説明

ピンロック機構

【課題】非固定で個別に移動可能な複数本のピンを同時にロックすることが可能なピンロック機構を提供する。
【解決手段】個別に移動可能な複数本のピン11と、1本のピン11ごとに対応して設けられピン11が軸方向に移動可能となる孔12a,14aを備えた二の固定プレート12,14と、二の固定プレート12,14の間でスライド可能に設けられ二の固定プレート12,14に備えた孔12a,14aとほぼ同一の軸心上に位置する孔13aを備えるスライドプレート13と、スライドプレート13をロック状態と非ロック状態とで切り替える操作部17とを備える。よって、ピン11を個別かつ自在に動かすことができる。またロック状態では強固に複数本のピン11を同時に保持するだけのトルクを有するので、ある程度の力でピン11を動かそうとしても固持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個別に移動可能な複数本のピンをロック状態と非ロック状態とで切り替え可能なピンロック機構に関する。
【背景技術】
【0002】
複数本のピンをロック可能な機構としては、例えば集積回路を回路基板に着脱自在に装着するコネクタが該当する。従来のコネクタは、操作部を倒して押圧部を端子部を押圧させ、ピンの径よりも広い解放位置からピンの径よりも狭い接触位置に移動させてピンを接触部に接触させる技術の一例が開示されている(例えば特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2003−346999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1の技術における複数本のピンは集積回路の端子部に固定されたものであり、かつ接触部は導通のためにピンとの接触を目的としているので、強固にピンを保持するだけのトルクは無い。もし、非固定で個別に移動可能な複数本のピンを同時に固定する場合に適用すると、接触によって生じるトルクは非常に小さな力であるのでこれを上回る力(重力を含む)が働くとピンは容易に軸方向に移動(落下を含む)する。
【0004】
本発明はこのような点に鑑みてなしたものであり、非固定で個別に移動可能な複数本のピンを同時にロックすることが可能なピンロック機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)課題を解決するための手段(以下では単に「解決手段」と呼ぶ。)1は、ピンロック機構であって、個別に移動可能な複数本のピンと、1本の前記ピンごとに対応して設けられ前記ピンが軸方向に移動可能となる孔を備えた二の固定プレートと、前記二の固定プレートの間でスライド可能に設けられ前記二の固定プレートに備えた孔とほぼ同一の軸心上に位置する孔を備えるスライドプレートと、前記スライドプレートをロック状態と非ロック状態とで切り替える切替部とを有し、
前記切替部をロック状態に切り替えると前記二の固定プレートの孔に通されたピンを前記スライドプレートの孔の壁面で押さえ付けてロックし、前記切替部を非ロック状態に切り替えると前記二の固定プレートの孔に通されたピンを前記スライドプレートの孔の壁面で押さえ付けずに移動可能とすることを要旨とする。
【0006】
解決手段1によれば、複数本のピンは個別に移動するので、二の固定プレートに備えた穴に通して軸方向の移動のみに規制する。スライドプレートは二の固定プレートの間でスライド可能であり、切替部をロック状態に切り替えるとスライドプレートの孔の壁面でピンを押さえ付けてロックする。このロックでは強固にピンを保持するだけのトルクを有するので、ある程度の力でピンを動かそうとしても固持される。一方、切替部を非ロック状態に切り替えるとスライドプレートの孔の壁面はピンを押さえ付けないので、ピンを個別かつ自在に動かすことができる。
【0007】
(2)解決手段2は、解決手段1に記載したピンロック機構であって、スライドプレートには、少なくとも非ロック状態においてピンに接触する弾性部材を備えたことを要旨とする。
【0008】
解決手段2によれば、スライドプレートの表面や孔等に備えた弾性部材が非ロック状態においてピンに接触するので、当該接触によって生じるトルクによってピンが落下するのを防止できる。その一方、接触によって生じるトルクは非常に小さな力であるのでこれを上回る力を働かせることでピンを容易に軸方向に移動させることもできる。すなわち対象物でピンを押すことにより、当該対象物の外形をピンの凹凸で表すことができる。
【0009】
(3)解決手段3は、解決手段1または2に記載したピンロック機構であって、スライドプレートは、孔を穿つ際に生じた端片に弾性を持たせたことを要旨とする。
【0010】
解決手段3によれば、孔を穿つ際に生じた端片を加工(例えば曲げる等)して、当該端片に弾性を持たせる。この端片がピンと接触するように構成すれば、端片は弾性部材に相当するので、上述した解決手段2と同様の作用効果を得ることができる。また、端片は孔を穿って加工すればよいので、他の部材等を必要とせずに低コストで実現できる。
【0011】
(4)解決手段4は、解決手段1から3のいずれか一項に記載したピンロック機構であって、複数本のピンをほぼ同一の長さに形成し、切替部を非ロック状態に切り替えると前記複数本のピンの一端を揃える初期化プレートを有することを要旨とする。
【0012】
解決手段4によれば、切替部を非ロック状態に切り替えるだけで、初期化プレートが複数本のピンの一端を揃える。よって、ピンの一端(先端)を揃えるのが簡単に行える。
なお、初期化プレートは固定する構成としてもよく、スライドプレートのスライド方向と交差する方向にスライド可能に構成してもよい。
【0013】
(5)解決手段5は、解決手段1から4のいずれか一項に記載したピンロック機構であって、切替部は、ロック状態と非ロック状態とで切り替えを操作する操作部と、当該操作部を操作する際に加わる運動の動力をスライドプレートをスライドさせる動力に変換して伝達する動力伝達部とを有することを要旨とする。
【0014】
解決手段5によれば、操作部を操作すれば、動力伝達部が操作時に加わる運動の動力をスライドプレートをスライドさせる動力に変換して伝達する。よってスライドプレートを直接的に動かす必要がなく、特に動力伝達部がトルクを増強するように構成されていれば軽い操作でスライドプレートを動かせるようになる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、切替部をロック状態に切り替えると、スライドプレートの孔の壁面でピンを押さえ付けて、非固定で個別に移動可能な複数本のピンを同時にロックすることができる。切替部を非ロック状態に切り替えると、スライドプレートの孔の壁面はピンを押さえ付けないので、複数本のピンを個別かつ自在に動かすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、上下左右の方向を言う場合には該当する図面の記載に従う。
【0017】
まず、ピンロック機構の外観について図1,図2を参照しながら説明する。図1には斜視図を表し、図2(A)には平面図を表し、図2(B)には側面図を表す。これらの図に表すピンロック機構10は、複数のピン11,固定プレート12,機構本体16,操作部17などを有する。また、例えば図6に表すように、機構本体16の内部にはスライドプレート13,固定プレート14,初期化プレート15などを有する。
なお、上述したピンロック機構10の各構成要素は任意の素材(例えば金属や樹脂等)を加工して所定の形状に形成されている。全構成要素を同じ素材で形成してもよく、一部の構成要素を他の構成要素と異なる素材で形成してもよい。
【0018】
複数のピン11は、ほぼ同じ長さの棒状(本例では断面が円形の円柱状)で形成されている。固定プレート12は板状部材であって、1本のピン11ごとに対応して設けられた複数の孔12aを備える(図3を参照)。それぞれの孔12aは、1本のピン11のみを通し得る寸法(例えば直径等)で形成されている。すなわち、孔12aの平面形状はピン11の断面形状とほぼ同じにする。機構本体16は枡状に形成されている。機構本体16の開口部は固定プレート12で塞いで固定される。言い換えれば、固定プレート12を蓋代わりに用いる。切替部に相当する操作部17は、スライドプレート13に固定され(図5を参照)、ロック状態と非ロック状態とで切り替える際に用いる。
【0019】
機構本体16の内部には、上からスライドプレート13,固定プレート14,初期化プレート15が順に備えられる(図5を参照)。固定プレート14は固定プレート12と同様に複数の孔14aを備え(図3を参照)、機構本体16の内壁に固定される。これらの固定プレート12,14は「二の固定プレート」に相当する。スライドプレート13は、固定プレート12と固定プレート14との間でスライド可能に設けられる(図5を参照)。ここで、固定プレート12に備えた孔12a,スライドプレート13に備えた孔13aおよび固定プレート14に備えた孔14aは、ほぼ同一の軸心上に位置させ、ピン11が軸方向(矢印D1方向)に移動可能となるように孔の中心を合わせる(図5を参照)。初期化プレート15は孔が無い平板部材である。この初期化プレート15は、機構本体16の内部でスライドプレート13のスライド方向と交差する方向、すなわちピン11の移動方向と同じ方向(すなわち図5に表す矢印D1方向)に移動可能に設ける。
【0020】
固定プレート12,14の構成例について、図3を参照しながら説明する。図3(A)には平面図を表し、図3(B)には図3(A)のIIIb−IIIb線断面図を表し、図3(C)には図3(A)のIIIc−IIIc線断面図を表す。固定プレート12は、1本のピン11を通すために穿った円形状の孔12aを複数個備える。固定プレート14は機構本体16の内部に備えるため(図5を参照)、二点鎖線で表すように固定プレート12よりもひと回り小さい外形寸法(縦寸法および横寸法)で形成される。ただし、各ピン11を軸方向に移動可能とするため、各孔12aの穿孔位置は固定プレート12とほぼ同じにする。
【0021】
スライドプレート13の構成例について、図4を参照しながら説明する。図4(A)には平面図を表し、図4(B)には図4(A)のIVb−IVb線断面図を表し、図4(C)には図4(A)のIVc−IVc線断面図を表す。スライドプレート13は、固定プレート12,14とほぼ同じ位置に複数の孔14aを穿つ。各孔14aを穿つ際に生じる端片13bには弾性を持たせるとともに、少なくとも非ロック状態においてピン11に接触するような形状に加工(例えばプレス加工)を行う。すなわち端片13bへの接触で生じる摩擦力は、ピン11の自重で落下する重力よりも大きくなるように設定する。このように設定すれば、操作部17によるトルク調整を行わなくてもピン11が落下しなくなる。図4(B)に表す例では端片13bを「⊂」字状に形成している。スライドプレート13をスライド可能にするため、機構本体16の内壁には凹部16aを備える(図5を参照)。
【0022】
上述のように構成されたピンロック機構10の適用例について、図5〜図7を参照しながら説明する。図5には、複数本のピン11の一端を揃えた状態の一例を表す。図6には、複数本のピン11を端片13bで保持した状態の一例を表す。図7には、対象物の外形をピン11で模った状態の一例を表す。図5(A),図6(A),図7(A)にはピンロック機構10の全体について図2(B)のV−V線断面図を表し、図5(B),図6(B),図7(B)には一の孔にかかる断面図を表す。
【0023】
まず操作部17を操作して非ロック状態に切り替えると、複数のピン11は図5(B)に表すように接触箇所P1で孔13aの壁面と接触し、接触箇所P2で端片13bと接触している。図6(A)に表すようなピン11の初期化状態にするには、初期化プレート15を上方向(図5(A)に表す矢印D2方向)に移動させ、さらに初期化プレート15のみを下方向(図6(A)に表す矢印D3方向)に移動させて元の位置に戻せばよい。この初期化状態では、複数のピン11の長さが同じなので先端(すなわち図中の上端であって「一端」に相当する。)が揃う。
なお、図5(A)に表すように複数のピン11を全て初期化プレート15に当てて止めるには、少しの力で先端を押さえ付けるだけでよい。つまり、孔13aおよび端片13bと接触する接触箇所P1,P2で生ずる摩擦力は、その一部の力がピン11自体に生ずる重力によって相殺されるので、残る力(保持力)を上回るだけの少しの力で済む。
【0024】
図6(A)に表す状態では、複数のピン11は初期化プレート15を離しても落下しない。すなわち、図6(B)に表すように操作部17の操作でスライドプレート13が矢印D4方向に移動すると、孔13aによって押された各ピン11は端片13bとさらに強く接触する。このことは、図6(B)に表すピン11と孔12aとの間隙W2が図5(B)に表す間隙W1よりも狭まっている点で明らかである。図6(B)に表すピン11は、孔13aおよび端片13bと接触する接触箇所P1,P2で生ずる摩擦力が自重の重力より勝るために落下しない。端片13bは自身が弾性を有するので、ピン11に押されて図5(B)に表す状態よりも撓んでいる。よって、孔13aおよび端片13b(より具体的には接触箇所P1,P2)はピン11を保持する機能も兼ねる。
【0025】
図6(B)のように保持された状態では、ピン11の先端から押さえ付けるように力を加えると、上記摩擦力を上回った時点でピン11は摩擦力に抗して下側(初期化プレート15がある側)に移動する。そこで、所定の形状(本例では楕円体)で形成された対象物20を用いて複数のピン11を押さえ付けてゆくと、図7(A)のような状態になる。
【0026】
図7(A)に表す状態では、押さえ付けた対象物20を二点鎖線で表すとともに、当該対象物20の外形(輪郭)に沿って複数のピン11が個別に移動する。この移動によって、複数のピン11は全体として対象物20の外形を模る(型を取る)ことができる。このままの状態でも複数のピン11は落下することは無いが、操作部17を操作してロック状態に切り替えると図7(B)のような状態になる。
【0027】
図7(B)に表す状態では、ピン11は上述した接触箇所P1,P2で接触するだけでなく、接触箇所P3で固定プレート12(孔12aの壁面)と接触し、接触箇所P4で固定プレート14(孔14aの壁面)と接触する。つまり、孔12a,14aの両壁面がピン11に対して当たる位置(または方向)と、孔13aの壁面がピン11に対して当たる位置(または方向)とが正反対であるため、せん断力が働いてロック状態を実現する。こうしてピン11が孔12a,13a,14aの各壁面に当たる状態が「ロック状態」であり、これ以外の状態が「非ロック状態」である。また、ほぼ同位置に設けられた孔12a,14aの両壁面に当たるピン11はほぼ直立状態になる。
【0028】
上述した実施の形態によれば、以下に表す各効果を得ることができる。
(1)操作部17を非ロック状態に切り替えると固定プレート12,14の孔12a,14aに通されたピン11をスライドプレート13の孔13aの壁面で押さえ付けずに移動可能にした(図5を参照)。よって、ピン11を個別かつ自在に動かすことができる。
また、操作部17をロック状態に切り替えると固定プレート12,14の孔12a,14aに通されたピン11をスライドプレート13の孔13aの壁面で押さえ付けてロックした(図6を参照)。スライドプレート13は固定プレート12,14の間でスライド可能であり、操作部17をロック状態に切り替えるとスライドプレート13の孔13aの壁面でピン11を押さえ付けてロックする。このロック状態では強固にピン11を保持するだけのトルクを有するので、ある程度の力でピン11を動かそうとしても固持される。
【0029】
(2)スライドプレート13には、少なくとも非ロック状態においてピン11に接触する端片13bを備えた(図4(C)を参照)。スライドプレート13の表面や孔13a等に備えた端片13bが非ロック状態においてピン11に接触するので、当該接触によって生じるトルクによってピン11が落下するのを防止できる。その一方、接触によって生じるトルクは非常に小さな力であるのでこれを上回る力を働かせることでピン11を容易に軸方向に移動させることもできる。すなわち対象物20でピン11を押すことにより、当該対象物20の外形をピン11の凹凸で表すことができる(図7を参照)。
【0030】
(3)スライドプレート13は、孔13aを穿つ際に生じた端片13bに弾性を持たせた(図4(C)を参照)。端片13bは孔13aを穿って加工すればよいので、他の部材等を必要とせずに低コストで実現できる。
【0031】
(4)複数本のピン11をほぼ同一の長さに形成し、操作部17を非ロック状態に切り替えると複数本のピン11の一端を揃える初期化プレート15を備えた(図5を参照)。よって、ピン11の先端を揃えるのが簡単に行える。また、初期化プレート15は上下方向にスライド可能であるので、先端位置が簡単に変えられる。
【0032】
〔他の実施の形態〕
以上では本発明を実施するための最良の形態について説明したが、本発明は当該形態に何ら限定されるものではない。言い換えれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施することもできる。例えば、次に示す各形態を実現してもよい。
【0033】
(1)上述した実施の形態では、操作部17のみでスライドプレート13をスライドさせ、ロック状態と非ロック状態とで切り替える構成とした(図5,図6を参照)。この形態に代えて、操作部17にネジを適用し、当該ネジを通すネジ孔を機構本体16に設け、ネジの先端にスライドプレート13を固定する構成としてもよい。
【0034】
また、操作部17と動力伝達部18とを組み合わせた切替部によってスライドプレート13をスライドさせ、ロック状態と非ロック状態とで切り替える構成としてもよい。
動力伝達部18は、例えば図8(A)に表すようにネジ軸18aとナット18bが該当する。ネジ軸18aはスライドプレート13に固定され、ナット18bは操作部17に固定される。ネジ軸18aおよびナット18bにはそれぞれネジが切ってあり、互いに噛み合うように構成される。この噛み合わせによって、ナット18bの回転運動(矢印D6方向の運動)がネジ軸18aの直線運動(矢印D5方向の運動)に変換される。すなわち動力伝達部18は、操作部17を操作する際に加わる動力(本例では回転力)を、スライドプレート13をスライドさせる動力に変換して伝達する。この構成によれば、上述した実施の形態とは異なり、スライドプレート13を直接的に動かす必要がなくなる。
【0035】
なお、動力伝達部18はネジ軸18aとナット18bとからなる機構に限らず、ラック&ピニオン機構や、二以上の歯車を組み合わせた機構などのように他の機構で構成してもよい。特に動力伝達部18がトルクを増強する機構(例えばトルクコンバータ)であれば、軽い操作でスライドプレート13を動かせるようになる。
【0036】
さらには、図8(B)に表すようにテーパ部16bを機構本体16に備えてもよい。このテーパ部16bは、操作部17を回転操作して所定位置に近づけると次第に操作部17に当たって回転操作を規制する。言い換えれば、操作部17を次第にロックしてゆく。図7に表す状態になったときに、操作部17がロックされるようにテーパ部16bの傾斜角を設定する。こうすれば、操作部17のロックと複数のピン11のロックが一致するので、操作部17のみの操作でロック状態と非ロック状態とを切り替えられる。
【0037】
(2)上述した実施の形態では、弾性部材として各孔14aを穿つ際に生じる端片13bを適用した(図6を参照)。この形態に代えて、孔13aの壁面における一部または全部に固定(例えば接着等)したゴム等の樹脂を適用してもよい。孔13aの壁面における全部に樹脂13cを固定した例を図9に表す。ただし、樹脂13cの固定はピン11を通すために孔の中心部はあける必要がある。こうすれば、ピン11を通すだけで樹脂13cと接触して摩擦力が生ずる。また上述した実施の形態と同様に、図5の状態でピン11が落下し、図6の状態でピン11が保持されるようにする。こうすれば、樹脂13cは端片13bに代わる機能を有するので、上述した実施の形態と同様の作用効果が得られる。
なお、スライドプレート13は各ピン11に対応した孔13aのみとし、樹脂13cを備えない構成としてもよい。この構成であっても、図7(B)に表す接触箇所P1,P3,P4で接触してせん断力が働いてロック状態を実現し、かつピン11をほぼ直立状態で保持する。したがって、上述した実施の形態と同様の作用効果が得られる。
【0038】
(3)上述した実施の形態では、円柱状に形成された複数のピン11を用いた(図1を参照)。この形態に代えて、他の断面形状(例えば楕円形、四角形や五角形等のような多角形、複数の形状を合成した形状等)の棒状部材に形成した複数のピン11を用いてもよい。また、断面形状が異なる棒状部材を混在させてもよい。さらに、一以上のピン11の長さを他のピン11の長さと異ならせてもよい。そして、棒状部材は直線的なものに限らず、一定の曲率からなる曲線状に形成してもよい。いずれの形状にせよ孔12a,13a,14aを通じて移動できるので、上述した実施の形態と同様の作用効果が得られる。
【0039】
(4)上述した実施の形態では、孔12a,13a,14aの壁面はいずれも平滑に形成した(図3,図4等を参照)。この形態に代えて、孔12a,13a,14aのうちで一以上の孔にかかる壁面を非平滑状(例えば凹凸状やギザギザ状等)に形成してもよい。こうすれば、図7(B)に表す状態になったときには平滑に形成した孔よりも確実にピン11を保持することができる。なお、非平滑状に形成する点は複数のピン11の外周面(その一部または全部)にも同様に適用することが可能である。
【0040】
(5)上述した実施の形態では、初期化プレート15をスライドプレート13のスライド方向と交差する方向にスライド可能に構成した(図5を参照)。この形態に代えて、初期化プレート15を機構本体16の内部に固定してもよく、機構本体16の内部における底面を平面に形成した場合には初期化プレート15に代えてもよい。こうすれば、複数のピン11の先端を一定の位置に揃えることができる。
【0041】
(6)上述した実施の形態では、固定プレート12,14を固定し、スライドプレート13をスライド可能に構成した(図1等を参照)。この形態に代えて、固定プレート12,14を同時かつ同方向にスライド可能とし、スライドプレート13を固定する構成としてもよい。この形態であっても、図7(B)に表す接触箇所P1,P3,P4で接触してせん断力が働いてロック状態を実現し、かつピン11をほぼ直立状態で保持する。したがって、上述した実施の形態と同様の作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】ピンロック機構の外観を表す斜視図である。
【図2】ピンロック機構の外観を表す平面図および側面図である。
【図3】固定プレートの構成例を表す図である。
【図4】スライドプレートの構成例を表す図である。
【図5】複数本のピンの一端を揃えた状態を表す図である。
【図6】複数本のピンを端片(弾性部材)で保持した状態を表す図である。
【図7】楕円体の外形をピンで模った状態を表す図である。
【図8】動力伝達部の構成例を表す平面図と断面図である。
【図9】複数本のピンをゴム(弾性部材)で保持した状態を表す図である。
【符号の説明】
【0043】
10 ピンロック機構
11 ピン(複数本のピン)
12,14 固定プレート
12a,13a,14a 孔
13 スライドプレート(可動プレート)
13b 端片(弾性部材)
13c 樹脂(弾性部材)
15 初期化プレート
16 機構本体
16a 凹部
16b テーパ部
17 操作部(切替部)
18 動力伝達部(切替部)
18a ネジ軸
18b ナット
20 対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別に移動可能な複数本のピンと、
1本の前記ピンごとに対応して設けられ、前記ピンが軸方向に移動可能となる孔を備えた二の固定プレートと、
前記二の固定プレートの間でスライド可能に設けられ、前記二の固定プレートに備えた孔とほぼ同一の軸心上に位置する孔を備えるスライドプレートと、
前記スライドプレートをロック状態と非ロック状態とで切り替える切替部とを有し、
前記切替部をロック状態に切り替えると前記二の固定プレートの孔に通されたピンを前記スライドプレートの孔の壁面で押さえ付けてロックし、前記切替部を非ロック状態に切り替えると前記二の固定プレートの孔に通されたピンを前記スライドプレートの孔の壁面で押さえ付けずに移動可能とするピンロック機構。
【請求項2】
請求項1に記載したピンロック機構であって、
スライドプレートには、少なくとも非ロック状態においてピンに接触する弾性部材を備えたピンロック機構。
【請求項3】
請求項1または2に記載したピンロック機構であって、
スライドプレートは、孔を穿つ際に生じた端片に弾性を持たせたピンロック機構。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載したピンロック機構であって、
複数本のピンをほぼ同一の長さに形成し、
切替部を非ロック状態に切り替えると、前記複数本のピンの一端を揃える初期化プレートを有するピンロック機構。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載したピンロック機構であって、
切替部は、ロック状態と非ロック状態とで切り替えを操作する操作部と、当該操作部を操作する際に加わる運動の動力をスライドプレートをスライドさせる動力に変換して伝達する動力伝達部とを有するピンロック機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−7774(P2010−7774A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168431(P2008−168431)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000227711)日邦産業株式会社 (29)
【Fターム(参考)】