説明

ビニルエーテル化合物の製造方法

【課題】特殊又高価な貴金属触媒や反応性ガスを使用することなく、一般的な反応装置を用いて高純度のビニルエーテル化合物を安価に製造する方法の提供。
【解決手段】式1で表される化合物と、式2で表される化合物とを反応し、式3で表される化合物を得る工程(A)と、式3で表される化合物と、式4又は式5で表される化合物とを反応し、式6で表されるビニルエーテル化合物を得る工程(B)とを含む、ビニルエーテル化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、農薬、ポリマーなどの原料として有用なビニルエーテル化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビニルエーテル化合物は、非対称アセタール化合物の有用な合成原料であり、医薬品、農薬やレジスト用樹脂のような化学品の原料のほか、インキ、塗料の反応性希釈剤として使用されている。また、ビニルエーテルは一般的にカチオン重合性を有し、光学樹脂、透明性樹脂などのポリマー原料や、架橋剤としてUV硬化剤、接着剤などにも使用されており、有用である。更に、ビニルエーテル化合物はアクリル系化合物やスチレン系化合物と比較して、保存安定性が高く、臭気や皮膚刺激性も少ない為、作業性や取扱いに優れるという利点もある。しかしながら、ビニルエーテル化合物はアクリル系化合物に比べてその種類が少なく、また高価であるため、ビニルエーテル化合物に対する需要は充分には満たされていないのが現状である。
【0003】
ビニルエーテル化合物の製造方法については、様々な方法が知られている(例えば特許文献1及び2、非特許文献1参照)。特許文献1では、イリジウム化合物などの遷移金属触媒の存在下で、カルボン酸ビニルエステル化合物とヒドロキシ化合物とを反応させることでビニルエーテル化合物が得られる。しかしながら、触媒として用いる遷移金属触媒は一般的に高価であり、大気中の酸素や水分の影響を受けて触媒活性が変化し、安定した収率が得られない。また、生成したビニルエーテル化合物と、未反応のヒドロキシ化合物の沸点が近く、蒸留精製を行っても高純度のビニルエーテル化合物が得られない場合がある。特許文献2では、アセチレンガスとヒドロキシ化合物を反応させることでビニルエーテル化合物が得られるが、反応性ガスを使用する為には耐圧反応容器等、特殊な設備が必要となる。非特許文献1では、塩酸ガス存在下でアルコールとアルデヒド化合物を反応させた後、塩基と反応させることでビニルエーテル化合物が得られるが、酸性ガスを使用する為、反応容器が耐酸性・耐腐食性を有している必要がある。また、アルコールとアルデヒド化合物との反応後、脱水・精製の工程が必要であり、同一反応容器で次の塩基との反応を実施することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−126395号公報
【特許文献2】特許第3817316号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Eur.J.Org.Chem.2005,2548−57
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、特殊又高価な貴金属触媒や反応性ガスを使用することなく、一般的な反応装置を用いて高純度のビニルエーテル化合物を安価に製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記の構成であり、これにより本発明の上記課題が解決される。
【0008】
〔1〕 下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物とを反応し、下記一般式(3)で表される化合物を得る工程(A)と、下記一般式(3)で表される化合物と、下記一般式(4)又は下記一般式(5)で表される化合物とを反応し、下記一般式(6)で表されるビニルエーテル化合物を得る工程(B)とを含む、ビニルエーテル化合物の製造方法。
【0009】
【化1】

【0010】
式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。RとRとは互いに連結して環を形成してもよい。
はアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
は、アルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。
Xはハロゲン原子を表す。
は一価の置換基を表す。
は0〜4の整数を表す。
【0011】
〔2〕 下記一般式(7)で表される化合物と、下記一般式(8)又は下記一般式(9)で表される化合物とを反応し、前記一般式(1)で表される化合物を得る工程(C)を含む、上記〔1〕に記載のビニルエーテル化合物の製造方法。
【0012】
【化2】

【0013】
式中、R、R及びRは、それぞれ、上記一般式(1)におけるR、R及びRと同義である。
【0014】
〔3〕 前記工程(A)及び工程(B)を、同一反応容器内で一括して行う、上記〔1〕又は〔2〕に記載のビニルエーテル化合物の製造方法。
【0015】
〔4〕 前記工程(C)、前記工程(A)及び前記工程(B)を、同一反応容器内で一括して行う、上記〔2〕に記載のビニルエーテル化合物の製造方法。
【0016】
〔5〕 R、R、Rの炭素数の総和が7以上である、上記〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載のビニルエーテル化合物の製造方法。
【0017】
〔6〕 前記一般式(1)〜(3)及び(6)において、R及びRの炭素数の総和が2以下であり、Rの炭素数が7以上であり、かつ、Rの炭素数が7以上である、上記〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載のビニルエーテル化合物の製造方法。
【0018】
〔7〕 前記一般式(1)〜(3)において、R及びRの炭素数の総和が6以上であり、かつ、Rの炭素数が3以下である、上記〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載のビニルエーテル化合物の製造方法。
【0019】
〔8〕 前記一般式(1)、(3)及び(6)において、Rが、下記一般式(10)で表される基である、上記〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載のビニルエーテル化合物の製造方法。
【0020】
【化3】

【0021】
式中、nは1〜6の整数を表し、Yは環状アルキル基又はアリール基を表す。*は、酸素原子に接続する結合手を示す。
【0022】
〔9〕 前記工程(A)及び前記工程(B)の各々において、反応溶媒として炭化水素系溶媒を使用する、上記〔1〕〜〔8〕のいずれか1項に記載のビニルエーテル化合物の製造方法。
【0023】
〔10〕 前記工程(A)及び前記工程(B)において、同じ反応溶媒を使用する、上記〔1〕〜〔9〕のいずれか1項に記載のビニルエーテル化合物の製造方法。
【0024】
〔11〕 前記工程(C)において、反応溶媒として炭化水素系溶媒を使用する、上記〔2〕〜〔10〕のいずれか1項に記載のビニルエーテル化合物の製造方法。
【0025】
〔12〕 前記工程(C)、前記工程(A)及び前記工程(B)において、同じ反応溶媒を使用する、上記〔2〕〜〔11〕のいずれか1項に記載のビニルエーテル化合物の製造方法。
【0026】
本発明は、更に下記の構成であることが好ましい。
【0027】
〔13〕 Rの炭素数が11以上である、上記〔6〕に記載のビニルエーテル化合物の製造方法。
【0028】
〔14〕 Rの炭素数が2以下である、上記〔7〕に記載のビニルエーテル化合物の製造方法。
【0029】
〔15〕 上記工程(C)において、反応活性化剤を添加する、上記〔1〕〜〔14〕のいずれか1項に記載のビニルエーテル化合物の製造方法。
【0030】
〔16〕 上記工程(C)において、酸触媒を添加する、上記〔2〕〜〔15〕のいずれか1項に記載のビニルエーテル化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、特殊又は高価な貴金属触媒や反応性ガスを使用することなく、一般的な反応装置を用いて高純度のビニルエーテル化合物を安価に製造することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
なお、本明細書に於ける基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有していないものと置換基を有しているものとの双方が含まれることとする。例えば、置換又は無置換を明示していない「アルキル基」は、置換基を有していないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有しているアルキル基(置換アルキル基)をも包含することとする。
【0033】
本発明に係るビニルエーテル化合物の製造方法は、下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物とを反応し、下記一般式(3)で表される化合物を得る工程(A)と、下記一般式(3)で表される化合物と、下記一般式(4)又は下記一般式(5)で表される化合物とを反応し、下記一般式(6)で表されるビニルエーテル化合物を得る工程(B)とを含む。
【0034】
【化4】

【0035】
式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。RとRとは互いに連結して環を形成してもよい。
はアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
は、アルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。R、R及びRの内の2つが互いに連結して環を形成してもよい。
Xはハロゲン原子を表す。
は一価の置換基を表す。
は0〜4の整数を表す。
【0036】
以下、各工程について詳細に説明する。
【0037】
〔工程(A)〕
工程(A)は、下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物とを反応し、下記一般式(3)で表される化合物を得る工程である。
【0038】
【化5】

【0039】
上記一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。RとRとは互いに連結して環を形成してもよい。
【0040】
及びRとしてのアルキル基は、直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、環状アルキル基のいずれでもよく、また、これらの組み合わせも好ましい。アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜20とし、更に好ましくは1〜10であり、1〜6であることが特に好ましい。
【0041】
直鎖状アルキル基としては、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基であることが好ましく、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基、炭素数1〜10の直鎖状アルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜6の直鎖状アルキル基であることが特に好ましい。直鎖状アルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基及びn−ドデシル基などが挙げられる。中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基が特に好ましい。
【0042】
分岐状アルキル基としては、炭素数1〜10の分岐状アルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜6の分岐状アルキル基であることが特に好ましい。分岐状アルキル基の具体例としては、例えば、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ネオペンチル基などが挙げられ、中でもイソプロピル基、tert−ブチル基が好ましい。
【0043】
環状アルキル基は単環型であってもよく、多環型であってもよく、炭素数3〜20の環状アルキル基であることが好ましく、炭素数3〜10の環状アルキル基であることがより好ましい。環状アルキル基の具体例としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、アダマンチル基、イソボルニル基、ノルボルニル基、トリシクロ[5,2,1,02,6]デカニル基、ジアマンチル基などが挙げられ、中でもシクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基が好ましい。
【0044】
直鎖状、分岐状、環状アルキル基の組み合わせとしては、炭素数4〜10のものが好ましく、炭素数7〜10のものがより好ましく、その具体例としては、例えば、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基などが挙げられる。
【0045】
とRとが互いに連結して形成してもよい環としては、4〜10員環が好ましく、5又は6員環がより好ましい。
【0046】
及びRとしてのアリール基は、炭素数4〜20のアリール基であることが好ましく、炭素数6〜14のアリール基であることがより好ましい。このアリール基は、環員としてヘテロ原子を有していてもよく、また、環上に置換基を更に有していてもよい。
このアリール基の具体例としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、ピレニル基、ピリジル基、ピロリル基、インドリル基、カルバゾリル基、チオフェニル基などが挙げられ、中でもフェニル基、ナフチル基が好ましい。
【0047】
アリール基が有し得る置換基としては、例えば、ニトロ基、フッ素原子等のハロゲン原子、カルボキシ基、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルキル基(好ましくは炭素数1〜15)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜15)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜15)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜7)、アシル基(好ましくは炭素数2〜12)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜12)及びアルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜7)が挙げられる。
【0048】
及びRとしてのアラルキル基は、炭素数6〜21のアラルキル基であることが好ましく、炭素数7〜15のアラルキル基であることがより好ましい。このアラルキル基は、環員としてヘテロ原子を有していてもよく、また、環上に置換基を更に有していてもよい。
アラルキル基の具体例としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、プロピルフェニル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、アントラニルメチル基などが挙げられ、中でもベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基が好ましい。
アラルキル基が有し得る置換基としては、アリール基が有し得る置換基として列挙したものと同様のものが挙げられる。
【0049】
一般式(1)中、Rはアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、これらの炭素数の範囲及び具体例としては、例えば、先にR及びRとして列挙したのと同様のものが挙げられる。
【0050】
は、下記一般式(10)で表される基であることが更に好ましい。
【0051】
【化6】

【0052】
式中、nは1〜6の整数を表し、1〜4の整数が好ましく、1又は2が特に好ましい。Yは環状アルキル基又はアリール基を表し、これらの炭素数範囲及び具体例しては、例えば、先にR及びRとして列挙したのと同様のものが挙げられる。
【0053】
以下に一般式(10)で表される基の具体例を示すが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0054】
【化7】

【0055】
以下に一般式(1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0056】
【化8】

【0057】
【化9】

【0058】
【化10】

【0059】
【化11】

【0060】
【化12】

【0061】
上記一般式(2)中、Rはアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
の炭素数は1〜20であることが好ましい。
【0062】
のアルキル基、アリール基及びアラルキル基の炭素数の範囲及び具体例としては、例えば、先にR及びRとして列挙したのと同様のものが挙げられる。
のアルケニル基としては、炭素数2〜20のアルケニル基であることが好ましく、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、ヘプタニル基、オクタニル基、デカニル基、ウンデカニル基、ドデカニル基などを挙げることができる。
【0063】
一般式(2)中、Xはハロゲン原子を表し、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、中でも塩素原子が更に好ましい。
【0064】
一般式(2)で表される化合物としては、例えば、アセチルクロリド、プロピオニルクロリド、酪酸クロリド、イソ酪酸クロリド、ピバロイルクロリド、イソバレリルクロリド、バレリルクロリド、tert−ブチルアセチルクロリド、ヘキサノイルクロリド、ヘプタノイルクロリド、オクタノイルクロリド、ノナノイルクロリド、5−クロロ吉草酸クロリド、6−ブロモヘキサノイルクロリド、シクロヘキサンカルボニルクロリド、2−エチルヘキサノイルクロリド、2−プロピルバレリルクロリド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルクロリド、デカン酸クロリド、ウンデカノイルクロリド、ラウロイルクロリド、ミリスチン酸クロリド、パルミトイルクロリド、ヘプタデカノイルクロリド、ステアロイルクロリド、オレオイルクロリド、リノレオイルクロリド、10−ウンデセノイルクロリド、アセチルブロミド、プロピオニルブロミド、イソ酪酸ブロミド、バレリルブロミド、2−ブロモブチリルブロミド、2−ブロモプロピオニルブロミド、アセチルヨージドが挙げられるが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0065】
一般式(3)中のR〜R及びXは、それぞれ、一般式(1)又は(2)に記載のR〜R及びXと同義であり、好ましい例も同様である。
【0066】
、R及びRの各々における炭素数は特に限定されないが、R、R及びRの炭素数の総和が7以上である形態は、本発明の好ましい形態の内の1つである。
この形態において、R〜Rの炭素数の総和の上限値は、60以下であることが好ましく、45以下であることがより好ましい。
【0067】
また、前記一般式(1)〜(3)において、(i)R及びRの炭素数の総和が2以下、Rの炭素数が7以上である場合は、Rの炭素数は7以上であることが好ましく(より好ましくはRの炭素数は11以上)、(ii)R及びRの炭素数の総和が6以上である場合は、Rの炭素数は3以下(より好ましくはRの炭素数は2以下、更に好ましくはRの炭素数は1)であることが好ましい。
換言すれば、上記形態(i)は、R及びRの炭素数の総和が2以下であり、Rの炭素数が7以上であり、かつ、Rの炭素数が7以上である形態であり、上記形態(ii)は、R及びRの炭素数の総和が6以上であり、かつ、Rの炭素数が3以下である形態である。
【0068】
上記形態(i)において、R及びRの炭素数の総和は、0〜2の整数であり、0又は1であることがより好ましい。Rの炭素数は7〜20の整数であることが好ましく、7〜15の整数であることがより好ましく、7〜10の整数であることが更に好ましい。Rの炭素数は7〜20の整数であることが好ましく、11〜20の整数であることがより好ましい。
上記形態(ii)において、R及びRの炭素数の総和は、6〜20の整数であることが好ましく、6〜15の整数であることがより好ましい。Rの炭素数は1〜3であり、1又は2であることが好ましい。
【0069】
上記形態(i)において、Rのアルキル基、アリール基又はアラルキル基としては、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基等の炭素数7〜20のアルキル基、トルイル基、ナフチル基、ジメチルフェニル基等の炭素数7〜20のアリール基、ベンジル基、1−フェニルプロピル基、2−フェニルエチル基等の炭素数7〜21のアラルキル基が挙げられる。
のアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基としては、上記したRのアルキル基、アリール基及びアラルキル基の例に加え、ヘプタニル基、オクタニル基、デカニル基、ウンデカニル基、ドデカニル基等の炭素数7〜20のアルケニル基を挙げることができ、中でもアルキル基が好ましい。
としてのアルキル基は、n−ヘプチル基、n−ウンデシル基、n−トリデシル基、n−ペンタデシル基又はn−ヘプタデシル基が更に好ましい。
【0070】
上記形態(ii)において、R及びRの炭素数の総和が6〜20の整数である限り、R及びRは特に限定されない。
また、形態(ii)において、Rは炭素数が3以下であることから、Rとしては、炭素数1〜3のアルキル基、又は、炭素数2若しくは3のアルケニル基を挙げることができ、中でも、炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。炭素数1〜3のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられ、中でもメチル基が好ましい。
【0071】
[反応溶媒]
工程(A)の反応を行う溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、デカン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトニトリル等が好適に用いられ、中でも炭化水素系溶媒が更に好ましく、ヘキサン、ヘプタンが特に好ましい。後述する工程(C)で用いた溶媒をそのまま工程(A)の溶媒として使用することもできる。また、一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物の少なくとも何れか一方が液体である場合には、無溶媒で工程(A)の反応を行うことも出来、溶媒を使用する場合よりもコスト面、環境面でより好ましい。
【0072】
[一般式(1)で表される化合物に対する一般式(2)で表される化合物の使用量]
工程(A)において、一般式(2)で表される化合物は一般式(1)で表される化合物1モルに対して、1〜10モルで用いられることが好ましく、1〜2モルで用いられることがより好ましい。
【0073】
[その他の添加剤]
工程(A)の反応を行う際の添加剤としては、反応活性化剤として、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、酢酸亜鉛、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛、トリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム(III)等を加えてもよい。添加量としては、一般式(1)で表される化合物に対し、0.001〜10モル%が好ましく、0.01〜0.1モル%が更に好ましい。
【0074】
[反応温度・時間]
工程(A)の反応を行う温度としては、0〜100℃が好ましく、25〜80℃が更に好ましく、40〜60℃が特に好ましい。
工程(A)の反応を行う時間としては、0.5〜24時間が好ましく、1〜6時間が更に好ましく、1〜2時間が特に好ましい。
【0075】
[反応後の処理]
工程(A)の反応では、下記一般式(11)で表されるエステル化合物が、上記一般式(3)で表される化合物に対して等モル量で副生する。
【0076】
【化13】

【0077】
上記一般式(11)中、R及びRは、それぞれ、上記一般式(1)及び一般式(2)中のR、Rと同義であり、好ましい例も同様である。
【0078】
一般式(11)で表される化合物の沸点が比較的低い(例えば常圧での沸点が150℃以下である)場合、(AI)工程(A)の反応終了後に、減圧留去により除去してもよく、また、(AII)工程(A)の反応終了時には除去せず、後述する工程(B)の溶媒として使用してもよい。一般式(11)で表される化合物の沸点が高い(例えば常圧での沸点が150℃より高い)場合、後述する工程(B)の溶媒として使用することが好ましい(すなわち、上記形態(AII)を採用することが好ましい)。
【0079】
〔工程(B)〕
工程(B)は、前記一般式(3)で表される化合物と、一般式(4)又は一般式(5)で表される化合物とを反応し、一般式(6)で表されるビニルエーテル化合物を得る工程である。
【0080】
【化14】

【0081】
一般式(4)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
【0082】
〜Rの炭素数は、それぞれ独立に、1〜20であることが好ましく、1〜8がより好ましく、1〜3が更に好ましい。
【0083】
、R及びRのアルキル基は酵素原子や窒素原子などのヘテロ原子を有していてもよく、直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、環状アルキル基のいずれでもよく、炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜6のアルキル基であることがより好ましい。R、R及びRのアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ドデシル基等が挙げられ、中でもメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が好ましい。
【0084】
、R及びRのアリール基は酸素原子や窒素原子などのヘテロ原子を有していてもよく、また、環上に置換基を更に有していてもよい。
、R及びRのアリール基は、炭素数4〜20のアリール基であることが好ましく、炭素数6〜10のアリール基であることがより好ましい。このアリール基の具体例としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、ピレニル基、ピリジル基、ピロリル基、インドリル基、が挙げられ、中でもフェニル基が好ましい。
、R及びRのアラルキル基は、ヘテロ原子を有していてもよく、また、環上に置換基を更に有していてもよい。
、R及びRのアラルキル基は、炭素数6〜21のアラルキル基であること好ましく、炭素数7〜15のアラルキル基であることがより好ましい。このアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、プロピルフェニル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、アントラニルメチル基が挙げられ、中でもベンジル基が好ましい。
上記のアリール基及びアラルキル基が環上に有し得る置換基は、一般式(1)のR及びRのアリール基が有し得る置換基と同様である。
【0085】
、R及びRの内の2つが互いに連結して、環を形成してもよい。形成される環としては5員環、6員環、7員環が挙げられ、5員環又は6員環が好ましい。
【0086】
一般式(4)で表される化合物としては、例えば、N,N−ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルイソプロピルアミン、N,N−ジメチルエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、1−メチルピロリジン、1−エチルピロリジン、トリプロピルアミン、トリイソブチルアミン、トリアミルアミン、トリヘキシルアミン、N,N−ジシクロヘキシルメチルアミン、トリオクチルアミン、ジデシルメチルアミン、トリス(2−エチルヘキシル)アミン、N,N−ジメチルヘキサデシルアミン、トリ−n−デシルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン、1−メチルピペリジン、1−エチルピペリジン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N−フェニルモルホリン、N−(4−ピリジル)モルホリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−o−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジメチル−1−ナフチルアミン、N,N−ジメチル−2−ナフチルアミン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジプロピルアニリン、4−ジメチルアミノピリジン、トリフェニルアミン、トリ−p−トリルアミン、N−メチルジフェニルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネンが挙げられるが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0087】
一般式(5)中、nは0〜4の整数であり、0〜3の整数であることが好ましく、0〜2の整数であることがより好ましく、0又は1であることが更に好ましい。
は一価の置換基である。一価の置換基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基が挙げられる。
のアルキル基の炭素数は好ましくは1〜5であり、更に好ましくは1〜3である。このアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基が挙げられ、中でもメチル基、エチル基が好ましい。
のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、中でも塩素原子、臭素原子が好ましい。
のアルコキシ基の炭素数は好ましくは1〜5であり、更に好ましくは1〜3である。このアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブチロキシ基、sec−ブチロキシ基、tert−ブチロキシ基、n−ペンチロキシ基が挙げられ、中でもメトキシ基、エトキシ基が好ましい。
のジアルキルアミノ基の炭素数は好ましくは1〜3である。このジアルキルアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基が挙げられる。
【0088】
一般式(5)で表される化合物としては、例えば、ピリジン、2−ピコリン、3−ピコリン、4−ピコリン、2,3−ルチジン、2,4−ルチジン、2,5−ルチジン、2,6−ルチジン、3,4−ルチジン、3,5−ルチジン、2−エチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、2−メトキシピリジン、3−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2,6−ジメトキシピリジン、2−クロロ−6−メトキシピリジン、2−ブトキシピリジン、2−クロロピリジン、3−クロロピリジン、4−クロロピリジン、2,6−ジクロロピリジン、2−クロロ−4−メチルピリジン、2−ブロモピリジン、2−ジメチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジンが挙げられるが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0089】
[反応溶媒]
工程(B)の反応を行う溶媒としては、炭化水素系溶媒、ハロゲン系溶媒、エーテル系溶媒、アセトニトリル等が好適に用いられ、炭化水素系溶媒、ハロゲン系溶媒及びエーテル系溶媒の具体例は、工程(A)で説明したものと同様である。中でも炭化水素系溶媒が更に好ましく、ヘキサン、ヘプタンが特に好ましい。一般式(3)で表される化合物及び一般式(4)又は一般式(5)で表される化合物の少なくとも何れか一方が液体である場合には、無溶媒で工程(B)の反応を行うことがより好ましい。また、工程(A)で用いた溶媒をそのまま工程(B)の溶媒として使用してもよく、工程(A)で生成した上記一般式(11)で表される化合物を溶媒として用いてもよい。
【0090】
[一般式(3)で表される化合物に対する一般式(4)又は一般式(5)で表される化合物の使用量]
工程(B)において、一般式(4)又は一般式(5)で表される化合物は一般式(3)で表される化合物1モルに対して、0.1〜10モルで用いられることが好ましく、1〜5モルで用いられることがより好ましい。
【0091】
[反応温度・時間]
工程(B)の反応を行う温度としては、0〜150℃が好ましく、25〜100℃が更に好ましく、50〜100℃が特に好ましい。
工程(B)の反応を行う時間としては、0.5〜24時間が好ましく、1〜10時間が更に好ましく、1〜5時間が特に好ましい。
【0092】
[反応後の処理]
上記工程(B)の反応が終了後に得られる有機層は水洗により有機物の塩を除去することが好ましい。次いで、有機層は乾燥、濃縮後、(BI)低沸点副生成物の減圧留去、或いは蒸留による精製を行うことが好ましい。上記(BI)の方法では高純度の精製が困難な場合には、(BII)カラムクロマトグラフィーによって精製を行うことが好ましい。
【0093】
工程(A)における上記形態(AI)又は工程(B)における上記形態(BI)の精製を行う場合、目的物である一般式(3)で表されるα−ハロゲン化エーテル化合物又は一般式(6)で表されるビニルエーテル化合物と、副生成物である一般式(11)で表されるエステル化合物との沸点に差があればある程、得られるα−ハロゲン化エーテル化合物又はビニルエーテル化合物の収率及び純度が向上して好ましい。ところで、同じα−ハロゲン化エーテル化合物又はビニルエーテル化合物を製造する際でも、用いる一般式(2)で表される化合物の種類を変えることで、副生するエステルの構造が変わり、副生エステルの沸点を適宜調節することが可能である。すなわち、特に、所定の条件下においては、一般式(2)で表される化合物を特定のものに選択することで、目的物と副生物の沸点差を広げ、目的物の純度及び収率を向上させることができる。すなわち、上記形態(i)、(ii)に記載したように、一般式(2)で表される化合物を、下記のように選択することが好ましい。
【0094】
[形態(i)] R及びRの炭素数の総和が2以下、Rの炭素数が7以上である場合
の炭素数が小さいと、目的物(すなわち、一般式(3)で表されるα−ハロゲン化エーテル化合物又は一般式(6)で表されるビニルエーテル化合物)と副生エステル(すなわち、一般式(11)で表されるエステル化合物)の沸点が近く、収率、純度の低下が懸念される為、Rの炭素数は大きい方が好ましい。具体的には、Rの炭素数は7以上が好ましく、11以上が更に好ましい。形態(i)における一般式(1)〜(3)の各基の詳細な説明は前記した通りである。
【0095】
[形態(ii)] R及びRの炭素数の総和が6以上である場合
の炭素数に依らず、上記目的物の方が上記副生エステルよりも沸点が高くなる傾向がある。その為、Rの炭素数は小さい方が沸点差は広がり、好ましい。具体的には、Rの炭素数は3以下が好ましく、2以下が更に好ましく、1が特に好ましい。形態(ii)における一般式(1)〜(3)の各基の詳細な説明は前記した通りである。
【0096】
工程(A)及び工程(B)は、同一反応容器内で一括して行うことが好ましい。ここで、「同一反応容器内で一括して行う」とは、工程(A)の生成物(すなわち、一般式(3)で表される化合物)の単離操作をすることなく、また、反応液を別の容器に移すことなく、工程(A)から工程(B)までを一括して行うことを意味する。これにより、製造工程をより簡略化できるため、ビニルエーテル化合物をより安価に製造することができる。
この形態においては、工程(A)で用いた溶媒をそのまま工程(B)の溶媒として使用することが好ましい。すなわち、工程(A)における溶媒と工程(B)における溶媒とは同じであることが好ましい。これにより、製造工程を更に簡略化することができる。
【0097】
〔工程(C)〕
本発明のビニルエーテル化合物の製造方法は、更に、一般式(1)で表される化合物の製造工程として、下記一般式(7)で表される化合物と、下記一般式(8)又は一般式(9)で表される化合物を反応する工程(C)を含んでもよい。
【0098】
【化15】

【0099】
一般式(7)〜(9)中、R、R及びRは、それぞれ、一般式(1)におけるR、R及びRと同義であり、好ましい例も同様である。
【0100】
以下、一般式(7)で表される化合物の具体例を例示するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0101】
【化16】

【0102】
以下、一般式(8)で表される化合物の具体例を例示するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0103】
【化17】

【0104】
以下、一般式(9)で表される化合物の具体例を例示するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0105】
【化18】

【0106】
[反応溶媒]
工程(C)の反応を行う溶媒としては、炭化水素系溶媒、ハロゲン系溶媒、エーテル系溶媒、アセトニトリル等が好適に用いられ、炭化水素系溶媒、ハロゲン系溶媒及びエーテル系溶媒の具体例は、工程(A)で説明したものと同様である。中でも、上記炭化水素系溶媒は、水と共沸混合物を形成し、ディーンスターク装置を用いることで、反応によって生成した水を除去することができるので好ましい。炭化水素系溶媒の中でもヘキサン、ヘプタンが更に好ましい。
【0107】
[一般式(7)で表される化合物に対する一般式(8)又は一般式(9)で表される化合物の使用量]
工程(C)において、一般式(8)又は一般式(9)で表される化合物は一般式(7)で表される化合物1モルに対して、0.05〜10モルで用いられることが好ましく、0.5〜5モルで用いられることがより好ましい。
【0108】
[その他の添加剤]
工程(C)の反応を行う際の添加剤としては、酸触媒を添加することが好ましい。酸触媒としては、硫酸、硝酸、燐酸などの無機酸類、p−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム塩のような有機酸が好適に用いられ、中でもp−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸が好ましい。酸触媒の添加量としては、一般式(7)で表される化合物に対して0.001モル%〜10モル%が好ましく、0.01モル%〜5モル%が更に好ましく、0.1モル%〜1モル%が特に好ましい。
また、その他の添加剤として、モリキュラーシーブス、無水硫酸マグネシウム、無水硫酸ナトリウム等の乾燥剤を添加することもできる。
【0109】
[反応温度・時間]
工程(C)の反応を行う温度としては、0〜150℃の範囲から選択することが好ましい。水と共沸混合物を形成する溶媒を用い、ディーンスターク装置により水を除去する場合には、使用する溶媒の沸点にて反応することが好ましい。上記以外の場合は、20〜80℃が好ましく、25〜60℃が更に好ましい。
工程(C)の反応を行う時間としては、0.5〜24時間が好ましく、1〜10時間が更に好ましく、1〜5時間が特に好ましい。
【0110】
[反応後の処理]
反応に使用した溶媒は、減圧留去により除去してもよく、また、工程(C)の反応終了時には除去せず、そのまま工程(A)の溶媒として使用してもよい。溶媒を除去する以外には、何も処理をすることなく、そのまま工程(A)に進むのが好ましい。
【0111】
工程(C)、工程(A)及び工程(B)は、同一反応容器内で一括して行うことが好ましい。「同一反応容器内で一括して行う」とは、前記同様、工程(C)の生成物(すなわち、一般式(1)で表される化合物)及び工程(A)の生成物(すなわち、一般式(3)で表される化合物)の単離操作をすることなく、また、反応液を別の容器に移すことなく、工程(C)から工程(B)までを一括して行うことを意味する。これにより、製造工程をより簡略化できるため、ビニルエーテル化合物をより安価に製造することができる。
この形態においては、工程(C)で用いた溶媒をそのまま工程(A)の溶媒として使用し、更に、工程(A)で用いた溶媒をそのまま工程(B)の溶媒として使用することが好ましい。すなわち、工程(C)における溶媒と工程(A)における溶媒と工程(B)における溶媒とは同じであることが好ましい。これにより、製造工程を更に簡略化することができる。
【実施例】
【0112】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の内容はこれにより限定されるものではない。
【0113】
<実施例1:ビニルエーテル(V−1)の合成1>
ディーンスターク管を備えたフラスコ内に2−シクロヘキシルエタノール75g(585mmol)、パラアルデヒド51.5g(390mmol)、カンファースルホン酸0.68g(2.9mmol)、ヘプタン105gを加え、4時間還流を行った(工程(C))。H−NMRより、92%の2−シクロヘキシルエタノールがアセタール化合物(a−1)に変換し、8%が未反応のまま存在することを確認した。反応液を50℃まで放冷した後、塩化アセチル27.6g(351mmol)を加え、45℃にて1時間攪拌した(工程(A))。H−NMRにより、アセタール化合物(a−1)の消失を確認した。反応液を25℃まで戻した後、トリエチルアミン71.0g(702mmol)を滴下し、滴下終了後、95℃にて2時間攪拌した(工程(B))。25℃まで放冷後、飽和塩化アンモニウム水溶液100mlを加えて攪拌し、水層を除去した。続いて蒸留水200mLで有機層を洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を除去した。この時点でガスクロマトグラフィーによる分析を行ったところ、2−シクロヘキシルエタノールに由来するピークは確認されなかった。次いで粗生成物を蒸留により精製したところ、留分25.2gを得た。得られた留分をガスクロマトグラフィーで分析したところ、21.2g(137.4mmol)がビニルエーテル(V−1)、4.0gが副生エステル(a−3)であった。ビニルエーテル(V−1)の収率は47%であり、ガスクロマトグラフィーにより求めた純度は84%であった。
【0114】
H−NMR(400MHz,CDCl) δ=6.43(dd,1H),4.19(d,1H),3.97(d,1H),3.71(t,2H),1.90−0.84(m,13H).
【0115】
【化19】

【0116】
<実施例2:ビニルエーテル(V−1)の合成2>
ディーンスターク管を備えたフラスコ内に2−シクロヘキシルエタノール75g(585mmol)、パラアルデヒド51.5g(390mmol)、カンファースルホン酸0.68g(2.9mmol)、ヘプタン105gを加え、4時間還流を行った(工程(C))。H−NMRより、93%の2−シクロヘキシルエタノールがアセタール化合物(a−1)に変換し、7%が未反応のまま存在することを確認した。反応液を50℃まで放冷した後、塩化ラウロイル76.8g(351mmol)を加え、50℃にて1時間攪拌した(工程(A))。H−NMRにより、アセタール化合物(a−1)の消失を確認した。反応液を25℃まで戻した後、トリエチルアミン71.0g(702mmol)を滴下し、滴下終了後、95℃にて2時間攪拌した(工程(B))。25℃まで放冷後、飽和塩化アンモニウム水溶液100mlを加えて攪拌し、水層を除去した。続いて蒸留水200mLで有機層を洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を除去した。この時点でガスクロマトグラフィーによる分析を行ったところ、2−シクロヘキシルエタノールに由来するピークは確認されなかった。次いで粗生成物を蒸留により精製したところ、30.6g(198.4mmol)のビニルエーテル(V−1)を得た。ビニルエーテル(V−1)の収率は68%であり、ガスクロマトグラフィーにより求めた純度は99.2%であった。
【0117】
【化20】

【0118】
<比較例1:ビニルエーテル(V−1)の合成>
ディーンスターク管を備えたフラスコ内に、2−シクロヘキシルエタノール38.5g(300mmol)、酢酸ビニル38.74g(450mmol)、炭酸ナトリウム19.1g(180mmol)、トルエン150gを加え、窒素気流下で徐々に温度を上げて還流させた。ここに、ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I)[Ir(cod)Cl]0.5g(0.75mmol)を添加し、3時間還流を行った。反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、2−シクロヘキシルエタノールの転化率は89%であり、未反応の2−シクロヘキシルエタノールが11%残存した。反応液を25℃まで放冷後、蒸留水200mLで3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を留去した。得られた粗生成物を蒸留により精製したところ、留分32.0gを得た。得られた留分をガスクロマトグラフィーで分析したところ、29.15g(189mmol)がビニルエーテル(V−1)、2.88gが原料の2−シクロヘキシルエタノールであった。ビニルエーテル(V−1)の収率は63%であり、ガスクロマトグラフィーにより求めた純度は91%であった。
【0119】
【化21】

【0120】
<実施例3:ビニルエーテル(V−1)の合成3>
ディーンスターク管を備えたフラスコ内に2−シクロヘキシルエタノール50g(390mmol)、パラアルデヒド34.4g(260mmol)、カンファースルホン酸0.45g(1.95mmol)、ヘプタン70gを加え、4時間還流を行った(工程(C))。H−NMRより、92%の2−シクロヘキシルエタノールがアセタール化合物(a−1)に変換し、8%が未反応のまま存在することを確認した。25℃に放冷後、減圧下でヘプタンを留去した。次に、反応液に塩化ラウロイル51.2g(234mmol)を加え、50℃にて1時間攪拌した(工程(A))。H−NMRにより、アセタール化合物(a−1)の消失を確認した。反応液を25℃まで戻した後、N,N−ジイソプロピルエチルアミン60.5g(468mmol)を滴下し、滴下終了後、95℃にて2時間攪拌した(工程(B))。25℃まで放冷後、飽和塩化アンモニウム水溶液100mlを加えて攪拌し、水層を除去した。続いて5wt%酢酸水溶液200mL、次いで蒸留水200mLで有機層を洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を除去した。この時点でガスクロマトグラフィーによる分析を行ったところ、2−シクロヘキシルエタノールに由来するピークは確認されなかった。次いで粗生成物を蒸留により精製したところ、20.6g(133.5mmol)のビニルエーテル(V−1)を得た。ビニルエーテル(V−1)の収率は68%であり、ガスクロマトグラフィーにより求めた純度は99.1%であった。
【0121】
【化22】

【0122】
<実施例4:ビニルエーテル(V−2)の合成>
フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール10.0g(60.16mmol)に塩化アセチル5.43g(69.19mmol)を加え、45℃で2時間攪拌した(工程(A))。H−NMRで原料の消失を確認した後、トリエチルアミン10.5g(103.8mmol)を加え、90℃で2時間攪拌した(工程(B))。25℃に放冷後、酢酸エチル30mL、飽和塩化アンモニウム水溶液50mLを加え、10分間攪拌後、水層を除去した。続いて蒸留水50mLで有機層を洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を除去した。以上の操作により、7.9g(58.88mmol)のビニルエーテル(V−2)を得た(収率98%)。H−NMRより、得られたビニルエーテル(V−2)のE体とZ体の比率はE:Z=56:44であった。
【0123】
H−NMR(400MHz,CDCl) δ= Z−(V−2) 7.62−7.10(m,5H),6.15(d,1H),5.21(d,1H),3.79(s,3H), E−(V−2) 7.62−7.10(m,5H),7.05(d,1H),5.80(d,1H),3.65(s,3H).
【0124】
【化23】

【0125】
<実施例5:ビニルエーテル(V−3)の合成1>
ディーンスターク管を備えたフラスコ内に2−フェニルエタノール100g(818.6mmol)、パラアルデヒド72.1g(546mmol)、カンファースルホン酸0.95g(4.1mmol)、ヘキサン100gを加え、3時間還流を行った(工程(C))。H−NMRより、94%の2−フェニルエタノールがアセタール化合物(b−1)に変換し、6%が未反応のまま存在することを確認した。反応液を50℃まで放冷した後、塩化ラウロイル107.4g(491.1mmol)を加え、50℃にて1時間攪拌した(工程(A))。H−NMRにより、アセタール化合物(b−1)の消失を確認した。反応液を25℃まで戻した後、トリエチルアミン74.55g(736.7mmol)を滴下し、滴下終了後、95℃にて2時間攪拌した(工程(B))。25℃まで放冷後、飽和塩化アンモニウム水溶液200mlを加えて攪拌し、水層を除去した。続いて蒸留水200mLで有機層を洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を除去した。この時点でガスクロマトグラフィーによる分析を行ったところ、2−フェニルエタノールに由来するピークは確認されなかった。次いで粗生成物を蒸留により精製したところ、41.2g(278mol)のビニルエーテル(V−3)を得た。ビニルエーテル(V−3)の収率は68%であり、ガスクロマトグラフィーにより求めた純度は99.4%であった。
【0126】
H−NMR(400MHz,CDCl) δ=7.38−7.20(m,5H),6.46(dd,1H),4.20(d,1H),4.00(d,1H),3.88(t,2H),2.98(t,2H).
【0127】
【化24】

【0128】
<実施例6:ビニルエーテル(V−3)の合成2>
トリエチルアミン74.55g(736.7mmol)をピリジン58.27g(736.7mmol)に変更した以外は実施例5と同様に行った。ビニルエーテル(V−3)の収率は75%であり、ガスクロマトグラフィーにより求めた純度は99.1%であった。
【0129】
<実施例7:ビニルエーテル(V−3)の合成3>
塩化ラウロイル107.4g(491.1mmol)を塩化パルミトイル134.99g(491.1mmol)に、トリエチルアミン74.55g(736.7mmol)をN,N−ジエチルアニリン109.94g(736.7mmol)に、蒸留水200mLでの有機層洗浄を、0.1規定の塩酸水溶液200mLでの洗浄を2回実施する事に変更した以外は、実施例5と同様に行った。ビニルエーテル(V−3)の収率は72%であり、ガスクロマトグラフィーにより求めた純度は99.0%であった。
【0130】
<実施例8:ビニルエーテル(V−3)の合成4>
塩化ラウロイル107.4g(491.1mmol)を塩化オレオイル147.78g(491.1mmol)に、トリエチルアミン74.55g(736.7mmol)を4−メチルモルホリン74.52g(736.7mmol)に変更した以外は、実施例5と同様に行った。ビニルエーテル(V−3)の収率は73%であり、ガスクロマトグラフィーにより求めた純度は99.4%であった。
【0131】
<実施例9:ビニルエーテル(V−3)の合成5>
塩化ラウロイル107.4g(491.1mmol)を塩化ステアロイル148.76g(491.1mmol)に、トリエチルアミン74.55g(736.7mmol)を1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン112.16g(736.7mmol)に、蒸留水200mLでの有機層洗浄を、0.1規定の塩酸水溶液200mLでの洗浄を2回実施する事に変更した以外は、実施例5と同様に行った。ビニルエーテル(V−3)の収率は81%であり、ガスクロマトグラフィーにより求めた純度は99.1%であった。
【0132】
<実施例10:ビニルエーテル(V−4)の合成>
フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール45.0g(270.73mmol)及びベンジルアルコール61.48g(568.52mmol)にp−トルエンスルホン酸一水和物5.16g(27.08mmol)を加え、100℃で12時間攪拌した。H−NMRより、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタールの93%がアセタール化合物(c−1)に変換したのを確認した。減圧留去により未反応原料を除去した後、塩化アセチル27.63g(351.95mmol)を加え、50℃にて1.5時間攪拌した(工程(A))。H−NMRにより、アセタール化合物(c−1)の消失を確認した。反応液を25℃まで戻した後、トリエチルアミン41.09g(406.10mmol)を滴下し、滴下終了後、95℃にて2時間攪拌した(工程(B))。25℃まで放冷後、飽和塩化アンモニウム水溶液200mlを加えて攪拌し、水層を除去した。続いて蒸留水200mLで有機層を洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を除去した。次いで粗生成物から減圧留去によりエステル化合物(c−3)を除去することで、42.13g(200.34mol)のビニルエーテル(V−4)を得た。ビニルエーテル(V−4)の収率は74%であり、ガスクロマトグラフィーにより求めた純度は97.2%であった。H−NMRより、得られたビニルエーテル(V−4)のE体とZ体の比率はE:Z=53:47であった。
【0133】
H−NMR(400MHz,CDCl) δ= Z−(V−4) 7.42−7.23(m,10H),6.30(d,1H),5.29(d,1H),4.92(s,2H), E−(V−4) 7.42−72.3(m,10H),7.10(d,1H),5.98(d,1H),5.01(s,2H).
【0134】
【化25】

【0135】
<実施例11:ビニルエーテル(V−5)の合成>
ディーンスターク管を備えたフラスコ内に4−シアノフェノール60.0g(503.69mmol)、パラアルデヒド44.41g(336.0mmol)、カンファースルホン酸0.59g(2.52mmol)、トルエン100gを加え、2時間還流を行った。その後、1時間毎にパラアルデヒド5gを添加する工程を3回行うことで、合計5時間還流した(工程(C))。H−NMRより、92%の4−シアノフェノールがアセタール化合物(d−1)に変換し、8%が未反応のまま存在することを確認した。反応液を50℃まで放冷した後、塩化ラウロイル66.11g(302.21mmol)を加え、50℃にて1時間攪拌した(工程(A))。H−NMRにより、アセタール化合物(d−1)の消失を確認した。反応液を25℃まで戻した後、トリエチルアミン45.87g(453.32mmol)を滴下し、滴下終了後、95℃にて2時間攪拌した(工程(B))。25℃まで放冷後、飽和塩化アンモニウム水溶液200mlを加えて攪拌し、水層を除去した。続いて蒸留水200mLで有機層を洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を除去した。この時点でガスクロマトグラフィーによる分析を行ったところ、4−シアノフェノールに由来するピークは確認されなかった。次いで粗生成物を蒸留により精製したところ、23.40g(161.18mmol)のビニルエーテル(V−5)を得た。ビニルエーテル(V−5)の収率は64%であり、ガスクロマトグラフィーにより求めた純度は99.4%であった。
【0136】
H−NMR(400MHz,CDCl) δ=7.65(m,2H),7.09(m,2H),6.66(dd,1H),4.97(dd,1H),4.67(dd,1H).
【0137】
【化26】

【0138】
<実施例12:ビニルエーテル(V−6)の合成>
ディーンスターク管を備えたフラスコ内にベンジルアルコール82.61g(763.90mmol)、3−フェニルプロパナール50.0g(372.63mmol)、カンファースルホン酸0.87g(3.73mmol)、ヘキサン120gを加え、4時間還流を行った(工程(C))。H−NMRより、94%の3−フェニルプロパナールがアセタール化合物(e−1)に変換したことを確認した。反応液を50℃まで放冷した後、塩化アセチル40.95g(521.68mmol)を加え、50℃にて1時間攪拌した(工程(A))。H−NMRにより、アセタール化合物(e−1)の消失を確認した。反応液を25℃まで戻した後、トリエチルアミン79.18g(782.52mmol)を滴下し、滴下終了後、95℃にて2時間攪拌した(工程(B))。25℃まで放冷後、飽和塩化アンモニウム水溶液300mlを加えて攪拌し、水層を除去した。続いて蒸留水300mLで有機層を洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を除去した。この時点でガスクロマトグラフィーによる分析を行ったところ、ベンジルアルコールに由来するピークは確認されなかった。次いで粗生成物から減圧留去によりエステル化合物(e−3)を除去することで、63.52g(283.20mol)のビニルエーテル(V−6)を得た。ビニルエーテル(V−6)の収率は76%であり、ガスクロマトグラフィーにより求めた純度は97.6%であった。H−NMRより、得られたビニルエーテル(V−6)のE体とZ体の比率はE:Z=57:43であった。
【0139】
H−NMR(400MHz,CDCl) δ= Z−(V−6) 7.43−7.16(m,10H),6.15(dt,1H),4.86(s,2H),4.63(dt,1H),3.49(d,2H), E−(V−6) 7.43−7.16(m,10H),6.45(dt,1H),5.06(dt,1H),4.76(s,2H),3.28(d,2H).
【0140】
【化27】

【0141】
<実施例13:ビニルエーテル(V−7)の合成>
シクロヘキサンカルボキシアルデヒドジエチルアセタール80g(429.44mmol)に臭化アセチル63.36g(515.33mmol)を加え、50℃にて1時間攪拌した(工程(A))。H−NMRにより、シクロヘキサンカルボキシアルデヒドジエチルアセタールの消失を確認した。減圧留去により、生成した酢酸エチルを除去した後、トリエチルアミン78.22g(773.00mmol)を滴下し、滴下終了後、95℃にて2時間攪拌した(工程(B))。25℃まで放冷後、飽和塩化アンモニウム水溶液300mlを加えて攪拌し、水層を除去した。続いて蒸留水300mLで有機層を洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を除去した。次いで粗生成物を蒸留により精製することで、43.36g(309.20mol)のビニルエーテル(V−7)を得た。ビニルエーテル(V−7)の収率は72%であり、ガスクロマトグラフィーにより求めた純度は99.1%であった。
【0142】
H−NMR(400MHz,CDCl) δ=5.7(m,1H),3.65(q,2H),2.40−1.70(m,4H),1.65−1.35(m,6H),1.20(t,3H).
【0143】
【化28】

【0144】
<実施例14:ビニルエーテル(V−8)の合成>
イソブチルアルデヒドジベンジルアセタール40g(147.95mmol)に塩化ラウロイル35.60g(162.75mmol)を加え、50℃にて2時間攪拌した(工程(A))。H−NMRにより、イソブチルアルデヒドジベンジルアセタールの消失を確認した。反応液を25℃まで戻した後、トリエチルアミン24.70g(244.13mmol)を滴下し、滴下終了後、95℃にて2時間攪拌した(工程(B))。25℃まで放冷後、飽和塩化アンモニウム水溶液200mlを加えて攪拌し、水層を除去した。続いて蒸留水200mLで有機層を洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を除去した。次いで粗生成物を蒸留により精製することで、16.56g(102.09mol)のビニルエーテル(V−8)を得た。ビニルエーテル(V−8)の収率は69%であり、ガスクロマトグラフィーにより求めた純度は99.3%であった。
【0145】
H−NMR(400MHz,CDCl) δ=7.39−7.26(m,5H),5.88(s,1H),4.74(s,2H),1.65(s,3H),1.54(s,3H).
【0146】
【化29】

【0147】
以上のように、実施例によれば、ビニルエーテル化合物を簡便に(遷移金属を使用することもなく)、また、充分な収率及び純度で製造できたことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物とを反応し、下記一般式(3)で表される化合物を得る工程(A)と、下記一般式(3)で表される化合物と、下記一般式(4)又は下記一般式(5)で表される化合物とを反応し、下記一般式(6)で表されるビニルエーテル化合物を得る工程(B)とを含む、ビニルエーテル化合物の製造方法。
【化1】

式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。RとRとは互いに連結して環を形成してもよい。
はアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
は、アルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。R、R及びRの内の2つが互いに連結して環を形成してもよい。
Xはハロゲン原子を表す。
は一価の置換基を表す。
は0〜4の整数を表す。
【請求項2】
下記一般式(7)で表される化合物と、下記一般式(8)又は下記一般式(9)で表される化合物とを反応し、前記一般式(1)で表される化合物を得る工程(C)を含む、請求項1に記載のビニルエーテル化合物の製造方法。
【化2】

式中、R、R及びRは、それぞれ、上記一般式(1)におけるR、R及びRと同義である。
【請求項3】
前記工程(A)及び工程(B)を、同一反応容器内で一括して行う、請求項1又は2に記載のビニルエーテル化合物の製造方法。
【請求項4】
前記工程(C)、前記工程(A)及び前記工程(B)を、同一反応容器内で一括して行う、請求項2に記載のビニルエーテル化合物の製造方法。
【請求項5】
、R及びRの炭素数の総和が7以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のビニルエーテル化合物の製造方法。
【請求項6】
前記一般式(1)〜(3)及び(6)において、R及びRの炭素数の総和が2以下であり、Rの炭素数が7以上であり、かつ、Rの炭素数が7以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のビニルエーテル化合物の製造方法。
【請求項7】
前記一般式(1)〜(3)において、R及びRの炭素数の総和が6以上であり、かつ、Rの炭素数が3以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のビニルエーテル化合物の製造方法。
【請求項8】
前記一般式(1)、(3)及び(6)において、Rが、下記一般式(10)で表される基である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のビニルエーテル化合物の製造方法。
【化3】

式中、nは1〜6の整数を表し、Yは環状アルキル基又はアリール基を表す。*は、酸素原子に接続する結合手を示す。
【請求項9】
前記工程(A)及び前記工程(B)の各々において、反応溶媒として炭化水素系溶媒を使用する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のビニルエーテル化合物の製造方法。
【請求項10】
前記工程(A)及び前記工程(B)において、同じ反応溶媒を使用する、請求項1〜9のいずれか1項に記載のビニルエーテル化合物の製造方法。
【請求項11】
前記工程(C)において、反応溶媒として炭化水素系溶媒を使用する、請求項2〜10のいずれか1項に記載のビニルエーテル化合物の製造方法。
【請求項12】
前記工程(C)、前記工程(A)及び前記工程(B)において、同じ反応溶媒を使用する、請求項2〜11のいずれか1項に記載のビニルエーテル化合物の製造方法。

【公開番号】特開2012−20954(P2012−20954A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159146(P2010−159146)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】