説明

ビデオ再生同期システム、ビデオ同期再生方法及びビデオ同期再生プログラム

【課題】 複数のビデオ再生装置によるビデオ信号の同期を行うビデオ再生同期システムにおいて、所定の再生停止状態を検知した場合には、その位置情報を取得し、当該位置情報に基づいて他のビデオ再生装置との同期化を行う。
【解決手段】 再生制御装置10は、要求によって一のビデオ再生装置からビデオ信号の位置情報を取得する位置情報取得手段112と、取得した位置情報を他の再生制御装置に転送する位置情報転送手段113と、上記位置情報を含む頭出し実施命令を他のビデオ再生装置に出力する頭出し命令手段114と、を備え、ビデオ再生装置20は、再生制御装置10からの要求に応じて、ビデオ信号の位置情報を検出する位置情報検出手段221と、上記位置情報を再生制御装置10に出力する位置情報出力手段212と、上記頭出し実施命令に含まれる位置情報に基づいてビデオ信号の頭出しを行う頭出し実施手段222を備える構成としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビデオ再生同期システムに関し、より詳しくは、複数のビデオ再生装置による映像等の再生を同期させることによって冗長化を図るビデオ再生同期システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、報道やライブ番組等、即時性を要求される放送の中で使用される記録映像等の再生制御においては、番組の進行にあわせこの記録映像等のビデオ信号(映像・音声)の再生位置を迅速かつ柔軟に変更する必要がある。
このため、ビデオ信号の再生速度や正逆方向の制御を、ダイヤル又はレバー等によって容易に操作できるジョグシャトルと呼ばれる可変速再生制御技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、上述の様な即時性を要求される重要な番組の場合、放送に使用される再生装置の故障等の不測の事態に備え、システムの冗長化が必要とされている。
特に、近年の放送局の設備においては、省力化を目的として、これまでのビデオテープレコーダに代えビデオサーバを使用した複雑なコンピュータシステムへの移行が急速に進められるとともに人員も減少しているため、装置の故障などの緊急時における切り換えが自動又は手動で行える冗長化システムが要望されている。
さらに、この冗長化においては、単に再生装置を二重化するだけでなく、装置が切り替わっても同じビデオ信号が切れ間無く出力できるシステムの実現が求められてきた。
【0004】
このため、複数の音声/映像データ記録/再生手段を備え、これらの切り替え制御が可能な音声/映像データ送出装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、HD再生装置の再生位置を検出し、VTR再生装置のビデオテープをその位置に頭出し、これら再生装置によって同時に同じビデオ信号の再生を行い、HD再生装置の異常が発生した場合には、VTR再生装置で再生されたビデオ信号が再生されるようにするビデオ信号記録再生装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平08−287804号公報(第1−2頁、第1−4図)
【特許文献2】特開平09−294243号公報(第1−5頁、第1−2図)
【特許文献3】特開平10−092107号公報(第1−10頁、第1、2、4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2に提案されている音声/映像データ送出装置においては、2つの再生装置によって同じ映像信号を同時に再生させ、必要に応じて切り替えるようにしているが、再生装置内部の機械動作のばらつきやソフトウェア処理のばらつき等が原因で同時再生の途中に相互の再生位置がずれる場合がある。
【0007】
また、上記特許文献3においては、一方の再生装置において再生されているビデオ信号の位置の検出を行い、その検出された位置の情報に基づいて他方の再生装置のビデオ信号の頭出しを行った後に同時再生を行う再生支援処理について説明がされているが、いわゆる再生支援モードに切り替わった直後は完全に同期が取れていても、上述と同じ理由によって同時再生の途中で相互の再生位置がずれる場合がある。
特に、特許文献1にあるような回転式ダイヤル(ジョグシャトル)を用いて上述のような同時再生操作を行う場合には、ダイヤルの回転にあわせて様々な速度数値を時々刻々と再生装置に送ることでこのような操作に追従した再生を行うようにしているため、その傾向が著しいものとなる。
【0008】
本発明は、以上のような従来の技術が有する問題を解決するために提案されたものであり、複数のビデオ再生装置によるビデオ信号の同期を行うビデオ再生同期システムにおいて、所定の再生停止状態を検知した場合には、その位置情報を取得し、当該位置情報に基づいて他のビデオ再生装置との同期化を行うビデオ再生同期システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のビデオ再生同期システムは、請求項1に記載するように、同一のビデオ信号を再生する二以上のビデオ再生装置と、上記各ビデオ再生装置が再生するビデオ信号の同期制御を行う一以上の再生制御装置とを備え、上記再生制御装置は、要求によって一のビデオ再生装置からビデオ信号の位置情報を取得する位置情報取得手段と、上記位置情報手段によって取得した位置情報を他の再生制御装置に転送する位置情報転送手段と、上記位置情報転送手段によって転送された位置情報を含む頭出し実施命令を上記一のビデオ再生装置とは異なる任意のビデオ再生装置に出力する頭出し命令手段とを備え、上記ビデオ再生装置は、上記再生制御装置からの要求に応じて、ビデオ信号の位置情報を検出する位置情報検出手段と、上記位置情報を要求元の上記再生制御装置に出力する位置情報出力手段と、上記頭出し実施命令に含まれる位置情報に基づいてビデオ信号の頭出しを行う頭出し実施手段とを備えた構成としてある。
【0010】
このような構成からなる本発明のビデオ再生同期システムによれば、一のビデオ再生装置におけるビデオ信号の再生位置を検出し、その再生位置にあわせて他のビデオ再生装置におけるビデオ信号の頭出しを行うようにしてある。
これにより、他のビデオ再生装置におけるビデオ信号を、一のビデオ再生装置で再生されたビデオ信号と同期させて頭出しを行うことができる。
これによって、例えば、一のビデオ再生装置に不具合が生じた場合でも、他のビデオ再生装置に切り替えることにより、同一映像を再生することが可能となる。
また、位置情報に基づく制御を行うことによりビデオ信号の同期を行うようにしているため、再生装置の切り替え後も同じ映像等を切れ間無く出力することが可能となる。
【0011】
また、本発明のビデオ再生同期システムは、請求項2に記載するように、上記ビデオ再生装置は、ビデオ信号の再生が停止されたときには、所定の識別信号を上記再生制御装置に出力する停止通知手段を備え、上記再生制御装置は、上記所定の識別信号の入力により、上記ビデオ再生装置におけるビデオ信号の再生停止を検知する再生停止検知手段を備え、上記位置情報取得手段は、上記再生停止検知手段により上記ビデオ再生装置におけるビデオ信号の再生停止が検知された場合に、上記ビデオ再生装置にビデオ信号の位置情報を要求し、当該位置情報を取得する構成としてある。
【0012】
このような構成からなる本発明のビデオ再生同期システムによれば、一のビデオ再生装置におけるビデオ信号の停止を確認した場合に、他のビデオ再生装置における同期処理を行うようにしている。
このため、映像の再生が停止したタイミングをもって他のビデオ再生装置における頭出し制御ができるようになる。
これによって、例えば、故障により、あるいは、再生の待機によって停止している一のビデオ再生装置に代えて、他のビデオ再生装置から同一映像を再生出力することが可能となる。
特に、再生停止となる不具合がビデオ再生装置に発生した場合には、自動的に他のビデオ再生装置を再生可能な状態に設定し、即座に切り換えることができるので、利便性の向上をはかることができる。
【0013】
また、本発明のビデオ再生同期システムは、請求項3に記載するように、上記再生制御装置は、上記所定の識別信号が入力された時を計測開始時として再生停止時間を計測する停止時間計測手段を備え、上記位置情報取得手段は、上記再生停止時間が所定時間を超える場合に、上記ビデオ再生装置にビデオ信号の位置情報を要求し、当該位置情報を取得する構成としてある。
【0014】
このような構成からなる本発明のビデオ再生同期システムによれば、一のビデオ再生装置におけるビデオ信号が一定時間以上停止したことを確認した場合に他のビデオ再生装置の同期を行うようにしている。
このため、再生準備に係る操作の途中で再生を一時的に停止させたとき等、本来、同期を行う必要がない場合での無駄な処理を防ぐことができる。
これにより、システム全体の動作効率を高めることができ、省電力化を図ることができる。また、過度の同期処理や負荷に伴う疲労故障を効果的に防止できるため、信頼性の高いシステムを実現化することができる。
【0015】
さらに、本発明のビデオ再生同期システムは、請求項4に記載するように、上記頭出し命令手段は、上記位置情報取得手段によって取得した位置情報を含む頭出し実施命令を上記一のビデオ再生装置とは異なる任意のビデオ再生装置に出力する構成としてある。
【0016】
このような構成からなる本発明のビデオ再生同期システムによれば、一の再生制御装置が取得した一のビデオ再生装置の位置情報を、他の再生制御装置を介さずに、直接他のビデオ再生装置に出力するようにしてある。
このため、一の再生制御装置によって複数のビデオ再生装置を制御でき、低コストのシステムを実現化することができる。
また、信頼性及びコストのバランスを考慮した上で、再生制御装置の数を設定できるため、ユーザの実施態様に適したシステムを構築し、提供することが可能である。
【0017】
また、本発明のビデオ再生同期システムは、請求項5に記載するように、上記ビデオ再生装置によるビデオ信号の再生準備,再生開始,再生停止,再生速度変更及び再生方向変更の少なくともいずれかを含む操作を、ダイヤル又はレバーにより操作可能な手動操作卓を備える構成としてある。
【0018】
このような構成からなる本発明のビデオ再生同期システムによれば、ダイヤル操作又はレバー操作等の、いわゆるジョグシャトル操作によってビデオ再生装置側での再生速度の変更(可変速再生制御)等の各種操作を可能としている。
このため、記録映像の頭出しに即時性及び柔軟性が要求される場合においても的確に対応することができる。
これによって、操作性に優れたビデオ再生同期システムを実現化することが可能となっている。
【0019】
また、本発明のビデオ同期再生方法は、請求項6に記載するように、二以上のビデオ再生装置によって再生する同一のビデオ信号の同期制御を行う同期再生方法であって、一のビデオ再生装置におけるビデオ信号の再生停止を検知するステップと、上記一のビデオ再生装置におけるビデオ信号の再生停止時間を測定するステップと、上記再生停止時間が所定時間を超えた場合には、上記一のビデオ再生装置におけるビデオ信号の位置情報を取得するステップと、取得した上記位置情報に基づいて上記一のビデオ再生装置とは異なる任意のビデオ再生装置におけるビデオ信号の頭出しを行うステップと、を含む方法としてある。
【0020】
このように、本発明は上述したシステム発明だけでなく、方法発明としても実現化することができる。
これによって、具体的な構成に限定されることなく、上述の各ステップを備える限り、本発明を実施することができ、汎用性の高い同期再生方法を提供することができる。
【0021】
また、本発明のビデオ同期再生プログラムは、請求項7に記載するように、同一のビデオ信号を再生する二以上のビデオ再生装置と、上記各ビデオ再生装置が再生するビデオ信号の同期制御を行う一以上の再生制御装置とを再生同期システムとして機能させるためのプログラムであって、上記再生制御装置を構成するコンピュータを、上記ビデオ再生装置からの所定の識別信号の入力により、当該ビデオ再生装置におけるビデオ信号の再生停止を検知する再生停止検知手段、上記所定の識別信号が入力された時を計測開始時として再生停止時間を計測する停止時間計測手段、上記再生停止時間が所定時間を超える場合に限り、上記ビデオ再生装置にビデオ信号の位置情報を要求し、取得する位置情報取得手段、上記位置情報手段によって取得した位置情報を他の再生制御装置に転送する位置情報転送手段、上記位置転送手段によって転送され取得した位置情報を含む頭出し実施命令を上記一のビデオ再生装置とは異なる任意のビデオ再生装置に出力する頭出し命令手段、として機能させるとともに、上記ビデオ再生装置を構成するコンピュータを、ビデオ信号の再生が停止されたときには、所定の識別信号を上記再生制御装置に出力する停止通知手段、上記再生制御装置からの要求に応じて、ビデオ信号の位置情報を検出する位置情報検出手段、上記位置情報を要求元の上記再生制御装置に出力する位置情報出力手段、上記頭出し実施命令に含まれる位置情報に従ってビデオ信号の頭出しを行う頭出し実施手段として機能させるためのプログラムとしてある。
【0022】
このように本発明はプログラムとしても実現化することができる。
これにより、再生制御装置やビデオ再生装置のみならず、記憶装置やCPUを備えたコンピュータ等にプログラムをインストールすることによって本発明を実現することができ、汎用性,拡張性に優れた同期再生プログラムとして提供することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のビデオ再生同期システムによれば、複数のビデオ再生装置間での再生ビデオの頭出しの同期を自動的に取ることができる。
これにより、一のビデオ再生装置から他のビデオ再生装置に出力を切り換えても、同一の映像を切れ間無く継続的に再生出力することができる。
したがって、ビデオ再生装置の障害等、緊急時において迅速に対応しうる信頼性の高いビデオ再生同期システムを実現化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施形態について図1〜図7を参照して説明する。
ここで、以下に示す本実施形態のビデオ再生同期システムは、プログラム(ソフトウェア)の命令によりコンピュータで実行される処理,手段,機能によって実現される。プログラムは、コンピュータの各構成要素に指令を送り、以下に示すような所定の処理・機能を行わせる。すなわち、本実施形態のビデオ再生同期システムにおける各処理・手段は、プログラムとコンピュータとが協働した具体的手段によって実現される。
なお、プログラムの全部又は一部は、例えば、磁気ディスク,光ディスク,半導体メモリ,その他任意のコンピュータで読取り可能な記録媒体により提供され、記録媒体から読み出されたプログラムがコンピュータにインストールされて実行される。また、プログラムは、記録媒体を介さず、通信回線を通じて直接にコンピュータにロードし実行することもできる。
【0025】
[第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態に係るビデオ再生同期システム1aの全体構成を示すブロック図である。
本実施形態のビデオ再生同期システム1aは、再生制御装置10(10a及び10b)、ビデオ再生装置20(20a及び20b)、手動操作卓30及び切り替え制御卓40から構成される。
なお、本実施形態においては、再生制御装置10a及びビデオ再生装置20aをマスタ(現用)、再生制御装置10b及びビデオ再生装置20bをスレーブ(予備)として説明を行うが、図1に示すとおり、上記各装置は、マスタ又はスレーブのどちらにも適用できるよう同一の構成となっている。
以下、本実施形態のビデオ再生同期システムを構成する主な装置について、各々詳細な説明を行う。
【0026】
[再生制御装置10]
再生制御装置10は、ビデオ再生装置20に対し、同期制御に必要な様々な制御を行うものである。
以下、再生制御装置10の詳細な構成について、図2を参照しつつ説明を行う。
図2は、本発明の第一実施形態に係る再生制御装置の詳細な構成を示したブロック図である。
同図に示すとおり、再生制御装置10は、処理シーケンサ11,ポインタ12及びタイマ13を有する。
処理シーケンサ11は、主に再生制御装置10の内外の各制御を行うものであり、一般的には、CPU(中央処理装置)等によって構成されている。
この処理シーケンサ11は、再生停止検知手段111,位置情報取得手段112,位置情報転送手段113及び頭出し命令手段114を有している。
【0027】
再生停止検知手段111は、ビデオ再生装置20におけるビデオ信号の再生停止を検知するものである。本実施形態では、この再生停止の検知をトリガーとしてタイマ13によって再生停止時間を測定し、該再生停止時間が所定時間を超える場合にかぎり、同期制御を行うこととしている。
一方、停止時間を測定せずに、停止を検知すると同時に同期制御を行うといった別の形態も実現可能である。
位置情報取得手段112は、ビデオ再生装置20からビデオ信号の位置情報を取得するものである。ここで、ビデオ信号の位置情報とは、具体的には、フレーム番号,トラック番号,クラスタ,セクタ、あるいはインデックス等、ビデオ信号の位置を識別・特定できるデータであればよい。なお、ここで取得した位置情報は、ポインタ12に出力され、後の同期処理に利用される。
【0028】
位置情報転送手段113は、位置情報取得手段111によって取得され、位置情報格納手段121によって格納された位置情報を他の再生制御装置10に転送するものである。
例えば、マスタ側の再生制御装置10aによってスレーブ側の再生制御装置10bに転送された位置情報は、再生制御装置10bからビデオ再生装置20bに対し出力される頭出し実施命令に利用される。
【0029】
頭出し命令手段114は、取得した一のビデオ再生装置20におけるビデオ信号の位置情報をもとに他のビデオ再生装置20のビデオ信号の頭出し制御を行うものである。
例えば、ビデオ再生装置20aの位置情報が、位置情報転送手段113によって再生制御装置10bに転送されると、これを受けた再生制御装置10bでは、この頭出し命令手段114によって上記位置情報を含んだ頭出し実施命令がビデオ再生装置20bに対して出力されることとなる。
【0030】
ポインタ12は、位置情報取得手段113によって取得された位置情報を格納する位置情報格納手段121を有しており、一般的には、RAM(Random Access Memory)等によって構成されるものである。
位置情報格納手段121によって格納された位置情報は上述の通り、位置情報転送手段113によってスレーブ側の再生制御装置10bに転送され、スレーブ側のビデオ再生装置20bの同期制御に用いられる。
【0031】
タイマ13は、ビデオ再生装置20におけるビデオ信号の再生停止時間を検出する停止時間計測手段131を有している。
具体的には、ビデオ再生装置20から再生停止を伝える所定の信号を受けた時点を計測開始点とし、再生停止時間を計測する。
なお、本実施形態においては、再生停止時間が所定時間を超えた場合に限り、同期制御を行うこととしている。
この所定時間は、例えば、0.5秒から2秒程度が一般的とされるが、それぞれの運用形態にあわせ、任意の値を設定することが可能である。
【0032】
[ビデオ再生装置20]
ビデオ再生装置20は、例えば、ビデオテープレコーダ(プレーヤ)やビデオディスクレコーダー(プレーヤ),ビデオサーバ等によって構成されるものであるが、映像、音声からなるビデオ信号を再生可能な装置であればよい。
以下、ビデオ再生装置20の詳細な構成について、図3を参照しつつ説明する。
図3は、本発明の第一実施形態に係るビデオ再生装置の詳細な構成を示すブロック図である。
同図に示すとおり、ビデオ再生装置20は、再生制御回路21,ポインタ22,記録メディア23及び再生回路24を有する。
【0033】
再生制御回路21は、主に再生制御装置10の内外の各制御をつかさどるものであり、さらに、停止通知手段211及び位置情報出力手段212を有する。
停止通知手段211は、再生回路24により再生されているビデオ信号が停止した場合にその旨の通知を再生制御装置10に通知するものである。
例えば、手動操作卓30の操作等により再生停止コマンドが出力され、再生が停止した場合には、再生停止が完了したことを示す所定の制御応答信号が返信されるので、この制御応答信号を識別信号として再生制御装置10に出力することによって、再生停止を通知することができる。
また、ビデオ再生装置20が故障により停止した場合に所定の識別信号を出力することによって再生停止を通知するようにしてもよい。
【0034】
位置情報出力手段212は、ポインタ22(位置情報検出手段221)によって検出された位置情報を再生制御装置10に出力するものである。
例えば、ポインタ22(位置情報検出手段221)によって検出されたマスタ側のビデオ再生装置20aの記録メディア23の位置情報は、この位置情報出力手段212によって、再生制御装置10aに出力されることとなる。
【0035】
ポインタ22は、位置情報検出手段221及び頭出し実施手段222を有する。
位置情報検出手段221は、再生制御装置10からの要求に応じて記録メディア23からビデオ信号の位置情報を検出するものである。
頭出し実施手段222は、再生制御装置10からの頭出し実施命令及び該命令に含まれる位置情報に応じてビデオ再生装置20の頭出しを実施するものである。
例えば、ビデオ再生装置20bが再生制御装置10bから頭出し実施命令を受けた場合、この頭出し実施手段222によって記録メディア23の頭出しが行われる。上記頭出し実施命令にはマスタ側のビデオ信号の位置情報が含まれており、この位置と同じ位置に頭出しを行うことにより、マスタ側の映像信号の位置と、スレーブ側の映像信号の位置とが一致し、同期が完了する。
【0036】
記録メディア23は、例えば、ビデオテープ,ハードディスク,CD,DVD等、再生する映像や音声からなるビデオ信号を格納するものであればよい。
また、再生回路24は、記録メディア23に格納されてあるビデオ信号を加工し再生出力するものである。
また、再生回路24により再生停止が検知されると、これをトリガーとして一連の同期制御が開始されることとなる。
【0037】
[手動操作卓30]
手動操作卓30は、ビデオ再生装置20で再生する映像の再生準備や再生開始,再生速度変更,再生方向変更等の各種操作を行うものであり、特に、本実施形態においては、ダイヤル又はレバーによって再生速度変更の操作を容易に行えるようになっている。
この手動操作卓30からの各操作に応じ、スピードや方向を定義する所定のコマンドが再生制御装置10に送られ、これらのコマンドがそのままビデオ再生装置に伝達されることによって、操作に基づいた再生動作が行われることとなる。
【0038】
[切換え制御卓40]
切換え制御卓40は、ビデオ再生装置20やこれを制御する再生制御装置10の現用・予備(又は待機)の切換操作を行うものであり、スイッチやボタン等の簡易操作によって瞬時に系切り換えを実行することができる。
具体的には、現用のマスタ側の装置に障害が発生したときに、スレーブ側の装置を現用に切り換えることによって、切り換え前と同一の映像を継続して再生せしめるものである。
【0039】
次に、以上のような構成からなる第一実施形態のビデオ再生同期システムにおける動作について図4及び図5を参照しつつ説明する。
図4は、本発明の第一実施形態に係るビデオ再生同期システム1aにおける各動作の流れを表した制御シーケンス図である。
【0040】
図4に示すように、マスタ側の再生制御装置10aがマスタ側のビデオ再生装置20aを制御し、スレーブ側の再生制御装置10bがスレーブ側のビデオ再生装置20bを制御する場合、上位制御すなわち手動操作卓30からの各操作コマンドは、マスタ側の再生制御装置10aとスレーブ側の再生制御装置10bの双方に通知される(A1とA1’、B1とB1’、C1とC1’、D1とD1’)。
【0041】
例えば、再生スタンバイを行う場合(A)、手動操作卓30から再生スタンバイコマンドが出力されるが、これは再生制御装置10aに入力される(A1)とともに、再生制御装置10bにも入力される(A1’)こととなる。そして、それぞれの再生制御装置(10a、10b)は、ビデオ再生装置(20a、20b)に対し再生スタンバイコマンド(A2、A2’)を出力し、これをビデオ再生装置(20a、20b)が応答(A3、A3’)し再生スタンバイモードとなる。
【0042】
論理上、上述のシーケンスは、再生スタートを行う場合(B)、可変速再生制御を行う場合(C)、再生停止を行う場合(D)のいずれの場合も、同様であり、同じ命令に基づく制御が、同時に処理されるものである。
しかしながら、実際には、手動操作卓30からのマスタとスレーブに対する制御は独立しており、装置内のハード・ソフトの処理のばらつきによって、マスタ、スレーブ相互の映像・音声の再生位置は次第にずれていくこととなる。
【0043】
ここで、本実施形態のビデオ再生同期システム1aでは、操作が一定時間無い場合、すなわち、再生が一定時間停止されたことをマスタ側の再生制御装置10aが検知すると(E)、マスタ側のビデオ再生装置20aの再生位置を取得し、これをスレーブ側の装置に伝送し、同期させるようにしている。
具体的には、1秒以上の再生停止が確認された場合には、まず、マスタ側の再生制御装置10aから再生位置要求コマンドをマスタ側のビデオ再生装置20aに送る(E1)。
次に、ビデオ再生装置20aが位置情報検出手段221によって停止中のビデオ信号の位置情報を検出し、位置情報出力手段212によって再生制御装置10aに送られる(E2)。
【0044】
この位置情報を受けたマスタ側の再生制御装置10aは、取得した位置情報をスレーブ側の再生制御装置10bに伝送する(E3)。
そして、再生制御装置10bはこの位置情報に従い、スレーブ側のビデオ再生装置20bに対して指定の再生位置の映像等を出力するようキューアップ制御(E4)を行い、マスタ側との同期が完了する(E5)。
このようなシーケンス制御を行うことにより、マスタとスレーブの再生位置がずれてしまった場合も操作者が特別な操作をしなくても、再生の準備が整ったとき等を見計らって、自動的に再生位置が同期されることとなる。
【0045】
次に、時系列からみた本実施形態の動作について、図5を参照しつつ説明する。
図5は、本発明の第一実施形態に係るビデオ再生同期システム1aにおける各動作を時間軸に基づき表したタイミング図である。
同図に示すように、再生を行うビデオ素材を再生する準備(A)のために、再生スタンバイコマンド(A1及びA1’)がビデオ再生装置(20a及び20b)に送られ、準備完了となるとマスタ、スレーブとも停止中の状態になる(AA、A’A’)。
【0046】
ここで、ライブ番組等において映像再生を行う場合には、操作者が目的の再生開始点をサーチするために、予備の1倍速再生(B)やジョグシャトル操作を利用した可変速再生制御(C)を行い、サーチ後は本番再生に備えて一旦停止する(D)のが通常的に行われる操作である。
本実施形態においては、上記一旦停止のタイミングをタイマ13で検知(D、E)することによってマスタ側の再生準備が整ったことを認識し、マスタ側ビデオ再生装置20aで頭出しを行った位置までスレーブ側も追従させるべくキューアップ制御(頭出し)を自動的に行う(E4)。なお、本実施形態においては、上記タイミングとして、停止時間が1秒以上続いている場合にキューアップ制御を行うようにしているが、運用形態にあわせ任意の時間に設定することも可能である。
【0047】
このため、たとえ可変速再生制御でマスタとスレーブの再生位置が相互にずれた場合(F)でも、スレーブ側のビデオ再生装置20bの再生位置は、自動的にマスタ側のビデオ再生装置20aの再生位置と同じ位置にキューアップされるため、再生開始前には常に再生位置が一致したビデオ再生同期システムが実現される。
【0048】
以上説明したように、本実施形態のビデオ再生同期システム1aによれば、マスタ側の再生制御装置10aは、マスタ側のビデオ再生装置20aの走行状態を監視し、再生停止の時間をタイマ13で監視するようにしている。
そして、この停止状態が一定時間続いた場合には、マスタ側のビデオ再生装置20aの再生位置をポインタ22で読み取り、その値をもとにスレーブ側の再生制御装置10bがスレーブ側のビデオ再生装置20bの再生位置をマスタ側と同じ位置に揃えるようにしている。
これらの処理は、操作者の操作の合間に自動的に行われるので、スレーブ側の再生位置は常にマスタ側に同期することになる。
【0049】
このため、切換え制御卓40によってマスタ/スレーブを切り換えられるようにしておけば、マスタ側の装置に障害が発生した緊急時においても、出力をスレーブ側に切り換えた後でも切り換え前と同一の映像を切れ間無く継続して再生出力することが可能となる。
したがって、信頼性の高いビデオ再生システムを実現化することができる。
【0050】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係るビデオ再生同期システム1bについて図6及び図7を参照しつつ説明する。
図6は、本発明の第二実施形態に係るビデオ再生同期システムの全体構成を示すブロック図である。
また、図7は、本実施形態に係る再生制御装置の詳細な構成を示すブロック図である。
【0051】
図6に示すように、本実施形態に係るビデオ再生同期システム1bは、図1に示した第一実施形態に係るビデオ再生同期システム1aの改良実施形態であり、第一実施形態において複数備えられていた再生制御装置10(10a,10b)を、単一の再生制御装置10によって構成したものである。
このように再生制御装置10を一台の装置とすることで、二重化される装置はビデオ再生装置のみになるが、ビデオ再生装置の構成は再生制御装置よりも遙かに複雑で故障が生じやすいため、冗長性としてはビデオ再生装置のみの二重化でも十分な効果が発揮されるだけでなく、低コストが実現できるところに特徴を有する。
【0052】
図7に示すように、本実施形態では、タイマ13(停止時間計測手段131)が一定時間の再生停止を検知した場合、処理シーケンサ11は、マスタ側のビデオ再生装置20aの位置情報を取得し(位置情報取得手段112)、その位置情報をもとにスレーブ側のビデオ再生装置20bへキューアップコマンドを送り(頭出し命令手段114)、再生位置を一致させる。
このように、本実施形態における再生制御装置10では、取得した位置情報を他の再生制御装置を介さずに、自らスレーブ側のビデオ再生装置20bを制御することができる。
従って、本実施形態のビデオ再生同期システム1bによれば、第一実施形態と同様の効果が発揮されるだけでなく、再生制御装置10を一台で構成しているので、システム全体として低コスト化を図ることができる。
【0053】
以上、本発明のビデオ再生同期システムについて、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明にかかるビデオ再生同期システムは、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、本発明のビデオ再生同期システムは、報道、ライブ番組等に限らず、デジタルシネマ等に使用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、複数のビデオ再生装置を備えた放送映像システムに好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第一実施形態に係るビデオ再生同期システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る再生制御装置の詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係るビデオ再生装置の詳細な構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第一実施形態に係るビデオ再生同期システムにおける各動作の流れを表したフローチャートである。
【図5】本発明の第一実施形態に係るビデオ再生同期システムにおける各動作を時間軸に基づき表したタイミング図である。
【図6】本発明の第二実施形態に係るビデオ再生同期システムの全体構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第二実施形態に係る再生制御装置の詳細な構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0056】
1 ビデオ再生同期システム
10 再生制御装置
11 処理シーケンサ
12、22 ポインタ
13 タイマ
20 ビデオ再生装置
21 再生制御回路
23 記録メディア
24 再生回路
30 手動操作卓
40 切換え制御卓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一のビデオ信号を再生する二以上のビデオ再生装置と、
上記各ビデオ再生装置が再生するビデオ信号の同期制御を行う一以上の再生制御装置と、を備え、
上記再生制御装置は、
要求によって一のビデオ再生装置からビデオ信号の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
上記位置情報手段によって取得した位置情報を他の再生制御装置に転送する位置情報転送手段と、
上記位置情報転送手段によって転送された位置情報を含む頭出し実施命令を上記一のビデオ再生装置とは異なる任意のビデオ再生装置に出力する頭出し命令手段と、を備え、
上記ビデオ再生装置は、
上記再生制御装置からの要求に応じて、ビデオ信号の位置情報を検出する位置情報検出手段と、
上記位置情報を要求元の上記再生制御装置に出力する位置情報出力手段と、
上記頭出し実施命令に含まれる位置情報に基づいてビデオ信号の頭出しを行う頭出し実施手段と、を備える
ことを特徴とするビデオ再生同期システム。
【請求項2】
上記ビデオ再生装置は、
ビデオ信号の再生が停止されたときには、所定の識別信号を上記再生制御装置に出力する停止通知手段を備え、
上記再生制御装置は、
上記所定の識別信号の入力により、上記ビデオ再生装置におけるビデオ信号の再生停止を検知する再生停止検知手段を備えるとともに、
上記位置情報取得手段が、上記再生停止検知手段により上記ビデオ再生装置におけるビデオ信号の再生停止が検知された場合に、上記ビデオ再生装置にビデオ信号の位置情報を要求し、当該位置情報を取得することを特徴とする請求項1に記載のビデオ再生同期システム。
【請求項3】
上記再生制御装置は、
上記所定の識別信号が入力された時を計測開始時として再生停止時間を計測する停止時間計測手段を備え、
上記位置情報取得手段は、上記再生停止時間が所定時間を超えた場合に、上記ビデオ再生装置にビデオ信号の位置情報を要求し、当該位置情報を取得することを特徴とする請求項2に記載のビデオ再生同期システム。
【請求項4】
上記頭出し命令手段は、
上記位置情報取得手段によって取得した位置情報を含む頭出し実施命令を上記一のビデオ再生装置とは異なる任意のビデオ再生装置に出力することを特徴とする請求項1,2又は3のいずれかに記載のビデオ再生同期システム。
【請求項5】
上記ビデオ再生装置によるビデオ信号の再生準備,再生開始,再生停止,再生速度変更及び再生方向変更の少なくともいずれかを含む操作を、ダイヤル又はレバーにより操作可能な手動操作卓を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のビデオ再生同期システム。
【請求項6】
二以上のビデオ再生装置によって再生する同一のビデオ信号の同期制御を行うビデオ同期再生方法であって、
一のビデオ再生装置におけるビデオ信号の再生停止を検知するステップと、
上記一のビデオ再生装置におけるビデオ信号の再生停止時間を測定するステップと、
上記再生停止時間が所定時間を超えた場合に、上記一のビデオ再生装置におけるビデオ信号の位置情報を取得するステップと、
取得した上記位置情報に基づいて上記一のビデオ再生装置とは異なる任意のビデオ再生装置におけるビデオ信号の頭出しを行うステップと、を含むことを特徴とするビデオ同期再生方法。
【請求項7】
同一のビデオ信号を再生する二以上のビデオ再生装置と、上記各ビデオ再生装置が再生するビデオ信号の同期制御を行う一以上の再生制御装置とを再生同期システムとして機能させるためのプログラムであって、
上記再生制御装置を構成するコンピュータを、
上記ビデオ再生装置からの所定の識別信号の入力により、当該ビデオ再生装置におけるビデオ信号の再生停止を検知する再生停止検知手段、
上記所定の識別信号が入力された時を計測開始時として再生停止時間を計測する停止時間計測手段、
上記再生停止時間が所定時間を超える場合に、上記ビデオ再生装置にビデオ信号の位置情報を要求し、当該位置情報を取得する位置情報取得手段、
上記位置情報手段によって取得した位置情報を他の再生制御装置に転送する位置情報転送手段、
上記位置情報転送手段によって転送され取得した位置情報を含む頭出し実施命令を上記一のビデオ再生装置とは異なる任意のビデオ再生装置に出力する頭出し命令手段、として機能させるとともに、
上記ビデオ再生装置を構成するコンピュータを、
ビデオ信号の再生が停止されたときには、所定の識別信号を上記再生制御装置に出力する停止通知手段、
上記再生制御装置からの要求に応じて、ビデオ信号の位置情報を検出する位置情報検出手段、
上記位置情報を要求元の上記再生制御装置に出力する位置情報出力手段、
上記頭出し実施命令に含まれる位置情報に従ってビデオ信号の頭出しを行う頭出し実施手段、として機能させるためのビデオ同期再生プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−158895(P2007−158895A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−353117(P2005−353117)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】