説明

ビニールハウスの露取り具

【課題】ビニールハウスの屋根部に発生する露を取るビニールハウスの露取り具を提供する。
【解決手段】
硬質フィルム13と軟質フィルム14との間に配設されたレール体11を備え、そのレール体11は、上記硬質フィルム13および軟質フィルム14を掛止するとともに、露を受ける露受け部15を有し、上記露受け部15に水抜き孔12を設けている。これにより、ビニールハウス10内の野菜などの結露中の有機物からの感染を防ぐとともに、施工を容易にすることができ、施工コストの削減を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はビニールハウスの露取り具、詳しくはビニールハウスの屋根に設けられる露取りの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ビニールハウス内は、栽培物を育成するために外気温度より高い温度に設定されている。このため、ビニールハウス内には、そのハウス内の気温または湿度を調整したいときに使用する、巻上式のフィルムがその屋根部に展張されている。例えば、特許文献1には、巻上式のフィルムを備えたビニールハウスの構造が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−84900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、巻上式のフィルムを備えたビニールハウスであっても、そのハウス内の気温が外気よりも高く、栽培物の生理作用および散水した土壌からの蒸発などによる結露現象が発生する。このため、ビニールハウス内のフィルム面内において多量の露が発生する。この発生した露を放置しておくと、ビニールハウス内で作業している作業者に不快感を与え、また、ビニールハウス内の栽培物に病気を与えてしまう。
【0005】
この発明は、上記問題を解決するためになされたもので、ビニールハウス内に発生する露を受け回収するビニールハウスの露取り具を提供することを目的とする。
また、この発明は、多量の露を受け回収するとともに、硬質フィルムと軟質フィルムとを掛止することができるビニールハウスの露取り具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、ビニールハウス内に発生する露または水滴を受け回収するビニールハウスの露取り具であって、上記ビニールハウスの屋根部に配設される第1のフィルム体と第2のフィルム体との間には、レール体が上記ビニールハウスの長さ方向に設けられ、そのレール体は、上記第1のフィルム体および上記第2のフィルム体を掛止するとともに、上記ビニールハウス内に発生する水滴または露を受け回収する露受け溝部を備え、上記露受け溝部には、所定間隔を有して離間して複数個の水抜き孔が設けられたことを特徴とするビニールハウスの露取り具である。
【0007】
上記第1のフィルム体は、硬質フィルムが用いられる。また、第2のフィルム体は、軟質フィルムが用いられる。
上記レール体に設けられる水抜き孔の個数は限定されない。また、所定間隔を有して離間して設けられる水抜き孔の幅も限定されない。さらに、水抜き孔の大きさも限定されない。
【0008】
請求項1に記載のビニールハウスの露取り具にあっては、硬質フィルムと軟質フィルムとの間には、レール体が設けられている。そのレール体は、上記硬質フィルムおよび軟質フィルムを掛止するとともに、露を受ける露受け部を有し、上記露受け部には水抜き孔が設けられている。これにより、ビニールハウス内の発生する露などを集水することができるとともに、その露による栽培物の病気を防ぐことができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、上記第1のフィルム体は硬質フィルムであり、第2のフィルム体は軟質フィルムであることを特徴とする請求項1に記載のビニールハウスの露取り具である。
【0010】
請求項2に記載のビニールハウスの露取り具にあっては、上記レール体は、ビニールハウスの屋根部に固定される硬質の第1のフィルム体と、その屋根部に巻上可能に設けられる軟質の第2のフィルム体とを同時に掛止することができる。軟質の第2のフィルム体は巻上可能に設けられたものである。
【0011】
請求項3に記載の発明は、上記水抜き孔の下方には、その水抜き孔から落ちる水を集水する箱形状の露受器が配設されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のビニールハウスの露取り具である。
【0012】
請求項3に記載のビニールハウスの露取り具にあっては、上記貫通孔の下方には、露受器が配設されている。その露受器で上記露を回収することができる。そして、回収した露を一箇所に集水して、ビニールハウスの外部に排水することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、硬質フィルムと軟質フィルムとの間には、レール体が設けられている。そのレール体は、上記硬質フィルムおよび軟質フィルムを掛止するとともに、露を受ける露受け部を有し、その露受け部には水抜き孔が設けられている。これにより、ビニールハウス内の発生する露などを集水することができるとともに、その露による栽培物の病気を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本願発明の実施の形態について図1〜図8を参照して説明する。
【0015】
最初に、ビニールハウス10の構成について図1を参照して説明する。
図1に示すように、ビニールハウス10は、地上に立設された支柱31と、その支柱31の上部から幅方向に設けられた梁部34と、屋根の部分を構成する本体アーチ17と、屋根の頂点であって、その長さ方向に設けられた棟木35とで構成されている。
【0016】
支柱31は、地上に設けられた台座32の上に立設されている。支柱31は、ビニールハウス10の長さ方向に所定間隔を有して離間して複数個設けられている。
【0017】
屋根の部分を構成する垂木(本体アーチ17)は、左右の支柱31の上部であって、幅方向に配設されている。その本体アーチ17は、図1に示すように、正面視して半円形を有している。また、本体アーチ17は、その断面が矩形を有して筒状に形成されている。
【0018】
また、上記本体アーチ17の上部には、後述する屋根フィルム(固定フィルム13および巻上フィルム14)を支持する支持パイプ33がその長さ方向に配設されている。その支持パイプ33は、その幅方向に、所定間隔を有して離間して複数個配設されている。
【0019】
さらに、ビニールハウス10は、複数個連接して設けることができる。そして、連接した複数個のビニールハウス10の谷部には、屋根を流れる雨水などを集水して、地上や下水道に導く谷樋36が設けられる。
【0020】
図1に示すように、ビニールハウス10の屋根部には、その屋根を被覆するフィルム体が設けられる。そのフィルム体は、その屋根に固定して設けられる固定フィルム13と、巻上フィルム14とで構成されている。
【0021】
図2に示すように、上記固定フィルム13は、硬質フィルムで形成されている。具体的に、固定フィルム13は、対候性に優れたフッ素系樹脂フィルムが用いられる。そして、固定フィルム13は、ビニールハウス10の側面部から屋根の一部を覆うように貼設されている。
【0022】
また、固定フィルム13の上部にはフィルム押さえ部材37(アルミ材)が配設され、固定フィルム13は、その上部でフィルム押さえ部材37用いて、ビス38でビス止めされている。さらに、固定フィルム13の下部には、その下部から固定フィルム13を支持する硬質フィルム支持部材46が配設されている。
【0023】
さらに、図3に示すように、複数個のビニールハウス10の谷部近辺には、その屋根部に巻上式の巻上フィルム14が配設されている。その巻上フィルム14は、軟質フィルム14である。その素材は、例えば、農業用ポリオレフィン系フィルム(農ポリ、POフィルム)が用いられる。上記巻上フィルム14を巻き上げることにより、ビニールハウス10内の換気を行うものである。
【0024】
また、支持パイプ28の上部には、巻上パイプ19が配設され、その巻上パイプ19には巻上フィルム14の一端が連結されている。上記巻上パイプ19は、ビニールハウス10の長さ方向に伸びる棒形状を有している。そして、巻上パイプ19は、上記支持パイプ28の上部に沿って回転しながら、巻上フィルム14を巻き上げる。巻上パイプ19の巻上の動力は、モータを備えた図示しない巻上装置から得て、巻上フィルム14を巻き上げている。
さらに、上記巻上フィルム14の他端は、後述するレール体11に連結されている。
【0025】
そして、上記巻上フィルム14を巻き上げることにより、ビニールハウス10内を換気することができる。例えば、ビニールハウス10内の気温が上昇したとき、または、ハウス内の気温または湿度を一定にしたいとき、ハウス内をクリーンな空気に入れ替えたい場合に換気を行う。
【0026】
さらに、上記巻上フィルム14が軟質のため、風などによりそのフィルムがめくれたりする場合が生じる。そのため、上記巻上フィルム14の上部には、その巻上フィルム14を上から押さえる巻上押さえネット18が配設されている。
【0027】
そして、上記固定フィルム13と上記巻上フィルム14との間には、ビニールハウス10の長さに方向に延びるレール体11が設けられている。図4に示すように、そのレール体11は、巻上フィルム14を掛止する第1の溝部21と、巻上フィルム14を支持するパイプを挿入する第2の溝部22と、固定フィルム13をフィルム留め具24で押さえて留める第3の溝部23と、そして、露を受ける露受け溝部15とで構成されている。
【0028】
図4に示すように、第1の溝部21は、その断面がその上部が開放された台形状を有している。図5に示すように、上記第1の溝部21には、その長さ方向に止め具26が設けられる。その止め具26は、波形状を有している。そして、上記止め具26を、その第1の溝部21に嵌め込むことにより、上記巻上フィルム14の端部が掛止される。これにより、巻上フィルム14を、その一端を固定するとともに、他端から巻上可能に設けることができる。
【0029】
第2の溝部22は、その断面が略コの字形状を有している。その第2の溝部22は、図7(b)に示すように、上記巻上フィルム14を支持する円筒状の支持パイプ28を挿入可能な大きさを有している。
または、図7(a)に示すように、巻上フィルム14は、支持パイプ28の代わりに、板状のフィルム受材47を用いて支持することができる。なお、その板状のフィルム受材47は、第2の溝部22ではなく、第1の溝部21より外側の掛止箇所でビス止めされる。
【0030】
図4に示すように、第3の溝部23は、レール体11の最上部に配設されている。その第3の溝部23は、その断面が略V形状を有している。すなわち、ビスを挿入可能なスペースを有している。また、図5に示すように、その第3の溝部23の上方から固定フィルム13を押さえて固定する押さえ部材24が設けられている。そして、固定フィルム13は、ビス25でビス止めされる。
【0031】
そして、図5に示すように、上記レール体11を断面視して、第1の溝部21および第2の溝部22の左部には、露受け用の露受け溝部15が設けられている。その露受け溝部15は、その断面が、上方が開放された矩形の形状を有している。その溝の深さは略30mmであり、溝の幅は略50mmである。すなわち、ハウス内に発生する露を受ける容積を有している。
【0032】
そして、その溝の底面には、上記溝部に発生した露を下方に落とす水抜き孔12(貫通孔)が設けられている。その水抜き孔12の大きさは略16mmである。また、水抜き孔12は、所定間隔を有して離間して複数個設けられている。
【0033】
さらに、上記複数個の水抜き孔12の下方には、その水抜き孔12から抜ける水を集水する露受器16が配設されている。その露受器16は、例えば、特開2005−237288号公報に記載のものが用いられる。その露受器16は、上記露受け溝部15の底面から下方に脚部39に係止される。
【0034】
次に、上記レール体11の固定方法について説明する。
上記レール体11は、図8(a)および図8(b)に示す固定金具40で固定される。その固定金具40は、上板41と、下板42と、1対のボルト43およびナット44とで構成されている。すなわち、上記レール体11の下部には、平板状の上板41が配設されている。また、本体アーチ17の下部には、凹凸形状を有する下板42が配設されている。下板42は、上記本体アーチ17にフィットするように、その中間部が凹部を有している。
【0035】
また、上記レール体11の露受け溝部15の下方に配設された脚部39の空間部に上記ボルト43の頭部が配設される。また、脚部39の先端には、略水平に配設された爪部45が配設されている。そして、ボルト43の頭部がその爪部45で掛止されている。上記1対のボルト43は、レール体11の下部に配設された上板41および下板42に貫通して設けられ、下板42の下部からナット44で止められる。この結果、レール体11は、連接されるビニールハウス10の谷部近辺に配設されるのである。
【0036】
上記レール体11は、図4に示すように、連接されたビニールハウス10の谷部の近辺に設けられている。すなわち、レール体11は、所定角度を有して斜め方向に配設されている。
そして、ビニールハウス10内において結露が発生すると、ビニールハウス10の内部に多量の露が発生する。その霧は、ハウス内のフィルムまたはフィルムを支持する受材を伝って、レール体11の露受け溝部15の開放された上部から進入する。これにより、多量に発生する露を集水することができる。また、集水した多量の露は、上記露受け溝部15の底面に配設された水抜き孔12から排水される。
【0037】
また、上記水抜き孔12から排水した水は、その下方に配設された露受器16により集水される。そして、集水した水は、一箇所に集められてビニールハウス10の外に排水される。すなわち、ビニールハウス10内に発生する露は、一箇所に集められて排水される。
この結果、ビニールハウス10内において、多量の露が発生しても、栽培物に病気を与えることが少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明に係るビニールハウスの全体構成を示す断面図である。
【図2】この発明に係るビニールハウスに配設されたレール体の周辺の構成を示す斜視図である。
【図3】この発明に係るビニールハウスの谷部周辺の構成を示す斜視図である。
【図4】この発明に係るビニールハウスに配設されたレール体の構成を示す斜視図である。
【図5】この発明に係るビニールハウスに配設された固定フィルムと巻取りフィルムとの間のレール体の構成を示す斜視図である。
【図6】この発明に係るレール体の周辺の構成を示し、(b)は、レール体周辺の構成であって、巻上フィルムを支持パイプで支持する構成を示す断面図である。(a)は、レール体周辺の構成であって、巻上フィルムを板状のアルミ止め材で支持する構成を示す断面図である。
【図7】この発明に係る巻上フィルムの構成を示し、(b)は、巻上フィルムを支持パイプで支持する構成を示す断面図である。(a)は、巻上フィルムを板状のアルミ止め材で支持する構成を示す断面図である。
【図8】この発明に係るレール体をアーチ本体に固定する固定金具の構成を示し、(a)は、その断面図である。(b)は、その側面図である。
【符号の説明】
【0039】
10 ビニールハウス、
11 レール体、
12 水抜き孔、
13 硬質フィルム、
14 軟質フィルム、
15 露受け溝部、
16 露受器。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニールハウス内に発生する露または水滴を受け回収するビニールハウスの露取り具であって、
上記ビニールハウスの屋根部に配設される第1のフィルム体と第2のフィルム体との間には、レール体が上記ビニールハウスの長さ方向に設けられ、
そのレール体は、上記第1のフィルム体および上記第2のフィルム体を掛止するとともに、上記ビニールハウス内に発生する水滴または露を受け回収する露受け溝部を備え、
上記露受け溝部には、所定間隔を有して離間して複数個の水抜き孔が設けられたことを特徴とするビニールハウスの露取り具。
【請求項2】
上記第1のフィルム体は硬質フィルムであり、第2のフィルム体は軟質フィルムであることを特徴とする請求項1に記載のビニールハウスの露取り具。
【請求項3】
上記水抜き孔の下方には、その水抜き孔から落ちる水を集水する箱形状の露受器が配設されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のビニールハウスの露取り具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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