説明

ピルビン酸アミド類

【課題】 安定性が高く、それ自体の匂いが無く、アミン類、メルカプタン類及びピリジン類等の臭気を効率よく除去することができる、消臭性能に優れた化合物、その効率的な製造方法、及びそれを含有する消臭剤を提供すること。
【解決手段】 〔1〕一般式(1)
【化1】


(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基又はヒドロキシアルキル基を示し、また互いに結合して環構造を形成していてもよい。)で表されるピルビン酸アミド類、〔2〕ピルビン酸低級アルキルエステルをアセタール化、アミド化及び脱アセタール化して前記ピルビン酸アミド類を製造する方法、並びに〔3〕前記ピルビン酸アミド類を含有する消臭剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はピルビン酸アミド類に関する。詳しくは、新規なピルビン酸アミド類、その効率的な製造方法、及びそれを含有する消臭剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アミン類及びメルカプタン類の臭気を除去する目的で使用される消臭剤としては、メタクリル酸エステル類、アルデヒド類等が挙げられる。そして、メタクリル酸エステル類の中ではラウリルメタクリレートが、アルデヒド類の中ではベンズアルデヒド、シトラール等が一般に消臭剤として用いられている。
しかしながら、ラウリルメタクリレートは、アミン類及びメルカプタン類の臭気に対しては消臭効果が弱く、また、ベンズアルデヒド、シトラール等は、アミン類の臭気については比較的効率よく消臭できるが、メルカプタン類の臭気に対しては消臭効果が十分でない。
【0003】
一方、ピルビン酸エステルを有効成分とする消臭剤(特許文献1)やα−ジケトン化合物を有効成分とする消臭剤(特許文献2)が知られている。
しかしながら、ピルビン酸エステルやα−ジケトン化合物は、アミン類、メルカプタン類及びピリジン類に対する消臭効果はあるものの、ピルビン酸エステルは水溶液中での安定性が悪く、また、ピルビン酸エステル、α−ジケトン化合物はそれ自体が強い匂いを有しており、消臭剤として使用することには支障があった。
そこで、安定性が高く、消臭剤自体の匂いが無く、アミン類、メルカプタン類及びピリジン類等の臭気を効率よく除去することができる消臭剤が望まれていた。
【0004】
【特許文献1】特開平6−121822号公報
【特許文献2】特開平8−275997号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、安定性が高く、それ自体の匂いが無く、アミン類、メルカプタン類及びピリジン類等の臭気を効率よく除去することができる、消臭性能に優れた化合物、その効率的な製造方法、及びそれを含有する消臭剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の構造を有するピルビン酸アミド類が、文献未載の新規な化合物であって、それ自体の匂いがない上、安定性が高く、かつアミン類、メルカプタン類及びピリジン類等の臭気を効率よく除去し得ることを見出した。
また、このピルビン酸アミド類は、特定の工程により、効率的に製造し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、
〔1〕一般式(1)
【0007】
【化1】

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基又はヒドロキシアルキル基を示し、また、互いに結合して環構造を形成していてもよい。)で表されるピルビン酸アミド類、
【0008】
〔2〕酸性条件下で、ピルビン酸低級アルキルエステルにアルコール類を反応させ、該ピルビン酸低級アルキルエステルの2位のカルボニル基をアセタール化し、次いでアルカリ条件下で、一般式(2)
【0009】
【化2】

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基又はヒドロキシアルキル基を示し、また、互いに結合して環構造を形成していてもよい。)で表されるアミン類を反応させて酸アミド体を得た後、水素雰囲気下で加水素分解して脱アセタール化する、前記一般式(1)で表されるピルビン酸アミド類の製造方法、及び
〔3〕前記(1)のピルビン酸アミド類を含有する消臭剤、
を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、文献未載の新規な化合物であって、それ自体の匂いがない上、安定性が高く、かつアミン類、メルカプタン類及びピリジン類等の臭気を効率よく除去することができ、広範な用途に利用可能な、消臭性能に優れるピルビン酸アミド類、その効率的な製造方法、及びそれを含有する消臭剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のピルビン酸アミド類は、文献未載の新規な化合物であって、下記一般式(1)で表される構造を有する。
【0012】
【化3】

【0013】
一般式(1)において、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基又はヒドロキシアルキル基を示し、また、互いに結合して環構造を形成していてもよい。
前記アルキル基としては、炭素数1〜20ものが好ましく、炭素数2〜18ものがより好ましい。アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0014】
アルケニル基としては、炭素数2〜20のものが好ましく、炭素数3〜18ものがより好ましい。アルケニル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。
アルケニル基の具体例としては、アリル基、プロペニル基、各種ブテニル基、各種オクテニル基、各種デセニル基、各種ドデセニル基、各種テトラデセニル基、各種ヘキサデセニル基、各種オクタデセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基等が挙げられる。
【0015】
ヒドロキシアルキル基としては、炭素数1〜20ものが好ましく、炭素数2〜18ものがより好ましい。ヒドロキシアルキル基の具体例としては、前記アルキル基の水素原子の少なくとも1つが水酸基に置換した基を挙げることができ、具体的には2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基等が挙げられる。
また、R1とR2とが互いに結合して、Nをヘテロ原子とする環構造を有する基としては、例えば1−ピロリジニル基、ピペリジノ基、ヘキサメチレンイミノ基等が挙げられる。
1及びR2としては、ピルビン酸アミド類の水への溶解性の点から、それらのうちのいずれかが水素原子であるものが好ましい。
【0016】
本発明のピルビン酸アミド類の具体例としては、N−エチルピルビン酸アミド、N−2−ヒドロキシエチルピルビン酸アミド、N−プロピルピルビン酸アミド、N−3−ヒドロキシプロピルピルビン酸アミド、N−ブチルピルビン酸アミド、N−ヘキシルピルビン酸アミド、N−オクチルピルビン酸アミド、N−デシルピルビン酸アミド、N−ラウリルピルビン酸アミド、N−ミリスチルピルビン酸アミド、N−パルミチルピルビン酸アミド、N−ステアリルピルビン酸アミド、N−シクロペンチルピルビン酸アミド、N−シクロヘキシルピルビン酸アミド、N−アリルピルビン酸アミド、N−オレイルピルビン酸アミド、N−シクロペンテニルピルビン酸アミド、N−シクロヘキセニルピルビン酸アミド等が挙げられる。
【0017】
一般式(1)で表される本発明のピルビン酸アミド類の製造方法については、特に制限はないが、本発明の方法によれば効率的に製造することができる。
本発明の方法においては、まず酸性条件下で、ピルビン酸低級アルキルエステルにアルコール類を反応させ、該ピルビン酸低級アルキルエステルの2位のカルボニル基をアセタール化する。この反応式を次に示す。
【0018】
【化4】

(Rはメチル基、エチル基等の低級アルキル基、Aはアルコール残基を示す。)
【0019】
この反応において、アセタール化に用いるアルコール類(4)としては、通常ベンジルアルコールが好ましく用いられる。該アルコール類(4)の量は、ピルビン酸低級アルキルエステル(3)1モルに対して、2〜3モルが好ましく、2〜2.2モルがより好ましい。
前記アセタール化反応は、酸性条件下で行われ、酸としては、例えばp−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、三フッ化ホウ素エーテル錯体等が用いられる。これらの酸は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中では三フッ化ホウ素エーテル錯体が好ましい。その使用量は、ピルビン酸低級アルキルエステル(3)1モルに対して、1〜3モルが好ましく、1〜2モルが好ましい。
この反応は、エーテル、テトラヒドロフラン等の溶媒中で行うこともできるが、無溶媒で行うことが好ましい。反応温度は、通常−10〜30℃であり、0〜25℃が好ましい。反応時間は、反応温度などの条件によっても異なるが、通常30分〜2時間程度が好ましい。反応の終点は、例えばガスクロマトグラフィーにより確認することができる。
このようにして、ピルビン酸低級アルキルエステルのアセタール化体(5)を得ることができる。
【0020】
次いで、得られたピルビン酸低級アルキルエステルのアセタール化体(5)に、アルカリ条件下で、一般式(2)
【0021】
【化5】

(式中、R1及びR2は、前記と同じである。)
で表されるアミン類を反応させて、酸アミド体を得る。この反応式を次に示す。
【0022】
【化6】

(R1、R2及びAは、前記と同じである。)
【0023】
アセタール化体(5)とアミン類(2)との反応は、アルカリ条件下で行われる。アルカリとしては、ナトリウムミトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド等のアルカリ金属のアルコキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物等を用いることができる。これらのアルカリは、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。その使用量は、アセタール化体1モルに対して、0.01〜40モルが好ましく、10〜30モルがより好ましい。
アミン類(2)の具体例とは、エチルアミン、エタノールアミン、プロピルアミン、プロパノールアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、アリルアミン、オレイルアミン、シクロペンテニルアミン、シクロヘキセニルアミン等が挙げられる。
この反応に用いるアミン類(2)の量は、ピルビン酸低級アルキルエステルのアセタール化体(5)1モルに対して、1〜3モルが好ましく、1.5〜2.5モルがより好ましい。
【0024】
この反応に用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、トルエン、キシレン等の炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類等が挙げられる。これらの中でもアルコール類が好ましく、特にエタノールが好ましい。溶媒の量としては、アセタール化体(5)とアミン類(2)の合計100質量部に対して50〜150質量部が好ましく、80〜120質量部がより好ましい。
反応温度は、用いる溶媒によっても異なるが、通常10〜50℃であり、20〜40℃が好ましい。反応時間は、反応温度などの条件によっても異なるが、通常6〜24時間程度が好ましい。反応の終点は、例えばガスクロマトグラフィーにより確認することができる。
このようにして、酸アミド体であるピルビン酸アミド類のアセタール化体(6)を得ることができる。
【0025】
次に、得られたピルビン酸アミド類のアセタール化体(6)を、水素雰囲気下で加水素分解して脱アセタール化することにより、前記一般式(1)で表されるピルビン酸アミド類を得ることができる。この反応式を次に示す。
【0026】
【化7】

(R1、R2及びAは、前記と同じである。)
【0027】
この加水素化反応においては、触媒が用いられる。該触媒としては、例えば、5質量%Pd/C、10質量%Pd/C、4.5質量%Pd―0.5質量%Pt/C等が挙げられる。これらの中では、4.5質量%Pd−0.5質量%Pt/Cが好ましい。
使用する触媒の量は、ピルビン酸アミド類のアセタール化体(6)100質量部に対して、好ましくは10〜30質量部、より好ましくは15〜25質量部である。
溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール類を用いることができるが、エタノールがより好ましい。溶媒量としては、ピルビン酸アミド類のアセタール化体(6)100質量部に対して100〜2000質量部が好ましく、500〜1000質量部がより好ましい。
反応圧力は、通常大気圧〜1MPaで行われ、0.3〜0.6MPaで行うことが好ましい。反応温度は、用いる溶媒によっても異なるが、通常10〜50℃であり、20〜40℃が好ましい。反応時間は、反応温度などの条件によっても異なるが、通常6〜24時間程度が好ましい。反応の終点は、例えばガスクロマトグラフィーにより確認することができる。
このようにして、目的の一般式(1)で表されるピルビン酸アミド類を製造することができる。
【0028】
本発明の一般式(1)で表されるピルビン酸アミド類は、アミン類、メルカプタン類及びピリジン類等に対して優れた消臭効果を示す。
本発明の消臭剤は、一般式(1)で表されるピルビン酸アミド類を含むものである。前記ピルビン酸アミド類の含有量は、消臭するアミン類、メルカプタン類及びピリジン類等の濃度によって異なるが、消臭剤として使用する製品に対して0.001質量%以上含有されていればよく、好ましくは0.01〜100.0質量%の範囲で含有させる。
本発明の消臭剤には、前記ピルビン酸アミド類と共に、他の消臭剤を含むことができる。さらに、通常の消臭剤に添加される、酸化防止剤、pH調整剤、防腐剤、香料、界面活性剤、色素、紫外線吸収剤等の添加剤を含有させることもできる。また、消臭剤の形態は、使用目的に応じて液状、粉状、ゲル状、粒状等とすることができる。
本発明の消臭剤の使用法については、特に制限はない。例えば台所周りに発生する生ごみ臭、トイレの悪臭に対しては、種々の芳香剤中に香料と共に混合する方法、又はエアゾール製品中に配合する方法等により使用することができる。また、本発明の消臭剤は、冷蔵庫内の悪臭の他、下水処理場、塵芥処理場、家畜舎等の悪臭の消臭に利用することができる。
【実施例】
【0029】
以下の実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「質量部」及び「質量%」である。
実施例1〔N−2−ヒドロキシエチルピルビン酸アミド(1−a)の製造〕
この製造における反応式を次に示す。
【0030】
【化8】

【0031】
500mLの四つ口フラスコに、ピルビン酸エチル(3−a)100.00g(0.861mol)、ベンジルアルコール(4−a)186.26g(1.722mol)を投入し、攪拌して0℃に冷却した。三フッ化ホウ素エーテル錯体122.23g(0.861mol)を15分かけて反応溶液に滴下した。滴下終了後の反応温度は10℃であった。その後、室温まで昇温し、室温で1時間攪拌した。反応溶液を飽和炭酸水素ナトリウム溶液2L中に2時間かけて滴下し、分層した上層を集めた。上層(276.17g)の単蒸留(塔頂68℃、塔底120℃、36Pa)を行って低沸部を除去し、フラスコ内に残った褐色油状物として、ベンジルアセタール体(5−a)87.66g(純度91.5%)を得た。
1Lの四つ口フラスコに、得られたベンジルアセタール体(5−a)87.66g(0.279mol)、エタノール(143mL)、モノエタノールアミン(2−a)34.08g(0.558mol)を加え、室温で5分間攪拌を行った。20%ナトリウムエトキシドエタノール溶液18.97g(0.056mol)を5分間かけて滴下し、その後24時間室温で攪拌を行った。イオン交換水(500mL)とヘキサン(100mL)を加え、上層をpH6.86の緩衝液で水層が中性になるまで洗浄を行った。上層の有機溶媒を減圧除去し、褐色油状物のアミド体(6−a)78.49g(純度94.9%)を得た。
1Lの水素添加用フラスコに、アミド体(6−a)78.49g、4.5%Pd−0.5%Pt/C14.88g、エタノール(750mL)を加え水素雰囲気(0.45MPa)下、室温で8時間攪拌を行った。イオン交換水(50mL)を添加し、触媒をろ過した。溶媒を減圧除去し、得られた無色透明油状物に対して、イオン交換水(100mL)、酢酸エチル(100mL)を加え分層を行い、下層の水を減圧除去し、N−2−ヒドロキシエチルピルビン酸アミド(1−a)を、無色透明油状物として3.86g(純度94.5%)を得た。
【0032】
得られた化合物N−2−ヒドロキシエチルピルビン酸アミド(1−a)についての1H−NMR、13C−NMR及びIRの測定結果を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ(ppm)
7.40(1H, brs, >NH) ,3.78(2H, t, J=6.0Hz, -NH-CH2-CH2), 3.48(2H, t, J=6.0Hz, -CH2-CH2-OH), 2.25(1H, brs, -OH)
13C−NMR(100MHz,CDCl3):δ(ppm)
196.4(CH3-C=O), 160.6(-NH-C=O), 61.2(-CH2-OH), 42.1(-NH-CH2), 24.5(CH3-C=O)
IR(KBr)(cm-1)
3403, 2941, 2885, 2528, 2312, 1724, 1668, 1535, 1460, 1414, 1360, 1265, 1219, 1178, 1128, 1068, 1057, 1018, 966, 939, 903, 872, 804, 771, 700,606, 536, 513, 486, 407
また、1H−NMR測定チャートを図1に、13C−NMR測定チャートを図2に、IR測定チャートを図3に示す。
【0033】
実施例2〔N−ラウリルピルビン酸アミド(1−b)の製造〕
この製造における反応式を次に示す。
【0034】
【化9】

【0035】
500mLの四つ口フラスコに、ピルビン酸エチル(3−a)81.81g(0.705mol)、ベンジルアルコール(4−a)152.38g(1.409mol)を投入し、攪拌して0℃に冷却した。三フッ化ホウ素エーテル錯体100.00g(0.705mol)を15分かけて反応溶液に滴下した。滴下終了後の反応温度は10℃であった。その後、室温まで昇温し、室温で1時間攪拌した。反応溶液を飽和炭酸水素ナトリウム溶液2L中に2時間かけて滴下し、分層した上層を集めた。上層(222.80g)の単蒸留(塔頂68℃、塔底120℃、36Pa)を行って低沸部を除去し、フラスコ内に残った褐色油状物として、ベンジルアセタール体(5−a)67.40g(純度90.3%)を得た。
500mLの四つ口フラスコに、得られたベンジルアセタール体(5−a)67.00g(0.192mol)、エタノール(96mL)、ラウリルアミン(2−b)39.24g(0.212mol)を加え、室温で5分間攪拌を行った。20%ナトリウムエトキシドエタノール溶液39.30g(0.114mol)を5分間かけて滴下し、その後85時間室温で攪拌を行った。イオン交換水(500mL)とヘキサン(100mL)を加え、上層をpH6.86の緩衝液で水層が中性になるまで洗浄を行った。上層の有機溶媒を減圧除去し、褐色油状の粗生成物を74.10g得た。ヘキサン溶媒を用いた再結晶により白色結晶物のアミド体(6−b)を39.30g(純度100.0%)を得た。
500mLの水素添加用フラスコにアミド体(6−b)24.00g(0.053mol)、4.5%Pd−0.5%Pt/C 3.49g、エタノール(176mL)を加え水素雰囲気(0.19MPa)下、室温で36.5時間攪拌を行った。イオン交換水(50mL)を添加し、触媒をろ過した。溶媒を減圧除去し、得られた白色結晶物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン:酢酸エチル=容量比4:1)で精製を行い、N−ラウリルピルビン酸アミド(1−b)を9.61g得た。
【0036】
得られたN−ラウリルピルビン酸アミド(1−b)についての1H−NMR、13C−NMR及びIRの測定結果を以下に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ(ppm)
6.92(1H, brs, >NH) ,3.27(2H, q, J=6.6Hz, -NH-CH2-CH2), 2.47(3H, s, CH3-C=O), 1.53(2H, quint., -NH-CH2-CH2-), 1.22-1.34(18H, m, -NH-CH2-CH2-(C9H18)-CH3), 0.88(3H, t, J=7.2Hz, CH3-C=O)
13C−NMR(100MHz,CDCl3):δ(ppm)
197.3(CH3-C=O), 160.2(-NH-C=O), 39.8(-NH-CH2-), 32.3, 30.0, 30.0, 29.9, 29.9, 29.9, 29.7, 29.6, 27.3, 24.9(CH3-C=O), 23.1, 14.6(-CH2-CH3)
IR(NaCl)(cm-1)
3336, 2954, 2920, 2850, 1724, 1660, 1523, 1468, 1406, 1360, 1296, 1273, 1255, 1230, 1200, 1173, 1055, 1012, 968, 889, 868, 760, 723, 650, 617, 505, 455, 420
また、1H−NMR測定チャートを図4に、13C−NMR測定チャートを図5に、IR測定チャートを図6に示す。
【0037】
実施例3
実施例1で製造したN−2−ヒドロキシエチルピルビン酸アミド(1−a)2gを水38gに溶解させて、消臭剤1を調製した。
実施例4
実施例2で製造したN−ラウリルピルビン酸アミド(1−b)2gを水38gに溶解させて、消臭剤2を調製した。
【0038】
試験例1(アンモニアに対する消臭効果)
長さ7cm、幅0.5cmのろ紙に、実施例3及び4で得られた消臭剤1及び2を別々に250mg含浸させ、続いて同じろ紙に1%アンモニア水溶液50mgを添加した。3L容のビーカーにろ紙を立て、ラップを掛けて20分間放置した後、ビーカーに充満した臭いの官能評価を行った。
なお、ブランク1として、消臭剤を含浸させないろ紙を用い、ブランク2として、消臭剤の代わりに水250mgを含浸させたろ紙を用い、ブランク3として消臭剤の代わりにエタノール259mgを含浸させたろ紙を用いて、同様の試験を行った。
官能評価は、放置する前の初期のアンモニア臭気を3とし、アンモニア臭気を全く感じない場合を0として、0〜3の4段階で行った。官能評価はパネラー5人により行い、その平均値を求めた。結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

表1の結果から、実施例3及び4の消臭剤1及び2は、ブランク1〜3に比べて、アンモニアに対する消臭効果が優れていることが分かる。
【0040】
試験例2(メルカプタンに対する消臭効果)
1%アンモニア水溶液50mgの代わりに、0.0002%のメチルメルカプタンのプロピレングリコール溶液150mgを用いた他は、試験例1と同様にして官能評価を行った。結果を表2に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
表2の結果から、実施例3及び4の消臭剤1及び2は、ブランク1〜3に比べて、メルカプタンに対する消臭効果が優れていることが分かる。
【0043】
試験例3(ピリジンに対する消臭効果)
1%アンモニア水溶液50mgの代わりに、0.05%のピリジン水溶液20mgを用いた他は、試験例1と同様にして官能評価を行った。結果を表3に示す。
【0044】
【表3】

表3の結果から、実施例3及び4の消臭剤1及び2は、ブランク1〜3に比べて、ピリジンに対する消臭効果が優れていることが分かる。
表1〜3で示された結果より、実施例3及び4の消臭剤1及び2は、アミン類、メルカプタン類及びピリジンの全てに対して消臭効果を有するものであることが分かる。
【0045】
試験例4(ピルビン酸エチル及びN−2−ヒドロキシエチルピルビン酸アミドの水溶液中での安定性試験)
ピルビン酸エチル0.1g、エタノール0.1g、イオン交換水99.8gを混合した水溶液をサンプル1とし、N−2−ヒドロキシエチルピルビン酸アミド0.1g、イオン交換水99.9gを混合した水溶液をサンプル2とし、25℃でそれぞれ攪拌を行い、経時でガスクロマトグラフィーにより、ピルビン酸エチル及びN−2−ヒドロキシエチルピルビン酸アミドの残存率を求めた。結果を表4に示す。
【0046】
【表4】

表4の結果より、N−2−ヒドロキシエチルピルビン酸アミドは、水溶液中で安定であることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施例1で得られた、N−2−ヒドロキシエチルピルビン酸アミドの1H−NMR測定チャートである。
【図2】実施例1で得られた、N−2−ヒドロキシエチルピルビン酸アミドの13C−NMR測定チャートである。
【図3】実施例1で得られた、N−2−ヒドロキシエチルピルビン酸アミドのIR測定チャートである。
【図4】実施例2で得られた、N−ラウリルピルビン酸アミドの1H−NMR測定チャートである。
【図5】実施例2で得られた、N−ラウリルピルビン酸アミドの13C−NMR測定チャートである。
【図6】実施例2で得られた、N−ラウリルピルビン酸アミドのIR測定チャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基又はヒドロキシアルキル基を示し、また、互いに結合して環構造を形成していてもよい。)で表されるピルビン酸アミド類。
【請求項2】
一般式(1)において、R1及びR2のいずれか一方が水素原子である請求項1に記載のピルビン酸アミド類。
【請求項3】
酸性条件下で、ピルビン酸低級アルキルエステルにアルコール類を反応させ、該ピルビン酸低級アルキルエステルの2位のカルボニル基をアセタール化し、次いでアルカリ条件下で、一般式(2)
【化2】

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基又はヒドロキシアルキル基を示し、また、互いに結合して環構造を形成していてもよい。)で表されるアミン類を反応させて酸アミド体を得た後、水素雰囲気下で加水素分解して脱アセタール化する、一般式(1)
【化3】

(式中、R1及びR2は、前記と同じである。)で表されるピルビン酸アミド類の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のピルビン酸アミド類を含有する消臭剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−176433(P2006−176433A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−370798(P2004−370798)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】