説明

ピロロベンゾジアゼピン

式(I) [式中、R10は窒素保護基であり、R11はOHまたはO-R12のいずれかであり、ここでR12は酸素保護基であり、またはR10およびR11は一緒になってN10とC11の間に二重結合を形成し;R10’およびR11’はそれぞれR10およびR11と同じ選択肢から選択される]の化合物ならびにその塩および溶媒和物。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はC2-exo不飽和を有する特定のピロロベンゾジアゼピン(PBD)二量体に関する。
【背景技術】
【0002】
ピロロベンゾジアゼピン
いくつかのピロロベンゾジアゼピン(PBD)はDNAの特定の配列を認識してこれに結合する能力を有する。好ましい配列はPuGPuである。最初のPBD抗腫瘍性抗生物質であるアンスラ
マイシン(anthramycin)は、1965年に発見された (Leimgruberら、J. Am. Chem. Soc., 87, 5793-5795 (1965); Leimgruberら、J. Am. Chem. Soc., 87, 5791-5793 (1965))。それ以来、数多くの天然のPBDが報告され、また、さまざまな類似体を合成するための10種以上の合成系路が開発されてきた(Thurstonら、Chem. Rev. 1994, 433-465 (1994))。ファミリーのメンバーには、アベイマイシン(abbeymycin) (Hochlowskiら、J. Antibiotics, 40, 145-148 (1987))、チカマイシン(chicamycin) (Konishiら、J. Antibiotics, 37, 200-206 (1984)), DC-81 (日本国特許58-180 487; Thurstonら、Chem. Brit., 26, 767-772 (1990); Boseら、Tetrahedron, 48, 751-758 (1992))、マゼスラマイシン(mazethramycin) (Kuminotoら、J. Antibiotics, 33, 665-667 (1980))、ネオスラマイシン(neothramycin) AおよびB (Takeuchiら、J. Antibiotics, 29, 93-96 (1976))、ポロスラマイシン(porothramycin) (Tsunakawaら、J. Antibiotics, 41, 1366-1373 (1988))、プロスラカルシン(prothracarcin) (Shimizuら、J. Antibiotics, 29, 2492-2503 (1982); LangleyおよびThurston, J. Org. Chem., 52, 91-97 (1987))、シバノマイシン(sibanomicin) (DC-102) (Haraら、J. Antibiotics, 41, 702-704 (1988); Itohら、J. Antibiotics, 41, 1281-1284 (1988))、シビロマイシン(sibiromycin) (Leberら、J. Am. Chem. Soc
., 110, 2992-2993 (1988))およびトママイシン(tomamycin) (Arimaら、J. Antibiotics, 25, 437-444 (1972))が含まれる。PBDは下記の一般構造:
【化1】

【0003】
を有する。
【0004】
それらは、その芳香族A環およびピロロC環の両方における置換基の数、タイプおよび位置、ならびにC環の飽和度が異なっている。B環には、DNAのアルキル化に関与する求電子中心であるN10-C11位に、イミン(N=C)、カルビノールアミン(NH-CH(OH))、またはカルビノールアミンメチルエーテル(NH-CH(OMe))のいずれかが存在する。公知の天然の産物はすべて、キラルC11a位において(S)-配置を有し、それによりC環側からA環に向かって見た場合に右まわりのねじれを与える。これが、それらにB型DNAのマイナーグルーブとのイソヘリシティーに好適な三次元の形を与え、それにより、結合部位においてぴったり適合する(Kohn,「抗生物質III」(In Antibiotics III), Springer-Verlag, New York, pp. 3-11 (1975); HurleyおよびNeedham-VanDevanter, Acc. Chem. Res., 19, 230-237 (1986))。それらのマイナーグルーブに付加物を形成する能力により、それらがDNAプロセシングを妨害することが可能になるので、抗腫瘍薬として使用することが可能になる。
【0005】
WO 93/18045において、本発明者らの一部が次の化合物:
【化2】

【0006】
を開示した(実施例6)。使用された合成法の結果として、製造された最終化合物は、E-,E-型、Z-,Z-型およびE-,Z-型の混合物であった。異なる幾何異性体の量を測定した最後の化合物から外挿すると、最終的な化合物は下記の通りの比率の幾何異性体を有すると思われる。
【表1】

【0007】
グラム陽性菌
感染性疾患は世界的に死亡および疾病の主要な原因となっている。ペニシリンおよび他の抗生物質の導入以後、我々の幅広い細菌感染を効果的に治療する能力は劇的に向上したが、感染性疾患を制圧し続けるための努力に対する重大な脅威として多剤耐性が出現した。
【0008】
薬物耐性に関与する二つの最も重大な病原体はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus) (MRSA)およびバンコマイシン耐性腸球菌(enterococci) (VRE)である。
【0009】
MRSAは、院内のみでなく最近では市中でも感染する、人類にとって最も問題のある病原体の一つになっている(Tadashi Babaら、The Lancet, 359, 1819-1827 (2002); Enright, M.C., Current Opinion in Pharmacology, 3, 1-6 (2003))。黄色ブドウ球菌は人口のおよそ30〜40%の鼻腔に無害にコロニーを作っており、またたとえば手のような乾燥した皮膚の上でも生存し得る。医療従事者および病院スタッフが保菌者となる可能性があり、彼らの看護を通じて無意識に患者に感染させる可能性がある。日和見病原体である黄色ブドウ球菌は、感染しやすい免疫不全者には懸念の元である。この菌は、たとえば開いた傷に汚染された手術器具を使用した場合に、手術後に多くの部位に感染し得る。血液、心臓、骨および関節も感染の主要な標的組織である。さらに、この生物が引き起こす広いスペクトルの病原性には、毒素性ショック症候群、肺炎および食中毒も含まれる。黄色ブドウ球菌感染は過去には効力の高い抗生物質により有効に治療されていたが、多剤耐性の出現によりこれらの感染を有効に治療する可能性が限られてきている。
【0010】
VREは院内感染の原因であり、最近では多くの医療施設の大きな問題となっている。腸球菌ファミリーにはいくつかのメンバーが存在するが、通常二つのみ、すなわちE.faecalisおよびE.faeciumが病院における高い病因および死因に関与している。腸球菌は正常な胃腸管植物相の一部であり、健康な個体により保菌される。多くの入院患者はVREのコロニーを有しているが、これは必ずしも感染につながらない。VRE感染は免疫不全の患者および集中治療室に入院している患者などの重い病気の患者に起こる傾向がある。感染症の患者には通常多くの感染が同時に起こっているので、VREがどの程度の死亡率を有するのかを正確に証明することは困難である。多くの場合、VREとは関係なく患者が有する重篤な病気が単独の死因となっていると思われる。影響を受ける組織は通常尿管、手術の部位、血液および腹部である。さらに、心内膜炎はVRE菌血症の結果起こる重篤な感染症である。VREの伝達の方法はMRSAと同様である。コロニーを有する医療従事者との直接の皮膚対皮膚の接触および汚染された手術器具が主な要因であると思われる。細菌は医療従事者の手および腕の上に生存するのみではなく、病院のシーツ類およびベッドならびに他の身の回りの物品上で数日間残存すると思われる。
【発明の開示】
【0011】
第1の態様において、本発明は式I:
【化3】

【0012】
[式中、
R10は、窒素保護基であり、R11はOHまたはO-R12のいずれかであり、ここで、R12は、酸素保護基であり、またはR10およびR11は一緒になってN10とC11の間に二重結合を形成し;
R10’およびR11’はそれぞれR10およびR11と同じ選択肢から選択される]
の化合物ならびにその塩および溶媒和物を含む。
【0013】
R10’およびR11’がそれぞれR10およびR11と同一であることが好ましい。
【0014】
第2の態様において、本発明は式Iの化合物の合成を含む。
【0015】
第3の態様において、本発明は治療の方法に使用するための式Iの化合物ならびにその製薬上許容される塩および溶媒和物を含む。
【0016】
第4の態様において、本発明は式Iの化合物ならびにその製薬上許容される塩および溶媒和物、ならびに製薬上許容される賦形剤を含む医薬組成物を含む。
【0017】
第5の態様において、本発明は遺伝子に基づく病気の治療のための医薬品の製造への、式Iの化合物ならびにその製薬上許容される塩および溶媒和物の使用を含む。
【0018】
第6の態様において、本発明は、遺伝子に基づく病気にかかった被験体に治療上有効な量の式Iの化合物またはその製薬上許容される塩および溶媒和物を投与することを含む、遺伝子に基づく病気の治療のための方法を含む。
【0019】
定義
窒素保護基
窒素保護基は当業者に公知である。好ましい窒素保護基は、下記の一般式:
【化4】

【0020】
を有するカルバメート保護基である。
【0021】
多くの可能なカルバメート窒素保護基がGreene, T.W.およびWuts, G.M.,「有機合成における保護基」(Protective Groups in Organic Synthesis)、第3版、John Wiley & Sons, Inc., 1999の503〜549ページに挙げられており、この文献を参照により本明細書に組み入れる。特に好ましい保護基には、Alloc、Troc、Teoc、BOC、Doc、Hoc、TcBOC、Fmoc、1-Adocおよび2-Adocが含まれる。
【0022】
同様に本発明における使用に適しているのは、WO 00/12507(この文献を参照により本明細書に組み入れる)に記載されるようなin vivoで(たとえば、酵素的に、光を使用して)除去することができる窒素保護基である。これらの保護基の例には、ニトロレダクターゼに不安定な(たとえば、ADEPT/GDEPTを使用して)、
【化5】

【0023】
光に不安定な、
【化6】

【0024】
ならびに、グルタチオンに不安定な(たとえば、NPEPTを使用して)、
【化7】

【0025】
が含まれる。
【0026】
酸素保護基
酸素保護基は当業者に公知である。多くの好適な基がGreene, T.W.およびWuts, G.M., 「有機合成における保護基」(Protective Groups in Organic Synthesis)、第3版、John Wiley & Sons, Inc., 1999の23〜200ページに記載されており、この文献を参照により本明細書に組み入れる。
【0027】
特に興味深いクラスには、シリル、エーテル、メチルエーテル、アルキルエーテル、ベンジルエーテル、エステル、安息香酸エステル、炭酸エステル、およびスルホン酸エステルが含まれる。
【0028】
置換基
本明細書において「場合により置換された」という表現は、置換されていないまたは置換された親基を意味する。
【0029】
他に特定されない限り、本明細書において「置換された」という用語は、1個以上の置換基を有する親基を意味する。本明細書において、「置換基」という用語は慣用の意味で使用され、親基に共有結合により結合した、または適切な場合には縮合した化学基を指す。さまざまな置換基が公知であり、その形成法およびさまざまな親基に導入する方法もまた公知である。
【0030】
置換基の例を下により詳細に記載する。
【0031】
C1-7アルキル:本明細書において使用される「C1-7アルキル」という用語は、1〜7個の炭素原子を有し、脂肪族または脂環式であり、飽和または不飽和(たとえば部分的不飽和、完全に不飽和)である炭化水素化合物の1個の炭素原子から1個の水素原子を除去することにより得られる1価の基を意味する。したがって、「アルキル」という用語には、下で論じるアルケニル、アルキニル、シクロアルキル等のサブクラスが含まれる。
【0032】
飽和アルキル基の例には、これらに限定されないが、メチル(C1)、エチル(C2)、プロピル(C3)、ブチル(C4)、ペンチル(C5)、ヘキシル(C6)およびヘプチル(C7)が含まれる。
【0033】
飽和直鎖アルキル基の例には、これらに限定されないが、メチル(C1)、エチル(C2)、n-プロピル(C3)、n-ブチル(C4)、n-ペンチル(アミル)(C5)、n-ヘキシル(C6)およびn-ヘプチル(C7)が含まれる。
【0034】
飽和分枝鎖アルキル基の例には、イソプロピル(C3)、イソブチル(C4)、sec-ブチル(C4)、tert-ブチル(C4)、イソペンチル(C5)、およびネオペンチル(C5)が含まれる。
【0035】
C2-7アルケニル:本明細書において使用される「C2-7アルケニル」という用語は、1個以上の炭素-炭素二重結合を有するアルキル基を意味する。
【0036】
不飽和アルケニル基の例には、これらに限定されないが、エテニル(ビニル、-CH=CH2)、1-プロペニル(-CH=CH-CH3)、2-プロペニル(アリル、-CH-CH=CH2)、イソプロペニル(1-メチルビニル、-C(CH3)=CH2)、ブテニル(C4)、ペンテニル(C5)、およびヘキセニル(C6)が含まれる。
【0037】
C2-7アルキニル:本明細書において使用される「C2-7アルキニル」という用語は、1個以上の炭素-炭素三重結合を有するアルキル基を意味する。
【0038】
不飽和アルキニル基の例には、これらに限定されないが、エチニル(-C≡CH)および2-プロピニル(プロパルギル、-CH2-C≡CH)が含まれる。
【0039】
C3-7シクロアルキル:本明細書において使用される「C3-7シクロアルキル」という用語は、シクリル基でもあるアルキル基、すなわち、環状炭化水素(炭素環式)化合物の1個の脂環式環原子から1個の水素原子を除去することにより得られる1価の基で、3〜7個の環原子を含む3〜7個の炭素原子を有するものを意味する。
【0040】
シクロアルキル基の例には、これらに限定されないが、下記の化合物から誘導されるものが含まれる:
飽和単環式炭化水素化合物:
シクロプロパン(C3)、シクロブタン(C4)、シクロペンタン(C5)、シクロヘキサン(C6)、シクロヘプタン(C7)、メチルシクロプロパン(C4)、ジメチルシクロプロパン(C5)、メチルシクロブタン(C5)、ジメチルシクロブタン(C6)、メチルシクロペンタン(C6)、ジメチルシクロペンタン(C7)、およびメチルシクロヘキサン(C7);
不飽和単環式炭化水素化合物:
シクロプロペン(C3)、シクロブテン(C4)、シクロペンテン(C5)、シクロヘキセン(C6)、メチルシクロプロペン(C4)、ジメチルシクロプロペン(C5)、メチルシクロブテン(C5)、ジメチルシクロブテン(C6)、メチルシクロペンテン(C6)、ジメチルシクロペンテン(C7)、およびメチルシクロヘキセン(C7);および
飽和多環式炭化水素化合物:
ノルカラン(C7)、ノルピナン(C7)、ノルボルナン(C7)。
【0041】
C3-20ヘテロシクリル:本明細書において使用される「C3-20ヘテロシクリル」という用語は、複素環化合物の1個の環原子から1個の水素原子を除去することにより得られる1価の基であって、3〜20個の環原子を有し、そのうちの1〜10個が環ヘテロ原子であるものを意味する。好ましくはそれぞれの環は3〜7個の環原子を有し、そのうちの1〜4個が環ヘテロ原子である。
【0042】
この文脈において、接頭辞(たとえば、C3-20、C3-7、C5-6等)は、炭素原子であるかヘテロ原子であるかを問わず、環原子の数、または環原子の数の範囲を意味する。たとえば、本明細書において使用される「C5-6ヘテロシクリル」という用語は5または6個の環原子を有するヘテロシクリル基を意味する。
【0043】
単環式ヘテロシクリル基の例には、これらに限定されないが、下記の化合物から誘導されるものが含まれる:
N1:アジリジン(C3)、アゼチジン(C4)、ピロリジン(テトラヒドロピロール)(C5)、ピロリン(たとえば、3-ピロリン、2,5-ジヒドロピロール)(C5)、2H-ピロールまたは3H-ピロール(イソピロール、イソアゾール)(C5)、ピペリジン(C6)、ジヒドロピリジン(C6)、テトラヒドロピリジン(C6)、アゼピン(C7);
O1:オキシラン(C3)、オキセタン(C4)、オキソラン(テトラヒドロフラン)(C5)、オキソール(ジヒドロフラン)(C5)、オキサン(テトラヒドロピラン)(C6)、ジヒドロピラン(C6)、ピラン(C6)、オキセピン(C7);
S1:チイラン(C3)、チエタン(C4)、チオラン(テトラヒドロチオフェン)(C5)、チアン(テトラヒドロチオピラン)(C6)、チエパン(C7);
O2:ジオキソラン(C5)、ジオキサン(C6)、およびジオキセパン(C7);
O3:トリオキサン(C6);
N2:イミダゾリジン(C5)、ピラゾリジン(ジアゾリジン)(C5)、イミダゾリン(C5)、ピラゾリン(ジヒドロピラゾール)(C5)、ピペラジン(C6);
N1O1:テトラヒドロオキサゾール(C5)、ジヒドロオキサゾール(C5)、テトラヒドロイソキサゾール(C5)、ジヒドロイソキサゾール(C5)、モルホリン(C6)、テトラヒドロオキサジン(C6)、ジヒドロオキサジン(C6)、オキサジン(C6);
N1S1:チアゾリン(C5)、チアゾリジン(C5)、チオモルホリン(C6);
N2O1:オキサジアジン(C6);
O1S1:オキサチオール(C5)およびオキサチアン(チオキサン)(C6);および
N1O1S1:オキサチアジン(C6)。
【0044】
置換単環式ヘテロシクリル基の例には、環状型のサッカリドから誘導されるもの、たとえば、アラビノフラノース、リキソフラノース、リボフラノースおよびキシロフラノースなどのフラノース(C5)、ならびにアロピラノース、アルトロピラノース、グルコピラノース、マンノピラノース、グロピラノース、イドピラノース、ガラクトピラノース、およびタロピラノースなどのピラノース(C6)が含まれる。
【0045】
C5-20アリール:本明細書において使用される「C5-20アリール」という用語は、3〜20個の環原子を有する芳香族化合物の1個の芳香族環原子から1個の水素原子を除去することにより得られる1価の基を意味する。好ましくは、それぞれの環は5〜7個の環原子を有する。
【0046】
この文脈において、接頭辞(たとえば、C3-20、C5-7、C5-6等)は、炭素原子であるかヘテロ原子であるかを問わず、環原子の数、または環原子の数の範囲を意味する。たとえば、本明細書において使用される「C5-6アリール」という用語は5または6個の環原子を有するアリール基を意味する。
【0047】
環原子は、「カルボアリール基」におけるように、すべて炭素原子であってもよい。カルボアリール基の例には、これらに限定されないが、ベンゼン(すなわち、フェニル)(C6)、ナフタレン(C10)、アズレン(C10)、アントラセン(C14)、フェナントレン(C14)、ナフタセン(C18)、およびピレン(C16)から誘導されるものが含まれる。
【0048】
縮合環を含み、そのうちの少なくとも1個が芳香族環であるアリール基の例には、これらに限定されないが、インダン(たとえば、2,3-ジヒドロ-1H-インデン)(C9)、インデン(C9)、イソインデン(C9)、テトラリン(1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン)(C10)、アセナフテン(C12)、フルオレン(C13)、フェナレン(C13)、アセフェナントレン(C15)、およびアセアントレン(C16)から誘導される基が含まれる。
【0049】
あるいは、環原子は、「ヘテロアリール基」におけるように、1個以上のヘテロ原子を含んでもよい。単環式ヘテロアリール基の例には、これらに限定されないが、次の化合物から誘導されるものが含まれる:
N1:ピロール(アゾール)(C5)、ピリジン(アジン)(C6);
O1:フラン(オキソール)(C5);
S1:チオフェン(チオール)(C5);
N1O1:オキサゾール(C5)、イソキサゾール(C5)、イソキサジン(C6);
N2O1:オキサジアゾール(フラザン)(C5);
N3O1:オキサトリアゾール(C5);
N1S1:チアゾール(C5)、イソチアゾール(C5);
N2:イミダゾール(1,3-ジアゾール)(C5)、ピラゾール(1,2-ジアゾール)(C5)、ピリダジン(1,2-ジアジン)(C6)、ピリミジン(1,3-ジアジン)(C6)(たとえば、シトシン、チミン、ウラシル)、ピラジン(1,4-ジアジン)(C6);
N3:トリアゾール(C5)、トリアジン(C6);および
N4:テトラゾール(C5)。
【0050】
縮合環を含むヘテロアリールの例には、これらに限定されないが、次のものが含まれる:
ベンゾフラン(O1)、イソベンゾフラン(O1)、インドール(N1)、イソインドール(N1)、インドリジン(N1)、インドリン(N1)、イソインドリン(N1)、プリン(N4)(たとえば、アデニン、グアニン)、ベンズイミダゾール(N2)、インダゾール(N2)、ベンズオキサゾール(N1O1)、ベンズイソキサゾール(N1O1)、ベンゾジオキソール(O2)、ベンゾフラザン(N2O1)、ベンゾトリアゾール(N3)、ベンゾチオフラン(S1)、ベンゾチアゾール(N1S1)、ベンゾチアジアゾール(N2S)から誘導されるC9(2個の縮合環を含む);
クロメン(O1)、イソクロメン(O1)、クロマン(O1)、イソクロマン(O1)、ベンゾジオキサン(O2)、キノリン(N1)、イソキノリン(N1)、キノリジン(N1)、ベンズオキサジン(N1O1)、ベンゾジアジン(N2)、ピリドピリジン(N2)、キノキサリン(N2)、キナゾリン(N2)、シンノリン(N2)、フタラジン(N2)、ナフチリジン(N2)、プテリジン(N4)から誘導されるC10(2個の縮合環を含む);
ベンゾジアゼピン(N2)から誘導されるC11(2個の縮合環を含む);
カルバゾール(N1)、ジベンゾフラン(O1)、ジベンゾチオフェン(S1)、カルボリン(N2)、ペリミジン(N2)、ピリドインドール(N2)から誘導されるC13(3個の縮合環を含む);および、
アクリジン(N1)、キサンテン(O1)、チオキサンテン(S1)、オキサントレン(O2)、フェノキサチイン(O1S1)、フェナジン(N2)、フェノキサジン(N1O1)、フェノチアジン(N1S1)、チアントレン(S2)、フェナントリジン(N1)、フェナントロリン(N2)、フェナジン(N2)から誘導されるC14(3個の縮合環を含む)。
【0051】
上記の基は、単独であっても別の置換基の一部であっても、場合により、それら自体および下に挙げる別の置換基から選択される1個以上の基により置換されていてもよい。
ハロ:-F、-Cl、-Br、およびI。
ヒドロキシ:-OH。
【0052】
エーテル:-OR [式中、Rはエーテル置換基、たとえば、C1-7アルキル基(下で論じる、C1-7アルコキシ基とも呼ぶ)、C3-20ヘテロシクリル基(C3-20ヘテロシクリルオキシ基とも呼ぶ)、またはC5-20アリール基(C5-20アリールオキシ基とも呼ぶ)、好ましくはC1-7アルキル基である]。
【0053】
アルコキシ:-OR [式中、Rはアルキル基、たとえば、C1-7アルキル基である]。C1-7アルコキシ基の例には、これらに限定されないが、-OMe(メトキシ)、-OEt(エトキシ)、-O(nPr)(n-プロポキシ)、-O(iPr)(イソプロポキシ)、-O(nBu)(n-ブトキシ)、-O(sBu)(sec-ブトキシ)、-O(iBu)(イソブトキシ)、および-O(tBu)(tert-ブトキシ)が含まれる。
【0054】
アセタール:-CH(OR1)(OR2) [式中、R1およびR2は独立してアセタール置換基、たとえば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基であり、または、「環状」アセタール基の場合には、R1およびR2はそれらが結合する2個の酸素原子およびそれらが結合する炭素原子と一緒になって4から8個の環原子を有する複素環を形成する]。アセタール基の例には、これらに限定されないが、-CH(OMe)2、-CH(OEt)2、および-CH(OMe)(OEt)が含まれる。
【0055】
ヘミアセタール:-CH(OH)(OR1) [式中、R1はヘミアセタール置換基、たとえば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である]。ヘミアセタール基の例には、これらに限定されないが、-CH(OH)(OMe)および-CH(OH)(OEt)が含まれる。
【0056】
ケタール:-CR(OR1)(OR2) [式中、R1およびR2はアセタールについて定義された通りであり、Rは水素以外のケタール置換基、たとえば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である]。ケタール基の例には、これらに限定されないが、-C(Me)(OMe)2、-C(Me)(OEt)2、-C(Me)(OMe)(OEt)、-C(Et)(OMe)2、-C(Et)(OEt)2、および-C(Et)(OMe)(OEt)が含まれる。
【0057】
ヘミケタール:-CR(OH)(OR1) [式中、R1はヘミアセタールについて定義された通りであり、Rは水素以外のヘミケタール置換基、たとえば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である]。ヘミケタール基の例には、これらに限定されないが、-C(Me)(OH)(OMe)、-C(Et)(OH)(OMe)、-C(Me)(OH)(OEt)、および-C(Et)(OH)(OEt)が含まれる。
【0058】
オキソ(ケト、-オン):=O。
チオン(チオケトン):=S。
【0059】
イミノ(イミン):=NR [式中、Rはイミノ置換基、たとえば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは水素またはC1-7アルキル基である]。エステル基の例には、これらに限定されないが、=NH、=NMe、=NEt、および=NPhが含まれる。
【0060】
ホルミル(カルバルデヒド、カルボキシアルデヒド):-C(=O)H。
アシル(ケト):-C(=O)R [式中、Rはアシル置換基、たとえば、C1-7アルキル基(C1-7アルキルアシルまたはC1-7アルカノイルとも呼ぶ)、C3-20ヘテロシクリル基(C3-20ヘテロシクリルアシルとも呼ぶ)、またはC5-20アリール基(C5-20アリールアシルとも呼ぶ)、好ましくはC1-7アルキル基である]。アシル基の例には、これらに限定されないが、-C(=O)CH3(アセチル)、-C(=O)CH2CH3(プロピオニル)、-C(=O)C(CH3)3(t-ブチリル)、および-C(=O)Ph(ベンゾイル、フェノン)が含まれる。
【0061】
カルボキシ(カルボン酸):-C(=O)OH。
チオカルボキシ(チオカルボン酸):-C(=S)SH。
チオロカルボキシ(チオロカルボン酸):-C(=O)SH。
チオノカルボキシ(チオノカルボン酸):-C(=S)OH。
イミド酸:-C(=NH)OH。
ヒドロキサム酸:-C(=NOH)OH。
【0062】
エステル(カルボキシレート、カルボン酸エステル、オキシカルボニル):-C(=O)OR [式中、Rはエステル置換基、たとえば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である]。エステル基の例には、これらに限定されないが、-C(=O)OCH3、-C(=O)OCH2CH3、-C(=O)OC(CH3)3、および-C(=O)OPhが含まれる。
【0063】
アシルオキシ(逆エステル):-OC(=O)R [式中、Rはアシルオキシ置換基、たとえば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である]。アシルオキシ基の例には、これらに限定されないが、-OC(=O)CH3(アセトキシ)、-OC(=O)CH2CH3、-OC(=O)C(CH3)3、-OC(=O)Ph、および-OC(=O)CH2Phが含まれる。
【0064】
オキシカルボニルオキシ:-OC(=O)OR [式中、Rはエステル置換基、たとえば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である]。エステル基の例には、これらに限定されないが、-OC(=O)OCH3、-OC(=O)OCH2CH3、-OC(=O)OC(CH3)3、および-OC(=O)OPhが含まれる。
【0065】
アミノ:-NR1R2 [式中、R1およびR2は独立してアミノ置換基、たとえば、水素、C1-7アルキル基(C1-7アルキルアミノまたはジ-C1-7アルキルアミノとも呼ぶ)、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはHまたはC1-7アルキル基であり、または「環状」アミノ基の場合には、R1およびR2はそれらが結合する窒素原子と一緒になって4〜8個の環原子を有する複素環を形成する]。アミノ基は、第一(-NH2)、第二(-NHR1)、または第三(-NHR1R2)であってよく、また、カチオン型において、第四(-+NR1R2R3)であってよい。アミノ基の例には、これらに限定されないが、-NH2、-NHCH3、-NHC(CH3)2、-N(CH3)2、-N(CH2CH3)2、および-NHPhが含まれる。環状アミノ基の例には、これらに限定されないが、アジリジノ、アゼチジノ、ピロリジノ、ピペリジノ、ピペラジノ、モルホリノ、およびチオモルホリノが含まれる。
【0066】
アミド(カルバモイル、カルバミル、アミノカルボニル、カルボキシアミド):-C(=O)NR1R2 [式中、R1およびR2は独立してアミノ基について定義された通りのアミノ置換基である]。アミド基の例には、これらに限定されないが、-C(=O)NH2、-C(=O)NHCH3、-C(=O)N(CH3)2、-C(=O)NHCH2CH3、および-C(=O)N(CH2CH3)2が含まれる。また、R1およびR2がそれらが結合する窒素原子と一緒になって複素環構造を形成するアミド基、たとえば、ピペリジノカルボニル、モルホリノカルボニル、チオモルホリノカルボニル、およびピペラジノカルボニルも含まれる。
【0067】
チオアミド(チオカルバミル):-C(=S)NR1R2 [式中、R1およびR2は独立してアミノ基について定義された通りのアミノ置換基である]。アミド基の例には、これらに限定されないが、-C(=S)NH2、-C(=S)NHCH3、-C(=S)N(CH3)2、および-C(=S)NHCH2CH3が含まれる。
【0068】
アシルアミド(アシルアミノ):-NR1C(=O)R2 [式中、R1はアミド置換基、たとえば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは水素またはC1-7アルキル基であり、R2はアシル置換基、たとえば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは水素またはC1-7アルキル基である]。アシルアミド基の例には、これらに限定されないが、-NHC(=O)CH3、-NHC(=O)CH2CH3、および-NHC(=O)Phが含まれる。R1およびR2は一緒になって環状構造を形成してもよく、例として、たとえば、下記の構造を有するスクシンイミジル、マレイミジル、およびフタルイミジルが挙げられる。
【化8】

【0069】
アミノカルボニルオキシ:-OC(=O)NR1R2 [式中、R1およびR2は独立してアミノ基について定義された通りのアミノ置換基である]。アミノカルボニルオキシ基の例には、これらに限定されないが、-OC(=O)NH2、-OC(=O)NHMe、-OC(=O)NMe2、および-OC(=O)NEt2が含まれる。
【0070】
ウレイド:-N(R1)CONR2R3 [式中、R2およびR3は独立して、アミノ基について定義された通りのアミノ置換基であり、R1はウレイド置換基、たとえば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは水素またはC1-7アルキル基である]。ウレイド基の例には、これらに限定されないが、-NHCONH2、-NHCONHMe、-NHCONHEt、-NHCONMe2、-NHCONEt2、-NMeCONH2、-NMeCONHMe、-NMeCONHEt、-NMeCONMe2、および-NMeCONEt2が含まれる。
グアニジノ:-NH-C(=NH)NH2
【0071】
テトラゾリル:4個の窒素原子および1個の炭素原子を有する5員芳香族環、
【化9】

【0072】
イミノ:=NR [式中、Rはイミノ置換基、たとえば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはHまたはC1-7アルキル基である]。イミノ基の例には、これらに限定されないが、=NH、=NMe、および=NEtが含まれる。
【0073】
アミジン(アミジノ):-C(=NR)NR2 [式中、Rはアミジン置換基、たとえば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはHまたはC1-7アルキル基である]。アミジン基の例には、これらに限定されないが、-C(=NH)NH2、-C(=NH)NMe2、および-C(=NMe)NMe2が含まれる。
【0074】
ニトロ:-NO2
ニトロソ:-NO。
アジド:-N3
シアノ(ニトリル、カルボニトリル):-CN。
イソシアノ:-NC。
シアネート:-OCN。
イソシアネート:-NCO。
チオシアノ(チオシアネート):-SCN。
イソチオシアノ(イソチオシアネート):-NCS。
スルフヒドリル(チオール、メルカプト):-SH。
【0075】
チオエーテル(スルフィド):-SR [式中、Rはチオエーテル置換基、たとえば、C1-7アルキル基(C1-7アルキルチオ基とも呼ばれる)、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である]。C1-7アルキルチオ基の例には、これらに限定されないが、-SCH3および-SCH2CH3が含まれる。
【0076】
ジスルフィド:-SS-R [式中、Rはジスルフィド置換基、たとえば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基(本明細書においてはC1-7アルキルジスルフィドとも呼ばれる)である]。C1-7アルキルジスルフィド基の例には、これらに限定されないが、-SSCH3および-SSCH2CH3が含まれる。
【0077】
スルフィン(スルフィニル、スルホキシド):-S(=O)R [式中、Rはスルフィン置換基、たとえば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である]。スルフィン基の例には、これらに限定されないが、-S(=O)CH3および-S(=O)CH2CH3が含まれる。
【0078】
スルホン(スルホニル):-S(=O)2R [式中、Rはスルホン置換基、たとえば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基(フッ素化または過フッ素化C1-7アルキル基を含む)である]。スルホン基の例には、これらに限定されないが、-S(=O)2CH3(メタンスルホニル、メシル)、-S(=O)2CF3(トリフリル)、-S(=O)2CH2CH3(エシル)、-S(=O)2C4F9(ノナフリル)、-S(=O)2CH2CF3(トレシル)、-S(=O)2CH2CH2NH2(タウリル)、-S(=O)2Ph(フェニルスルホニル、ベシル)、4-メチルフェニルスルホニル(トシル)、4-クロロフェニルスルホニル(クロシル)、4-ブロモフェニルスルホニル(ブロシル)、4-ニトロフェニル(ノシル)、2-ナフタレンスルホネート(ナプシル)、および5-ジメチルアミノナフタレン-1-イルスルホネート(ダンシル)が含まれる。
【0079】
スルフィン酸(スルフィノ):-S(=O)OH、-SO2H。
スルホン酸(スルホ):-S(=O)2OH、-SO3H。
【0080】
スルフィネート(スルフィン酸エステル):-S(=O)OR [式中、Rはスルフィネート置換基、たとえば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である]。スルフィネート基の例には、これらに限定されないが、-S(=O)OCH3(メトキシスルフィニル;メチルスルフィネート)、および-S(=O)OCH2CH3(エトキシスルフィニル;エチルスルフィネート)が含まれる。
【0081】
スルホネート(スルホン酸エステル):-S(=O)2OR [式中、Rはスルホネート置換基、たとえば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である]。スルホネート基の例には、これらに限定されないが、-S(=O)2OCH3(メトキシスルホニル;メチルスルホネート)、および-S(=O)2OCH2CH3(エトキシスルホニル;エチルスルホネート)が含まれる。
【0082】
スルフィニルオキシ:-OS(=O)R [式中、Rはスルフィニルオキシ置換基、たとえば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である]。スルフィニルオキシ基の例には、これらに限定されないが、-OS(=O)CH3および-OS(=O)CH2CH3が含まれる。
【0083】
スルホニルオキシ:-OS(=O)2R [式中、Rはスルホニルオキシ置換基、たとえば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である]。スルホニルオキシ基の例には、これらに限定されないが、-OS(=O)2CH3(メシレート)および-OS(=O)2CH2CH3(エシレート)が含まれる。
【0084】
スルフェート:-OS(=O)2OR [式中、Rはスルフェート置換基、たとえば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である]。スルフェフェート基の例には、これらに限定されないが、-OS(=O)2OCH3および-SO(=O)2OCH2CH3が含まれる。
【0085】
スルファミル(スルファモイル;スルフィン酸アミド;スルフィンアミド):-S(=O)NR1R2 [式中、R1およびR2は独立してアミノ基について定義された通りのアミノ置換基である]。スルファミル基の例には、これらに限定されないが、-S(=O)NH2、-S(=O)NH(CH3)、-S(=O)N(CH3)2、-S(=O)NH(CH2CH3)、-S(=O)N(CH2CH3)2、および-S(=O)NHPhが含まれる。
【0086】
スルホンアミド(スルフィンアモイル;スルホン酸アミド;スルホンアミド):-S(=O)2NR1R2 [式中、R1およびR2は独立してアミノ基について定義された通りのアミノ置換基である]。スルホンアミド基の例には、これらに限定されないが、-S(=O)2NH2、-S(=O)2NH(CH3)、-S(=O)2N(CH3)2、-S(=O)2NH(CH2CH3)、-S(=O)2N(CH2CH3)2、および-S(=O)2NHPhが含まれる。
【0087】
スルフアミノ:-NR1S(=O)2OH [式中、R1はアミノ基について定義された通りのアミノ置換基である]。スルフアミノ基の例には、これらに限定されないが、-NHS(=O)2OHおよび-N(CH3)S(=O)2OHが含まれる。
【0088】
スルホンアミノ:-NR1S(=O)2R [式中、R1はアミノ基について定義された通りのアミノ置換基であり、Rはスルホンアミノ置換基、たとえば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である]。スルホンアミノ基の例には、これらに限定されないが、-NHS(=O)2CH3および-N(CH3)S(=O)2C6H5が含まれる。
【0089】
スルフィンアミノ:-NR1S(=O)R [式中、R1はアミノ基について定義された通りのアミノ置換基であり、Rはスルフィンアミノ置換基、たとえば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である]。スルフィンアミノ基の例には、これらに限定されないが、-NHS(=O)CH3および-N(CH3)S(=O)C6H5が含まれる。
【0090】
ホスフィノ(ホスフィン):-PR2 [式中、Rはホスフィノ置換基、たとえば、-H、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは-H、C1-7アルキル基またはC5-20アリール基である]。ホスフィノ基の例には、これらに限定されないが、-PH2、-P(CH3)2、-P(CH2CH3)2、-P(t-Bu)2、および-P(Ph)2が含まれる。
ホスホ:-P(=O)2
【0091】
ホスフィニル(ホスフィンオキシド):-P(=O)R2 [式中、Rはホスフィニル置換基、たとえば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基またはC5-20アリール基である]。ホスフィニル基の例には、これらに限定されないが、-P(=O)(CH3)2、-P(=O)(CH2CH3)2、-P(=O)(t-Bu)2、および-P(=O)(Ph)2が含まれる。
ホスホン酸(ホスホノ):-P(=O)(OH)2
【0092】
ホスホネート(ホスホノエステル):-P(=O)(OR)2 [式中、Rはホスホネート置換基、たとえば、-H、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは-H、C1-7アルキル基またはC5-20アリール基である]。ホスホネート基の例には、これらに限定されないが、-P(=O)(OCH3)2、-P(=O)(OCH2CH3)2、-P(=O)(Ot-Bu)2、および-P(=O)(OPh)2が含まれる。
リン酸(ホスホノオキシ):-OP(=O)(OH)2
【0093】
ホスフェート(ホスホノオキシエステル):-OP(=O)(OR)2 [式中、Rはホスフェート置換基、たとえば、-H、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは-H、C1-7アルキル基またはC5-20アリール基である]。ホスフェート基の例には、これらに限定されないが、-OP(=O)(OCH3)2、-OP(=O)(OCH2CH3)2、-OP(=O)(O-t-Bu)2、および-OP(=O)(OPh)2が含まれる。
亜リン酸:-OP(OH)2
【0094】
ホスファイト:-OP(OR)2 [式中、Rはホスファイト置換基、たとえば、-H、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは-H、C1-7アルキル基、またはC5-20アリール基である]。ホスファイト基の例には、これらに限定されないが、-OP(OCH3)2、-OP(OCH2CH3)2、-OP(O-t-Bu)2、および-OP(OPh)2が含まれる。
【0095】
ホスホルアミダイト:-OP(OR1)-NR22 [式中、R1およびR2はホスホルアミダイト置換基、たとえば、-H、(場合により置換された)C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは-H、C1-7アルキル基、またはC5-20アリール基である]。ホスホルアミダイト基の例には、これらに限定されないが、-OP(OCH2CH3)-N(CH3)2、-OP(OCH2CH3)-N(i-Pr)2、および-OP(OCH2CH2CN)-N(i-Pr)2が含まれる。
【0096】
ホスホルアミデート:-OP(=O)(OR1)-NR22 [式中、R1およびR2はホスホルアミデート置換基、たとえば、-H、(場合により置換された)C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは-H、C1-7アルキル基、またはC5-20アリール基である]。ホスホルアミデート基の例には、これらに限定されないが、-OP(=O)(OCH2CH3)-N(CH3)2、-OP(=O)(OCH2CH3)-N(i-Pr)2、および-OP(=O)(OCH2CH2CN)-N(i-Pr)2が含まれる。
【0097】
遺伝子に基づく病気
遺伝子に基づく病気には、好ましくは増殖性疾患が含まれ、また、アルツハイマー病および細菌、寄生虫およびウイルス感染も含まれる。遺伝子発現の調節により治療することができる状態はすべて本発明の化合物により治療することができる。
【0098】
グラム陽性菌、および特にMRSAおよびVREによる感染は、特に好ましい本発明における遺伝子に基づく病気である。
【0099】
増殖性疾患
当業者は、候補の化合物がある特定の細胞型に対する増殖性の状態を治療することができるか否かを、容易に決定することができる。たとえば、特定の化合物が示す活性を定量するために便利に使用することができるアッセイが、下記の実施例に記載されている。
【0100】
「増殖性疾患」という用語は、in vitroまたはin vivoのいずれかで生じる、新生物または肥厚成長などの、望ましくない過剰なまたは異常な細胞の、望まれないまたは制御されない細胞増殖を意味する。
【0101】
増殖性の状態の例には、新生物および腫瘍(たとえば、組織球腫、神経膠腫、星状細胞種、骨腫)、癌(たとえば、肺癌、小細胞肺癌、胃腸管癌、腸癌、結腸癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、睾丸癌、肝臓癌、腎臓癌、膀胱癌、膵臓癌、脳癌、肉腫、骨肉腫、カポジ肉腫、黒色腫)、白血病、乾癬、骨の病気、繊維増殖性障害(たとえば、結合組織の)、およびアテローム硬化を含むがこれらに限定されない良性、前悪性、および悪性の細胞増殖を含むが、これらに限定されない。
【0102】
これらに限定されないが、肺、胃腸管(たとえば、腸、結腸を含む)、乳(乳房)、卵巣、前立腺、肝臓(肝)、腎臓(腎)、膀胱、膵臓、脳、および皮膚を含むいかなるタイプの細胞をも治療することができる。
【0103】
グラム陽性菌による感染
グラム陽性菌については上で論じた。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)およびバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の治療が特に興味深いが、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)およびリステリア菌(Listeria monocytogenes)などの他のグラム陽性菌による感染症の治療もまた興味深い。
【0104】
治療の方法
上記のように、本発明は式Iの化合物の治療の方法への使用を提供する。好ましくは、治療に使用するための式Iの化合物は、2個のN10-C11イミン結合を有するか、またはN10がin vivoで除去することができる窒素保護基(R10、R10’)により保護されており、C11の置換基(R11、R11’)がOHである。また、治療を必要とする被験体に治療上有効な量の式Iの化合物を、好ましくは本発明の第3の態様である医薬組成物の形で投与することを含む治療の方法が提供される。治療上有効な量という用語は、患者に利益を与えるのに十分な量である。上記の利益は、少なくとも1つの症状の少なくとも改善である。投与される実際の量、ならびに投与の速度および時間経過は治療されるものの性質および重篤度に依存する。治療の処方、たとえば投与量の決定は、医師の責任の範囲内である。
【0105】
化合物は、単独で投与してもよく、または他の治療と組み合わせて、治療される状態に応じて同時にまたは順次のいずれかで投与してもよい。治療または療法の例には、これらに限定されないが、化学療法(たとえば薬物を含む活性物質の投与);手術;および放射線療法が含まれる。式Iの化合物が、in vivoで除去されるカルバメートを基本とする窒素保護基を有する場合、WO 00/12507(ADEPT、GDEPTおよびPDT)に記載される治療の方法を使用することができる。
【0106】
本発明の、および本発明にしたがって使用するための医薬組成物は、活性成分、すなわち式Iの化合物に加えて、製薬上許容される賦形剤、担体、緩衝剤、安定剤または他の当業者に公知の材料を含んでもよい。上記の材料は無毒でなくてはならず、活性成分の有効性を妨害してはならない。担体または他の材料の正確な性質は、経口または注射、たとえば皮膚、皮下、または静脈内注射であり得る投与経路に依存する。
【0107】
経口投与のための医薬組成物は、錠剤、カプセル、粉末または液体の剤形であってよい。錠剤は固体の担体またはアジュバントを含んでもよい。液体の医薬組成物は一般的に、水、石油、動物もしくは植物油、鉱油、または合成油などの液体の担体を含む。生理食塩水、デキストロースもしくは他のサッカリド溶液、またはエチレングリコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールなどのグリコールを含んでもよい。カプセルはゼラチンなどの固体の担体を含んでもよい。
【0108】
静脈内、皮内もしくは皮下注射、または病気の部位への注射のためには、活性成分を、発熱物質を含まず、好適なpH、等張性および安定性を有する非経口用に受容される水性溶液の剤形とする。当業者は、たとえば塩化ナトリウム注射液、リンガー注射液、乳酸塩添加リンガー注射液などの等張の媒体を用いて好適な溶液を調製することができる。必要に応じて、保存剤、安定剤、緩衝剤、抗酸化剤および/または他の添加物を含んでもよい。
【0109】
含まれる他の形
他に特定しない限り、上記化合物にはこれらの置換基の公知のイオン、塩、溶媒和物、および保護された形が含まれる。たとえば、カルボン酸(-COOH)と記載された場合、それらのアニオン(カルボキシレート)型(-COO-)、塩または溶媒和物、ならびに慣用の保護された形も含まれる。同様に、アミノ基という記載には、アミノ基のプロトン化型(-N+HR1R2)、塩または溶媒和物、たとえば塩酸塩、ならびにアミノ基の慣用の保護された形が含まれる。同様に、ヒドロキシル基という記載には、そのアニオン型(-O-)、塩または溶媒和物、ならびに慣用の保護された形も含まれる。
【0110】
異性体、塩および溶媒和物
ある種の化合物は1個以上の特定の幾何異性体、光学異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、エピマー、アトロピック(atropic)異性体、立体異性体、互変異性体、配座異性体、またはアノマー型として存在し得る。上記の異性体には、これらに限定されないが、シスおよびトランス型;EおよびZ型;c、tおよびr型;endoおよびexo型、R、S、およびmeso型、;DおよびL型;dおよびl型;(+)および(-)型;ケト、エノール、およびエノレート型;synおよびanti型;シンクリナルおよびアンチクリナル型;αおよびβ型;アキシアルおよびエクアトリアル型;舟、いす、ねじれ、エンベロープ、および半いす型;およびそれらの組合せが含まれ、これ以後、集合的に「異性体」(または異性体型)と呼ぶ。
【0111】
好ましくは、本発明の化合物はC11位において下記の立体化学を有する:
【化10】

【0112】
下で論じる互変異性体型を除いて、本明細書において使用される「異性体」という用語からは、構造異性体(すなわち、単に原子の空間における位置の違いではなく、原子間の結合が異なる異性体)は特に除外されていることに留意されたい。たとえば、メトキシ基、-OCH3と呼んだ場合には、その構造異性体であるヒドロキシメチル基、-CH2OHを指すとは解釈されない。同様に、o-クロロフェニルと呼んだ場合には、その構造異性体であるm-クロロフェニルを指すとは解釈されない。しかしながら、構造のクラスを指す場合には、そのクラスの範囲内の構造異性体型が含まれる(たとえば、C1-7アルキルにはn-プロピルおよびイソプロピルが含まれ;ブチルにはn-、イソ、sec-、およびtert-ブチルが含まれ;メトキシフェニルにはo-、m-、およびp-メトキシフェニルが含まれる)。
【0113】
上記の除外には互変型、たとえば、ケト、エノール、およびエノレート型は含まれない。上記互変型としては、たとえば、以下の互変異性体:ケト/エノール(下図に示す)、イミン/エナミン、アミド/イミノアルコール、アミジン/アミジン、ニトロソ/オキシム、チオケトン/エネチオール、N-ニトロソ/ヒドロキシアゾ、およびニトロ/アシ-ニトロが挙げられる。
【化11】

【0114】
「異性体」という用語に、1個以上の同位体置換基を有する化合物が特に含まれることに留意されたい。たとえば、Hは、1H、2H (D)、および3H (T)を含むいかなる同位体であってもよく;Cは、12C、13C、および14Cを含むいかなる同位体であってもよく;Oは、16Oおよび18Oを含むいかなる同位体であってもよい等である。
【0115】
他に特定されない限り、特定の化合物を呼ぶ場合には、その(完全なまたは部分的な)ラセミ体および他の混合物を含む、すべての上記異性体型が含まれる。上記異性体型の調製(たとえば、不斉合成)および分離(たとえば、分別結晶およびクロマトグラフィー的手段)の方法は当業者に公知であるか、本明細書に記載の方法または公知の方法を公知のやり方で応用することにより容易に実施することができる。
【0116】
他に特定しない限り、特定の化合物を呼ぶ場合、たとえば下で論じるような、そのイオン、塩、溶媒和物、および保護された形も含まれる。
【0117】
活性化合物の対応する塩、たとえば製薬上許容される塩を調製、精製、および/または取り扱うのが便利または望ましい場合がある。製薬上許容される塩の例は、Bergeら、J. Pharm. Sci., 66, 1-19 (1977)において論じられている。
【0118】
たとえば、化合物がアニオン性である場合、またはアニオン性であり得る官能基を有する場合(たとえば、-COOHが-COO-となり得る)、塩は好適なカチオンと共に形成される。好適な無機カチオンには、これらに限定されないが、Na+およびK+などのアルカリ金属イオン、Ca2+およびMg2+などのアルカリ土類カチオン、およびAl+3などの他のカチオンが含まれる。好適な有機カチオンの例には、これらに限定されないが、アンモニウムイオン(すなわち、NH4+)および置換アンモニウムイオン(たとえば、NH3R+、NH2R2+、NHR3+、NR4+)が含まれる。いくつかの好適な置換アンモニウムイオンの例は、エチルアミン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミン、およびトロメタミン、ならびにリシンおよびアルギニンなどのアミノ酸から誘導されるものである。よく知られる第四アンモニウムイオンの例はN(CH3)4+である。
【0119】
化合物がカチオン性である場合、またはカチオン性であり得る官能基を有する場合(たとえば、-NH2は-NH3+となり得る)、塩は好適なアニオンと共に形成される。好適な無機アニオンの例には、これらに限定されないが、次の無機酸:塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、亜リン酸から誘導されるものが含まれる。
【0120】
好適な有機アニオンの例には、これらに限定されないが、次の有機酸:2-アセチオキシ安息香酸、酢酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、ケイ皮酸、クエン酸、エデト酸、エタンジスルホン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルセプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシマレイン酸、ヒドロキシナフタレンカルボン酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、パントテン酸、フェニル酢酸、フェニルスルホン酸、プロピオン酸、ピルビン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、スルファニル酸、酒石酸、トルエンスルホン酸、および吉草酸から誘導されるものが含まれる。好適な高分子有機アニオンには、これらに限定されないが、次の高分子酸:タンニン酸、カルボキシメチルセルロースから誘導されるものが含まれる。
【0121】
興味ある特定の塩の形は、R10およびR11(および/またはR10’およびR11’)がイミン結合を形成する式Iの化合物から形成されたものであって、上記化合物を亜硫酸水素塩と反応させることによりPBDの亜硫酸水素誘導体を形成するものである。これらの化合物は、
【化12】

【0122】
[式中、Mは1価の製薬上許容されるカチオンであり、両方のPBDがこの形である場合には、両方のMは一緒になって2価の製薬上許容されるカチオンを形成してもよい]
と表される。
【0123】
活性化合物の対応する溶媒和物を調製、精製、および/または取り扱うのが便利であるか望ましい場合がある。本明細書において、「溶媒和物」という用語は慣用の意味で、溶質(たとえば、活性化合物、活性化合物の塩)および溶媒の複合体を指すために用いられる。溶媒が水である場合には、溶媒和物は、水和物、たとえば一水和物、二水和物、三水和物等のように呼ぶのが便利である。
【0124】
本発明に特に関連する溶媒和物は、溶媒がPBDのイミン結合を通して付加しているものであって、下に溶媒が水またはアルコール(RAOH、ここで、RAは上記の通りのエーテル置換基である)である場合について図示する。
【化13】

【0125】
[式中、*は、対応するPBD単位の二量体の架橋(-O-(CH2)5-O-)を示す]
これらの形は、PBDのカルビノールアミンおよびカルビノールアミンエーテル型と呼ぶことができる。これらの平衡のバランスは化合物がおかれた状態、および基そのものの性質に依存する。
【0126】
一般的に、いかなる求核溶媒でも、ヒドロキシル基を有する溶媒について上に図示したように、上記のような溶媒和物を形成することができる。他の求核溶媒にはチオールおよびアミンが含まれる。
【0127】
これらの溶媒和物は、たとえば凍結乾燥により固体の形で単離することができる。
【0128】
一般的な合成経路
式Iの化合物は、WO 00/12508に記載されたものと同様の2つの別経路により作ることができる。重要な段階はC2-exo二重結合の形成である。これは、WO 00/12508のスキーム8および9に記載された方法により進行する。
【0129】
一つの方法は、分子の他の部分を結合する前にC-環を作る化合物の合成に関する。
【化14】

【0130】
購入したtrans-4-ヒドロキシ-L-プロリンAをN-Alloc保護して(または他の好適な窒素保護基により保護して)、保護された化合物Bを与え、次にこれを標準的な条件を用いてエステル化する。エステルCのヒドリド還元により、ジオールDを与える。ジオールの選択的TBDMS保護によりシリルエステルEを与え、次いでこれを、たとえばSwernまたはTRAP酸化を用いて酸化してケトンFを与える。
【0131】
C2-エチリデン官能基はケトンFにWittig反応をおこなうことにより導入しうる。N-alloc保護基のパラジウム媒介開裂により化合物Hを得る。
【0132】
次に、化合物Hを次のようにしてA-環二量体に結合させる。
【化15】

【0133】
スキーム2に示されるように、化合物HをN-troc保護されたアントラニル酸二量体Iと結合させる(2当量で)。ここで、*は対応するPBD単位への二量体架橋(-O-(CH2)5-O-)を示す。この結合の後に、アルコールの脱保護をおこなって化合物Kを与える。
【0134】
化合物Kを合成するための別のアプローチは同様の段階を含むが、スキーム3に示すように順番が異なる。
【化16】

【0135】
二量体酸塩化物LにアミンE’を結合することによりニトロ二量体Mを合成する。次に、ニトロ二量体を、還元および次いで保護することにより、アニリンNを経由して保護されたアニリンOに変換する。次に、C環のヒドロキシ基を、上記のようにしてケトン(P)、次いでエチリデン(Q)に変換する。次に化合物Qのヒドロキシを脱保護して化合物Kを得る。
【0136】
次に、化合物Kを環化して、R11がOHである式Iの化合物を得る。
【化17】

【0137】
アルコールK(N10となる窒素をカルバメートとして保護してある)を、A4ふるい上で過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウム(TPAP)/N-メチルモルホリンN-オキシド(NMO)に曝すことにより、自然発生的なB環形成を伴う酸化をおこなって、目的の生成物を得る。TRAP/NMO酸化法は少量の反応には特に便利であるが、より大量の反応(たとえば、>1g)にはDMSOに基づく酸化法、特にSwern酸化がより優れていることが証明されている。特に好ましい酸化剤は、CH2Cl2に溶解された(ジアセトキシヨード)ベンゼン(1.1当量)およびTEMPO (0.1当量)である。
【0138】
環化の別の方法はWO 00/12508に記載されている。
【0139】
R10が窒素保護基でありR11がOHである式Iの化合物は、適切な条件を用いて窒素保護基を除去することにより、脱保護されてN10-C11イミン結合を有する化合物を形成する。式Iの化合物において、R11がO-R12である場合、適切な条件を用いて酸素保護基を導入することができる。
【0140】
C2-exo二重結合の幾何異性に関して、式Iの化合物の異なる型の相対的な量は、使用された合成系路、および、特に、使用されたWittig試薬により影響される。
【0141】
それ以外の好適な条件
R10およびR11が一緒になってN10およびC11の間に二重結合を形成するのが好ましい。
【0142】
式Iの化合物が少なくとも50%の、E-、E-またはZ-、Z-型のいずれかを含むのが好ましく、より好ましくは、これらの型の一方を、少なくとも70%、80%、90%または95%含む。Z-、Z-型が好ましい
【実施例】
【0143】
一般的な方法
反応の進行は、ガラスプレート上の蛍光指示薬を含むGF254シリカゲルを用いた薄層クロマトグラフィー(TLC)によりモニターした。TLCプレートの可視化は、他に記載されていない場合にはUV光およびI2蒸気によりおこなった。フラッシュクロマトグラフィーはシリカゲル(J.T Baker 30-60μmの14 cmカラム)を用いておこなった。反応溶媒の大部分は、以下の通りの乾燥剤を使用した後,窒素雰囲気下で蒸留することにより精製し、すぐに使用した。乾燥剤:CH2Cl2およびMeCN (CaH2)、テトラヒドロフランおよびトルエン(ベンゾフェノンケチルナトリウム)、およびMeOH(マグネシウム片および触媒のヨウ素)。抽出およびクロマトグラフィーの溶媒は、J.T Bakerより購入し、それ以上精製せずに使用した。すべての有機化学物質はAldrich Chemical Co.より購入した。乾燥剤および無機試薬はBDHより購入した。
【0144】
IRスペクトルはPerkin-Elmer FT/IR-Paragon 1000分光光度計により記録した。1Hおよび13C NMRスペクトルは、Jeol GSX 270 MHz (13C NMRスペクトルには67.8 MHz)、Bruker ARX 250 MHz (13C NMRスペクトルには62.9 MHz)、またはJeol JNM-LA 400 MHz (13C NMRスペクトルには100 MHz) FT-NMR装置を用いて、20℃±1℃で操作して得た。化学シフトは、内部Me4Siから低磁場側での100万分の1(δppm)として報告した。スピン多重度はs(一重項)、br s(ブロード二重項)、d(二重項)、br d(ブロード二重項)、t(三重項)、q(四重項)、quint(五重項)およびm(多重項)として記載する。質量分析は、Jeol JMS-DX 303 GC質量分析計またはVG ZAB-SE二重収束型装置を用いて記録した。
【0145】
電子衝撃(EI)質量分析は、70 eVでおこない、化学イオン化(CI)質量分析は、試薬ガスとしてイソブタンを用いておこない、高速原子衝撃(FAB)質量分析は、Xe試薬ガスと共にマトリックスとして3-ニトロベンジルアルコールを用いて記録された。正確な分子量は、内部標準としてペルフルオロケロセン(PFK)を用いたピークマッチングにより決定した。旋光度は、Bellingham and Stanley ADP 220旋光計を用いて室温で測定された。
【0146】
(実施例1)
1,1’-[(ペンタン-1,5-ジイル)ジオキシ]-ビス[(11aS,2Z)-7-メトキシ-2-メチリデン-1,2,3,11a-テトラヒドロ-5H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-5-オン] (1)
【化18】

【0147】
(a) 1,1’-[[(ペンタン-1,5-ジイル)ジオキシ]-ビス[2-アミノ-N-アリルオキシカルボニル-5-メトキシ-1,4-フェニレンカルボニル]]-ビス[(2S,4Z)-2-t-ブチルジメチルシリルオキシメチル-4-エチリデン-2,3-ジヒドロピロール] (3)
カリウム-t-ブトキシドの無水THF溶液 (0.5M、21.0 mL、10.6 mmol)を、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド(3.94 g, 10.6 mmol)の無水THF (16 mL)中の懸濁液に滴下した。得られた黄色のイリド懸濁液を2時間攪拌還流した後、10℃でビス-ケトン2 (WO 00/12508の化合物214)(2.09 g、2.04 mmol)のTHF (15 mL)溶液を加えた。反応混合物をさらに90分間撹拌還流した後、室温に冷却した。混合物をEtOAc (100 mL)と水(100 mL)により分配し、有機層を飽和塩化ナトリウム(100 mL)により洗浄し、MgSO4により乾燥した。過剰の溶媒を除去すると褐色のオイルが得られた。それをフラッシュカラムクロマトグラフィー(50:50 v/v EtOAc/40-60o石油エーテル)にかけ、オレフィン3を黄色のガラス状物質として得た。収量 = 577 mg (28%); [α]24D = -26o (c = 0.453, CHCl3); 1H NMR (250 MHz, CDCl3) δ8.82 (bs, 2H), 7.81 (bs, 2H), 6.84 (s, 2H), 6.02-5.87 (m, 2H), 5.38-5.20 (m, 6H), 4.63-4.55 (m, 6H), 4.15-3.85 (m, 8H), 3.82-3.52 (m, 10H), 2.75-2.49 (m, 4H), 2.03-1.80 (m, 4H), 1.77-1.22 (m, 8H), 0.85 (s, 18H), 0.00 (s, 12H); 13C NMR (62.9 MHz, CDCl3) δ168.9, 153.5, 150.6, 143.9, 135.6, 132.6, 131.9, 118.0, 116.7, 115.4, 111.3, 105.4, 68.6, 65.7, 63.7, 56.6, 54.6, 33.4, 28.8, 25.8, 22.6, 18.1, 14.6, -5.58; MS (FAB) m/z (相対強度) 1072 ([M + Na + H]+., 65), 1049 ([M + H]+., 28), 992 (13), 809 (39), 509 (33), 469 (49), 318 (26), 268 (100); IR (溶媒なし) 3319 (br), 2952, 2930, 2858, 1732, 1600, 1524, 1470, 1407, 1360, 1331, 1258, 1202, 1115, 1052, 1027, 938, 837, 812, 666 cm-1; HRMS [M + Na]+. C55H84N4O12Si2Naに対する計算値 m/z 1071.5522, 測定値(FAB) m/z 1071.5468。
【0148】
(b) 1,1’-[[(ペンタン-1,5-ジイル)ジオキシ]-ビス[2-アミノ-N-アリルオキシカルボニル-5-メトキシ-1,4-フェニレンカルボニル]]-ビス[(2S,4Z)-2-ヒドロキシメチル-4-エチリデン-2,3-ジヒドロピロール] (4)
TBAFの溶液(THF中の1.0 M溶液3.00 mL、3.00 mmol)を、0℃(氷/アセトン)でTHF (30 mL)中のビスシリルエーテル3 (1.23 g, 1.21 mmol)に加えた。反応混合物を室温に温めて一晩撹拌し、翌日TLC (50:50 v/v EtOAc/40-60o石油エーテル)により出発物質が完全になくなっていることを確認した。飽和NH4Cl (150 mL)を加えて反応混合物をEtOAc (3×60 mL)により抽出し、飽和塩化ナトリウム(150 mL)により洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧蒸発させて黄色のオイルを得た。フラッシュクロマトグラフィー(97:3 v/v CHCl3/MeOH)により精製して純粋なアルコール4を白色の泡状物質として得た。収量=879 mg (91%); [α]23D = -2o (c = 0.29, CHCl3); 1H NMR (250 MHz, CDCl3) δ 8.64 (bs, 2H), 7.58 (bs, 2H), 6.82 (bs, 2H), 6.04-5.88 (m, 2H), 5.41-5.21 (m, 6H), 4.71-4.56 (m, 6H), 4.12-3.60 (m, 20H), 2.72 (dd, 2H, J = 8.2, 15.1 Hz), 2.38 (d, 2H, J = 15.3 Hz), 2.00-1.89 (m, 4H), 1.75-1.50 (m, 8H); 13C NMR (62.9 MHz, CDCl3) δ 170.5, 153.7, 150.4, 144.5, 134.2, 132.6, 130.9, 118.0 (x 2), 116.2, 110.9, 106.0, 68.5, 65.7, 65.3, 59.4, 56.6, 51.0, 34.1, 28.6, 22.7, 14.6; MS (FAB) m/z (相対強度) 843 ([M + Na]+., 100), 821 ([M + H]+., 17), 694 (32), 509 (43), 469 (40), 421 (25), 336 (50), 307 (34); IR (CHCl3) 3355 (br), 3016, 2941, 2875, 1723, 1600, 1525, 1465, 1434, 1409, 1330, 1266, 1216, 1179, 1118, 1072, 1051, 1028, 995, 933, 872, 667 cm-1; HRMS [M + Na]+. C43H56N4O12Naに対する計算値 m/z 843.3792, 測定値(FAB) m/z 843.3823。
【0149】
(c) 1,1’-[(ペンタン-1,5-ジイル)ジオキシ]-ビス[(11S,11aS,2Z)-10-(アリルオキシカルボニル)-11-ヒドロキシ-7-メトキシ-2-エチリデン-1,2,3,10,11,11a-ヘキサヒドロ-5H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-5-オン] (5)
ジメチルスルホキシド(0.45 g, 0.41 mL, 5.80 mmol)の無水CH2Cl2 (8 mL)中の溶液を、塩化オキサリルの溶液(CH2Cl2中の2M溶液1.46 mL、2.92 mmol)に、−45℃、窒素雰囲気下で撹拌しながら15分間かけて滴下した。反応混合物を−45℃で35分間撹拌した後、同じ温度でCH2Cl2 (8 mL)中のジオール4 (0.85 g、1.04 mmol)を15分間かけて加えた。さらに45分後に、トリエチルアミン(0.83g, 1.14 mL, 8.20 mmol)のCH2Cl2 (8 mL)中の溶液を15分間かけて加えた。反応混合物を−45℃で30分間撹拌した後、45分間かけて室温に温めた。反応混合物をCH2Cl2により希釈し、1M HCl (3×50 mL)、食塩水(50 mL)により洗浄し、MgSO4により乾燥した。過剰な溶媒を除去して粗生成物を得た。これをフラッシュカラムクロマトグラフィー(99:1 v/v CHCl3/MeOH)により精製して、生成物を白色のガラス状物質として得た。収量=0.495 g (58%); [α]22D = +168o (c = 0.28, CHCl3); 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.23 (s, 2H), 6.66 (s, 2H), 5.90-5.70 (m, 2H), 5.59-5.40 (m, 4H), 5.16 (bs, 2H), 5.11 (bs, 2H), 4.66 (dd, 2H, J = 5.57, 13.59 Hz), 4.44 (d, 2H, J = 13.2 Hz), 4.29-4.07 (m, 6H), 4.01 (t, 4H, J = 6.5 Hz), 3.90 (s, 6H), 3.63-3.56 (m, 2H), 2.93-2.77 (m, 2H), 2.66 (d, 2H, J = 16.4 Hz), 1.97-1.86 (m, 4H), 1.68-1.61 (m, 8H); 13C NMR (62.9 MHz, CDCl3) δ 166.8, 155.9, 150.2, 148.8,, 133.0, 131.8, 128.4, 125.5, 119.6, 118.2, 113.9, 110.6, 85.9, 69.0, 66.8, 59.3, 56.1, 47.5, 34.8, 28.5, 22.4, 14.8; MS (FAB) m/z (相対強度) 839 ([M + Na]+., 100), 799 (10), 781 (14), 465 (14), 443 (16), 413 (37), 388 (19), 336 (25), 271 (25); IR (CHCl3) 3225 (br), 3011, 2938, 2860, 1704, 1605, 1515, 1469, 1436, 1410, 1307, 1284, 1215, 1129, 1077, 1018, 994, 959, 916, 872, 666, 637 cm-1; HRMS [M + Na]+. C43H52N4O12Naに対する計算値 m/z 839.3479、測定値(FAB) m/z 839.3497。
【0150】
(d) 1,1’-[(ペンタン-1,5-ジイル)ジオキシ]-ビス[(11aS,2Z)-7-メトキシ-2-エチリデン-1,2,3,11a-テトラヒドロ-5H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-5-オン] (1)
ビス-alloc-カルビノールアミン5 (200 mg, 0.25 mmol)、トリフェニルホスフィン(6.30 mg, 24.1μmol)およびピロリジン(33 mg, 40.1μL 0.48 mmol)のCH2Cl2 (13 mL)中の溶液を窒素雰囲気下で撹拌しながら、触媒量のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(14.4 mg, 12.5 μmol)を加えた。反応混合物を室温に温め、反応の進行をTLC (95:5 v/v CHCl3/MeOH)によりモニターした。2時間半後に、TLCにより、反応が終了してUV光により明るい蛍光を発するスポットができたことが判明した。溶媒を減圧蒸発させ、得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(98:2 v/v CHCl3/MeOH)にかけ、目的のビスイミン分子1を淡橙色のガラス状物質として得た。これにCHCl3を加えて減圧蒸発させることを繰り返してイミン型を得た。収量=160 mg (定量的); [α]21D = +937o (c = 0.641, CHCl3); 1H NMR (250 MHz, CDCl3) δ 7.67 (d, 2H, J = 4.5 Hz), 7.50 (s, 2H) 6.80 (s, 2H), 5.63-5.55 (m, 2H), 4.38-3.96 (m, 8H), 3.94 (s, 6H), 3.86-3.80 (m, 2H), 3.20-3.03 (m, 2H), 2.90 (d, 2H, J = 15.8 Hz), 2.00-1.91 (m, 4H), 1.76-1.68 (m, 8H); 13C NMR (62.9 MHz, CDCl3) δ 164.9, 163.0, 150.8, 147.8, 140.6, 132.9, 119.8, 119.3, 111.4, 110.3, 68.7, 56.1, 53.4, 48.3, 35.3, 28.6, 22.5, 14.9; MS (FAB) m/z (相対強度) 613 ([M + H]+., 52), 443 (26), 421 (22), 329 (100), 307 (71), 242 (35), 220 (38); IR (CHCl3) 3220 (br), 2940, 2859, 1697, 1602, 1560, 1508, 1458, 1432, 1382, 1341, 1263, 1217, 1132, 1098, 1065, 1007, 875, 666 cm-1; HRMS [M + H]+. C35H41N4O6に対する計算値 m/z 613.3026、測定値(FAB) m/z 613.3047。
【0151】
幾何異性体の相対的な量の決定
PBDのE/Zエチリデン基のC1およびC3共鳴の13C NMRスペクトルにおいて観察される化学シフトの差異により、化合物1における幾何異性体のおよその比を決定することができる。これらの観察は、C2-エチリデン部分を有するPBD天然産物トマイマイシン(tomaymycin)およびプロスラカルシンの全合成に関して発表された研究に基づいている (Mori, M.ら、Tetrahedron, 42, 3793 (1986))。
【化19】

【0152】
表1に、E-およびZ-プロスラカルシン、ならびに化合物1のC2-exo二重結合のE/Z型のC1およびC3の13C NMRシグナルの比較を示す。化合物1について測定された相対シグナル強度を括弧の中に記載する。
【表2】

【0153】
こららのデータから、Z-型であるC2 exo二重結合のおよその量は93.6%であり、E-型は6.4%であって、その結果、化合物1の幾何異性体の相対的な量は次のようになる。
【表3】

【0154】
さらに、化合物1のNOESY(空間を通しての相関)スペクトルは上記の構造配置を支持する。
【0155】
(実施例2)生物学的評価
K562アッセイ
K562ヒト慢性骨髄白血病細胞を、10%ウシ胎仔血清および2 mMグルタミンを補足したRPM1 1640培地中で、5% CO2を含む加湿した空気中、37℃で維持し、特定の用量の試験化合物を加えて37℃の暗所で1時間インキュベートした。遠心分離(5分間、300 g)によりインキュベーションを終了し、細胞を薬物を含まない培地により1回洗浄した。適当な薬物処理の後、細胞を96-ウェルマイクロタイタープレートに移した(ウェルあたり104細胞、サンプルあたり8ウェル)。次に、プレートを5% CO2を含む加湿した空気中、37℃の暗所に置いた。アッセイは、生存細胞の、黄色の可溶性テトラゾリウム塩、臭化3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニル-2H-テトラゾリウム(MTT, Aldrich-Sigma)を還元して不溶性の紫のホルマザンの沈殿を生成する能力に基づくものである。プレートを4日間インキュベートした後(対照の細胞数をおよそ10倍に増加させる)、20μLのMTT溶液(リン酸緩衝生理食塩水中、5 mg/mL)をそれぞれのウェルに加えてプレートをさらに5時間インキュベートした。次にプレートを300 gで5分間遠心分離し、ウェルあたり10〜20μLを残してピペットで細胞ペレットから培地の大部分を取り出した。それぞれのウェルにDMSO (200μL)を加えてサンプルを完全に混合するまで撹拌した。次に光学濃度をTitertek Multiscan ELISAプレートリーダーにより波長550 nmで測定し、用量-反応曲線を作成した。それぞれの曲線について、最終光学濃度を対照値の50%に減少させるのに必要な用量であるIC50値を読み取った。
【0156】
WO 93/18045の実施例6の化合物のIC50値が10 nMであったのに対して、化合物1について測定されたIC50値は>0.05 nMであった。
【0157】
DNA架橋アッセイ
試験化合物により誘導されるDNA架橋の程度を、Hartleyおよび共同研究者(Hartley, J. A.ら、Analytical Biochemistry, 193, 131-134 (1991))の電気泳動アッセイ法を用いて測定した。閉環puc18 DNAをHindIIIにより線状化した後、脱リン酸化して、[γ32P]-ATPおよびポリヌクレオチドキナーゼを用いて最終的に5’-単一末端標識をおこなった。30〜40 ngのDNAを含有する反応を、水性TEOA (25 mMトリエタノールアミン、1 mM EDTA、pH 7.2)緩衝液中、最終体積が50μLとなるようにして37℃でおこなった。同量の停止溶液(0.6 M NaOAc、20 mM EDTA、100μg/mL tRNA)を加えることにより反応を終了した後、EtOHにより沈殿させた。遠心分離の後、上清を捨て、ペレットを凍結乾燥した。サンプルを10μLの標準分離緩衝液(30% DMSO、1 mM EDTA、0.04%ブロモフェノールブルーおよび0.04%キシレンシアノール)中に再懸濁し、90℃で2.5分間加熱することにより変性した後、氷/水浴中に浸漬した。比較のために、対照の変性していないサンプルを10μLの非変性緩衝液(0.6%スクロース、0.04%ブロモフェノールブルー、水性TAE緩衝液[40 mM Tris、20 mM酢酸、2 mM EDTA、pH 8.1]中)中に再懸濁して直接ゲルに載せた。電気泳動はTAE緩衝液中の0.8%水中アガロースゲル(20×25×0.5 cm)を用いて40 Vで14〜16時間かけて実施した。ゲルを、BioRad 583ゲル乾燥機を用いて、Whatman 3MMおよびDE8I濾紙のそれぞれの1つの層の上で減圧下80℃で2時間乾燥した。Hyperfilm-MP film (Amersham plc, U.K.)を、スクリーンを用いて4時間またはスクリーンを用いずに一晩(より鮮明な像を得るために)のいずれかで乾燥したゲルに曝露した後、オートラジオグラフを得た。BioRad GS-670画像レーザーデンシトメーターを用いてフィルムのバンドを定量した。架橋したDNAの量(DSバンド単独の濃度)に対するそれぞれのレーンの総DNAの測定値(二本鎖[DS]および一本鎖[SS]のバンドの濃度の合計)により架橋のパーセンテージを計算した。決定された架橋DNAのパーセンテージレベルに対して薬物濃度をプロットすることにより用量反応曲線が得られ、その結果、50%架橋するのに必要な量であるXL50が決定された。
【0158】
化合物1について決定されたXL50は、2.7±1.6 nMであった。
【0159】
(実施例3)抗菌活性の評価
材料および方法
収集
化合物1を評価するためにDr P. Taylor, School of Pharmacy, London (UK)が保持しているMRSA収集を使用した。それは38の株を含み、最近の10年間に英国の病院における多くの大流行の原因となった、流行性EMRSA-15およびEMRSA-16などの多くの国際的な株を含む。これらの株の起源となった国を表2に示す。
【表4】

【0160】
VREおよび使用された他の株もまたDr P. Taylorが保持しているもので、英国で収集されたものである。次の数の臨床的な単離株 - 20のVRE、12の化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、12のストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、12のリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)を使用した。
【0161】
MIC(最大阻害濃度)
英国臨床研究所規格委員会(National Committee for Clinical Laboratory Standards, UK) (NCCLS)の指針により与えられた方法に従ってブロスMICをおこなった。Muller Hinton Broth (MHB)中に懸濁された試験される化合物100μlを、所望の濃度で無菌の96ウェルマイクロタイタープレートに入れた。ウェルの1つの列には、対照として使用するために化合物を入れずに100μlのMHBのみを加えた。2mlのMHB中で一晩増殖させた細菌培養物を希釈し、それぞれのサンプルについて100μlをウェルに加えて最終細菌計数が5×105 CFU/ml、すなわち、ウェルあたり105 CFUとなるようにした。最終的にウェルあたり200μlの体積となった。最終細菌計数を計算する場合に、サンプルをウェルに加えた後に達成される細菌サンプルのlin2希釈を考慮しなければならない。粘着性のプラスチックシールを使用してマイクロタイタープレートを密閉した後、細菌サンプルが均等に懸濁するように静かに振盪した。プレートを37℃で一晩インキュベートした。細菌の目に見える増殖が存在しない最低の濃度をその特定の細菌株のMICと定義する。
【0162】
対照のウェルの組に細菌増殖の徴候が存在すれば試験は有効である。細菌の増殖は通常ウェルの底のボタンまたは塊として現れるが、いくつかのウェルは濁って見える。透明なウェルは増殖の阻害を示している。
【0163】
グラム陽性菌培養の平均の細菌計数は、MIC試験を実施する前に細菌の希釈をおこなった場合を考慮に入れて、109細菌/mlであった。希釈した細菌懸濁液の生存数の計数をおこなって、正しい最終細菌計数が行われたことを確認した。
【0164】
抗微生物感受性試験
これらはNCCLSの指針、第6版(1997年1月)に従って実施された。
【0165】
いくつかの細菌のコロニーを寒天プレートからMHBを含有するビジュー(bijoux)に移した。懸濁液を35℃でインキュベートした後、無菌の生理食塩水により希釈してMcFarland標準溶液の密度と合わせた。次に無菌の綿球を細菌接種材料に浸し、過剰な溶液を除去するためにビジューの壁に押しつけた。次に、MHAプレートを上記綿球で3回、毎回60oずつプレートを回しながら全体に縞を描いた。15分以内にディスクを接種したプレート上に置いた。後の段階で拡散直径を測定するために、ディスクの位置を、それぞれのディスクの周囲に十分なスペース(〜24 mm)ができるようにしなくてはならない。プレートをすぐに35℃で、VREおよびMRSAは24時間、それ以外の生物はすべて16〜18時間インキュベートした。一つのコロニーではなく密集した細胞増殖が存在し、円形の阻害領域が明白である場合に実験は有効である。ディスクの周りにできた透明の領域を定規で測定してNCCLSにより提供された表により解釈した。細菌を、感受性、中間または耐性に分類した。
【0166】
時間-死滅の研究
50 mlのMHBを含有する250 mlのフラスコを滅菌した。1本を対照として取っておき、試験する化合物を、MIC×1、MIC×2およびMIC×4のように濃度を増加させて残りの3本に加えた。一晩培養した細菌を二倍に希釈した。50 mlの上記懸濁液をそれぞれのフラスコに加えて、その時間を時間0とした。それぞれのフラスコのサンプルをすぐに取り出してビジュー瓶に入れた。100μlのそれぞれのサンプルを900μlの無菌PBSに移した。必要ならばさらに10倍希釈をおこなった。それぞれの希釈の20μlの液滴をNAプレート上に載せ、37℃で一晩インキュベートした。フラスコは37℃の振盪器上においた。同じ作業を時間1、2、4、6および24時間に繰り返してプレートを一晩インキュベートした。
【0167】
翌日細菌のコロニーを計数した。ある希釈においてそれが確立された後には、コロニーの数は計数可能であり、実験を繰り返したが、その際には20μlの液滴を載せる代わりに対応する希釈の100μlを無菌のガラス棒を用いてプレート全体に広げた。これにより、フラスコ中の一次懸濁液のより正確な細菌の計数が可能になる。
【0168】
結果
MIC
試験された細菌の収集に対する化合物1の平均MICを表3に示す。
【表5】

【0169】
MRSAにおいて最近導入された抗生物質であるリネゾリド(linezolid)およびシネルシド (synercid)に対して観察されたMICは それぞれ1 mg/Lおよび0.5 mg/Lの範囲である (Munoz Bellido, J.L.ら、International Journal of Antimicrobial Agents, 20, 61-64 (2002); Abb, J., Diagnostic Microbiology and Infectious Disease, 43, 319-321 (2002))バンコマイシンのMRSAに対するMICは約2 mg/Lである。
【0170】
図1は試験されたMRSAの異なる株に対するMICの分布を示し、図2は試験されたVREの異なる株に対するMICの分布を示す。
【0171】
抗生物質に対する感受性の試験
化合物1の抗菌活性を定量するために使用された細菌を、さまざまな抗生物質に対して試験して、それらの他の抗微生物薬に対する全般的な感受性を測定し、結果を下記の表4〜8に示す。
【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【0172】
表4に記載されるように、使用されたすべてのMRSA株はバンコマイシンに対してまだ完全に感受性である。けれども、バンコマイシンに中間または耐性の株が現在出現し始めている(Hiramatsu, K., American Journal of Medicine, 104(5A), 7S-10S (1998); Quirk, M., The Lancet infectious diseases, 2, 510 (2002))。すべての株に対して完全に活性である抗生物質は他に存在しなかった。
【0173】
時間-死滅の研究
化合物1の殺菌および静菌活性を研究するためにMRSA株P1を選んだ。この特定の株のMIC値は試験された大部分の株について得られたMIC値を代表するものであった(0.015 mg/L)。
【0174】
ELB-21を含む細菌溶液のサンプル(20μl液滴、図3a)は、2時間で寒天プレート上に生存する細菌の増殖が存在しないことを示した。細菌の死滅は非常に迅速に起こっていると思われたので、0.5および1時間に細菌数を測定する第2の実験をおこなった(図3b)。図に示されるように、1時間後にMIC×1のフラスコ(0.015 mg/l)の細菌計数は1000に減少し、およそ3桁の死滅であった。一般的に3桁の死滅は殺菌活性を立証すると考えられている。
【0175】
より高い濃度を有する残りのフラスコは予想通り一層低い細菌計数を示した。2時間後にはすべてのフラスコサンプルにおいて細菌の増殖は観察されなかったが、そのデータはコロニーの数が0であるので、グラフには載せなかった。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】図1は、化合物1の異なるMRSA株に対するMICの分布を示す図である。
【図2】図2は、化合物1の異なるVRE株に対するMICの分布を示す図である。
【図3】図3aおよび3bは、異なる時点におけるMRSA株P1に対する化合物1の抗菌活性を示す図である。ここで、細菌数は、それぞれ20μL液滴および100μL液滴の細菌懸濁液から計算された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、R10は窒素保護基であり、R11はOHまたはO-R12のいずれかであり、ここでR12は酸素保護基であり、またはR10およびR11は一緒になってN10とC11の間に二重結合を形成し;
R10’およびR11’はそれぞれR10およびR11と同じ選択肢から選択される]
の化合物ならびにその塩および溶媒和物。
【請求項2】
R10’およびR11’がそれぞれR10およびR11と同一である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R10およびR11が二重結合を形成しない場合、化合物がC11位において下記の立体化学:
【化2】

を有する、請求項1または請求項2のいずれかに記載の化合物。
【請求項4】
窒素保護基がカルバメート窒素保護基から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
窒素保護基が、Alloc、Troc、Teoc、BOC、Doc、Hoc、TcBOC、Fmoc、1-Adocおよび2-Adocからなる群より選択される、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
R10およびR11が一緒になってN10とC11の間に二重結合を形成する、請求項1または請求項2に記載の化合物。
【請求項7】
少なくとも50%がE-、E-またはZ-、Z-型のいずれかである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物を合成する方法。
【請求項9】
治療の方法に使用するための、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物またはその製薬上許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物またはその製薬上許容される塩もしくは溶媒和物、および製薬上許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項11】
遺伝子に基づく病気を治療するための医薬品の製造への、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物またはその製薬上許容される塩もしくは溶媒和物の使用。
【請求項12】
遺伝子に基づく病気にかかった被験体に治療上有効な量の請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物またはその製薬上許容される塩もしくは溶媒和物を投与することを含む、遺伝子に基づく病気の治療方法。
【請求項13】
遺伝子に基づく病気が増殖性疾患である、請求項11に記載の使用または請求項12に記載の方法。
【請求項14】
遺伝子に基づく病気がグラム陽性菌の感染である、請求項11に記載の使用または請求項12に記載の方法。
【請求項15】
グラム陽性菌がMRSAおよびVREから選択される、請求項14に記載の使用または方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−528383(P2007−528383A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502398(P2007−502398)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【国際出願番号】PCT/GB2005/000915
【国際公開番号】WO2005/085260
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(505171975)スピロゲン リミティッド (8)
【Fターム(参考)】