説明

ビタミンC含有乾燥菓子

【課題】優れた食感を有し、かつビタミンCを効率よく摂取できる菓子を提供する。
【解決手段】ビタミンCを含有する生地からなるマシュマロを乾燥させてなるビタミンC含有乾燥菓子は食感に優れ、かつビタミンCを効率よく摂取できる。該マシュマロは、糖類とゼラチンとビタミンCを含有する液状菓子原料を発泡させた後、該液状菓子原料を型に流し込み、固化させてなるものでもよい。マシュマロの乾燥が相対湿度35%以下の条件下で行われ、水分含量が2.2%以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食感に優れ、かつビタミンCを効率よく摂取できるビタミンC含有乾燥菓子に関する。
【背景技術】
【0002】
マシュマロは古くから知られた西洋菓子の一つであり、ゼラチン等を主成分とし、糖類、コーンスターチ、香料等を加えて混合して泡立てたものを成形し、固化させた泡入りの菓子である。マシュマロは、そのまま単品で食するのが最も代表的な食べ方であるが、その淡白な味と微妙な食感が日本人の嗜好と合いにくいせいか、その需要は減少傾向にある。そこで、マシュマロの生地に種々の食品素材を含有させて味を工夫したり、マシュマロに乾燥等の加工を施して違った食感を与える試みがある。
【0003】
また、近年における健康志向の増大により、食品がもつ疾病等の予防効果に注目が集まっている。すなわち、そのような効果を有する食品を日常的に食することにより、疾病等の発症を予防できることが期待されている。例えば、柑橘類に多く含まれているビタミンC(L−アスコルビン酸)は抗酸化物質として知られ、柑橘類には生活習慣病や老化を抑える効果があると考えられている。
【0004】
そして、マシュマロの生地にビタミンC等の健康によいとされる素材を含有させて付加価値を高めようとする試みがすでにある。例えば、特許文献1には生地に塊状固形物を含有するマシュマロが開示されており、塊状固形物としてビタミン剤が例示されている。
【特許文献1】特開平9−191829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のマシュマロでは、生地の中にビタミン剤等が目視可能な塊状固形物として島のように分散しており、ビタミン剤等は生地から独立した状態で存在している。すなわち、このマシュマロにおいては、生地自体はビタミン剤等を含有していない。また、生地の中に塊状固形物が存在するため、食感としては好みの分かれるところである。一方、ゼラチンに酸を加えると固まりにくくなることは一般によく知られており、ゼラチン等を主成分とするマシュマロ原料に酸であるビタミンCを溶解することは、製造の観点からはあまり好まれない。特許文献1に記載のマシュマロにおいて添加物が塊状固形物として使用されている理由は、この点にもあると想像される。
そこで本発明は、優れた食感を有し、かつビタミンCを効率よく摂取できる菓子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、ビタミンCを含有する生地からなるマシュマロを乾燥させてなるビタミンC含有乾燥菓子である。
【0007】
本発明のビタミンC含有乾燥菓子は、マシュマロを乾燥させてなるものであり、かつ該マシュマロはビタミンCを含有する生地からなるものである。ここで、当該マシュマロの生地はビタミンCを含有するものであり、ビタミンCが当該生地から独立した状態では存在しない。換言すれば、当該マシュマロにおいてはビタミンCが生地を構成する成分の1つとなっており、ビタミンCは塊状固形物等として分散しているような状態では存在しない。すると、該マシュマロを乾燥させてなる本発明のビタミンC含有乾燥菓子においても、ビタミンCが菓子中で塊状固形物等とならずに一様に存在することとなる。その結果、本発明のビタミンC含有乾燥菓子は、優れた食感を有するものとなる。本発明のビタミンC含有乾燥菓子を日常的に食することにより、優れた食感を楽しみながらビタミンCを効率よく摂取することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、1g当たりビタミンCを少なくとも50mg含有する請求項1に記載のビタミンC含有乾燥菓子である。
【0009】
かかる構成により、ビタミンCをより効率よく摂取できる乾燥菓子が提供される。
【0010】
前記マシュマロは、糖類とゼラチンとビタミンCを含有する液状菓子原料を発泡させた後、該液状菓子原料を型に流し込み、固化させてなるものでもよい(請求項3)。
【0011】
請求項4に記載の発明は、マシュマロの乾燥が相対湿度35%以下の条件下で行われる請求項1〜3のいずれかに記載のビタミンC含有乾燥菓子である。
【0012】
かかる構成により、より優れた食感を有するビタミンC含有乾燥菓子が提供される。
【0013】
請求項5に記載の発明は、水分含量が2.2%以下である請求項1〜4のいずれかに記載のビタミンC含有乾燥菓子である。
【0014】
かかる構成により、より優れた食感を有し、かつ保存性にも優れる乾燥菓子が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、優れた食感を有し、かつビタミンCを効率よく摂取できる菓子が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。本発明のビタミンC含有乾燥菓子は、ビタミンCを含有する生地からなるマシュマロを乾燥させてなるものである。すなわち、本発明のビタミンC含有乾燥菓子は、マシュマロを原料として製造されるものである。ここで、本発明におけるマシュマロとは、ゼラチン等を主成分とし、糖類、コーンスターチ、香料等を加えて混合して泡立てたものを成形し、固化させた泡入りの菓子と定義する。さらに、本発明におけるマシュマロにはその同等物を含むものとする。マシュマロの同等物とは、本定義のマシュマロの原料の一部を追加、削除、置換等したもので、マシュマロと同一視できるものと定義する。
【0017】
本発明のビタミンC含有乾燥菓子は、ビタミンCを含有する生地からなるマシュマロを原料とする。ここで、「ビタミンCを含有する生地」とは、ビタミンCが生地に一様に含まれており、塊状固形物等として生地中に分散したような状態ではないことを意味する。すなわち、「ビタミンCを含有する生地」においては、ビタミンCは生地を構成する成分の1つであり、生地から独立した状態では存在していない。「ビタミンCを含有する生地」は、例えば、ビタミンCが溶解している液状マシュマロ原料を固化させることにより製造される。なお、ビタミンCは水溶性であるので、液状マシュマロ原料に溶解させることは容易である。ここで用いられるビタミンCとしては、食品として一般に使用できるものを適宜選択すればよい。
【0018】
本発明のビタミンC含有乾燥菓子におけるビタミンC含量としては特に限定はなく、目的に応じて適宜設定すればよい。好ましい実施形態では、ビタミンC含有乾燥菓子1g当たりビタミンCを少なくとも50mg含有する。この好ましい実施形態のビタミンC含有乾燥菓子によれば、ビタミンCをより効率よく摂取することができる。なお、ビタミンC含量の上限については、原料となるマシュマロにおいて「ビタミンCを含有する生地」を構成できるものであればよい。例えば、1g当たりビタミンCを150mg程度含有するビタミンC含有乾燥菓子が製造可能である。
【0019】
原料となるマシュマロは、糖類とゼラチンとビタミンCを含有する液状菓子原料を発泡させた後、該液状菓子原料を型に流し込み、固化させてなるものでもよい。ここで、「糖類とゼラチンとビタミンCを含有する液状菓子原料」とは、糖類とゼラチンとビタミンCが液状菓子原料に溶解しており、これらの成分が塊状固形物等で液状菓子原料中に分散したような状態ではないことを意味する。すなわち、糖類、ゼラチン、及びビタミンCはいずれも液状菓子原料を構成する成分であり、液状菓子原料から独立した状態では存在していない。
【0020】
原料のマシュマロに使用されるゼラチンとしては、食品として一般に使用できるものを適宜選択すればよく、その由来は問わない。マシュマロに含まれるゼラチンの濃度は1〜10重量%程度、好ましくは2.5〜3.5重量%程度である。なお、ゼラチンの全部又は一部の代わりに卵白を使用することもできる。
【0021】
原料のマシュマロに使用される糖類としては、ブドウ糖、麦芽糖、乳糖、ショ糖(白糖)などの糖、ソルビトールなどの糖アルコール、還元水飴、酵素水飴等の公知の糖類を使用することができる。これらは1種類のみ用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。マシュマロに含まれる糖類の濃度としては、40〜80重量%程度、好ましくは70〜80%程度である。
また原料のマシュマロは、上記したゼラチンや糖類の他に、香料、着色料等が適宜添加されたものでもよい。
【0022】
一般にマシュマロの成形方法としては、ノズルから連続的に生地を押し出して切断成形するエクストルーダー方式(射出方式)と、充填機により型の上に絞り落として成形するデポジッター方式がある。本発明のビタミンC含有乾燥菓子の原料となるマシュマロは、いずれの方式で製造されたものでもよい。マシュマロの大きさ(又は重量)としては、乾燥後のビタミンC含有乾燥菓子が所望の大きさや重量になるように適宜選択すればよく、例えば、1個当たり0.5g〜20gとすることができる。
【0023】
本発明のビタミンC含有乾燥菓子は、上記したマシュマロを乾燥してなるものである。乾燥温度としては特に限定はないが、30〜35℃程度からスタートし、1時間当たり1〜2℃程度のゆっくりした昇温速度で60℃程度まで昇温させ、そのまま数時間〜十数時間保持することが好ましい。すなわち、いきなり60℃程度の高温にさらすとマシュマロの表面に不溶性の層ができてしまい、全体が均一に乾燥されないので好ましくない。また、乾燥の条件としては、温度の他に湿度が重要であり、好ましくは相対湿度が35%以下、より好ましくは25%以下、さらに好ましくは20%以下である。すなわち、相対湿度が35%を超えると、数日以上かけても乾燥が完了しないので好ましくない。
【0024】
また、本発明のビタミンC含有乾燥菓子においては、優れた食感を実現するために生地の水分含量も重要である。好ましい実施形態では水分含量が2.2%以下であり、より好ましくは1.8%以下である。この好ましい実施形態のビタミンC含有乾燥菓子は、より食感に優れ、かつ保存性にも優れる。
【0025】
本発明のビタミンC乾燥菓子は、例えば以下の手順により製造することができる。まず、ゼラチンを加熱しながら水に溶解し、ゼラチン溶解液を調製する。一方、糖類を加熱しながら水に溶解し、糖液を調製する。次に、ゼラチン溶解液を糖液に加え、糖液とゼラチン溶解液を加温しながらよく混合し、ゼラチン/糖類混合液を調製する。次に、このゼラチン/糖類混合液に粉末状等のビタミンCとコーンスターチを加えて強く混合する。このとき、ビタミンCとコーンスターチを溶解させると同時に空気を巻き込ませ、発泡性の液状原料とする。比重が0.5〜0.6程度になった段階で香料を加え、さらに混合して液状菓子原料が完成する。
【0026】
次に、この液状菓子原料を充填機に移送する。充填機へ移送した液状菓子原料を、コーンスターチ等の上に作られた型に流し込む。流し込む量(充填量)としては、例えば1個の型当たり0.5g〜1.0gとする。その後、そのまま放置冷却することにより液状菓子原料が固化し、原料となるマシュマロが完成する。
【0027】
次に、マシュマロを乾燥室に移送し、乾燥する。乾燥の条件としては、まず温度に関しては、35℃付近からゆっくり昇温させ、十数時間かけて60℃付近まで到達させる。その後、60℃付近の温度のまま10時間ほど保持する。また湿度に関しては、相対湿度25%以下を維持する。マシュマロの水分含量が2.2%以下になったことを確認し、本発明のビタミンC含有乾燥菓子が完成する。このようにして製造されたビタミンC含有乾燥菓子は、外見上は目の細かい砂糖の塊のようであり、適度な硬さと食したときのサクサク感を有している。さらに、舌の上で速やかに溶解し、後味にも優れる。またさらに、ビタミンCに由来する適度な酸味が糖類の甘みと組み合わされ、たいへん美味なものとなる。
【0028】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0029】
1.マシュマロの調製
ステンレスミキサーに水5kgとゼラチン(品番:AP−100、ニッタ社)1.7kgを投入し、加温しながら混合・溶解してゼラチン溶解液を調製した。一方、別のステンレスミキサーに水11kgと上白糖40kgを投入し、90〜95℃に保温しながら45rpmの回転数で混合・溶解して糖液を調製した。この糖液が入ったミキサーに上記のゼラチン溶解液を投入し、ゼラチンが固まらないように適度に保温しながら15〜20分間混合した。次に、コーンスターチ(品名:ホワイト、日本澱粉社)6.4kgとビタミンC(325メッシュ、渡辺ケミカル社)5.9kgをミキサーに投入し、15rpmでゆっくり攪拌して溶解させた。さらに水0.5kgを投入し、45rpmの回転数で空気を巻き込みながらよく攪拌した。比重が0.55程度になった段階で香料(品名:C−41453、高砂香料社)0.1kgを投入し、しばらく攪拌した。これにより、ビタミンCが溶け込んだ発泡性の液状菓子原料が調製された。なお、当該液状菓子原料におけるビタミンC含量は、水分の蒸発を考慮しない場合、1g当たり約83.6mgと計算された。これにより、製造されるビタミンD含有乾燥菓子のビタミンC含量について、この値以上の含量が確保された。
【0030】
該液状菓子原料を充填機へ移送した。浅い半球状の窪みを有したトレイにコーンスターチを敷き、コンベアにてトレイを送りながら、該充填機にて各トレイに液状菓子原料を上から充填した。充填量は約0.6gとした。そのまま放置冷却して菓子原料を固化させた。これにより、ビタミンCを含有する生地からなるマシュマロが調製された。
【0031】
2.ビタミンC含有乾燥菓子の製造
調製された各マシュマロを乾燥室に移送した。乾燥室の温度を38℃付近から2℃/時の昇温速度で上昇させ、58℃に到達した段階でそのまま7〜12時間保持し、マシュマロを乾燥させた。この間、乾燥室内の相対湿度は20〜25%に保持した。乾燥後のマシュマロをサンプリングし、加熱乾燥式水分計MF−50(エーアンドディー社)を用いて水分含量を測定したところ、いずれも1.8%以下であった。これにより、各マシュマロが乾燥され、ビタミンCを含有する乾燥菓子(ビタミンC含有乾燥菓子)が製造された。製造されたビタミンC含有乾燥菓子は白色であり、直径が10〜15mm程度、中央部の厚さが5〜8mm程度の少し小さい碁石のような形状を有するものであった。また、その表面および断面は、目の細かい砂糖のような心地よいざらつきを有していた。また、本ビタミンC含有乾燥菓子のビタミンC含量は、上記の液状菓子原料のビタミンC含量(1g当たり約83.6mg)よりも、乾燥により水分が蒸発して軽くなった分だけ大きく、1g当たり約110mgと計算された。
【0032】
製造されたビタミンC含有乾燥菓子は適度の硬さを有し、サクサクした食感を楽しめるものであった。さらに、舌の上でサクサクした食感を保ちながら速やかに溶解し、後味にも優れていた。またさらに、ビタミンCに由来する適度な酸味が糖類の甘みと組み合わされ、たいへん美味なものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンCを含有する生地からなるマシュマロを乾燥させてなるビタミンC含有乾燥菓子。
【請求項2】
1g当たりビタミンCを少なくとも50mg含有する請求項1に記載のビタミンC含有乾燥菓子。
【請求項3】
前記マシュマロは、糖類とゼラチンとビタミンCを含有する液状菓子原料を発泡させた後、該液状菓子原料を型に流し込み、固化させてなるものである請求項1又は2に記載のビタミンC含有乾燥菓子。
【請求項4】
マシュマロの乾燥が相対湿度35%以下の条件下で行われる請求項1〜3のいずれかに記載のビタミンC含有乾燥菓子。
【請求項5】
水分含量が2.2%以下である請求項1〜4のいずれかに記載のビタミンC含有乾燥菓子。