ビーム型ファスナー
発明
作動手段(12)と、偏倚手段(12)と、可撓手段(16)を有するファスナー(10)を発明は提供する。可撓手段(16)は、可撓コア部(16)と一体のものでも良いが、好ましくはこれとは別個の係合手段(18)を有する。作動手段(12)は、形状記憶合金等の、起動時に収縮する材料を含む。この材料が収縮すると、係合手段(18)は係合位置と非係合位置の間を移動可能となる。偏倚手段(14)は可撓コア部(16)を係合位置に偏倚する。
作動手段(12)と、偏倚手段(12)と、可撓手段(16)を有するファスナー(10)を発明は提供する。可撓手段(16)は、可撓コア部(16)と一体のものでも良いが、好ましくはこれとは別個の係合手段(18)を有する。作動手段(12)は、形状記憶合金等の、起動時に収縮する材料を含む。この材料が収縮すると、係合手段(18)は係合位置と非係合位置の間を移動可能となる。偏倚手段(14)は可撓コア部(16)を係合位置に偏倚する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビーム型ファスナーの改良に関する。
【0002】
国際特許出願PCT/AU03/000759(以下、「国際出願」と云う)には、ビーム型ファスナーが開示されている。国際出願の内容を参考の形で、以下の本願明細書に挿入する。
【0003】
国際出願における開示の多くの部分が、以下に開示する本発明に適用可能であることを当業者は理解するであろう。
【背景技術】
【0004】
国際出願に開示されているビーム型ファスナーには、可撓ビーム及び係合手段を備える締結具と、締結具に取り付けられ、起動時に収縮するような材料を含んだ作動手段とが含まれている。材料が収縮すると、ビームは係合位置と非係合位置の間を移動可能になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
起動すると収縮するような材料は、好ましくは公知、且つ容易に入手可能なもの等の形状記憶合金である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
(イ)起動時に収縮するような材料を含む作動手段と、
(ロ)偏倚手段と、
(ハ)作動手段と偏倚手段の間に位置付けられ、且つ係合手段を有する可撓コア部とを含むファスナーであって、
係合手段は上記材料が収縮すると、係合位置と非係合位置の間で移動可能となり、偏倚手段は偏倚コア部を係合位置に偏倚するようにして成るファスナーを提供するものである。
【0007】
好ましくは、可撓コア部が作動手段を偏倚手段から実質的に絶縁するようにする。
【0008】
可撓コア部がプラスチック材料から成り、偏倚手段がスチール製板ばねであると良い。だが、発明はこれ等実施態様には限定されない。
【0009】
上記可撓コア部は国際出願における可撓ビームにある程度類似しているかも知れない。だが、可撓コア部は偏倚手段による偏倚があるため、可撓ビームに取り入れられる程度の構造強度をもつ必要のないことを当業者は理解するであろう。従って、本発明のファスナーは国際出願のビーム型ファスナーの改良と看做すことができるものの、国際出願のファスナーのビームと本発明のファスナーのコア部との間には好ましい相違点がある。
【0010】
一実施態様において、作動手段は打抜き形状記憶合金形材である。実施例が図面に示されている。もう1つの実施態様において、作動手段は一本又は複数本のストランド又はワイヤである。図面には、作動手段をU字形ワイヤとした例と、作動手段を形状記憶合金ワイヤとし、このワイヤが一回又は複数回戻って引張力を増大するようにした例が示されている。作動手段を複数本のワイヤとするのも、本発明の範囲内である。作動手段は図面に示すものとは異なる構成のものでも良い。
【0011】
係合手段は任意の形式とすることができる。例えば、係合手段を突出ウェッジとし、これが部材の壁に設けられた凹部に嵌合し、又は他の仕方で部材を所望の形状に保持するようにしても良い。他の形式の係合手段も本発明の範囲内である。例えば、係合手段はペグでも、グルーブでも、或いは国際出願の開示の形式のものでも良い。他の形状も可能である。
【0012】
係合手段は好ましくは、可撓コア部とは一体ではなく、別個である方が良い。この特徴を用いて、異なる形式の係合手段を異なる連結状況に容易に置き換えることができる。
【0013】
係合手段を係合位置から非係合位置に移動するとき、任意の適宜仕方で移動することができる。例えば、係合手段がコア部の一端に位置する場合、係合手段の係合位置から非係合位置への移動が円弧を描くようにすることができる。別の例として、作動手段の収縮により係合手段(及びコア部)が軸方向に移動し、係合手段が、それが締結している任意の部材との係合が外れる方向に移動するようにしても良い。
【0014】
好ましくは、作動手段が形状記憶合金から成るか、これを含み、この形状記憶合金が、電流の印加による作動時に、その温度が適宜の温度に上昇し、その結果収縮するようにする。この目的のためには、形状記憶合金をどのような仕方で電気接続しても良い。ファスナー作動のため、いずれかの電気的接続内に適宜のマイクロプロセッサを含むと好都合かも知れない。
【0015】
要すれば、本発明のファスナーは、ファスナー又はその一部を熱的に絶縁する手段を含むようにする。一例として、適宜の絶縁片又は絶縁層を作動手段又はファスナーの他の適宜部品に加え、形状記憶合金に印加される熱の制御を助けるようにする。
【0016】
本発明のファスナーは、温度過昇フェイルセーフ機構等の他の特徴を含むことができる。例示すると、ファスナーは、起動時に収縮するような材料を含む第2の作動手段を含むことができる。この実施態様では、第2の作動手段は、例えば70°Cの特定温度に達するとファスナーがロック1にロックされるように設計する。この場合、第1の作動手段は第2の作動手段によるロック効果に打ち克つ程度に強く、従って、ファスナーの非係合を要するとき、第1の作動手段は第2の作動手段のロック効果に拘わらず非係合をもたらすようにする必要がある。
【0017】
ファスナー又はその一部が、ファスナーが係合位置にあるか、非係合位置にあるかを表示する回路の一部を形成するようにすることも本発明の範囲内である。一例として、好適な実施例ではばね鋼板から成る偏倚手段は、ファスナーが締結しようとする部材上の導電性材料に接するように設計される。この板が導電材に電気接触していると、回路が完成する。電流をファスナーに加えて問い合わせし、板ばねが導電材に電気接触していれば、ファスナーが係合位置にあると云う報告を送れるようにする。逆に、ばね板が導電材に接していないため回路が完成しない場合、ファスナーが非係合位置にあると云う報告となる。
【0018】
係合又は非係合に関する問い合わせをする代わりに、電流を継続してファスナーに加え、ファスナーの係合又は非係合を常時表示することもできる。
【0019】
2つ以上のファスナーをこの状況で用いる場合、ファスナーの一部または全部が係合又は非係合位置にあるかどうかに関し報告することもできる。
【0020】
本発明のファスナーは単数又は複数で用いる場合、制御エリアネットワーク(CAN)等のネットワークを通して制御することができる。この制御を通して、個々のファスナーにアドレスし(各ファスナーが適宜のアドレス手段を含む)、所望の順序で係合、非係合させることができる。
【0021】
本発明のファスナーは、不正改変を表示するのに用いることができる。本発明のファスナーが例えば衛星大域測位(GPS)機器を締結するのに用いられ、ファスナーが正当な仕方によらず、無理やりに締結解除されようとする場合、ファスナーに対する接続違反により、機器のその環境以外での作動を阻止するように設計することができる。この特徴は盗難防止のための用いることができる。
【0022】
以下、図面を参照して本発明をその非限定実施態様に関連して、説明する。
【実施態様】
【0023】
先ず図1〜3を参照して、作動手段12が打抜き形材としての形状記憶合金(SMA)から成るファスナー10aを示す。薄い(0.5mm下)打抜き電気めっきばね鋼ばね板である偏倚手段14は可撓コア部16の片側に位置付けられ、SMA形材12は他の側に位置付けられる。この配置はサンドイッチを形成する一方、SMA形材12は板ばね14からコア部16により隔てられている。
【0024】
可撓コア部16は、射出成型により製造され、ガラス10%充填のナイロンから成る1mmの塑造物である。コア部16は一端に係合手段18を有する。図3で分かるように、係合手段18は突出ウェッジの形式のものであり、部材(図示しない)に嵌合してこれを保持できるようになっている。
【0025】
SMAが収縮すると、ウェッジ18は係合位置と非係合位置の間を移動可能になる。板ばね14はウェッジ18を、この実施態様では図1〜3に示す係合位置に偏倚している。
【0026】
SMA形材12は図2に2つのレッグ24,26を有し、それ等の間に間隙28を形成するものとして示されている。コア部16は6つの成形凸部30と6つの延長部32とを、何れも形材12をコア部16に固定するために含んでいる。凸部30と延長部32により、以下更に述べるように形材12の収縮が生じたら形材12はコア部16に対して滑り動けるのを可能にしている。
【0027】
板ばね14にはタング20が含まれ、コア部16の開口(これ等の図では見えない)を通してSMA形材12の相補スロット22に嵌合している。
【0028】
2つの金フラッシュメッキ黄銅取付ピン34が板ばね14の各々、コア部16及びSMA形材12を貫通している。各ピン34はプラスチック製固定板36(図1参照)により板ばね14から適宜電気的に絶縁されるようにする。各ピン34は打抜き金フラッシュメッキ黄銅円形スリーブ38によりSMA形材12と電気的に接続されている。
【0029】
タング20とスロット22(サンドウィッチするコア部16)とが嵌合し、凸部30及び延長部32とレッグ24及び26とが嵌合し、ピン34が組立品にインサートされると、ファスナー10aは堅固に一体固定される。
【0030】
ピン34は適宜のASICベースコントローラPWA(図示しない)に接続されている。SMA形材12は作動すると収縮し、ファスナー10a(並びにウェッジ18)を、図3を参照して、右に引き寄せる。従って、ウェッジ18は引っ張られて、締結しようとする部材との係合が外れる。解放及び冷却のもとに、板ばね14はSMA形材12を再偏倚し、ファスナー10aを係合位置に押し戻す。
【0031】
レッグ24及び26の各々の大きさが約4.0x0.2mmであれば、SMA形材12の強度は8/1000インチのワイヤ約50本のものと等しくなる。180Mpaでは、SMA形材12は約294Nの引張力を提供することになる。
【0032】
次に、図4〜11の実施態様に付いて述べる。これ等の図の記述に際し、同一参照番号は同一又は類似部分を指すのに用いられる。
【0033】
図4において、図1〜3と同様、ファスナー10bはSMA形材12と板ばね14とコア部16を有する。SMA形材12には2本のレッグ24及び26があって、両者間に間隙28を形成している。板ばね14にはタング20が含まれ、コア部16の開口を通ってSMA形材12の相補スロット22に嵌合している。
【0034】
コア部16の一部は、凸部30と延長部32が見えるように破断図で示されている。
【0035】
ウェッジ18の代わりにコア部16が他形式の係合手段、例えばペグ46(図5)、ランプ48又はグルーブ50(図6)又は「逆ウェッジ」52等を有するようにしても良い。これ等は適切な係合手段多種のうち一部である。
【0036】
この実施態様における取付ピン34には、かかり42(一部にのみ符号)及び通電端子44が設けられている。かかり42はファスナー10の部品を固定するのを助ける。取付ピン34は固定板36、ばね板14、コア部16及びSMA形材12を貫通してから、通電コネクタ56に接続する台部54に入るようになっている。
【0037】
コネクタ56はサイドケーブル58を有するものとして示されている。もう1つの通電ケーブルを図9に、コネクタ60後部にケーブル58を有するものとして示す。
【0038】
もう1つの配置を図8に示す。図8では、SMA形材12の各レッグ24、26はフットがコネクタ66のスロット64に嵌入するようにテーパー状62になっていると共に、基部にケーブル58を有している。
【0039】
次に図10に関して、この実施態様では電気回路68はファスナー10bがデフォルト(係合)位置にあるようにオフとしてある。ウェッジ18(一部を破線で示す)が部材(図示しない)に係合しようとしている。回路68がオンとなると、図11に示すようにSMA形材12は収縮し、ウェッジ18を図10の係合位置から図11の非係合位置に引っ張るが、ウェッジ18の移動は円弧を描くようになっている。
【0040】
図10において、板ばね14は係合位置ではファスナー10bが概してフラットになるように設計されている。ファスナー10bはSMA形材12の起動時に図11に示すように凹状に湾曲している。板ばね14がファスナー10に静止(係合位置)時に凸形状を取らせ、SMA形材12の起動時に一般にフラット形状になるように引かれるようにすることも本発明の範囲内である。
【0041】
また、SMA形材12の起動後の収縮が、図11に示すようにファスナー10bを巻き戻すのではなく、上記のように凸形状からフラット形状に移動するように軸方向に生じるようにすることも本発明の範囲内である。軸方向収縮において、SMA形材12は短くなって、図4に矢印70で示された寸法に縮小が生じるようになる。タング20が開口40を通ってスロット22に係合するため、コア部16と板ばね14は取付ピン34に向かって下方に押し動かされるようになる。(コア部16及び板ばね14に設けられた開口72(その中、2つのみ符号付与)はこの目的のために引き伸ばされる必要があろう。)ウェッジ18は図4で下方に移動し、それが係合している部材との係合が外れる。
【0042】
次に図12〜18に示す第3の実施態様に関し、上記と同様に、これら図の説明に際し、同一参照番号が同一又は類似部品に付き用いられる。
【0043】
図12〜18において、ファスナー10cは板ばね14とプラスチック製針16で表されたコア部を有している。だが、本実施態様では、SMA形材12の代わりにファスナー10cはSMAワイヤ82(図16、17及び18参照)を有している。本実施態様においては、SMAワイヤがU字形を形成する0.020インチのワイヤであって、公称合成力72.24Nを提供できるようにしている。板ばね14の厚みは好ましくは0.012インチ又は0.015インチである。
【0044】
本実施態様では、係合手段78は、図12、13及び18に示す、一対の開口74を有する5.00mmのポストクリップの形を取っている。開口74は、係合手段78を板ばね14及びスピンドル76にスピンドルネジ80により取り付けるためのものである。スピンドル76は好ましくは射出成型プラスチックから成り、コア部16と同一材料のものであって、図16、17及び18において見られる。
【0045】
スピンドル76はまた、図16及び17に最もよく見られるように、SMAワイヤ82に関連して用いられて、SMAワイヤ82の収縮中に等化を与える。
【0046】
可撓コア部/プラスチック針16には延長部32が含まれ、この実施態様ではSMAワイヤ82を捕獲し、実質的に保護するのを助けている。
【0047】
プラスチック固定板36は、取付及び接触ピン34を受容する開口84を有している。板ばね14には、コア部16の開口72に対応する開口72が設けられている。
【0048】
ファスナー10cには、開口86を有する一対の固定板又は台54が備わる。接触ピン34は板36の開口84、板ばね14の開口72、コア部16の開口72及び板54の開口86を貫通する。その場合、円筒ナット88、座金90及びナット92を用いて接触ピン34を組立品に固定する。
【0049】
本実施態様では、接触ピン34は向きが固定され、0.64mmx0.64mmのピン端部94の組立と軸合わせを容易にしている。接触ピン34はピッチ5.08mmを有して、これ等ピン端部に標準型コネクタ(図示していない)を取付けるために設定されている。
【0050】
固定板54には、SMAワイヤ82を収容するチャネル96が備わる。SMAワイヤ82の寸法を、例えば0.020インチから0.015インチに変更が望まれる場合、固定板54及びチャネル96の寸法には小さな変更を加えるのみで良い。0.015インチのSMAワイヤは公称合成引張力40Nを提供できる。
【0051】
第3の実施態様が上記の寸法で提供されるとき、係合手段78は2.5mmで「オーバーハング」する。
【0052】
この第3の実施態様では特に、最小部品のみで良く、大量生産に容易に適合可能なことが理解されるであろう。
【0053】
次に図19に示す実施態様に関して、係合手段78は逆オーバーハングのあるクリップ98で置き換えられている。
【0054】
同様に、図20では、第3の実施態様のクリップ78が、第3の実施態様の5.0mmクリップ78の代わりに3.0mmクリップ100で置き換えられている。
【0055】
図21では、クリップ78が2.4mmのフォワードクリップ102に置き換えられている。
【0056】
クリップ98、100及び102の各々はモジュラ形式のものであり、スピンドルネジ80によりファスナー10cに締結されて、容易にクリップ78と交換が可能であることが当業者に理解されるであろう。
【0057】
次に図22に移って、第1及び第2実施態様におけるSMA形材12、又はU字形SMAワイヤ82の代わりに、第3実施態様のものの殆ど2倍の長さのSMAワイヤ104をファスナー10dは有している。第4実施態様では、SMAワイヤ104は第1のスピンドル76a、第2のスピンドル76bおよび第3のスピンドル76cに巻かれてから、ファスナー10dの基部106に戻るようになっている。スピンドル76bを収容するため、接触ピン34は前実施例のように横に並んでではなく、上下に配置されている。この実施態様では、SMAワイヤ104は0.015インチのSMAワイヤを用いて80Nのプルダウンを提供している。
【0058】
ファスナー10dを所定位置に示す図23及び24では、部品一部が点線で示されている。図23で見られるように、ファスナー10dは、ファスナー10dが固定された部材108〜110に係合する。ファスナー10dがSMAを加熱して起動すると、オーバーハング112は部材108との係合が解かれるように引かれて、部材108を部材110から開放する。部材110は例えば機器パネル上の機器又は車両内のラジオ又はCDプレーヤーで良く、部材108はフレーム又は台を表している。ファスナー10dは係合位置では視野から隠されていることが分かる。
【0059】
次に、図25に示す第5実施態様に関して、この実施態様はファスナー10eが温度過昇ファイルセーフ機構を備える以外は前の4実施態様と類似する。ファスナー10eは取付ピン34が横並びではなく、第4実施態様のように上下に設けられるように示されているが、この原理は記載した実施態様の何れにも適用可能である。
【0060】
環境によっては、周囲温度は、例えば夏季の太陽直下のような閉鎖車両内では比較的高くなることがある。そのような状況下では、本発明のファスナーが意図せず締結解除されないようにするのが望ましい。本実施態様では、本発明のファスナーは第2の作動手段114を備え、これが第2の可撓コア部116により組立品に固定されるようにする。図4の実施態様では、第2の作動手段114は「引張」力が作動手段82のものより小さいSMAワイヤの形を取っている。それ以外の場合には、第2の可撓コア部116と第2の作動手段114を前記のものを改作するようにする。
【0061】
本実施態様では、第2の作動手段114の温度が(この例の場合)70℃に達すると、第2の作動手段114が収縮して、ファスナー10eを図示のロック位置にロックする。ファスナー10eを締結解除するには、先ず作動手段82を(より高い)所望温度に加熱し、次いでそのより勝る引張力のため第1の作動手段82が収縮して、係合手段18を部材(図示しない)との接触を解く方向に引っ張り、部材から外れると同時に、第2の作動手段114の引張力に打ち克つようにする。
産業上の適用可能性
【0062】
諸技術における当業者により容易に理解されるように、ここに開示の発明は上記実施例には限定されることなく、多くの分野で広範な応用が可能である。本発明は特にビーム型ファスナーに関連して、締結及び締結解除の技術における重要な進歩を表すものである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明によるファスナーの第1の実施態様の前側面図である。
【図2】同実施態様の後側面図である。
【図3】図2の線A−Aに沿った断面図である。
【図4】図1〜3のものと多くの点で類似する本発明の第2実施態様の分解組立図である。
【図5】係合手段の実施態様を示す。
【図6】係合手段の実施態様を示す。
【図7】係合手段の実施態様を示す。
【図8】電気コネクタの異なる実施態様を示す。
【図9】電気コネクタの異なる実施態様を示す。
【図10】係合位置にある図4のファスナーを横側面図で示す。
【図11】非係合位置にある同じ実施態様を示す。
【図12】本発明の第3実施態様の横斜視図である。
【図13】図12の実施態様を上斜視図で示す。
【図14】図12の実施態様を端斜視図で示す。
【図15】図14のもとの同様の図であるが、第3実施態様を下から見た端斜視図で示す。
【図16】第3実施態様を下から見た斜視図で示す。
【図17】第3実施態様を上から見た斜視図で示す(図13と同様だが、ファスナーの一部を切断して詳細を示す)。
【図18】図12〜17に示す第3実施態様の分解組立図である。
【図19】図12と同様の図で、別種の係合手段で置き換えたものを示す。
【図20】図12と同様の図で、更に別種の係合手段で置き換えたものを示す。
【図21】図12と同様の図で、更にまた別種の係合手段を示す。
【図22】第3実施態様とは形状の異なる形状記憶合金を示す本発明の第4実施態様の下平面図である。
【図23】係合位置にある、所定位置の第4実施態様を横側面図で示す。
【図24】所定位置にある、図22及び23のファスナーの下面図である。
【図25】温度過昇フェイルセーフ機構を含む本発明の第5実施態様の横側面図である。
【技術分野】
【0001】
本発明はビーム型ファスナーの改良に関する。
【0002】
国際特許出願PCT/AU03/000759(以下、「国際出願」と云う)には、ビーム型ファスナーが開示されている。国際出願の内容を参考の形で、以下の本願明細書に挿入する。
【0003】
国際出願における開示の多くの部分が、以下に開示する本発明に適用可能であることを当業者は理解するであろう。
【背景技術】
【0004】
国際出願に開示されているビーム型ファスナーには、可撓ビーム及び係合手段を備える締結具と、締結具に取り付けられ、起動時に収縮するような材料を含んだ作動手段とが含まれている。材料が収縮すると、ビームは係合位置と非係合位置の間を移動可能になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
起動すると収縮するような材料は、好ましくは公知、且つ容易に入手可能なもの等の形状記憶合金である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
(イ)起動時に収縮するような材料を含む作動手段と、
(ロ)偏倚手段と、
(ハ)作動手段と偏倚手段の間に位置付けられ、且つ係合手段を有する可撓コア部とを含むファスナーであって、
係合手段は上記材料が収縮すると、係合位置と非係合位置の間で移動可能となり、偏倚手段は偏倚コア部を係合位置に偏倚するようにして成るファスナーを提供するものである。
【0007】
好ましくは、可撓コア部が作動手段を偏倚手段から実質的に絶縁するようにする。
【0008】
可撓コア部がプラスチック材料から成り、偏倚手段がスチール製板ばねであると良い。だが、発明はこれ等実施態様には限定されない。
【0009】
上記可撓コア部は国際出願における可撓ビームにある程度類似しているかも知れない。だが、可撓コア部は偏倚手段による偏倚があるため、可撓ビームに取り入れられる程度の構造強度をもつ必要のないことを当業者は理解するであろう。従って、本発明のファスナーは国際出願のビーム型ファスナーの改良と看做すことができるものの、国際出願のファスナーのビームと本発明のファスナーのコア部との間には好ましい相違点がある。
【0010】
一実施態様において、作動手段は打抜き形状記憶合金形材である。実施例が図面に示されている。もう1つの実施態様において、作動手段は一本又は複数本のストランド又はワイヤである。図面には、作動手段をU字形ワイヤとした例と、作動手段を形状記憶合金ワイヤとし、このワイヤが一回又は複数回戻って引張力を増大するようにした例が示されている。作動手段を複数本のワイヤとするのも、本発明の範囲内である。作動手段は図面に示すものとは異なる構成のものでも良い。
【0011】
係合手段は任意の形式とすることができる。例えば、係合手段を突出ウェッジとし、これが部材の壁に設けられた凹部に嵌合し、又は他の仕方で部材を所望の形状に保持するようにしても良い。他の形式の係合手段も本発明の範囲内である。例えば、係合手段はペグでも、グルーブでも、或いは国際出願の開示の形式のものでも良い。他の形状も可能である。
【0012】
係合手段は好ましくは、可撓コア部とは一体ではなく、別個である方が良い。この特徴を用いて、異なる形式の係合手段を異なる連結状況に容易に置き換えることができる。
【0013】
係合手段を係合位置から非係合位置に移動するとき、任意の適宜仕方で移動することができる。例えば、係合手段がコア部の一端に位置する場合、係合手段の係合位置から非係合位置への移動が円弧を描くようにすることができる。別の例として、作動手段の収縮により係合手段(及びコア部)が軸方向に移動し、係合手段が、それが締結している任意の部材との係合が外れる方向に移動するようにしても良い。
【0014】
好ましくは、作動手段が形状記憶合金から成るか、これを含み、この形状記憶合金が、電流の印加による作動時に、その温度が適宜の温度に上昇し、その結果収縮するようにする。この目的のためには、形状記憶合金をどのような仕方で電気接続しても良い。ファスナー作動のため、いずれかの電気的接続内に適宜のマイクロプロセッサを含むと好都合かも知れない。
【0015】
要すれば、本発明のファスナーは、ファスナー又はその一部を熱的に絶縁する手段を含むようにする。一例として、適宜の絶縁片又は絶縁層を作動手段又はファスナーの他の適宜部品に加え、形状記憶合金に印加される熱の制御を助けるようにする。
【0016】
本発明のファスナーは、温度過昇フェイルセーフ機構等の他の特徴を含むことができる。例示すると、ファスナーは、起動時に収縮するような材料を含む第2の作動手段を含むことができる。この実施態様では、第2の作動手段は、例えば70°Cの特定温度に達するとファスナーがロック1にロックされるように設計する。この場合、第1の作動手段は第2の作動手段によるロック効果に打ち克つ程度に強く、従って、ファスナーの非係合を要するとき、第1の作動手段は第2の作動手段のロック効果に拘わらず非係合をもたらすようにする必要がある。
【0017】
ファスナー又はその一部が、ファスナーが係合位置にあるか、非係合位置にあるかを表示する回路の一部を形成するようにすることも本発明の範囲内である。一例として、好適な実施例ではばね鋼板から成る偏倚手段は、ファスナーが締結しようとする部材上の導電性材料に接するように設計される。この板が導電材に電気接触していると、回路が完成する。電流をファスナーに加えて問い合わせし、板ばねが導電材に電気接触していれば、ファスナーが係合位置にあると云う報告を送れるようにする。逆に、ばね板が導電材に接していないため回路が完成しない場合、ファスナーが非係合位置にあると云う報告となる。
【0018】
係合又は非係合に関する問い合わせをする代わりに、電流を継続してファスナーに加え、ファスナーの係合又は非係合を常時表示することもできる。
【0019】
2つ以上のファスナーをこの状況で用いる場合、ファスナーの一部または全部が係合又は非係合位置にあるかどうかに関し報告することもできる。
【0020】
本発明のファスナーは単数又は複数で用いる場合、制御エリアネットワーク(CAN)等のネットワークを通して制御することができる。この制御を通して、個々のファスナーにアドレスし(各ファスナーが適宜のアドレス手段を含む)、所望の順序で係合、非係合させることができる。
【0021】
本発明のファスナーは、不正改変を表示するのに用いることができる。本発明のファスナーが例えば衛星大域測位(GPS)機器を締結するのに用いられ、ファスナーが正当な仕方によらず、無理やりに締結解除されようとする場合、ファスナーに対する接続違反により、機器のその環境以外での作動を阻止するように設計することができる。この特徴は盗難防止のための用いることができる。
【0022】
以下、図面を参照して本発明をその非限定実施態様に関連して、説明する。
【実施態様】
【0023】
先ず図1〜3を参照して、作動手段12が打抜き形材としての形状記憶合金(SMA)から成るファスナー10aを示す。薄い(0.5mm下)打抜き電気めっきばね鋼ばね板である偏倚手段14は可撓コア部16の片側に位置付けられ、SMA形材12は他の側に位置付けられる。この配置はサンドイッチを形成する一方、SMA形材12は板ばね14からコア部16により隔てられている。
【0024】
可撓コア部16は、射出成型により製造され、ガラス10%充填のナイロンから成る1mmの塑造物である。コア部16は一端に係合手段18を有する。図3で分かるように、係合手段18は突出ウェッジの形式のものであり、部材(図示しない)に嵌合してこれを保持できるようになっている。
【0025】
SMAが収縮すると、ウェッジ18は係合位置と非係合位置の間を移動可能になる。板ばね14はウェッジ18を、この実施態様では図1〜3に示す係合位置に偏倚している。
【0026】
SMA形材12は図2に2つのレッグ24,26を有し、それ等の間に間隙28を形成するものとして示されている。コア部16は6つの成形凸部30と6つの延長部32とを、何れも形材12をコア部16に固定するために含んでいる。凸部30と延長部32により、以下更に述べるように形材12の収縮が生じたら形材12はコア部16に対して滑り動けるのを可能にしている。
【0027】
板ばね14にはタング20が含まれ、コア部16の開口(これ等の図では見えない)を通してSMA形材12の相補スロット22に嵌合している。
【0028】
2つの金フラッシュメッキ黄銅取付ピン34が板ばね14の各々、コア部16及びSMA形材12を貫通している。各ピン34はプラスチック製固定板36(図1参照)により板ばね14から適宜電気的に絶縁されるようにする。各ピン34は打抜き金フラッシュメッキ黄銅円形スリーブ38によりSMA形材12と電気的に接続されている。
【0029】
タング20とスロット22(サンドウィッチするコア部16)とが嵌合し、凸部30及び延長部32とレッグ24及び26とが嵌合し、ピン34が組立品にインサートされると、ファスナー10aは堅固に一体固定される。
【0030】
ピン34は適宜のASICベースコントローラPWA(図示しない)に接続されている。SMA形材12は作動すると収縮し、ファスナー10a(並びにウェッジ18)を、図3を参照して、右に引き寄せる。従って、ウェッジ18は引っ張られて、締結しようとする部材との係合が外れる。解放及び冷却のもとに、板ばね14はSMA形材12を再偏倚し、ファスナー10aを係合位置に押し戻す。
【0031】
レッグ24及び26の各々の大きさが約4.0x0.2mmであれば、SMA形材12の強度は8/1000インチのワイヤ約50本のものと等しくなる。180Mpaでは、SMA形材12は約294Nの引張力を提供することになる。
【0032】
次に、図4〜11の実施態様に付いて述べる。これ等の図の記述に際し、同一参照番号は同一又は類似部分を指すのに用いられる。
【0033】
図4において、図1〜3と同様、ファスナー10bはSMA形材12と板ばね14とコア部16を有する。SMA形材12には2本のレッグ24及び26があって、両者間に間隙28を形成している。板ばね14にはタング20が含まれ、コア部16の開口を通ってSMA形材12の相補スロット22に嵌合している。
【0034】
コア部16の一部は、凸部30と延長部32が見えるように破断図で示されている。
【0035】
ウェッジ18の代わりにコア部16が他形式の係合手段、例えばペグ46(図5)、ランプ48又はグルーブ50(図6)又は「逆ウェッジ」52等を有するようにしても良い。これ等は適切な係合手段多種のうち一部である。
【0036】
この実施態様における取付ピン34には、かかり42(一部にのみ符号)及び通電端子44が設けられている。かかり42はファスナー10の部品を固定するのを助ける。取付ピン34は固定板36、ばね板14、コア部16及びSMA形材12を貫通してから、通電コネクタ56に接続する台部54に入るようになっている。
【0037】
コネクタ56はサイドケーブル58を有するものとして示されている。もう1つの通電ケーブルを図9に、コネクタ60後部にケーブル58を有するものとして示す。
【0038】
もう1つの配置を図8に示す。図8では、SMA形材12の各レッグ24、26はフットがコネクタ66のスロット64に嵌入するようにテーパー状62になっていると共に、基部にケーブル58を有している。
【0039】
次に図10に関して、この実施態様では電気回路68はファスナー10bがデフォルト(係合)位置にあるようにオフとしてある。ウェッジ18(一部を破線で示す)が部材(図示しない)に係合しようとしている。回路68がオンとなると、図11に示すようにSMA形材12は収縮し、ウェッジ18を図10の係合位置から図11の非係合位置に引っ張るが、ウェッジ18の移動は円弧を描くようになっている。
【0040】
図10において、板ばね14は係合位置ではファスナー10bが概してフラットになるように設計されている。ファスナー10bはSMA形材12の起動時に図11に示すように凹状に湾曲している。板ばね14がファスナー10に静止(係合位置)時に凸形状を取らせ、SMA形材12の起動時に一般にフラット形状になるように引かれるようにすることも本発明の範囲内である。
【0041】
また、SMA形材12の起動後の収縮が、図11に示すようにファスナー10bを巻き戻すのではなく、上記のように凸形状からフラット形状に移動するように軸方向に生じるようにすることも本発明の範囲内である。軸方向収縮において、SMA形材12は短くなって、図4に矢印70で示された寸法に縮小が生じるようになる。タング20が開口40を通ってスロット22に係合するため、コア部16と板ばね14は取付ピン34に向かって下方に押し動かされるようになる。(コア部16及び板ばね14に設けられた開口72(その中、2つのみ符号付与)はこの目的のために引き伸ばされる必要があろう。)ウェッジ18は図4で下方に移動し、それが係合している部材との係合が外れる。
【0042】
次に図12〜18に示す第3の実施態様に関し、上記と同様に、これら図の説明に際し、同一参照番号が同一又は類似部品に付き用いられる。
【0043】
図12〜18において、ファスナー10cは板ばね14とプラスチック製針16で表されたコア部を有している。だが、本実施態様では、SMA形材12の代わりにファスナー10cはSMAワイヤ82(図16、17及び18参照)を有している。本実施態様においては、SMAワイヤがU字形を形成する0.020インチのワイヤであって、公称合成力72.24Nを提供できるようにしている。板ばね14の厚みは好ましくは0.012インチ又は0.015インチである。
【0044】
本実施態様では、係合手段78は、図12、13及び18に示す、一対の開口74を有する5.00mmのポストクリップの形を取っている。開口74は、係合手段78を板ばね14及びスピンドル76にスピンドルネジ80により取り付けるためのものである。スピンドル76は好ましくは射出成型プラスチックから成り、コア部16と同一材料のものであって、図16、17及び18において見られる。
【0045】
スピンドル76はまた、図16及び17に最もよく見られるように、SMAワイヤ82に関連して用いられて、SMAワイヤ82の収縮中に等化を与える。
【0046】
可撓コア部/プラスチック針16には延長部32が含まれ、この実施態様ではSMAワイヤ82を捕獲し、実質的に保護するのを助けている。
【0047】
プラスチック固定板36は、取付及び接触ピン34を受容する開口84を有している。板ばね14には、コア部16の開口72に対応する開口72が設けられている。
【0048】
ファスナー10cには、開口86を有する一対の固定板又は台54が備わる。接触ピン34は板36の開口84、板ばね14の開口72、コア部16の開口72及び板54の開口86を貫通する。その場合、円筒ナット88、座金90及びナット92を用いて接触ピン34を組立品に固定する。
【0049】
本実施態様では、接触ピン34は向きが固定され、0.64mmx0.64mmのピン端部94の組立と軸合わせを容易にしている。接触ピン34はピッチ5.08mmを有して、これ等ピン端部に標準型コネクタ(図示していない)を取付けるために設定されている。
【0050】
固定板54には、SMAワイヤ82を収容するチャネル96が備わる。SMAワイヤ82の寸法を、例えば0.020インチから0.015インチに変更が望まれる場合、固定板54及びチャネル96の寸法には小さな変更を加えるのみで良い。0.015インチのSMAワイヤは公称合成引張力40Nを提供できる。
【0051】
第3の実施態様が上記の寸法で提供されるとき、係合手段78は2.5mmで「オーバーハング」する。
【0052】
この第3の実施態様では特に、最小部品のみで良く、大量生産に容易に適合可能なことが理解されるであろう。
【0053】
次に図19に示す実施態様に関して、係合手段78は逆オーバーハングのあるクリップ98で置き換えられている。
【0054】
同様に、図20では、第3の実施態様のクリップ78が、第3の実施態様の5.0mmクリップ78の代わりに3.0mmクリップ100で置き換えられている。
【0055】
図21では、クリップ78が2.4mmのフォワードクリップ102に置き換えられている。
【0056】
クリップ98、100及び102の各々はモジュラ形式のものであり、スピンドルネジ80によりファスナー10cに締結されて、容易にクリップ78と交換が可能であることが当業者に理解されるであろう。
【0057】
次に図22に移って、第1及び第2実施態様におけるSMA形材12、又はU字形SMAワイヤ82の代わりに、第3実施態様のものの殆ど2倍の長さのSMAワイヤ104をファスナー10dは有している。第4実施態様では、SMAワイヤ104は第1のスピンドル76a、第2のスピンドル76bおよび第3のスピンドル76cに巻かれてから、ファスナー10dの基部106に戻るようになっている。スピンドル76bを収容するため、接触ピン34は前実施例のように横に並んでではなく、上下に配置されている。この実施態様では、SMAワイヤ104は0.015インチのSMAワイヤを用いて80Nのプルダウンを提供している。
【0058】
ファスナー10dを所定位置に示す図23及び24では、部品一部が点線で示されている。図23で見られるように、ファスナー10dは、ファスナー10dが固定された部材108〜110に係合する。ファスナー10dがSMAを加熱して起動すると、オーバーハング112は部材108との係合が解かれるように引かれて、部材108を部材110から開放する。部材110は例えば機器パネル上の機器又は車両内のラジオ又はCDプレーヤーで良く、部材108はフレーム又は台を表している。ファスナー10dは係合位置では視野から隠されていることが分かる。
【0059】
次に、図25に示す第5実施態様に関して、この実施態様はファスナー10eが温度過昇ファイルセーフ機構を備える以外は前の4実施態様と類似する。ファスナー10eは取付ピン34が横並びではなく、第4実施態様のように上下に設けられるように示されているが、この原理は記載した実施態様の何れにも適用可能である。
【0060】
環境によっては、周囲温度は、例えば夏季の太陽直下のような閉鎖車両内では比較的高くなることがある。そのような状況下では、本発明のファスナーが意図せず締結解除されないようにするのが望ましい。本実施態様では、本発明のファスナーは第2の作動手段114を備え、これが第2の可撓コア部116により組立品に固定されるようにする。図4の実施態様では、第2の作動手段114は「引張」力が作動手段82のものより小さいSMAワイヤの形を取っている。それ以外の場合には、第2の可撓コア部116と第2の作動手段114を前記のものを改作するようにする。
【0061】
本実施態様では、第2の作動手段114の温度が(この例の場合)70℃に達すると、第2の作動手段114が収縮して、ファスナー10eを図示のロック位置にロックする。ファスナー10eを締結解除するには、先ず作動手段82を(より高い)所望温度に加熱し、次いでそのより勝る引張力のため第1の作動手段82が収縮して、係合手段18を部材(図示しない)との接触を解く方向に引っ張り、部材から外れると同時に、第2の作動手段114の引張力に打ち克つようにする。
産業上の適用可能性
【0062】
諸技術における当業者により容易に理解されるように、ここに開示の発明は上記実施例には限定されることなく、多くの分野で広範な応用が可能である。本発明は特にビーム型ファスナーに関連して、締結及び締結解除の技術における重要な進歩を表すものである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明によるファスナーの第1の実施態様の前側面図である。
【図2】同実施態様の後側面図である。
【図3】図2の線A−Aに沿った断面図である。
【図4】図1〜3のものと多くの点で類似する本発明の第2実施態様の分解組立図である。
【図5】係合手段の実施態様を示す。
【図6】係合手段の実施態様を示す。
【図7】係合手段の実施態様を示す。
【図8】電気コネクタの異なる実施態様を示す。
【図9】電気コネクタの異なる実施態様を示す。
【図10】係合位置にある図4のファスナーを横側面図で示す。
【図11】非係合位置にある同じ実施態様を示す。
【図12】本発明の第3実施態様の横斜視図である。
【図13】図12の実施態様を上斜視図で示す。
【図14】図12の実施態様を端斜視図で示す。
【図15】図14のもとの同様の図であるが、第3実施態様を下から見た端斜視図で示す。
【図16】第3実施態様を下から見た斜視図で示す。
【図17】第3実施態様を上から見た斜視図で示す(図13と同様だが、ファスナーの一部を切断して詳細を示す)。
【図18】図12〜17に示す第3実施態様の分解組立図である。
【図19】図12と同様の図で、別種の係合手段で置き換えたものを示す。
【図20】図12と同様の図で、更に別種の係合手段で置き換えたものを示す。
【図21】図12と同様の図で、更にまた別種の係合手段を示す。
【図22】第3実施態様とは形状の異なる形状記憶合金を示す本発明の第4実施態様の下平面図である。
【図23】係合位置にある、所定位置の第4実施態様を横側面図で示す。
【図24】所定位置にある、図22及び23のファスナーの下面図である。
【図25】温度過昇フェイルセーフ機構を含む本発明の第5実施態様の横側面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)起動時に収縮するような材料を含む作動手段と、
(ロ)偏倚手段と、
(ハ)作動手段と偏倚手段との間に位置付けられ、且つ係合手段を有する可撓コア部とを含んでファスナーであって、
係合手段は上記材料が収縮すると、係合位置と非係合位置の間で移動可能となり、偏倚手段は偏倚コア部を係合位置に偏倚するようにして成るファスナー。
【請求項2】
可撓コア部が作動手段を偏倚手段から実質的に絶縁するようにして成る請求項1に記載のファスナー。
【請求項3】
可撓コア部がプラスチック材料から成る請求項1又は2に記載のファスナー。
【請求項4】
偏倚手段がスチール製板ばねである請求項1〜3の何れか1つに記載のファスナー。
【請求項5】
作動手段が打抜き形状記憶合金形材である請求項1〜4の何れか1つに記載のファスナー。
【請求項6】
作動手段が形状記憶合金ワイヤ一本又は複数本である請求項1〜4の何れか1つに記載のファスナー。
【請求項7】
係合手段がウェッジ、ペグ及び又はグルーブを含む請求項1〜6の何れか1つに記載のファスナー。
【請求項8】
係合手段が可撓コア部から別体である請求項1〜7の何れか1つに記載のファスナー。
【請求項9】
係合手段が係合位置にあるか、非係合位置にあるかをファスナーが表示するようにして成る請求項1〜8の何れか1つに記載のファスナー。
【請求項10】
第1の作動手段とは別に、この第1の作動手段のものと異なる温度で起動時に収縮する第2の作動手段が含まれる請求項1〜9の何れか1つに記載のファスナー。
【請求項11】
添付図面の図1〜3又は4又は5又は6又は7又は8又は9又は12〜18又は19又は20又は21又は22〜24又は25を参照して本明細書に実質的に記載されているファスナー。
【請求項1】
(イ)起動時に収縮するような材料を含む作動手段と、
(ロ)偏倚手段と、
(ハ)作動手段と偏倚手段との間に位置付けられ、且つ係合手段を有する可撓コア部とを含んでファスナーであって、
係合手段は上記材料が収縮すると、係合位置と非係合位置の間で移動可能となり、偏倚手段は偏倚コア部を係合位置に偏倚するようにして成るファスナー。
【請求項2】
可撓コア部が作動手段を偏倚手段から実質的に絶縁するようにして成る請求項1に記載のファスナー。
【請求項3】
可撓コア部がプラスチック材料から成る請求項1又は2に記載のファスナー。
【請求項4】
偏倚手段がスチール製板ばねである請求項1〜3の何れか1つに記載のファスナー。
【請求項5】
作動手段が打抜き形状記憶合金形材である請求項1〜4の何れか1つに記載のファスナー。
【請求項6】
作動手段が形状記憶合金ワイヤ一本又は複数本である請求項1〜4の何れか1つに記載のファスナー。
【請求項7】
係合手段がウェッジ、ペグ及び又はグルーブを含む請求項1〜6の何れか1つに記載のファスナー。
【請求項8】
係合手段が可撓コア部から別体である請求項1〜7の何れか1つに記載のファスナー。
【請求項9】
係合手段が係合位置にあるか、非係合位置にあるかをファスナーが表示するようにして成る請求項1〜8の何れか1つに記載のファスナー。
【請求項10】
第1の作動手段とは別に、この第1の作動手段のものと異なる温度で起動時に収縮する第2の作動手段が含まれる請求項1〜9の何れか1つに記載のファスナー。
【請求項11】
添付図面の図1〜3又は4又は5又は6又は7又は8又は9又は12〜18又は19又は20又は21又は22〜24又は25を参照して本明細書に実質的に記載されているファスナー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公表番号】特表2009−518830(P2009−518830A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543615(P2008−543615)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【国際出願番号】PCT/AU2006/001874
【国際公開番号】WO2007/068035
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(506311769)テレズィゴロジー インク (8)
【氏名又は名称原語表記】TELEZYGOLOGY INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【国際出願番号】PCT/AU2006/001874
【国際公開番号】WO2007/068035
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(506311769)テレズィゴロジー インク (8)
【氏名又は名称原語表記】TELEZYGOLOGY INC.
【Fターム(参考)】
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