ピグテールモジュール、光学機能ヘッドモジュール及びファイバレーザモジュール
【課題】出射ビームの断面形状をより円形に近い状態に維持するための構造を備えたピグテールファイバモジュールを提供する。
【解決手段】ピグテールファイバモジュール100Aは、ピグテールファイバ120と、フェルール110と、エンドキャップ140と接着剤150を備える。フェルール110の貫通孔111内には、端面120aにエンドキャップ140が取り付けられたピグテールファイバ120の先端部分が挿入され、エンドキャップ140の端面140aとフェルール110の第1端面110aが一致した状態で、フェルール110とピグテールファイバ120とが接着剤により固定される。また、貫通孔111は、接着剤で固定されている部分とクラッドとの平均的隙間((貫通孔の内径‐クラッド径)/2)が1μm未満となる内径を有する。
【解決手段】ピグテールファイバモジュール100Aは、ピグテールファイバ120と、フェルール110と、エンドキャップ140と接着剤150を備える。フェルール110の貫通孔111内には、端面120aにエンドキャップ140が取り付けられたピグテールファイバ120の先端部分が挿入され、エンドキャップ140の端面140aとフェルール110の第1端面110aが一致した状態で、フェルール110とピグテールファイバ120とが接着剤により固定される。また、貫通孔111は、接着剤で固定されている部分とクラッドとの平均的隙間((貫通孔の内径‐クラッド径)/2)が1μm未満となる内径を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピグテールファイバ(pigtail fiber)の一端にファイバ保持部材を備えたピグテールファイバモジュール、光学機能ヘッドモジュール及びファイバレーザモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、溶接、切断などの加工分野、医療分野、センシング分野等の種々の応用分野において、高出力光源が広く利用されている。また、光源とビーム照射される対象物とが離れた場所に位置する場合も多く、このような場合、光源からの光は、出力用光ファイバであるピグテールファイバを介して対象物に照射される。ピグテールファイバは、レーザ媒質の他、装置間における光接続を可能にする光伝送媒体でもあり、そのため、他の装置と接続可能にする構造を持つピグテールファイバで構成されたピグテールファイバモジュールは、レーザ加工装置の他、光コネクタ、検査装置等へも広く適用可能な光学部品の一つである。
【0003】
例えば特許文献1には、上述の出力用光ファイバ、装置間接続用光ファイバとしてラージモードエリアファイバ(LMAファイバ:Large Mode Area Fiber)が適用された装置が開示されている。このLMAファイバは、コア領域とクラッド領域が従来のシングルモード光ファイバのそれよりも実質的に大きい実効断面積が得られるよう構成された光ファイバである。特許文献1に記載の装置では、他の構成要素又は装置との結合を容易にするファイバ端末部の構造として、LMAファイバの端面に、ガラスロッド状あるいはコアのない光ファイバで構成されたスタブが、エンドキャップとして取り付けられたハイブリッド構造が採用されている。スタブは、LMAファイバの端面に融着接続のうえ端面処理(研磨等)されており、このスタブ端面がレーザ光などの光出射端面となっている。
【0004】
なお、一般的に、エンドキャップには、ガラスロッド、出力用光ファイバよりもコア径の大きな光ファイバ、コアのない光ファイバ等が適用可能であり、概ね数mm〜数十mmの長さを有する。また、その効果としては、エンドキャップ内でビーム(例えばレーザ光)を拡大させることにより、光出射端面における光パワー密度を下げることができ、その結果、光出射端面における光損傷の防止効果が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−146015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明者らは、フェルールが取り付けられたピグテールファイバモジュールについて検討を行った結果、以下のような課題を発見した。すなわち、ピグテールファイバがフェルール内に固定すると、ピグテールファイバからの光出力の強度分布が変化していた。光加工用のファイバレーザにおいては、出力光が単純にシングルモードであれば、良いというものではなく、特別な意図がなければ、本来の光強度分布を維持して出力されることが望ましい。今回確認された課題は、詳しく調べると、フェルールの貫通孔にピグテールファイバの先端部分を挿通した状態で固定する際に、熱硬化性樹脂を使用したことによるものであることが判明した。熱硬化性樹脂の硬化時の収縮応力が貫通孔の長手方向に変化し、ピグテールファイバにマイクロベンド応力が作用し、その結果、光ファイバ断面内の光出力の強度分布が変化していた。
【0007】
光ファイバ断面内での光出力の強度分布が崩れると、まず、エンドキャップから出射されるビームがガウス強度分布のビームから変形してしまう。すなわち、光ファイバ端面からの出射ビームの断面形状が円から崩れ、かつビーム強度分布(遠視野像、FFP:Far Field Pattern)がガウス強度分布から崩れてしまう。その結果、例えばレーザ加工装置などでは、加工対象物に照射されるビームスポットも円から崩れ、均質な加工ができなくなるということが発生する。なお、出射ビームの変形の問題を指摘したが、入射ビームを受光する際にも同様に歪むという課題がある。
【0008】
さらに、光ファイバ断面内での光出力の強度分布の形状が変化すると、光ファイバ端面からの出射ビームのビーム品質が劣化する。(光ファイバからの出射ビームの品質は、M2で表され、M2=πw0θ/4λである。w0は最小ビーム径、θは出射ビームの拡がり角、λはビームの波長を指す。出射ビームがSMのとき、M2=1となり、この状態を回折限界と呼ぶ。)その結果、加工対象物に照射されるビームスポットが回折限界時の値より大きくなり、高いビーム密度での加工が出来なくなるという課題もあった。なお、このような状況では、M2≒1.0で設計された回折型光学素子(DOE:DiffractiveOptical Elements)などの光学部品を用いても、所定の性能が得られないことになる。
【0009】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、出射ビームの断面形状をより円形に近い状態に維持するための構造を備えたピグテールファイバモジュール、光学機能ヘッドモジュール及びファイバレーザモジュールを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するため、本実施形態に係るピグテールファイバモジュールは、入/出力用光ファイバに適用可能なピグテールファイバと、一方の端面を含むピグテールファイバの先端部分に取り付けられたファイバ保持部材を備える。ピグテールファイバは、出力光をシングルモードで導波するコアと、その外周を囲むクラッドと、クラッド外周を囲む保護被覆とを有する。ファイバ保持部材は、クラッドを保持する貫通孔を有するフェルールを含む。クラッドは、フェルールの貫通孔内で、熱硬化性樹脂からなる接着剤により固定される。また、フェルールの貫通孔は、接着剤で固定されている部分の、クラッドとの隙間((貫通孔の内径‐クラッド径)/2)が1μm未満となる内径を有する。
【0011】
フェルールの貫通孔とピグテールファイバとの間隙には接着剤が充填されるため、このような間隙(接着剤層の厚み)が1μmを超えてくると、充填される接着剤の硬化収縮、熱収縮等に起因した光ファイバへ与えられる応力(主に曲げ応力)が大きくなる。したがって、このような間隙を1μm未満、より好ましくは0.5μm以下に抑えることで、充填される接着剤の収縮も少なくでき、その結果、光ファイバへ与えられる応力も効果的に抑制できる。
【0012】
フェルールの貫通孔のうちピグテールファイバが接着剤で固定されている部分は、平坦な形状であるのが好ましい。なお、本明細書において「平坦な形状」とは、貫通孔には「1μm以上の段差がない」ことを意味する。このように、本実施形態に係るピグテールファイバモジュールによれば、フェルールの貫通孔内に段差が存在しないため(フェルールの一方の端面から他方の端面に向かう方向に沿って貫通孔の孔径変動が一定範囲内に抑制されている)、当該フェルールの貫通孔内に挿入された、ピグテールファイバの先端部分への局所的な応力付加が効果的に避けられる。
【0013】
本実施形態に係るピグテールファイバモジュールにおいて、ピグテールファイバは、LMAファイバであるのが好ましい。当該ピグテールファイバの屈折率プロファイル改良は、通常のシングルモード光ファイバの屈折率プロファイル改良と比較して、本実施形態の構成による効果への影響がより大きくなるからである。
【0014】
また、本実施形態に係るピグテールファイバモジュールにおいて、ピグテールファイバの先端部分には、エンドキャップとして、ピグテールファイバからの出射光を拡散させて出射する出射用ファイバが接続されるのが好ましい。この場合、ピグテールファイバの先端部分はフェルール内に収容され、かつ、接着剤でフェルールに固定される。したがって、ピッグテールファイバの第1端と出射用ファイバの端部との接続部分は、フェルールの貫通孔内に位置することになる。なお、出射用光ファイバの外径は、ピグテールファイバのクラッド径以下であるのが好ましい。ピグテールファイバ先端部分の外径に対して出射用光ファイバの外径が大きいと、フェルール貫通孔の内径は出射用光ファイバの外径に依存して設計されることになる。この場合、ピグテールファイバ先端部分(フェルール貫通孔内に収納されている部分)に不要な応力が付加されることになる。そのため、フェルール貫通孔の孔径がピグテールファイバ先端部分の外径にのみ依存する構成が好ましい。
【0015】
エンドキャップとしての出射用ファイバは、コアレスファイバ又はピグテールファイバのコア径より大きなコア径の光ファイバであるのが好ましい。
【0016】
本実施形態に係る光学機能ヘッドモジュールは、上述のような構造を有するピグテールファイバモジュール(本実施形態に係るピグテールファイバモジュール)と、その出射端に光学的に結合された光学機能部品とを備える。なお、光学機能部品としては、例えば、光アイソレータ、非線形光学結晶、ビームエキスパンダ、コリメータなどの空間光学系等が適用可能である。
【0017】
さらに、本実施形態に係るファイバレーザモジュールは、上述のような構造を有するピグテールファイバモジュール(本実施形態に係るピグテールファイバモジュール)と、その入射端に光学的に結合されたレーザ光源とを備える。なお、レーザ光源としては、例えば、ファイバレーザ装置、固体レーザ等が適用可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る種々の実施形態よれば、片端にフェルールを取り付けられたピグテールファイバ、出射ビームの形状維持するにおいても、出射ビームの光強度分布の形状が入射時の状態を維持できるようにすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態に係るピグテールモジュールが適用可能なファイバレーザモジュール(本実施形態に係るファイバレーザモジュール)の一例の概略構成、及び、本実施形態に係る光学機能ヘッドモジュールの一例としての出射ヘッドの内部構造を示す図である。
【図2】本実施形態に係るピグテールファイバモジュールが適用可能な光コネクタの構成を示す切欠図である。
【図3】本実施形態に係るピグテールファイバモジュールの組み立て工程図である。
【図4】本実施形態に係るピグテールファイバモジュールの構造を示す断面図であり、図1(a)中の線I−Iに沿った断面に相当する。
【図5】本実施形態に係るピグテールファイバモジュールの他の構造例を示す断面図であり、図1(a)中の線I−Iに沿った断面に相当する。
【図6】第1比較例に係るピグテールファイバモジュールの構成を示す断面図であり、図1(a)中の線I−Iに沿った断面に相当する。
【図7】本実施形態に係る光学機能ヘッドモジュールの一例の概略構成を示すとともに、ピグテールファイバモジュールの光出射端面から対象物表面まで伝搬するビームの断面形状の、種々の条件に起因した変化を説明するための図である。
【図8】第2及び第3比較例に係るピグテールファイバモジュールの構造を示す断面図であり、図1(a)中の線I−Iに沿った断面に相当する。
【図9】本実施形態に係るピグテールファイバモジュール、第2比較例に係るピグテールファイバモジュール、第3比較例に係るピグテールファイバモジュールそれぞれを介して出射されたビームの遠視野像を示す写真である。
【図10】種々の強度分布を有する出射ビームについて、図7中の面S2及び面S3それぞれにおける強度分布の変化を説明するための写真である。
【図11】種々の強度分布を有する出射ビームについて、図7中の面S2上にDOEが配置されたときの面S1における強度分布の変化を説明するための写真である。
【図12】本実施形態に係るピグテールファイバモジュール及び第3比較例に係るピグテールファイバモジュールを介して出射された出射ビームの強度分布を説明するための図である。
【図13】本実施形態に係るピグテールファイバモジュール、第2比較例に係るピグテールファイバモジュール、及び第3比較例に係るピグテールファイバモジュールの複数サンプルについて、ガウス分布近似した曲線に対する実際の強度分布の決定係数(coefficient of determination)R2値の度数分布を示す図である。なお、決定係数とは、重相関係数(multiple correlation coefficient)Rの2乗値のことである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るピグテールファイバモジュール、ファイバレーザモジュール、及び光学機能ヘッドモジュールの各実施形態を、図1〜図13を参照しながら詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0021】
図1は、本実施形態に係るピグテールファイバモジュールが適用可能なファイバレーザモジュールの一例としてレーザ加工装置の概略構成、及び、本実施形態に係る光学機能ヘッドモジュールの一例としての出射ヘッドの内部構造を示す図である。図1(a)に示されたレーザ加工装置1は、レーザ光源10と、加工対象物へビーム(レーザ光)を出射する出射ヘッド300と、レーザ光源10から出射ヘッド300へレーザ光を導くための光ガイド(本実施形態に係るピグテールファイバモジュール)を備える。なお、レーザ光源10としては、例えば、ファイバレーザ装置、固体レーザ等が適用可能である。ピグテールファイバモジュール100は、光が伝搬するピグテールファイバと、ピグテールファイバの先端部分(当該ピグテールファイバの、その端面を含む部分)に取り付けられたファイバ保持部材と、ファイバ保持部材の外に露出しているピグテールファイバの外周面を覆う樹脂コート(保護被覆)から構成されている。
【0022】
また、図1(b)には、本実施形態に係る光学機能ヘッドモジュールの一例としての出射ヘッド300の内部構造、特にピグテールファイバモジュール100の一端を保持するための構造が示されている。この図1(b)は、図1(a)中の線I−Iに沿った当該ピグテールファイバモジュール100及び周辺部分の構造を示す断面図である。図1(b)に示されたように、出射ヘッド300は、出射されたビームの一部が照射対象物で散乱され、レーザ光源10側へ反射されるのを防止するため、光アイソレータ310とピグテールファイバモジュール100を保持した状態で、ピグテールファイバモジュール100と光アイソレータ310とを光学的に結合させるための保持部320を備える。保持部320内には、ピグテールファイバモジュール100から出射されたビームをコリメートするためのコリメータレンズ321が設けられている。なお、310は光アイソレータ以外の光学機能部品、例えば、非線形光学結晶、コリメータ、ビームエキスパンダでも良い。310がコリメータ、ビームエキスパンダの場合は、321は、なくても良い。
【0023】
本実施形態に係るピグテールファイバモジュール100は、先端部分を除くピグテールファイバ120の外周面上に樹脂コート130が設けられたピグテールファイバ120と、ピグテールファイバ120の端面に取り付けられたエンドキャップ140と、ピグテールファイバ120の先端部分とエンドキャップ140が貫通孔内に収納されたフェルール110(ファイバ保持部材)を備える。この構成により、ピグテールファイバ120とエンドキャップ140との接続部分は、フェルール110の貫通孔内に位置することになる。ピグテールファイ120は、コア121と、コア121の外周に設けられたクラッド122を備える。また、ピグテールファイバ120は、高パワー光の伝送に適したLMAファイバであるのが好ましい。エンドキャップ140は、ピグテールファイバ120におけるコア121の外径よりも大きな外径のコアを有する光ファイバ又はコア121の外径よりも大きな外径のロッド径を有するコアのない光ファイバ上のガラスロッド等のガラス材からなり、ピグテールファイバ120の端面に密着して配置され、出射光を拡光しつつ、ピグテールファイバ120の端面を保護する出射用光学部材である。
【0024】
なお、本実施形態に係るピグテールファイバモジュール100は、種々の装置間を接続する光コネクタへの適用も可能である。例えば、図2には、内部構造の主要部分が確認できるように本実施形態に係るピグテールファイバモジュール100が適用された光コネクタ2の切欠図が示されている。図2の光コネクタ2は、当該ピグテールファイバモジュール100のフェルール110を含む先端部分を、樹脂ヘッド20(保持部材320に相当し、内部に収納空間を有する)により覆うことで構成されている。樹脂ヘッドの材料は、樹脂に限定されず、金属(ステンレス、アルミなど)でも良い。樹脂ヘッド20に隣接する紡錘形状のものは、ゴムブーツで光ファイバを保護している。
【0025】
図3は、本実施形態に係るピグテールファイバモジュール100の組み立て工程図である。図3に示されたように、当該ピグテールファイバモジュール100は、主に3つのパーツから構成されている。すなわち、先端部分(貫通孔111への挿通部分)を除いた部分に樹脂コート130でその外周面が覆われたピグテールファイバ120と、エンドキャップ140と、フェルール110とにより当該ピグテールファイバモジュール100が構成される。ピグテールファイバ120は、コア121及びクラッド122を備え、その一端120aが光出射端面である。エンドキャップ140は例えばガラスロッド状の形状を有し、一方の端面140aがピグテールファイバ120内を伝搬してきた光を出射するための光出射端面となり、端面140aに対向する他方の端面140bが、ピグテールファイバ120の端面120aに当接する。ピグテールファイバ120とエンドキャップ140は、それぞれの端面120a、140bにおいて融着接続される。また、エンドキャップ140の端面140aは、該端面140aで反射された光がピグテールファイバ120内に戻らないように斜めカットされている。フェルール110は、エンドキャップ140の端面140aと同様に、斜めカットされた第1端面110aと、第1端面110aに対向する第2端面110bと、第1端面110aと第2端面110bを連絡する貫通孔111を備える。端面120aにエンドキャップ140が取り付けられたピグテールファイバ120の先端部分は、第2端面110bから第1端面110aに向かってフェルール110の貫通孔111内に挿入される。そして、エンドキャップ140の端面140aとフェルール110の第1端面110aとが一致した状態で、貫通孔111の内壁とピグテールファイバ120の先端部分の外周面との間隙に接着剤(図示せず)が充填された状態で、フェルール110がピグテールファイバ120の先端部分に取り付けられる。次に、接着剤が硬化することにより、ピグテールファイバ120の先端部分へのフェルール110の接着固定が完了すると、フェルール110の第1端面110aとエンドキャップ140の端面140aとの段差がなくなるように、これら端面110a、140aが一緒に研磨処理される。なお、接着剤は、貫通孔への樹脂注入のしやすさから、熱硬化樹脂が望ましい。
【0026】
図4は、以上の工程を経て得られた、本実施形態に係るピグテールファイバモジュールの構造を示す断面図である。なお、図4に示された断面図は、図1(a)中の線I−Iに沿った断面に相当する。
【0027】
図3に示された工程を経て得られたピグテールファイバモジュール100A(図4)は、フェルール110と、全体がフェルール110の貫通孔111内に収納されたエンドキャップ140と、樹脂コート130が剥がされた先端部分がフェルール110の貫通孔111内に挿入されたピグテールファイバ120を備える。
【0028】
フェルール110は、上述のように第1端面110aと、第1端面110aに対向する第2端面110bと、第1端面110aと第2端面110bとを連絡する貫通孔111を備える。また、フェルール110は、ジルコニア、ステンレス、アルミニウム、これらの合金等からなり、1.2mm〜5mmの外径を有する。貫通孔111の孔径は、挿入されるピグテールファイバ120の外径に依存して決定されるが、第1端面110aから第2端面までの当該フェルール全長に亘って一定である。さらに、第1端面110aは、光出射端面での反射光がピグテールファイバ120側へ戻るのを防ぐため、角度θ(最大で約8°)だけ斜めカットされている。
【0029】
フェルール110の貫通孔111内に全体が収納されたエンドキャップ140も、光出射端面となる一方の端面140aが、角度θ(最大で約8°)だけ斜めカットされており、研磨等により、この端面140aはフェルール110の第1端面110aと段差無しになっている。他方の端面140bはピグテールファイバ120の端面120aに融着接続されている。また、エンドキャップ140の最大長(貫通孔111の長手方向に沿った最大長)は、0.1mm〜1mmであり、その全長は、従来のエンドキャップと比較してかなり短く設定されている。
【0030】
フェルール110の貫通孔111内に第2端面110b側から第1端面110aに向かって先端部分が挿入されたピグテールファイバ120は、コア121とクラッド122を備える。クラッド径(ファイバ外径)は、125μm〜800μmであり、コア径は、5μm〜30μmである。本実施形態では、端面120aにおいて融着接続されたエンドキャップ140の外径もピグテールファイバ120のクラッド径に一致している。
【0031】
フェルール110の貫通孔111の孔径は、挿入されるピグテールファイバ120の先端部分と貫通孔111の内壁との間隙が0.5μm以下(外径差が1μm以下)になるように設計されている。例えば、クラッド径が125μmであれば、フェルール110の孔径は126μm以下に設計される。また、この間隙には接着剤150が充填されている。
【0032】
図5は、本実施形態に係るピグテールファイバモジュールの他の構造例を示す断面図であり、図1(a)中の線I−Iに沿った断面に相当する。上述の図4に示されたピグテールファイバモジュール100Aとは、フェルール110の貫通孔111内に収納されるエンドキャップの外径が異なる。すなわち、エンドキャップ141の外径は、フェルール110の貫通孔111内に挿通されたピグテールファイバ120のクラッド径(ファイバ外径)よりも小さく設計されている。
【0033】
図5の構成は、エンドキャップの外径が、ピグテールファイバ120のクラッド径より小さいとする構成である。そのため、フェルール110の貫通孔111の孔径が、ピグテールファイバ120のクラッド径にのみ依存するので、エンドキャップ141の導入の技術的効果(光出射端面141aでの光パワー密度を低減するという効果)を得ながら、ピグテールファイバ120の先端部分の外周面を覆う接着剤150の厚み(ピグテールファイバ120の先端部分と貫通孔111の内壁との間隙)を効果的に抑制できる。また、エンドキャップ部分で、接着剤の流れが邪魔される可能性が少なくなるため、ピグテールファイバ120の先端部分の外周面を覆う接着剤150の厚みが長手方向により均等となり、接着剤の硬化後の応力変動をより効果的に抑制できる。接着剤は、熱収縮、及び硬化収縮で、ピグテールファイバ120に対し応力を及ぼしている。
【0034】
なお、図6には、ピグテールファイバ120のクラッド外径とエンドキャップの外径との関係として好ましくない比較例が示されている。すなわち、図6は、第1比較例に係るピグテールファイバモジュールの構成を示す断面図であり、図1(a)中の線I−Iに沿った断面に相当する。
【0035】
図6に示された第1比較例に係るピグテールファイバモジュール200Aは、上述の図4に示されたピグテールファイバモジュール100Aとは、フェルール110の貫通孔111内に収納されるエンドキャップの外径が異なる。すなわち、エンドキャップ251の外径は、フェルール110の貫通孔111内に挿通されたピグテールファイバ120のクラッド径(ファイバ外径)よりも大きく設計されている。フェルール1100の貫通孔1110の孔径は、より大きい外径を有するエンドキャップ251に依存して設計されることになる。この場合、挿入されるピグテールファイバ120の先端部分の外周面には、エンドキャップ251の外径とクラッド径との差だけ余分な接着剤150が存在することになり、その分接着剤に起因する応力が増加する。また、接着剤の層が厚くなる分、円周方向での応力状態の不均衡が増大する。したがって、この図6の第1比較例では、ピグテールファイバ120にこれらの不要な応力が加えられ、該ピグテールファイバ120内のビーム伝搬が崩れてしまうことになる。
【0036】
以下、本実施形態の場合と上述の第1比較例の場合とで、加工対象物に照射されるビームの断面形状の変化を、図7を参照しながら説明する。なお、図7は、本実施形態に係る光学機能ヘッドモジュールの一例の概略構成を示すとともに、ピグテールファイバモジュールの光出射端面から対象物表面まで伝搬するビームの断面形状の、種々の条件に起因した変化を説明するための図である。
【0037】
図7には、ピグテールファイバモジュール100と、その出射端に光学的に結合された光学機能部品400とを備えた光学機能ヘッドモジュール300Aが示されている。光学機能部品400としては、図1(b)に示されたように、光アイソレータ310の他、非線形光学結晶、ビームエキスパンダ、コリメータなどの空間光学系等が適用可能である。図7に示された例では、光学機能部品400は、コリメートレンズL1及び集光レンズL2を備える。すなわち、ピグテールファイバモジュール100からビーム(例えば図1(a)のレーザ光源10から供給されたレーザ光)は、出射後所定角度で拡散していくが、コリメートレンズL1及び集光レンズL2で構成された光学系を通過することにより、最終的に、加工対象物の表面(加工面)S1上に集光される。
【0038】
なお、面S3上でのビーム形状を遠視野像(FFP)という。通常、出射ビームがシングルモード(M2=1)の場合、FFPは円形となり、その強度分布はガウス分布で表されるガウシアンビームとなる。
【0039】
しかしながら、出射ビームのFFPが円形から崩れると、コリメートレンズL1で平行光になった出射ビームの強度分布もガウス分布とはならなくなる。すなわち、面S2上における出射ビームの強度分布がガウス分布から崩れてしまう。この場合、出射ビームの強度分布がガウス分布で表されることを前提として設計されたDOEなどの光学部品では、予定された性能が発揮できなくなる。また、出射ビームのFFPが崩れると、加工面S1上に集光されたビームの強度分布も円形のガウス分布から崩れてしまい、均質な加工結果が得られなくなる。
【0040】
上述のように、フェルール内に収納されるピグテールファイバに応力が加わると、出射ビームの強度分布がガウス分布から崩れてしまい、均質なビームが得られないことが分かる。
【0041】
さらに、図8に、好ましくない例を示す。なお、図8は、第2及び第3比較例に係るピグテールファイバモジュールの構造を示す断面図であり、図1(a)中の線I−Iに沿った断面に相当する。
【0042】
図8(a)に示された第2比較例に係るピグテールファイバモジュール200Bは、上述の図4に示されたピグテールファイバモジュール100Aとは、フェルール110の貫通孔の孔径が異なる。すなわち、フェルール1200の孔径は、第1端面1200a側と第2端面1200b側で大きく異なっている。より具体的には、貫通孔1210には、第2端面1200b側に孔径が拡大された段差部1211が設けられている。この場合、挿入されるピグテールファイバ120の先端部分の外周面には、第2端面1200b側に存在する余分な接着剤150から応力が加わることになる。したがって、この図8(a)の第2比較例でも、ピグテールファイバ120に不要な応力が加えられ、ピグテールファイバ120内のビーム伝搬が崩れてしまうことになる。また、接着剤150から応力が加わると、ピグテールファイバはフェルール1200の孔の段差1210a部で局所的に応力を加えられることとなり、この部位での応力に起因するマイクロベンドによりさらにビーム伝播が崩れてしまう。
【0043】
また、図8(b)に示された第3比較例に係るピグテールファイバモジュール200Cは、上述の図4に示されたピグテールファイバモジュール100Aとは、フェルール110の貫通孔の孔径が異なる。すなわち、フェルール1300の孔径は、エンドキャップ140の外径やピグテールファイバ120のクラッド径に対して外径差が1μmを超えるよう(クラッド外周面と貫通孔内壁との間隙は0.5μmよりも大きい)、設計されている。この場合、挿入されるピグテールファイバ120の先端部分の外周面には、余分な接着剤150から余分な応力が加わることになる。これにより、ピグテールファイバ120内のビーム伝搬が崩れてしまう可能性が上昇する。
【0044】
図9は、上述の構造を有する本実施形態に係るピグテールファイバモジュール100A、第2比較例に係るピグテールファイバモジュール200B、第3比較例に係るピグテールファイバモジュール200Cそれぞれを介して出射されたビームのFFPを示す写真である。
【0045】
すなわち、図9(a)は、第2比較例に係るピグテールファイバモジュール200B、を介して出射されたビームのFFPを示す写真である。この図9(a)からも分かるように、第2比較例に係るピグテールファイバモジュール200Bの場合、出射ビームの強度分布は円形のガウス分布からは大きく崩れてしまう。
【0046】
図9(b)は、第3比較例に係るピグテールファイバモジュール200Cを介して出射されたビームのFFPを示す写真である。この第3比較例に係るピグテールファイバモジュール200Bでは、フェルール貫通孔の孔径は、127μmであり、挿入されたピグテールファイバのクラッド径は125μmである(外径差は2μm)。したがって、フェルール貫通孔の内壁と挿入されたピグテールファイバのクラッド外周面との間隙(接着剤層の厚み)は、1μmとなる。したがって、この第3比較例に係るピグテールファイバモジュール200Cの場合も、図9(b)からも分かるように、出射ビームの強度分布は円形のガウス分布からは大きく崩れてしまう。
【0047】
一方、図9(c)は、本実施形態に係るピグテールファイバモジュール100Aを介して出射されたビームのFFPを示す写真である。本実施形態に係るピグテールファイバモジュール100Aでは、フェルール貫通孔の内壁と挿入されたピグテールファイバのクラッド径との間隙は、0.5μmである。したがって、図9(c)からも分かるように、本実施形態に係るピグテールファイバモジュール100Aによれば、フェルール貫通孔に挿入されたピグテールファイバのクラッドに加わる応力(クラッド外周面上の接着剤層の収縮等に起因する曲げ応力)の影響はほとんど確認できず、より円形に近い強度分布の出射ビールが得られる。このことから、フェルール貫通孔の内壁と挿入されたピグテールファイバのクラッド径との許容間隙は、0.5μm〜1μmの間に実用上の境界が存在し、0μmよりも大きくかつ1μm未満であればよく、より好ましくは0μmよりも大きくかつ0.5μm以下である。
【0048】
さらに、図10は、種々の強度分布を有する出射ビームについて、図7中の面S2及び面S3それぞれにおける強度分布の変化を説明するための写真である。また、図11は、種々の強度分布を有する出射ビームについて、図7中の面S2上にDOEが配置されたときの面S1における強度分布の変化を説明するための写真である。なお、DOEは、出射ビームが平行ビームとしてフラットトップなビーム形状になるよう、面S2上に配置される。
【0049】
具体的に、図10(a)及び図10(b)は、本実施形態に係るピグテールファイバモジュール(図4)を介して出射されたビームの強度分布を示す写真であり、ガウス分布に近い強度分布を有する出射ビームの撮影結果である。なお、この例では、ピグテールファイバの外径は125μm、フェルール貫通孔の内径は126μmであり、接着剤層の厚みは0.5μmである。特に図10(a)は、図7中の面S3上における出射ビームのFFPを示す写真であり、図10(b)は、図7中の面S2における平行ビームの強度分布を示す写真である。
【0050】
一方、図10(c)及び図10(d)は、第3比較例に係るピグテールファイバモジュール(図8(b))を介して出射されたビームの強度分布を示す写真であり、ガウス分布から大きく崩れた強度分布を有する出射ビームの撮影結果である。なお、この例では、ピグテールファイバの外径は125μm、フェルール貫通孔の内径は127μmであり、接着剤層の厚みは1μmである。特に図10(c)は、図7中の面S3上における出射ビームのFFPを示す写真であり、図10(d)は、図7中の面S2における平行ビームの強度分布を示す写真である。
【0051】
図11(a)は、図7中の面S2上にDOEが配置された構成において、図10(b)に示された強度分布を有する平行ビーム(本実施形態に係るピグテールファイバモジュールを介して出射されたビーム)がDOEに入射されたときの、面S1における強度分布を示す写真である。一方、図11(b)は、図7中の面S2上にDOEが配置された構成において、図10(d)に示された強度分布を有する平行ビーム(第2比較例に係るピグテールファイバモジュールを介して出射されたビーム)がDOEに入射されたときの、面S1における強度分布を示す写真である。上述の図10(c)、図10(d)、及び図11(b)からも分かるように、ガウス分布から大きく崩れた強度分布を有する出射ビームでは、その強度分布の形状は非円化するとともに、ピーク強度の位置がビーム中心からずれてしまう。
【0052】
また、図12は、本実施形態に係るピグテールファイバモジュール及び第3比較例に係るピグテールファイバモジュールを介して出射された出射ビームの強度分布を説明するための図である。なお、測定のために用意された本実施形態に係るピグテールファイバモジュール(図4)において、接着剤層の厚みは0.5μm(フェルール貫通孔の内径は126μm、ピグテールファイバの外径は125μm)である。また、測定のために用意された第3比較例に係るピグテールファイバモジュール(図8(b))において、接着剤層の厚みは1μm(フェルール貫通孔の内径は127μm、ピグテールファイバの外径は125μm)である。図12(a)及び図12(b)において、縦軸はビーム強度(a.u.)を示し、横軸は図7中の面S3内の位置を示す。また、図12(a)において、グラフG121aは、本実施形態に係るピグテールファイバモジュールを介して出射されたビームの強度分布を示し、グラフG122aは、ガウス分布の近似曲線を示す。図12(b)において、グラフG121bは、第3比較例に係るピグテールファイバモジュールを介して出射されたビームの強度分布を示し、グラフG122bは、ガウス分布の近似曲線を示す。
【0053】
これら図12(a)及び図12(b)について、出射ビームの強度分布の歪みを定量的に評価するため、ガウス分布の近似曲線(グラフG122a、G122b)に対する実際の強度分布(グラフG121a、G121b)の決定係数(coefficient of determination)R2値を計算した。なお、R2値が「1」に近いほど、ガウス分布に近似していることを示す。出力光はガウス分布の方が良好であり、したがって、R2値は1に近いことが好ましい。図12(a)に示された例(本実施形態に係るピグテールモジュール)では、R2値が、0.990とほぼ1であり、良好な出力光と判断できる。一方、図12(b)に示された例(第3比較例に係るピグテールモジュール)では、R2値が、0.922とかなり小さな値となっており、図12(a)の例と比較して明らかにビーム形状が劣化(非ガウス分布化)していることが分かる。
【0054】
さらに、図13は、本実施形態に係るピグテールファイバモジュール、第2比較例に係るピグテールファイバモジュール、及び第3比較例に係るピグテールファイバモジュールの複数サンプルについて、ガウス分布近似した曲線に対する実際の強度分布の決定係数(R2値)の度数分布を示す図である。なお、用意されたサンプルは、各ピグテールファイバモジュールとも8つである。測定のために用意された本実施形態に係るピグテールファイバモジュール(図4)において、接着剤層の厚みは0.5μm(フェルール貫通孔の内径は126μm、ピグテールファイバの外径は125μm)である。測定のために用意された第2比較例に係るピグテールファイバモジュール(図8(a))において、フェルールは全長10mmであり、光出射端面から3mmの区間の貫通孔内径が126μm、段差部の内径が1100μmである。また、測定のために用意された第3比較例に係るピグテールファイバモジュール(図8(b))において、接着剤層の厚みは1μm(フェルール貫通孔の内径は127μm、ピグテールファイバの外径は125μm)である。
【0055】
図13から分かるように、本実施形態に係るピグテールファイバモジュール(図4)では、R2値(決定係数)の平均値が0.986、標準偏差σが0.004である。第2比較例に係るピグテールファイバモジュール(図8(a))では、R2値(決定係数)の平均値が0.919、標準偏差σが0.047である。さらに、第3比較例に係るピグテールファイバモジュール(図8(b))では、R2値(決定係数)の平均値が0.952、標準偏差σが0.034である。このように、本実施形態に係るピグテールファイバモジュールと第2及び第3比較例に係るピグテールファイバモジュールとでは有意な差が確認できた。これは、上述の比較例よりも、本実施形態の構成の方がよりガウス分布に近いビーム形状を得ることができることを意味している。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係るピグテールファイバモジュールは、加工用あるいは医療用のレーザ装置のレーザヘッドの一部として、また、光コネクタの一部として、種々のファイバレーザモジュール及び光学機能ヘッドモジュールへ適用可能である。なお、本発明に係るピグテールファイバモジュールは、入力用、出力用を問わない。入力用の場合には、ピグテールファイバ120に入力した光ファイバ断面内での強度分布が崩れないとともに、より低損失でのピグテールファイバ120への入力が可能になる。
【符号の説明】
【0057】
1…レーザ加工装置(ファイバレーザモジュール)、300、300A…光学機能ヘッドモジュール、100、100A、100B…ピグテールファイバモジュール、110…フェルール、111…貫通孔、120…ピグテールファイバ、121…コア、122…クラッド、130…樹脂コート(保護被覆)、140、141…エンドキャップ(出射用ファイバ)、150…接着剤、310…光アイソレータ(光機能部品)、400…光学機能部品。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピグテールファイバ(pigtail fiber)の一端にファイバ保持部材を備えたピグテールファイバモジュール、光学機能ヘッドモジュール及びファイバレーザモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、溶接、切断などの加工分野、医療分野、センシング分野等の種々の応用分野において、高出力光源が広く利用されている。また、光源とビーム照射される対象物とが離れた場所に位置する場合も多く、このような場合、光源からの光は、出力用光ファイバであるピグテールファイバを介して対象物に照射される。ピグテールファイバは、レーザ媒質の他、装置間における光接続を可能にする光伝送媒体でもあり、そのため、他の装置と接続可能にする構造を持つピグテールファイバで構成されたピグテールファイバモジュールは、レーザ加工装置の他、光コネクタ、検査装置等へも広く適用可能な光学部品の一つである。
【0003】
例えば特許文献1には、上述の出力用光ファイバ、装置間接続用光ファイバとしてラージモードエリアファイバ(LMAファイバ:Large Mode Area Fiber)が適用された装置が開示されている。このLMAファイバは、コア領域とクラッド領域が従来のシングルモード光ファイバのそれよりも実質的に大きい実効断面積が得られるよう構成された光ファイバである。特許文献1に記載の装置では、他の構成要素又は装置との結合を容易にするファイバ端末部の構造として、LMAファイバの端面に、ガラスロッド状あるいはコアのない光ファイバで構成されたスタブが、エンドキャップとして取り付けられたハイブリッド構造が採用されている。スタブは、LMAファイバの端面に融着接続のうえ端面処理(研磨等)されており、このスタブ端面がレーザ光などの光出射端面となっている。
【0004】
なお、一般的に、エンドキャップには、ガラスロッド、出力用光ファイバよりもコア径の大きな光ファイバ、コアのない光ファイバ等が適用可能であり、概ね数mm〜数十mmの長さを有する。また、その効果としては、エンドキャップ内でビーム(例えばレーザ光)を拡大させることにより、光出射端面における光パワー密度を下げることができ、その結果、光出射端面における光損傷の防止効果が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−146015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明者らは、フェルールが取り付けられたピグテールファイバモジュールについて検討を行った結果、以下のような課題を発見した。すなわち、ピグテールファイバがフェルール内に固定すると、ピグテールファイバからの光出力の強度分布が変化していた。光加工用のファイバレーザにおいては、出力光が単純にシングルモードであれば、良いというものではなく、特別な意図がなければ、本来の光強度分布を維持して出力されることが望ましい。今回確認された課題は、詳しく調べると、フェルールの貫通孔にピグテールファイバの先端部分を挿通した状態で固定する際に、熱硬化性樹脂を使用したことによるものであることが判明した。熱硬化性樹脂の硬化時の収縮応力が貫通孔の長手方向に変化し、ピグテールファイバにマイクロベンド応力が作用し、その結果、光ファイバ断面内の光出力の強度分布が変化していた。
【0007】
光ファイバ断面内での光出力の強度分布が崩れると、まず、エンドキャップから出射されるビームがガウス強度分布のビームから変形してしまう。すなわち、光ファイバ端面からの出射ビームの断面形状が円から崩れ、かつビーム強度分布(遠視野像、FFP:Far Field Pattern)がガウス強度分布から崩れてしまう。その結果、例えばレーザ加工装置などでは、加工対象物に照射されるビームスポットも円から崩れ、均質な加工ができなくなるということが発生する。なお、出射ビームの変形の問題を指摘したが、入射ビームを受光する際にも同様に歪むという課題がある。
【0008】
さらに、光ファイバ断面内での光出力の強度分布の形状が変化すると、光ファイバ端面からの出射ビームのビーム品質が劣化する。(光ファイバからの出射ビームの品質は、M2で表され、M2=πw0θ/4λである。w0は最小ビーム径、θは出射ビームの拡がり角、λはビームの波長を指す。出射ビームがSMのとき、M2=1となり、この状態を回折限界と呼ぶ。)その結果、加工対象物に照射されるビームスポットが回折限界時の値より大きくなり、高いビーム密度での加工が出来なくなるという課題もあった。なお、このような状況では、M2≒1.0で設計された回折型光学素子(DOE:DiffractiveOptical Elements)などの光学部品を用いても、所定の性能が得られないことになる。
【0009】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、出射ビームの断面形状をより円形に近い状態に維持するための構造を備えたピグテールファイバモジュール、光学機能ヘッドモジュール及びファイバレーザモジュールを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するため、本実施形態に係るピグテールファイバモジュールは、入/出力用光ファイバに適用可能なピグテールファイバと、一方の端面を含むピグテールファイバの先端部分に取り付けられたファイバ保持部材を備える。ピグテールファイバは、出力光をシングルモードで導波するコアと、その外周を囲むクラッドと、クラッド外周を囲む保護被覆とを有する。ファイバ保持部材は、クラッドを保持する貫通孔を有するフェルールを含む。クラッドは、フェルールの貫通孔内で、熱硬化性樹脂からなる接着剤により固定される。また、フェルールの貫通孔は、接着剤で固定されている部分の、クラッドとの隙間((貫通孔の内径‐クラッド径)/2)が1μm未満となる内径を有する。
【0011】
フェルールの貫通孔とピグテールファイバとの間隙には接着剤が充填されるため、このような間隙(接着剤層の厚み)が1μmを超えてくると、充填される接着剤の硬化収縮、熱収縮等に起因した光ファイバへ与えられる応力(主に曲げ応力)が大きくなる。したがって、このような間隙を1μm未満、より好ましくは0.5μm以下に抑えることで、充填される接着剤の収縮も少なくでき、その結果、光ファイバへ与えられる応力も効果的に抑制できる。
【0012】
フェルールの貫通孔のうちピグテールファイバが接着剤で固定されている部分は、平坦な形状であるのが好ましい。なお、本明細書において「平坦な形状」とは、貫通孔には「1μm以上の段差がない」ことを意味する。このように、本実施形態に係るピグテールファイバモジュールによれば、フェルールの貫通孔内に段差が存在しないため(フェルールの一方の端面から他方の端面に向かう方向に沿って貫通孔の孔径変動が一定範囲内に抑制されている)、当該フェルールの貫通孔内に挿入された、ピグテールファイバの先端部分への局所的な応力付加が効果的に避けられる。
【0013】
本実施形態に係るピグテールファイバモジュールにおいて、ピグテールファイバは、LMAファイバであるのが好ましい。当該ピグテールファイバの屈折率プロファイル改良は、通常のシングルモード光ファイバの屈折率プロファイル改良と比較して、本実施形態の構成による効果への影響がより大きくなるからである。
【0014】
また、本実施形態に係るピグテールファイバモジュールにおいて、ピグテールファイバの先端部分には、エンドキャップとして、ピグテールファイバからの出射光を拡散させて出射する出射用ファイバが接続されるのが好ましい。この場合、ピグテールファイバの先端部分はフェルール内に収容され、かつ、接着剤でフェルールに固定される。したがって、ピッグテールファイバの第1端と出射用ファイバの端部との接続部分は、フェルールの貫通孔内に位置することになる。なお、出射用光ファイバの外径は、ピグテールファイバのクラッド径以下であるのが好ましい。ピグテールファイバ先端部分の外径に対して出射用光ファイバの外径が大きいと、フェルール貫通孔の内径は出射用光ファイバの外径に依存して設計されることになる。この場合、ピグテールファイバ先端部分(フェルール貫通孔内に収納されている部分)に不要な応力が付加されることになる。そのため、フェルール貫通孔の孔径がピグテールファイバ先端部分の外径にのみ依存する構成が好ましい。
【0015】
エンドキャップとしての出射用ファイバは、コアレスファイバ又はピグテールファイバのコア径より大きなコア径の光ファイバであるのが好ましい。
【0016】
本実施形態に係る光学機能ヘッドモジュールは、上述のような構造を有するピグテールファイバモジュール(本実施形態に係るピグテールファイバモジュール)と、その出射端に光学的に結合された光学機能部品とを備える。なお、光学機能部品としては、例えば、光アイソレータ、非線形光学結晶、ビームエキスパンダ、コリメータなどの空間光学系等が適用可能である。
【0017】
さらに、本実施形態に係るファイバレーザモジュールは、上述のような構造を有するピグテールファイバモジュール(本実施形態に係るピグテールファイバモジュール)と、その入射端に光学的に結合されたレーザ光源とを備える。なお、レーザ光源としては、例えば、ファイバレーザ装置、固体レーザ等が適用可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る種々の実施形態よれば、片端にフェルールを取り付けられたピグテールファイバ、出射ビームの形状維持するにおいても、出射ビームの光強度分布の形状が入射時の状態を維持できるようにすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態に係るピグテールモジュールが適用可能なファイバレーザモジュール(本実施形態に係るファイバレーザモジュール)の一例の概略構成、及び、本実施形態に係る光学機能ヘッドモジュールの一例としての出射ヘッドの内部構造を示す図である。
【図2】本実施形態に係るピグテールファイバモジュールが適用可能な光コネクタの構成を示す切欠図である。
【図3】本実施形態に係るピグテールファイバモジュールの組み立て工程図である。
【図4】本実施形態に係るピグテールファイバモジュールの構造を示す断面図であり、図1(a)中の線I−Iに沿った断面に相当する。
【図5】本実施形態に係るピグテールファイバモジュールの他の構造例を示す断面図であり、図1(a)中の線I−Iに沿った断面に相当する。
【図6】第1比較例に係るピグテールファイバモジュールの構成を示す断面図であり、図1(a)中の線I−Iに沿った断面に相当する。
【図7】本実施形態に係る光学機能ヘッドモジュールの一例の概略構成を示すとともに、ピグテールファイバモジュールの光出射端面から対象物表面まで伝搬するビームの断面形状の、種々の条件に起因した変化を説明するための図である。
【図8】第2及び第3比較例に係るピグテールファイバモジュールの構造を示す断面図であり、図1(a)中の線I−Iに沿った断面に相当する。
【図9】本実施形態に係るピグテールファイバモジュール、第2比較例に係るピグテールファイバモジュール、第3比較例に係るピグテールファイバモジュールそれぞれを介して出射されたビームの遠視野像を示す写真である。
【図10】種々の強度分布を有する出射ビームについて、図7中の面S2及び面S3それぞれにおける強度分布の変化を説明するための写真である。
【図11】種々の強度分布を有する出射ビームについて、図7中の面S2上にDOEが配置されたときの面S1における強度分布の変化を説明するための写真である。
【図12】本実施形態に係るピグテールファイバモジュール及び第3比較例に係るピグテールファイバモジュールを介して出射された出射ビームの強度分布を説明するための図である。
【図13】本実施形態に係るピグテールファイバモジュール、第2比較例に係るピグテールファイバモジュール、及び第3比較例に係るピグテールファイバモジュールの複数サンプルについて、ガウス分布近似した曲線に対する実際の強度分布の決定係数(coefficient of determination)R2値の度数分布を示す図である。なお、決定係数とは、重相関係数(multiple correlation coefficient)Rの2乗値のことである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るピグテールファイバモジュール、ファイバレーザモジュール、及び光学機能ヘッドモジュールの各実施形態を、図1〜図13を参照しながら詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0021】
図1は、本実施形態に係るピグテールファイバモジュールが適用可能なファイバレーザモジュールの一例としてレーザ加工装置の概略構成、及び、本実施形態に係る光学機能ヘッドモジュールの一例としての出射ヘッドの内部構造を示す図である。図1(a)に示されたレーザ加工装置1は、レーザ光源10と、加工対象物へビーム(レーザ光)を出射する出射ヘッド300と、レーザ光源10から出射ヘッド300へレーザ光を導くための光ガイド(本実施形態に係るピグテールファイバモジュール)を備える。なお、レーザ光源10としては、例えば、ファイバレーザ装置、固体レーザ等が適用可能である。ピグテールファイバモジュール100は、光が伝搬するピグテールファイバと、ピグテールファイバの先端部分(当該ピグテールファイバの、その端面を含む部分)に取り付けられたファイバ保持部材と、ファイバ保持部材の外に露出しているピグテールファイバの外周面を覆う樹脂コート(保護被覆)から構成されている。
【0022】
また、図1(b)には、本実施形態に係る光学機能ヘッドモジュールの一例としての出射ヘッド300の内部構造、特にピグテールファイバモジュール100の一端を保持するための構造が示されている。この図1(b)は、図1(a)中の線I−Iに沿った当該ピグテールファイバモジュール100及び周辺部分の構造を示す断面図である。図1(b)に示されたように、出射ヘッド300は、出射されたビームの一部が照射対象物で散乱され、レーザ光源10側へ反射されるのを防止するため、光アイソレータ310とピグテールファイバモジュール100を保持した状態で、ピグテールファイバモジュール100と光アイソレータ310とを光学的に結合させるための保持部320を備える。保持部320内には、ピグテールファイバモジュール100から出射されたビームをコリメートするためのコリメータレンズ321が設けられている。なお、310は光アイソレータ以外の光学機能部品、例えば、非線形光学結晶、コリメータ、ビームエキスパンダでも良い。310がコリメータ、ビームエキスパンダの場合は、321は、なくても良い。
【0023】
本実施形態に係るピグテールファイバモジュール100は、先端部分を除くピグテールファイバ120の外周面上に樹脂コート130が設けられたピグテールファイバ120と、ピグテールファイバ120の端面に取り付けられたエンドキャップ140と、ピグテールファイバ120の先端部分とエンドキャップ140が貫通孔内に収納されたフェルール110(ファイバ保持部材)を備える。この構成により、ピグテールファイバ120とエンドキャップ140との接続部分は、フェルール110の貫通孔内に位置することになる。ピグテールファイ120は、コア121と、コア121の外周に設けられたクラッド122を備える。また、ピグテールファイバ120は、高パワー光の伝送に適したLMAファイバであるのが好ましい。エンドキャップ140は、ピグテールファイバ120におけるコア121の外径よりも大きな外径のコアを有する光ファイバ又はコア121の外径よりも大きな外径のロッド径を有するコアのない光ファイバ上のガラスロッド等のガラス材からなり、ピグテールファイバ120の端面に密着して配置され、出射光を拡光しつつ、ピグテールファイバ120の端面を保護する出射用光学部材である。
【0024】
なお、本実施形態に係るピグテールファイバモジュール100は、種々の装置間を接続する光コネクタへの適用も可能である。例えば、図2には、内部構造の主要部分が確認できるように本実施形態に係るピグテールファイバモジュール100が適用された光コネクタ2の切欠図が示されている。図2の光コネクタ2は、当該ピグテールファイバモジュール100のフェルール110を含む先端部分を、樹脂ヘッド20(保持部材320に相当し、内部に収納空間を有する)により覆うことで構成されている。樹脂ヘッドの材料は、樹脂に限定されず、金属(ステンレス、アルミなど)でも良い。樹脂ヘッド20に隣接する紡錘形状のものは、ゴムブーツで光ファイバを保護している。
【0025】
図3は、本実施形態に係るピグテールファイバモジュール100の組み立て工程図である。図3に示されたように、当該ピグテールファイバモジュール100は、主に3つのパーツから構成されている。すなわち、先端部分(貫通孔111への挿通部分)を除いた部分に樹脂コート130でその外周面が覆われたピグテールファイバ120と、エンドキャップ140と、フェルール110とにより当該ピグテールファイバモジュール100が構成される。ピグテールファイバ120は、コア121及びクラッド122を備え、その一端120aが光出射端面である。エンドキャップ140は例えばガラスロッド状の形状を有し、一方の端面140aがピグテールファイバ120内を伝搬してきた光を出射するための光出射端面となり、端面140aに対向する他方の端面140bが、ピグテールファイバ120の端面120aに当接する。ピグテールファイバ120とエンドキャップ140は、それぞれの端面120a、140bにおいて融着接続される。また、エンドキャップ140の端面140aは、該端面140aで反射された光がピグテールファイバ120内に戻らないように斜めカットされている。フェルール110は、エンドキャップ140の端面140aと同様に、斜めカットされた第1端面110aと、第1端面110aに対向する第2端面110bと、第1端面110aと第2端面110bを連絡する貫通孔111を備える。端面120aにエンドキャップ140が取り付けられたピグテールファイバ120の先端部分は、第2端面110bから第1端面110aに向かってフェルール110の貫通孔111内に挿入される。そして、エンドキャップ140の端面140aとフェルール110の第1端面110aとが一致した状態で、貫通孔111の内壁とピグテールファイバ120の先端部分の外周面との間隙に接着剤(図示せず)が充填された状態で、フェルール110がピグテールファイバ120の先端部分に取り付けられる。次に、接着剤が硬化することにより、ピグテールファイバ120の先端部分へのフェルール110の接着固定が完了すると、フェルール110の第1端面110aとエンドキャップ140の端面140aとの段差がなくなるように、これら端面110a、140aが一緒に研磨処理される。なお、接着剤は、貫通孔への樹脂注入のしやすさから、熱硬化樹脂が望ましい。
【0026】
図4は、以上の工程を経て得られた、本実施形態に係るピグテールファイバモジュールの構造を示す断面図である。なお、図4に示された断面図は、図1(a)中の線I−Iに沿った断面に相当する。
【0027】
図3に示された工程を経て得られたピグテールファイバモジュール100A(図4)は、フェルール110と、全体がフェルール110の貫通孔111内に収納されたエンドキャップ140と、樹脂コート130が剥がされた先端部分がフェルール110の貫通孔111内に挿入されたピグテールファイバ120を備える。
【0028】
フェルール110は、上述のように第1端面110aと、第1端面110aに対向する第2端面110bと、第1端面110aと第2端面110bとを連絡する貫通孔111を備える。また、フェルール110は、ジルコニア、ステンレス、アルミニウム、これらの合金等からなり、1.2mm〜5mmの外径を有する。貫通孔111の孔径は、挿入されるピグテールファイバ120の外径に依存して決定されるが、第1端面110aから第2端面までの当該フェルール全長に亘って一定である。さらに、第1端面110aは、光出射端面での反射光がピグテールファイバ120側へ戻るのを防ぐため、角度θ(最大で約8°)だけ斜めカットされている。
【0029】
フェルール110の貫通孔111内に全体が収納されたエンドキャップ140も、光出射端面となる一方の端面140aが、角度θ(最大で約8°)だけ斜めカットされており、研磨等により、この端面140aはフェルール110の第1端面110aと段差無しになっている。他方の端面140bはピグテールファイバ120の端面120aに融着接続されている。また、エンドキャップ140の最大長(貫通孔111の長手方向に沿った最大長)は、0.1mm〜1mmであり、その全長は、従来のエンドキャップと比較してかなり短く設定されている。
【0030】
フェルール110の貫通孔111内に第2端面110b側から第1端面110aに向かって先端部分が挿入されたピグテールファイバ120は、コア121とクラッド122を備える。クラッド径(ファイバ外径)は、125μm〜800μmであり、コア径は、5μm〜30μmである。本実施形態では、端面120aにおいて融着接続されたエンドキャップ140の外径もピグテールファイバ120のクラッド径に一致している。
【0031】
フェルール110の貫通孔111の孔径は、挿入されるピグテールファイバ120の先端部分と貫通孔111の内壁との間隙が0.5μm以下(外径差が1μm以下)になるように設計されている。例えば、クラッド径が125μmであれば、フェルール110の孔径は126μm以下に設計される。また、この間隙には接着剤150が充填されている。
【0032】
図5は、本実施形態に係るピグテールファイバモジュールの他の構造例を示す断面図であり、図1(a)中の線I−Iに沿った断面に相当する。上述の図4に示されたピグテールファイバモジュール100Aとは、フェルール110の貫通孔111内に収納されるエンドキャップの外径が異なる。すなわち、エンドキャップ141の外径は、フェルール110の貫通孔111内に挿通されたピグテールファイバ120のクラッド径(ファイバ外径)よりも小さく設計されている。
【0033】
図5の構成は、エンドキャップの外径が、ピグテールファイバ120のクラッド径より小さいとする構成である。そのため、フェルール110の貫通孔111の孔径が、ピグテールファイバ120のクラッド径にのみ依存するので、エンドキャップ141の導入の技術的効果(光出射端面141aでの光パワー密度を低減するという効果)を得ながら、ピグテールファイバ120の先端部分の外周面を覆う接着剤150の厚み(ピグテールファイバ120の先端部分と貫通孔111の内壁との間隙)を効果的に抑制できる。また、エンドキャップ部分で、接着剤の流れが邪魔される可能性が少なくなるため、ピグテールファイバ120の先端部分の外周面を覆う接着剤150の厚みが長手方向により均等となり、接着剤の硬化後の応力変動をより効果的に抑制できる。接着剤は、熱収縮、及び硬化収縮で、ピグテールファイバ120に対し応力を及ぼしている。
【0034】
なお、図6には、ピグテールファイバ120のクラッド外径とエンドキャップの外径との関係として好ましくない比較例が示されている。すなわち、図6は、第1比較例に係るピグテールファイバモジュールの構成を示す断面図であり、図1(a)中の線I−Iに沿った断面に相当する。
【0035】
図6に示された第1比較例に係るピグテールファイバモジュール200Aは、上述の図4に示されたピグテールファイバモジュール100Aとは、フェルール110の貫通孔111内に収納されるエンドキャップの外径が異なる。すなわち、エンドキャップ251の外径は、フェルール110の貫通孔111内に挿通されたピグテールファイバ120のクラッド径(ファイバ外径)よりも大きく設計されている。フェルール1100の貫通孔1110の孔径は、より大きい外径を有するエンドキャップ251に依存して設計されることになる。この場合、挿入されるピグテールファイバ120の先端部分の外周面には、エンドキャップ251の外径とクラッド径との差だけ余分な接着剤150が存在することになり、その分接着剤に起因する応力が増加する。また、接着剤の層が厚くなる分、円周方向での応力状態の不均衡が増大する。したがって、この図6の第1比較例では、ピグテールファイバ120にこれらの不要な応力が加えられ、該ピグテールファイバ120内のビーム伝搬が崩れてしまうことになる。
【0036】
以下、本実施形態の場合と上述の第1比較例の場合とで、加工対象物に照射されるビームの断面形状の変化を、図7を参照しながら説明する。なお、図7は、本実施形態に係る光学機能ヘッドモジュールの一例の概略構成を示すとともに、ピグテールファイバモジュールの光出射端面から対象物表面まで伝搬するビームの断面形状の、種々の条件に起因した変化を説明するための図である。
【0037】
図7には、ピグテールファイバモジュール100と、その出射端に光学的に結合された光学機能部品400とを備えた光学機能ヘッドモジュール300Aが示されている。光学機能部品400としては、図1(b)に示されたように、光アイソレータ310の他、非線形光学結晶、ビームエキスパンダ、コリメータなどの空間光学系等が適用可能である。図7に示された例では、光学機能部品400は、コリメートレンズL1及び集光レンズL2を備える。すなわち、ピグテールファイバモジュール100からビーム(例えば図1(a)のレーザ光源10から供給されたレーザ光)は、出射後所定角度で拡散していくが、コリメートレンズL1及び集光レンズL2で構成された光学系を通過することにより、最終的に、加工対象物の表面(加工面)S1上に集光される。
【0038】
なお、面S3上でのビーム形状を遠視野像(FFP)という。通常、出射ビームがシングルモード(M2=1)の場合、FFPは円形となり、その強度分布はガウス分布で表されるガウシアンビームとなる。
【0039】
しかしながら、出射ビームのFFPが円形から崩れると、コリメートレンズL1で平行光になった出射ビームの強度分布もガウス分布とはならなくなる。すなわち、面S2上における出射ビームの強度分布がガウス分布から崩れてしまう。この場合、出射ビームの強度分布がガウス分布で表されることを前提として設計されたDOEなどの光学部品では、予定された性能が発揮できなくなる。また、出射ビームのFFPが崩れると、加工面S1上に集光されたビームの強度分布も円形のガウス分布から崩れてしまい、均質な加工結果が得られなくなる。
【0040】
上述のように、フェルール内に収納されるピグテールファイバに応力が加わると、出射ビームの強度分布がガウス分布から崩れてしまい、均質なビームが得られないことが分かる。
【0041】
さらに、図8に、好ましくない例を示す。なお、図8は、第2及び第3比較例に係るピグテールファイバモジュールの構造を示す断面図であり、図1(a)中の線I−Iに沿った断面に相当する。
【0042】
図8(a)に示された第2比較例に係るピグテールファイバモジュール200Bは、上述の図4に示されたピグテールファイバモジュール100Aとは、フェルール110の貫通孔の孔径が異なる。すなわち、フェルール1200の孔径は、第1端面1200a側と第2端面1200b側で大きく異なっている。より具体的には、貫通孔1210には、第2端面1200b側に孔径が拡大された段差部1211が設けられている。この場合、挿入されるピグテールファイバ120の先端部分の外周面には、第2端面1200b側に存在する余分な接着剤150から応力が加わることになる。したがって、この図8(a)の第2比較例でも、ピグテールファイバ120に不要な応力が加えられ、ピグテールファイバ120内のビーム伝搬が崩れてしまうことになる。また、接着剤150から応力が加わると、ピグテールファイバはフェルール1200の孔の段差1210a部で局所的に応力を加えられることとなり、この部位での応力に起因するマイクロベンドによりさらにビーム伝播が崩れてしまう。
【0043】
また、図8(b)に示された第3比較例に係るピグテールファイバモジュール200Cは、上述の図4に示されたピグテールファイバモジュール100Aとは、フェルール110の貫通孔の孔径が異なる。すなわち、フェルール1300の孔径は、エンドキャップ140の外径やピグテールファイバ120のクラッド径に対して外径差が1μmを超えるよう(クラッド外周面と貫通孔内壁との間隙は0.5μmよりも大きい)、設計されている。この場合、挿入されるピグテールファイバ120の先端部分の外周面には、余分な接着剤150から余分な応力が加わることになる。これにより、ピグテールファイバ120内のビーム伝搬が崩れてしまう可能性が上昇する。
【0044】
図9は、上述の構造を有する本実施形態に係るピグテールファイバモジュール100A、第2比較例に係るピグテールファイバモジュール200B、第3比較例に係るピグテールファイバモジュール200Cそれぞれを介して出射されたビームのFFPを示す写真である。
【0045】
すなわち、図9(a)は、第2比較例に係るピグテールファイバモジュール200B、を介して出射されたビームのFFPを示す写真である。この図9(a)からも分かるように、第2比較例に係るピグテールファイバモジュール200Bの場合、出射ビームの強度分布は円形のガウス分布からは大きく崩れてしまう。
【0046】
図9(b)は、第3比較例に係るピグテールファイバモジュール200Cを介して出射されたビームのFFPを示す写真である。この第3比較例に係るピグテールファイバモジュール200Bでは、フェルール貫通孔の孔径は、127μmであり、挿入されたピグテールファイバのクラッド径は125μmである(外径差は2μm)。したがって、フェルール貫通孔の内壁と挿入されたピグテールファイバのクラッド外周面との間隙(接着剤層の厚み)は、1μmとなる。したがって、この第3比較例に係るピグテールファイバモジュール200Cの場合も、図9(b)からも分かるように、出射ビームの強度分布は円形のガウス分布からは大きく崩れてしまう。
【0047】
一方、図9(c)は、本実施形態に係るピグテールファイバモジュール100Aを介して出射されたビームのFFPを示す写真である。本実施形態に係るピグテールファイバモジュール100Aでは、フェルール貫通孔の内壁と挿入されたピグテールファイバのクラッド径との間隙は、0.5μmである。したがって、図9(c)からも分かるように、本実施形態に係るピグテールファイバモジュール100Aによれば、フェルール貫通孔に挿入されたピグテールファイバのクラッドに加わる応力(クラッド外周面上の接着剤層の収縮等に起因する曲げ応力)の影響はほとんど確認できず、より円形に近い強度分布の出射ビールが得られる。このことから、フェルール貫通孔の内壁と挿入されたピグテールファイバのクラッド径との許容間隙は、0.5μm〜1μmの間に実用上の境界が存在し、0μmよりも大きくかつ1μm未満であればよく、より好ましくは0μmよりも大きくかつ0.5μm以下である。
【0048】
さらに、図10は、種々の強度分布を有する出射ビームについて、図7中の面S2及び面S3それぞれにおける強度分布の変化を説明するための写真である。また、図11は、種々の強度分布を有する出射ビームについて、図7中の面S2上にDOEが配置されたときの面S1における強度分布の変化を説明するための写真である。なお、DOEは、出射ビームが平行ビームとしてフラットトップなビーム形状になるよう、面S2上に配置される。
【0049】
具体的に、図10(a)及び図10(b)は、本実施形態に係るピグテールファイバモジュール(図4)を介して出射されたビームの強度分布を示す写真であり、ガウス分布に近い強度分布を有する出射ビームの撮影結果である。なお、この例では、ピグテールファイバの外径は125μm、フェルール貫通孔の内径は126μmであり、接着剤層の厚みは0.5μmである。特に図10(a)は、図7中の面S3上における出射ビームのFFPを示す写真であり、図10(b)は、図7中の面S2における平行ビームの強度分布を示す写真である。
【0050】
一方、図10(c)及び図10(d)は、第3比較例に係るピグテールファイバモジュール(図8(b))を介して出射されたビームの強度分布を示す写真であり、ガウス分布から大きく崩れた強度分布を有する出射ビームの撮影結果である。なお、この例では、ピグテールファイバの外径は125μm、フェルール貫通孔の内径は127μmであり、接着剤層の厚みは1μmである。特に図10(c)は、図7中の面S3上における出射ビームのFFPを示す写真であり、図10(d)は、図7中の面S2における平行ビームの強度分布を示す写真である。
【0051】
図11(a)は、図7中の面S2上にDOEが配置された構成において、図10(b)に示された強度分布を有する平行ビーム(本実施形態に係るピグテールファイバモジュールを介して出射されたビーム)がDOEに入射されたときの、面S1における強度分布を示す写真である。一方、図11(b)は、図7中の面S2上にDOEが配置された構成において、図10(d)に示された強度分布を有する平行ビーム(第2比較例に係るピグテールファイバモジュールを介して出射されたビーム)がDOEに入射されたときの、面S1における強度分布を示す写真である。上述の図10(c)、図10(d)、及び図11(b)からも分かるように、ガウス分布から大きく崩れた強度分布を有する出射ビームでは、その強度分布の形状は非円化するとともに、ピーク強度の位置がビーム中心からずれてしまう。
【0052】
また、図12は、本実施形態に係るピグテールファイバモジュール及び第3比較例に係るピグテールファイバモジュールを介して出射された出射ビームの強度分布を説明するための図である。なお、測定のために用意された本実施形態に係るピグテールファイバモジュール(図4)において、接着剤層の厚みは0.5μm(フェルール貫通孔の内径は126μm、ピグテールファイバの外径は125μm)である。また、測定のために用意された第3比較例に係るピグテールファイバモジュール(図8(b))において、接着剤層の厚みは1μm(フェルール貫通孔の内径は127μm、ピグテールファイバの外径は125μm)である。図12(a)及び図12(b)において、縦軸はビーム強度(a.u.)を示し、横軸は図7中の面S3内の位置を示す。また、図12(a)において、グラフG121aは、本実施形態に係るピグテールファイバモジュールを介して出射されたビームの強度分布を示し、グラフG122aは、ガウス分布の近似曲線を示す。図12(b)において、グラフG121bは、第3比較例に係るピグテールファイバモジュールを介して出射されたビームの強度分布を示し、グラフG122bは、ガウス分布の近似曲線を示す。
【0053】
これら図12(a)及び図12(b)について、出射ビームの強度分布の歪みを定量的に評価するため、ガウス分布の近似曲線(グラフG122a、G122b)に対する実際の強度分布(グラフG121a、G121b)の決定係数(coefficient of determination)R2値を計算した。なお、R2値が「1」に近いほど、ガウス分布に近似していることを示す。出力光はガウス分布の方が良好であり、したがって、R2値は1に近いことが好ましい。図12(a)に示された例(本実施形態に係るピグテールモジュール)では、R2値が、0.990とほぼ1であり、良好な出力光と判断できる。一方、図12(b)に示された例(第3比較例に係るピグテールモジュール)では、R2値が、0.922とかなり小さな値となっており、図12(a)の例と比較して明らかにビーム形状が劣化(非ガウス分布化)していることが分かる。
【0054】
さらに、図13は、本実施形態に係るピグテールファイバモジュール、第2比較例に係るピグテールファイバモジュール、及び第3比較例に係るピグテールファイバモジュールの複数サンプルについて、ガウス分布近似した曲線に対する実際の強度分布の決定係数(R2値)の度数分布を示す図である。なお、用意されたサンプルは、各ピグテールファイバモジュールとも8つである。測定のために用意された本実施形態に係るピグテールファイバモジュール(図4)において、接着剤層の厚みは0.5μm(フェルール貫通孔の内径は126μm、ピグテールファイバの外径は125μm)である。測定のために用意された第2比較例に係るピグテールファイバモジュール(図8(a))において、フェルールは全長10mmであり、光出射端面から3mmの区間の貫通孔内径が126μm、段差部の内径が1100μmである。また、測定のために用意された第3比較例に係るピグテールファイバモジュール(図8(b))において、接着剤層の厚みは1μm(フェルール貫通孔の内径は127μm、ピグテールファイバの外径は125μm)である。
【0055】
図13から分かるように、本実施形態に係るピグテールファイバモジュール(図4)では、R2値(決定係数)の平均値が0.986、標準偏差σが0.004である。第2比較例に係るピグテールファイバモジュール(図8(a))では、R2値(決定係数)の平均値が0.919、標準偏差σが0.047である。さらに、第3比較例に係るピグテールファイバモジュール(図8(b))では、R2値(決定係数)の平均値が0.952、標準偏差σが0.034である。このように、本実施形態に係るピグテールファイバモジュールと第2及び第3比較例に係るピグテールファイバモジュールとでは有意な差が確認できた。これは、上述の比較例よりも、本実施形態の構成の方がよりガウス分布に近いビーム形状を得ることができることを意味している。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係るピグテールファイバモジュールは、加工用あるいは医療用のレーザ装置のレーザヘッドの一部として、また、光コネクタの一部として、種々のファイバレーザモジュール及び光学機能ヘッドモジュールへ適用可能である。なお、本発明に係るピグテールファイバモジュールは、入力用、出力用を問わない。入力用の場合には、ピグテールファイバ120に入力した光ファイバ断面内での強度分布が崩れないとともに、より低損失でのピグテールファイバ120への入力が可能になる。
【符号の説明】
【0057】
1…レーザ加工装置(ファイバレーザモジュール)、300、300A…光学機能ヘッドモジュール、100、100A、100B…ピグテールファイバモジュール、110…フェルール、111…貫通孔、120…ピグテールファイバ、121…コア、122…クラッド、130…樹脂コート(保護被覆)、140、141…エンドキャップ(出射用ファイバ)、150…接着剤、310…光アイソレータ(光機能部品)、400…光学機能部品。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピグテールファイバと、一方の端面を含む前記ピグテールファイバの先端部分に取り付けられたファイバ保持部材を備えたピグテールモジュールであって、
前記ピグテールファイバは、入力光をシングルモードで導波するコアと、その外周を囲むクラッドと、前記クラッド外周を囲む保護被覆とを有し、
前記ファイバ保持部材は、前記クラッドを保持する貫通孔を有するフェルールを含み、
前記クラッドは、前記貫通孔内で、熱硬化性樹脂からなる接着剤により固定され、
前記貫通孔は、前記接着剤で固定されている部分と前記クラッドとの平均的隙間((貫通孔の内径‐クラッド径)/2)が1μm未満となる内径を有することを特徴とするピグテールモジュール。
【請求項2】
前記貫通孔のうち、前記ピグテールファイバが前記接着剤で固定されている部分は、平坦な形状であることを特徴とする請求項1記載のピグテールモジュール。
【請求項3】
前記ピグテールファイバは、ラージモードエリアファイバであることを特徴とする請求項1記載のピグテールモジュール。
【請求項4】
前記ピグテールファイバの前記先端部分は、前記ピグテールファイバからの出射光を拡散させて出射する出射用ファイバが接続され、前記フェルール内に収容され、かつ、接着剤で前記フェルールに固定され、
前記出射用光ファイバの外径は、前記ピグテールファイバのクラッド径以下であることを特徴とする請求項1記載のピグテールモジュール。
【請求項5】
前記ピグテールファイバの前記先端部分は、前記ピグテールファイバからの入射光を縮光させて入射する入射用ファイバが接続され、前記フェルール内に収容され、かつ、接着剤で前記フェルールに固定され、
前記入射用光ファイバの外径は、前記ピグテールファイバのクラッド径以下であることを特徴とする請求項1記載のピグテールモジュール。
【請求項6】
前記出射用ファイバ又は前記入射用ファイバは、コアレスファイバ又はマルチモードファイバであることを特徴とする請求項4又は5記載のピグテールモジュール。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項記載のピグテールファイバモジュールと、その出射端に光学的に結合された光学機能部品とを備えた光学機能ヘッドモジュール。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項記載のピグテールファイバモジュールと、その入射端に光学的に結合されたレーザ光源とを備えたファイバレーザモジュール。
【請求項1】
ピグテールファイバと、一方の端面を含む前記ピグテールファイバの先端部分に取り付けられたファイバ保持部材を備えたピグテールモジュールであって、
前記ピグテールファイバは、入力光をシングルモードで導波するコアと、その外周を囲むクラッドと、前記クラッド外周を囲む保護被覆とを有し、
前記ファイバ保持部材は、前記クラッドを保持する貫通孔を有するフェルールを含み、
前記クラッドは、前記貫通孔内で、熱硬化性樹脂からなる接着剤により固定され、
前記貫通孔は、前記接着剤で固定されている部分と前記クラッドとの平均的隙間((貫通孔の内径‐クラッド径)/2)が1μm未満となる内径を有することを特徴とするピグテールモジュール。
【請求項2】
前記貫通孔のうち、前記ピグテールファイバが前記接着剤で固定されている部分は、平坦な形状であることを特徴とする請求項1記載のピグテールモジュール。
【請求項3】
前記ピグテールファイバは、ラージモードエリアファイバであることを特徴とする請求項1記載のピグテールモジュール。
【請求項4】
前記ピグテールファイバの前記先端部分は、前記ピグテールファイバからの出射光を拡散させて出射する出射用ファイバが接続され、前記フェルール内に収容され、かつ、接着剤で前記フェルールに固定され、
前記出射用光ファイバの外径は、前記ピグテールファイバのクラッド径以下であることを特徴とする請求項1記載のピグテールモジュール。
【請求項5】
前記ピグテールファイバの前記先端部分は、前記ピグテールファイバからの入射光を縮光させて入射する入射用ファイバが接続され、前記フェルール内に収容され、かつ、接着剤で前記フェルールに固定され、
前記入射用光ファイバの外径は、前記ピグテールファイバのクラッド径以下であることを特徴とする請求項1記載のピグテールモジュール。
【請求項6】
前記出射用ファイバ又は前記入射用ファイバは、コアレスファイバ又はマルチモードファイバであることを特徴とする請求項4又は5記載のピグテールモジュール。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項記載のピグテールファイバモジュールと、その出射端に光学的に結合された光学機能部品とを備えた光学機能ヘッドモジュール。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項記載のピグテールファイバモジュールと、その入射端に光学的に結合されたレーザ光源とを備えたファイバレーザモジュール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図13】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図13】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−255999(P2012−255999A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130234(P2011−130234)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000110309)SEIオプティフロンティア株式会社 (80)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000110309)SEIオプティフロンティア株式会社 (80)
【Fターム(参考)】
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