ビルレンス関連付着因子
【課題】細菌感染の予防および処置用の物質と方法の提供。
【解決手段】以下の病原菌由来のビルレンス関連付着因子抗原および該抗原を含むワクチン組成物:Haemophilus influenzae aegyptius生物群;Escherichia coli K1;EHEC E.coli;Actinobacillus actinomycetemcomitans;Haemophilus somnus;Haemophilus ducreyi;EPEC E.coli;EAEC E.coli;尿路病原体E.coli;Shigella flexneri;Brucella melitensis;Brucella suis;Ralstonia solanacearum;Sinorhizobium meliloti;Bradorhizobium japonicum;Burkholderia fungorum。
【解決手段】以下の病原菌由来のビルレンス関連付着因子抗原および該抗原を含むワクチン組成物:Haemophilus influenzae aegyptius生物群;Escherichia coli K1;EHEC E.coli;Actinobacillus actinomycetemcomitans;Haemophilus somnus;Haemophilus ducreyi;EPEC E.coli;EAEC E.coli;尿路病原体E.coli;Shigella flexneri;Brucella melitensis;Brucella suis;Ralstonia solanacearum;Sinorhizobium meliloti;Bradorhizobium japonicum;Burkholderia fungorum。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本明細書中に引用される全ての書類は、それらの全体において、参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、細菌性付着因子の分野にある。特に、本発明は、Haemophilus influenzae、Escherichia coliおよび他の生物に由来するビルレンス関連付着因子抗原に関する。
【0003】
(背景技術)
グラム陰性Haemophilus属としては、H.influenzae、H.aegyptius(H.influenzae aegytius生物群とも呼ばれる)、H.decreyiおよびH.somnusが挙げられる。これらの細菌は、結膜炎、軟性下疳、紫斑病の熱(purpuric fever)、髄膜炎、肺炎および喉頭蓋炎を含む疾患を引き起こし得る。H.influenzaeは、この属のなかで最も一般的に見られる病原体であり、そして、類型可能な株(被包性)および類型できない株(非被包性;「NTHi」)の両方を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
H.influenzae B型(「Hib」)に対するワクチンは、その莢膜サッカリドとキャリアタンパク質との結合体に基づき、充分な成功を収めているが、上記種の他のメンバーに対する保護の提供は、ほとんど発展していない。特に、D型 H.influenzaeおよび類型できないH.influenzaeは、問題のままである。
【0005】
同様に、ワクチンは、他の生物病原体(例えば、Escherichia coliの腸毒素産生性株(ETEC)、腸病原性株(EPEC)、腸凝集性株(enteroaggregative)(EAEC)、腸出血性株(EHEC)および志賀毒素株(STEC))に対しても、利用できないままである。
【0006】
このような細菌によって引き起こされる感染の予防および処置を改善するための物質および方法を提供することが、本発明の目的である。より詳細には、細菌感染に対して免疫するために適切な材料を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の開示)
付着因子に関与するビルレンス関連抗原は、いくつかの細菌および他の生物において同定され、そしてこれらの抗原は、細菌感染(特に、有毒株によって引き起こされる細菌感染)の診断、予防および処置のために有用である。特に、抗原は、以下:Haemophilus influenzae aegyptius生物群(配列番号1);Escherichia coli K1(配列番号2および3)およびEHEC EDL933株;Actinobacillus actinomycetemcomitans(配列番号4);Haemophilus somnus(配列番号5);Haemophilus ducreyi(配列番号6);EPEC E.coli E2348/69株(配列番号7);EPEC(配列番号18);EAEC E.coli O42株(配列番号8および9);尿路病原体(uropathogenic)E.coli(配列番号10);Shigella flexneri(配列番号11);Brucella melitensis(配列番号12);Brucella suis(配列番号13);Ralstonia solanacearum(配列番号14);Sinorhizobium meliloti(配列番号15);Bradorhizobium japonicum(配列番号16);ならびにBurkholderia fungorum(配列番号17)において、同定されている。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
(a)配列番号51、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18および54からなる群より選択される、アミノ酸配列;(b)(a)に規定されるような配列に対して少なくとも70%の同一性を有する、アミノ酸配列;ならびに/または
(c)(a)に規定されるような配列の少なくとも8個の連続するアミノ酸のフラグメントを含む、アミノ酸配列
のうちの1つ以上を含む、ポリペプチド。
(項目2)
項目1に記載のポリペプチドであって、前記(c)のフラグメントは、前記(a)の配列の4つのドメインのうちの1つ以上を含まない、ポリペプチド。
(項目3)
項目1に記載のポリペプチドであって、前記(c)のフラグメントは、前記(a)の
配列の少なくとも1つの完全なドメインを含む、ポリペプチド。
(項目4)
オリゴマー形態にある、項目1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチド。
(項目5)
式NH2−A−{−X−L−}x−B−COOHのポリペプチドであって、ここで:
Xは:(a)配列番号1〜18、51および54の1つ以上に対して少なくとも70%の同一性を有する、アミノ酸配列;ならびに/または
(b)配列番号1〜18、51または54の1つ以上の少なくとも8個の連続するアミノ酸のフラグメントである、アミノ酸配列、を含み;Lは、任意のリンカーアミノ酸配列であり;Aは、任意のN末端アミノ酸配列であり;Bは、任意のC末端アミノ酸配列であり;そしてxは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20である、
ポリペプチド。
(項目6)
アミノ酸配列−A−W1−W2−W3−W4−B−を含むポリペプチドであって:
Aは、任意のN末端配列であり;
Bは、任意のC末端配列であり;
W1は:(a)配列番号1〜18および51の1つ以上のリーダーペプチドに対して少なくとも70%の同一性を有する、任意のアミノ酸配列;ならびに/または(b)配列番号1〜18および51の1つ以上のリーダーペプチドの少なくとも8個の連続するアミノ酸のフラグメントである、任意のアミノ酸配列であり;
W2は:(a)配列番号1〜18および51の1つ以上の球状ヘッドに対して少なくとも70%の同一性を有する、任意のアミノ酸配列;ならびに/または(b)配列番号1〜18および51の1つ以上のリーダーペプチドの少なくとも8個の連続するアミノ酸のフラグメントである、任意のアミノ酸配列であり;
W3は:(a)配列番号1〜18および51の1つ以上のコイルドコイルドメインに対して少なくとも70%の同一性を有する、任意のアミノ酸配列;ならびに/または(b)配列番号1〜18および51の1つ以上のリーダーペプチドの少なくとも8個の連続するアミノ酸のフラグメントである、任意のアミノ酸配列であり;
W4は:(a)配列番号1〜18および51の1つ以上の膜貫通アンカー領域に対して少なくとも70%の同一性を有する、任意のアミノ酸配列;ならびに/または(b)配列番号1〜18および51の1つ以上のリーダーペプチドの少なくとも8個の連続するアミノ酸のフラグメントである、任意のアミノ酸配列であり;
ただし、W1、W2、W3またはW4のうちの少なくとも1つが存在する、ポリペプチド。
(項目7)
Haemophilus aegyptius由来の付着因子であって、ここで、該付着因子は:
(a)配列番号52のアミノ酸配列;(b)配列番号52に対して少なくとも70%の同一性を有する、アミノ酸配列;および/または(c)配列番号52の少なくとも8個の連続するアミノ酸のフラグメントである、アミノ酸配列
を含む、付着因子。
(項目8)
項目1に記載のポリペプチドに結合する抗体。
(項目9)
項目1に記載のポリペプチドまたは項目8に記載の抗体をコードする、核酸。
(項目10)
項目1〜9のいずれか1項に記載のポリペプチドおよび/または核酸および/または抗体を含有する、薬学的組成物。
(項目11)
薬物としての使用のための、項目10に記載の組成物。
(項目12)
哺乳動物において免疫応答を上昇させるための医薬の製造における、項目1に記載のポリペプチドの使用。
(項目13)
哺乳動物において免疫応答を上昇させるための方法であって、該方法は、有効量の項目10に記載の組成物を投与する工程を包含する、方法。
【0008】
本発明の抗原の間の配列同一性の程度は低いが、単純な一次配列情報を超えるレベルでの上記抗原の理解は、それらが、N末端からC末端のドメインの共通の配置、すなわち:・リーダーペプチド
・球状ヘッド
・コイルドコイル領域
・膜貫通アンカー領域
を共有することを示す。
【0009】
上記種々の抗原の間の配列類似性は、主に、上記C末端アンカー領域に限定される。このドメインの配置は、N.meningitidisタンパク質NadAと共有される{1}。
【0010】
配列番号1〜18におけるこれらの特徴の位置は、以下のとおりである:
【0011】
【表1】
(抗原)
本発明は、以下のアミノ酸配列うちの1つ以上を含むポリペプチドを提供する:配列番号1〜18、配列番号51および配列番号54のいずれか。
【0012】
本発明はまた、以下:(a)配列番号1〜18、51および54のうちの1つ以上に対して少なくともm%の同一性を有するアミノ酸配列であって、ここで、mは、50以上(例えば、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5またはそれ以上)である、アミノ酸配列;ならびに/または(b)配列番号1〜18、51および54のうちの1つ以上の少なくともn個の連続するアミノ酸のフラグメントであるアミノ酸であって、ここで、nは、7以上(例えば、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250またはそれ以上)である、アミノ酸配列
を含むポリペプチドを提供する。これらのポリペプチドは、配列番号1〜18、51および54の改変体(例えば、対立遺伝子改変体、ホモログ、オルトログ、パラログ、変異体など)を含む。
【0013】
(b)の好ましいフラグメントは、配列番号1〜18、51および54のうちの1つ以上由来のエピトープを含み、好ましくは、B細胞エピトープを含む。B細胞エピトープは、実験的に同定され得るかまたはアルゴリズム的に予測され得る。
【0014】
(b)の他の好ましいフラグメントは、配列番号1〜18、51および54由来の関連するアミノ酸配列の、C末端からの1つ以上のアミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれ以上)および/またはN末端からの1つ以上のアミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、45またはそれ以上)を欠く。特に、好ましいフラグメントは、少なくともN末端リーダー配列を省く(そして、その省かれたリーダー配列は、異種リーダー配列によって置換され得る)。
【0015】
他の好ましいフラグメントは、上の表に基づく配列番号1〜18および51の4つのドメインのうちの1つ以上(すなわち、1、2または3)を省く。他の好ましいフラグメントは、配列番号1〜18および51の4つのドメインのうちの1つ以上(すなわち、1、2または3)からなる。
【0016】
本発明の好ましいポリペプチドは、オリゴマー形態(例えば、ダイマー、トリマー、テトラマーなど)で存在する。トリマーが好ましいが、本発明のモノマーポリペプチドはまた、有用である。
【0017】
本発明はまた、式NH2−A−{−X−L−}x−B−COOHのポリペプチドを提供し、ここで:
−Xは、上に規定されたように:(a)配列番号1〜18、51および54のうちの1つ以上に対して少なくともm%の同一性を有するアミノ酸配列;ならびに/または(b)配列番号1〜18、51および54のうちの1つ以上の少なくともn個の連続するアミノ酸のフラグメントであるアミノ酸配列を含み;
−Lは、任意のリンカーアミノ酸配列であり;
−Aは、任意のN末端アミノ酸配列であり;
−Bは、任意のC末端アミノ酸配列であり;そして
−xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17または18である(好ましくは、x=2である)。
【0018】
−X−部分がリーダーペプチドを有する場合、このリーダーペプチドは、上記ハイブリッドタンパク質中に含まれても省かれてもよい。いくつかの実施形態において、上記リーダーペプチドは、上記ハイブリッドタンパク質のN末端に位置する−X−部分のリーダーペプチドを除いて、削除される(すなわち、X1のリーダーペプチドは保持されるが、X2...Xxのリーダーペプチドは省略される)。このことは、全てのリーダーペプチドを削除し、そしてX1のリーダーペプチドを部分−A−として使用することと等価である。
【0019】
{−X−L−}の各々のxについて、−X−は、同じであっても異なっていてもよく、そしてリンカーアミノ酸配列−L−は、存在してもしなくてもよい。例えば、x=2の場合、上記ハイブリッドは、NH2−X1−L1−X2−L2−COOH、NH2−X1−X2−COOH、NH2−X1−L1−X2−COOH、NH2−X1−X2−L2−COOHなどであり得る。リンカーアミノ酸配列−L−は、代表的には、短い(例えば、20以下のアミノ酸、すなわち、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1)。例としては、クローニングを容易にする短いペプチド配列、ポリグリシンリンカー(すなわち、Glynを含み、ここで、n=2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)およびヒスチジンタグ(すなわち、Hisn、ここで、n=3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)が挙げられる。他の適切なリンカーアミノ酸配列は、当業者に明らかである。有用なリンカーは、GSGGGG(配列番号19)であり、そのGly−Serジペプチドは、BamHI制限部位から形成され、従って、クローニングおよび操作を助け、そして上記(Gly)4テトラペプチドは、代表的なポリグリシンリンカーである。
【0020】
−A−は、任意のN末端アミノ酸配列である。これは、代表的に、短い(例えば、40以下のアミノ酸、すなわち、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1)。例としては、タンパク質輸送に関するリーダー配列、またはクローニングもしくは操作を容易にする短いペプチド配列(例えば、ヒスチジンタグ、すなわち、Hish、ここで、h=3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)が挙げられる。他の適切なN末端アミノ酸配列は、当業者に明らかである。X1が、それ自体のN末端メチオニンを欠く場合、−A−は、好ましくは、N末端メチオニンを提供するオリゴペプチド(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個のアミノ酸を有する)である。
【0021】
−B−は、任意のC末端アミノ酸配列である。これは、代表的に、短い(例えば、40以下のアミノ酸、すなわち、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1)。例としては、タンパク質輸送に関する配列、クローニングもしくは精製を容易にする短いペプチド(例えば、ヒスチジンタグ、すなわち、Hish、ここで、h=3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)またはタンパク質安定性を増大させる配列が挙げられる。他の適切なC末端アミノ酸配列は、当業者に明らかである。
【0022】
本発明はまた、アミノ酸配列:
−A−W1−W2−W3−W4−B−
を含むポリペプチドを提供し、ここで:
−Aは、上に規定されるような任意の配列であり(好ましくは、上記ペプチドのN末端にある);
−Bは、上に規定されるような任意の配列であり(好ましくは、上記ペプチドのC末端にある);
−W1は:(a)配列番号1〜18および51のうちの1つ以上のリーダーペプチドに対して少なくともm%の同一性を有する、任意のアミノ酸配列;ならびに/または(b)配列番号1〜18および51うちの1つ以上のリーダーペプチドの少なくともn個の連続するアミノ酸のフラグメントである、任意のアミノ酸配列であり;
−W2は:(a)配列番号1〜18および51のうちの1つ以上の球状ヘッドドメインに対して少なくともm%の同一性を有する、任意のアミノ酸配列;ならびに/または(b)配列番号1〜18および51のうちの1つ以上の球状ヘッドドメインの少なくともn個の連続するアミノ酸のフラグメントである、任意のアミノ酸配列であり;
−W3は:(a)配列番号1〜18および51のうちの1つ以上のコイルドコイルドメインに対して少なくともm%の同一性を有する、任意のアミノ酸配列;ならびに/または(b)配列番号1〜18および51のうちの1つ以上のコイルドコイルドメインの少なくともn個の連続するアミノ酸のフラグメントである、任意のアミノ酸配列であり;
−W4は:(a)配列番号1〜18および51のうちの1つ以上の膜貫通アンカー領域に対して少なくともm%の同一性を有する、任意のアミノ酸配列;ならびに/または(b)配列番号1〜18および51のうちの1つ以上の膜貫通アンカー領域の少なくともn個の連続するアミノ酸のフラグメントである、任意のアミノ酸配列であり;
ただし、W1、W2、W3またはW4のうちの少なくとも1つが存在する。
【0023】
本発明はまた、上に記載されるようなポリペプチドを含むポリペプチドを提供し、ここで、そのペプチドのアミノ酸配列は、1つ以上のアミノ酸変異を含む。その変異は、好ましくは、本発明のポリペプチドの活性の減少または除去をもたらし、この減少または除去は、直接的または間接的に、ビルレンスまたは付着を担う。例えば、上記変異は、酵素活性を阻害し得るかまたはそのタンパク質における結合部位を除去し得る。変異は、欠失、置換および/または挿入を含み得、それらのうちのいずれかは、1つ以上のアミノ酸を含み得る。代替として、上記変異は、トランケーションを含み得る。
【0024】
ビルレンス因子の突然変異は、多くの細菌について充分に確立された科学である{例えば、参考文献2〜8に記載されるトキシン突然変異}。突然変異は、本発明のポリペプチドをコードする核酸に対して、特異的に標的化され得る。あるいは、突然変異は、(例えば、照射、化学的突然変異などに起因して)全体的であってもランダムであってもよく、代表的には、その後、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子中に変異が導入されているものについて、細菌をスクリーニングする。このようなスクリーニングは、ハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、サザンブロットまたはノザンブロットなど)、プライマーに基づく増幅(例えば、PCR)、スクリーニング、プロテオミクス、異常SDS−PAGEゲル移動(aberrant SDS−PAGE gel migration)などにより得る。
【0025】
本発明のポリペプチドは、種々の手段によって(例えば、組み換え発現、細胞培養物からの精製、化学合成など)、そして種々の形態(例えば、ネイティブ、融合、非ポリグリコシル化、脂質化(lipidated)など)で調製され得る。それらは、好ましくは、実質的に純粋な形態(すなわち、実質的に他の細菌または宿主細胞タンパク質を含まない)で調製される。
【0026】
本発明のペプチドの発現は、ネイティブな宿主中で行われ得るが、本発明は、好ましくは、異種宿主を利用する。上記異種宿主は、原核生物(例えば、細菌)であっても真核生物であってもよい。E.coliが好ましいが、他の適切な宿主としては、Bacillus subtilis、Vibrio cholerae、Salmonella typhi、Salmonella typhimurium、Neisseria lactamica、Neisseria cinerea、Mycobacteria(例えば、M.tuberculosis)、酵母などが挙げられる。
【0027】
本発明のポリペプチドが配列番号51に関する場合、そのポリペプチドは、好ましくは、少なくとも224個(例えば、224個、225個、226個、227個、228個、229個、230個、235個、240個、245個、250個、255個またはそれ以上)のアミノ酸を含む。
【0028】
本発明はまた、Haemophilus aegyptius由来の付着因子を提供し、ここで、その付着因子は以下を含む:(a)配列番号52のアミノ酸配列;(b)配列番号52に対して少なくともm%の同一性を有するアミノ酸配列;および/または(c)配列番号52の少なくともn個の連続するアミノ酸のフラグメントである、アミノ酸配列。
【0029】
(抗体)
本発明はまた、本発明のポリペプチドに結合する抗体を提供する。
【0030】
本発明の抗体は、好ましくは、本発明のポリペプチドに対して、少なくとも10−7Mの親和性(例えば、10−8M、10−9M、10−10Mまたはそれ以上に大きな親和性)を有する。好ましい抗体は、本発明のポリペプチドのヒト細胞に結合する能力を阻害し得る。
【0031】
本発明の抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルであり得、そして任意の適切な手段により(例えば、組換え発現、細胞培養物からの精製、化学合成などにより)、そして種々の形態(例えば、ネイティブな形態、融合形態、グリコシル化形態、非グリコシル化形態など)で産生され得る。これらは、好ましくは、実質的に純粋な形態(すなわち、実質的に他の抗体が存在しない形態)で調製される。
【0032】
用語「抗体」は、抗体全体、Fv、scFv、Fc、Fab、F(ab’)2などを包含する。
【0033】
本発明の抗体は、標識を含み得る。上記標識(例えば、放射性標識もしくは蛍光標識)は、直接的に検出可能であり得る。あるいは、標識(例えば、生成物が検出可能である酵素(例えば、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ペルオキシダーゼなど))は、間接的に検出可能であり得る。
【0034】
本発明の抗体は、固体支持体に結合され得る。
【0035】
本発明の抗体は、本発明のポリペプチドを適切な動物(例えば、ウサギ、ハムスター、マウス、または他の齧歯類)に投与(例えば、注射)することにより調製され得る。
【0036】
ヒト免疫系との適合性を増大させるために、上記抗体は、キメラ抗体もしくはヒト化抗体であり得るか(例えば、参考文献9および10)、または十分にヒト化した抗体が使用され得る。ヒト化抗体は、元の非ヒトモノクローナル抗体よりもヒトの中では免疫原性がさらに弱いので、ヒト化抗体は、ヒトの処置のために使用され得、アナフィラキシーのリスクはさらに低い。従って、これらの抗体は、治療上の適用において好ましくあり得、この治療上の適用(例えば、腫瘍性疾患の処置のための放射増感剤(radiation sensitizer)としての使用または癌療法の副作用を低減する方法における使用)は、インビボでのヒトへの投与を包含する。
【0037】
ヒト化抗体は、種々の方法(例えば:(1)非ヒト相補性決定領域(CDR)を、ヒトフレームワーク領域および定常領域へと移植(「ヒト化」)し、そして非ヒト抗体から1以上のフレームワーク残基を必要に応じて移動させる工程;(2)非ヒト可変ドメイン全体を、移植はするが表面残基の置換によりヒト様表面で「覆う(cloaking)」(化粧張り)工程が挙げられる)により達成され得る。本発明において、ヒト化抗体としては、「ヒト化」抗体および「化粧張り」抗体の両方が挙げられる。{11、12、13、14、15、16、17}。ヒト化抗体または完全なヒト抗体はまた、ヒト免疫グロブリン座を含むように操作されたトランスジェニック動物を用いて産生され得る。
【0038】
句「定常領域」とは、エフェクター機能を与える抗体分子の一部をいう。キメラ抗体においては、マウス定常領域は、ヒト定常領域により置換される。ヒト化抗体の定常領域は、ヒト免疫グロブリンに由来する。重鎖定常領域は、5のアイソタイプ:α、δ、ε、γまたはμのいずれかより選択され得る。
【0039】
(核酸)
本発明はまた、本発明のポリペプチドをコードする核酸を提供する。さらに、本発明は、好ましくは「高ストリンジェントな」条件下(例えば、0.1×SSC、0.5% SDS溶液中で、65℃)でこの核酸にハイブリダイズし得る核酸を提供する。
【0040】
本発明に従う核酸は、多くの方法(例えば、化学合成により、ゲノムライブラリーもしくはcDNAライブラリーから、生物体自身から、など)により調製され得、種々の形態(例えば、一本鎖、二本鎖、ベクター、プローブなど)をとり得る。これらは、好ましくは、実質的に純粋な形態(すなわち、他の細菌の核酸または宿主細胞の核酸が実質的に存在しない形態)で調製される。
【0041】
用語「核酸」としては、DNAおよびRNA、ならびにこれらのアナログ(例えば、改変骨格(例えば、ホスホロチオエートなど)を含むアナログ、ならびにペプチド核酸(PNA)などが挙げられる。本発明は、上に記載された配列(例えば、アンチセンスまたはプローブの目的)に相補的な配列を含む核酸を包含する。
【0042】
(免疫原性組成物および医薬)
NadA(これは、優れた抗−髄膜炎菌性免疫原である{1})(毒力との関連を含む)に対する構造上の類似点および機能上の類似点に基づき、本発明のポリペプチドは、免疫化の目的に対しても有用であるはずである。
【0043】
本発明は、本発明のポリペプチドおよび/または本発明の核酸および/または本発明の抗体を含有する組成物を提供する。本発明の組成物は、好ましくは、免疫原性の組成物であり、そしてより好ましくは、ワクチン組成物である。本発明に従うワクチンは、予防用(すなわち、感染を予防する)であるか、または治療用(すなわち、感染を処置する)のいずれかであり得るが、代表的には、予防用である。
【0044】
この組成物のpHは、好ましくは、6と8との間であり、好ましくは、約7である。上記pHは、緩衝液の使用により維持され得る。この組成物は、滅菌されており、そして/または発熱物質なしであり得る。上記組成物は、ヒトに関して等張であり得る。
【0045】
本発明はまた、医薬として使用するための本発明の組成物を提供する。この医薬は、好ましくは、哺乳動物において免疫応答を引き起こし得(すなわち、この医薬は、免疫原性の組成物である)、より好ましくは、ワクチンである。
【0046】
本発明はまた、哺乳動物において免疫応答を引き起こすための医薬の製造における1種以上(例えば、2、3、4、5、6)の本発明のポリペプチドの使用を提供する。この医薬は、好ましくは、ワクチンである。
【0047】
本発明はまた、哺乳動物において免疫応答を引き起こすための方法を提供し、この方法は、本発明の有効量の組成物を投与する工程を包含する。この免疫応答は、好ましくは防御的であり、そして好ましくは、抗体および/または細胞の媒介する免疫性を包含する。この方法は、追加免疫応答を引き起こし得る。
【0048】
上記哺乳動物は、好ましくは、ヒトである。上記ワクチンが予防的使用のためのものである場合、上記ヒトは、好ましくは、小児(child)(例えば、よちよち歩きの幼児(toddler)または幼児(infant))または若者であり;上記ワクチンが治療的使用のためのものである場合、上記ヒトは、好ましくは、若者または成人である。小児に対して使用される予定であるワクチンはまた、(例えば、安全性、投薬量、免疫原性などを評価するために)大人にも投与され得る。
【0049】
これらの使用および方法は、好ましくは、Haemophilus influenzae aegyptius生物群、Escherichia coli(特に、EHEC株、EAEC株、ETEC株、EPEC株およびUPEC株)、Actinobacillus actinomycetemcomitans、Haemophilus somnus、Haemophilus ducreyi、Shigella flexneri、Brucella melitensis、Brucella suis、Ralstonia solanacearum、Sinorhizobium meliloti、Bradorhizobium japonicumおよびBurkholderia fungorumにより引き起こされる疾患の予防および/または処置のためのものである。従って、本発明は、疾患(結膜炎、軟性下疳、紫斑病熱、髄膜炎、肺炎、喉頭蓋炎、インプラント周囲炎、歯周病、歯肉炎、ウシ脳炎、関節炎、心筋炎、下痢、ヒツジ流産、精巣炎、波状熱、ブタ生殖性喪失(porcine reproductive wastage)、ブルセラ症などの予防および/または処置に適切である。
【0050】
治療上の処置の有効性を調査する一つの方法は、本発明の組成物の投与後の細菌の感染をモニタリングする工程を包含する。予防上の処置の有効性を調査する一つの方法は、この組成物の投与後に、上記ポリペプチドに対する免疫応答をモニタリングする工程を包含する。
【0051】
本発明の組成物は、一般的に、患者に対して直接的に投与される。直接的な送達は、非経口注射(例えば、皮下注射、腹腔内注射、静脈注射、筋肉注射、もしくは組織の腸空間への注射)、または直腸投与、経口投与(例えば、錠剤、噴霧剤)、膣投与、局所投与、経皮投与(transdermal){例えば、参考文献18を参照のこと}、もしくは経皮投与(transcutaneous){例えば、参考文献19および20を参照のこと}、鼻内投与{例えば、参考文献21を参照のこと}、眼内投与(ocular administration)、耳内投与(aural administration)、肺内投与(pulmonary adiminstration)、もしくは他の粘膜投与により達成され得る。
【0052】
本発明は、全身性の免疫性および/または粘膜性の免疫性を惹起するために使用され得る。
【0053】
投薬処置は、単回用量計画であっても、複数回用量計画であってもよい。複数回用量は、初回免疫化計画および/または追加免疫免疫化計画において使用され得る。複数回用量計画において、種々の用量が、同一または別個の経路(例えば、非経口の刺激および粘膜性ブースト、粘膜性刺激および非経口ブーストなど)により与えられ得る。
【0054】
細菌の感染は、身体の種々の領域に影響する。それで、本発明の組成物は、種々の形態で調製され得る。例えば、この組成物は、注射可能な物質(injectables)(液状液剤または懸濁剤のいずれか)として調製され得る。液体ビヒクルにおいて、溶液または懸濁剤に対して適切な固体形態(例えば、凍結乾燥された組成物)もまた、注射前に調製され得る。この組成物は、(例えば、軟膏剤、乳剤、または散剤として)局所投与のために調製され得る。この組成物は、(例えば、錠剤もしくはカプセル剤として、噴霧剤として、またはシロップ剤(必要に応じて、矯味矯臭されたシロップ剤)として)経口投与のために調製され得る。この組成物は、細かい粉末(fine powder)もしくは噴霧剤を用いて、(例えば、吸入剤として)肺内投与のために調製され得る。この組成物は、坐剤または膣坐薬として調製され得る。この組成物は、鼻内投与、耳内投与、または眼内投与のために(例えば、滴(drop)として)調製され得る。この組成物は、合わされた組成物が患者に対する投与の直前に再構成されるように設計された、キットの形態であり得る。このようなキットは、液体形態中に1種以上の抗原および1種以上の凍結乾燥された抗原を含み得る。
【0055】
ワクチンとして使用される免疫原性組成物は、必要とされる場合、免疫学的に有効な量の抗原ならびに他の任意の成分を含有する。「免疫学的に有効な量」により、個体へのこの量の投与(単回用量においてか、または一連の一部としてのいずれか)が処置または予防に有効であることを意味する。この量は、処置されるべき個体の、健康状態および身体的状態、年齢、処置されるべき個体の分類学上の群(例えば、非ヒト霊長類、霊長類など)、抗体を合成するこの個体の免疫系の能力、所望される防御の程度、ワクチンの処方物、医学的状態の処置医の所見、ならびに他の関連する因子に依存して変動する。この量が、日々の試行を通して決定され得る、比較的広汎な範囲に収まることが期待される。
【0056】
本発明はまた、(非経口および/または粘膜の)アジュバントとして使用するための本発明のポリペプチド(NadAそれ自体を含む)を提供する。同様に、本発明は、本発明のポリペプチドを第二の抗原と混合して含有する組成物を提供し、第二の抗原の混合により、本発明のポリペプチドは、患者に投与された場合に第二の抗原に対する免疫応答を増強する。
【0057】
(組成物のさらなる成分)
本発明の組成物は、代表的には、上記成分に加えて、1種以上の「薬学的に受容可能なキャリア」を含有し、この薬学的に受容可能なキャリアとしては、上記組成物を受け取る個体にとって有害な抗体の産生をそれ自体が誘導しない任意のキャリアが挙げられる。適切なキャリアは、代表的には、大きな、緩徐に代謝される高分子(例えば、タンパク質、ポリサッカライド、ポリ酪酸、ポリグリコール酸、ポリマー性アミノ酸(polymeric amino acid)、アミノ酸コポリマーおよび脂質凝集体(例えば、油滴もしくはリポソーム))である。このようなキャリアは、当業者に周知である。このワクチンはまた、希釈剤(例えば、水、生理食塩水、グリセロールなど)を含有し得る。さらに、補助物質(auxiliary substance)(例えば、湿潤剤もしくは乳化剤)、pH緩衝物質などが存在し得る。薬学的に受容可能な賦形剤についての全体の考察が、参考文献22において入手できる。
【0058】
本発明のワクチンは、他の免疫制御因子と併せて投与され得る。特に、組成物は、通常アジュバントを含有する。好ましいさらなるアジュバントとしては、(A)アルミニウム塩(ヒドロキシド(例えば、オキシヒドロキシド)、ホスフェート(例えば、ヒドロキシホスフェート、オルトホスフェート)、スルフェートなどが挙げられる{例えば、参考文献23の第8章および第9章を参照のこと})、または、種々のアルミニウム化合物の混合物(この化合物は、任意の適切な形態(例えば、ゲル、結晶性化合物、非晶質化合物など)をとる)ならびにこれらが好ましく吸着されたもの;(B)MF59(5%スクアレン、0.5%のTween80、および0.5%のSpan85が微小フリューダイザ(microfluidizer)を用いて、サブミクロン粒子へと処方された){23の10章を参照のこと;参考文献24もまた参照のこと};(C)リポソーム{参考文献23の第13章および第14章を参照のこと};(D)さらなる界面活性剤が欠損し得るISCOM(参考文献23の第23章を参照のこと){25};(E)10%スクアレン、0.4% Tween80、5%のプルロニック−ブロックポリマーL121、およびthr−MDPを含有するSAFであって、サブミクロンエマルジョンへと微小流動化するか、またはボルテックスされてより大きな粒子サイズのエマルジョンを生成したSAF{参考文献23の第12章を参照のこと};(F)2%のスクアレン、0.2%のTween 80、ならびに、モノホスホリル脂質A(monophosphorylipid A)(MPL)、トレハロースジミコレート(trehalose dimycolate)(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)からなる群より選択される一種以上の細菌細胞壁構成成分(好ましくは、MPL+CWS(DetoxTM))を含むRibiTMアジュバント系(RAS)、(Ribi Immunochem);(G)サポニンアジュバント(例えば、QuilAまたはQS21{参考文献23の第22章を参照のこと}、これは、StimulonTMとしても公知である{26};(H)キトサン{例えば、27};(I)完全フロイントアジュバント(CFA)および不完全フロイントアジュバント(IFA);(J)サイトカイン(例えば、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12など)、インターフェロン(例えば、インターフェロン−γ)、マクロファージコロニー刺激因子、腫瘍壊死因子など{参考文献23の第27章および第28章を参照のこと};(K)モノホスホリル脂質A(monophosphoryl lipid A)(MPL)もしくは3−O−デアシル化MPL(3dMPL){例えば、参考文献23の第21章};(L)3dMPLと、例えば、QS21および/または水中油滴エマルジョンとの組み合わせ{28};(M)ポリオキシエチレンエーテルまたはポリオキシエチレンエステル{29};(N)オクトキシノールと組み合わせたポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(surfactant){30}または、少なくとも1種のさらなる非イオン性界面活性剤(例えば、オクトキシノール)と組み合わせたポリオキシエチレンアルキルエーテル界面活性剤(surfactant)もしくはポリオキシエチレンエステル界面活性剤(surfactant){31};(N)金属塩の粒子{32};(O)サポニンおよび水中油滴エマルジョン{33};(P)サポニン(例えば、QS21)+3dMPL+IL−12(必要に応じて、+ステロール){34};(Q)E.coli熱−不安定性エンテロトキシン(「LT」)、またはこの無毒化変異物(例えば、K63変異物もしくはR72変異物){参考文献35の第5章};(R)コレラトキシン(「CT」)、またはこの無毒化変異物{例えば、参考文献35の第5章};(S)二本鎖RNA;(T)生体分解性でかつ無毒性の物質(例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸、ポリヒドロキシブチル酸、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリカプロラクトンなど)から、好ましいポリ(ラクチド−コ−グリコリド)と共に形成され、必要に応じて、(例えば、SDSを用いて)負に荷電した表面または(例えば、CTABのようなカチオン性界面活性剤を用いて)正に荷電した表面を有するように処理された微小粒子(すなわち、直径約100nm〜直径約150μmの粒子、より好ましくは、直径約200nm〜直径約30μmの粒子、そして最も好ましくは、直径約500nm〜直径約10μmの粒子);(U)必要に応じて、シトシンの代わりに5−メチルシトシンが使用されているCpGモチーフ(すなわち、少なくとも1のCGジヌクレオチドを含む)を含むオリゴヌクレオチド;(V)モノホスホリル脂質A模造物(例えば、アミノアルキルグルコサミドホスフェート誘導体(例えば、RC−529)){36};(W)ポリホスファゼン(polyphoshazen)(PCPP);(X)生体付着物質(bioadhesive){37}(例えば、エステル化ヒアルロン酸ミクロスフェア{38}または、ポリ(アクリル酸)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリサッカライドおよびカルボキシメチルセルロースの架橋された誘導体からなる群より選択される粘膜付着性物質(mucoadhesive);あるいは、(Y)この組成物の有効性を増強する免疫刺激因子として作用する他の物質{例えば、参考文献23の第7章を参照のこと}が挙げられるが、これらに限定されない。アルミニウム塩およびMF59は、非経口免疫化にとっての好ましいアジュバントである。変異体毒素は、好ましい粘膜アジュバントである。
【0059】
ムラミルペプチドとしては、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル(normuramyl)−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)、N−アセチルムラニル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミンMTP−PE)などが挙げられる。
【0060】
この組成物は、抗生物質を含有し得る。
【0061】
(さらなる抗原)
本発明のポリペプチドを含有するのみならず、本発明の組成物はまた、1種以上の更なる抗原を含有し得る。封入のためのさらなる抗原は、例えば:
− N.meningitidis血清群A、血清群C、血清群W135、および/または血清群Y由来のサッカライド抗原(例えば、参考文献39に開示されている血清群C由来のオリゴサッカライド(参考文献40もまた参照のこと)または参考文献41のオリゴサッカライド)。
− Helicobacter pylori由来の抗原(例えば、CagA{42〜45}、VacA{46、47}、NAP{48、49、50}、HopX{例えば、51}、HopY{例えば、51}および/または尿素分解酵素)。
− Streptococcus pneumoniae由来のサッカライド抗原{例えば、52、53、54}。
− Streptococcus pneumoniae由来のタンパク質抗原{例えば、55}。
− A型肝炎ウイルス(例えば、不活化ウイルス)由来の抗原{例えば、56、57}。− B型肝炎ウイルス由来の抗原(例えば、表面の抗原および/またはコア抗原){例えば、57、58}。
− C型肝炎ウイルス由来の抗原{例えば、59}。
− ジフテリア抗原(例えば、ジフテリアトキソイド{例えば、参考文献60の第3章})(例えば、CRM197変異体){例えば、61}。
− 破傷風抗原(例えば、破傷風トキソイド){例えば、参考文献60の第4章}。
− Bordetella pertussis由来の抗原(例えば、B.pertussis由来の百日咳ホロトキシン(PT)および糸状構造ヘマグルチニン(FHA)、これらはまた、必要に応じて、パータクチン(pertactin)および/または凝集原2および凝集原3{例えば、参考文献62および63}と組み合わせられる);細胞全体の百日咳抗原もまた使用され得る。
− Haemophilus influenzae B{例えば、40}由来のサッカライド抗原。
− ポリオ抗原{例えば、64、65}(例えば、OPVまたは、好ましくは、IPV)。
− N.meningitidis血清群B{例えば、参考文献66〜77}由来のタンパク質抗原(例えば、NadA)。
− N.meningitidis血清群B(例えば、参考文献78、79、80、81などに開示されるもの)由来の外側膜小胞(OMV)調製物。
− Chlamydia pneumoniae由来の抗原{例えば、参考文献82〜88}。
− Chlamydia trachomatis由来の抗原{例えば、89}。
− Porphyromonas gingivalis由来の抗原{例えば、90}。− 狂犬病抗原{例えば、91}(例えば、凍結乾燥された不活化ウイルス{例えば、92、RabAvertTM}。
− 麻疹、耳下腺炎および/または風疹の抗原{例えば、参考文献60の第9章、第10章および第11章}。
− インフルエンザ抗原{例えば、参考文献60の第19章}(例えば、ヘマグルチニンおよび/またはノイラミニダーゼ表面タンパク質)。
− N.gonorrhoeae由来の抗原{例えば、93、94、95、96}。
−呼吸器合胞体ウイルス(RSV{97、98})および/またはパラインフルエンザウイルス(PIV3{99})のようなパラミクソウイルス由来の抗原
−UspA1および/またはUspA2のような、Moraxella catarrhalis{例えば、100}由来の抗原
−Streptococcus pyogenes(A群連鎖球菌){例えば、101、102、103}由来の抗原
−Streptococcus agalactiae(B群連鎖球菌){例えば、104}由来の抗原
−Staphylococcus aureus{例えば、105}由来の抗原
−Bacillus anthracis{例えば、106、107、108}由来の抗原
−フラビウイルス科(フラビウイルス属)に属するウイルス由来(例えば、黄熱病ウイルス由来、日本脳炎ウイルス由来、デング熱ウイルスの4つの血清群由来、ダニ媒介性脳炎ウイルス由来、西ナイルウイルス由来)の抗原
−Pseudomonas由来の抗原
−HIV(例えば、HIV−1またはHIV−2)由来の抗原
−ロタウイルス由来の抗原
−ペスチウイルス抗原(例えば、古典的ブタ熱ウイルス由来、ウシウイルス性下痢ウイルス由来および/またはボーダー病ウイルス由来)
−パルボウイルス抗原(例えば、パルボウイルスB19由来)
−コロナウイルス抗原(例えば、SARSコロナウイルス由来)
−癌抗原(例えば、参考文献109の表1、または参考文献110の表3および表4に列挙される抗原)。
【0062】
上記組成物は、これらのさらなる抗原の1つ以上を含有し得る。抗原の組み合わせは、共有された特徴(例えば、呼吸器疾患に関連した抗原、腸疾患に関連した抗原、性感染症に関連した抗原など)に基づくべきであることが望ましい。
【0063】
糖類抗原または炭水化物抗原が使用される場合、免疫原性を増強するために、その抗原は、好ましくはキャリアータンパク質と結合される{例えば、参考文献111〜参考文献120}。好ましいキャリアータンパク質は、細菌毒素または細菌トキソイド(例えば、ジフテリアトキソイドまたは破傷風トキソイド)である。CRM197ジフテリアトキソイドは、特に好ましい{121}。他のキャリアーポリペプチドとしては、N.meningitidis外膜タンパク質{122}、合成ペプチド{123、124}、熱ショックタンパク質{125、126}、百日咳タンパク質{127、128}、H.influenzae由来のプロテインD{129}、サイトカイン{130}、リンホカイン{130}、ホルモン{130}、成長因子{130}、C.difficile由来の、毒素Aまたは毒素B{131}、鉄取り込みタンパク質{132}などが挙げられる。混合物が、血清群Aおよび血清群Cの両方に由来する莢膜糖類を含有する場合、MenA糖類:MenC糖類の比(w/w)は、1より大きい(例えば、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1またはより高い)ことが好ましくあり得る。異なる糖類は、同じ型のキャリアータンパク質または異なる型のキャリアータンパク質に結合され得る。任意の適切な結合反応は、必要な場合、任意の適切なリンカーと共に使用され得る。
【0064】
毒素タンパク質抗原は、必要な場合、無毒化され得る(例えば、化学的手段および/または遺伝的手段による百日咳毒素の無毒化{63})。
【0065】
ジフテリア抗原が上記組成物中に含まれる場合、破傷風抗原および百日咳抗原を含むこともまた好ましい。同様に、破傷風抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および百日咳抗原を含むこともまた好ましい。同様に、百日咳抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および破傷風抗原を含むこともまた好ましい。
【0066】
上記組成物中の抗原は代表的に、それぞれ少なくとも1μg/mlの濃度で存在する。一般的には、任意に所与の抗原の濃度は、その抗原に対する免疫応答を誘起するのに十分である。
【0067】
本発明の組成物におけるタンパク質抗原の使用に代わるものとしては、上記抗原をコードする核酸が使用され得る{例えば、参考文献133〜参考文献141}。従って、本発明の組成物のタンパク質成分は、そのタンパク質をコードする核酸(好ましくはDNA、例えば、プラスミドの形態である)によって置換され得る。
【0068】
(プロセス)
本発明はまた、本発明のポリペプチドを生成するためのプロセスを提供し、このプロセスは、本発明の核酸によって形質転換された宿主細胞を、ポリペプチド発現を誘導する条件下で培養する工程を包含する。
【0069】
本発明は、本発明のポリペプチドを生成するためのプロセスを提供し、このプロセスは、化学的手段によって、少なくとも一部の上記ポリペプチドを合成する工程を包含する。
【0070】
本発明は、本発明の核酸を生成するためのプロセスを提供し、このプロセスは、プライマーベースの増幅方法(例えば、PCR)を使用して核酸を増幅する工程を包含する。
【0071】
本発明は、本発明の核酸を生成するためのプロセスを提供し、このプロセスは、化学的手段によって、少なくとも一部の上記核酸を合成する工程を包含する。
【0072】
本発明はまた、サンプル中の細菌の存在を検出ためのプロセスを提供し、このプロセスは、ハイブリダイズ条件下で、上記サンプルと本発明の核酸とを接触させる工程;そして(b)上記サンプル中に存在する核酸に対する本発明の核酸のハイブリダイゼーションの、存在または非存在を検出する工程を包含する。工程(b)におけるハイブリダイゼーションの存在は、上記サンプルが、関連する細菌を含むことを示す。
【0073】
本発明はまた、細菌の存在を検出するための免疫学的アッセイ法を提供し、この方法は、サンプルと、本発明のポリペプチドまたは本発明の抗体とを接触させる工程を包含する。
【0074】
(付着阻害)
本発明は、宿主細胞(例えば、ヒト細胞)に対する細菌細胞の付着を阻害するための方法を提供する。上記細胞は、インビトロ(例えば、細胞培養物中)またはインビボであり得る。上記細胞は、最も好ましくはヒト細胞である。上記宿主細胞は代表的に、上皮細胞または内皮細胞である。
【0075】
本発明は、宿主細胞に対する細菌細胞の付着を防ぐための方法を提供し、ここで1つ以上の本発明のポリペプチドの上記宿主細胞に対して結合する能力はブロックされる。
【0076】
上記結合する能力は、様々な方法でブロックされ得るが、最も都合良くは、本発明のポリペプチドに対して特異的な抗体が使用される。抗体の使用に代わるものとしては、本発明のポリペプチドと上記宿主細胞上のそのレセプターとの間の相互作用のアンタゴニストが使用され得る。さらに代替的には、上記宿主細胞レセプターの可溶性形態が、おとりとして使用され得る。これらは、レセプターの膜貫通領域、および必要に応じて細胞質領域を除去することによって生成され得る。
【0077】
本発明の抗体、本発明のアンタゴニストおよび本発明の可溶性レセプターは、宿主細胞に対する細菌細胞の付着を防ぐ医薬として使用され得る。
【0078】
本発明は、宿主細胞に対する細菌細胞の付着を防ぐための方法を提供し、ここで本発明のポリペプチドの発現は阻害される。上記阻害は転写のレベルおよび/または翻訳のレベルにおいてであり得る。上記遺伝子の発現を阻害するための好ましい技術は、アンチセンスである{例えば、参考文献142〜参考文献148など}。抗細菌アンチセンス技術は、例えば、参考文献149および参考文献150に開示される。
【0079】
本発明は、上皮細胞に対する細菌(例えば、ナイセリアの)細胞の付着を防ぐための方法を提供し、ここで本発明のポリペプチドをコードする遺伝子は、ノックアウトされる。従って、本発明は、そのような遺伝子がノックアウトされた細菌を提供する。ノックアウト細菌を作製するための技術は、周知である。ノックアウト変異は、上記遺伝子のコード領域中に位置され得るか、またはその転写制御領域内(例えば、そのプロモーター内)に位置し得る。上記ノックアウト変異は、本発明のポリペプチドをコードするmRNAのレベルを、野生型細菌によって生成されるmRNAのレベルの<1%に低下させる(例えば、<0.5%、<0.1%、0%)。本発明のノックアウト変異は、免疫原性の組成物として(例えば、ワクチンとして)使用され得る。そのようなワクチンは、弱毒化された生細菌のような変異体を含み得る。
【0080】
本発明はまた、宿主細胞に対する細菌細胞の結合を阻害する化合物(アンタゴニスト)を同定するために化合物をスクリーニングするための方法を提供する。
【0081】
スクリーニングにおける潜在的なアンタゴニストとしては、低分子有機分子、ペプチド、ペプトイド、ポリペプチド、脂質、金属、ヌクレオチド、ヌクレオシド、ポリアミン、抗体、およびそれらの誘導体が挙げられる。低分子有機分子は、50ダルトンと約2,500ダルトンとの間の分子量、そして最も好ましくは200ダルトン〜800ダルトンの範囲内の分子量を有する。天然物を含む抽出物、化合物ライブラリーまたは混合された組み合わせ合成の生成物のような物質の複合混合物もまた、潜在的なアンタゴニストを含む。
【0082】
代表的には、本発明のポリペプチドは、宿主細胞および試験化合物(例えば、抗体)と一緒にインキュベートされ、次いでその混合物は、上記タンパク質と上皮細胞との間の相互作用が阻害されたか否かを見るために試験される。上記タンパク質、細胞および化合物は、任意の順序で混合され得る。
【0083】
当然のこととして、阻害は、スタンダード(例えば、ネイティブの、タンパク質/細胞相互作用)と比較して決定される。好ましくは、上記スタンダードは、上記試験化合物の非存在下で測定されたコントロール値である。上記スタンダードは、上記方法が行われる前に決定され得るか、あるいは上記方法が、行われた際か、または行われた後に決定され得ることが理解される。それはまた、絶対的スタンダードであり得る。
【0084】
好ましいハイスループットスクリーニング方法に関して、このアッセイにおける全ての生化学的工程は、例えば、試験管内またはマイクロタイタープレート内の単一溶液中で行われ、そして上記試験化合物は、最初に、単一化合物濃度において分析される。ハイスループットスクリーニングの目的のため、実験的条件は、スクリーニングされた全化合物の中から、「陽性」化合物として同定される試験化合物の割合を達成するために調整される。
【0085】
上記方法はまた、1つ以上の試験化合物を、本発明のポリペプチドと一緒にインキュベートする工程、そしてそれらが相互作用するか否かを決定する工程を包含し得る。次いで、上記タンパク質と相互作用する化合物は、上記タンパク質と上皮細胞との間の相互作用をブロックするそれらの能力について試験され得る。
【0086】
使用され得る他の方法としては、例えば、細菌:宿主レセプター相互作用の阻害は、転写を活性化しないものとして報告されているリバース2ハイブリッドスクリーニング(reverse two hybrid screening){151}が挙げられる。
【0087】
本発明はまた、これらの方法を使用して同定された化合物を提供する。これらは、細菌感染を処置するためか、または細菌感染を防ぐために使用され得る。上記化合物は、好ましくは、少なくとも10−7M(例えば、10−8M、10−9M、10−10Mまたはより高い)の本発明のポリペプチドに対する親和性を有する。
【0088】
(定義)
用語「含有する(comprising)」は、「含む(including)」ならびに「なる(consisting)」を包含し、例えば、Xを「含有する」組成物は、もっぱらXからなり得るか、または付加的なもの(例えば、X+Y)を含み得る。
【0089】
数値xに関する用語「約」は、例えば、x±10%を意味する。
2つのアミノ酸配列間における配列同一性のパーセンテージへの言及は、アラインメント(align)された場合に,アミノ酸のパーセンテージは、2つの配列の比較において同一であることを意味する。このアライメント、および相同性のパーセントまたは配列同一性のパーセントは、当該分野で公知のソフトウェアプログラム(例えば、参考文献152の節7.7.18に記載されるソフトウェアプログラム)を使用して決定され得る。好ましいアライメントは、12のギャップ開始ペナルティー(gap open penalty)および2のギャップ伸長ペナルティー(gap extension penalty)、62のBLOSUMマトリックスを用いたアフィンギャップ検索(affine gap search)を使用するSmith−Waterman相同性検索アルゴリズムによって決定される。Smith−Waterman相同性検索アルゴリズムは、参考文献153に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1〜図15は、コイルドコイル領域を示す、本発明のアミノ酸配列の分析を示す。
【図2】図1〜図15は、コイルドコイル領域を示す、本発明のアミノ酸配列の分析を示す。
【図3】図1〜図15は、コイルドコイル領域を示す、本発明のアミノ酸配列の分析を示す。
【図4】図1〜図15は、コイルドコイル領域を示す、本発明のアミノ酸配列の分析を示す。
【図5】図1〜図15は、コイルドコイル領域を示す、本発明のアミノ酸配列の分析を示す。
【図6】図1〜図15は、コイルドコイル領域を示す、本発明のアミノ酸配列の分析を示す。
【図7】図1〜図15は、コイルドコイル領域を示す、本発明のアミノ酸配列の分析を示す。
【図8】図1〜図15は、コイルドコイル領域を示す、本発明のアミノ酸配列の分析を示す。
【図9】図1〜図15は、コイルドコイル領域を示す、本発明のアミノ酸配列の分析を示す。
【図10】図1〜図15は、コイルドコイル領域を示す、本発明のアミノ酸配列の分析を示す。
【図11】図1〜図15は、コイルドコイル領域を示す、本発明のアミノ酸配列の分析を示す。
【図12】図1〜図15は、コイルドコイル領域を示す、本発明のアミノ酸配列の分析を示す。
【図13】図1〜図15は、コイルドコイル領域を示す、本発明のアミノ酸配列の分析を示す。
【図14】図1〜図15は、コイルドコイル領域を示す、本発明のアミノ酸配列の分析を示す。
【図15】図1〜図15は、コイルドコイル領域を示す、本発明のアミノ酸配列の分析を示す。
【図16】図16は、本発明のポリペプチドのアンカー領域間における保存を示す。
【図17】図17は、単量体形態および三量体形態における髄膜炎菌性外膜内の、NadAの例示である。
【図18】図18および図19は、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の、遺伝子環境(genetic environment)の比較を示す。図20は、E.coli K1対E.coli K12における遺伝子環境を例示する。
【図19】図18および図19は、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の、遺伝子環境の比較を示す。図20は、E.coli K1対E.coli K12における遺伝子環境を例示する。
【図20】図18および図19は、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の、遺伝子環境の比較を示す。図20は、E.coli K1対E.coli K12における遺伝子環境を例示する。
【図21】図21は、(図21A)NadAおよび(図21B)HadAについてのコイル分析を示す。
【図22】図22は、hadA陽性株(F3031)および種々のhadA陰性株(d型、b型、およびいくつかの類型できないH.influenzae)におけるhadA遺伝子座の模式的な構成である。
【図23】図23は、異なる株のHadAの間の関係を示す系統樹である。
【図24】図24は、E.coliでのHadAの発現に関する3つの構造を例示する。
【図25】図25は、発現されたHadA−HisのBis−Trisゲルを示す。レーンは、(奇数)全タンパク質および(偶数)可溶性タンパク質の対にされる。レーン1およびレーン2は、20℃における空プラスミドであり;レーン3およびレーン4は、20℃における発現であり;レーン5およびレーン6は、30℃における空プラスミドであり;レーン7およびレーン8は、30℃における発現であり;レーン9およびレーン10は、37℃における空プラスミドであり;レーン11およびレーン12は、37℃における発現であり;Mは、前染色されたタンパク質スタンダードである(BlueTMPlus2,Invitrogenを参照のこと)。
【図26】図26はウェスタンブロットである。レーンは:(1)前染色されたタンパク質スタンダード(BlueTMPlus2を参照のこと)であり;(2)30℃での空プラスミドにおける全タンパク質であり;(3)30℃での空プラスミドにおける可溶性タンパク質であり;(4)30℃において発現された全タンパク質であり;(5)30℃において発現された可溶性タンパク質であり;(6)rHadA−Hisである。
【図27】図27は、E.coliで発現されたHadAのChang細胞に対する結合のFACS分析を示す。HadAは、9つの濃度で試験され、そして結合は評価された。4つの代表的なFACS分析スペクトルが示される。
【図28】図28は、パネルA〜パネルCにおいて3つの異なる凝集、およびパネルDにおける空pETプラスミドを含む細胞の、位相差顕微鏡写真を示す。
【図29】図29は、E.coli発現HadAによるChang細胞の、(A)吸着および(B)侵襲を示す。左のバーは、空プラスミドによって形質転換されたコントロール細胞であり;右のバーは、HadA発現細菌である。結果は、3つ組で作成された測定の平均の平均±標準誤差である。
【図30】図30は、E.coli−pET HadA naとChang上皮細胞との免疫蛍光顕微鏡分析を示す。細胞外の細菌は緑色に見え;細胞内の細菌は赤色である。
【図31】図31は、E.coli中で発現された、HadA/naおよびHadA/LNadA/naのSDS−PAGEを示す。レーンは:(1)前染色されたタンパク質スタンダード(BlueTMPlus2を参照のこと)であり;(2)空プラスミドの一晩未誘導培養物であり;(3)HadA/naの一晩培養物であり;(4)HadA/LNadA/naの一晩培養物であり;(5)〜(7)IPTGによるタンパク質発現の誘導後3時間における(2)〜(4)である。矢印は、モノマーおよびオリゴマーを示す。
【図32】図32は、E.coli中で発現された、HadA/naおよびHadA/LNadA/naのウェスタンブロットを示す。レーンは、図31と同じである。矢印は、モノマーおよびオリゴマーを示す。
【図33】図33は、E.coli中で誘導せずに一晩発現されたHadAのSDS−PAGEを示す。レーンは:(1)前染色されたタンパク質スタンダード(BlueTMPlus2を参照のこと)であり;(2)空プラスミドであり;(3)HadA/na形質転換であり;(4)空プラスミドの外膜抽出物であり;(5)HadA/na形質転換の外膜抽出物である。
【図34】図34は、空pETプラスミドによってか、またはHadA/na pETプラスミドによって形質転換されたE.coliを示す、HadA発現のFACS分析を示す。
【図35】図35は、HadA発現を伴うか、またはHadA発現を伴わない、E.coliにおける沈降アッセイの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0091】
(発明を実施するための様式)
(Neisseria meningitidis NadAタンパク質)
Neisseria meningitidis血清群Bゲノム{75}内において、外膜タンパク質(NadA)が同定された{1}。これは、Yersinia enterocolitica付着因子YadAに対して、およびMoraxella catarrhalis表面タンパク質UspA2{154}に対して弱い相同性を示す。nadA遺伝子は、高病原性N.meningitidis株のサブグループ中に存在し、そしてそれは、低GC含有量によって特徴付けられ、このことは水平移行による遺伝子の起こりうる獲得現象を示唆する。
【0092】
上記NadA付着因子に類似するタンパク質が、他の病原体によって獲得され得たという可能性を研究するために、本発明者らは、相同的なタンパク質を調査した。
【0093】
NadAおよびYadAの配列アライメントは、その2つのタンパク質がC末端において、最も類似しており、それが膜アンカードメインであることを明らかにした。NadAにおいて、このドメインは約70残基長であり、そしてそれは5つの予測された両親媒性のβ鎖を含み、そのドメインは、上記外膜を複数回横断し、従って上記タンパク質を上記細菌の表面に固定する(図17)。この領域内において、NadAとYadAとの間の配列類似性のレベルは、60%前後の同一性である一方で、N末端ドメインおよび中央ドメインにおける相同性は、25%以下の同一性である。
【0094】
最初の調査(NadAアンカードメインに基づいた)において、結果は、YadAおよびUspA2だけでなく、他のタンパク質(例えば、Haemophilus ducreyiの血清抵抗性タンパク質DsrA、E.coliの免疫グロブリン結合タンパク質EibA、EibC、EibD、EibEおよびEibF、ならびにActinobacillus actinomycetemcomitansの外膜タンパク質100{154})をも含む。この科の、より離れたメンバーを明らかにするために、これら結果はさらなる調査に使用され、そしてこのアプローチは16個のさらなる結果を同定した。これら16個のポチペプチドは、2次構造分析、コイルドコイル予測、およびリーダーペプチドの存在/非存在についてさらに評価された。予想通り、中央領域内で僅かなアミノ酸類似性を示したにもかかわらず、上記同定されたポリペプチドのほとんどは、そのポリペプチドに安定なオリゴマーを形成する能力を与える、コイルドコイル特徴を有する。上記同定されたポリペプチドのアンカー領域は、良く保存されている(図16)。さらに、これらのポリペプチドをコードする遺伝子のGC含有量は、それらの代表的なゲノムにおける平均より低く、それらが移動性の遺伝的要素を維持する遺伝子によってコードされることを示唆している。
【0095】
(Escherichia coli)
ポリペプチドは、腸管病原性(EPEC)株、腸管凝集性(EAEC)株、腸管出血性(EHEC)株および尿路疾患性(UPEC)株を含むE.coliの病原性株において見出された。さらに、EHEC株およびEPEC株のポリペプチドとほとんど一致するポリペプチドは、新生児髄膜炎を引き起こす、カプセル化されたE.coli株であるK1株において見出された。K1配列はNadAと、以下の通りにアラインメントする。
【0096】
【表2】
別のNadAアナログを、E.coliの志賀毒素産生性株(STEC){155}に存在する強毒性プラスミドによりコードした。このタンパク質(Saa)は、E.coliの外膜上に発現され、そして高分子量オリゴマーを形成する。対照的に、NadAに対応するものは、良性のE.coli K12株においては検出することができず、これはこれらの遺伝子が、その種の進化の初期の間に側方交換(lateral exchange)により獲得されているという見解を支持する(図20)。研究室株MG1655においてもまた、対応するものは見出すことはできなかった。
【0097】
これらの知見に後押しされ、そしてこれらの遺伝子の挿入/欠失の可能なメカニズムを評価するために、上記NadA様分子をコードする遺伝子が存在する(harbour)する領域の配列を研究した。EHEC株についてのこの領域の配列が、配列番号23である。
【0098】
この分析は、上記NadA様タンパク質の配列保存性は、K1とEHECとの間の同一性95%からK1とEPECとの間の同一性98%までの範囲であり、上記DNAセグメントの遺伝子組織が、K1、EHECおよびEPECのゲノム間でほとんど同一であることを示した。EAECの場合は、その隣接領域は保存されているが、たとえそのN末端およびC末端はよく保存されているとしてもNadA様タンパク質の配列は他よりも380残基長い。
【0099】
【表3】
上記の分析をK12のゲノムにまで広げると、上記挿入部位は、対向するストランド上にコードされる2つの仮想オープンリーディングフレーム(YbbJおよびYbbI)間に存在し、そして小さな「島」が、3つの遺伝子(機能未知の仮想内在性膜タンパク質をコードするORF、推定NadA様付着因子の遺伝子、および機能未知のリポタンパク質と予想されるORF)からなることが分かった。後半の2つのORFは、おそらく共転写されるが、最初のORFは、逆向きにコードされている。推定の挿入部位を表し得る一対の7bp(CTGACGC)のダイレクトリピートは、上記の挿入されたフラグメント(配列番号23;ヌクレオチド1811および4255から開始する)の境界にマッピングされ得、そしてこのリピートは、上記K12株における挿入点の近傍には存在しない。
【0100】
獲得されたDNA領域の長さは、EPECについては2348塩基、K1およびEHECについては2450塩基、そしてEAECについては2630塩基である(図18)。全ての場合において、そのフラグメントのG+C含量は、各ゲノムについて計算された平均組成と比較した場合より少なく、これはこのセグメントが側鎖交換のメカニズムで病原性E.coliにより獲得されているという初期の仮定を確認する。
【0101】
尿路疾患性のE.coli(UPEC)の場合、種々のDNAセグメントが、上記ybbJ遺伝子とybbI遺伝子との間で見出された。このセグメントは、1342bpの長さであり、推定の細胞質タンパク質をコードする。このタンパク質は、Salmonella thphymurium LT12においてのみ保存され、他の分析された全てのE.coli株において存在しなかった。記載された他の挿入フラグメントと異なり、いずれのダイレクトリピートも、この島(そのGC組成もまた、上記平均値に非常に類似)の境界にマッピングされ得なかった。これらのデータは、上記NadA様コード遺伝子が、c0608遺伝子の場所に、後に挿入されたことを示し得る。それにもかかわらず、その後の研究は、NadAのホモログをコードする遺伝子が、尿路疾患性のE.coliのCFT073株のゲノムの異なる場所に見られ得ることを明らかにした。このタンパク質は、NadAにより遠く関連し、第二のNadA様タンパク質のファミリーのメンバーとして見られる。このタンパク質に対応するものは、E.coliの他の病原性株の、類似した場所に含まれ、かつ第一のE.coliのNadA様分子群と同様に、その対応する遺伝子もまた、小さな島上にコードされ、上記K12株には存在しない(図19)。さらに、これらの遺伝子は、フレームシフトしたShigella flexneri配列と、3’末端に強い類似性を有する。NLM隣接領域の配列を、著しい類似性を示す2種(E.coliおよびShigella)において比較した。配列の保存は、上記付着因子コード領域のアミノ末端部分およびカルボキシ末端部分に限定されるが、これらの隣接領域は、ヌクレオチドレベルでシンテニーかつ80%を越える同一性を共有する。そのNadA様遺伝子の上流で、この島が、EPECかEHECのいずれかにおいて、そしてShigellaにおいて、フレームシフトされるリポタンパク質をコードするORFを含有する。さらに、Shigellaのゲノムにおいて、トランスポザーゼエレメントをコードする2つのさらなる遺伝子(insAおよびinsB)が、そのNLM遺伝子の近傍に見出される。
【0102】
【表4】
(Haemophilus)
不完全なNadAホモログを、ブラジル出血熱(BPF)Haemophilus influenzae単離体{156}において発見した。このポリペプチドは、HadAと名付けられている。NadAおよびHadAのアライメントは、以下:
【0103】
【表5】
のとおりである。
【0104】
HadAに対応するものは、類型できないH.influenzae 86028株(これは、小児における中耳炎の原因である)、または非病原性H.influenzae Rd KW20株のいずれにおいても、検出され得ない。C末端アンカー領域におけるHadAとNadAとの間の非常に高レベルの配列同一性は、共通の起源を示し得る。
【0105】
そのhadA遺伝子の起源を解析するために、BPF単離体におけるこのDNA領域のヌクレオチド配列(配列番号20)を、小児の中耳炎と関連するH.influenzae株(非病原性株Rd{157}、および類型できない86028株(NTHi86028))のゲノム配列の同じ領域と比較した。
【0106】
この比較の結果は、上記付着因子コード遺伝子が、ブラジル出血熱クローン(F3031株)に対して特異的であることを示すが、一方対応するものは、研究室のRd株または類型できない株のいずれにおいても、マッピングされ得なかった。そのHadAをコードするフラグメントは、NadAについて記載されたもの{1}と密接に似ている組織を有し、かつインタクトなオープンリーディングフレーム+上流領域182bp(これは−10および−35のプロモーターエレメントを含む)を含有する。その小さな遺伝的な島は、その5’末端でRNAヘリカーゼ遺伝子に、そしてその3’末端に位置する推定のプロテアーゼをコードする遺伝子に、隣接される。その組み換えられたセグメントのGC組成は、そのゲノムの残りと一貫している。
【0107】
対照的に、NTHi 86028株は、それがRNAヘリカーゼのORFおよびRNAプロテアーゼのORFを包含する全領域を欠損しているために、全くネガティブな株であると考えられ得るが、Rdゲノムは、この領域に、機能未知の2本の短いORFをコードする1.1kbのDNAセグメントを含有する。この領域は、異常なGC含量(32%)により特徴付けられ、従って、この部位において独立した組み換え事象が起こったことを示唆している。
【0108】
さらなるNadA様分子を、他のHaemophilus種、すなわち、H.somnus、H.ducreyiおよびH.actinomycetemcomitans(Actinobacillus actinomycetemcomitansとしてもまた公知)において、同定した。
【0109】
【表6】
NadAおよび上記H.actinomycetemcomitansの配列アライメントは、以下:
【0110】
【表7】
のとおりである。
【0111】
NadAおよび上記H.somnusの配列アライメントは、以下:
【0112】
【表8】
【0113】
【表9】
のとおりである。
【0114】
NadAおよび上記H.ducreyiの配列アライメントは、以下:
【0115】
【表10】
のとおりである。
NB:H.ducreyiポリペプチドについてのコイルドコイル予想は高くない。
【0116】
(他の細菌)
本調査において同定されたさらなるNadAホモログは、以下:
【0117】
【表11】
【0118】
【表12】
である。
【0119】
(多重配列アライメント)
NadAの「ファミリー」のメンバーの、多重配列アライメントは、以下:
【0120】
【表13】
【0121】
【表14】
である。
【0122】
(HadAの研究)
上記されたように、HadA配列(配列番号1)を、当初は不完全な形態で発見した。完全なHadA遺伝子座を、フォワードオリゴヌクレオチドプライマーHOM F(配列番号40)、リバースプライマーHOM R2(配列番号41)およびHOM R2よりさらに下流の代替リバースプライマーHOM R3(配列番号42)を使用して増幅した。7個のプライマー(フォワード:配列番号43〜46;リバース:配列番号47〜49)を、完全な遺伝子座の配列決定のために使用した。
【0123】
F3031株における完全な遺伝子座は、配列番号50として与えられる。この配列のヌクレオチド874〜1339は、新規であり、そして配列番号20の下流である。HadAのアミノ酸配列は、配列番号51である。配列番号20のC末端の下流は、単独で、配列番号52として与えられる。
【0124】
NadAおよびHadAのアライメント(243aaオーバーラップにおいて、39.5%の同一性)は、以下:
【0125】
【表15】
【0126】
【表16】
に与えられる。
【0127】
全体の同一性は39.5%であるが、C末端部分における同一性は、ずっと高い(86%まで)。この2つのタンパク質の中央ドメインはあまり保存されていないが、両方のタンパク質は、強いコイルドコイル構造をとると推測される(図21Aおよび図21B)。
【0128】
hadAポジティブ株(F3031)および多種多様なhadAネガティブ株(d型、b型、および複数の類型できないH.influenzae)におけるhadA遺伝子座の概略的な構成を、図22に示す。隣接する遺伝子(RNAヘリカーゼであるHI0422および推定のプロテアーゼであるHI0419(どちらもhadAに対して逆向き))は、常に保存されている。
【0129】
hadAのすぐ下流は、KW20株においてフレームシフトされ、かつ試験された全ての他のHaemophilus株には存在しない仮想タンパク質(配列番号53および54)をコードする遺伝子である。このタンパク質に対する最も近いデータベースのマッチは、ZP_00132218.1(配列番号55)であり:
【0130】
【表17】
これは、ヒストンアセチルトランスフェラーゼHPA2およびHaemophilus somnus 2336由来の関連するアセチルトランスフェラーゼである。
【0131】
HadAネガティブ株におけるその遺伝子座のアライメントは、以下:
【0132】
【表18】
【0133】
【表19】
に与えられる。
【0134】
EAGAN配列およびHK707配列は、b型Hi株由来であり;他の4つは、NTHi株由来である。上流遺伝子(HI0422)の終止コドンTAAに、下線が引いてあり、下流遺伝子(HI0419)の終止コドンTAGの逆向きの相補体も同様である。そのHadA遺伝子は、これら2つの遺伝子の間に見られ、その重要な遺伝子間配列は、配列番号62である。
【0135】
H.influenzae Rd株およびF1947株は、HadA遺伝子を欠失しているが、HI0419とHI0422との間の配列は、より長く、かつHadAの上流およびHadAの最初の5個のコドンを含む領域と相同性を有する配列を含む。Hi aegyptius生物群の配列は、以下:
【0136】
【表20】
のとおりである。
【0137】
下線が引かれた77マー(配列番号63):
【0138】
【表21】
はまた、Rd株およびF1947株においても、HI0422の下流に見られる。
【0139】
この共有される配列は、株がHadAネガティブであっても、サザンブロットにおいて交差反応のある程度のレベルを生じ得る。
【0140】
種々のHaemophilus株のパネルにおけるサザンブロット実験は、多様な株におけるHadAの存在を明らかにした(図23)。全ての他の類型可能なH.influenzae株または類型できないH.influenzae株は、この解析によると、hadA遺伝子を欠失していた。
【0141】
(E.coliにおけるHadA発現)
HadAの構造および機能を研究するために、図24に示されるように、E.coliにおける発現のための種々の構築物:(1)全長のタンパク質を発現するための構築物(ネイティブHadA、すなわち「HadA/na」);(2)NadAリーダーペプチドの制御下にあるHadAタンパク質を発現するための構築物(「HadA/LNadA/na」);(3)C末端ヒスチジン融合タンパク質を発現するための構築物(「HadA−his」)、を調製した。全ての構築物を、pET21b発現ベクターにおいて作製し、そしてE.coli BL21(DE3)を、発現宿主として使用した。
【0142】
HadA−hisを、種々の温度で発現させた。全体のかつ可溶性のタンパク質を、SDS−PAGE(Bis−Trisゲル、12%MOPS;InvitrogenTM)により解析した。このゲルを、図25に示す。30℃で発現されたこの可溶性タンパク質(レーン9)を精製し、マウスを免疫化するために使用した。
【0143】
HadA−Hisの精製は、IMACプロセスにより行われ得るが、これは全てのE.coli夾雑物を除去するのにあまり効果的ではなかった。従って、IMACに引き続いて、pH7.7緩衝液中で、陰イオン交換クロマトグラフィーで透析した。意外にも、このタンパク質は、完全に沈殿した。続いて、そのタンパク質を、4つの異なるpH条件(6.3、6.5、7.7および8.5)の緩衝液中で透析し、そしてpH7.7でのみ沈殿を観察した。理論的pIが4.38なので、その沈殿は、等電点沈殿ではないはずである。
【0144】
上記マウスの血清を、E.coli株の種々の画分および精製された組み換えHadAのウェスタンブロット(12% Mops)を可視化するために使用した。一次抗体は、抗HadA(1:1000)であり;二次抗体は、抗マウス免疫グロブリン−HRP(DAKO)1:10000であった。この結果は、図26である。
【0145】
HadA/naおよびHadA/LNadA/naのSDS−PAGEを、図31に示す。一晩中および誘導培養の両方において、HadAタンパク質は、SDSゲル中で熱安定なモノマーおよびオリゴマー(例えば、トリマー)として、発現された。ウェスタンブロットは、図32に示され、上記E.coli細菌中におけるHadAモノマーおよびHadAオリゴマーの存在を確認した。
【0146】
発現をまた、細菌の外膜タンパク質を試験することにより研究した。図33は、E.coli由来のOMV調製物のSDS−PAGE(Bis−Trisゲル10% MOPS、Invitrogen)、およびHadAオリゴマーがその外膜で見られることを示す。その細胞表面部分を、図34に示されるように、FACSにより確認した。
【0147】
(付着)
精製したHadAを、Chang上皮細胞に結合する能力について試験した。その実験は、FACS解析により、HadA−hisがその細胞に用量依存的な様式で結合することを示した(図27)。
【0148】
HadA/naを発現するE.coli BL21(DE3)を、凝集について試験した。図28は、室温で4時間放置されていた後期対数期の培養物から収集された細胞凝集物の位相差顕微鏡を示す。3つの異なるサンプルを、図28A〜図28Cに示す。細菌は、目に見える「雲状物」を形成し、そして細菌の凝集は、マイクロコロニー形成と相関し得る。対照的に、pETプラスミドのみで形質転換された細胞は、凝集性を全く示さない。
【0149】
凝集をまた、チューブ沈降アッセイを用いて研究した。空のpETまたはHadA/naを含有するpETのいずれかで形質転換されたE.coliの培養物を、後期対数期までインキュベートし、次いで室温で4時間沈降させた。そのHadA発現細菌は、濁度を失ったが、コントロールの細胞は、失わなかった(図35)。これは、HadAが細菌の凝集を促進することを示している。
【0150】
付着実験および侵襲実験もまた、HadA/naを発現するE.coliおよびChang細胞の単層を使用して行った。付着(侵襲)を、細胞単層上の付着した(侵襲された)細菌の数を数えることにより計算した(MOI=1:1000)。結果を、3連の実験で作成された測定の平均±平均値の標準誤差とし、図29に示す。付着および侵襲を示す細胞数は、以下:
【0151】
【表22】
のとおりであった。
【0152】
付着および侵襲を、免疫蛍光顕微鏡分析により確認した(図30)。細胞外の細菌(緑色)および細胞内の細菌(赤色)が、見られ得る。
【0153】
HadAのさらなる研究としては、付着/侵襲アッセイにおける試験のためのBPF Haemophilus influenzae株の同系HadAノックアウトの構築;NadAノックインにより付着が相補され得るかどうか確かめるための、このようなノックアウト変異体の試験;HadAおよびNadAが同じレセプターに結合するかどうか確かめるための、ヒト細胞への付着/侵襲におけるHadAおよびNadAを用いた競合実験、が挙げられる。
【0154】
本発明は一例としてのみ説明され、本発明の範囲および精神の中になお存在しながら改変がなされ得ることが、理解される。
【0155】
【表23−1】
【0156】
【表23−2】
【0157】
【表23−3】
【0158】
【表23−4】
【0159】
(配列表)
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
【数9】
【数10】
【数11】
【数12】
【数13】
【数14】
【数15】
【数16】
【数17】
【数18】
【背景技術】
【0001】
本明細書中に引用される全ての書類は、それらの全体において、参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、細菌性付着因子の分野にある。特に、本発明は、Haemophilus influenzae、Escherichia coliおよび他の生物に由来するビルレンス関連付着因子抗原に関する。
【0003】
(背景技術)
グラム陰性Haemophilus属としては、H.influenzae、H.aegyptius(H.influenzae aegytius生物群とも呼ばれる)、H.decreyiおよびH.somnusが挙げられる。これらの細菌は、結膜炎、軟性下疳、紫斑病の熱(purpuric fever)、髄膜炎、肺炎および喉頭蓋炎を含む疾患を引き起こし得る。H.influenzaeは、この属のなかで最も一般的に見られる病原体であり、そして、類型可能な株(被包性)および類型できない株(非被包性;「NTHi」)の両方を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
H.influenzae B型(「Hib」)に対するワクチンは、その莢膜サッカリドとキャリアタンパク質との結合体に基づき、充分な成功を収めているが、上記種の他のメンバーに対する保護の提供は、ほとんど発展していない。特に、D型 H.influenzaeおよび類型できないH.influenzaeは、問題のままである。
【0005】
同様に、ワクチンは、他の生物病原体(例えば、Escherichia coliの腸毒素産生性株(ETEC)、腸病原性株(EPEC)、腸凝集性株(enteroaggregative)(EAEC)、腸出血性株(EHEC)および志賀毒素株(STEC))に対しても、利用できないままである。
【0006】
このような細菌によって引き起こされる感染の予防および処置を改善するための物質および方法を提供することが、本発明の目的である。より詳細には、細菌感染に対して免疫するために適切な材料を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の開示)
付着因子に関与するビルレンス関連抗原は、いくつかの細菌および他の生物において同定され、そしてこれらの抗原は、細菌感染(特に、有毒株によって引き起こされる細菌感染)の診断、予防および処置のために有用である。特に、抗原は、以下:Haemophilus influenzae aegyptius生物群(配列番号1);Escherichia coli K1(配列番号2および3)およびEHEC EDL933株;Actinobacillus actinomycetemcomitans(配列番号4);Haemophilus somnus(配列番号5);Haemophilus ducreyi(配列番号6);EPEC E.coli E2348/69株(配列番号7);EPEC(配列番号18);EAEC E.coli O42株(配列番号8および9);尿路病原体(uropathogenic)E.coli(配列番号10);Shigella flexneri(配列番号11);Brucella melitensis(配列番号12);Brucella suis(配列番号13);Ralstonia solanacearum(配列番号14);Sinorhizobium meliloti(配列番号15);Bradorhizobium japonicum(配列番号16);ならびにBurkholderia fungorum(配列番号17)において、同定されている。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
(a)配列番号51、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18および54からなる群より選択される、アミノ酸配列;(b)(a)に規定されるような配列に対して少なくとも70%の同一性を有する、アミノ酸配列;ならびに/または
(c)(a)に規定されるような配列の少なくとも8個の連続するアミノ酸のフラグメントを含む、アミノ酸配列
のうちの1つ以上を含む、ポリペプチド。
(項目2)
項目1に記載のポリペプチドであって、前記(c)のフラグメントは、前記(a)の配列の4つのドメインのうちの1つ以上を含まない、ポリペプチド。
(項目3)
項目1に記載のポリペプチドであって、前記(c)のフラグメントは、前記(a)の
配列の少なくとも1つの完全なドメインを含む、ポリペプチド。
(項目4)
オリゴマー形態にある、項目1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチド。
(項目5)
式NH2−A−{−X−L−}x−B−COOHのポリペプチドであって、ここで:
Xは:(a)配列番号1〜18、51および54の1つ以上に対して少なくとも70%の同一性を有する、アミノ酸配列;ならびに/または
(b)配列番号1〜18、51または54の1つ以上の少なくとも8個の連続するアミノ酸のフラグメントである、アミノ酸配列、を含み;Lは、任意のリンカーアミノ酸配列であり;Aは、任意のN末端アミノ酸配列であり;Bは、任意のC末端アミノ酸配列であり;そしてxは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20である、
ポリペプチド。
(項目6)
アミノ酸配列−A−W1−W2−W3−W4−B−を含むポリペプチドであって:
Aは、任意のN末端配列であり;
Bは、任意のC末端配列であり;
W1は:(a)配列番号1〜18および51の1つ以上のリーダーペプチドに対して少なくとも70%の同一性を有する、任意のアミノ酸配列;ならびに/または(b)配列番号1〜18および51の1つ以上のリーダーペプチドの少なくとも8個の連続するアミノ酸のフラグメントである、任意のアミノ酸配列であり;
W2は:(a)配列番号1〜18および51の1つ以上の球状ヘッドに対して少なくとも70%の同一性を有する、任意のアミノ酸配列;ならびに/または(b)配列番号1〜18および51の1つ以上のリーダーペプチドの少なくとも8個の連続するアミノ酸のフラグメントである、任意のアミノ酸配列であり;
W3は:(a)配列番号1〜18および51の1つ以上のコイルドコイルドメインに対して少なくとも70%の同一性を有する、任意のアミノ酸配列;ならびに/または(b)配列番号1〜18および51の1つ以上のリーダーペプチドの少なくとも8個の連続するアミノ酸のフラグメントである、任意のアミノ酸配列であり;
W4は:(a)配列番号1〜18および51の1つ以上の膜貫通アンカー領域に対して少なくとも70%の同一性を有する、任意のアミノ酸配列;ならびに/または(b)配列番号1〜18および51の1つ以上のリーダーペプチドの少なくとも8個の連続するアミノ酸のフラグメントである、任意のアミノ酸配列であり;
ただし、W1、W2、W3またはW4のうちの少なくとも1つが存在する、ポリペプチド。
(項目7)
Haemophilus aegyptius由来の付着因子であって、ここで、該付着因子は:
(a)配列番号52のアミノ酸配列;(b)配列番号52に対して少なくとも70%の同一性を有する、アミノ酸配列;および/または(c)配列番号52の少なくとも8個の連続するアミノ酸のフラグメントである、アミノ酸配列
を含む、付着因子。
(項目8)
項目1に記載のポリペプチドに結合する抗体。
(項目9)
項目1に記載のポリペプチドまたは項目8に記載の抗体をコードする、核酸。
(項目10)
項目1〜9のいずれか1項に記載のポリペプチドおよび/または核酸および/または抗体を含有する、薬学的組成物。
(項目11)
薬物としての使用のための、項目10に記載の組成物。
(項目12)
哺乳動物において免疫応答を上昇させるための医薬の製造における、項目1に記載のポリペプチドの使用。
(項目13)
哺乳動物において免疫応答を上昇させるための方法であって、該方法は、有効量の項目10に記載の組成物を投与する工程を包含する、方法。
【0008】
本発明の抗原の間の配列同一性の程度は低いが、単純な一次配列情報を超えるレベルでの上記抗原の理解は、それらが、N末端からC末端のドメインの共通の配置、すなわち:・リーダーペプチド
・球状ヘッド
・コイルドコイル領域
・膜貫通アンカー領域
を共有することを示す。
【0009】
上記種々の抗原の間の配列類似性は、主に、上記C末端アンカー領域に限定される。このドメインの配置は、N.meningitidisタンパク質NadAと共有される{1}。
【0010】
配列番号1〜18におけるこれらの特徴の位置は、以下のとおりである:
【0011】
【表1】
(抗原)
本発明は、以下のアミノ酸配列うちの1つ以上を含むポリペプチドを提供する:配列番号1〜18、配列番号51および配列番号54のいずれか。
【0012】
本発明はまた、以下:(a)配列番号1〜18、51および54のうちの1つ以上に対して少なくともm%の同一性を有するアミノ酸配列であって、ここで、mは、50以上(例えば、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5またはそれ以上)である、アミノ酸配列;ならびに/または(b)配列番号1〜18、51および54のうちの1つ以上の少なくともn個の連続するアミノ酸のフラグメントであるアミノ酸であって、ここで、nは、7以上(例えば、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250またはそれ以上)である、アミノ酸配列
を含むポリペプチドを提供する。これらのポリペプチドは、配列番号1〜18、51および54の改変体(例えば、対立遺伝子改変体、ホモログ、オルトログ、パラログ、変異体など)を含む。
【0013】
(b)の好ましいフラグメントは、配列番号1〜18、51および54のうちの1つ以上由来のエピトープを含み、好ましくは、B細胞エピトープを含む。B細胞エピトープは、実験的に同定され得るかまたはアルゴリズム的に予測され得る。
【0014】
(b)の他の好ましいフラグメントは、配列番号1〜18、51および54由来の関連するアミノ酸配列の、C末端からの1つ以上のアミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれ以上)および/またはN末端からの1つ以上のアミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、45またはそれ以上)を欠く。特に、好ましいフラグメントは、少なくともN末端リーダー配列を省く(そして、その省かれたリーダー配列は、異種リーダー配列によって置換され得る)。
【0015】
他の好ましいフラグメントは、上の表に基づく配列番号1〜18および51の4つのドメインのうちの1つ以上(すなわち、1、2または3)を省く。他の好ましいフラグメントは、配列番号1〜18および51の4つのドメインのうちの1つ以上(すなわち、1、2または3)からなる。
【0016】
本発明の好ましいポリペプチドは、オリゴマー形態(例えば、ダイマー、トリマー、テトラマーなど)で存在する。トリマーが好ましいが、本発明のモノマーポリペプチドはまた、有用である。
【0017】
本発明はまた、式NH2−A−{−X−L−}x−B−COOHのポリペプチドを提供し、ここで:
−Xは、上に規定されたように:(a)配列番号1〜18、51および54のうちの1つ以上に対して少なくともm%の同一性を有するアミノ酸配列;ならびに/または(b)配列番号1〜18、51および54のうちの1つ以上の少なくともn個の連続するアミノ酸のフラグメントであるアミノ酸配列を含み;
−Lは、任意のリンカーアミノ酸配列であり;
−Aは、任意のN末端アミノ酸配列であり;
−Bは、任意のC末端アミノ酸配列であり;そして
−xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17または18である(好ましくは、x=2である)。
【0018】
−X−部分がリーダーペプチドを有する場合、このリーダーペプチドは、上記ハイブリッドタンパク質中に含まれても省かれてもよい。いくつかの実施形態において、上記リーダーペプチドは、上記ハイブリッドタンパク質のN末端に位置する−X−部分のリーダーペプチドを除いて、削除される(すなわち、X1のリーダーペプチドは保持されるが、X2...Xxのリーダーペプチドは省略される)。このことは、全てのリーダーペプチドを削除し、そしてX1のリーダーペプチドを部分−A−として使用することと等価である。
【0019】
{−X−L−}の各々のxについて、−X−は、同じであっても異なっていてもよく、そしてリンカーアミノ酸配列−L−は、存在してもしなくてもよい。例えば、x=2の場合、上記ハイブリッドは、NH2−X1−L1−X2−L2−COOH、NH2−X1−X2−COOH、NH2−X1−L1−X2−COOH、NH2−X1−X2−L2−COOHなどであり得る。リンカーアミノ酸配列−L−は、代表的には、短い(例えば、20以下のアミノ酸、すなわち、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1)。例としては、クローニングを容易にする短いペプチド配列、ポリグリシンリンカー(すなわち、Glynを含み、ここで、n=2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)およびヒスチジンタグ(すなわち、Hisn、ここで、n=3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)が挙げられる。他の適切なリンカーアミノ酸配列は、当業者に明らかである。有用なリンカーは、GSGGGG(配列番号19)であり、そのGly−Serジペプチドは、BamHI制限部位から形成され、従って、クローニングおよび操作を助け、そして上記(Gly)4テトラペプチドは、代表的なポリグリシンリンカーである。
【0020】
−A−は、任意のN末端アミノ酸配列である。これは、代表的に、短い(例えば、40以下のアミノ酸、すなわち、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1)。例としては、タンパク質輸送に関するリーダー配列、またはクローニングもしくは操作を容易にする短いペプチド配列(例えば、ヒスチジンタグ、すなわち、Hish、ここで、h=3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)が挙げられる。他の適切なN末端アミノ酸配列は、当業者に明らかである。X1が、それ自体のN末端メチオニンを欠く場合、−A−は、好ましくは、N末端メチオニンを提供するオリゴペプチド(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個のアミノ酸を有する)である。
【0021】
−B−は、任意のC末端アミノ酸配列である。これは、代表的に、短い(例えば、40以下のアミノ酸、すなわち、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1)。例としては、タンパク質輸送に関する配列、クローニングもしくは精製を容易にする短いペプチド(例えば、ヒスチジンタグ、すなわち、Hish、ここで、h=3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上)またはタンパク質安定性を増大させる配列が挙げられる。他の適切なC末端アミノ酸配列は、当業者に明らかである。
【0022】
本発明はまた、アミノ酸配列:
−A−W1−W2−W3−W4−B−
を含むポリペプチドを提供し、ここで:
−Aは、上に規定されるような任意の配列であり(好ましくは、上記ペプチドのN末端にある);
−Bは、上に規定されるような任意の配列であり(好ましくは、上記ペプチドのC末端にある);
−W1は:(a)配列番号1〜18および51のうちの1つ以上のリーダーペプチドに対して少なくともm%の同一性を有する、任意のアミノ酸配列;ならびに/または(b)配列番号1〜18および51うちの1つ以上のリーダーペプチドの少なくともn個の連続するアミノ酸のフラグメントである、任意のアミノ酸配列であり;
−W2は:(a)配列番号1〜18および51のうちの1つ以上の球状ヘッドドメインに対して少なくともm%の同一性を有する、任意のアミノ酸配列;ならびに/または(b)配列番号1〜18および51のうちの1つ以上の球状ヘッドドメインの少なくともn個の連続するアミノ酸のフラグメントである、任意のアミノ酸配列であり;
−W3は:(a)配列番号1〜18および51のうちの1つ以上のコイルドコイルドメインに対して少なくともm%の同一性を有する、任意のアミノ酸配列;ならびに/または(b)配列番号1〜18および51のうちの1つ以上のコイルドコイルドメインの少なくともn個の連続するアミノ酸のフラグメントである、任意のアミノ酸配列であり;
−W4は:(a)配列番号1〜18および51のうちの1つ以上の膜貫通アンカー領域に対して少なくともm%の同一性を有する、任意のアミノ酸配列;ならびに/または(b)配列番号1〜18および51のうちの1つ以上の膜貫通アンカー領域の少なくともn個の連続するアミノ酸のフラグメントである、任意のアミノ酸配列であり;
ただし、W1、W2、W3またはW4のうちの少なくとも1つが存在する。
【0023】
本発明はまた、上に記載されるようなポリペプチドを含むポリペプチドを提供し、ここで、そのペプチドのアミノ酸配列は、1つ以上のアミノ酸変異を含む。その変異は、好ましくは、本発明のポリペプチドの活性の減少または除去をもたらし、この減少または除去は、直接的または間接的に、ビルレンスまたは付着を担う。例えば、上記変異は、酵素活性を阻害し得るかまたはそのタンパク質における結合部位を除去し得る。変異は、欠失、置換および/または挿入を含み得、それらのうちのいずれかは、1つ以上のアミノ酸を含み得る。代替として、上記変異は、トランケーションを含み得る。
【0024】
ビルレンス因子の突然変異は、多くの細菌について充分に確立された科学である{例えば、参考文献2〜8に記載されるトキシン突然変異}。突然変異は、本発明のポリペプチドをコードする核酸に対して、特異的に標的化され得る。あるいは、突然変異は、(例えば、照射、化学的突然変異などに起因して)全体的であってもランダムであってもよく、代表的には、その後、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子中に変異が導入されているものについて、細菌をスクリーニングする。このようなスクリーニングは、ハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、サザンブロットまたはノザンブロットなど)、プライマーに基づく増幅(例えば、PCR)、スクリーニング、プロテオミクス、異常SDS−PAGEゲル移動(aberrant SDS−PAGE gel migration)などにより得る。
【0025】
本発明のポリペプチドは、種々の手段によって(例えば、組み換え発現、細胞培養物からの精製、化学合成など)、そして種々の形態(例えば、ネイティブ、融合、非ポリグリコシル化、脂質化(lipidated)など)で調製され得る。それらは、好ましくは、実質的に純粋な形態(すなわち、実質的に他の細菌または宿主細胞タンパク質を含まない)で調製される。
【0026】
本発明のペプチドの発現は、ネイティブな宿主中で行われ得るが、本発明は、好ましくは、異種宿主を利用する。上記異種宿主は、原核生物(例えば、細菌)であっても真核生物であってもよい。E.coliが好ましいが、他の適切な宿主としては、Bacillus subtilis、Vibrio cholerae、Salmonella typhi、Salmonella typhimurium、Neisseria lactamica、Neisseria cinerea、Mycobacteria(例えば、M.tuberculosis)、酵母などが挙げられる。
【0027】
本発明のポリペプチドが配列番号51に関する場合、そのポリペプチドは、好ましくは、少なくとも224個(例えば、224個、225個、226個、227個、228個、229個、230個、235個、240個、245個、250個、255個またはそれ以上)のアミノ酸を含む。
【0028】
本発明はまた、Haemophilus aegyptius由来の付着因子を提供し、ここで、その付着因子は以下を含む:(a)配列番号52のアミノ酸配列;(b)配列番号52に対して少なくともm%の同一性を有するアミノ酸配列;および/または(c)配列番号52の少なくともn個の連続するアミノ酸のフラグメントである、アミノ酸配列。
【0029】
(抗体)
本発明はまた、本発明のポリペプチドに結合する抗体を提供する。
【0030】
本発明の抗体は、好ましくは、本発明のポリペプチドに対して、少なくとも10−7Mの親和性(例えば、10−8M、10−9M、10−10Mまたはそれ以上に大きな親和性)を有する。好ましい抗体は、本発明のポリペプチドのヒト細胞に結合する能力を阻害し得る。
【0031】
本発明の抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルであり得、そして任意の適切な手段により(例えば、組換え発現、細胞培養物からの精製、化学合成などにより)、そして種々の形態(例えば、ネイティブな形態、融合形態、グリコシル化形態、非グリコシル化形態など)で産生され得る。これらは、好ましくは、実質的に純粋な形態(すなわち、実質的に他の抗体が存在しない形態)で調製される。
【0032】
用語「抗体」は、抗体全体、Fv、scFv、Fc、Fab、F(ab’)2などを包含する。
【0033】
本発明の抗体は、標識を含み得る。上記標識(例えば、放射性標識もしくは蛍光標識)は、直接的に検出可能であり得る。あるいは、標識(例えば、生成物が検出可能である酵素(例えば、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ペルオキシダーゼなど))は、間接的に検出可能であり得る。
【0034】
本発明の抗体は、固体支持体に結合され得る。
【0035】
本発明の抗体は、本発明のポリペプチドを適切な動物(例えば、ウサギ、ハムスター、マウス、または他の齧歯類)に投与(例えば、注射)することにより調製され得る。
【0036】
ヒト免疫系との適合性を増大させるために、上記抗体は、キメラ抗体もしくはヒト化抗体であり得るか(例えば、参考文献9および10)、または十分にヒト化した抗体が使用され得る。ヒト化抗体は、元の非ヒトモノクローナル抗体よりもヒトの中では免疫原性がさらに弱いので、ヒト化抗体は、ヒトの処置のために使用され得、アナフィラキシーのリスクはさらに低い。従って、これらの抗体は、治療上の適用において好ましくあり得、この治療上の適用(例えば、腫瘍性疾患の処置のための放射増感剤(radiation sensitizer)としての使用または癌療法の副作用を低減する方法における使用)は、インビボでのヒトへの投与を包含する。
【0037】
ヒト化抗体は、種々の方法(例えば:(1)非ヒト相補性決定領域(CDR)を、ヒトフレームワーク領域および定常領域へと移植(「ヒト化」)し、そして非ヒト抗体から1以上のフレームワーク残基を必要に応じて移動させる工程;(2)非ヒト可変ドメイン全体を、移植はするが表面残基の置換によりヒト様表面で「覆う(cloaking)」(化粧張り)工程が挙げられる)により達成され得る。本発明において、ヒト化抗体としては、「ヒト化」抗体および「化粧張り」抗体の両方が挙げられる。{11、12、13、14、15、16、17}。ヒト化抗体または完全なヒト抗体はまた、ヒト免疫グロブリン座を含むように操作されたトランスジェニック動物を用いて産生され得る。
【0038】
句「定常領域」とは、エフェクター機能を与える抗体分子の一部をいう。キメラ抗体においては、マウス定常領域は、ヒト定常領域により置換される。ヒト化抗体の定常領域は、ヒト免疫グロブリンに由来する。重鎖定常領域は、5のアイソタイプ:α、δ、ε、γまたはμのいずれかより選択され得る。
【0039】
(核酸)
本発明はまた、本発明のポリペプチドをコードする核酸を提供する。さらに、本発明は、好ましくは「高ストリンジェントな」条件下(例えば、0.1×SSC、0.5% SDS溶液中で、65℃)でこの核酸にハイブリダイズし得る核酸を提供する。
【0040】
本発明に従う核酸は、多くの方法(例えば、化学合成により、ゲノムライブラリーもしくはcDNAライブラリーから、生物体自身から、など)により調製され得、種々の形態(例えば、一本鎖、二本鎖、ベクター、プローブなど)をとり得る。これらは、好ましくは、実質的に純粋な形態(すなわち、他の細菌の核酸または宿主細胞の核酸が実質的に存在しない形態)で調製される。
【0041】
用語「核酸」としては、DNAおよびRNA、ならびにこれらのアナログ(例えば、改変骨格(例えば、ホスホロチオエートなど)を含むアナログ、ならびにペプチド核酸(PNA)などが挙げられる。本発明は、上に記載された配列(例えば、アンチセンスまたはプローブの目的)に相補的な配列を含む核酸を包含する。
【0042】
(免疫原性組成物および医薬)
NadA(これは、優れた抗−髄膜炎菌性免疫原である{1})(毒力との関連を含む)に対する構造上の類似点および機能上の類似点に基づき、本発明のポリペプチドは、免疫化の目的に対しても有用であるはずである。
【0043】
本発明は、本発明のポリペプチドおよび/または本発明の核酸および/または本発明の抗体を含有する組成物を提供する。本発明の組成物は、好ましくは、免疫原性の組成物であり、そしてより好ましくは、ワクチン組成物である。本発明に従うワクチンは、予防用(すなわち、感染を予防する)であるか、または治療用(すなわち、感染を処置する)のいずれかであり得るが、代表的には、予防用である。
【0044】
この組成物のpHは、好ましくは、6と8との間であり、好ましくは、約7である。上記pHは、緩衝液の使用により維持され得る。この組成物は、滅菌されており、そして/または発熱物質なしであり得る。上記組成物は、ヒトに関して等張であり得る。
【0045】
本発明はまた、医薬として使用するための本発明の組成物を提供する。この医薬は、好ましくは、哺乳動物において免疫応答を引き起こし得(すなわち、この医薬は、免疫原性の組成物である)、より好ましくは、ワクチンである。
【0046】
本発明はまた、哺乳動物において免疫応答を引き起こすための医薬の製造における1種以上(例えば、2、3、4、5、6)の本発明のポリペプチドの使用を提供する。この医薬は、好ましくは、ワクチンである。
【0047】
本発明はまた、哺乳動物において免疫応答を引き起こすための方法を提供し、この方法は、本発明の有効量の組成物を投与する工程を包含する。この免疫応答は、好ましくは防御的であり、そして好ましくは、抗体および/または細胞の媒介する免疫性を包含する。この方法は、追加免疫応答を引き起こし得る。
【0048】
上記哺乳動物は、好ましくは、ヒトである。上記ワクチンが予防的使用のためのものである場合、上記ヒトは、好ましくは、小児(child)(例えば、よちよち歩きの幼児(toddler)または幼児(infant))または若者であり;上記ワクチンが治療的使用のためのものである場合、上記ヒトは、好ましくは、若者または成人である。小児に対して使用される予定であるワクチンはまた、(例えば、安全性、投薬量、免疫原性などを評価するために)大人にも投与され得る。
【0049】
これらの使用および方法は、好ましくは、Haemophilus influenzae aegyptius生物群、Escherichia coli(特に、EHEC株、EAEC株、ETEC株、EPEC株およびUPEC株)、Actinobacillus actinomycetemcomitans、Haemophilus somnus、Haemophilus ducreyi、Shigella flexneri、Brucella melitensis、Brucella suis、Ralstonia solanacearum、Sinorhizobium meliloti、Bradorhizobium japonicumおよびBurkholderia fungorumにより引き起こされる疾患の予防および/または処置のためのものである。従って、本発明は、疾患(結膜炎、軟性下疳、紫斑病熱、髄膜炎、肺炎、喉頭蓋炎、インプラント周囲炎、歯周病、歯肉炎、ウシ脳炎、関節炎、心筋炎、下痢、ヒツジ流産、精巣炎、波状熱、ブタ生殖性喪失(porcine reproductive wastage)、ブルセラ症などの予防および/または処置に適切である。
【0050】
治療上の処置の有効性を調査する一つの方法は、本発明の組成物の投与後の細菌の感染をモニタリングする工程を包含する。予防上の処置の有効性を調査する一つの方法は、この組成物の投与後に、上記ポリペプチドに対する免疫応答をモニタリングする工程を包含する。
【0051】
本発明の組成物は、一般的に、患者に対して直接的に投与される。直接的な送達は、非経口注射(例えば、皮下注射、腹腔内注射、静脈注射、筋肉注射、もしくは組織の腸空間への注射)、または直腸投与、経口投与(例えば、錠剤、噴霧剤)、膣投与、局所投与、経皮投与(transdermal){例えば、参考文献18を参照のこと}、もしくは経皮投与(transcutaneous){例えば、参考文献19および20を参照のこと}、鼻内投与{例えば、参考文献21を参照のこと}、眼内投与(ocular administration)、耳内投与(aural administration)、肺内投与(pulmonary adiminstration)、もしくは他の粘膜投与により達成され得る。
【0052】
本発明は、全身性の免疫性および/または粘膜性の免疫性を惹起するために使用され得る。
【0053】
投薬処置は、単回用量計画であっても、複数回用量計画であってもよい。複数回用量は、初回免疫化計画および/または追加免疫免疫化計画において使用され得る。複数回用量計画において、種々の用量が、同一または別個の経路(例えば、非経口の刺激および粘膜性ブースト、粘膜性刺激および非経口ブーストなど)により与えられ得る。
【0054】
細菌の感染は、身体の種々の領域に影響する。それで、本発明の組成物は、種々の形態で調製され得る。例えば、この組成物は、注射可能な物質(injectables)(液状液剤または懸濁剤のいずれか)として調製され得る。液体ビヒクルにおいて、溶液または懸濁剤に対して適切な固体形態(例えば、凍結乾燥された組成物)もまた、注射前に調製され得る。この組成物は、(例えば、軟膏剤、乳剤、または散剤として)局所投与のために調製され得る。この組成物は、(例えば、錠剤もしくはカプセル剤として、噴霧剤として、またはシロップ剤(必要に応じて、矯味矯臭されたシロップ剤)として)経口投与のために調製され得る。この組成物は、細かい粉末(fine powder)もしくは噴霧剤を用いて、(例えば、吸入剤として)肺内投与のために調製され得る。この組成物は、坐剤または膣坐薬として調製され得る。この組成物は、鼻内投与、耳内投与、または眼内投与のために(例えば、滴(drop)として)調製され得る。この組成物は、合わされた組成物が患者に対する投与の直前に再構成されるように設計された、キットの形態であり得る。このようなキットは、液体形態中に1種以上の抗原および1種以上の凍結乾燥された抗原を含み得る。
【0055】
ワクチンとして使用される免疫原性組成物は、必要とされる場合、免疫学的に有効な量の抗原ならびに他の任意の成分を含有する。「免疫学的に有効な量」により、個体へのこの量の投与(単回用量においてか、または一連の一部としてのいずれか)が処置または予防に有効であることを意味する。この量は、処置されるべき個体の、健康状態および身体的状態、年齢、処置されるべき個体の分類学上の群(例えば、非ヒト霊長類、霊長類など)、抗体を合成するこの個体の免疫系の能力、所望される防御の程度、ワクチンの処方物、医学的状態の処置医の所見、ならびに他の関連する因子に依存して変動する。この量が、日々の試行を通して決定され得る、比較的広汎な範囲に収まることが期待される。
【0056】
本発明はまた、(非経口および/または粘膜の)アジュバントとして使用するための本発明のポリペプチド(NadAそれ自体を含む)を提供する。同様に、本発明は、本発明のポリペプチドを第二の抗原と混合して含有する組成物を提供し、第二の抗原の混合により、本発明のポリペプチドは、患者に投与された場合に第二の抗原に対する免疫応答を増強する。
【0057】
(組成物のさらなる成分)
本発明の組成物は、代表的には、上記成分に加えて、1種以上の「薬学的に受容可能なキャリア」を含有し、この薬学的に受容可能なキャリアとしては、上記組成物を受け取る個体にとって有害な抗体の産生をそれ自体が誘導しない任意のキャリアが挙げられる。適切なキャリアは、代表的には、大きな、緩徐に代謝される高分子(例えば、タンパク質、ポリサッカライド、ポリ酪酸、ポリグリコール酸、ポリマー性アミノ酸(polymeric amino acid)、アミノ酸コポリマーおよび脂質凝集体(例えば、油滴もしくはリポソーム))である。このようなキャリアは、当業者に周知である。このワクチンはまた、希釈剤(例えば、水、生理食塩水、グリセロールなど)を含有し得る。さらに、補助物質(auxiliary substance)(例えば、湿潤剤もしくは乳化剤)、pH緩衝物質などが存在し得る。薬学的に受容可能な賦形剤についての全体の考察が、参考文献22において入手できる。
【0058】
本発明のワクチンは、他の免疫制御因子と併せて投与され得る。特に、組成物は、通常アジュバントを含有する。好ましいさらなるアジュバントとしては、(A)アルミニウム塩(ヒドロキシド(例えば、オキシヒドロキシド)、ホスフェート(例えば、ヒドロキシホスフェート、オルトホスフェート)、スルフェートなどが挙げられる{例えば、参考文献23の第8章および第9章を参照のこと})、または、種々のアルミニウム化合物の混合物(この化合物は、任意の適切な形態(例えば、ゲル、結晶性化合物、非晶質化合物など)をとる)ならびにこれらが好ましく吸着されたもの;(B)MF59(5%スクアレン、0.5%のTween80、および0.5%のSpan85が微小フリューダイザ(microfluidizer)を用いて、サブミクロン粒子へと処方された){23の10章を参照のこと;参考文献24もまた参照のこと};(C)リポソーム{参考文献23の第13章および第14章を参照のこと};(D)さらなる界面活性剤が欠損し得るISCOM(参考文献23の第23章を参照のこと){25};(E)10%スクアレン、0.4% Tween80、5%のプルロニック−ブロックポリマーL121、およびthr−MDPを含有するSAFであって、サブミクロンエマルジョンへと微小流動化するか、またはボルテックスされてより大きな粒子サイズのエマルジョンを生成したSAF{参考文献23の第12章を参照のこと};(F)2%のスクアレン、0.2%のTween 80、ならびに、モノホスホリル脂質A(monophosphorylipid A)(MPL)、トレハロースジミコレート(trehalose dimycolate)(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)からなる群より選択される一種以上の細菌細胞壁構成成分(好ましくは、MPL+CWS(DetoxTM))を含むRibiTMアジュバント系(RAS)、(Ribi Immunochem);(G)サポニンアジュバント(例えば、QuilAまたはQS21{参考文献23の第22章を参照のこと}、これは、StimulonTMとしても公知である{26};(H)キトサン{例えば、27};(I)完全フロイントアジュバント(CFA)および不完全フロイントアジュバント(IFA);(J)サイトカイン(例えば、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12など)、インターフェロン(例えば、インターフェロン−γ)、マクロファージコロニー刺激因子、腫瘍壊死因子など{参考文献23の第27章および第28章を参照のこと};(K)モノホスホリル脂質A(monophosphoryl lipid A)(MPL)もしくは3−O−デアシル化MPL(3dMPL){例えば、参考文献23の第21章};(L)3dMPLと、例えば、QS21および/または水中油滴エマルジョンとの組み合わせ{28};(M)ポリオキシエチレンエーテルまたはポリオキシエチレンエステル{29};(N)オクトキシノールと組み合わせたポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(surfactant){30}または、少なくとも1種のさらなる非イオン性界面活性剤(例えば、オクトキシノール)と組み合わせたポリオキシエチレンアルキルエーテル界面活性剤(surfactant)もしくはポリオキシエチレンエステル界面活性剤(surfactant){31};(N)金属塩の粒子{32};(O)サポニンおよび水中油滴エマルジョン{33};(P)サポニン(例えば、QS21)+3dMPL+IL−12(必要に応じて、+ステロール){34};(Q)E.coli熱−不安定性エンテロトキシン(「LT」)、またはこの無毒化変異物(例えば、K63変異物もしくはR72変異物){参考文献35の第5章};(R)コレラトキシン(「CT」)、またはこの無毒化変異物{例えば、参考文献35の第5章};(S)二本鎖RNA;(T)生体分解性でかつ無毒性の物質(例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸、ポリヒドロキシブチル酸、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリカプロラクトンなど)から、好ましいポリ(ラクチド−コ−グリコリド)と共に形成され、必要に応じて、(例えば、SDSを用いて)負に荷電した表面または(例えば、CTABのようなカチオン性界面活性剤を用いて)正に荷電した表面を有するように処理された微小粒子(すなわち、直径約100nm〜直径約150μmの粒子、より好ましくは、直径約200nm〜直径約30μmの粒子、そして最も好ましくは、直径約500nm〜直径約10μmの粒子);(U)必要に応じて、シトシンの代わりに5−メチルシトシンが使用されているCpGモチーフ(すなわち、少なくとも1のCGジヌクレオチドを含む)を含むオリゴヌクレオチド;(V)モノホスホリル脂質A模造物(例えば、アミノアルキルグルコサミドホスフェート誘導体(例えば、RC−529)){36};(W)ポリホスファゼン(polyphoshazen)(PCPP);(X)生体付着物質(bioadhesive){37}(例えば、エステル化ヒアルロン酸ミクロスフェア{38}または、ポリ(アクリル酸)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリサッカライドおよびカルボキシメチルセルロースの架橋された誘導体からなる群より選択される粘膜付着性物質(mucoadhesive);あるいは、(Y)この組成物の有効性を増強する免疫刺激因子として作用する他の物質{例えば、参考文献23の第7章を参照のこと}が挙げられるが、これらに限定されない。アルミニウム塩およびMF59は、非経口免疫化にとっての好ましいアジュバントである。変異体毒素は、好ましい粘膜アジュバントである。
【0059】
ムラミルペプチドとしては、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル(normuramyl)−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)、N−アセチルムラニル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミンMTP−PE)などが挙げられる。
【0060】
この組成物は、抗生物質を含有し得る。
【0061】
(さらなる抗原)
本発明のポリペプチドを含有するのみならず、本発明の組成物はまた、1種以上の更なる抗原を含有し得る。封入のためのさらなる抗原は、例えば:
− N.meningitidis血清群A、血清群C、血清群W135、および/または血清群Y由来のサッカライド抗原(例えば、参考文献39に開示されている血清群C由来のオリゴサッカライド(参考文献40もまた参照のこと)または参考文献41のオリゴサッカライド)。
− Helicobacter pylori由来の抗原(例えば、CagA{42〜45}、VacA{46、47}、NAP{48、49、50}、HopX{例えば、51}、HopY{例えば、51}および/または尿素分解酵素)。
− Streptococcus pneumoniae由来のサッカライド抗原{例えば、52、53、54}。
− Streptococcus pneumoniae由来のタンパク質抗原{例えば、55}。
− A型肝炎ウイルス(例えば、不活化ウイルス)由来の抗原{例えば、56、57}。− B型肝炎ウイルス由来の抗原(例えば、表面の抗原および/またはコア抗原){例えば、57、58}。
− C型肝炎ウイルス由来の抗原{例えば、59}。
− ジフテリア抗原(例えば、ジフテリアトキソイド{例えば、参考文献60の第3章})(例えば、CRM197変異体){例えば、61}。
− 破傷風抗原(例えば、破傷風トキソイド){例えば、参考文献60の第4章}。
− Bordetella pertussis由来の抗原(例えば、B.pertussis由来の百日咳ホロトキシン(PT)および糸状構造ヘマグルチニン(FHA)、これらはまた、必要に応じて、パータクチン(pertactin)および/または凝集原2および凝集原3{例えば、参考文献62および63}と組み合わせられる);細胞全体の百日咳抗原もまた使用され得る。
− Haemophilus influenzae B{例えば、40}由来のサッカライド抗原。
− ポリオ抗原{例えば、64、65}(例えば、OPVまたは、好ましくは、IPV)。
− N.meningitidis血清群B{例えば、参考文献66〜77}由来のタンパク質抗原(例えば、NadA)。
− N.meningitidis血清群B(例えば、参考文献78、79、80、81などに開示されるもの)由来の外側膜小胞(OMV)調製物。
− Chlamydia pneumoniae由来の抗原{例えば、参考文献82〜88}。
− Chlamydia trachomatis由来の抗原{例えば、89}。
− Porphyromonas gingivalis由来の抗原{例えば、90}。− 狂犬病抗原{例えば、91}(例えば、凍結乾燥された不活化ウイルス{例えば、92、RabAvertTM}。
− 麻疹、耳下腺炎および/または風疹の抗原{例えば、参考文献60の第9章、第10章および第11章}。
− インフルエンザ抗原{例えば、参考文献60の第19章}(例えば、ヘマグルチニンおよび/またはノイラミニダーゼ表面タンパク質)。
− N.gonorrhoeae由来の抗原{例えば、93、94、95、96}。
−呼吸器合胞体ウイルス(RSV{97、98})および/またはパラインフルエンザウイルス(PIV3{99})のようなパラミクソウイルス由来の抗原
−UspA1および/またはUspA2のような、Moraxella catarrhalis{例えば、100}由来の抗原
−Streptococcus pyogenes(A群連鎖球菌){例えば、101、102、103}由来の抗原
−Streptococcus agalactiae(B群連鎖球菌){例えば、104}由来の抗原
−Staphylococcus aureus{例えば、105}由来の抗原
−Bacillus anthracis{例えば、106、107、108}由来の抗原
−フラビウイルス科(フラビウイルス属)に属するウイルス由来(例えば、黄熱病ウイルス由来、日本脳炎ウイルス由来、デング熱ウイルスの4つの血清群由来、ダニ媒介性脳炎ウイルス由来、西ナイルウイルス由来)の抗原
−Pseudomonas由来の抗原
−HIV(例えば、HIV−1またはHIV−2)由来の抗原
−ロタウイルス由来の抗原
−ペスチウイルス抗原(例えば、古典的ブタ熱ウイルス由来、ウシウイルス性下痢ウイルス由来および/またはボーダー病ウイルス由来)
−パルボウイルス抗原(例えば、パルボウイルスB19由来)
−コロナウイルス抗原(例えば、SARSコロナウイルス由来)
−癌抗原(例えば、参考文献109の表1、または参考文献110の表3および表4に列挙される抗原)。
【0062】
上記組成物は、これらのさらなる抗原の1つ以上を含有し得る。抗原の組み合わせは、共有された特徴(例えば、呼吸器疾患に関連した抗原、腸疾患に関連した抗原、性感染症に関連した抗原など)に基づくべきであることが望ましい。
【0063】
糖類抗原または炭水化物抗原が使用される場合、免疫原性を増強するために、その抗原は、好ましくはキャリアータンパク質と結合される{例えば、参考文献111〜参考文献120}。好ましいキャリアータンパク質は、細菌毒素または細菌トキソイド(例えば、ジフテリアトキソイドまたは破傷風トキソイド)である。CRM197ジフテリアトキソイドは、特に好ましい{121}。他のキャリアーポリペプチドとしては、N.meningitidis外膜タンパク質{122}、合成ペプチド{123、124}、熱ショックタンパク質{125、126}、百日咳タンパク質{127、128}、H.influenzae由来のプロテインD{129}、サイトカイン{130}、リンホカイン{130}、ホルモン{130}、成長因子{130}、C.difficile由来の、毒素Aまたは毒素B{131}、鉄取り込みタンパク質{132}などが挙げられる。混合物が、血清群Aおよび血清群Cの両方に由来する莢膜糖類を含有する場合、MenA糖類:MenC糖類の比(w/w)は、1より大きい(例えば、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1またはより高い)ことが好ましくあり得る。異なる糖類は、同じ型のキャリアータンパク質または異なる型のキャリアータンパク質に結合され得る。任意の適切な結合反応は、必要な場合、任意の適切なリンカーと共に使用され得る。
【0064】
毒素タンパク質抗原は、必要な場合、無毒化され得る(例えば、化学的手段および/または遺伝的手段による百日咳毒素の無毒化{63})。
【0065】
ジフテリア抗原が上記組成物中に含まれる場合、破傷風抗原および百日咳抗原を含むこともまた好ましい。同様に、破傷風抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および百日咳抗原を含むこともまた好ましい。同様に、百日咳抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および破傷風抗原を含むこともまた好ましい。
【0066】
上記組成物中の抗原は代表的に、それぞれ少なくとも1μg/mlの濃度で存在する。一般的には、任意に所与の抗原の濃度は、その抗原に対する免疫応答を誘起するのに十分である。
【0067】
本発明の組成物におけるタンパク質抗原の使用に代わるものとしては、上記抗原をコードする核酸が使用され得る{例えば、参考文献133〜参考文献141}。従って、本発明の組成物のタンパク質成分は、そのタンパク質をコードする核酸(好ましくはDNA、例えば、プラスミドの形態である)によって置換され得る。
【0068】
(プロセス)
本発明はまた、本発明のポリペプチドを生成するためのプロセスを提供し、このプロセスは、本発明の核酸によって形質転換された宿主細胞を、ポリペプチド発現を誘導する条件下で培養する工程を包含する。
【0069】
本発明は、本発明のポリペプチドを生成するためのプロセスを提供し、このプロセスは、化学的手段によって、少なくとも一部の上記ポリペプチドを合成する工程を包含する。
【0070】
本発明は、本発明の核酸を生成するためのプロセスを提供し、このプロセスは、プライマーベースの増幅方法(例えば、PCR)を使用して核酸を増幅する工程を包含する。
【0071】
本発明は、本発明の核酸を生成するためのプロセスを提供し、このプロセスは、化学的手段によって、少なくとも一部の上記核酸を合成する工程を包含する。
【0072】
本発明はまた、サンプル中の細菌の存在を検出ためのプロセスを提供し、このプロセスは、ハイブリダイズ条件下で、上記サンプルと本発明の核酸とを接触させる工程;そして(b)上記サンプル中に存在する核酸に対する本発明の核酸のハイブリダイゼーションの、存在または非存在を検出する工程を包含する。工程(b)におけるハイブリダイゼーションの存在は、上記サンプルが、関連する細菌を含むことを示す。
【0073】
本発明はまた、細菌の存在を検出するための免疫学的アッセイ法を提供し、この方法は、サンプルと、本発明のポリペプチドまたは本発明の抗体とを接触させる工程を包含する。
【0074】
(付着阻害)
本発明は、宿主細胞(例えば、ヒト細胞)に対する細菌細胞の付着を阻害するための方法を提供する。上記細胞は、インビトロ(例えば、細胞培養物中)またはインビボであり得る。上記細胞は、最も好ましくはヒト細胞である。上記宿主細胞は代表的に、上皮細胞または内皮細胞である。
【0075】
本発明は、宿主細胞に対する細菌細胞の付着を防ぐための方法を提供し、ここで1つ以上の本発明のポリペプチドの上記宿主細胞に対して結合する能力はブロックされる。
【0076】
上記結合する能力は、様々な方法でブロックされ得るが、最も都合良くは、本発明のポリペプチドに対して特異的な抗体が使用される。抗体の使用に代わるものとしては、本発明のポリペプチドと上記宿主細胞上のそのレセプターとの間の相互作用のアンタゴニストが使用され得る。さらに代替的には、上記宿主細胞レセプターの可溶性形態が、おとりとして使用され得る。これらは、レセプターの膜貫通領域、および必要に応じて細胞質領域を除去することによって生成され得る。
【0077】
本発明の抗体、本発明のアンタゴニストおよび本発明の可溶性レセプターは、宿主細胞に対する細菌細胞の付着を防ぐ医薬として使用され得る。
【0078】
本発明は、宿主細胞に対する細菌細胞の付着を防ぐための方法を提供し、ここで本発明のポリペプチドの発現は阻害される。上記阻害は転写のレベルおよび/または翻訳のレベルにおいてであり得る。上記遺伝子の発現を阻害するための好ましい技術は、アンチセンスである{例えば、参考文献142〜参考文献148など}。抗細菌アンチセンス技術は、例えば、参考文献149および参考文献150に開示される。
【0079】
本発明は、上皮細胞に対する細菌(例えば、ナイセリアの)細胞の付着を防ぐための方法を提供し、ここで本発明のポリペプチドをコードする遺伝子は、ノックアウトされる。従って、本発明は、そのような遺伝子がノックアウトされた細菌を提供する。ノックアウト細菌を作製するための技術は、周知である。ノックアウト変異は、上記遺伝子のコード領域中に位置され得るか、またはその転写制御領域内(例えば、そのプロモーター内)に位置し得る。上記ノックアウト変異は、本発明のポリペプチドをコードするmRNAのレベルを、野生型細菌によって生成されるmRNAのレベルの<1%に低下させる(例えば、<0.5%、<0.1%、0%)。本発明のノックアウト変異は、免疫原性の組成物として(例えば、ワクチンとして)使用され得る。そのようなワクチンは、弱毒化された生細菌のような変異体を含み得る。
【0080】
本発明はまた、宿主細胞に対する細菌細胞の結合を阻害する化合物(アンタゴニスト)を同定するために化合物をスクリーニングするための方法を提供する。
【0081】
スクリーニングにおける潜在的なアンタゴニストとしては、低分子有機分子、ペプチド、ペプトイド、ポリペプチド、脂質、金属、ヌクレオチド、ヌクレオシド、ポリアミン、抗体、およびそれらの誘導体が挙げられる。低分子有機分子は、50ダルトンと約2,500ダルトンとの間の分子量、そして最も好ましくは200ダルトン〜800ダルトンの範囲内の分子量を有する。天然物を含む抽出物、化合物ライブラリーまたは混合された組み合わせ合成の生成物のような物質の複合混合物もまた、潜在的なアンタゴニストを含む。
【0082】
代表的には、本発明のポリペプチドは、宿主細胞および試験化合物(例えば、抗体)と一緒にインキュベートされ、次いでその混合物は、上記タンパク質と上皮細胞との間の相互作用が阻害されたか否かを見るために試験される。上記タンパク質、細胞および化合物は、任意の順序で混合され得る。
【0083】
当然のこととして、阻害は、スタンダード(例えば、ネイティブの、タンパク質/細胞相互作用)と比較して決定される。好ましくは、上記スタンダードは、上記試験化合物の非存在下で測定されたコントロール値である。上記スタンダードは、上記方法が行われる前に決定され得るか、あるいは上記方法が、行われた際か、または行われた後に決定され得ることが理解される。それはまた、絶対的スタンダードであり得る。
【0084】
好ましいハイスループットスクリーニング方法に関して、このアッセイにおける全ての生化学的工程は、例えば、試験管内またはマイクロタイタープレート内の単一溶液中で行われ、そして上記試験化合物は、最初に、単一化合物濃度において分析される。ハイスループットスクリーニングの目的のため、実験的条件は、スクリーニングされた全化合物の中から、「陽性」化合物として同定される試験化合物の割合を達成するために調整される。
【0085】
上記方法はまた、1つ以上の試験化合物を、本発明のポリペプチドと一緒にインキュベートする工程、そしてそれらが相互作用するか否かを決定する工程を包含し得る。次いで、上記タンパク質と相互作用する化合物は、上記タンパク質と上皮細胞との間の相互作用をブロックするそれらの能力について試験され得る。
【0086】
使用され得る他の方法としては、例えば、細菌:宿主レセプター相互作用の阻害は、転写を活性化しないものとして報告されているリバース2ハイブリッドスクリーニング(reverse two hybrid screening){151}が挙げられる。
【0087】
本発明はまた、これらの方法を使用して同定された化合物を提供する。これらは、細菌感染を処置するためか、または細菌感染を防ぐために使用され得る。上記化合物は、好ましくは、少なくとも10−7M(例えば、10−8M、10−9M、10−10Mまたはより高い)の本発明のポリペプチドに対する親和性を有する。
【0088】
(定義)
用語「含有する(comprising)」は、「含む(including)」ならびに「なる(consisting)」を包含し、例えば、Xを「含有する」組成物は、もっぱらXからなり得るか、または付加的なもの(例えば、X+Y)を含み得る。
【0089】
数値xに関する用語「約」は、例えば、x±10%を意味する。
2つのアミノ酸配列間における配列同一性のパーセンテージへの言及は、アラインメント(align)された場合に,アミノ酸のパーセンテージは、2つの配列の比較において同一であることを意味する。このアライメント、および相同性のパーセントまたは配列同一性のパーセントは、当該分野で公知のソフトウェアプログラム(例えば、参考文献152の節7.7.18に記載されるソフトウェアプログラム)を使用して決定され得る。好ましいアライメントは、12のギャップ開始ペナルティー(gap open penalty)および2のギャップ伸長ペナルティー(gap extension penalty)、62のBLOSUMマトリックスを用いたアフィンギャップ検索(affine gap search)を使用するSmith−Waterman相同性検索アルゴリズムによって決定される。Smith−Waterman相同性検索アルゴリズムは、参考文献153に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1〜図15は、コイルドコイル領域を示す、本発明のアミノ酸配列の分析を示す。
【図2】図1〜図15は、コイルドコイル領域を示す、本発明のアミノ酸配列の分析を示す。
【図3】図1〜図15は、コイルドコイル領域を示す、本発明のアミノ酸配列の分析を示す。
【図4】図1〜図15は、コイルドコイル領域を示す、本発明のアミノ酸配列の分析を示す。
【図5】図1〜図15は、コイルドコイル領域を示す、本発明のアミノ酸配列の分析を示す。
【図6】図1〜図15は、コイルドコイル領域を示す、本発明のアミノ酸配列の分析を示す。
【図7】図1〜図15は、コイルドコイル領域を示す、本発明のアミノ酸配列の分析を示す。
【図8】図1〜図15は、コイルドコイル領域を示す、本発明のアミノ酸配列の分析を示す。
【図9】図1〜図15は、コイルドコイル領域を示す、本発明のアミノ酸配列の分析を示す。
【図10】図1〜図15は、コイルドコイル領域を示す、本発明のアミノ酸配列の分析を示す。
【図11】図1〜図15は、コイルドコイル領域を示す、本発明のアミノ酸配列の分析を示す。
【図12】図1〜図15は、コイルドコイル領域を示す、本発明のアミノ酸配列の分析を示す。
【図13】図1〜図15は、コイルドコイル領域を示す、本発明のアミノ酸配列の分析を示す。
【図14】図1〜図15は、コイルドコイル領域を示す、本発明のアミノ酸配列の分析を示す。
【図15】図1〜図15は、コイルドコイル領域を示す、本発明のアミノ酸配列の分析を示す。
【図16】図16は、本発明のポリペプチドのアンカー領域間における保存を示す。
【図17】図17は、単量体形態および三量体形態における髄膜炎菌性外膜内の、NadAの例示である。
【図18】図18および図19は、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の、遺伝子環境(genetic environment)の比較を示す。図20は、E.coli K1対E.coli K12における遺伝子環境を例示する。
【図19】図18および図19は、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の、遺伝子環境の比較を示す。図20は、E.coli K1対E.coli K12における遺伝子環境を例示する。
【図20】図18および図19は、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の、遺伝子環境の比較を示す。図20は、E.coli K1対E.coli K12における遺伝子環境を例示する。
【図21】図21は、(図21A)NadAおよび(図21B)HadAについてのコイル分析を示す。
【図22】図22は、hadA陽性株(F3031)および種々のhadA陰性株(d型、b型、およびいくつかの類型できないH.influenzae)におけるhadA遺伝子座の模式的な構成である。
【図23】図23は、異なる株のHadAの間の関係を示す系統樹である。
【図24】図24は、E.coliでのHadAの発現に関する3つの構造を例示する。
【図25】図25は、発現されたHadA−HisのBis−Trisゲルを示す。レーンは、(奇数)全タンパク質および(偶数)可溶性タンパク質の対にされる。レーン1およびレーン2は、20℃における空プラスミドであり;レーン3およびレーン4は、20℃における発現であり;レーン5およびレーン6は、30℃における空プラスミドであり;レーン7およびレーン8は、30℃における発現であり;レーン9およびレーン10は、37℃における空プラスミドであり;レーン11およびレーン12は、37℃における発現であり;Mは、前染色されたタンパク質スタンダードである(BlueTMPlus2,Invitrogenを参照のこと)。
【図26】図26はウェスタンブロットである。レーンは:(1)前染色されたタンパク質スタンダード(BlueTMPlus2を参照のこと)であり;(2)30℃での空プラスミドにおける全タンパク質であり;(3)30℃での空プラスミドにおける可溶性タンパク質であり;(4)30℃において発現された全タンパク質であり;(5)30℃において発現された可溶性タンパク質であり;(6)rHadA−Hisである。
【図27】図27は、E.coliで発現されたHadAのChang細胞に対する結合のFACS分析を示す。HadAは、9つの濃度で試験され、そして結合は評価された。4つの代表的なFACS分析スペクトルが示される。
【図28】図28は、パネルA〜パネルCにおいて3つの異なる凝集、およびパネルDにおける空pETプラスミドを含む細胞の、位相差顕微鏡写真を示す。
【図29】図29は、E.coli発現HadAによるChang細胞の、(A)吸着および(B)侵襲を示す。左のバーは、空プラスミドによって形質転換されたコントロール細胞であり;右のバーは、HadA発現細菌である。結果は、3つ組で作成された測定の平均の平均±標準誤差である。
【図30】図30は、E.coli−pET HadA naとChang上皮細胞との免疫蛍光顕微鏡分析を示す。細胞外の細菌は緑色に見え;細胞内の細菌は赤色である。
【図31】図31は、E.coli中で発現された、HadA/naおよびHadA/LNadA/naのSDS−PAGEを示す。レーンは:(1)前染色されたタンパク質スタンダード(BlueTMPlus2を参照のこと)であり;(2)空プラスミドの一晩未誘導培養物であり;(3)HadA/naの一晩培養物であり;(4)HadA/LNadA/naの一晩培養物であり;(5)〜(7)IPTGによるタンパク質発現の誘導後3時間における(2)〜(4)である。矢印は、モノマーおよびオリゴマーを示す。
【図32】図32は、E.coli中で発現された、HadA/naおよびHadA/LNadA/naのウェスタンブロットを示す。レーンは、図31と同じである。矢印は、モノマーおよびオリゴマーを示す。
【図33】図33は、E.coli中で誘導せずに一晩発現されたHadAのSDS−PAGEを示す。レーンは:(1)前染色されたタンパク質スタンダード(BlueTMPlus2を参照のこと)であり;(2)空プラスミドであり;(3)HadA/na形質転換であり;(4)空プラスミドの外膜抽出物であり;(5)HadA/na形質転換の外膜抽出物である。
【図34】図34は、空pETプラスミドによってか、またはHadA/na pETプラスミドによって形質転換されたE.coliを示す、HadA発現のFACS分析を示す。
【図35】図35は、HadA発現を伴うか、またはHadA発現を伴わない、E.coliにおける沈降アッセイの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0091】
(発明を実施するための様式)
(Neisseria meningitidis NadAタンパク質)
Neisseria meningitidis血清群Bゲノム{75}内において、外膜タンパク質(NadA)が同定された{1}。これは、Yersinia enterocolitica付着因子YadAに対して、およびMoraxella catarrhalis表面タンパク質UspA2{154}に対して弱い相同性を示す。nadA遺伝子は、高病原性N.meningitidis株のサブグループ中に存在し、そしてそれは、低GC含有量によって特徴付けられ、このことは水平移行による遺伝子の起こりうる獲得現象を示唆する。
【0092】
上記NadA付着因子に類似するタンパク質が、他の病原体によって獲得され得たという可能性を研究するために、本発明者らは、相同的なタンパク質を調査した。
【0093】
NadAおよびYadAの配列アライメントは、その2つのタンパク質がC末端において、最も類似しており、それが膜アンカードメインであることを明らかにした。NadAにおいて、このドメインは約70残基長であり、そしてそれは5つの予測された両親媒性のβ鎖を含み、そのドメインは、上記外膜を複数回横断し、従って上記タンパク質を上記細菌の表面に固定する(図17)。この領域内において、NadAとYadAとの間の配列類似性のレベルは、60%前後の同一性である一方で、N末端ドメインおよび中央ドメインにおける相同性は、25%以下の同一性である。
【0094】
最初の調査(NadAアンカードメインに基づいた)において、結果は、YadAおよびUspA2だけでなく、他のタンパク質(例えば、Haemophilus ducreyiの血清抵抗性タンパク質DsrA、E.coliの免疫グロブリン結合タンパク質EibA、EibC、EibD、EibEおよびEibF、ならびにActinobacillus actinomycetemcomitansの外膜タンパク質100{154})をも含む。この科の、より離れたメンバーを明らかにするために、これら結果はさらなる調査に使用され、そしてこのアプローチは16個のさらなる結果を同定した。これら16個のポチペプチドは、2次構造分析、コイルドコイル予測、およびリーダーペプチドの存在/非存在についてさらに評価された。予想通り、中央領域内で僅かなアミノ酸類似性を示したにもかかわらず、上記同定されたポリペプチドのほとんどは、そのポリペプチドに安定なオリゴマーを形成する能力を与える、コイルドコイル特徴を有する。上記同定されたポリペプチドのアンカー領域は、良く保存されている(図16)。さらに、これらのポリペプチドをコードする遺伝子のGC含有量は、それらの代表的なゲノムにおける平均より低く、それらが移動性の遺伝的要素を維持する遺伝子によってコードされることを示唆している。
【0095】
(Escherichia coli)
ポリペプチドは、腸管病原性(EPEC)株、腸管凝集性(EAEC)株、腸管出血性(EHEC)株および尿路疾患性(UPEC)株を含むE.coliの病原性株において見出された。さらに、EHEC株およびEPEC株のポリペプチドとほとんど一致するポリペプチドは、新生児髄膜炎を引き起こす、カプセル化されたE.coli株であるK1株において見出された。K1配列はNadAと、以下の通りにアラインメントする。
【0096】
【表2】
別のNadAアナログを、E.coliの志賀毒素産生性株(STEC){155}に存在する強毒性プラスミドによりコードした。このタンパク質(Saa)は、E.coliの外膜上に発現され、そして高分子量オリゴマーを形成する。対照的に、NadAに対応するものは、良性のE.coli K12株においては検出することができず、これはこれらの遺伝子が、その種の進化の初期の間に側方交換(lateral exchange)により獲得されているという見解を支持する(図20)。研究室株MG1655においてもまた、対応するものは見出すことはできなかった。
【0097】
これらの知見に後押しされ、そしてこれらの遺伝子の挿入/欠失の可能なメカニズムを評価するために、上記NadA様分子をコードする遺伝子が存在する(harbour)する領域の配列を研究した。EHEC株についてのこの領域の配列が、配列番号23である。
【0098】
この分析は、上記NadA様タンパク質の配列保存性は、K1とEHECとの間の同一性95%からK1とEPECとの間の同一性98%までの範囲であり、上記DNAセグメントの遺伝子組織が、K1、EHECおよびEPECのゲノム間でほとんど同一であることを示した。EAECの場合は、その隣接領域は保存されているが、たとえそのN末端およびC末端はよく保存されているとしてもNadA様タンパク質の配列は他よりも380残基長い。
【0099】
【表3】
上記の分析をK12のゲノムにまで広げると、上記挿入部位は、対向するストランド上にコードされる2つの仮想オープンリーディングフレーム(YbbJおよびYbbI)間に存在し、そして小さな「島」が、3つの遺伝子(機能未知の仮想内在性膜タンパク質をコードするORF、推定NadA様付着因子の遺伝子、および機能未知のリポタンパク質と予想されるORF)からなることが分かった。後半の2つのORFは、おそらく共転写されるが、最初のORFは、逆向きにコードされている。推定の挿入部位を表し得る一対の7bp(CTGACGC)のダイレクトリピートは、上記の挿入されたフラグメント(配列番号23;ヌクレオチド1811および4255から開始する)の境界にマッピングされ得、そしてこのリピートは、上記K12株における挿入点の近傍には存在しない。
【0100】
獲得されたDNA領域の長さは、EPECについては2348塩基、K1およびEHECについては2450塩基、そしてEAECについては2630塩基である(図18)。全ての場合において、そのフラグメントのG+C含量は、各ゲノムについて計算された平均組成と比較した場合より少なく、これはこのセグメントが側鎖交換のメカニズムで病原性E.coliにより獲得されているという初期の仮定を確認する。
【0101】
尿路疾患性のE.coli(UPEC)の場合、種々のDNAセグメントが、上記ybbJ遺伝子とybbI遺伝子との間で見出された。このセグメントは、1342bpの長さであり、推定の細胞質タンパク質をコードする。このタンパク質は、Salmonella thphymurium LT12においてのみ保存され、他の分析された全てのE.coli株において存在しなかった。記載された他の挿入フラグメントと異なり、いずれのダイレクトリピートも、この島(そのGC組成もまた、上記平均値に非常に類似)の境界にマッピングされ得なかった。これらのデータは、上記NadA様コード遺伝子が、c0608遺伝子の場所に、後に挿入されたことを示し得る。それにもかかわらず、その後の研究は、NadAのホモログをコードする遺伝子が、尿路疾患性のE.coliのCFT073株のゲノムの異なる場所に見られ得ることを明らかにした。このタンパク質は、NadAにより遠く関連し、第二のNadA様タンパク質のファミリーのメンバーとして見られる。このタンパク質に対応するものは、E.coliの他の病原性株の、類似した場所に含まれ、かつ第一のE.coliのNadA様分子群と同様に、その対応する遺伝子もまた、小さな島上にコードされ、上記K12株には存在しない(図19)。さらに、これらの遺伝子は、フレームシフトしたShigella flexneri配列と、3’末端に強い類似性を有する。NLM隣接領域の配列を、著しい類似性を示す2種(E.coliおよびShigella)において比較した。配列の保存は、上記付着因子コード領域のアミノ末端部分およびカルボキシ末端部分に限定されるが、これらの隣接領域は、ヌクレオチドレベルでシンテニーかつ80%を越える同一性を共有する。そのNadA様遺伝子の上流で、この島が、EPECかEHECのいずれかにおいて、そしてShigellaにおいて、フレームシフトされるリポタンパク質をコードするORFを含有する。さらに、Shigellaのゲノムにおいて、トランスポザーゼエレメントをコードする2つのさらなる遺伝子(insAおよびinsB)が、そのNLM遺伝子の近傍に見出される。
【0102】
【表4】
(Haemophilus)
不完全なNadAホモログを、ブラジル出血熱(BPF)Haemophilus influenzae単離体{156}において発見した。このポリペプチドは、HadAと名付けられている。NadAおよびHadAのアライメントは、以下:
【0103】
【表5】
のとおりである。
【0104】
HadAに対応するものは、類型できないH.influenzae 86028株(これは、小児における中耳炎の原因である)、または非病原性H.influenzae Rd KW20株のいずれにおいても、検出され得ない。C末端アンカー領域におけるHadAとNadAとの間の非常に高レベルの配列同一性は、共通の起源を示し得る。
【0105】
そのhadA遺伝子の起源を解析するために、BPF単離体におけるこのDNA領域のヌクレオチド配列(配列番号20)を、小児の中耳炎と関連するH.influenzae株(非病原性株Rd{157}、および類型できない86028株(NTHi86028))のゲノム配列の同じ領域と比較した。
【0106】
この比較の結果は、上記付着因子コード遺伝子が、ブラジル出血熱クローン(F3031株)に対して特異的であることを示すが、一方対応するものは、研究室のRd株または類型できない株のいずれにおいても、マッピングされ得なかった。そのHadAをコードするフラグメントは、NadAについて記載されたもの{1}と密接に似ている組織を有し、かつインタクトなオープンリーディングフレーム+上流領域182bp(これは−10および−35のプロモーターエレメントを含む)を含有する。その小さな遺伝的な島は、その5’末端でRNAヘリカーゼ遺伝子に、そしてその3’末端に位置する推定のプロテアーゼをコードする遺伝子に、隣接される。その組み換えられたセグメントのGC組成は、そのゲノムの残りと一貫している。
【0107】
対照的に、NTHi 86028株は、それがRNAヘリカーゼのORFおよびRNAプロテアーゼのORFを包含する全領域を欠損しているために、全くネガティブな株であると考えられ得るが、Rdゲノムは、この領域に、機能未知の2本の短いORFをコードする1.1kbのDNAセグメントを含有する。この領域は、異常なGC含量(32%)により特徴付けられ、従って、この部位において独立した組み換え事象が起こったことを示唆している。
【0108】
さらなるNadA様分子を、他のHaemophilus種、すなわち、H.somnus、H.ducreyiおよびH.actinomycetemcomitans(Actinobacillus actinomycetemcomitansとしてもまた公知)において、同定した。
【0109】
【表6】
NadAおよび上記H.actinomycetemcomitansの配列アライメントは、以下:
【0110】
【表7】
のとおりである。
【0111】
NadAおよび上記H.somnusの配列アライメントは、以下:
【0112】
【表8】
【0113】
【表9】
のとおりである。
【0114】
NadAおよび上記H.ducreyiの配列アライメントは、以下:
【0115】
【表10】
のとおりである。
NB:H.ducreyiポリペプチドについてのコイルドコイル予想は高くない。
【0116】
(他の細菌)
本調査において同定されたさらなるNadAホモログは、以下:
【0117】
【表11】
【0118】
【表12】
である。
【0119】
(多重配列アライメント)
NadAの「ファミリー」のメンバーの、多重配列アライメントは、以下:
【0120】
【表13】
【0121】
【表14】
である。
【0122】
(HadAの研究)
上記されたように、HadA配列(配列番号1)を、当初は不完全な形態で発見した。完全なHadA遺伝子座を、フォワードオリゴヌクレオチドプライマーHOM F(配列番号40)、リバースプライマーHOM R2(配列番号41)およびHOM R2よりさらに下流の代替リバースプライマーHOM R3(配列番号42)を使用して増幅した。7個のプライマー(フォワード:配列番号43〜46;リバース:配列番号47〜49)を、完全な遺伝子座の配列決定のために使用した。
【0123】
F3031株における完全な遺伝子座は、配列番号50として与えられる。この配列のヌクレオチド874〜1339は、新規であり、そして配列番号20の下流である。HadAのアミノ酸配列は、配列番号51である。配列番号20のC末端の下流は、単独で、配列番号52として与えられる。
【0124】
NadAおよびHadAのアライメント(243aaオーバーラップにおいて、39.5%の同一性)は、以下:
【0125】
【表15】
【0126】
【表16】
に与えられる。
【0127】
全体の同一性は39.5%であるが、C末端部分における同一性は、ずっと高い(86%まで)。この2つのタンパク質の中央ドメインはあまり保存されていないが、両方のタンパク質は、強いコイルドコイル構造をとると推測される(図21Aおよび図21B)。
【0128】
hadAポジティブ株(F3031)および多種多様なhadAネガティブ株(d型、b型、および複数の類型できないH.influenzae)におけるhadA遺伝子座の概略的な構成を、図22に示す。隣接する遺伝子(RNAヘリカーゼであるHI0422および推定のプロテアーゼであるHI0419(どちらもhadAに対して逆向き))は、常に保存されている。
【0129】
hadAのすぐ下流は、KW20株においてフレームシフトされ、かつ試験された全ての他のHaemophilus株には存在しない仮想タンパク質(配列番号53および54)をコードする遺伝子である。このタンパク質に対する最も近いデータベースのマッチは、ZP_00132218.1(配列番号55)であり:
【0130】
【表17】
これは、ヒストンアセチルトランスフェラーゼHPA2およびHaemophilus somnus 2336由来の関連するアセチルトランスフェラーゼである。
【0131】
HadAネガティブ株におけるその遺伝子座のアライメントは、以下:
【0132】
【表18】
【0133】
【表19】
に与えられる。
【0134】
EAGAN配列およびHK707配列は、b型Hi株由来であり;他の4つは、NTHi株由来である。上流遺伝子(HI0422)の終止コドンTAAに、下線が引いてあり、下流遺伝子(HI0419)の終止コドンTAGの逆向きの相補体も同様である。そのHadA遺伝子は、これら2つの遺伝子の間に見られ、その重要な遺伝子間配列は、配列番号62である。
【0135】
H.influenzae Rd株およびF1947株は、HadA遺伝子を欠失しているが、HI0419とHI0422との間の配列は、より長く、かつHadAの上流およびHadAの最初の5個のコドンを含む領域と相同性を有する配列を含む。Hi aegyptius生物群の配列は、以下:
【0136】
【表20】
のとおりである。
【0137】
下線が引かれた77マー(配列番号63):
【0138】
【表21】
はまた、Rd株およびF1947株においても、HI0422の下流に見られる。
【0139】
この共有される配列は、株がHadAネガティブであっても、サザンブロットにおいて交差反応のある程度のレベルを生じ得る。
【0140】
種々のHaemophilus株のパネルにおけるサザンブロット実験は、多様な株におけるHadAの存在を明らかにした(図23)。全ての他の類型可能なH.influenzae株または類型できないH.influenzae株は、この解析によると、hadA遺伝子を欠失していた。
【0141】
(E.coliにおけるHadA発現)
HadAの構造および機能を研究するために、図24に示されるように、E.coliにおける発現のための種々の構築物:(1)全長のタンパク質を発現するための構築物(ネイティブHadA、すなわち「HadA/na」);(2)NadAリーダーペプチドの制御下にあるHadAタンパク質を発現するための構築物(「HadA/LNadA/na」);(3)C末端ヒスチジン融合タンパク質を発現するための構築物(「HadA−his」)、を調製した。全ての構築物を、pET21b発現ベクターにおいて作製し、そしてE.coli BL21(DE3)を、発現宿主として使用した。
【0142】
HadA−hisを、種々の温度で発現させた。全体のかつ可溶性のタンパク質を、SDS−PAGE(Bis−Trisゲル、12%MOPS;InvitrogenTM)により解析した。このゲルを、図25に示す。30℃で発現されたこの可溶性タンパク質(レーン9)を精製し、マウスを免疫化するために使用した。
【0143】
HadA−Hisの精製は、IMACプロセスにより行われ得るが、これは全てのE.coli夾雑物を除去するのにあまり効果的ではなかった。従って、IMACに引き続いて、pH7.7緩衝液中で、陰イオン交換クロマトグラフィーで透析した。意外にも、このタンパク質は、完全に沈殿した。続いて、そのタンパク質を、4つの異なるpH条件(6.3、6.5、7.7および8.5)の緩衝液中で透析し、そしてpH7.7でのみ沈殿を観察した。理論的pIが4.38なので、その沈殿は、等電点沈殿ではないはずである。
【0144】
上記マウスの血清を、E.coli株の種々の画分および精製された組み換えHadAのウェスタンブロット(12% Mops)を可視化するために使用した。一次抗体は、抗HadA(1:1000)であり;二次抗体は、抗マウス免疫グロブリン−HRP(DAKO)1:10000であった。この結果は、図26である。
【0145】
HadA/naおよびHadA/LNadA/naのSDS−PAGEを、図31に示す。一晩中および誘導培養の両方において、HadAタンパク質は、SDSゲル中で熱安定なモノマーおよびオリゴマー(例えば、トリマー)として、発現された。ウェスタンブロットは、図32に示され、上記E.coli細菌中におけるHadAモノマーおよびHadAオリゴマーの存在を確認した。
【0146】
発現をまた、細菌の外膜タンパク質を試験することにより研究した。図33は、E.coli由来のOMV調製物のSDS−PAGE(Bis−Trisゲル10% MOPS、Invitrogen)、およびHadAオリゴマーがその外膜で見られることを示す。その細胞表面部分を、図34に示されるように、FACSにより確認した。
【0147】
(付着)
精製したHadAを、Chang上皮細胞に結合する能力について試験した。その実験は、FACS解析により、HadA−hisがその細胞に用量依存的な様式で結合することを示した(図27)。
【0148】
HadA/naを発現するE.coli BL21(DE3)を、凝集について試験した。図28は、室温で4時間放置されていた後期対数期の培養物から収集された細胞凝集物の位相差顕微鏡を示す。3つの異なるサンプルを、図28A〜図28Cに示す。細菌は、目に見える「雲状物」を形成し、そして細菌の凝集は、マイクロコロニー形成と相関し得る。対照的に、pETプラスミドのみで形質転換された細胞は、凝集性を全く示さない。
【0149】
凝集をまた、チューブ沈降アッセイを用いて研究した。空のpETまたはHadA/naを含有するpETのいずれかで形質転換されたE.coliの培養物を、後期対数期までインキュベートし、次いで室温で4時間沈降させた。そのHadA発現細菌は、濁度を失ったが、コントロールの細胞は、失わなかった(図35)。これは、HadAが細菌の凝集を促進することを示している。
【0150】
付着実験および侵襲実験もまた、HadA/naを発現するE.coliおよびChang細胞の単層を使用して行った。付着(侵襲)を、細胞単層上の付着した(侵襲された)細菌の数を数えることにより計算した(MOI=1:1000)。結果を、3連の実験で作成された測定の平均±平均値の標準誤差とし、図29に示す。付着および侵襲を示す細胞数は、以下:
【0151】
【表22】
のとおりであった。
【0152】
付着および侵襲を、免疫蛍光顕微鏡分析により確認した(図30)。細胞外の細菌(緑色)および細胞内の細菌(赤色)が、見られ得る。
【0153】
HadAのさらなる研究としては、付着/侵襲アッセイにおける試験のためのBPF Haemophilus influenzae株の同系HadAノックアウトの構築;NadAノックインにより付着が相補され得るかどうか確かめるための、このようなノックアウト変異体の試験;HadAおよびNadAが同じレセプターに結合するかどうか確かめるための、ヒト細胞への付着/侵襲におけるHadAおよびNadAを用いた競合実験、が挙げられる。
【0154】
本発明は一例としてのみ説明され、本発明の範囲および精神の中になお存在しながら改変がなされ得ることが、理解される。
【0155】
【表23−1】
【0156】
【表23−2】
【0157】
【表23−3】
【0158】
【表23−4】
【0159】
(配列表)
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
【数9】
【数10】
【数11】
【数12】
【数13】
【数14】
【数15】
【数16】
【数17】
【数18】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【公開番号】特開2011−62203(P2011−62203A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229149(P2010−229149)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【分割の表示】特願2006−516598(P2006−516598)の分割
【原出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(592243793)カイロン ソチエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (107)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【分割の表示】特願2006−516598(P2006−516598)の分割
【原出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(592243793)カイロン ソチエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (107)
【Fターム(参考)】
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