説明

ピザクラストの製造方法及び冷凍ピザ

【課題】
クリスピーな食感を持つピザクラストを簡便に製造するとともに、そのピザクラストで製造したクリスピーな食感を呈するピザ、特に冷凍ピザを提供する。
【解決手段】
ピザクラストの製造工程において過熱水蒸気を用いてピザ生地を処理する。過熱水蒸気を用いたピザ生地の処理は、ピザクラストの製造工程における焼成工程前に行う。過熱水蒸気を用いたピザ生地の処理は、過熱水蒸気の温度を120〜300℃にして行う。あるいは、過熱水蒸気の温度を140〜260℃にし、過熱水蒸気を用いてピザ生地を処理する時間を3〜15秒にする。前記の製造方法で製造されたピザクラストを用いているピザ、あるいは、前記の製造方法で製造されたピザクラストを用いている冷凍ピザ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピザクラストの製造方法及び当該製造方法で製造されたピザクラストを用いたピザに関する。より詳しくは、クリスピーな食感を呈するピザクラストを製造する方法及び当該製造方法で製造されたクリスピーな食感を呈するピザクラストを用い、加熱調理したときにクリスピーな食感を呈するピザ及び、冷凍ピザに関する。
【背景技術】
【0002】
食物がカリカリまたはサクサクしたさまを表し、パリッとして、歯切れがよく、小気味がよい食感は、クリスピーな食感と言われる。冷凍ピザに関する市場調査などによれば、このようなクリスピーな食感のピザクラストを求める消費者も多い。
【0003】
しかし、現在のピザ市場、特に冷凍ピザ市場では、パンのような食感のピザクラストが多く、クリスピーな食感のピザクラストを求める消費者を必ずしも満足させているとは言えない。
【0004】
そこで、クリスピーな食感を持つピザクラストを簡便に製造し、そのピザクラストを用いているピザ、特に冷凍ピザを上市することができれば、ピザの市場、特に冷凍ピザの市場の拡大を期待することができる。
【0005】
食品の風味や食感を変える技術の一つに、過熱水蒸気を利用するものがある。過熱水蒸気を利用し、食品の風味や食感を改善した先行技術としては、特開2001−46005(特許文献1)、特開2002−186446(特許文献2)、特開2002−335895(特許文献3)、特開2003−38114(特許文献4)、特開2003−310191(特許文献5)、特開2004−16146(特許文献6)などがある。
【0006】
特開2001−46005には、緑色系野菜や赤色系畜肉・水産物の色調を過熱水蒸気により改善する方法、畜肉・水産物・大豆加工品やコーヒー類・茶類の香気を過熱水蒸気により改善する方法、特開2002−186446には、保型性に優れ、食感が良好な紅いも系さつまいもの焼きいもを過熱水蒸気により製造する方法、特開2002−335895には、生麺を過熱水蒸気により乾燥・殺菌し、半生麺を製造する方法、特開2003−38114には、蒸し麺に粘弾性を与え、冷えても固くならない様な麺類を過熱水蒸気により製造する方法、特開2003−310191には、麺類の腰や歯ごたえ等の食感(味わい)を過熱水蒸気により改善する装置、特開2004−16146には、品質良好な有害物を含まない米菓を過熱水蒸気により製造する方法が記載されている。
【0007】
しかしながら、前記何れの先行技術にもピザクラストを製造する工程における過熱水蒸気の利用や、クリスピーな食感を呈するピザクラスト、ピザ、冷凍ピザの製造に関する記載はない。また、過熱水蒸気により食パンを焼成する研究例などもあるが、食感は悪くなるとされている。
【0008】
流通、保存されているときに冷凍やチルドの状態になっていて、その後、電子レンジやオーブンなどで加熱調理したときに焼きたてのようなパリパリとした食感及び焼成風味を呈するピザクラスト及びその製造方法に関する提案については、特開2001−245583(特許文献7)がある。これは、ピザクラスト生地の上面に、澱粉液又は澱粉液を含有する調味液をピザクラスト生地の外周から5mm以上内側に塗布した後、二次発酵、焼成するものである。ピザクラスト生地の上面に澱粉液を塗布して焼成することにより、ピザクラストの上面に澱粉の皮膜を形成し、この形成された澱粉の皮膜が存在することによって、流通、保存されているときに冷凍やチルドの状態になっていても、電子レンジやオーブンなどで加熱調理したときに焼きたてのようなパリパリとした食感及び焼成風味を呈することができるとされている。
【特許文献1】特開2001−46005
【特許文献2】特開2002−186446
【特許文献3】特開2002−335895
【特許文献4】特開2003−38114
【特許文献5】特開2003−310191
【特許文献6】特開2004−16146
【特許文献7】特開2001−245583
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、クリスピーな食感のピザクラストに対する要求が市場に存在するにもかかわらず、かかる要求が十分に満足されていない現状に鑑み、クリスピーな食感を持つピザクラストを簡便に製造すると共に、そのピザクラストを用いたピザ、特に冷凍ピザを提供することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、食パンでは食感を悪くするとされる過熱水蒸気をピザクラストの製造工程へ応用することにより、クリスピーな食感のピザクラストを簡便に製造することができるとの知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本願発明のピザクラストの製造方法は、ピザクラストの製造工程において過熱水蒸気を用いてピザ生地を処理することを特徴とするものである。ここで、過熱水蒸気を用いたピザ生地の処理は、ピザクラストの製造工程における焼成工程前に行うことができる。また、過熱水蒸気を用いたピザ生地の処理は、過熱水蒸気の温度を120〜300℃にして行うことができる。あるいは、過熱水蒸気の温度を140〜260℃にすると共に過熱水蒸気を用いてピザ生地を処理する時間を3〜15秒にして行うことができる。
【0012】
また、本発明のピザは、前記の製造方法で製造されたピザクラストを用いているピザ、あるいは、前記の製造方法で製造されたピザクラストを用いている冷凍ピザである。
【0013】
これら本発明のピザ、冷凍ピザは、いずれも加熱調理したときの破断強度が1000〜1500gf/cmであることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、クリスピーな食感を持つピザクラストを簡便に製造することができるとともに、そのピザクラストを用いたピザ、特に冷凍ピザを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本願発明が提案するピザクラストの製造方法は、ピザクラストの製造工程において過熱水蒸気を用いてピザ生地を処理することを特徴とするものである。
【0016】
発明者等の研究によれば、食パンでは食感を悪くするとされる過熱水蒸気(沸点以上に熱せられた水蒸気)による処理をピザクラストの製造工程に応用することにより、クリスピーな食感のピザクラストを簡便に製造することができた。
【0017】
前記において、過熱水蒸気を用いたピザ生地の処理としては、例えば、ピザ生地の表面に過熱水蒸気を吹きつける、過熱水蒸気にピザ生地を曝す、等々の方法を採用することができる。
【0018】
前記本発明のピザクラストの製造方法において、過熱水蒸気を用いたピザ生地の処理は、ピザクラストの製造工程における焼成工程前に行うことが望ましい。
【0019】
ピザクラストの一般的な製造工程を例示すると次の通りとなる。すなわち、(1)粉体原料、水、油脂などを混合し、ピザ生地を調製する。(2)この調製したピザ生地を塊状のままで必要に応じて一次発酵し、さらに所定の厚さや形状にするために、圧延や裁断してから二次発酵する。(3)この発酵したピザ生地をオーブンなどにより焼成し、ピザクラストとするものである。
【0020】
なお、前記のように製造したピザクラストにソースを塗布したり、チーズや各種の食品素材をトッピングし、各家庭、ファーストフード、ファミリーレストランなどで、トースター、電子レンジ、オーブンレンジなどを用いて調理することによりピザとして供することができる。
【0021】
また、前記のように製造したピザクラストにソースを塗布したり、チーズや各種の食品素材をトッピングし、これを急速凍結し、さらに冷凍状態で保存し、冷凍ピザを作成することができる。この冷凍ピザは、各家庭、ファーストフード、ファミリーレストランなどで、トースター、電子レンジ、オーブンレンジなどを用いて調理することによりピザとして供することができる。
【0022】
発明者等の研究によれば、前記(3)の発酵したピザ生地をオーブンなどにより焼成してピザクラストとする工程の前に過熱水蒸気を用いたピザ生地の処理を行うことが、クリスピーな食感を呈するピザクラストを製造する上で望ましかった。
【0023】
これは、ピザクラストの食感がピザクラストの表皮と内相の立体構造に起因しているためと考えられる。すなわち、ピザ生地を焼成した後では、ピザクラストの立体構造が幾らか形成されているため、ピザ生地を焼成した後に過熱水蒸気を用いた処理を行うと、過熱水蒸気により前記のように形成されていたピザクラストの立体構造が変化し、ピザクラストの食感が変化してしまい、食感を改良する効果が小さくなるものと考えられる。
【0024】
一方、ピザ生地を焼成する前では、ピザクラストの立体構造が形成されていないため、食感を改良する効果が大きくなるものと考えられる。
【0025】
ただし、ピザ生地を発酵させる前に過熱水蒸気を用いたピザ生地の処理を行うと、ピザ生地が発酵されなくなったり、発酵されたとしても発酵時間が極端に長くなることなどが考えられる。
【0026】
そこで、前記のように、過熱水蒸気を用いたピザ生地の処理は、(3)発酵したピザ生地をオーブンなどにより焼成してピザクラストとする工程の前に行うことが望ましく、発明者等の実験によれば、特に、焼成工程直前に過熱水蒸気を用いてピザ生地を処理することが、クリスピーな食感を有するピザクラストを製造する上で好ましかった。
【0027】
なお、本発明においては、前述したように、ピザクラストの製造工程において過熱水蒸気を用いてピザ生地を処理することを特徴としているが、このように、発酵したピザ生地をオーブンなどにより焼成する焼成工程の前に過熱水蒸気を用いた処理を行うことにすると、本発明の方法により製造されたピザクラストを購入してピザを調理する消費者、本発明の方法により製造されたピザクラストが使用されているピザや冷凍ピザを購入してきて調理する消費者等は、過熱水蒸気を使用できる特殊な設備を必要とせず、従来からのトースターや電子レンジなどをそのまま使用して、本発明の方法により製造されているクリスピーな食感を有するピザクラストが使用されているピザや冷凍ピザを調理して、ピザクラストのクリスピーな食感が生かされているピザを食することができる。
【0028】
以上説明した本発明のピザクラストの製造方法においては、過熱水蒸気の温度を120〜300℃とすることが望ましい。
【0029】
発明者等の研究によれば、以上説明した本発明のピザクラストの製造方法で製造されるピザクラストの食感が過熱水蒸気を用いてピザ生地を処理することによって改良される、すなわちクリスピーな食感が得られる効果と、過熱水蒸気の温度との間には関連性があった。
【0030】
すなわち、ピザ生地を処理する過熱水蒸気の温度が低いと、ピザクラストの食感が改良されて、クリスピーな食感が得られる効果は小さいくなる。
【0031】
過熱水蒸気の温度を120℃より低くする場合には、過熱水蒸気による処理時間を長くするなどすれば、ピザクラストの食感を改良し、クリスピーな食感を得ることは可能と考える。ただし、処理時間が長くなることは、連続的に工業生産する場合には適していない。
【0032】
一方、過熱水蒸気の温度が高い状態で処理時間を長くしたところ、ピザクラストの食感が改良されて、クリスピーな食感が得られる効果は小さかった。
【0033】
過熱水蒸気の温度を300℃より高くする場合には、処理時間を極端に短くするなどすれば、ピザクラストの食感を改良して、クリスピーな食感を得るようにすることは可能と考えられる。
【0034】
ただし、このように処理時間が短くなることは、工業生産する場合には製造設備の制御(コントロール)が難しくなる。
【0035】
これらの観点から、以上説明した本発明のピザクラストの製造方法においては、過熱水蒸気の温度を120〜300℃とすることが好ましく、温度を140〜260℃とすることがより好ましく、温度を140〜220℃とすることがさらに好ましい。
【0036】
前述したように、本発明のピザクラストの製造方法で製造されるピザクラストの食感が過熱水蒸気を用いてピザ生地を処理することによって改良される、すなわちクリスピーな食感が得られる効果と、過熱水蒸気の温度との間には関連性があるが、発明者等の研究によれば、前述したように、この過熱水蒸気の温度だけでなく、それぞれの温度における処理時間も、ピザクラストの食感が改良され、クリスピーな食感が得られる効果に関係している。
【0037】
発明者等の実験によれば、ピザクラストの食感を改良して、クリスピーな食感を得るようにするという効果をより良く発揮させ、同時に、製造設備の簡便な制御(コントロール)で、連続的な工業生産を行ううえで、過熱水蒸気の温度を140〜260℃、過熱水蒸気を用いてピザ生地を処理する時間を3〜15秒とすることが望ましい。また、これらの観点から、過熱水蒸気の温度を140〜260℃、過熱水蒸気を用いてピザ生地を処理する時間を5〜15秒とすることがより好ましく、過熱水蒸気の温度を140〜220℃、過熱水蒸気を用いてピザ生地を処理する時間を5〜15秒とすることがさらに好ましい。
【0038】
以上説明したように、本発明のピザクラストの製造方法は、製造設備の簡便な制御(コントロール)で、連続的な工業生産を行うことを可能ならしめるので、ピザクラストを工業的に大量生産することに適している。
【0039】
本発明が提案するピザは、以上説明した本発明のピザクラストの製造方法で製造されたピザクラストを用いているものである。また、本発明が提案する冷凍ピザは、以上説明した本発明のピザクラストの製造方法で製造されたピザクラストを用いているものである。
【0040】
すなわち、本発明が提案するピザは、以上説明した本発明のピザクラストの製造方法で製造されたピザクラストを用い、従来公知の方法で作製されるものである。例えば、前記のピザクラストにソースを塗布したり、チーズや各種の食品素材をトッピングし、各家庭、ファーストフード、ファミリーレストランなどで、トースター、電子レンジ、オーブンレンジなどを用いて調理することにより作製されるものである。
【0041】
また、本発明が提案する冷凍ピザは、以上説明した本発明のピザクラストの製造方法で製造されたピザクラストを用い、従来公知の方法で作製されるものである。例えば、前記のピザクラストにソースを塗布したり、チーズや各種の食品素材をトッピングし、これを急速凍結し、さらに冷凍状態で保存して作成することができる。こうして作成された冷凍ピザは、各家庭、ファーストフード、ファミリーレストランなどで、トースター、電子レンジ、オーブンレンジなどを用いて調理することによりピザとして供することができる。
【0042】
前述した本発明のピザにおいて、加熱調理したときの破断強度が1000〜1500gf/cmであること、また、前述した本発明の冷凍ピザにおいて、加熱調理したときの破断強度が1000〜1500gf/cmであることが望ましい。
【0043】
オーブンレンジなどを用いて加熱調理して得られる本発明のピザ、また、前述した本発明の冷凍ピザをオーブンレンジなどを用いて加熱調理して得られるピザについて、発明者等がその破断強度を検討したところ、破断強度の大きさと、クリスピーな食感・ピザクラストの食感の改良および、前述した好ましい過熱水蒸気の温度、過熱水蒸気を用いてピザ生地を処理する時間との間には相関関係が認められた。
【0044】
すなわち、オーブンレンジなどを用いて加熱調理して得られる本発明のピザ、また、前述した本発明の冷凍ピザをオーブンレンジなどを用いて加熱調理して得られるピザにおいて、ソースを塗布していない縁の部分について、加熱調理後、直ちに、レオメーター(不動工業(株)社製)(プランジャーは直径3mmの円形)を用い、貫入速度は60mm/分とし、ピザクラストの縁から中心部に向けて7.5mmの箇所を測定する破断応力試験を行って破断強度を測定したところ、前述したように、クリスピーな食感を得る上で好ましい、温度140℃〜260℃の過熱水蒸気を用い、ピザ生地を3秒〜15秒間処理して製造したピザクラストを用いているピザの破断強度は1000〜1500gf/cmの範囲に入っていた。一方、前記の温度範囲、処理時間以外では、破断荷重の数値がこの範囲よりも低い、あるいは高いという結果が得られた。
【0045】
そこで、加熱調理した本発明のピザ、本発明の冷凍ピザを加熱調理したピザの破断強度と、クリスピーな食感との間には相関関係があり、オーブン等で加熱調理したときの破断強度が、1000〜1500gf/cmの範囲に入っていることがクリスピーな食感を呈する上で好ましい。
【0046】
以上説明した本発明のピザクラストの製造方法で製造されたピザクラストを用いている本発明の冷凍ピザは、前述したように、本発明のピザクラストの製造方法がピザクラストの工業的な大量生産に適しているものであることもあって、工業的な大量生産などに特に適しているものである。
【0047】
以下、本発明に関して実施例を挙げて説明するが、本発明は、これにより限定されるものではない。
【実施例1】
【0048】
(ピザクラストの製造方法)
本発明のピザクラストの製造方法の一例を以下に示す。
【0049】
小麦粉100重量%、イースト4重量%、食塩1重量%、砂糖5重量%、水50重量%を、縦型ミキサー(AM−30、愛工製作所製)により低速回転、時間2分で混合した。これに油脂5重量%を加え、縦型ミキサー(AM−30、愛工製作所製)により中速回転、時間8分で混合した。この調製した生地を発酵温度25℃、時間30分で一次発酵させた後に、厚さ4mmに圧延し、直径6インチの円形状に裁断した。
【0050】
この成形したピザ生地を発酵温度35℃、相対湿度85%、時間15分で二次発酵させた後、このピザ生地を温度140℃、180℃、220℃、260℃、300℃の過熱水蒸気に、時間1、3、5、10、15、20秒曝し、過熱水蒸気で処理されたピザ生地を前記の温度ごとに6種類ずつ、合計60枚の過熱水蒸気で処理されたピザ生地を準備した。その後、各ピザ生地をオーブンにより、上火温度250℃及び下火温度250℃、時間4分で焼成し、30枚のピザクラストを製造した。
【実施例2】
【0051】
(冷凍ピザの作製)
前記の実施例1で製造した30枚のピザクラストを用いて次のように本発明の冷凍ピザを作成した。
【0052】
各ピザクラストにピザソース15gを塗布した。このとき、周縁部には幅15mmでソースを未塗布の部分を設けた。これにナチュラルチーズ35gをトッピングした。このとき、周縁部にはナチュラルチーズをトッピングしなかった。これを温度−35℃で急速凍結した後に、温度−18℃、時間3日で保存し、本発明の冷凍ピザ60枚を得た。
【0053】
(比較例1)
前記の実施例1において、過熱水蒸気に替えて、温度100℃の飽和水蒸気を用いた以外は同様にして、飽和水蒸気による処理時間が異なる6枚のピザクラストを製造した。
【0054】
この12枚のピザクラストを用い、実施例2と同様にして、12枚の冷凍ピザを作製した。
【0055】
(比較例2)
過熱水蒸気によるピザ生地の処理を行わない以外は前記の実施例1と同様にしてピザクラストを製造し、このピザクラストを用い、実施例2と同様にして冷凍ピザを作製した。
【0056】
(官能試験1)
実施例2で作製した60枚の本発明の冷凍ピザ及び、比較例1で作製した12枚の冷凍ピザ、比較例2で作製した冷凍ピザのそれぞれについて、オーブンレンジにより、温度220℃、時間7分で加熱調理し、ピザを製造した。
【0057】
こうして加熱調理した後に、ピザの官能試験(食感評価)を行った。それぞれのピザを円芯状に8分割し、8名の専門パネラーが食した。
【0058】
食感評価の方法は後記の通り、比較例2のピザを対照にして5段階で行い、その平均点により表した。
【0059】
5:比較例2のピザと比較して、クリスピーである。
【0060】
4:比較例2のピザと比較して、ややクリスピーである。
【0061】
3:比較例2のピザと比較して、変わらない
2:比較例2のピザと比較して、ややクリスピーでない。
【0062】
1:比較例2のピザと比較して、クリスピーでない。
【0063】
官能試験1の評価結果を表1に示した。温度140℃〜260℃の過熱水蒸気を用いて、ピザ生地を3秒〜15秒間処理して製造したピザクラストを用いているピザは、クリスピーな食感を呈し、美味しいとの評価が高かった。
【0064】
一方、処理温度が100℃と低い場合や、処理時間が1秒と短い場合には、いずれも評価があまり高くなかった。これらの場合、水蒸気の作用が十分でなかったため、効果がそれほど高くなかったのではないかと考えられる。
【0065】
また、処理温度が300℃と高い場合や、処理時間が20秒と長い場合も、評価があまり高くなかった。これらの場合、過熱水蒸気が過度に作用してしまい、ピザクラストの表皮が硬くなりすぎたためではないかと考えられる。
【表1】

【0066】
(破断強度試験)
実施例2で作製した60枚の本発明の冷凍ピザをそれぞれオーブンレンジにより、温度220℃、時間7分で加熱調理し、本発明のピザを製造した。
【0067】
このピザについて、以下の方法で破断強度を測定した。
【0068】
加熱調理したピザのソースを塗布していない縁の部分について、加熱調理後、直ちに5ヶ所の貫入試験を行った。レオメーター(不動工業(株)社製)を用いた。プランジャーは直径3mmの円形、貫入速度は60mm/分とし、ピザクラストの縁から中心部に向けて7.5mmの箇所を測定した。破断応力の最初のピークの平均値を破断応力とした。測定結果を表2に示した。
【表2】

【0069】
前記の官能試験1でクリスピーな食感を呈し、美味しいとの評価を得た、温度140℃〜260℃の過熱水蒸気を用い、ピザ生地を3秒〜15秒間処理して製造したピザクラストを用いているピザの破断強度は1000〜1500gf/cmの範囲に入っていた。
【0070】
一方、前記の官能試験1で評価があまり高くなかった、処理温度が100℃と低い場合や、処理時間が1秒と短い場合は破断荷重の数値が低かった。
【0071】
また、前記の官能試験1で評価があまり高くなかった、処理温度が300℃と高い場合や、処理時間が20秒と長い場合は破断強度の数値が高くなっていた。
【0072】
そこで、本発明のピザ、冷凍ピザを加熱調理したピザの破断強度と、クリスピーな食感との間には相関関係があり、オーブン等で加熱調理したときの破断強度が、前記の官能試験1でクリスピーな食感を呈し、美味しいとの評価を得た、温度140℃〜260℃の過熱水蒸気を用い、ピザ生地を3秒〜15秒間処理して製造したピザクラストを用いているピザの破断強度である1000〜1500gf/cmの範囲に入っているものが、クリスピーな食感を呈する上でより好ましいと考えられた。
【実施例3】
【0073】
(ピザクラストの製造方法)
ピザクラストの他の製造方法を以下に示す。
【0074】
小麦粉100重量%、イースト3重量%、食塩1重量%、砂糖2.5重量%、ベーキングパウダー1重量%、水48重量%を、縦型ミキサー(AM−30、愛工製作所製)により低速回転、時間2分で混合した。これに油脂7.5重量%を加え、縦型ミキサー(AM−30、愛工製作所製)により中速回転、時間8分で混合した。
【0075】
この調製した生地を発酵温度25℃、時間30分で一次発酵させた後に、厚さ4mmに圧延し、直径6インチの円形状に裁断した。
【0076】
この成形したピザ生地を発酵温度35℃、相対湿度85%、時間5分で二次発酵させた後、このピザ生地を温度180℃、300℃の過熱水蒸気に、時間1、5、15、20秒曝し、過熱水蒸気で処理されたピザ生地を前記の温度ごとに4種類ずつ、合計8枚の過熱水蒸気で処理されたピザ生地を準備した。その後、各ピザ生地をオーブンにより、上火温度250℃及び下火温度250℃、時間4.5分で焼成し、8枚のピザクラストを製造した。
【実施例4】
【0077】
(冷凍ピザの作製)
前記の実施例3で製造した8枚のピザクラストを用いて次のように本発明の冷凍ピザを作成した。
【0078】
各ピザクラストにピザソース12gを塗布した。このとき、周縁部には幅15mmでソースを未塗布の部分を設けた。これにナチュラルチーズ30gをトッピングした。このとき、周縁部にはナチュラルチーズをトッピングしなかった。これを温度−35℃で急速凍結した後に、温度−18℃、時間3日で保存し、本発明の冷凍ピザ8枚を得た。
【0079】
(比較例3)
前記の実施例3において、過熱水蒸気に替えて、温度100℃の飽和水蒸気を用いた以外は同様にして、飽和水蒸気による処理時間が異なる4枚のピザクラストを製造した。
【0080】
この4枚のピザクラストを用い、実施例4と同様にして、4枚の冷凍ピザを作製した。
【0081】
(比較例4)
過熱水蒸気によるピザ生地の処理を行わない以外は前記の実施例3と同様にしてピザクラストを製造し、このピザクラストを用い、実施例4と同様にして冷凍ピザを作製した。
【0082】
(官能試験2)
実施例4で作製した8枚の本発明の冷凍ピザ及び、比較例3で作製した4枚の冷凍ピザ、比較例4で作製した冷凍ピザのそれぞれについて、オーブンレンジにより、温度250℃、時間4分で加熱調理し、ピザを製造した。
【0083】
こうして加熱調理した後に、ピザの官能試験(食感評価)を行った。それぞれのピザを円芯状に8分割し、8名の専門パネラーが食した。食感評価の方法は官能試験1の通り、比較例4のピザを対照にして5段階で行い、その平均点により表した。
【0084】
官能試験2の評価結果を表3に示した。温度180℃の過熱水蒸気を用いて、5秒〜15秒間ピザ生地を処理して製造したピザクラストを用いたピザは、クリスピーな食感を呈し、美味しいとの評価を得た。
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、食感が改良されてクリスピーな食感を持つピザクラストを、簡便に、しかも、工業的に大量生産することに適している。そして、本発明は、このようにして製造された、食感の改良された、すなわち、クリスピーな食感を持つピザクラストを用いた、クリスピーな食感を呈するピザを提供することができる。
【0086】
特に、本発明は、ピザクラストを、簡便に、しかも、工業的に大量生産することに適しているので、本発明の製造方法を用いて製造したピザクラストを用いることにより、調理したときに、クリスピーな食感を呈する冷凍ピザを工業的に大量生産することに本発明は適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピザクラストの製造工程において過熱水蒸気を用いてピザ生地を処理することを特徴とするピザクラストの製造方法。
【請求項2】
ピザクラストの製造工程において焼成工程前に過熱水蒸気を用いてピザ生地を処理することを特徴とするピザクラストの製造方法。
【請求項3】
過熱水蒸気の温度を120〜300℃とすることを特徴とする請求項1又は2の何れか1項に記載のピザクラストの製造方法。
【請求項4】
過熱水蒸気の温度を140〜260℃、過熱水蒸気を用いてピザ生地を処理する時間を3〜15秒とすることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のピザクラストの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の製造方法で製造されたピザクラストを用いているピザ。
【請求項6】
加熱調理したときの破断強度が1000〜1500gf/cmであることを特徴とする請求項5記載のピザ。
【請求項7】
請求項1〜4の何れか1項に記載の製造方法で製造されたピザクラストを用いている冷凍ピザ。
【請求項8】
加熱調理したときの破断強度が1000〜1500gf/cmであることを特徴とする請求項7記載の冷凍ピザ。


【公開番号】特開2007−29010(P2007−29010A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−217846(P2005−217846)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(000006138)明治乳業株式会社 (265)
【Fターム(参考)】