ビーム位置補正装置およびビーム条件とビーム位置補正量との関係を求める方法
【課題】ビーム位置補正装置において、ビーム条件の変更によるビーム位置の補正を行う。
【解決手段】ビーム位置補正装置1は、ビームの補正を行うために、ビーム位置を偏位させるビーム偏位手段23と、ビーム偏位手段23のビーム偏位量を調整してビーム位置の補正を行う補正手段10とを備えた構成とし、補正手段10は、ビーム条件とビーム位置補正量との関係に基づいて、ビーム条件に対応してビーム偏位量を定めることによって、あらかじめ求めておいたビーム条件とビーム位置補正量との関係に基づいてビームを偏位させ、ビーム条件の変更によるビーム位置の補正を行う。
【解決手段】ビーム位置補正装置1は、ビームの補正を行うために、ビーム位置を偏位させるビーム偏位手段23と、ビーム偏位手段23のビーム偏位量を調整してビーム位置の補正を行う補正手段10とを備えた構成とし、補正手段10は、ビーム条件とビーム位置補正量との関係に基づいて、ビーム条件に対応してビーム偏位量を定めることによって、あらかじめ求めておいたビーム条件とビーム位置補正量との関係に基づいてビームを偏位させ、ビーム条件の変更によるビーム位置の補正を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子顕微鏡や半導体製造装置等の荷電粒子のビームを用いた装置において、荷電粒子ビームの光軸ずれを補正するビーム位置補正装置、及びビーム条件とビーム位置補正量との関係を求める方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体分野や鉄鋼などの金属分野等では、荷電粒子ビームを用いた装置が使用されている。例えば、試料表面の解析や異物解析等の表面分析は、試料表面に荷電粒子ビームを照射して得られるX線や2次電子を検出する電子顕微鏡が用いられており、また、加工物の加工においても荷電粒子ビームを用いた装置が知られている。
【0003】
荷電粒子ビームを用いた装置では、測定条件や加工条件に応じて、荷電粒子源に供給する加速電圧や荷電粒子ビームのビーム電流等のビーム条件の調整を行っている。通常、このようにビーム条件を変更すると、ビーム位置が移動してビームずれが生じる。
【0004】
図10はビーム条件の変更によるビーム位置の移動を説明するための図である。図10において、荷電粒子ビームを用いた装置は、荷電粒子源24から放出した荷電粒子ビームを、収束レンズ22、対物しぼり26、走査レンズ23、および対物レンズ25を通過させて、試料21に照射している。なお、図10は概略の構成を示し、その他の構成要素は省略している。ビーム条件は、荷電粒子源24に印加する加速電圧や収束レンズ22に印加するパワーの調整によって変更し、これらを変更すると、ビームは図10中で破線で示されるようにビーム位置が移動する。
【0005】
図11はビーム条件の変更による走査範囲の移動を説明するための図である。図11(a)はビーム位置のずれがない場合の走査像を示し、図11(b)はビーム位置がずれている場合の走査像を示している。図11(a)において、ビーム位置のずれが無い場合には、ビーム中心付近の像31(実線の円で表示)は走査画像の中心に表示される。これに対して、図11(b)に示すようにビーム位置がずれると、ビーム中心付近の像32(破線の円で表示)は走査画像の中心からずれた位置に表示される。
【0006】
ビーム位置がずれると、試料上の観察点や加工位置がずれ、測定誤差が生じたり加工精度が低下し、さらに、ずれ量が大きい場合にはビーム位置が観察領域や加工領域からはずれることになる。このようなビーム位置のずれに対して、従来は補正を行うことなく、ビーム位置がずれたままの状態で測定や加工を行ったり、あるいは、試料や加工物を支持する支持部を移動させてビーム位置の補正を行っている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のように、ビーム位置の補正を行わずに測定や加工を行うと、測定誤差や加工精度の点で問題があり、また、試料や加工物を支持する支持部を移動させてビーム位置の補正を行う場合には、このビーム位置の補正と観察点や加工点の移動に伴うビーム位置の変更を共通の支持部の移動で行う必要があり、また、ビーム位置の補正とビーム位置の変更とは、その移動量のレベルが大きく異なることもあって、支持部の移動操作が複雑となるという問題点がある。
【0008】
また、従来のビーム位置の補正では、試料上や加工物上のビーム位置を設定した後、ビーム条件を変更する毎に支持部の移動操作を行う必要があり、ビーム位置の補正操作が煩雑であるという問題点がある。
【0009】
そこで、本発明は前記した従来の問題点を解決し、ビーム条件の変更によるビーム位置の補正を行うことができるビーム位置補正装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のビーム位置補正装置は、あらかじめ求めておいたビーム条件とビーム位置補正量との関係に基づいてビームを偏位させることによって、ビーム条件の変更によるビーム位置の補正を行うものである。
【0011】
本発明のビーム位置補正装置は、上記ビームの補正を行うために、ビーム位置を偏位させるビーム偏位手段と、ビーム偏位手段のビーム偏位量を調整してビーム位置の補正を行う補正手段とを備えた構成とし、補正手段は、ビーム条件とビーム位置補正量との関係に基づいて、ビーム条件に対応してビーム偏位量を定める。これによって、ビーム条件の変更によるビーム位置の補正を行う。
【0012】
ビーム偏位手段は、ビーム源から放出されたビームを、ビーム源と照射位置との間で偏位させる手段であり、磁界発生手段あるいは電界発生手段により構成することができ、該磁界発生手段あるいは電界発生手段に印加するパワーを調整することによってビーム偏位量を制御する。
【0013】
補正手段は、ビーム条件と該ビーム条件に対応したビーム偏位手段のビーム位置補正量との関係をマップやシフトラインや関数の形態で備え、ビーム条件の変更に対応して前記関係からビーム位置補正量を定め、ビーム偏位手段の偏位量を定める。
【0014】
本発明のビーム位置補正装置によれば、ビーム条件と該ビーム条件によるビーム位置偏差量あるいはビーム位置補正量との関係をあらかじめ求め、このビーム条件とビーム位置補正量との関係をマップやシフトラインや関数の形態で補正手段に格納しておく。ビーム条件が変更した場合には、補正手段は前記関係を用いて変更したビーム条件に対応するビーム位置補正量を定める。ビーム偏位手段は、補正手段が定めたビーム位置補正量を用いてビーム位置の補正を行う。ビーム位置補正量の設定と該ビーム位置補正量によるビーム位置の補正は、ビーム条件の変更に応じて連動で行う。これによって、ビーム条件の変更によるビーム位置の連動補正を行うことができる。
【0015】
本発明の実施態様は、ビーム条件を荷電粒子ビーム源に供給する加速電圧、およびビームのビーム電流とし、該ビーム電流は荷電粒子ビームを収束させる収束レンズに供給するパワーにより定めることができる。
【0016】
本発明の実施態様の補正手段は、ビーム条件と該ビーム条件に対応したビーム偏位手段のビーム位置補正量との関係を、加速電圧とビーム電流を変数とする2次元のマップやシフトラインや関数により求めて格納する。この関係で定められるビーム位置補正量間の値はスプライン関数で補間するものであり、これによって、任意のビーム条件に対するビーム位置補正を行うことができる。
【0017】
また、本発明は、ビーム位置を偏位させるビーム偏位手段と、
前記ビーム偏位手段のビーム偏位量を調整してビーム位置の補正を行う補正手段とを備えるビーム位置補正装置において、ビーム条件とビーム位置補正量との関係を求める方法として2つの態様を備える。
【0018】
第1の態様は、所定ビーム条件における走査像をモニター上に表示し、ビーム偏位手段により走査像が所定位置となるように調整し、この調整量をビーム位置補正量とすることによってビーム条件とビーム位置補正量との関係を求める。
【0019】
また、第2の態様は、所定ビーム条件における走査像をモニター上に表示し、この走査像の指定位置における走査信号とモニター上の所定位置における走査信号とからビーム偏位量を求め、このビーム偏位量からビーム位置補正量を求めることによってビーム条件とビーム位置補正量との関係を求める。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明のビーム位置補正装置によれば、ビーム条件の変更によるビーム位置の補正を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図を参照しながら詳細に説明する。本発明の実施の形態の構成例について、図1の本発明のビーム位置補正装置の概略構成図を用いて説明する。本発明のビーム位置補正装置は、電子顕微鏡や半導体製造装置等の荷電粒子ビームを用いる装置に適用することができる装置であり、電子顕微鏡では電子源から出射された電子ビームを試料に照射して試料の表面分析を行い、また、半導体製造装置ではイオンビーム等の荷電粒子ビームを加工物に照射して加工を行う。なお、図1はこのビーム位置補正装置に必要な構成部分と、電子顕微鏡の概略構成について示している。
【0022】
図1において、電子顕微鏡等の荷電粒子ビームを用いる装置は、荷電粒子ビームを出射する荷電粒子ビーム源24と、出射されたビームを収束させる収束レンズ22および対物しぼり26と、ビームを走査させるための走査レンズ23と、ビームを合焦させるための対物レンズ25を備え、試料21から放出されたX線や2次電子を図示しない検出器で検出する。
【0023】
荷電粒子ビーム源24は、高圧電源14から加速電圧の供給を受けてビームを出射する。荷電粒子ビーム源24と試料21との間に配置された各レンズはコイルあるいは電極で構成することができ、収束レンズ22および対物レンズ25はレンズ電源12から供給される電流あるいは電圧によって制御を行い、走査レンズ23は走査電源13から供給される電流あるいは電圧によってビームの走査を行う。
【0024】
高圧電源14から供給する加速電圧を制御することにより、荷電粒子ビーム源24から出射されるビームのビーム強度を変更し、また、レンズ電源12の電流あるいは電圧を調整してビーム電流を制御することにより、ビームの焦点位置の調整を行う変更する。通常、加速電圧やビーム電流が変更すると、ビームの軌跡が偏位し、試料21上においてビーム位置がずれる。
【0025】
ビーム位置補正装置1(図1中の破線部分)は、レンズ電源12を制御するフォーカスビーム制御部2と、走査電源13を制御する走査制御部3と、高圧電源14を制御する高圧電源制御部4とを備え、高圧電源制御部4はフォーカスビーム制御部2によって制御される。また、本発明のビーム位置補正装置1は、ビーム位置の補正を行う補正部10を備え、補正電源11を介してビーム偏位手段を制御し、ビーム条件の変更に伴うビーム偏位の補正を行う。なお、図1は、ビーム偏位手段として走査レンズ23を用いた場合の構成を示しているが、収束レンズ22と試料21との間に別のコイルを設け、このコイルによってビーム偏位手段を構成することもできる。
【0026】
図1に示す構成では、補正部10はフォーカスビーム制御部2から加速電圧やビーム電流等のビーム条件を受け取り、このビーム条件に対応するビーム位置補正量をあらかじめ求めておいた関係から定め、定めたビーム位置補正量に応じて、補正電源11が走査レンズ23に供給する走査信号のレベルを変える。この走査信号の調整をx方向およびy方向について行うことによって、走査レンズ23の走査範囲をxy方向に偏位させ、ビーム条件によるビーム偏位を補正する。
【0027】
ビーム偏位手段を走査レンズ23と別のレンズで構成する場合には、補正部10のビーム位置補正量に対応する電圧あるいは電流を補正電源11で生成し、この電圧あるいは電流をレンズに供給し、単独でビーム位置の補正を行う。
【0028】
補正部10は、ビーム条件とビーム偏位量あるいはビーム位置補正量との関係を求めて格納する構成として、フォーカスビーム制御部2からビーム条件を受け取り、走査制御部からビーム位置補正量を受け取る構成、あるいは、フォーカスビーム制御部2からビーム条件を受け取り、走査制御部3からビーム偏位量を受け取る構成をとることができる。
【0029】
X線検出器や2次電子検出器で測定する測定信号やデータ処理装置からのデータ等は、信号選択表示制御部6を介して表示部7で表示される。なお、上記フォーカスビーム制御部2、走査制御部3、高圧電源制御部4、および信号選択表示制御部6は、制御装置5によって制御が行われる。
【0030】
次に、本発明のビーム位置補正装置の動作について、図2〜図6を用いて説明する。図2は補正手段からの補正信号によるビーム位置の補正を示す概略図である。なお、図2に示すビーム位置補正は、走査レンズ23によってビームを偏位させる場合を示している。図2において、荷電粒子ビーム源24の加速電圧を変更したり、収束レンズ22に供給するパワーの変更によってビーム電流を変更すると、図示するようにビームは偏位する。このとき、補正部からの指令によって、補正電源からビーム位置を補正する補正電圧あるいは補正電流等の補正信号が出力し、走査信号と重畳して走査レンズ23に印加する。
【0031】
走査レンズ23は、補正信号によってビームをx、y方向に所定量だけ偏位させる。このとき、補正信号による偏位量が、ビーム条件の変化により生じるビーム偏位量と逆方向で同量である場合には、ビーム条件の変化により生じるビーム偏位は補正され、試料21に照射するビーム位置を所定位置に補正することができる。補正部内に、ビーム条件と該ビーム条件におけるビーム位置の偏位量あるいはビーム位置の偏位を補正する補正量との関係をあらかじめ求めて格納しておき、ビーム条件を変更する毎にそのビーム条件に対応するビーム位置補正量を定め、このビーム位置補正量を補正信号として走査レンズに印加することによって、各ビーム条件に対応した補正を行うことができる。
【0032】
このとき、補正部がビーム条件とビーム条件におけるビーム位置の偏位量との関係を格納している場合には、補正部は該関係で定まるビーム偏位量を用いてビーム位置を所定位置に補正するビーム位置補正量を演算する。
【0033】
図2に示す補正信号(Vx,Vy)は、x方向の走査信号に対してVxを加算して補正を行い、y方向の走査信号に対してVyを加算して補正を行う場合を示しており、図3はこのときのx方向の走査信号、補正信号、および補正後の走査信号を表し、図4は走査像を表している。
【0034】
図3(a)の破線で示すきょ歯状波は、x方向の走査信号の一例である。ビーム位置がモニターの座標中心に設定されている場合には、この走査信号で走査を行うと図4中の実線で示す走査像31が得られる。このビーム位置の設定の後、ビーム条件を変更するとビーム位置が偏位する。この偏位したビーム位置は、モニター上では座標中心からずれた位置となり、この偏位したビームによって図3(a)の走査信号で走査像を求めると、ビーム位置設定時にモニターの座標中心位置にある像は、例えば図4中の破線の円で示されるような偏位した走査像32となる。この走査像はモニターの中心座標からビーム偏位量だけずれた位置に表示される。同様に、y方向についてもビーム偏位量だけずれた位置に表示される。
【0035】
このビーム偏位量に対して、ビームを逆方向に同量だけ偏位させるビーム位置補正量Vxを求め、図3(b)に示すような補正信号を生成し、図3(a)の走査信号に重畳する。図3(b)は、補正信号を重畳した走査信号を示しており、ビーム位置補正量Vxだけバイアスを加えた走査信号となる。ビームはビーム位置補正量Vxだけ偏位し、この走査信号を用いて走査像を求めると図4中の走査像31となり、ビーム偏位の補正を行うことができる。なお、y方向はx方向と同様である。
【0036】
次に、補正部が格納するビーム位置補正量について、図5および図6を用いて説明する。補正部は、ビーム条件に対応するビーム位置補正量をマップやシフトラインの形態で格納することができ、ビーム条件に応じて読み出すことができる。図5に示す図表は、ビーム条件とビーム位置補正量との関係を表すマップの一例であり、ビーム源に印加する加速電圧と収束レンズに供給するパワー比の二つのビーム条件に対するビーム位置補正量Vx,Vyを表している。なお、パワー比は、収束レンズに印加する最大パワーを100%としたときの比率を表している。
【0037】
図5に示すマップは、加速電圧が15kVで供給パワーが40%のビーム条件を基準としてビーム位置を所定位置に設定し、このビーム条件と異なる条件によって生じるビーム偏差を補正するために要するビーム位置補正量Vx,Vyを求めて格納する。なお、図5のマップでは、加速電圧が5kV,10kV,15kV,20kVの場合について求め、供給パワーが40%,30%,20%,10%の場合について求めた場合を示している。したがって、ビーム条件に対するビーム位置補正量は、図5のマップにおいて加速電圧とパワー比のビーム条件に対応するビーム位置補正量Vx,Vyを読み出すことによって定めることができる。
【0038】
図6はビーム条件とビーム位置補正量との関係を表すシフトラインの一例であり、図6に示すビーム位置補正量線図は、加速電圧が15kVで供給パワーが40%のビーム条件を基準としてビーム位置を所定位置に設定し、このビーム条件と異なる条件によって生じるビーム偏差を補正するために要するビーム位置補正量Vx,Vyを求めて格納する。なお、図5のマップでは、加速電圧が5kV,10kV,15kV,20kVの場合のビーム位置補正量Vx,Vyのシフトラインと、供給パワーが40%,30%,20%,10%の場合のビーム位置補正量Vx,Vyのシフトラインとを示している。したがって、ビーム条件に対するビーム位置補正量は、図6のビーム位置補正量線図において加速電圧とパワー比のビーム条件に対応するビーム位置補正量Vx,Vyを読み出すことによって定めることができる。また、ビーム条件とビーム位置補正量との関係を関数で定めることもできる。
【0039】
図5のマップや図6のビーム位置補正量線図中に示されないビーム条件の場合には、近傍のビーム位置補正量Vx,Vyを用い、これらのビーム位置補正量の間を補間することによって求めることができる。補間方法としては、例えば、スプライン関数を用いた補間を使用することができる。
【0040】
次に、ビーム条件とビーム位置補正量との関係を求める方法について説明する。第1の方法は、図1に示すビーム位置補正装置1において、表示装置7に走査像を表示しながら、該走査像が所定位置となるように走査制御部3を調節し、該調節量をビーム位置補正量として求め、補正部10に格納するものである。
【0041】
第2の方法は、図1に示すビーム位置補正装置1において、表示装置7に走査像を表示し、ビーム位置の偏位によって偏位した走査像の位置をモニター上で指定してビーム偏位量を求め、このビーム偏位量からビーム位置補正量を求め、補正部10に格納するものである。
【0042】
図7,8はビーム条件とビーム位置補正量との関係を求める第2の方法を説明するための図である。図7に示すように、走査像はxy方向にビームを走査することによって得ることができ、ビーム位置が偏位している場合には、走査像はモニター上においてビーム偏位量だけずれた位置に表示される。また、図8はx方向およびy方向の走査信号を表している。この走査信号の信号値は、モニター上の位置に対応しており、モニター上の位置からそのとき印加されている走査信号の信号値を求めることができる。したがって、モニター上の走査像の位置を指定すると、このときの走査信号の信号値(図8(a)中のVX、図8(b)中のVY)からビーム偏位量を求めることができる。ビーム位置補正量(Vx,Vy)は、求めたビーム偏位量(VX,VY)を基にして、ビーム位置を所定位置に補正する値を演算することによって求めることができる。
【0043】
図9は、本発明のビーム位置補正装置の他の構成例を示す図である。図1に示す構成例は、ビーム偏向手段として走査コイルとビーム位置補正コイルを兼用した構成であるが、図9に示す構成例は、ビーム偏向手段として走査コイルとは別個にビーム位置補正コイル27を設けた構成である。ビーム位置補正コイル27は補正電源11から駆動電流の供給を受け、ビーム位置の補正を行う。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明のビーム位置補正装置の概略構成図である。
【図2】本発明の補正手段からの補正信号によるビーム位置の補正を示す概略図である。
【図3】本発明のx方向の走査信号、補正信号、および補正後の走査信号図である。
【図4】本発明の補正手段による走査像を説明するための図である。
【図5】本発明のビーム条件とビーム位置補正量との関係を表す図表である。
【図6】本発明のビーム条件とビーム位置補正量との関係を表すビーム位置補正量線図である。
【図7】本発明のビーム条件とビーム位置補正量との関係を求める方法を説明するための図である。
【図8】本発明のビーム条件とビーム位置補正量との関係を求める方法を説明するための走査信号図である。
【図9】本発明のビーム位置補正装置の他の構成例を説明するための図である。
【図10】ビーム条件の変更によるビーム位置の移動を説明するための図である。
【図11】ビーム条件の変更による走査範囲の移動を説明するための図である。
【符号の説明】
【0045】
1…ビーム位置補正装置、2…フォーカスビーム制御部、3…走査制御部、4…高圧電源制御部、5…制御装置、6…信号表示制御部、7…表示部、10…補正部、11…補正電源、12…レンズ電源、13…走査電源、14…高圧電源、21…試料、22…収束レンズ、23…走査レンズ、24…荷電粒子源、25…対物レンズ、26…対物しぼり、27…ビーム位置補正コイル、31,32,33…走査像。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子顕微鏡や半導体製造装置等の荷電粒子のビームを用いた装置において、荷電粒子ビームの光軸ずれを補正するビーム位置補正装置、及びビーム条件とビーム位置補正量との関係を求める方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体分野や鉄鋼などの金属分野等では、荷電粒子ビームを用いた装置が使用されている。例えば、試料表面の解析や異物解析等の表面分析は、試料表面に荷電粒子ビームを照射して得られるX線や2次電子を検出する電子顕微鏡が用いられており、また、加工物の加工においても荷電粒子ビームを用いた装置が知られている。
【0003】
荷電粒子ビームを用いた装置では、測定条件や加工条件に応じて、荷電粒子源に供給する加速電圧や荷電粒子ビームのビーム電流等のビーム条件の調整を行っている。通常、このようにビーム条件を変更すると、ビーム位置が移動してビームずれが生じる。
【0004】
図10はビーム条件の変更によるビーム位置の移動を説明するための図である。図10において、荷電粒子ビームを用いた装置は、荷電粒子源24から放出した荷電粒子ビームを、収束レンズ22、対物しぼり26、走査レンズ23、および対物レンズ25を通過させて、試料21に照射している。なお、図10は概略の構成を示し、その他の構成要素は省略している。ビーム条件は、荷電粒子源24に印加する加速電圧や収束レンズ22に印加するパワーの調整によって変更し、これらを変更すると、ビームは図10中で破線で示されるようにビーム位置が移動する。
【0005】
図11はビーム条件の変更による走査範囲の移動を説明するための図である。図11(a)はビーム位置のずれがない場合の走査像を示し、図11(b)はビーム位置がずれている場合の走査像を示している。図11(a)において、ビーム位置のずれが無い場合には、ビーム中心付近の像31(実線の円で表示)は走査画像の中心に表示される。これに対して、図11(b)に示すようにビーム位置がずれると、ビーム中心付近の像32(破線の円で表示)は走査画像の中心からずれた位置に表示される。
【0006】
ビーム位置がずれると、試料上の観察点や加工位置がずれ、測定誤差が生じたり加工精度が低下し、さらに、ずれ量が大きい場合にはビーム位置が観察領域や加工領域からはずれることになる。このようなビーム位置のずれに対して、従来は補正を行うことなく、ビーム位置がずれたままの状態で測定や加工を行ったり、あるいは、試料や加工物を支持する支持部を移動させてビーム位置の補正を行っている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のように、ビーム位置の補正を行わずに測定や加工を行うと、測定誤差や加工精度の点で問題があり、また、試料や加工物を支持する支持部を移動させてビーム位置の補正を行う場合には、このビーム位置の補正と観察点や加工点の移動に伴うビーム位置の変更を共通の支持部の移動で行う必要があり、また、ビーム位置の補正とビーム位置の変更とは、その移動量のレベルが大きく異なることもあって、支持部の移動操作が複雑となるという問題点がある。
【0008】
また、従来のビーム位置の補正では、試料上や加工物上のビーム位置を設定した後、ビーム条件を変更する毎に支持部の移動操作を行う必要があり、ビーム位置の補正操作が煩雑であるという問題点がある。
【0009】
そこで、本発明は前記した従来の問題点を解決し、ビーム条件の変更によるビーム位置の補正を行うことができるビーム位置補正装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のビーム位置補正装置は、あらかじめ求めておいたビーム条件とビーム位置補正量との関係に基づいてビームを偏位させることによって、ビーム条件の変更によるビーム位置の補正を行うものである。
【0011】
本発明のビーム位置補正装置は、上記ビームの補正を行うために、ビーム位置を偏位させるビーム偏位手段と、ビーム偏位手段のビーム偏位量を調整してビーム位置の補正を行う補正手段とを備えた構成とし、補正手段は、ビーム条件とビーム位置補正量との関係に基づいて、ビーム条件に対応してビーム偏位量を定める。これによって、ビーム条件の変更によるビーム位置の補正を行う。
【0012】
ビーム偏位手段は、ビーム源から放出されたビームを、ビーム源と照射位置との間で偏位させる手段であり、磁界発生手段あるいは電界発生手段により構成することができ、該磁界発生手段あるいは電界発生手段に印加するパワーを調整することによってビーム偏位量を制御する。
【0013】
補正手段は、ビーム条件と該ビーム条件に対応したビーム偏位手段のビーム位置補正量との関係をマップやシフトラインや関数の形態で備え、ビーム条件の変更に対応して前記関係からビーム位置補正量を定め、ビーム偏位手段の偏位量を定める。
【0014】
本発明のビーム位置補正装置によれば、ビーム条件と該ビーム条件によるビーム位置偏差量あるいはビーム位置補正量との関係をあらかじめ求め、このビーム条件とビーム位置補正量との関係をマップやシフトラインや関数の形態で補正手段に格納しておく。ビーム条件が変更した場合には、補正手段は前記関係を用いて変更したビーム条件に対応するビーム位置補正量を定める。ビーム偏位手段は、補正手段が定めたビーム位置補正量を用いてビーム位置の補正を行う。ビーム位置補正量の設定と該ビーム位置補正量によるビーム位置の補正は、ビーム条件の変更に応じて連動で行う。これによって、ビーム条件の変更によるビーム位置の連動補正を行うことができる。
【0015】
本発明の実施態様は、ビーム条件を荷電粒子ビーム源に供給する加速電圧、およびビームのビーム電流とし、該ビーム電流は荷電粒子ビームを収束させる収束レンズに供給するパワーにより定めることができる。
【0016】
本発明の実施態様の補正手段は、ビーム条件と該ビーム条件に対応したビーム偏位手段のビーム位置補正量との関係を、加速電圧とビーム電流を変数とする2次元のマップやシフトラインや関数により求めて格納する。この関係で定められるビーム位置補正量間の値はスプライン関数で補間するものであり、これによって、任意のビーム条件に対するビーム位置補正を行うことができる。
【0017】
また、本発明は、ビーム位置を偏位させるビーム偏位手段と、
前記ビーム偏位手段のビーム偏位量を調整してビーム位置の補正を行う補正手段とを備えるビーム位置補正装置において、ビーム条件とビーム位置補正量との関係を求める方法として2つの態様を備える。
【0018】
第1の態様は、所定ビーム条件における走査像をモニター上に表示し、ビーム偏位手段により走査像が所定位置となるように調整し、この調整量をビーム位置補正量とすることによってビーム条件とビーム位置補正量との関係を求める。
【0019】
また、第2の態様は、所定ビーム条件における走査像をモニター上に表示し、この走査像の指定位置における走査信号とモニター上の所定位置における走査信号とからビーム偏位量を求め、このビーム偏位量からビーム位置補正量を求めることによってビーム条件とビーム位置補正量との関係を求める。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明のビーム位置補正装置によれば、ビーム条件の変更によるビーム位置の補正を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図を参照しながら詳細に説明する。本発明の実施の形態の構成例について、図1の本発明のビーム位置補正装置の概略構成図を用いて説明する。本発明のビーム位置補正装置は、電子顕微鏡や半導体製造装置等の荷電粒子ビームを用いる装置に適用することができる装置であり、電子顕微鏡では電子源から出射された電子ビームを試料に照射して試料の表面分析を行い、また、半導体製造装置ではイオンビーム等の荷電粒子ビームを加工物に照射して加工を行う。なお、図1はこのビーム位置補正装置に必要な構成部分と、電子顕微鏡の概略構成について示している。
【0022】
図1において、電子顕微鏡等の荷電粒子ビームを用いる装置は、荷電粒子ビームを出射する荷電粒子ビーム源24と、出射されたビームを収束させる収束レンズ22および対物しぼり26と、ビームを走査させるための走査レンズ23と、ビームを合焦させるための対物レンズ25を備え、試料21から放出されたX線や2次電子を図示しない検出器で検出する。
【0023】
荷電粒子ビーム源24は、高圧電源14から加速電圧の供給を受けてビームを出射する。荷電粒子ビーム源24と試料21との間に配置された各レンズはコイルあるいは電極で構成することができ、収束レンズ22および対物レンズ25はレンズ電源12から供給される電流あるいは電圧によって制御を行い、走査レンズ23は走査電源13から供給される電流あるいは電圧によってビームの走査を行う。
【0024】
高圧電源14から供給する加速電圧を制御することにより、荷電粒子ビーム源24から出射されるビームのビーム強度を変更し、また、レンズ電源12の電流あるいは電圧を調整してビーム電流を制御することにより、ビームの焦点位置の調整を行う変更する。通常、加速電圧やビーム電流が変更すると、ビームの軌跡が偏位し、試料21上においてビーム位置がずれる。
【0025】
ビーム位置補正装置1(図1中の破線部分)は、レンズ電源12を制御するフォーカスビーム制御部2と、走査電源13を制御する走査制御部3と、高圧電源14を制御する高圧電源制御部4とを備え、高圧電源制御部4はフォーカスビーム制御部2によって制御される。また、本発明のビーム位置補正装置1は、ビーム位置の補正を行う補正部10を備え、補正電源11を介してビーム偏位手段を制御し、ビーム条件の変更に伴うビーム偏位の補正を行う。なお、図1は、ビーム偏位手段として走査レンズ23を用いた場合の構成を示しているが、収束レンズ22と試料21との間に別のコイルを設け、このコイルによってビーム偏位手段を構成することもできる。
【0026】
図1に示す構成では、補正部10はフォーカスビーム制御部2から加速電圧やビーム電流等のビーム条件を受け取り、このビーム条件に対応するビーム位置補正量をあらかじめ求めておいた関係から定め、定めたビーム位置補正量に応じて、補正電源11が走査レンズ23に供給する走査信号のレベルを変える。この走査信号の調整をx方向およびy方向について行うことによって、走査レンズ23の走査範囲をxy方向に偏位させ、ビーム条件によるビーム偏位を補正する。
【0027】
ビーム偏位手段を走査レンズ23と別のレンズで構成する場合には、補正部10のビーム位置補正量に対応する電圧あるいは電流を補正電源11で生成し、この電圧あるいは電流をレンズに供給し、単独でビーム位置の補正を行う。
【0028】
補正部10は、ビーム条件とビーム偏位量あるいはビーム位置補正量との関係を求めて格納する構成として、フォーカスビーム制御部2からビーム条件を受け取り、走査制御部からビーム位置補正量を受け取る構成、あるいは、フォーカスビーム制御部2からビーム条件を受け取り、走査制御部3からビーム偏位量を受け取る構成をとることができる。
【0029】
X線検出器や2次電子検出器で測定する測定信号やデータ処理装置からのデータ等は、信号選択表示制御部6を介して表示部7で表示される。なお、上記フォーカスビーム制御部2、走査制御部3、高圧電源制御部4、および信号選択表示制御部6は、制御装置5によって制御が行われる。
【0030】
次に、本発明のビーム位置補正装置の動作について、図2〜図6を用いて説明する。図2は補正手段からの補正信号によるビーム位置の補正を示す概略図である。なお、図2に示すビーム位置補正は、走査レンズ23によってビームを偏位させる場合を示している。図2において、荷電粒子ビーム源24の加速電圧を変更したり、収束レンズ22に供給するパワーの変更によってビーム電流を変更すると、図示するようにビームは偏位する。このとき、補正部からの指令によって、補正電源からビーム位置を補正する補正電圧あるいは補正電流等の補正信号が出力し、走査信号と重畳して走査レンズ23に印加する。
【0031】
走査レンズ23は、補正信号によってビームをx、y方向に所定量だけ偏位させる。このとき、補正信号による偏位量が、ビーム条件の変化により生じるビーム偏位量と逆方向で同量である場合には、ビーム条件の変化により生じるビーム偏位は補正され、試料21に照射するビーム位置を所定位置に補正することができる。補正部内に、ビーム条件と該ビーム条件におけるビーム位置の偏位量あるいはビーム位置の偏位を補正する補正量との関係をあらかじめ求めて格納しておき、ビーム条件を変更する毎にそのビーム条件に対応するビーム位置補正量を定め、このビーム位置補正量を補正信号として走査レンズに印加することによって、各ビーム条件に対応した補正を行うことができる。
【0032】
このとき、補正部がビーム条件とビーム条件におけるビーム位置の偏位量との関係を格納している場合には、補正部は該関係で定まるビーム偏位量を用いてビーム位置を所定位置に補正するビーム位置補正量を演算する。
【0033】
図2に示す補正信号(Vx,Vy)は、x方向の走査信号に対してVxを加算して補正を行い、y方向の走査信号に対してVyを加算して補正を行う場合を示しており、図3はこのときのx方向の走査信号、補正信号、および補正後の走査信号を表し、図4は走査像を表している。
【0034】
図3(a)の破線で示すきょ歯状波は、x方向の走査信号の一例である。ビーム位置がモニターの座標中心に設定されている場合には、この走査信号で走査を行うと図4中の実線で示す走査像31が得られる。このビーム位置の設定の後、ビーム条件を変更するとビーム位置が偏位する。この偏位したビーム位置は、モニター上では座標中心からずれた位置となり、この偏位したビームによって図3(a)の走査信号で走査像を求めると、ビーム位置設定時にモニターの座標中心位置にある像は、例えば図4中の破線の円で示されるような偏位した走査像32となる。この走査像はモニターの中心座標からビーム偏位量だけずれた位置に表示される。同様に、y方向についてもビーム偏位量だけずれた位置に表示される。
【0035】
このビーム偏位量に対して、ビームを逆方向に同量だけ偏位させるビーム位置補正量Vxを求め、図3(b)に示すような補正信号を生成し、図3(a)の走査信号に重畳する。図3(b)は、補正信号を重畳した走査信号を示しており、ビーム位置補正量Vxだけバイアスを加えた走査信号となる。ビームはビーム位置補正量Vxだけ偏位し、この走査信号を用いて走査像を求めると図4中の走査像31となり、ビーム偏位の補正を行うことができる。なお、y方向はx方向と同様である。
【0036】
次に、補正部が格納するビーム位置補正量について、図5および図6を用いて説明する。補正部は、ビーム条件に対応するビーム位置補正量をマップやシフトラインの形態で格納することができ、ビーム条件に応じて読み出すことができる。図5に示す図表は、ビーム条件とビーム位置補正量との関係を表すマップの一例であり、ビーム源に印加する加速電圧と収束レンズに供給するパワー比の二つのビーム条件に対するビーム位置補正量Vx,Vyを表している。なお、パワー比は、収束レンズに印加する最大パワーを100%としたときの比率を表している。
【0037】
図5に示すマップは、加速電圧が15kVで供給パワーが40%のビーム条件を基準としてビーム位置を所定位置に設定し、このビーム条件と異なる条件によって生じるビーム偏差を補正するために要するビーム位置補正量Vx,Vyを求めて格納する。なお、図5のマップでは、加速電圧が5kV,10kV,15kV,20kVの場合について求め、供給パワーが40%,30%,20%,10%の場合について求めた場合を示している。したがって、ビーム条件に対するビーム位置補正量は、図5のマップにおいて加速電圧とパワー比のビーム条件に対応するビーム位置補正量Vx,Vyを読み出すことによって定めることができる。
【0038】
図6はビーム条件とビーム位置補正量との関係を表すシフトラインの一例であり、図6に示すビーム位置補正量線図は、加速電圧が15kVで供給パワーが40%のビーム条件を基準としてビーム位置を所定位置に設定し、このビーム条件と異なる条件によって生じるビーム偏差を補正するために要するビーム位置補正量Vx,Vyを求めて格納する。なお、図5のマップでは、加速電圧が5kV,10kV,15kV,20kVの場合のビーム位置補正量Vx,Vyのシフトラインと、供給パワーが40%,30%,20%,10%の場合のビーム位置補正量Vx,Vyのシフトラインとを示している。したがって、ビーム条件に対するビーム位置補正量は、図6のビーム位置補正量線図において加速電圧とパワー比のビーム条件に対応するビーム位置補正量Vx,Vyを読み出すことによって定めることができる。また、ビーム条件とビーム位置補正量との関係を関数で定めることもできる。
【0039】
図5のマップや図6のビーム位置補正量線図中に示されないビーム条件の場合には、近傍のビーム位置補正量Vx,Vyを用い、これらのビーム位置補正量の間を補間することによって求めることができる。補間方法としては、例えば、スプライン関数を用いた補間を使用することができる。
【0040】
次に、ビーム条件とビーム位置補正量との関係を求める方法について説明する。第1の方法は、図1に示すビーム位置補正装置1において、表示装置7に走査像を表示しながら、該走査像が所定位置となるように走査制御部3を調節し、該調節量をビーム位置補正量として求め、補正部10に格納するものである。
【0041】
第2の方法は、図1に示すビーム位置補正装置1において、表示装置7に走査像を表示し、ビーム位置の偏位によって偏位した走査像の位置をモニター上で指定してビーム偏位量を求め、このビーム偏位量からビーム位置補正量を求め、補正部10に格納するものである。
【0042】
図7,8はビーム条件とビーム位置補正量との関係を求める第2の方法を説明するための図である。図7に示すように、走査像はxy方向にビームを走査することによって得ることができ、ビーム位置が偏位している場合には、走査像はモニター上においてビーム偏位量だけずれた位置に表示される。また、図8はx方向およびy方向の走査信号を表している。この走査信号の信号値は、モニター上の位置に対応しており、モニター上の位置からそのとき印加されている走査信号の信号値を求めることができる。したがって、モニター上の走査像の位置を指定すると、このときの走査信号の信号値(図8(a)中のVX、図8(b)中のVY)からビーム偏位量を求めることができる。ビーム位置補正量(Vx,Vy)は、求めたビーム偏位量(VX,VY)を基にして、ビーム位置を所定位置に補正する値を演算することによって求めることができる。
【0043】
図9は、本発明のビーム位置補正装置の他の構成例を示す図である。図1に示す構成例は、ビーム偏向手段として走査コイルとビーム位置補正コイルを兼用した構成であるが、図9に示す構成例は、ビーム偏向手段として走査コイルとは別個にビーム位置補正コイル27を設けた構成である。ビーム位置補正コイル27は補正電源11から駆動電流の供給を受け、ビーム位置の補正を行う。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明のビーム位置補正装置の概略構成図である。
【図2】本発明の補正手段からの補正信号によるビーム位置の補正を示す概略図である。
【図3】本発明のx方向の走査信号、補正信号、および補正後の走査信号図である。
【図4】本発明の補正手段による走査像を説明するための図である。
【図5】本発明のビーム条件とビーム位置補正量との関係を表す図表である。
【図6】本発明のビーム条件とビーム位置補正量との関係を表すビーム位置補正量線図である。
【図7】本発明のビーム条件とビーム位置補正量との関係を求める方法を説明するための図である。
【図8】本発明のビーム条件とビーム位置補正量との関係を求める方法を説明するための走査信号図である。
【図9】本発明のビーム位置補正装置の他の構成例を説明するための図である。
【図10】ビーム条件の変更によるビーム位置の移動を説明するための図である。
【図11】ビーム条件の変更による走査範囲の移動を説明するための図である。
【符号の説明】
【0045】
1…ビーム位置補正装置、2…フォーカスビーム制御部、3…走査制御部、4…高圧電源制御部、5…制御装置、6…信号表示制御部、7…表示部、10…補正部、11…補正電源、12…レンズ電源、13…走査電源、14…高圧電源、21…試料、22…収束レンズ、23…走査レンズ、24…荷電粒子源、25…対物レンズ、26…対物しぼり、27…ビーム位置補正コイル、31,32,33…走査像。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビーム位置を偏位させるビーム偏位手段と、
前記ビーム偏位手段のビーム偏位量を調整してビーム位置の補正を行う補正手段とを備え、
前記補正手段は、ビーム条件とビーム位置補正量との関係に基づいて、ビーム条件に対応してビーム偏位量を定め、
前記ビーム条件は、荷電粒子ビーム源に供給する加速電圧及びビーム電流であり、当該ビーム電流は荷電粒子ビームを収束させる収束レンズに供給するパワーにより定めることができることを特徴とするビーム位置補正装置。
【請求項2】
前記補正手段は、前記加速電圧と収束レンズに供給するパワー比の2つのビーム条件に対するビーム位置補正量を格納し、ビーム条件に応じて読み出すことを特徴とする、請求項1に記載のビーム位置補正装置。
【請求項3】
ビーム位置を偏位させるビーム偏位手段と、
前記ビーム偏位手段のビーム偏位量を調整してビーム位置の補正を行う補正手段とを備えるビーム位置補正装置においてビーム条件とビーム位置補正量との関係を求める方法であって、
所定ビーム条件における走査像をモニター上に表示し、
前記ビーム偏位手段により当該走査像が所定位置となるように調整し、
当該調整量をビーム位置補正量とすることによってビーム条件とビーム位置補正量との関係を求めることを特徴とする、ビーム条件とビーム位置補正量との関係を求める方法。
【請求項4】
ビーム位置を偏位させるビーム偏位手段と、
前記ビーム偏位手段のビーム偏位量を調整してビーム位置の補正を行う補正手段とを備えるビーム位置補正装置においてビーム条件とビーム位置補正量との関係を求める方法であって、
所定ビーム条件における走査像をモニター上に表示し、
当該走査像の指定位置における走査信号とモニター上の所定位置における走査信号とからビーム偏位量を求め、
当該ビーム偏位量からビーム位置補正量を求めることによってビーム条件とビーム位置補正量との関係を求めることを特徴とする、ビーム条件とビーム位置補正量との関係を求める方法。
【請求項1】
ビーム位置を偏位させるビーム偏位手段と、
前記ビーム偏位手段のビーム偏位量を調整してビーム位置の補正を行う補正手段とを備え、
前記補正手段は、ビーム条件とビーム位置補正量との関係に基づいて、ビーム条件に対応してビーム偏位量を定め、
前記ビーム条件は、荷電粒子ビーム源に供給する加速電圧及びビーム電流であり、当該ビーム電流は荷電粒子ビームを収束させる収束レンズに供給するパワーにより定めることができることを特徴とするビーム位置補正装置。
【請求項2】
前記補正手段は、前記加速電圧と収束レンズに供給するパワー比の2つのビーム条件に対するビーム位置補正量を格納し、ビーム条件に応じて読み出すことを特徴とする、請求項1に記載のビーム位置補正装置。
【請求項3】
ビーム位置を偏位させるビーム偏位手段と、
前記ビーム偏位手段のビーム偏位量を調整してビーム位置の補正を行う補正手段とを備えるビーム位置補正装置においてビーム条件とビーム位置補正量との関係を求める方法であって、
所定ビーム条件における走査像をモニター上に表示し、
前記ビーム偏位手段により当該走査像が所定位置となるように調整し、
当該調整量をビーム位置補正量とすることによってビーム条件とビーム位置補正量との関係を求めることを特徴とする、ビーム条件とビーム位置補正量との関係を求める方法。
【請求項4】
ビーム位置を偏位させるビーム偏位手段と、
前記ビーム偏位手段のビーム偏位量を調整してビーム位置の補正を行う補正手段とを備えるビーム位置補正装置においてビーム条件とビーム位置補正量との関係を求める方法であって、
所定ビーム条件における走査像をモニター上に表示し、
当該走査像の指定位置における走査信号とモニター上の所定位置における走査信号とからビーム偏位量を求め、
当該ビーム偏位量からビーム位置補正量を求めることによってビーム条件とビーム位置補正量との関係を求めることを特徴とする、ビーム条件とビーム位置補正量との関係を求める方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−147592(P2006−147592A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−380467(P2005−380467)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【分割の表示】特願平9−125718の分割
【原出願日】平成9年5月15日(1997.5.15)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【分割の表示】特願平9−125718の分割
【原出願日】平成9年5月15日(1997.5.15)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
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