ファインブランキングプレス
【課題】プレスの仕事能力が小さくなることなく、ワークのせん断速度を向上させることができるファインブランキングプレスを提供することを課題とする。
【解決手段】モータM1の回転によって昇降するスライド5を介してワークWをせん断するファインブランキングプレスであって、前記スライド5の昇降位置を検出可能なスライド位置検出部63を備えており、前記ワークWをせん断するために必要な加圧力をスライド5の昇降位置に応じて予め決定しておき、前記ワークWのせん断時にスライド5の昇降位置を検出し、その検出したスライド5の昇降位置に応じて、予め決定の加圧力を生じさせるように前記モータM1を駆動制御する。
【解決手段】モータM1の回転によって昇降するスライド5を介してワークWをせん断するファインブランキングプレスであって、前記スライド5の昇降位置を検出可能なスライド位置検出部63を備えており、前記ワークWをせん断するために必要な加圧力をスライド5の昇降位置に応じて予め決定しておき、前記ワークWのせん断時にスライド5の昇降位置を検出し、その検出したスライド5の昇降位置に応じて、予め決定の加圧力を生じさせるように前記モータM1を駆動制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファインブランキングプレスに関し、詳しくはモータの回転によって昇降するスライドを介してワークをせん断するファインブランキングプレスに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のファインブランキングプレスとして、リンクモーション型の機械式プレスと直動油圧式プレスとが知られている。
前者は、モータの駆動によりリンク機構に連動して昇降するスライドに取り付けられた打抜用パンチがワークを押圧することでワークをせん断する方式のプレスである。
後者は、油圧シリンダの伸縮に連動して昇降するスライドに取り付けられた打抜用パンチがワークを押圧することでワークをせん断する方式のプレスである。
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2001−287092号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したリンクモーション型の機械式プレスでは、機械的にモーションが決まっており、せん断速度を遅くするためにはプレスの毎分ストローク数を小さくする必要が生じ、これによりフライホイールの効果が小さくなり、プレスの仕事量能力が小さくなるという問題が生じていた。
また、上述した直動油圧式プレスでは、リンクモーション型の機械式プレスで生じる問題は発生することはないが、油圧駆動であるためスライドの昇降速度が遅くなり、ワークのせん断速度が遅くなるという新たな問題が生じていた。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、プレスの仕事能力が小さくなることなく、ワークのせん断速度を向上させることができるファインブランキングプレスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、モータの回転によって昇降するスライドを介してワークをせん断するファインブランキングプレスである。このファインブランキングプレスは、前記スライドの昇降位置を検出可能なスライド位置検出部を備えている。そして、前記ワークをせん断するために必要な加圧力をスライドの昇降位置に応じて予め決定しておき、前記ワークのせん断時にスライドの昇降位置を検出し、その検出したスライドの昇降位置に応じて、予め決定の加圧力を生じさせるように前記モータを駆動制御する構成である。
この構成によれば、スライドの位置に応じて加圧力を予め決定しておき、スライドの位置検出をして、その検出した位置に応じた加圧力を与えることができる。なお、加圧力は、モータトルクを検出することで換算により算出可能である。そのため、ワークのせん断力時には、常に、必要な加圧力を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を用いて説明する。
(実施例1)
まず、本発明の実施例1を、図1〜6を用いて説明する。
この実施例1は、サーボモータM1の回転によって駆動するクランク機構Kと該クランク機構Kと連動するリンク機構Lによって昇降するスライド5を介してワークWをせん断する形態の実施例である。
図1は、ファインブランキングプレスF1において、スライド5が上昇しワークWを成形後の状態の側面図である。図2は、ファインブランキングプレスF1の制御構成を示すブロック図である。図3は、図2の主制御部64の詳細を説明する図である。図4は、スライドの移動位置に対応したせん断速度の設定例図である。図5は、スライドの移動位置に対応した加圧力の設定例図である。図6は、主制御部64の制御フローチャートである。
【0008】
[機械的構成について]
まず、ファインブランキングプレスF1の機械的構成について説明する。
図1に示すように、ファインブランキングプレスF1のフレーム1は、ベッド部2、アプライト部3およびトップ部4によって構成されている。ベッド部2には、スライドガイド7、8が上下方向に設けられており、スライド5はスライドガイド7、8沿いに案内されている。このスライド5を案内させるスライド駆動部は、棒状のリンク9と略三角形状のレバー10で構成されている。そして、リンク9の一端は連結ピン11によってスライド5の下端と揺動可能に連結されているとともに、リンク9の他端は、連結ピン12によってレバー10と揺動可能に連結されている。また、レバー10は、連結ピン13によってベッド部2と揺動可能に連結されているとともに、連結ピン14によってクランク機構Kのコンロッド15と揺動可能に連結されている。
【0009】
さらに、コンロッド15はクランク機構Kのクランク16に揺動可能に連結されている。このクランク16は、ベッド部2に設けられた2個の軸受けによって回転可能に支持されている。そして、クランク16の一端は、減速機(図示しない)を介してサーボモータM1と連結されている。そのため、サーボモータM1からの駆動力は、減速機、クランク機構Kおよびスライド駆動部を介してスライド5へと伝達可能となっており、クランク16が1回転すると、スライド5は1ストローク昇降する構成となる。また、フレーム1の一側には、スライド5の絶対位置を検出するアナログ信号出力型のエンコーダによるスライド位置検出部63が設けられている。
【0010】
ラム17は、トップ部4に組み込まれており、該ラム17の下端から加わる成形荷重をトップ部4に伝達して負担する構成となっている。ラム17の中には、逆押さえピストン18が油密で且つ摺動可能に係合してあるとともに、該逆押さえピストン18を上下動させる油圧室19が形成されている。この逆押さえピストン18の下側には、バネ20が組み込まれている。そして、この逆押さえピストン18は、ポートaから圧油を供給するとバネ20の弾性力に反しながら下側へストロークする。一方、ポートaから圧油を逃がすとバネ20の弾性力によって上側へストロークする。したがって、ポートaに供給する圧力を調整することで、逆押さえ力の大きさを調整可能となる。
【0011】
逆押さえピストン18の中には、ノックアウトピストン21が油密で且つ摺動可能に係合してあるとともに、該ノックアウトピストン21を上下動させる油圧室22が形成されている。このノックアウトピストン21の下側には、バネ23が組み込まれている。そして、このノックアウトピストン21は、ポートcから圧油を供給するとバネ23の弾性力に反しながら下側へストロークする。一方、ポートcから圧油を逃がすとバネ23の弾性力によって上側へストロークする。したがって、ポートcへの圧油供給を制御することで任意のタイミングでノックアウトを実施できる。
【0012】
スライド5の中には、板押さえピストン25が油密で且つ摺動可能に係合してあるとともに、該板押さえピストン25を上下動させる油圧室26が形成されている。この板押さえピストン25は、ポートbから圧油を供給すると板押さえピストン25はスライド5に対して上側へストロークする。一方、ポートbから圧油を逃がすと板押さえピストン25の自重によって下側へストロークする。したがって、ポートbに供給する圧力を調整することで、板押さえ力の大きさを調整可能となる。
【0013】
例えば、板押さえダイ27を板押さえピストン25の上部の下テーブル28に固定し、打抜パンチ29をスライド5と一体となるように固定すると、打抜パンチ29で発生するせん断力Pdの反力は、スライド5に直接伝達される。同様に、板押さえダイ27に作用させる板押さえ力Prの反力は、油圧室26の油を介してスライド5に伝達される。
【0014】
上テーブル30は、ラム17にボルトで機械的に結合していて、圧力ピン大31と圧力ピン小32を支えている。圧力ピン大31は、ラム17と摺動可能に係合してあり、圧力ピン小32は、上テーブル30と摺動可能に係合してあり、逆押さえピストン18およびノックアウトピストン21の作用力を受け、逆押さえパンチ33に作用力を伝達する構成となっている。
【0015】
例えば、上テーブル30にダイ34を固定し、逆押さえパンチ33をダイ34の中に摺動可能に配置すると、ダイ34に発生するせん断力Pdは上テーブル30を介してラム17に伝達される。また、逆押さえパンチ33に発生させる逆押さえ力Pcは圧力ピン小32、圧力ピン大31を介して逆押さえピストン18に伝達される。図1では、ワークWがダイ34に板押さえダイ27で押さえられて拘束されていて、ワークWが打抜パンチ29によって打ち抜かれた後の状態を示している。
【0016】
逆押さえピストン18の油圧室19のポートa、ノックアウトピストン21の油圧室22のポートcおよび板押さえピストン25の油圧室26のポートbには、管路39、管路55および管路46の一方がそれぞれ接続され独立した油圧回路(図示しない)が形成されている。そして、これら油圧回路に所要の圧力を供給することで、既に説明したように逆押さえピストン18、ノックアウトピストン21および板押さえピストン25をそれぞれ所要のタイミングで上下動させワークWを拘束せん断加工することができる。
【0017】
[電気的構成について]
次に、ファインブランキングプレスF1の電気的構成について説明する。
図2は、スライドモーション制御系の構成を示すもので、主制御部64、サーボモータ駆動装置65、サーボモータM1、クランク機構K、リンク機構L、スライド5およびスライド位置検出部63から成っている。動力電源が接続されているサーボモータ駆動装置65は、スライド位置検出部63からの信号を受けて、指令値との偏差信号を出力する主制御部64が出力する信号を受けて、サーボモータM1を駆動する駆動電流を供給する。
【0018】
図3は、主制御部64の構成を詳しく示すもので、制御の中枢をなすものとして、例えばマイクロプロセッサCPUを使用し、CPUにはランダムアクセスメモリRAMとリードオンメモリROMと入力インターフェイスI/Oと出力インターフェイスOUTと速度設定部68および速度モニタ69が接続されている。ランダムアクセスメモリRAMとリードオンメモリROMは、所要の記憶容量を満足するように設けられている。入力インターフェイスI/Oは、外部からの信号を入力させるとともに、外部へ信号を出力させるための入力機構を備えていて、出力インターフェイスOUTは、外部へ信号を出力させるための出力機構を備えている。
【0019】
この入力インターフェイスI/Oには、ファインブランキングプレスF1の駆動を制御するプレス機制御装置70が接続され、CPUとの間で信号交信を行う。このプレス機制御装置70からCPUへ出力する信号として、例えばファインブランキングプレスF1が運転を開始してもよいかどうかの問合せ信号、異常信号等があり、逆にCPUからファインブランキングプレスF1へ出力する信号として運転準備完了信号等がある。また、この入力インターフェイスI/Oには、スライド位置検出部63から出力された信号をデジタル信号に変換する信号変換器71が接続されている。また出力インターフェイスOUTには、サーボモータM1を駆動させるための駆動電流を通電するサーボモータ駆動装置65が接続されている。
【0020】
速度設定部68は、スライド5の移動位置に対応してスライド5の移動速度を教示設定する部分であり、速度モニタ69はスライド5の速度を、例えばCRTまたは液晶画面で表示する。また、速度設定部68における速度設定のやり方は、例えばファインブランキングプレスF1の操作パネルに設けたキーボードを使用し、図4に示すようにスライド位置とスライド速度を上記ランダムアクセスメモリRAMに記憶させる。
【0021】
加圧力設定部72は、スライド5の移動位置に対応して、加圧力を教示設定する部分であり、加圧力モニタ73はスライド5の加圧力をCRTまたは液晶画面で表示する。また、加圧力設定部72における加圧力設定のやり方は、例えばファインブランキングプレスF1の操作パネルに設けたキーボードを使用し、図5に示すようにスライド位置と加圧力をランダムアクセスメモリRAMに記憶させる。なお、加圧力は、加圧力/トルク換算器64cでモータトルクに換算されRAMに記憶される。
【0022】
[せん断制御について]
続いて、上述したように構成されたファインブランキングプレスF1によるワークWのせん断制御について、図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。
まず、運転準備作業としてワークWを板押さえダイ27と打抜パンチ29の上に位置決めしてせん断開始を待つ。そしてCPUに電源が投入されると、ステップ1に示すようにCPUを含めて電源回路がイニシャライズされる。次に、ステップ2において、CPUはスライド速度が既に上記速度設定部68で設定されているかどうかを判断し、既に設定が完了したと判断した場合は、ステップ3において、CPUは加圧力が既に上記加圧力設定部72で設定されているかどうかを判断する。そして、既に設定が完了したと判断した場合は、ステップ4において、プレス機制御装置70との信号交信によりファインブランキングプレスF1が運転可能な状態になっているかどうかを判断する。
【0023】
ステップ4の判断の結果、CPUがファインブランキングプレスF1側の運転準備完了信号を確認すると、CPUはステップ5において、プレス機制御装置70に対して運転が開始可能であることを示す運転信号を出力する。
【0024】
CPUはステップ6において、上記スライド位置検出部63からの信号を入力し、スライド5の位置がスライド速度、すなわちせん断速度を変化させる位置であるかどうかを判断し、同位置がスライド速度を変化させる位置であると判断した場合は、ステップ7において、上記速度設定部68から同位置に対応したスライド速度を読み出し、同スライド速度信号をサーボモータM1の駆動量に対応した駆動信号に変換してサーボモータ駆動装置65に出力する。このサーボモータ駆動装置65は上記駆動信号を入力してサーボモータM1に駆動電量を通電し、所要の回転を与え、スライド5をストロークさせる。ステップ8において、CPUは上記スライド位置検出部63の出力信号を入力して所定距離移動に要した時間からスライド5の速度を演算し、同演算速度を速度モニタ信号に変換した上、上記速度モニタ69に出力し、スライド速度をモニタ表示させる。
【0025】
CPUはステップ9において、上記スライド位置検出部63からの信号を入力し、スライド5の位置が加圧力を変化させる位置であるかどうかを判断し、同位置が加圧力を変化させる位置であると判断した場合は、ステップ10において、上記加圧力設定部72から同位置に対応した加圧力を読み出し、同加圧力信号をサーボモータM1の駆動トルク量に対応した駆動信号に変換してサーボモータ駆動装置65に出力する。このサーボモータ駆動装置65は上記駆動信号を入力してサーボモータM1に駆動電量を通電し、所要の回転を与え、スライド5をストロークさせる。ステップ11において、CPUはトルク検出部の出力信号を入力して、加圧力に換算して加圧力モニタ73に出力する。
【0026】
実際には速度設定部68で設定されるスライド速度設定点がスライド5の移動範囲において多点に亘るため、ステップ6からステップ8間のルーチンはスライド速度設定点毎に実行される。また、同様に加圧力設定部72で設定される加圧力設定点がスライド5の移動範囲において多点に亘るため、ステップ9からステップ11間のルーチンは加圧力設定点毎に実行される。そして、最後のスライド速度設定点対応のせん断速度制御および最後の加圧力設定点のせん断加圧力制御を完了したとき、ステップ12に示すように1行程完了し、運転信号をOFFする。
【0027】
以上のように、出力トルク一定制御ができるサーボモータM1の出力で図2のシステムによってファインブランキングプレスF1を駆動するから、プレスの仕事能力を変化させないでせん断速度のみを主制御部64の速度設定部68で変更して拘束せん断加工を行うことができる。また、プレスの仕事量能力が小さくなることはない。
【0028】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2を、図7〜12を用いて説明する。
図7は、ファインブランキングプレスF2において、スライド5が上昇しワークWを成形後の状態の側面図である。図8は、ファインブランキングプレスF1の制御構成を示すブロック図である。図9は、図8の主制御部64の詳細を説明する図である。図10は、スライドの移動位置に対応したせん断速度の設定例図である。図11は、スライドの移動位置に対応した加圧力の設定例図である。図12は、主制御部64の制御フローチャートである。この実施例2は、サーボモータM1の回転によってポンプP1を駆動させ、このポンプP1の駆動によって生じた油圧によって油圧シリンダSを伸縮させ、この油圧シリンダSの伸縮に連動するリンク機構Lによって昇降するスライド5を介してワークWをせん断する形態の実施例である。
【0029】
[機械的構成について]
まず、ファインブランキングプレスF2の機械的構成について説明する。
図7に示すように、ファインブランキングプレスF2のフレーム1は、ベッド部2、アプライト部3およびトップ部4によって構成されている。ベッド部2には、スライドガイド7、8が上下方向に設けられており、スライド5はスライドガイド7、8沿いに案内されている。このスライド5を案内させるスライド駆動部は、棒状のリンク9と略三角形状のレバー10で構成されている。そして、リンク9の一端は連結ピン11によってスライド5の下端と揺動可能に連結されているとともに、リンク9の他端は、連結ピン12によってレバー10と揺動可能に連結されている。また、レバー10は、連結ピン13によってベッド部2と揺動可能に連結されているとともに、連結ピン14によって油圧シリンダSのロッドの先端と揺動可能に連結されている。また油圧シリンダSは、連結ピン14aによってベッド部2と揺動可能に連結されている。
【0030】
この油圧シリンダSのポートAとポートBには、制御弁SV1が接続されており、油圧シリンダSのストローク方向を制御している。また、サーボモータM1はポンプP1に連結駆動して油タンク35からフィルタ36、逆止弁37を経由して制御弁SV1に圧油を供給している。そのため、油圧シリンダSが伸縮ストロークすると、スライド5は上昇、下降ストロークする構成となる。また、フレーム1の一側には、スライド5の絶対位置を検出するアナログ信号出力型のエンコーダによるスライド位置検出部63が設けられている。
【0031】
ラム17は、トップ部4に組み込まれており、該ラム17の下端から加わる成形荷重をトップ部4に伝達して負担する構成となっている。ラム17の中には、逆押さえピストン18が油密で且つ摺動可能に係合してあるとともに、該逆押さえピストン18を上下動させる油圧室19が形成されている。この逆押さえピストン18の下側には、バネ20が組み込まれている。そして、この逆押さえピストン18は、ポートCから圧油を供給するとバネ20の弾性力に反しながら下側へストロークする。一方、ポートCから圧油を逃がすとバネ20の弾性力によって上側へストロークする。したがって、ポートCに供給する圧力を調整することで、逆押さえ力の大きさを調整可能となる。
【0032】
逆押さえピストン18の中には、ノックアウトピストン21が油密で且つ摺動可能に係合してあるとともに、該ノックアウトピストン21を上下動させる油圧室22が形成されている。このノックアウトピストン21の下側には、バネ23が組み込まれている。そして、このノックアウトピストン21は、ポートEから圧油を供給するとバネ23の弾性力に反しながら下側へストロークする。一方、ポートEから圧油を逃がすとバネ23の弾性力によって上側へストロークする。したがって、ポートEへの圧油供給を制御することで任意のタイミングでノックアウトを実施できる。
【0033】
スライド5の中には、板押さえピストン25が油密で且つ摺動可能に係合してあるとともに、該板押さえピストン25を上下動させる油圧室26が形成されている。この板押さえピストン25は、ポートDから圧油を供給すると板押さえピストン25はスライド5に対して上側へストロークする。一方、ポートDから圧油を逃がすと板押さえピストン25の自重によって下側へストロークする。したがって、ポートDに供給する圧力を調整することで、板押さえ力の大きさを調整可能となる。
【0034】
例えば、板押さえダイ27を板押さえピストン25の上部の下テーブル28に固定し、打抜パンチ29をスライド5と一体となるように固定すると、打抜パンチ29で発生するせん断力Pdの反力は、スライド5に直接伝達される。同様に、板押さえダイ27に作用させる板押さえ力Prの反力は、油圧室26の油を介してスライド5に伝達される。
【0035】
上テーブル30は、ラム17にボルトで機械的に結合していて、圧力ピン大31と圧力ピン小32を支えている。圧力ピン大31は、ラム17と摺動可能に係合してあり、圧力ピン小32は、上テーブル30と摺動可能に係合してあり、逆押さえピストン18およびノックアウトピストン21の作用力を受け、逆押さえパンチ33に作用力を伝達する構成となっている。
【0036】
例えば、上テーブル30にダイ34を固定し、逆押さえパンチ33をダイ34の中に摺動可能に配置すると、ダイ34に発生するせん断力Pdは上テーブル30を介してラム17に伝達される。また、逆押さえパンチ33に発生させる逆押さえ力Pcは圧力ピン小32、圧力ピン大31を介して逆押さえピストン18に伝達される。図7では、ワークWがダイ34に板押さえダイ27で押さえられて拘束されていて、ワークWが打抜パンチ29によって打ち抜かれた後の状態を示している。
【0037】
逆押さえピストン18の油圧室19のポートC、ノックアウトピストン21の油圧室22のポートEおよび板押さえピストン25の油圧室26のポートDには、管路39、管路55および管路46の一方がそれぞれ接続され独立した油圧回路(図示しない)が形成されている。そして、これら油圧回路に所要の圧力を供給することで、既に説明したように逆押さえピストン18、ノックアウトピストン21および板押さえピストン25をそれぞれ所要のタイミングで上下動させワークWを拘束せん断加工することができる。
【0038】
[電気的構成について]
次に、ファインブランキングプレスF1の電気的構成について説明する。
図8は、スライドモーション制御系の構成を示すもので、主制御部64、サーボモータ駆動装置65、サーボモータM1、ポンプP1、制御弁SV1、油圧シリンダS、リンク機構L、スライド5およびスライド位置検出部63から成っている。動力電源が接続されているサーボモータ駆動装置65は、スライド位置検出部63からの信号を受けて、指令値との偏差信号を出力する主制御部64が出力する信号を受けて、サーボモータM1を駆動する駆動電流を供給する。
【0039】
図9は、主制御部64の構成を詳しく示すもので、制御の中枢をなすものとして、例えばマイクロプロセッサCPUを使用し、CPUにはランダムアクセスメモリRAMとリードオンメモリROMと入力インターフェイスI/Oと出力インターフェイスOUTと速度設定部68および速度モニタ69が接続されている。ランダムアクセスメモリRAMとリードオンメモリROMは、所要の記憶容量を満足するように設けられている。入力インターフェイスI/Oは、外部からの信号を入力させるとともに、外部へ信号を出力させるための入力機構を備えていて、出力インターフェイスOUTは、外部へ信号を出力させるための出力機構を備えている。
【0040】
この入力インターフェイスI/Oには、ファインブランキングプレスF2の駆動を制御するプレス機制御装置70が接続され、CPUとの間で信号交信を行う。このプレス機制御装置70からCPUへ出力する信号として、例えばファインブランキングプレスF2が運転を開始してもよいかどうかの問合せ信号、異常信号等があり、逆にCPUからファインブランキングプレスF2へ出力する信号として運転準備完了信号等がある。また、この入力インターフェイスI/Oには、スライド位置検出部63から出力された信号をデジタル信号に変換する信号変換器71が接続されている。また出力インターフェイスOUTには、サーボモータM1を駆動させるための駆動電流を通電するサーボモータ駆動装置65が接続されている。
【0041】
速度設定部68は、スライド5の移動位置に対応してスライド5の移動速度を教示設定する部分であり、速度モニタ69はスライド5の速度を、例えばCRTまたは液晶画面で表示する。また、速度設定部68における速度設定のやり方は、例えばファインブランキングプレスF2の操作パネルに設けたキーボードを使用し、図10に示すようにスライド位置とスライド速度を上記ランダムアクセスメモリRAMに記憶させる。
【0042】
加圧力設定部72は、スライド5の移動位置に対応して、加圧力を教示設定する部分であり、加圧力モニタ73はスライド5の加圧力をCRTまたは液晶画面で表示する。また、加圧力設定部72における加圧力設定のやり方は、例えばファインブランキングプレスF2の操作パネルに設けたキーボードを使用し、図11に示すようにスライド位置と加圧力をランダムアクセスメモリRAMに記憶させる。なお、加圧力は、加圧力/トルク換算器64cでモータトルクに換算されRAMに記憶される。
【0043】
[せん断制御について]
続いて、上述したように構成されたファインブランキングプレスF2によるワークWのせん断制御について、図12に示すフローチャートを参照しながら説明する。
まず、運転準備作業としてワークWを板押さえダイ27と打抜パンチ29の上に位置決めしてせん断開始を待つ。そしてCPUに電源が投入されると、ステップ101に示すようにCPUを含めて電源回路がイニシャライズされる。次に、ステップ102において、CPUはスライド速度が既に上記速度設定部68で設定されているかどうかを判断し、既に設定が完了したと判断した場合は、ステップ103において、CPUは加圧力が既に上記加圧力設定部72で設定されているかどうかを判断する。そして、既に設定が完了したと判断した場合は、ステップ104において、プレス機制御装置70との信号交信によりファインブランキングプレスF2が運転可能な状態になっているかどうかを判断する。
【0044】
ステップ104の判断の結果、CPUがファインブランキングプレスF2側の運転準備完了信号を確認すると、CPUはステップ105において、プレス機制御装置70に対して運転が開始可能であることを示す運転信号を出力する。
【0045】
CPUはステップ106において、上記スライド位置検出部63からの信号を入力し、スライド5の位置がスライド速度、すなわちせん断速度を変化させる位置であるかどうかを判断し、同位置がスライド速度を変化させる位置であると判断した場合は、ステップ107において、上記速度設定部68から同位置に対応したスライド速度を読み出し、同スライド速度信号をサーボモータM1の駆動量に対応した駆動信号に変換してサーボモータ駆動装置65に出力する。このサーボモータ駆動装置65は上記駆動信号を入力してサーボモータM1に駆動電量を通電し、ポンプP1に所要の回転を与え、油圧シリンダSをストロークさせる。ステップ108において、CPUは上記スライド位置検出部63の出力信号を入力して所定距離移動に要した時間からスライド5の速度を演算し、同演算速度を速度モニタ信号に変換した上、上記速度モニタ69に出力し、スライド速度をモニタ表示させる。
【0046】
CPUはステップ109において、上記スライド位置検出部63からの信号を入力し、スライド5の位置が加圧力を変化させる位置であるかどうかを判断し、同位置が加圧力を変化させる位置であると判断した場合は、ステップ110において、上記加圧力設定部72から同位置に対応した加圧力を読み出し、同加圧力信号をサーボモータM1の駆動トルク量に対応した駆動信号に変換してサーボモータ駆動装置65に出力する。このサーボモータ駆動装置65は上記駆動信号を入力してサーボモータM1に駆動電量を通電し、ポンプP1に所要の回転を与え、油圧シリンダSをストロークさせる。ステップ111において、CPUはトルク検出部の出力信号を入力して、加圧力に換算して加圧力モニタ73に出力する。
【0047】
実際には速度設定部68で設定されるスライド速度設定点がスライド5の移動範囲において多点に亘るため、ステップ106からステップ8間のルーチンはスライド速度設定点毎に実行される。また、同様に加圧力設定部72で設定される加圧力設定点がスライド5の移動範囲において多点に亘るため、ステップ109からステップ111間のルーチンは加圧力設定点毎に実行される。そして、最後のスライド速度設定点対応のせん断速度制御および最後の加圧力設定点のせん断加圧力制御を完了したとき、ステップ112に示すように1行程完了し、運転信号をOFFする。
【0048】
以上のように、出力トルク一定制御ができるサーボモータM1の出力を馬力制御形ポンプP1で油圧動力に変換して図8のシステムによってファインブランキングプレスF2を駆動するから、プレスの仕事能力を変化させないでせん断速度のみを主制御部64の速度設定部68で変更して拘束せん断加工を行うことができる。また、プレスの仕事量能力が小さくなることはない。
【0049】
また、このように油圧シリンダSでスライド5を昇降させる場合、上述したようにリンク機構Lを介することにより、直動の場合と比較すると油圧シリンダSのシリンダ容積は直動の場合の約半分でよい。以下に、その説明をする。
【0050】
図13は、リンク機構Lのスケルトンを示している。このスケルトンは、実施例2に示したリンク機構Lとみなすことが可能である。
一般に、プレス機械は下死点近くで大きな加圧力を発生することが要求される。この能力発生位置と下死点とのスライドストローク距離を能力限界と称している。トグルリンクプレスは下死点近くでは僅かな駆動力で無限大の力を発生する性質があるから、同じ能力のプレスでは直動油圧プレスに比べると小さいシリンダでよいことになる。
【0051】
能力限界でのプレス加圧力P0とトグル駆動力P1の関係は次の式となる。
P1=2×tanα0×P0・・・(1)
ここに、α0=Acos[1−(S1/n)/2a]rad
S1:スライドストロークmm
a:リンク長さ
n:能力限界定数=S1/S0
S0:能力限界
【0052】
例えば、P0=100T、a=200、S1=53.6、n=15、S0=3.57のときα0=0.1337532(7.66deg)でP1=26.9T
つまり、P0/P1=100/26.9=3.717となり、
直動油圧プレスでのシリンダ力は100T、油圧駆動リンクプレスでは26.9Tとなる。
【0053】
油圧駆動リンクプレスのシリンダストロークは直動プレスのストロークの約1.9倍である。スライドストロークS1と油圧駆動リンクプレスのシリンダストロークS2の関係式は、
S1=2a×(1−cosα)・・・(2)
ここに、α:リンクの揺動角rad
一般に、α=30deg
S2=a×sinα・・・(3)
例えば、a=200、α=30deg(0.5235987rad)のとき、
S1=53.6でS2=100
つまり、S2/S1=100/53.6=1.866である。
【0054】
上記記載から直動プレスのシリンダ容積V1と油圧リンクプレスのシリンダ容積V2の比は、
V1/V2=(P0×S1)/(P1×S2)=P0/P1×S1/S2・・・(4)
例えば、上記の例題の値で計算すると
V1/V2=3.717/1.866=1.99
つまり、油圧リンクプレスのシリンダ容積は直動プレスの約半分でよい。
【0055】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、ファインブランキングプレスF1において、スライド5が上昇しワークWを成形後の状態の側面図である。
【図2】図2は、ファインブランキングプレスF1の制御構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、図2の主制御部64の詳細を説明する図である。
【図4】図4は、スライドの移動位置に対応したせん断速度の設定例図である。
【図5】図5は、スライドの移動位置に対応した加圧力の設定例図である。
【図6】図6は、主制御部64の制御フローチャートである。
【図7】図7は、ファインブランキングプレスF2において、スライド5が上昇しワークWを成形後の状態の側面図である。
【図8】図8は、ファインブランキングプレスF1の制御構成を示すブロック図である。
【図9】図9は、図8の主制御部64の詳細を説明する図である。
【図10】図10は、スライドの移動位置に対応したせん断速度の設定例図である。
【図11】図11は、スライドの移動位置に対応した加圧力の設定例図である。
【図12】図12は、主制御部64の制御フローチャートである。
【図13】図13は、リンク機構Lのスケルトンを示している。
【符号の説明】
【0057】
5 スライド
63 スライド位置検出部
M1 モータ
W ワーク
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファインブランキングプレスに関し、詳しくはモータの回転によって昇降するスライドを介してワークをせん断するファインブランキングプレスに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のファインブランキングプレスとして、リンクモーション型の機械式プレスと直動油圧式プレスとが知られている。
前者は、モータの駆動によりリンク機構に連動して昇降するスライドに取り付けられた打抜用パンチがワークを押圧することでワークをせん断する方式のプレスである。
後者は、油圧シリンダの伸縮に連動して昇降するスライドに取り付けられた打抜用パンチがワークを押圧することでワークをせん断する方式のプレスである。
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2001−287092号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したリンクモーション型の機械式プレスでは、機械的にモーションが決まっており、せん断速度を遅くするためにはプレスの毎分ストローク数を小さくする必要が生じ、これによりフライホイールの効果が小さくなり、プレスの仕事量能力が小さくなるという問題が生じていた。
また、上述した直動油圧式プレスでは、リンクモーション型の機械式プレスで生じる問題は発生することはないが、油圧駆動であるためスライドの昇降速度が遅くなり、ワークのせん断速度が遅くなるという新たな問題が生じていた。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、プレスの仕事能力が小さくなることなく、ワークのせん断速度を向上させることができるファインブランキングプレスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、モータの回転によって昇降するスライドを介してワークをせん断するファインブランキングプレスである。このファインブランキングプレスは、前記スライドの昇降位置を検出可能なスライド位置検出部を備えている。そして、前記ワークをせん断するために必要な加圧力をスライドの昇降位置に応じて予め決定しておき、前記ワークのせん断時にスライドの昇降位置を検出し、その検出したスライドの昇降位置に応じて、予め決定の加圧力を生じさせるように前記モータを駆動制御する構成である。
この構成によれば、スライドの位置に応じて加圧力を予め決定しておき、スライドの位置検出をして、その検出した位置に応じた加圧力を与えることができる。なお、加圧力は、モータトルクを検出することで換算により算出可能である。そのため、ワークのせん断力時には、常に、必要な加圧力を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を用いて説明する。
(実施例1)
まず、本発明の実施例1を、図1〜6を用いて説明する。
この実施例1は、サーボモータM1の回転によって駆動するクランク機構Kと該クランク機構Kと連動するリンク機構Lによって昇降するスライド5を介してワークWをせん断する形態の実施例である。
図1は、ファインブランキングプレスF1において、スライド5が上昇しワークWを成形後の状態の側面図である。図2は、ファインブランキングプレスF1の制御構成を示すブロック図である。図3は、図2の主制御部64の詳細を説明する図である。図4は、スライドの移動位置に対応したせん断速度の設定例図である。図5は、スライドの移動位置に対応した加圧力の設定例図である。図6は、主制御部64の制御フローチャートである。
【0008】
[機械的構成について]
まず、ファインブランキングプレスF1の機械的構成について説明する。
図1に示すように、ファインブランキングプレスF1のフレーム1は、ベッド部2、アプライト部3およびトップ部4によって構成されている。ベッド部2には、スライドガイド7、8が上下方向に設けられており、スライド5はスライドガイド7、8沿いに案内されている。このスライド5を案内させるスライド駆動部は、棒状のリンク9と略三角形状のレバー10で構成されている。そして、リンク9の一端は連結ピン11によってスライド5の下端と揺動可能に連結されているとともに、リンク9の他端は、連結ピン12によってレバー10と揺動可能に連結されている。また、レバー10は、連結ピン13によってベッド部2と揺動可能に連結されているとともに、連結ピン14によってクランク機構Kのコンロッド15と揺動可能に連結されている。
【0009】
さらに、コンロッド15はクランク機構Kのクランク16に揺動可能に連結されている。このクランク16は、ベッド部2に設けられた2個の軸受けによって回転可能に支持されている。そして、クランク16の一端は、減速機(図示しない)を介してサーボモータM1と連結されている。そのため、サーボモータM1からの駆動力は、減速機、クランク機構Kおよびスライド駆動部を介してスライド5へと伝達可能となっており、クランク16が1回転すると、スライド5は1ストローク昇降する構成となる。また、フレーム1の一側には、スライド5の絶対位置を検出するアナログ信号出力型のエンコーダによるスライド位置検出部63が設けられている。
【0010】
ラム17は、トップ部4に組み込まれており、該ラム17の下端から加わる成形荷重をトップ部4に伝達して負担する構成となっている。ラム17の中には、逆押さえピストン18が油密で且つ摺動可能に係合してあるとともに、該逆押さえピストン18を上下動させる油圧室19が形成されている。この逆押さえピストン18の下側には、バネ20が組み込まれている。そして、この逆押さえピストン18は、ポートaから圧油を供給するとバネ20の弾性力に反しながら下側へストロークする。一方、ポートaから圧油を逃がすとバネ20の弾性力によって上側へストロークする。したがって、ポートaに供給する圧力を調整することで、逆押さえ力の大きさを調整可能となる。
【0011】
逆押さえピストン18の中には、ノックアウトピストン21が油密で且つ摺動可能に係合してあるとともに、該ノックアウトピストン21を上下動させる油圧室22が形成されている。このノックアウトピストン21の下側には、バネ23が組み込まれている。そして、このノックアウトピストン21は、ポートcから圧油を供給するとバネ23の弾性力に反しながら下側へストロークする。一方、ポートcから圧油を逃がすとバネ23の弾性力によって上側へストロークする。したがって、ポートcへの圧油供給を制御することで任意のタイミングでノックアウトを実施できる。
【0012】
スライド5の中には、板押さえピストン25が油密で且つ摺動可能に係合してあるとともに、該板押さえピストン25を上下動させる油圧室26が形成されている。この板押さえピストン25は、ポートbから圧油を供給すると板押さえピストン25はスライド5に対して上側へストロークする。一方、ポートbから圧油を逃がすと板押さえピストン25の自重によって下側へストロークする。したがって、ポートbに供給する圧力を調整することで、板押さえ力の大きさを調整可能となる。
【0013】
例えば、板押さえダイ27を板押さえピストン25の上部の下テーブル28に固定し、打抜パンチ29をスライド5と一体となるように固定すると、打抜パンチ29で発生するせん断力Pdの反力は、スライド5に直接伝達される。同様に、板押さえダイ27に作用させる板押さえ力Prの反力は、油圧室26の油を介してスライド5に伝達される。
【0014】
上テーブル30は、ラム17にボルトで機械的に結合していて、圧力ピン大31と圧力ピン小32を支えている。圧力ピン大31は、ラム17と摺動可能に係合してあり、圧力ピン小32は、上テーブル30と摺動可能に係合してあり、逆押さえピストン18およびノックアウトピストン21の作用力を受け、逆押さえパンチ33に作用力を伝達する構成となっている。
【0015】
例えば、上テーブル30にダイ34を固定し、逆押さえパンチ33をダイ34の中に摺動可能に配置すると、ダイ34に発生するせん断力Pdは上テーブル30を介してラム17に伝達される。また、逆押さえパンチ33に発生させる逆押さえ力Pcは圧力ピン小32、圧力ピン大31を介して逆押さえピストン18に伝達される。図1では、ワークWがダイ34に板押さえダイ27で押さえられて拘束されていて、ワークWが打抜パンチ29によって打ち抜かれた後の状態を示している。
【0016】
逆押さえピストン18の油圧室19のポートa、ノックアウトピストン21の油圧室22のポートcおよび板押さえピストン25の油圧室26のポートbには、管路39、管路55および管路46の一方がそれぞれ接続され独立した油圧回路(図示しない)が形成されている。そして、これら油圧回路に所要の圧力を供給することで、既に説明したように逆押さえピストン18、ノックアウトピストン21および板押さえピストン25をそれぞれ所要のタイミングで上下動させワークWを拘束せん断加工することができる。
【0017】
[電気的構成について]
次に、ファインブランキングプレスF1の電気的構成について説明する。
図2は、スライドモーション制御系の構成を示すもので、主制御部64、サーボモータ駆動装置65、サーボモータM1、クランク機構K、リンク機構L、スライド5およびスライド位置検出部63から成っている。動力電源が接続されているサーボモータ駆動装置65は、スライド位置検出部63からの信号を受けて、指令値との偏差信号を出力する主制御部64が出力する信号を受けて、サーボモータM1を駆動する駆動電流を供給する。
【0018】
図3は、主制御部64の構成を詳しく示すもので、制御の中枢をなすものとして、例えばマイクロプロセッサCPUを使用し、CPUにはランダムアクセスメモリRAMとリードオンメモリROMと入力インターフェイスI/Oと出力インターフェイスOUTと速度設定部68および速度モニタ69が接続されている。ランダムアクセスメモリRAMとリードオンメモリROMは、所要の記憶容量を満足するように設けられている。入力インターフェイスI/Oは、外部からの信号を入力させるとともに、外部へ信号を出力させるための入力機構を備えていて、出力インターフェイスOUTは、外部へ信号を出力させるための出力機構を備えている。
【0019】
この入力インターフェイスI/Oには、ファインブランキングプレスF1の駆動を制御するプレス機制御装置70が接続され、CPUとの間で信号交信を行う。このプレス機制御装置70からCPUへ出力する信号として、例えばファインブランキングプレスF1が運転を開始してもよいかどうかの問合せ信号、異常信号等があり、逆にCPUからファインブランキングプレスF1へ出力する信号として運転準備完了信号等がある。また、この入力インターフェイスI/Oには、スライド位置検出部63から出力された信号をデジタル信号に変換する信号変換器71が接続されている。また出力インターフェイスOUTには、サーボモータM1を駆動させるための駆動電流を通電するサーボモータ駆動装置65が接続されている。
【0020】
速度設定部68は、スライド5の移動位置に対応してスライド5の移動速度を教示設定する部分であり、速度モニタ69はスライド5の速度を、例えばCRTまたは液晶画面で表示する。また、速度設定部68における速度設定のやり方は、例えばファインブランキングプレスF1の操作パネルに設けたキーボードを使用し、図4に示すようにスライド位置とスライド速度を上記ランダムアクセスメモリRAMに記憶させる。
【0021】
加圧力設定部72は、スライド5の移動位置に対応して、加圧力を教示設定する部分であり、加圧力モニタ73はスライド5の加圧力をCRTまたは液晶画面で表示する。また、加圧力設定部72における加圧力設定のやり方は、例えばファインブランキングプレスF1の操作パネルに設けたキーボードを使用し、図5に示すようにスライド位置と加圧力をランダムアクセスメモリRAMに記憶させる。なお、加圧力は、加圧力/トルク換算器64cでモータトルクに換算されRAMに記憶される。
【0022】
[せん断制御について]
続いて、上述したように構成されたファインブランキングプレスF1によるワークWのせん断制御について、図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。
まず、運転準備作業としてワークWを板押さえダイ27と打抜パンチ29の上に位置決めしてせん断開始を待つ。そしてCPUに電源が投入されると、ステップ1に示すようにCPUを含めて電源回路がイニシャライズされる。次に、ステップ2において、CPUはスライド速度が既に上記速度設定部68で設定されているかどうかを判断し、既に設定が完了したと判断した場合は、ステップ3において、CPUは加圧力が既に上記加圧力設定部72で設定されているかどうかを判断する。そして、既に設定が完了したと判断した場合は、ステップ4において、プレス機制御装置70との信号交信によりファインブランキングプレスF1が運転可能な状態になっているかどうかを判断する。
【0023】
ステップ4の判断の結果、CPUがファインブランキングプレスF1側の運転準備完了信号を確認すると、CPUはステップ5において、プレス機制御装置70に対して運転が開始可能であることを示す運転信号を出力する。
【0024】
CPUはステップ6において、上記スライド位置検出部63からの信号を入力し、スライド5の位置がスライド速度、すなわちせん断速度を変化させる位置であるかどうかを判断し、同位置がスライド速度を変化させる位置であると判断した場合は、ステップ7において、上記速度設定部68から同位置に対応したスライド速度を読み出し、同スライド速度信号をサーボモータM1の駆動量に対応した駆動信号に変換してサーボモータ駆動装置65に出力する。このサーボモータ駆動装置65は上記駆動信号を入力してサーボモータM1に駆動電量を通電し、所要の回転を与え、スライド5をストロークさせる。ステップ8において、CPUは上記スライド位置検出部63の出力信号を入力して所定距離移動に要した時間からスライド5の速度を演算し、同演算速度を速度モニタ信号に変換した上、上記速度モニタ69に出力し、スライド速度をモニタ表示させる。
【0025】
CPUはステップ9において、上記スライド位置検出部63からの信号を入力し、スライド5の位置が加圧力を変化させる位置であるかどうかを判断し、同位置が加圧力を変化させる位置であると判断した場合は、ステップ10において、上記加圧力設定部72から同位置に対応した加圧力を読み出し、同加圧力信号をサーボモータM1の駆動トルク量に対応した駆動信号に変換してサーボモータ駆動装置65に出力する。このサーボモータ駆動装置65は上記駆動信号を入力してサーボモータM1に駆動電量を通電し、所要の回転を与え、スライド5をストロークさせる。ステップ11において、CPUはトルク検出部の出力信号を入力して、加圧力に換算して加圧力モニタ73に出力する。
【0026】
実際には速度設定部68で設定されるスライド速度設定点がスライド5の移動範囲において多点に亘るため、ステップ6からステップ8間のルーチンはスライド速度設定点毎に実行される。また、同様に加圧力設定部72で設定される加圧力設定点がスライド5の移動範囲において多点に亘るため、ステップ9からステップ11間のルーチンは加圧力設定点毎に実行される。そして、最後のスライド速度設定点対応のせん断速度制御および最後の加圧力設定点のせん断加圧力制御を完了したとき、ステップ12に示すように1行程完了し、運転信号をOFFする。
【0027】
以上のように、出力トルク一定制御ができるサーボモータM1の出力で図2のシステムによってファインブランキングプレスF1を駆動するから、プレスの仕事能力を変化させないでせん断速度のみを主制御部64の速度設定部68で変更して拘束せん断加工を行うことができる。また、プレスの仕事量能力が小さくなることはない。
【0028】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2を、図7〜12を用いて説明する。
図7は、ファインブランキングプレスF2において、スライド5が上昇しワークWを成形後の状態の側面図である。図8は、ファインブランキングプレスF1の制御構成を示すブロック図である。図9は、図8の主制御部64の詳細を説明する図である。図10は、スライドの移動位置に対応したせん断速度の設定例図である。図11は、スライドの移動位置に対応した加圧力の設定例図である。図12は、主制御部64の制御フローチャートである。この実施例2は、サーボモータM1の回転によってポンプP1を駆動させ、このポンプP1の駆動によって生じた油圧によって油圧シリンダSを伸縮させ、この油圧シリンダSの伸縮に連動するリンク機構Lによって昇降するスライド5を介してワークWをせん断する形態の実施例である。
【0029】
[機械的構成について]
まず、ファインブランキングプレスF2の機械的構成について説明する。
図7に示すように、ファインブランキングプレスF2のフレーム1は、ベッド部2、アプライト部3およびトップ部4によって構成されている。ベッド部2には、スライドガイド7、8が上下方向に設けられており、スライド5はスライドガイド7、8沿いに案内されている。このスライド5を案内させるスライド駆動部は、棒状のリンク9と略三角形状のレバー10で構成されている。そして、リンク9の一端は連結ピン11によってスライド5の下端と揺動可能に連結されているとともに、リンク9の他端は、連結ピン12によってレバー10と揺動可能に連結されている。また、レバー10は、連結ピン13によってベッド部2と揺動可能に連結されているとともに、連結ピン14によって油圧シリンダSのロッドの先端と揺動可能に連結されている。また油圧シリンダSは、連結ピン14aによってベッド部2と揺動可能に連結されている。
【0030】
この油圧シリンダSのポートAとポートBには、制御弁SV1が接続されており、油圧シリンダSのストローク方向を制御している。また、サーボモータM1はポンプP1に連結駆動して油タンク35からフィルタ36、逆止弁37を経由して制御弁SV1に圧油を供給している。そのため、油圧シリンダSが伸縮ストロークすると、スライド5は上昇、下降ストロークする構成となる。また、フレーム1の一側には、スライド5の絶対位置を検出するアナログ信号出力型のエンコーダによるスライド位置検出部63が設けられている。
【0031】
ラム17は、トップ部4に組み込まれており、該ラム17の下端から加わる成形荷重をトップ部4に伝達して負担する構成となっている。ラム17の中には、逆押さえピストン18が油密で且つ摺動可能に係合してあるとともに、該逆押さえピストン18を上下動させる油圧室19が形成されている。この逆押さえピストン18の下側には、バネ20が組み込まれている。そして、この逆押さえピストン18は、ポートCから圧油を供給するとバネ20の弾性力に反しながら下側へストロークする。一方、ポートCから圧油を逃がすとバネ20の弾性力によって上側へストロークする。したがって、ポートCに供給する圧力を調整することで、逆押さえ力の大きさを調整可能となる。
【0032】
逆押さえピストン18の中には、ノックアウトピストン21が油密で且つ摺動可能に係合してあるとともに、該ノックアウトピストン21を上下動させる油圧室22が形成されている。このノックアウトピストン21の下側には、バネ23が組み込まれている。そして、このノックアウトピストン21は、ポートEから圧油を供給するとバネ23の弾性力に反しながら下側へストロークする。一方、ポートEから圧油を逃がすとバネ23の弾性力によって上側へストロークする。したがって、ポートEへの圧油供給を制御することで任意のタイミングでノックアウトを実施できる。
【0033】
スライド5の中には、板押さえピストン25が油密で且つ摺動可能に係合してあるとともに、該板押さえピストン25を上下動させる油圧室26が形成されている。この板押さえピストン25は、ポートDから圧油を供給すると板押さえピストン25はスライド5に対して上側へストロークする。一方、ポートDから圧油を逃がすと板押さえピストン25の自重によって下側へストロークする。したがって、ポートDに供給する圧力を調整することで、板押さえ力の大きさを調整可能となる。
【0034】
例えば、板押さえダイ27を板押さえピストン25の上部の下テーブル28に固定し、打抜パンチ29をスライド5と一体となるように固定すると、打抜パンチ29で発生するせん断力Pdの反力は、スライド5に直接伝達される。同様に、板押さえダイ27に作用させる板押さえ力Prの反力は、油圧室26の油を介してスライド5に伝達される。
【0035】
上テーブル30は、ラム17にボルトで機械的に結合していて、圧力ピン大31と圧力ピン小32を支えている。圧力ピン大31は、ラム17と摺動可能に係合してあり、圧力ピン小32は、上テーブル30と摺動可能に係合してあり、逆押さえピストン18およびノックアウトピストン21の作用力を受け、逆押さえパンチ33に作用力を伝達する構成となっている。
【0036】
例えば、上テーブル30にダイ34を固定し、逆押さえパンチ33をダイ34の中に摺動可能に配置すると、ダイ34に発生するせん断力Pdは上テーブル30を介してラム17に伝達される。また、逆押さえパンチ33に発生させる逆押さえ力Pcは圧力ピン小32、圧力ピン大31を介して逆押さえピストン18に伝達される。図7では、ワークWがダイ34に板押さえダイ27で押さえられて拘束されていて、ワークWが打抜パンチ29によって打ち抜かれた後の状態を示している。
【0037】
逆押さえピストン18の油圧室19のポートC、ノックアウトピストン21の油圧室22のポートEおよび板押さえピストン25の油圧室26のポートDには、管路39、管路55および管路46の一方がそれぞれ接続され独立した油圧回路(図示しない)が形成されている。そして、これら油圧回路に所要の圧力を供給することで、既に説明したように逆押さえピストン18、ノックアウトピストン21および板押さえピストン25をそれぞれ所要のタイミングで上下動させワークWを拘束せん断加工することができる。
【0038】
[電気的構成について]
次に、ファインブランキングプレスF1の電気的構成について説明する。
図8は、スライドモーション制御系の構成を示すもので、主制御部64、サーボモータ駆動装置65、サーボモータM1、ポンプP1、制御弁SV1、油圧シリンダS、リンク機構L、スライド5およびスライド位置検出部63から成っている。動力電源が接続されているサーボモータ駆動装置65は、スライド位置検出部63からの信号を受けて、指令値との偏差信号を出力する主制御部64が出力する信号を受けて、サーボモータM1を駆動する駆動電流を供給する。
【0039】
図9は、主制御部64の構成を詳しく示すもので、制御の中枢をなすものとして、例えばマイクロプロセッサCPUを使用し、CPUにはランダムアクセスメモリRAMとリードオンメモリROMと入力インターフェイスI/Oと出力インターフェイスOUTと速度設定部68および速度モニタ69が接続されている。ランダムアクセスメモリRAMとリードオンメモリROMは、所要の記憶容量を満足するように設けられている。入力インターフェイスI/Oは、外部からの信号を入力させるとともに、外部へ信号を出力させるための入力機構を備えていて、出力インターフェイスOUTは、外部へ信号を出力させるための出力機構を備えている。
【0040】
この入力インターフェイスI/Oには、ファインブランキングプレスF2の駆動を制御するプレス機制御装置70が接続され、CPUとの間で信号交信を行う。このプレス機制御装置70からCPUへ出力する信号として、例えばファインブランキングプレスF2が運転を開始してもよいかどうかの問合せ信号、異常信号等があり、逆にCPUからファインブランキングプレスF2へ出力する信号として運転準備完了信号等がある。また、この入力インターフェイスI/Oには、スライド位置検出部63から出力された信号をデジタル信号に変換する信号変換器71が接続されている。また出力インターフェイスOUTには、サーボモータM1を駆動させるための駆動電流を通電するサーボモータ駆動装置65が接続されている。
【0041】
速度設定部68は、スライド5の移動位置に対応してスライド5の移動速度を教示設定する部分であり、速度モニタ69はスライド5の速度を、例えばCRTまたは液晶画面で表示する。また、速度設定部68における速度設定のやり方は、例えばファインブランキングプレスF2の操作パネルに設けたキーボードを使用し、図10に示すようにスライド位置とスライド速度を上記ランダムアクセスメモリRAMに記憶させる。
【0042】
加圧力設定部72は、スライド5の移動位置に対応して、加圧力を教示設定する部分であり、加圧力モニタ73はスライド5の加圧力をCRTまたは液晶画面で表示する。また、加圧力設定部72における加圧力設定のやり方は、例えばファインブランキングプレスF2の操作パネルに設けたキーボードを使用し、図11に示すようにスライド位置と加圧力をランダムアクセスメモリRAMに記憶させる。なお、加圧力は、加圧力/トルク換算器64cでモータトルクに換算されRAMに記憶される。
【0043】
[せん断制御について]
続いて、上述したように構成されたファインブランキングプレスF2によるワークWのせん断制御について、図12に示すフローチャートを参照しながら説明する。
まず、運転準備作業としてワークWを板押さえダイ27と打抜パンチ29の上に位置決めしてせん断開始を待つ。そしてCPUに電源が投入されると、ステップ101に示すようにCPUを含めて電源回路がイニシャライズされる。次に、ステップ102において、CPUはスライド速度が既に上記速度設定部68で設定されているかどうかを判断し、既に設定が完了したと判断した場合は、ステップ103において、CPUは加圧力が既に上記加圧力設定部72で設定されているかどうかを判断する。そして、既に設定が完了したと判断した場合は、ステップ104において、プレス機制御装置70との信号交信によりファインブランキングプレスF2が運転可能な状態になっているかどうかを判断する。
【0044】
ステップ104の判断の結果、CPUがファインブランキングプレスF2側の運転準備完了信号を確認すると、CPUはステップ105において、プレス機制御装置70に対して運転が開始可能であることを示す運転信号を出力する。
【0045】
CPUはステップ106において、上記スライド位置検出部63からの信号を入力し、スライド5の位置がスライド速度、すなわちせん断速度を変化させる位置であるかどうかを判断し、同位置がスライド速度を変化させる位置であると判断した場合は、ステップ107において、上記速度設定部68から同位置に対応したスライド速度を読み出し、同スライド速度信号をサーボモータM1の駆動量に対応した駆動信号に変換してサーボモータ駆動装置65に出力する。このサーボモータ駆動装置65は上記駆動信号を入力してサーボモータM1に駆動電量を通電し、ポンプP1に所要の回転を与え、油圧シリンダSをストロークさせる。ステップ108において、CPUは上記スライド位置検出部63の出力信号を入力して所定距離移動に要した時間からスライド5の速度を演算し、同演算速度を速度モニタ信号に変換した上、上記速度モニタ69に出力し、スライド速度をモニタ表示させる。
【0046】
CPUはステップ109において、上記スライド位置検出部63からの信号を入力し、スライド5の位置が加圧力を変化させる位置であるかどうかを判断し、同位置が加圧力を変化させる位置であると判断した場合は、ステップ110において、上記加圧力設定部72から同位置に対応した加圧力を読み出し、同加圧力信号をサーボモータM1の駆動トルク量に対応した駆動信号に変換してサーボモータ駆動装置65に出力する。このサーボモータ駆動装置65は上記駆動信号を入力してサーボモータM1に駆動電量を通電し、ポンプP1に所要の回転を与え、油圧シリンダSをストロークさせる。ステップ111において、CPUはトルク検出部の出力信号を入力して、加圧力に換算して加圧力モニタ73に出力する。
【0047】
実際には速度設定部68で設定されるスライド速度設定点がスライド5の移動範囲において多点に亘るため、ステップ106からステップ8間のルーチンはスライド速度設定点毎に実行される。また、同様に加圧力設定部72で設定される加圧力設定点がスライド5の移動範囲において多点に亘るため、ステップ109からステップ111間のルーチンは加圧力設定点毎に実行される。そして、最後のスライド速度設定点対応のせん断速度制御および最後の加圧力設定点のせん断加圧力制御を完了したとき、ステップ112に示すように1行程完了し、運転信号をOFFする。
【0048】
以上のように、出力トルク一定制御ができるサーボモータM1の出力を馬力制御形ポンプP1で油圧動力に変換して図8のシステムによってファインブランキングプレスF2を駆動するから、プレスの仕事能力を変化させないでせん断速度のみを主制御部64の速度設定部68で変更して拘束せん断加工を行うことができる。また、プレスの仕事量能力が小さくなることはない。
【0049】
また、このように油圧シリンダSでスライド5を昇降させる場合、上述したようにリンク機構Lを介することにより、直動の場合と比較すると油圧シリンダSのシリンダ容積は直動の場合の約半分でよい。以下に、その説明をする。
【0050】
図13は、リンク機構Lのスケルトンを示している。このスケルトンは、実施例2に示したリンク機構Lとみなすことが可能である。
一般に、プレス機械は下死点近くで大きな加圧力を発生することが要求される。この能力発生位置と下死点とのスライドストローク距離を能力限界と称している。トグルリンクプレスは下死点近くでは僅かな駆動力で無限大の力を発生する性質があるから、同じ能力のプレスでは直動油圧プレスに比べると小さいシリンダでよいことになる。
【0051】
能力限界でのプレス加圧力P0とトグル駆動力P1の関係は次の式となる。
P1=2×tanα0×P0・・・(1)
ここに、α0=Acos[1−(S1/n)/2a]rad
S1:スライドストロークmm
a:リンク長さ
n:能力限界定数=S1/S0
S0:能力限界
【0052】
例えば、P0=100T、a=200、S1=53.6、n=15、S0=3.57のときα0=0.1337532(7.66deg)でP1=26.9T
つまり、P0/P1=100/26.9=3.717となり、
直動油圧プレスでのシリンダ力は100T、油圧駆動リンクプレスでは26.9Tとなる。
【0053】
油圧駆動リンクプレスのシリンダストロークは直動プレスのストロークの約1.9倍である。スライドストロークS1と油圧駆動リンクプレスのシリンダストロークS2の関係式は、
S1=2a×(1−cosα)・・・(2)
ここに、α:リンクの揺動角rad
一般に、α=30deg
S2=a×sinα・・・(3)
例えば、a=200、α=30deg(0.5235987rad)のとき、
S1=53.6でS2=100
つまり、S2/S1=100/53.6=1.866である。
【0054】
上記記載から直動プレスのシリンダ容積V1と油圧リンクプレスのシリンダ容積V2の比は、
V1/V2=(P0×S1)/(P1×S2)=P0/P1×S1/S2・・・(4)
例えば、上記の例題の値で計算すると
V1/V2=3.717/1.866=1.99
つまり、油圧リンクプレスのシリンダ容積は直動プレスの約半分でよい。
【0055】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、ファインブランキングプレスF1において、スライド5が上昇しワークWを成形後の状態の側面図である。
【図2】図2は、ファインブランキングプレスF1の制御構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、図2の主制御部64の詳細を説明する図である。
【図4】図4は、スライドの移動位置に対応したせん断速度の設定例図である。
【図5】図5は、スライドの移動位置に対応した加圧力の設定例図である。
【図6】図6は、主制御部64の制御フローチャートである。
【図7】図7は、ファインブランキングプレスF2において、スライド5が上昇しワークWを成形後の状態の側面図である。
【図8】図8は、ファインブランキングプレスF1の制御構成を示すブロック図である。
【図9】図9は、図8の主制御部64の詳細を説明する図である。
【図10】図10は、スライドの移動位置に対応したせん断速度の設定例図である。
【図11】図11は、スライドの移動位置に対応した加圧力の設定例図である。
【図12】図12は、主制御部64の制御フローチャートである。
【図13】図13は、リンク機構Lのスケルトンを示している。
【符号の説明】
【0057】
5 スライド
63 スライド位置検出部
M1 モータ
W ワーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転によって昇降するスライドを介してワークをせん断するファインブランキングプレスであって、
前記スライドの昇降位置を検出可能なスライド位置検出部を備えており、
前記ワークをせん断するために必要な加圧力をスライドの昇降位置に応じて予め決定しておき、
前記ワークのせん断時にスライドの昇降位置を検出し、
その検出したスライドの昇降位置に応じて、予め決定の加圧力を生じさせるように前記モータを駆動制御するファインブランキングプレス。
【請求項1】
モータの回転によって昇降するスライドを介してワークをせん断するファインブランキングプレスであって、
前記スライドの昇降位置を検出可能なスライド位置検出部を備えており、
前記ワークをせん断するために必要な加圧力をスライドの昇降位置に応じて予め決定しておき、
前記ワークのせん断時にスライドの昇降位置を検出し、
その検出したスライドの昇降位置に応じて、予め決定の加圧力を生じさせるように前記モータを駆動制御するファインブランキングプレス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−255740(P2006−255740A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−75268(P2005−75268)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(591153651)浅井興産株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(591153651)浅井興産株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
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