説明

ビタミン類含有飲料

【課題】ビタミン類由来の異臭を抑制し、飲料としての嗜好性を向上させたビタミン類含有飲料を提供する。
【解決手段】ビタミンB1又はその誘導体を含有する酸性飲料に、テアニン及びピログルタミン酸の混合物を含有させる。
【効果】ビタミンB1又はその誘導体に由来する薬効感を損なうことなく、発生する異臭を抑制できる。また、テアニン及びピログルタミン酸の混合物の風味改善作用は、ビタミンB1又はその誘導体とアスコルビン酸、ビタミンB1又はその誘導体とその他ビタミン類などを併用した際に発生する独特な異臭も抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミン類由来の異臭を抑制し、飲料としての嗜好性を向上させたビタミン類含有飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミン類は生物にとって必須の栄養素であり、これが欠乏すると種々の病気になることが知られている。そこで、最近では錠剤やカプセル剤、或いはドリンク剤等の医薬品に類似した形態の栄養食品の形での摂取が多くなされている。このような栄養食品は、複数のビタミン類が同時かつ手軽に摂取できるという利点もあり、広く利用されている。
【0003】
ビタミン類のうち、ビタミンB1は糖代謝酵素の補酵素として働き、疲労回復、精神安定などの効果があるとされ、従来から栄養食品等に利用されている。ビタミンB1はpH2.5〜4.0程度で安定な水溶性ビタミンであるため、ドリンク剤のような酸性飲料として使用されることが多い。
【0004】
しかし、ビタミンB1をドリンク剤等の飲料に供する場合には、まず、その苦味や異臭が問題となる。ビタミンB1の苦味は、ある程度までは薬効感を与えるものであるが、強すぎると飲用し難いものである。特に、ビタミンB1は、他のビタミン類と併用することで、経時的に独特な不快臭が強くなり、服用感の著しい低下をきたすことが知られている。
【0005】
そこで、ビタミンB1に起因する異臭の発生を防止する又は低減する方法として、茶抽出物を用いる方法(特許文献1)や没食子酸や緑茶ポリフェノール等の多価フェノール化合物及び難消化性デキストリンを配合する方法(特許文献2)が提案されている。また、ビタミンB1とアスコルビン酸との併用により発生する独特の異臭を抑制する方法として、糖類や糖アルコールを添加する方法(特許文献3)や、特定の種類のビタミンB1とアスコルビン酸とを特定の重量比で配合する方法(特許文献4)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−304323号公報
【特許文献2】特開2004−305087号公報
【特許文献3】特開平9−194370号公報
【特許文献4】特開2000−189125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ビタミンB1とアスコルビン酸又はその塩との併用により発生する独特の異臭は、長期的な保存中において経時的に強くなる。そのため、製造から摂取までにある程度の期間が見込まれるビタミンB1とアスコルビン酸とを配合した容器詰飲料は、日常的な継続摂取を困難にすることがある。
【0008】
また、本発明者らの検討によると、酸性の容器詰飲料では、アスコルビン酸だけでなく、ビタミンB1とその他ビタミン類とを組み合わせて用いた場合、強い異臭を経時的に発生させることが見出された。
【0009】
本発明の目的は、日常的な摂取にも負担にならない嗜好性に優れた、ビタミンB1含有飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ビタミンB1又はその誘導体を含有する酸性飲料に、テアニン及びピログルタミン酸の混合物を含有させることで、ビタミンB1又はその誘導体に由来する薬効感を損なうことなく、発生する異臭を抑制できることを見出した。また、テアニン及びピログルタミン酸の混合物の風味改善作用は、ビタミンB1又はその誘導体とアスコルビン酸、ビタミンB1又はその誘導体とその他ビタミン類などを併用した際に発生する独特な異臭も抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、これに制限されるものではないが、以下の発明に関する。
(1) (A)ビタミンB1又はその誘導体 0.001〜2重量%;(B)テアニン ビタミンB1又はその誘導体1質量部に対して50〜2000質量部;(C)ピログルタミン酸 ビタミンB1又はその誘導体1質量部に対して0.01〜200質量部;を含有する飲料。
(2) pHが2.8〜4.5である、(1)に記載の飲料。
(3) ビタミンB1又はその誘導体が、ジベンゾイルチアミン塩酸塩、チアミンナフタレン−1,5−ジスホン酸塩またはビスベンチアミンより選ばれる1種または2種以上である、(1)又は(2)に記載の飲料。
(4) テアニン及びピログルタミン酸を有効成分として含む、ビタミン臭抑制剤。
(5) ビタミンが、ビタミンB1又はその誘導体である、(4)に記載の剤。
(6) ビタミンが、ビタミンB1又はその誘導体、及びアスコルビン酸である、(4)に記載の剤。
(7) テアニン及びピログルタミン酸をビタミンB1およびその誘導体に添加することを含む、ビタミン臭の抑制方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の飲料では、テアニン及びピログルタミン酸が相乗的にビタミン臭抑制剤として作用する。本発明のビタミン類、テアニン及びピログルタミン酸を含有する飲料では、ビタミン類に起因する異臭、特にビタミンB1(又はその誘導体)とアスコルビン酸等のその他ビタミン類との併用により発生する異臭が抑制されているので、長期間に渡って保存しても品質が低下せず、容器詰飲料の形態で、嗜好性を低下させることなく、日常摂取することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(ビタミンB1)
本発明の飲料は、特定量のビタミンB1又はその誘導体、テアニン及びピログルタミン酸を配合することによって調製される。
【0014】
本発明において用いるビタミンB1誘導体としては、チアミン塩酸塩、チアミン硝酸塩、ジベンゾイルチアミン塩酸塩、チアミンナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩、ビスベンチアミンおよびそれらの誘導体などが挙げられる。その他にもチアミンプロピルジスルフィド、チアミンテトラヒドロフルフリルジスルフィド(フルスルチアミン)、チアミン−8(メチル−6−アセチルジヒドロチオクテート)ジスルフィドおよびそれらの塩(例えば塩酸塩など)、チアミンジスルフィド、チアミンモノフォスフェートジスルフィド、O,S−ジカルベトキシチアミンなどもビタミンB1誘導体として挙げられる。これらのビタミンB1誘導体は1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0015】
上記のビタミンB1誘導体の中でも、ジベンゾイルチアミン塩酸塩、チアミンナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩またはビスベンチアミンより選ばれる1種または2種以上を用いれば、テアニン及びピログルタミン酸のビタミン臭抑制作用を一層発揮できる。また、これらビタミンB1誘導体は、アスコルビン酸またはその塩との併用によって発生する異臭を一層抑制でき好ましい。
【0016】
本発明の飲料におけるビタミンB1又はその誘導体の含有量は、0.0001〜0.3重量%、好ましくは、0.0005〜0.02重量%程度である。
(ビタミン類)
本発明においてテアニン及びピログルタミン酸は、上記のビタミンB1又はその誘導体に起因する異臭の他、ビタミンB1又はその誘導体とその他ビタミン類とを併用した場合に発生する独特の異臭、特に経時的に強くなる異臭の発生を防止することができる。
【0017】
ビタミンB1又はその誘導体以外のその他ビタミン類としては、まず、アスコルビン酸又はその塩が例示される。アスコルビン酸またはその塩としては、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸の無機塩(例えばアスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウムなどのアスコルビン酸のアルカリ金属塩、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸マグネシウムなどのアスコルビン酸のアルカリ土類金属塩、アスコルビン酸アンモニウムなど)、アスコルビン酸の有機塩(例えば、アルギニン塩、ヒスチジン塩、トリエタノールアミン塩、メグルミン塩など)が含まれる。これらの成分は1種または2種以上を混合して使用することができる。中でも、アスコルビン酸もしくはアスコルビン酸ナトリウムを用いれば、ビタミンB1誘導体との併用によって発生する異臭をより抑制でき好ましい。
【0018】
本発明の飲料におけるアスコルビン酸又はその塩の配合量は、0.001〜2重量%、好ましくは0.01〜1重量%程度である。
上記アスコルビン酸又はその塩の他、本発明のテアニン及びピログルタミン酸のビタミンは、ビタミンB1及びその他のビタミンB群の併用による異臭も抑制することができる。ビタミンB群としては、リボフラビン、リン酸リボフラビンおよびその塩類、フラビンアデニンジヌクレオチド、酪酸リボフラビンなどのビタミンB2類、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン、リン酸ピリドキシン、リン酸ピリドキサール、リン酸ピリドキサミンおよびそれらの塩類などのビタミンB6類、コバラミン、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、酢酸ヒドロキソコバラミン、メコバラミンなどのビタミンB12類、ニコチン酸およびその塩、ニコチンアミド、パントテン酸およびその塩類、パンテノール、パンテチン、葉酸およびその塩類、イノシトール、塩化カルニチン、ビオチンなどが挙げられる。
【0019】
本発明の飲料におけるビタミンB群の含有量は、0.001〜0.2重量%、好ましくは、0.1〜0.1重量%程度である。
(テアニン)
本発明に用いられるテアニンは、テアニンは茶の旨味成分として知られ、グルタミン酸−γ−エチルアミドからなる。L体、D体、DL体(ラセミ体)のいずれも使用可能であるが、中でもL体を用いることが好ましい。市販の試薬、純品(テアニン含量98%以上の精製品)、粗精製品(テアニン含量50〜98%)の他、茶抽出物またはその濃縮物の形態でも用いることができるが、本発明の剤および飲食品においては、呈味や沈殿等の保存性の観点から、粗精製品または純品を用いることが好ましく、特に純品を用いることが好ましい。
【0020】
本発明に用いられるテアニンはどのような方法によって得られたものでも利用可能である。テアニンの製造方法としては、例えば茶葉からの分離精製法、化学的合成法、茶細胞による組織培養法、酵素反応を利用する方法等が挙げられる。酵素反応を利用する方法として、グルタミンとエチルアミンの混合物にグルタミナーゼを作用させてテアニンを得る方法等があり、「サンテアニン」(太陽化学株式会社)として市販されている。酵素反応によって得られるテアニンは、本発明のテアニン(L体)として好適に用いられる。
【0021】
本発明の飲料におけるテアニンの含有量は、異臭の対象となるビタミンB1又はその誘導体1質量部に対して、50〜2000質量部、好ましくは100〜500質量部程度である。50質量部未満であると所望するビタミン臭抑制作用が得られないことがあり、2000質量部以上となると、テアニン由来の風味が飲料の風味に影響を及ぼすことがある。通常、飲料100mLあたり、100〜2000mgのテアニン、好ましくは200〜1500mg、より好ましくは300〜1000mg程度のテアニンを配合すると所望の効果を得ることができる他、飲料にコク味(ボディ感)を付与することができる。
【0022】
(ピログルタミン酸)
本発明に用いられるピログルタミン酸(2−ピロリドンー5−カルボン酸)は、L体、D体、DL体のいずれも使用可能であるが、中でもL体またはDL体が好ましく、特にL体が好ましい。
【0023】
本発明に用いられるピログルタミン酸は、どのような方法によって得られたものでも利用可能であり、テンサイ等の天然の植物から抽出分離したもの、各種動物の熱水抽出物から分離したもの、グルタミン酸、グルタミン等から誘導したもののいずれを用いてもよい。
【0024】
本発明の剤及び飲食品では、ピログルタミン酸を含有させることにより、テアニンやカフェインが有する興奮作用を発現させることがなく、目的とする集中力向上作用のみを得ることができる。そして、ピログルタミン酸を含有する本発明の剤及び飲食品は、従来のテアニンとカフェインの混合物が有する集中力向上作用よりも高い作用を奏する。
【0025】
本発明においては、テアニンとピログルタミンを単に混合して両者の混合物を得ることもできるが、例えば、テアニンの一部を加水分解によりピログルタミン酸とすることにより、テアニンとピログルタミン酸との混合物を得る方法もある。後述のとおり、本発明者らは、高濃度のテアニンを含有する水溶液を酸でpH5以下に調整し、加熱処理した後、一定期間保存することにより、ピログルタミン酸が生成されることを見出している。すなわち、以下の工程を経る方法で簡便にテアニン及びピログルタミン酸の混合物を得ることができる。
(1)テアニン水溶液の調製工程:テアニンを水に溶解し、テアニン水溶液を得る工程。テアニンの濃度は、2000ppm以上が好ましく、2500ppm以上がより好ましく、3000ppm以上が特に好ましく、3500ppm以上としてもよい。テアニン濃度の上限は特に制限されないが、20000ppm以下とすることが好ましい。
(2)テアニン水溶液のpH調整工程:テアニン水溶液に酸(好ましくはクエン酸)を混合してpHを5.0以下に調整する工程。pHは、4.5以下とすることが好ましく、4.0以下がより好ましく、3.5以下がさらに好ましい。
(3)加熱工程:テアニン水溶液を加熱処理する工程。加熱は、好ましくは70〜100℃で行い、加熱処理の時間は10秒〜30分が好ましい。
(4)保存工程:加熱したテアニン水溶液を一定期間保存する工程。好ましくは5〜60℃で1日〜1ヶ月保存することが好ましい。
【0026】
本発明の飲料におけるピログルタミン酸の含有量は、異臭の対象となるビタミンB1又はその誘導体1質量部に対して、0.01〜200質量部、好ましくは0.1〜150質量部程度である。0.01質量部未満であると所望するビタミン臭抑制作用が得られないことがある。通常、飲料100mLあたり、0.2〜200mgのピログルタミン酸、好ましくは0.5〜180mg、1.0〜150mg程度のピログルタミン酸を配合すると所望の効果を得ることができる。
【0027】
また、本発明では、ピログルタミン酸がテアニンのビタミン臭抑制作用と相乗的に作用することに特徴がある。相乗作用が得られるピログルタミン酸(PG)のテアニン(TH)に対する割合((PG)/(TH))は、0.003〜0.7程度である。
【0028】
(その他成分)
pHが高い程、異臭を抑制する効果が高いため好ましいが、本発明の飲料では、ビタミンB1の安定性と微生物汚染防止の観点から、pHを約2.5〜4.5程度、好ましくは2.8〜4.0程度に調整する。pHの調整に、pH調整剤、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸、コハク酸、乳酸、フマル酸、アスコルビン酸などの可食性有機酸;塩酸、リン酸などの無機酸;およびこれらの塩類(例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム塩、アンモニウム塩など)を用いて行われる。
【0029】
さらに、本発明の飲料には、他の任意成分、例えばL−アスパラギン酸またはその塩、(例えばナトリウム、カリウム塩など)などのアミノ酸、カフェイン、矯味剤(例えば、ショ糖、果糖、ブドウ糖、ソルビトール、グリチルリチン、ハチミツなどの天然または人工甘味剤、前記可食性酸などの酸味剤、グルタミン酸ナトリウム、タウリンなどの旨味剤、着香剤など)、矯臭剤、香料、防腐剤などの保存剤(例えば、安息香酸ナトリウムやパラオキシ安息香酸エステルなど)、アルコール、界面活性剤、可溶化剤、着色剤、食物繊維、抗酸化剤、溶解補助剤などを添加することもできる。
【0030】
特にカフェインを用いると、テアニン及びピログルタミン酸と相加的又は相乗的にビタミン臭を抑制する効果を発揮するので、好ましい。本発明の飲料に用いられるカフェインは、市販の試薬、純品(カフェイン含量98%以上の精製品)、粗精製品(カフェイン含量50〜98%)の他、カフェインを含有する植物(茶葉、コーラの実、コーヒー豆、ガラナ等)の抽出物又はその濃縮物の形態でも用いることができるが、本発明の飲料においては、呈味や沈殿等の保存性の観点から、粗精製品または純品を用いることが好ましく、特に純品を用いることが好ましい。カフェインの含有量は、飲料100mLあたり20mg〜200mgが好ましく、50mg〜100mgがより好ましく、70mg〜100mgが特に好ましい。
【0031】
また、本発明のテアニン及びピログルタミン酸を含有する飲料は、香料の劣化に起因する異臭も抑制できるので、香料を配合した飲料は、本発明の飲料の好ましい態様の一つである。香料の種類は問わないが、特に果実の風味を呈する香料(以下、果実香料という)を用いた場合の加熱殺菌時および/または長期保存時に発生する劣化に起因する異臭を顕著に抑制できる。果実香料には、種子植物の食用生殖部分、特に種子に伴い甘味果肉を有する部分から得られる天然香料や、天然源から得られる果実香料を製造するために合成された香料も含まれる。特に好ましい香料は、柑橘類(シトラス香料ともいう)(オレンジ、ミカン、グレープフルーツ、レモン、ライム、ベルガモット等)、リンゴ、ブドウ、モモ、熱帯果実(パイナップル、グァバ、バナナ、マンゴー、アセロラ、パパイヤ、パッションフルーツ、ココナッツ)、その他果実(ウメ、ナシ、アンズ、スモモ、ベリー、チェリー、イチゴ、キウイフルーツ、メロン等)などであり、特に好ましくは柑橘類香料である。これら果実香料は、果汁及び香油のような天然源から得てもよいし、合成してもよい。香料の含有量は、所望する風味や香料の力価により適宜設定すればよいが、通常、飲料100mLあたり、0.001mg〜0.5mg程度、好ましくは0.01〜0.3mg程度である。
【0032】
(製造法)
本発明の飲料は、慣用の方法で製造することができるが、前述のとおり、特定量のテアニンを加熱処理した後、保存処理することで簡便にピログルタミン酸を生成できることから、以下の製造法により製造するのが、簡便である。
【0033】
まず、ビタミンB1又はその誘導体とテアニンとを配合した水溶液を調製し、酸でpHを調整した後、これを加熱処理し、次いで保存処理する方法である。テアニン濃度や加熱処理条件、保存条件は前述のとおりである。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を示して本発明の詳細を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
<試験方法>
以下の例において、テアニン及びピログルタミン酸の定量は以下のようにして行った。
【0035】
(テアニンの定量)
分析機器は、HPLC(高速液体クロマトグラフ、島津製作所)を使用した。構成装置は、移動相の上流側より、移動相脱気装置(DGU−20A5)、移動相切り替えバルブ(FCL−11AL)、ポンプ(LC−20AB)、オートサンプラー(SIL−20AC)、オーブン(CTO−20AC)、蛍光検出器(RF−10A XL)を使用した。また、カラム溶出液と混和する反応液の送出用に、ペリスターポンプ(PRR−2A)を使用した。装置の制御は、コントローラー(CBM−20A)を使用し、制御用ソフトウェア(LCsolution)より行った。分離カラムは、アミノ酸分析用カラム(Shim−pack Amino Li)を使用した。また、アンモニアトラップカラム(Shim−pack ISC−30/S0504(Li))をポンプとオートサンプラーの間に設置した。
【0036】
分析条件は次の通りである。カラム温度は39℃に設定した。移動相は、移動相A液として7%メチルセルソルブを含有する0.15Nクエン酸リチウム水溶液(過塩素酸にてpH2.6に調整)、移動相B液として0.30Nクエン酸リチウム−0.20Mほう酸水溶液(4M水酸化リチウムにてpH10.0に調整)、移動相C液として0.20M水酸化リチウム水溶液を使用し、流速0.6ml/分にて、表1に示すグラジエント条件で溶出した。反応液は、反応液A液として0.0005%次亜塩素酸ナトリウムを含有する炭酸−ほう酸緩衝液(pH10.0に調整)、反応液B液として0.08%オルトフタルアルデヒドと1.40%エタノールと0.04%ポリオキシンエチレンラウリルエーテルと0.10%N−アセチルシステインを含有する炭酸−ほう酸緩衝液(pH10.0に調整)を使用し、それぞれを流速0.3mL/分にて、カラム溶出液と混和した。反応液とカラム溶出液の混和条件は、まずカラム溶出液と反応液A液を内径0.5mm×長さ1000mmの反応コイルで混和し、さらに反応液B液と内径0.5mm×長さ2000mmの反応コイルで混和した。蛍光検出器は、励起波長を350nm、検出波長を450nmに設定した。試料は、液体クロマトグラフィー用の水(和光純薬工業)で適宜希釈し、10μLをオートサンプラーにて注入した。
【0037】
【表1】

【0038】
本実施例においては、上記条件でL−テアニン標準品(東京化成工業)を分析して検量線をあらかじめ作成し、サンプル中のテアニンを定量した。上記条件におけるL−テアニンの溶出時間は37.9分であった。
【0039】
(ピログルタミン酸の定量)
分析機器は、HPLC(高速液体クロマトグラフ、島津製作所(株)製有機酸分析システムを一部改変したもの)を使用した。構成装置は、移動相の上流側より、移動相脱気装置(DGU−20A3)、ポンプ(LC−20AD)、オートサンプラー(SIL−20AC HT)、オーブン(CTO−10A)、電気伝導度検出器(CDD−10A VP)を使用した。また、カラム溶出液と混和する緩衝液の送出用に、ポンプ(LC−10AD)を使用した。装置の制御は、コントローラー(SCL−10A VP)を使用し、制御用ソフトウェア(LCsolution)より行った。分離カラムは、ガードカラム(Shim−pack SPR−H(G) 50mm×7.8mm i.d.)1本と、有機酸分析用カラム(Shim−pack SPR−H 250mm×7.8mm i.d.)2本を、直列で使用した。また、電気伝導度検出器の検出部は、恒温装置(CELL TEMPERATURE CONTROLLER UNIT)で温度を一定に保持した。
【0040】
分析条件は、次の通りである。カラム温度は、40℃に設定した。移動相は、4mM p−トルエンスルホン酸水溶液を使用し、流速0.85ml/分にて、アイソクラティック条件で溶出した。緩衝液は、4mM p−トルエンスルホン酸および100μM EDTA−2Naを含有する16mM Bis−tris水溶液を使用し、流速0.75mL/分にて、カラム溶出液と混和した。電気伝導度検出器の検出部の温度は、43℃に設定した。試料は、液体クロマトグラフィー用の水(和光純薬工業)で適宜希釈し、10μLをオートサンプラーにて注入した。
【0041】
本実施例においては、上記条件でピログルタミン酸標準品(DL体、東京化成工業)を分析して検量線をあらかじめ作成し、サンプル中のピログルタミン酸を定量した。上記条件におけるピログルタミン酸の溶出時間は23.7分であった。
【0042】
実験例1:テアニン及びピログルタミン混合物の製造
表2に示す処方でテアニン含有溶液(pH3.5)を調製した。これを94〜98℃で30秒加熱処理した後、80〜90℃の温度で100mLガラス瓶に100mLずつを充填した。直ちに、75〜80℃の温水を瓶上面からシャワーし、3〜6分間保持した。40℃程度になるまで冷蔵冷却した後、常温まで自然冷却した。得られた容器詰飲料(試料1)を、45℃の恒温層で2週間保存(試料2)、55℃の恒温層で1週間及び3週間保存(試料3,試料4)し、テアニン及びピログルタミン酸含量について測定した。
【0043】
【表2】

【0044】
結果をグラフ1に示す。加熱処理を経て製造されたテアニン(TH)含有飲料を酸性下で保存することにより、ピログルタミン酸(PG)が生成され、テアニン(TH)及びピログルタミン酸(PG)を含有する飲料を簡便に製造できた。
【0045】
【化1】

【0046】
実験例2
表3の処方で実施例1の方法に準じて9種類の飲料を製造した(サンプルNo.1〜9)。得られた飲料を、55℃で1週間保管した後に、専門パネラー3人による官能評価を行った。官能評価は、サンプルNo.1を基準とするNo.2及びNo.3の相対評価、サンプルNo.4を基準とするNo.5及びNo.6の相対評価、サンプルNo.7を基準とするNo.8及びNo.9の相対評価とし、どちらがビタミン臭を強く感じるかを評価した。
【0047】
また、保管後の飲料について、テアニン及びピログルタミン酸含量を測定した。結果を表4に示す。
【0048】
【表3】

【0049】
【表4】

【0050】
官能評価結果を表5に示す。テアニンが約100mg/100mL及びピログルタミン酸が約30mg/100mL以上含まれたサンプル(No.2,No.5,No.8)において若干の改善が確認され、テアニンが約200mL/100mL及びピログルタミン酸が約60mg/100mL以上含まれたサンプル(No.3,No.6,No.9)においてビタミンB1やその他ビタミンの劣化臭の発生を効果的に抑制する効果が確認できた。
【0051】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ビタミンB1又はその誘導体 0.001〜2重量%、
(B)テアニン ビタミンB1又はその誘導体1質量部に対して50〜2000質量部、
(C)ピログルタミン酸 ビタミンB1又はその誘導体1質量部に対して0.01〜200質量部、
を含有する飲料。
【請求項2】
pHが2.8〜4.5である、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
ビタミンB1又はその誘導体が、ジベンゾイルチアミン塩酸塩、チアミンナフタレン−1,5−ジスホン酸塩またはビスベンチアミンより選ばれる1種または2種以上である、請求項1又は2に記載の飲料。
【請求項4】
テアニン及びピログルタミン酸を有効成分として含む、ビタミン臭抑制剤。
【請求項5】
テアニン及びピログルタミン酸をビタミンB1およびその誘導体に添加することを含む、ビタミン臭の抑制方法。

【公開番号】特開2012−10686(P2012−10686A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153385(P2010−153385)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(309007911)サントリーホールディングス株式会社 (307)
【Fターム(参考)】