説明

ピックル液注入方法

【課題】脂身に浸透するピックル液の量を極力少なくすること、ドリップ流出量を少なくすること、ピックル液注入作業の効率を向上させこと。
【解決手段】冷凍されているベーコン原木9を解凍した後、前記ベーコン原木9にインジェクタ1の注入針11を打ち込んでピックル液を注入するピックル液注入方法において、前記注入針11を、前記ベーコン原木9が半解凍状態の時に打ち込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、食肉塊、特に、ベーコン用の食肉塊に、ピックル液や調味液等の液状物質を注入する、ピックル液注入方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家庭や飲食店等で食されているベーコンは、製品全体にわたり、均一な味であることが求められている。そこで、従来、冷凍庫に保管されているベーコン用の食肉塊(「ベーコン原木」、と言うこともある)を解凍した後、ピックル液注入インジェクタを用いて、所定量のピックル液や調味料(「ピックル液」、と言うこともある)を注入している(例えば、特許文献1、参照)。このインジェクタでは、送りコンベヤ(ベルトコンベヤ)の上方に多数の注入針を有する注入ヘッドを配設し、前記コンベヤで搬送される食肉塊が前記注入ヘッドの真下に到達したときに、該コンベヤを一時停止させるとともに、前記注入ヘッドを急降下させて前記注入針を前記原料肉塊に刺さ込み前記ピックル液を注入している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6―209693号公報,
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記ベーコン原木として、豚のバラ肉が用いられているが、豚のバラ肉は、赤身と脂身とを備えており、一般的に、三層、即ち、中間層の白色の脂肪(脂身)と、該中間層を挟む上下層の赤身とから構成されている。前記ベーコン原木に前記ピックル液が注入されると、前記脂身にピックル液の色素が浸透して白色の中に混じり込む。そのため、製品となったベーコンの脂身は、濁った色になり、見た目が良くないので、製品価値が低下してしまう。
【0005】
又、解凍中に、ベーコン原木からドリップ(解凍液)が流出するが、このドリップは旨味や栄養成分等を含んでいる。そのため、前記ドリップが流出すると、味が悪くなるだけではなく色も悪くなるので、できるだけ、その流出を抑える必要がある。
【0006】
前記冷凍されているベーコン原木は、冷蔵庫に入れて一定の温度、例えば、5℃程度、でゆっくりと解凍し、ドリップの流出を少なくするようにしているが、解凍に要する時間が長く、例えば、2日、かかる。そのため、ピックル液注入作業関連の時間が長くなってしまい、作業効率が良くない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、脂身に浸透するピックル液の量を極力少なくすることを目的とする。他の目的は、ドリップ流出量を少なくするとともに、ピックル液注入作業の効率を向上させことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、冷凍されているベーコン原木を解凍した後、前記ベーコン原木にインジェクタの注入針を打ち込んでピックル液を注入するピックル液注入方法において、前記注入針を、前記ベーコン原木が半解凍状態の時に打ち込むことを特徴とする。
【0009】
この発明の前記半状態の時の前記ベーコン原木の温度は、+1℃〜−3℃であることを特徴とする。この発明の前記ベーコン原木は、上下層の赤身と、中間層の脂身と、を備えていることを特徴とする。この発明の前記ベーコン原木の上下層の赤身は、解凍状態であり、中間層の脂身は、冷凍状態であることを特徴とする。この発明の前記ベーコン原木は、前記ピックル液注入後、マッサージ装置に投入されてマッサージされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明は、ベーコン原木が半解凍状態の時、即ち、中間層の脂身が冷凍状態の時に注入針が打たれるので、ピックル液は凍っている脂身に浸入し難い。そのため、ピックル液注入の前後において、前記脂身の色は、殆ど変化せず、綺麗な白色を維持するので、見た目が良く、商品価値が高まる。
【0011】
ベーコン原木が半解凍状態の時にピックル液を注入するので、完全に解凍する場合に比べ、解凍に要する時間を短くできるとともに、ドリップの流出も少ない。因みに、本発明によると、従来例に比べ、解凍時間が約半分に短縮され、又、ドリップ流出量も約4%程度減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本件発明の実施例を示す正面図である。
【図2】ベーコン原木の拡大断面図である。
【図3】他のベーコン原木の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本件発明者は、ベーコン原木の中間層である脂肪(脂身)が、製品になると濁るのは、ピックル液が脂身に浸透する為であると考えた。そこで、このピックル液の脂身への浸透防止対策について、鋭意研究を行ったところ、次のことがわかった。
(1)解凍時には、上下層の赤身が先に解凍し、後に、中間層の脂身が解凍すること、
(2)注入針は、ピックル液注入時に中間層の脂身を貫通するが、該脂身が凍っていると、ピックル液は浸透し難いこと。
【0014】
そこで、本発明者は、冷凍されているベーコン原木が半解凍状態の時に、注入針を打ち込んでピックル液を注入すれば前記課題は解決できることを知った。本件発明は、上記知見に基づいて完成したものである。
【実施例】
【0015】
この発明の実施例を図1、図2により説明する。ベーコン用の食肉塊として用いられる豚のバラ肉(ベーコン原木)9は、図2に示すように、中心部分(中間層)の脂身9wは、上下層の赤身9r、9rにより挟まれており、所謂3層構造となっている。このバラ肉9は、略四角柱状に形成され、例えば、その厚さは34mm〜45mm、横260mm、縦500mmに形成されている。
【0016】
前記ベーコン原木9は、冷凍されて保管されている。このベーコン原木9を冷蔵庫(図示省略)に入れ、低温、例えば、5℃程度でゆっくりと解凍するが、解凍の途中において、表面が柔らかく中心部分(芯)が凍っている状態、即ち、半解凍状態、になったら前記冷蔵庫から取り出す。この時、上下層の赤身9r、9rは解凍状態であり、中心部分(中間層)の脂身9wは、冷凍状態となっている。この半解凍時のベーコン原木9の温度は、例えば、+1℃〜−3℃、である。
【0017】
図1に示すように、前記冷蔵庫から取り出されたベーコン原木9は、ベルトコンベヤ3上に載置され、注入針7の真下まで搬送される。そうすると、ベルトコンベヤ3が停止すると共に、インジェクタ1の注入ヘッド2と押え板13が前記ベーコン原木9に向かって矢印A1方向に移動(降下)する。そして、前記押え板13はベーコン原木9を押さつける共に、注入針11が前記押え板13のガイド孔を通って前記ベーコン原木9に打ち込まれる。
【0018】
前記注入針11は、注入ヘッド2から供給されるピックル液を噴出しながら、順次、上層の赤身9r、中心部分(中間層)の脂身9w、下層の赤身9rに突き刺さってピックル液を注入するが、前記中心部分の脂身9wは、冷凍状態であるので、ピックル液が浸透し憎い。そのため、前記脂身9wには、殆どピックル液が浸透しないので、ピックル液注入前の白色の状態を維持することができる。
【0019】
前記注入針11が、下限移動位置まで下降すると、ピックル液の供給が停止される。そして、前記注入ヘッド2は矢印A1と反対方向に移動(上昇)し、これに伴い、該注入針11はベーコン原木9から抜け、押え板13はベーコン原木9から離れて上昇し、それぞれ元の位置に戻る。
【0020】
前述のようにして、前記ピックル液の注入作業が完了すると、前記ベルトコンベヤ3が矢印A3方向に移動(回動)し、前記ベーコン原木9を所定位置に搬送する。所定位置まで搬送された前記ベーコン原木9は、マッサージ装置に投入されてマッサージされる。
【0021】
この発明の実施例は、上記に限定されるものではなく、例えば、前記実施例では、脂身が中心部分に位置し、上下層の赤身により挟まれている、3層構造のベーコン原木について説明したが、このベーコン原木と同様な脂身を備える他の食肉塊(原木)にも本発明を適用できることは勿論である。又、ベーコン原木は、必ずしも正確な三層構造でなくても、例えば、図3に示すように、脂身9wが中間層(中心部分)のみに位置している部分(三層部分)と、中間層を超え上層までに及んでいる部分(二層部分)とからなる場合においても、本件発明の適用することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 インジェクタ
2 注入ヘッド
9 ベーコン原木
9r 赤身
9w 脂身
11 注入針

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍されているベーコン原木を解凍した後、前記ベーコン原木にインジェクタの注入針を打ち込んでピックル液を注入するピックル液注入方法において、
前記注入針を、前記ベーコン原木が半解凍状態の時に打ち込むことを特徴とするピックル液注入方法。
【請求項2】
前記半解凍状態の時の前記ベーコン原木の温度は、+1℃〜−3℃であることを特徴とする請求項1記載のピックル液注入方法。
【請求項3】
前記ベーコン原木は、上下層の赤身と、中間層の脂身と、を備えていることを特徴とする請求項1、又は、2記載のピックル液注入方法。
【請求項4】
前記ベーコン原木の上下層の赤身は、解凍状態であり、中間層の脂身は、冷凍状態であることを特徴とする請求項1、2、又は、3記載のピックル液注入方法。
【請求項5】
前記ベーコン原木は、前記ピックル液注入後、マッサージ装置に投入されマッサージされることを特徴とする請求項1、2、3、又は、4記載のピックル液注入方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−254022(P2012−254022A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127340(P2011−127340)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(506285574)
【Fターム(参考)】