタミンB1 0.3〜0.8mg/可食部全卵100g、ビタミンB2 0.33〜0.6mg/可食部全卵100g、葉酸 60〜160μg/可食部全卵100g、ビタミンB12 0.6〜5μg/可食部全卵100g、ビオチン 14〜140μg/可食部全卵100g、パントテン酸 1.65〜8mg/可食部全卵100g、ビタミンA 135〜300μgRE/可食部全卵100g、ビタミンE 2.4〜16mg/可食部全卵100g、ビタミンD 1.5〜5μg/可食部全卵100g、およびビタミンK 24〜100μg/可食部全卵100gのそれぞれを含有することを特徴とする鶏卵にも関する。
【0026】
上記した本発明の鶏卵は、特に鶏卵への移行量の変動幅の大きいビタミン類を主体に、10種類のビタミン類をバランスよく含有し、一日に2個を食することにより、ヒトが一日に必要とするビタミンの少なくとも約1/3量を容易に摂取することができ、かつ過剰摂取の憂いも無いという優れた効果を有する。
【0027】
本発明の飼料には、産卵鶏用の飼料として通常使用される飼料(基礎飼料)に必要なビタミン類を添加したものが使用される。この基礎飼料の原料としては、トウモロコシ、マイロ、小麦、大麦、燕麦、ライ麦、玄米、そば、あわ、きび、ひえなどの穀類、米ぬか、トウモロコシぬか、トウモロコシ胚芽などの糟糠類、大豆油かす、きな粉、亜麻仁油かす、パーム核かす、ごま油かす、ひまわり油かす、なたね油かすなどの植物性油かす類、魚粉、フィッシュソリュブル、肉粉、肉骨粉、血粉、脱脂粉乳、カゼイン、乾燥ホエーなどの動物性飼料原料、大豆油、落花生油、やし油、パーム油、タロー、ラードなどの油脂が挙げられる。
これらの基礎飼料の原料を適宜の量で配合して産卵鶏用の基礎飼料とされるが、本発明によれば、これらの基礎飼料に対して、必要なビタミン類である、ビタミンB1 、ビタミンB2、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、パントテン酸、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンD、およびビタミンKのそれぞれが、鶏による代謝および飼料中の物質、特にビタミン類の拮抗作用を考慮して上記した必要な飼料中の含有量となる量で配合して用いられるのである。
【0028】
すなわち本発明によれば基礎飼料中に、ビタミン類すなわちビタミンB1 、ビタミンB2、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、パントテン酸、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンD、およびビタミンKのそれぞれの含有量が、ビタミンB1 40〜600mg/kg、好ましくは50〜450mg/kg、さらに好ましくは50〜350mg/kg、ビタミンB2 3.6〜150mg/kg、好ましくは5〜50mg/kg、さらに好ましくは5〜30mg/kg、葉酸 1.6〜100mg/kg、好ましくは3〜20mg/kg、さらに好ましくは3〜15mg/kg、ビタミンB12 4.8〜600μg/kg、好ましくは6〜450μg/kg、さらに好ましくは6〜400μg、ビオチン 72〜13000μg/kg、好ましくは、90〜9750μg/kg、さらに好ましくは90〜4000μg、パントテン酸 16〜400mg/kg、好ましくは、20〜270mg/kg、さらに好ましくは20〜150mg/kg、ビタミンA 6000〜66000IU/kg、好ましくは、7500〜50000IU/kg、さらに好ましくは7500〜30000IU/kg、ビタミンE 40〜500mg/kg、好ましくは50〜450mg/kg、さらに好ましくは50〜400mg/kg、ビタミンD 3000〜12000IU/kg、好ましくは、3500〜10000IU/kg、さらに好ましくは3500〜9500IU/kg、およびビタミンK 16〜600mg/kg、好ましくは20〜500mg/kgさらに好ましくは20〜400mg/kg、となるようにこれらのビタミン類を必要な場合に添加して調整されるのである。
【0029】
これらのビタミン類入りの産卵鶏飼料を鶏に少なくとも14日間、好ましくは21日間給餌することによって、本発明の目的とする特定量のビタミン類を含有する鶏卵を得ることができる。
【0030】
本発明の鶏卵を得るための産卵鶏には、特に限定はなく、鶏卵を産生する鶏であれば本発明によってビタミン類の含有量を調整した飼料を給餌することでビタミン類の含有量の富化された鶏卵が得られるが、白色系卵採卵用鶏、褐色系卵採卵用鶏、ピンク系卵採卵用鶏などが好ましく、殊に白色系卵採卵用鶏が好ましい。
【0031】
本発明による飼料を給餌することによって、可食部全卵100g中にビタミンB1 0.24〜2mg/100g、好ましくは0.3〜1.5mg/100g、さらに好ましくは0.3〜0.8/100g、ビタミンB2 0.264〜2.2mg/100g、好ましくは0.33〜1.65mg/100g、さらに好ましくは0.33〜0.6mg/100g、葉酸 48〜400μg/100g、好ましくは60〜300μg/100g、さらに好ましくは60〜160μg/100g、ビタミンB12 0.48〜7μg/100g、好ましくは0.6〜6μg/100g、さらに好ましくは0.6〜5μg/100g、ビオチン 11.2〜160μg/100g、好ましくは14〜140μg/100g、パントテン酸 1.32〜11mg/100g、好ましくは1.65〜8.25mg/100g、さらに好ましくは1.65〜8mg/100g、ビタミンA 108〜900μgRE/100g、好ましくは135〜675μgRE/100g、さらに好ましくは135〜300μgRE/100g、ビタミンE 1.92〜20mg/100g、好ましくは2.4〜16mg/100g、ビタミンD 1.2〜7.5μg/100g、好ましくは1.5〜6μg/100g、さらに好ましくは1.5〜5μg/100g、およびビタミンK 19.2〜140μg/100g、好ましくは24〜105μg/100g、さらに好ましくは24〜100μg/100gのそれぞれを含有する鶏卵を得ることができる。
【0032】
つぎに実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を単に説明するためのものであって特許請求の範囲に記載された本発明を限定するものと解してはならない。
【実施例】
【0033】
実施例1〜3
次の表1に示す基礎飼料と、この基礎飼料を用いて飼料中の各種ビタミン類を表2に示す量に調整したビタミン強化飼料を用意した。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
産卵鶏(ジュリア種206日齢)20羽に、この基礎飼料のみを21日間不断給餌した場合(比較例)と、別の産卵鶏(ジュリア種206日齢)20羽に、表2のビタミン強化飼料を21日間不断給餌した場合に、得られた鶏卵中の各種ビタミンを分析した。その分析結果は次の表3の通りである。
【0037】
【表3】

【0038】
上記した分析結果から、飼料中の各種ビタミン類を調整したビタミン強化飼料を産卵鶏に給餌することにより、各種ビタミン類が富化された鶏卵が得られることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンB1 40〜600mg/kg、ビタミンB2 3.6〜150mg/kg、葉酸 1.6〜100mg/kg、ビタミンB12 4.8〜600μg/kg、ビオチン 72〜13000μg/kg、パントテン酸 16〜400mg/kg、ビタミンA 6000〜66000IU/kg、ビタミンE 40〜500mg/kg、ビタミンD 3000〜12000IU/kg、およびビタミンK 16〜600mg/kg含有する飼料を、産卵鶏に給餌することを特徴とする、ビタミンB1 、ビタミンB2、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、パントテン酸、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンD、およびビタミンKのそれぞれの含有量が富化された鶏卵を生産する方法。
【請求項2】
より特定的には、ビタミンB1 50〜450mg/kg、ビタミンB2 5〜50mg/kg、葉酸 3〜20mg/kg、ビタミンB12 6〜450μg/kg、ビオチン 90〜9750μg/kg、パントテン酸 20〜270mg/kg、ビタミンA 7500〜50000IU/kg、ビタミンE 50〜450mg/kg、ビタミンD 3500〜10000IU/kg、およびビタミンK 20〜500mg/kg含有する飼料を、産卵鶏に給餌することを特徴とする、ビタミンB1 、ビタミンB2、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、パントテン酸、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンD、およびビタミンKのそれぞれの含有量が富化された鶏卵を生産する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに特定的には、ビタミンB1 50〜350mg/kg、ビタミンB2 5〜30mg/kg、葉酸 3〜15mg/kg、ビタミンB12 6〜400μg/kg、ビオチン 90〜4000μg/kg、パントテン酸 20〜150mg/kg、ビタミンA 7500〜30000IU/kg、ビタミンE 50〜400mg/kg、ビタミンD 3500〜9500IU/kg、およびビタミンK 20〜400mg/kg含有する飼料を、産卵鶏に給餌することを特徴とする、ビタミンB1 、ビタミンB2、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、パントテン酸、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンDおよびビタミンKのそれぞれの含有量が富化された鶏卵を生産する請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
飼料中に、ビタミンB1 40〜600mg/kg、ビタミンB2 3.6〜150mg/kg、葉酸 1.6〜100mg/kg、ビタミンB12 4.8〜600μg/kg、ビオチン 72〜13000μg/kg、パントテン酸 16〜400mg/kg、ビタミンA 6000〜66000IU/kg、ビタミンE 40〜500mg/kg、ビタミンD 3000〜12000IU/kg、およびビタミンK 16〜600mg/kg含有することを特徴とする、ビタミンB1 、ビタミンB2、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、パントテン酸、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンD、およびビタミンKのそれぞれの含有量が富化された鶏卵を生産するための飼料。
【請求項5】
より特定的には、飼料中に、ビタミンB1 50〜450mg/kg、ビタミンB2 5〜50mg/kg、葉酸 3〜20mg/kg、ビタミンB12 6〜450μg/kg、ビオチン 90〜9750μg/kg、パントテン酸 20〜270mg/kg、ビタミンA 7500〜50000IU/kg、ビタミンE 50〜450mg/kg、ビタミンD 3500〜10000IU/kg、およびビタミンK 20〜500mg/kg含有することを特徴とする、ビタミンB1 、ビタミンB2、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、パントテン酸、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンD、およびビタミンKのそれぞれの含有量が富化された鶏卵を生産するための請求項4に記載の飼料。
【請求項6】
さらに特定的には、飼料中にビタミンB1 50〜350mg/kg、ビタミンB2 5〜30mg/kg、葉酸 3〜15mg/kg、ビタミンB12 6〜400μg/kg、ビオチン 90〜4000μg/kg、パントテン酸 20〜150mg/kg、ビタミンA 7500〜30000IU/kg、ビタミンE 50〜400mg/kg、ビタミンD 3500〜9500IU/kg、およびビタミンK 20〜400mg/kg含有することを特徴とする、ビタミンB1 、ビタミンB2、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、パントテン酸、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンDおよびビタミンKのそれぞれの含有量が富化された鶏卵を生産するための請求項4または5に記載の飼料。
【請求項7】
飼料中に、ビタミンB1 40〜600mg/kg、ビタミンB2 3.6〜150mg/kg、葉酸 1.6〜100mg/kg、ビタミンB12 4.8〜600μg/kg、ビオチン 72〜13000μg/kg、パントテン酸 16〜400mg/kg、ビタミンA 6000〜66000IU/kg、ビタミンE 40〜500mg/kg、ビタミンD 3000〜12000IU/kg、およびビタミンK 16〜600mg/kg含有する飼料を産卵鶏に給餌することによって生産される、ビタミンB1 0.24〜2mg/可食部全卵100g、ビタミンB2 0.264〜2.2mg/可食部全卵100g、葉酸 48〜400μg/可食部全卵100g、ビタミンB12 0.48〜7μg/可食部全卵100g、ビオチン 11.2〜160μg/可食部全卵100g、パントテン酸 1.32〜11mg/可食部全卵100g、ビタミンA 108〜900μgRE/可食部全卵100g、ビタミンE 1.92〜20mg/可食部全卵100g、ビタミンD 1.2〜7.5μg/可食部全卵100g、およびビタミンK 19.2〜140μg/可食部全卵100gのそれぞれを含有することを特徴とする鶏卵。
【請求項8】
より特定的には、ビタミンB1 50〜450mg/kg、ビタミンB2 5〜50mg/kg、葉酸 3〜20mg/kg、ビタミンB12 6〜450μg/kg、ビオチン 90〜9750μg/kg、パントテン酸 20〜270mg/kg、ビタミンA 7500〜50000IU/kg、ビタミンE 50〜450mg/kg、ビタミンD 3500〜10000IU/kg、およびビタミンK 20〜500mg/kg含有する飼料を、産卵鶏に給餌することによって生産される、ビタミンB1 0.3〜1.5mg/可食部全卵100g、ビタミンB2 0.33〜1.65mg/可食部全卵100g、葉酸 60〜300μg/可食部全卵100g、ビタミンB12 0.6〜6μg/可食部全卵100g、ビオチン 14〜140μg/可食部全卵100g、パントテン酸 1.65〜8.25mg/可食部全卵100g、ビタミンA 135〜675μgRE/可食部全卵100g、ビタミンE 2.4〜16mg/可食部全卵100g、ビタミンD 1.5〜6μg/可食部全卵100g、およびビタミンK 24〜105μg/可食部全卵100gのそれぞれを含有することを特徴とする請求項7に記載の鶏卵。
【請求項9】
さらに特定的には、飼料中にビタミンB1 50〜350mg/kg、ビタミンB2 5〜30mg/kg、葉酸 3〜15mg/kg、ビタミンB12 6〜400μg/kg、ビオチン 90〜4000μg/kg、パントテン酸 20〜150mg/kg、ビタミンA 7500〜30000IU/kg、ビタミンE 50〜400mg/kg、ビタミンD 3500〜9500IU/kg、およびビタミンK 20〜400mg/kg含有する飼料を産卵鶏に給餌することによって生産される、ビタミンB1 0.3〜0.8mg/可食部全卵100g、ビタミンB2 0.33〜0.6mg/可食部全卵100g、葉酸 60〜160μg/可食部全卵100g、ビタミンB12 0.6〜5μg/可食部全卵100g、ビオチン 14〜140μg/可食部全卵100g、パントテン酸 1.65〜8mg/可食部全卵100g、ビタミンA 135〜300μgRE/可食部全卵100g、ビタミンE 2.4〜16mg/可食部全卵100g、ビタミンD 1.5〜5μg/可食部全卵100g、およびビタミンK 24〜100μg/可食部全卵100gのそれぞれを含有することを特徴とする請求項7または8に記載の鶏卵。

【公開番号】特開2009−27941(P2009−27941A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192755(P2007−192755)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(399106505)日清丸紅飼料株式会社 (25)
【出願人】(399081176)株式会社アキタ (5)
【Fターム(参考)】