説明

ファブリック構造

織物ファブリック構造、三つ編みファブリック構造、もしくは編み物ファブリック構造は銀合金の線を含み、好ましくは析出硬化可能なAg Cu Ge合金である。ファブリック構造を形成する工程は、十分軟性より大きいが半硬質よりも小さい焼き戻し硬度を有する銀線を提供するステップ、前記線で前記構造を形成するステップ、および前記線を析出硬化させるために前記構造を熱するステップ、を含むことがある。
なし

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀線(silver wire)によるファブリック構造(fabric structure)が部分的もしくは全体的に含まれているファブリック構造に関する。
【背景技術】
【0002】
銀線(silver wire)の製造に関する文献は比較的少ない。例えば、US特許6627149(Tayama et al.)は比較的直径が大きく、純度が高い、記憶もしくはイメージの送信適用に用いる銀線の製造法を開示している。
【0003】
銀による織物構造(woven structures)に関する文献もまた少ない。このような織物構造は、主に一緒に編まれた、細長い片(strips)、ストランド(strands)、もしくはフィラメント(filaments)に基づいている。US-A-240096 (Crane)、US-A-253587 (Crane) およびUS-A-5203182 (Wiriath)を参照のこと。しかしながら、US-A-2708788 (Cassman et at) は、受像管(television tubes)の製造過程において蒸発する、銀の網もしくは銀箔を開示している。その網は網上への金の析出によって、たるみ無く張られた状態になり、銀と金が合金になることによって網が縮む。US-A-5122185 (Hochella)は、白金をアンモニアの酸化から出た気流から回収する際の、いわゆる「ゲッター」("getters")として用いられる貴金属の網を開示している。この網は好ましくは純粋なパラジウムであるが、ニッケル、コバルト、白金、ルテニウム、イリジウム、金、銀、および、銅から選択された1種類以上の金属とパラジウムの合金であることもある。
【0004】
金属線、もしくは、金属繊維を編むことは例えばUS-A-2274684 (Goodloe)のように知られているが、編まれた金属ファブリック(metal fabrics)の大部分は鉄合金である。US-A-5188813 (Fairey et al; Johnson Matthey)は、白金族の金属、金、銀、およびそれらの合金から選択された貴金属の繊維の輪の連結で原則的に構成される、環状もしくは平台型(flat-bed)の編み機を用いて横編み(weft-knitted)されたファブリックを開示している。ここで、触媒網(catalyst gauzes)として使用するには、白金もしくは白金合金が好ましい。Fairey et alは、白金合金の線、もしくは、似たような力学的性質(mechanical properties)を有する金属線は効果的に編むことができないこと、金属繊維の引っ張り強度(tensile strength)が編む過程の摩擦力に耐えるには不十分であるために、編もうとすると繊維が壊れてしまって機械が動かなくなることを見出した。開示されている解決策は、金属繊維に潤滑剤(lubricant)として機能する補充繊維(supplementary fibre)を仕込むことである。ここで、補充繊維はモノフィラメント(monofilament)よりもむしろ複数のストランド(multi-strand)を形成するもので、ストランドは金属間の接触(metal-to-metal contact)を最小限にするために金属線を取り囲んでいるのが好ましい。編んだ後に、補充繊維は、溶媒中への溶解、または、熱分解により取り除かれる。WO 92/02301 (Heywood)は、織られた網(woven gauzes)より柔軟であるかあるいは目が粗く(open)、熱応力(thermal stress)下でゆがみにくい触媒網とするための、白金線、パラジウム線、もしくはロジウム線の縦編み(warp-knit)ファブリック(例えば、トリコット編み、ラッシェル編み、またはジャガード編み等を用いる)を開示している。デンプンやワックスなどの潤滑剤を加えるか、または、補充繊維を加えることによって、編みやすくしている。貴金属線を基にした特有の微細目縦編みファブリック構造(structure of fine mesh warp-knit fabric)、および、触媒としての使用は、US-A- 6089051 (Gorywoda et at)に開示されている。上記のいずれの参考文献も、純度の高い銀、もしくは、銀合金を用いて編んだ構造を形成することは開示も示唆もしていない。また、われわれの経験によると、標準スターリング銀は編み機を効果的に用いることができるほど引っ張り強度が十分ではない。
【0005】
GB-B-2255348特許(Rateau, Albert and Johns; Metaleurop Recherche)は、Ag-Cu合金に特有の硬化特性と光沢特性を維持しつつ、銅成分が酸化されやすい傾向を有するために生じる問題を低減する新しい銀合金を開示している。この合金は、92.5wt%以上のAg、0.5〜3wt%のGe、不純物を除く残余分の銅を含む、Ag-Cu-Ge三元合金である。この合金は、従来の生産工程、変形工程、および仕上げ工程の間に、外気中で錆びることが無く、冷間変形が容易であり(easily deformable when cold)、ろうづけしやすく、大きな鋳縮みを起こさない。さらにこの合金は、優れた延性と引っ張り強度も示す。ゲルマニウムは保護機能(protective function)を示し、これは新規な合金が示す特性と有益に組み合わせることができる。また、ゲルマニウムは、銀相と銅相の双方に固溶する。この合金の微細構造は二つの相で構成され、銀中のゲルマニウムと銅の固溶体が、銅中のゲルマニウムと銀とのフィラメント状の固溶体(それ自体が少量の、CuGe相金属間分散質(intermetallic CuGe phase dispersoids)を含む)に取り囲まれた構造になっている。銅リッチ相中のゲルマニウムが、GeOおよび/もしくはGeO2の薄い保護膜を形成して、この相の表面の酸化を抑制し、ろうづけ、および、火炎焼きなまし(flame annealing)の際に火焼け(firestain)の発生を抑えていると言われている。さらに、ゲルマニウムの添加によって、曇りの拡大をかなり遅らせることができ、また、表面が黒っぽいというよりむしろやや黄色っぽく変わり、生じた曇りは普通の水道水を使って簡単に除去することができる。
【0006】
US-A-6168071特許(Johns)およびEP-B-0729398特許(Johns)では、77wt%以上の銀成分、0.4〜7wt%のゲルマニウム成分、すべての不純物を除く残余分が主に銅である銀/ゲルマニウム合金であって、結晶微細化剤(grain refiner)としてのホウ素成分を0ppm以上で約20ppm未満の濃度で含むような合金について開示している。2wt%のホウ素成分(elemental boron)を有する銅/ホウ素母合金(master copper/boron alloy)中のホウ素を加えることによって、合金のホウ素成分にすることができる。このような低濃度のホウ素によって、銀/ゲルマニウム合金が驚くほど良好に結晶微細化され、ホウ素を含まない銀/ゲルマニウム合金に比べて高い強度と延性が出る。Argentium(登録商標)スターリング銀は、92.5%のAg、1.2wt%のGe、差分の銅、および、約4ppmの結晶微細化剤としてのホウ素を含む。The Society of American Silversmithsは上記のArgentium(登録商標)として知られている合金の商業的実施例(commercial embodiment)をウェブサイトに保存している。ウェブサイトのアドレスは http://www.silversmithing.com/1argentium.htm である。
【0007】
US 6726877(Eccles)は特に、火炎スケール耐性がある(fire scale resistant)といわれている、加工硬化可能な宝飾品用銀合金組成物を開示している。この合金は、81〜95.409wt%のAg、0.5〜6wt%のCu、0.05〜5wt%のZn、0.02〜2wt%のSi、重量の0.01〜2wt%のB、0.01〜1.5wt%のIn、および、0.01〜2.0wt%未満のGeを含む。ゲルマニウム成分によって、従来0.925銀合金によって示された加工硬化特性を有する合金となり、火焼け耐性といわれている1994年6月前に知られている火焼けに対する抵抗性の合金になる。Geの量が約0.04〜2.0wt%だと、火焼け耐性合金でゲルマニウムを含まない種類ものと比較して、変形加工硬化(modified work hardening)特性が与えられるといわれている。しかし、この硬化性能(hardening performance)はゲルマニウムの増加に比例しないし、加工の程度にも硬化が比例しない。合金のZn成分は、合金の色味を抑えて、さらには、銀および銅の酸化物の還元剤としても機能する。Zn成分は、好ましくは、2.0〜4.0wt%である。Si成分は好ましくは用いられているZnの割合に関連して調整され、好ましくは0.15〜0.2wt%である。焼きなまし(annealing)の後の析出硬化(Precipitation hardening)は開示されておらず、この合金で作られた仕上げ間近にまで加工した作品のはんだづけをした熔接部に、ゆがみや損傷を与えるという問題を回避することができることも開示も示唆もされていない。
【0008】
背景技術として、US-A-4810308(Eagar et al.; Leach & Garner)は、90%以上の銀、2.0%以上の銅、および、少なくともリチウム、スズ、およびアンチモンからなる群から選択された1種類以上の金属を含む、硬化可能な(hardenable)銀合金を開示している。その銀合金は、重量で0.5%までのビスマスも含む可能性がある。好ましくは、合金を含む金属を混合して、例えば約2時間、固溶体へと焼きなましをするなどして、1250〜1400F(676〜760℃)以上の温度に過熱する。例えば1350F(732℃)が実施例では用いられている。その焼きなましされた金属を、その後、クエンチング(quenching)して迅速に外気温まで冷却する。それをその後にあらかじめ定められた時間だけ300〜700F(149〜371℃)に再加熱して、時効硬化した合金を外気温に冷却することによって、時効硬化(age hardened)される。時効硬化された合金は、従来のスターリング銀(典型的には100HVM(Vickers硬度数、Vickers Hardness Number))の硬度よりも実質的に大きな硬度を示す。また、温度を上げることで比較的やわらかい状態に戻ることもできる。US-A-4869757(Eagar et al.; Leach & Garner)の開示も同様である。いずれの場合でも、開示された焼きなまし温度はArgentiumの焼きなまし温度よりも高く、いずれの文献も火焼け、もしくは、曇り耐性合金は開示していない。発明者はこれらの特許で開示された方法が商業的生産に用いられることに気づかず、さらに、また、仕上げ間近にまで加工した作品の硬化をさせる可能性についての開示も示唆もない。
【0009】
Steraliteと呼ばれる銀合金がUS-A-5817195(Davitz)および5882441(Davitz)で対象とされ、高い曇り耐性と耐食性を示す。US-A-5817195(Davitz)の合金には90〜92.5wt%のAg、5.75〜5.5wt%のZn、0.25〜1wt%未満のCu、0.25〜0.5wt%のNi、0.1〜0.25wt%のSi、および、0.0〜0.5wt%のInが含まれる。US-A-5882441(Davitz)の合金には90〜94wt%のAg、3.5〜7.35wt%のZn、1〜3wt%のCu、および、0.1〜2.5wt%のSiが含まれる。同様の、亜鉛の含有量が高く銅の含有量が低い合金は、US-A-4973446(Bernhard et at)に開示されていて、火焼けが少なく、孔隙率が低く、結晶スケール(grain scale)が減少するといわれている。
【発明の開示】
【0010】
現在、織る、編む、もしくは、三つ編みするなどの方法により銀線で機械によりファブリック構造を構成できることが見出された。また、ファブリックを構成する前に銀線を十分に焼きなましされた状態にすることで加工硬化すると、銀線に機械編み(machine-forming)に必要な強度を与えることが可能であることも見出された。ここで、ファブリック構成(fabric forming)過程にさらに加工硬化してもよいし、析出硬化によってさらに硬度が大きくなっても良い。Argentium線、および、その他の銀/銅/ゲルマニウム合金の線は特に、非常に望ましい物理的性質を持っており、そのためにそれらの線を編むことができ、あるいは、別の方法で、ファブリック構造もしくはケーブル構造、または、三つ編みされた紐構造にすることができる。
【0011】
本発明は、編まれ、織られ、三つ編みされ、鉤針編みされ、もしくは他の方法で形成された、銀合金の線を含むファブリック構造を提供する。ここで、ファブリック構造は全体的に銀線を含むか、大部分に銀線を含むか、もしくは、部分的に銀線を含む。
【0012】
本発明は、前述のように、十分軟性(fully soft)より大きいが半硬質(half hardness)よりも小さい焼き戻し硬度(temper)を有する銀線を提供するステップ、前記線で前記ファブリック構造を形成するステップ、および前期線を析出硬化させるために前記構造を熱するステップ、を含む、ファブリック構造を形成する方法も提供する。
【0013】
更なる態様として、本発明はファブリック構造(編むこと、鉤針編み、もしくは、線の輪を連結させて組み立てるその他方法により構成された構造など)を提供する。そのファブリック構造には、線を構成するもととなる熔融した銀合金の中に分解可能なホウ素化合物を含めることによって微細化された結晶構造を有する銀合金の線が(前記構造の中の全体のフィラメントもしくは糸として、または、前記構造の中の一部のフィラメントもしくは糸として)含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
〔線を構成する合金〕
本発明に係る構造を構成するのに用いる線は、加工硬化および析出硬化が可能な任意の品位の銀であってよいが、好ましくは銀、銅、および、ゲルマニウムの合金である。例えば、不純物と任意の結晶微細化剤を除いて、合金の重さに対して、80〜96%の銀、0.1〜5%のゲルマニウム、および、1〜19.9%の銅、で構成された合金などである。前述のタイプのスターリング品位の合金は、不純物と任意の結晶微細化剤を除いて、合金の重さに対して、92.5〜98%の銀、0.3〜3%のゲルマニウム、および、1〜7.2%の銅で構成され、1〜200ppmのホウ素(例えば1〜40ppm)を結晶微細化剤として含むことがある。特に好ましい群のこのような合金は、不純物ならびに任意の結晶微細化剤を除いて、合金の重さに対して92.5〜96%が銀、0.5〜2%がゲルマニウム、および1〜7%が銅で構成され、1〜40ppmのホウ素を結晶微細化剤として含む。その合金がさらに亜鉛を含むことがあり、好ましくは、亜鉛の重量が銅の重量に対して1:1以下の割合で存在する。従って、その合金が、81〜95.49 wt % のAg、0.5〜6 wt% のCu、0.05〜5 wt% のZn、0.02〜2 wt% のSi、重さにして0.01〜2 wt % のB、オプションとして0.01〜1.5 wt% のIn、オプションとして0.25〜6 wt% のSn、および、0.01〜2.0 wt% 未満のGeを含むことがある。
【0015】
本発明に係る線を構成するもととなった合金には、銀合金の生産に際して既知の1種類以上の付随的成分(incidental ingredients)を、機械的強度、曇り耐性、および、合金のその他の性質を損なわない量だけ(全体で0.5wt%までなど)含むことがある。カドミウムを同様の量加えても良いが、カドミウムの使用は現在のところ好ましくない。スズは有益であることがあり、典型的には0.5wt%の量で有益である。インジウムは少量(結晶微細化剤としてなど)加えることがあり、合金の濡れ性(wetability)を向上させる。そのほかの付随的成分として可能があるAl、Ba、Be、Co、Cr、Er、Ga、Mg、Ni、Pb、Pd、Pt、Si、Ti、V、Y、YbおよびZrから選択された元素は、火焼け耐性、および、曇り耐性を与えるという点から見たゲルマニウムの作用に過度の影響を及ぼさない。
【0016】
〔合金の結晶微細化〕
本発明の目的の線を作るために用いられる銀合金にホウ素が結晶微細化剤として含まれることがある。ホウ素は、例えば銅/ホウ素母合金として熔融した銀合金に2wt%Bなどとして加えられることがある。しかしながら、近年、アルキルホウ素化合物、水素化ホウ素化合物、ホウ素化ハロゲン化物、ホウ素含有金属水素化物、ホウ素含有金属ハロゲン化物、およびそれらの混合物から選択されたホウ素化合物として合金中にホウ素を導入することにより、合金の機械的特性(例えば、引っ張り強度など)が改善されることが見出された。前述の分解可能なホウ素化合物で処理した熔融した銀から作られた線を用いると、その機械的特性がより一致していて、ファブリック構造を形成する前の強度と、硬化に影響させるためにファブリック構造をオーブン加熱(oven-heating)した後の強度との両方が向上していることがあるという程度においては、本発明に用いると有利である。いくつかの実施例では、分解可能なホウ素化合物を用いて結晶微細化された銀が、その微細結晶構造のために、例えば電子顕微鏡写真による調査などで検出できる。
【0017】
気体のホウ素化合物を、熔融した銀合金中に導入することがある。ここで好ましくは、気体のホウ素化合物をキャリアーガスと混合して、熔融した銀合金中を攪拌する流れをつくりだし、この合金中に混合気体のホウ素成分を分散させるのを補助できるようにする。適切なキャリアーガスには、例えば水素、窒素、およびアルゴンが含まれる。気体のホウ素化合物およびキャリアーガスは、熔融した銀を含んだ容器の上から導入されることがある。例えば、銀熔解炉内のるつぼ、鋳込み用とりべ(casting ladle)、または溜堰に対して、冶金用ランス(metallurgical lance)(グラファイトなどの耐熱性物質でできた細長い管、もしくは耐熱性物質で覆った金属管など)を、その下端を熔融した金属の中に潜らせるようにして用いることで、気体のホウ素化合物およびキャリアーガスを導入されることがある。このランスは、好ましくは、熔融した銀合金の深い部分に、気体のホウ素化合物およびキャリアーガスを注入できるような充分な長さである。あるいはまた、例えば、ガス透過性バブリングプラグ(gas-permeable bubbling plug)、もしくは、沈めた注入用ノズルなどを使って、ホウ素含有ガスを、熔融した銀の側部もしくは下部から導入することもできる。例えば、Rautomead International of Dundee, Scotlandでは、半仕上げの銀製品の連続鋳造(continuous casting)を行うための、水平型連続鋳造機(horizontal continuous casting machines)(RMK系列)を製造している。加熱する合金を、固体グラファイトのるつぼに入れて、不活性ガス雰囲気(5ppm未満の酸素、および、2ppm未満の水分を含む、酸素を含まない窒素など)で保護し、グラファイトブロック(graphite blocks)を使った抵抗加熱法(electrical resistance heating)によって加熱することができる。このような炉は、不活性ガスを熔湯(melt)に通すための組み込み設備を有する。熔湯に通す不活性ガスに、熱分解性のホウ素含有ガスを少量加えることにより、数ppmもしくは数十ppmの望ましいホウ素成分を容易に導入することができる。ある期間中、ホウ素化合物を希薄ガス流として合金中へと導入すると、このガス流中のキャリアーガスが熔融した金属もしくは合金を攪拌し、ホウ素化合物を比較的大きなひとつもしくは複数の塊として導入する場合に較べ、金属もしくは合金中のホウ素ハードスポット(boron hard spots)の発生を抑制するという点からは好ましいと考えられる。熔融した銀中もしくはその合金中にこのようにして導入されることがある化合物としては、三フッ化ホウ素、ジボラン、もしくはトリメチルホウ素が含まれ、これらは水素、アルゴン、窒素、もしくはヘリウムで希釈して高圧ガス容器(pressurised cylinders)に入っている状態で入手可能である。ここで、ジボランは、他のホウ素類とは異なり、合金中に導入される他の元素が水素のみであるため、好ましい。さらには、攪拌に影響させるためにキャリアーガスを熔融した銀に通しながら、固体ホウ素化合物(NaBH4もしくはNaBF4など)を、エアロゾルを構成する微細粉末として流動化ガス流(fluidized gas stream)に加えることも可能である。
【0018】
また、液体であるホウ素化合物を、熔融した銀合金中に導入することもあり、その際にはそのまま導入してもよく、あるいは不活性有機溶媒に溶かして導入してもよい。この方法で導入できる化合物には、例えば、トリエチルボラン、トリプロピルボラン、トリ-n-ブチルボラン、およびメトキシジエチルボランなどの、アルキルボラン類もしくはアルコキシ-アルキルボラン類が含まれる。これらを安全に取り扱うために、ヘキサンもしくはTHFに溶かすことがある。液体ホウ素化合物は、カプセル、もしくは、袋(sachets)のような、銀箔、または、銅箔でつくった容器の中に、既知の液体/カプセルもしくは液体/袋の充填用装置と、充填されたカプセル、袋または他の小容器(通常は容量0.5〜5ml、より典型的には約1〜1.5ml)をつくるための保護雰囲気とを使って、充填して密封することができる。充填した適切な数のカプセルもしくは袋を、熔融した銀中もしくはその合金中に、個別に入れてもよいし、あるいはひとつもしくは複数の群にして入れてもよい。さらには、液体のホウ素含有化合物を、上述したように熔融した銀を攪拌するために用いられるキャリアーガス流中に噴霧することも可能である。ホウ素含有化合物の小滴は、キャリアーガス中でエアロゾルの形態となることもあるし、あるいはキャリアーガス中で揮発することもある。
【0019】
好ましくは、例えば、デカボラン B10H14(m.p. 100℃, b.p. 213℃)などの固体ボランを使って、ホウ素化合物が固体として熔融した銀合金中に導入される。しかしながら、ホウ素含有水素化金属かホウ素含有金属フッ化物のいずれかの形態でホウ素を添加するのが好ましい。ホウ素含有水素化金属を使用する場合には、適切な金属として、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、およびそれらの混合物が含まれる。ホウ素含有金属フッ化物を使用する場合には、ナトリウムが好ましい金属である。最も好ましいのは水素化ホウ素ナトリウム NaBH4 (分子量37.85)であって、ホウ素を28.75%の割合で含んでいる。
【0020】
連続鋳造法での結晶粒(grain)の処置のように、その合金が一定の期間熔融した状態でおかれる場合、ホウ素を熔融した銀合金に始めに加えることもできるし、その合金が熔融した状態で保管されている間、および、ホウ素の損失を埋め合わせた後に間隔をあけて加えることもできる。
【0021】
意外なことに、ボランもしくはホウ化水素などの分解可能なホウ素化合物を加えると、ホウ素ハードスポットを発生させずに20ppm以上を銀合金に含めることができることが見出された。ホウ素は熔融銀から急激に損失するので、この方法は有益である。ある実験例によると、約二分程度で熔融銀中のホウ素が半減した。この減少(decay)のメカニズムは明確にされていないが、酸化プロセスによることもある。そこで、最初の鋳造の合金中に20ppm以上のホウ素を含めることが望ましく、例えば50ppmまで、典型的には80ppmまで、そして時には800ppm、さらに1000ppmを含めることがある。そこで、約40ppmのホウ素を含んだ銀鋳造結晶粒(silver casting grain)を生産することができた。その後の再熔融(re-melting)および線の形成でホウ素の損失があるために、完成した線は1-20ppm程度のホウ素を含むことがあるが、ホウ素の初濃度を比較的高くすることができるということは、硬度を改善し、改善した機械的特性を得られることがあることを意味する。
【0022】
〔合金からの線の形成〕
ゲルマニウム含有銀から、本発明に係るファブリックを構成するための線の形成は、従来の線の形成方法で行われることがある。本発明に係るある実施例では、金属はインゴットを形成するように鋳造されており、線材(wire rod)を形成するためローリングミル(roiling mill)中で圧延される。得られた棒は次に一組の型(dies)に通し、必要な大きさのものを得るために徐々に直径を減らしていく。単滑車機(single block machine)で伸線(drawing)しても良いし、線が連続的に通過する一そろいのガイド(guide)が付いた連続的伸線機(continuous wire-drawing machine)を用いて伸線しても良い。必要に応じて注油されることがある。
【0023】
最終工程において、また必要であれば中間の工程において、延性を戻すために、線の焼きなましをすることがある。好ましくはこのステップは急激すぎない還元性雰囲気下もしくは穏やかな酸化性雰囲気下で行われる。本発明のAgCuCe合金(AgCuCe alloy)の耐食性(corrosion resistance)は酸化膜により、たとえば50%水素、50%窒素の雰囲気などでは、酸化膜は減少し、曇り耐性も幾分失われる。それぞれの段階において、望ましい焼きなましの雰囲気は不活性ガス(一般には窒素と10%未満の水素、典型的には3〜10%の水素、好ましくは約3〜5%の水素)とすべきである。炉内雰囲気がアンモニア分解ガス(cracked ammonia)であれば、水素の含有量は上記の範囲を超えないことが望ましい。
【0024】
我々は、焼きなましの間、緩やかな酸化性雰囲気とすることが可能であることを見出した。すなわち、形成するAg-Cu-(Zn)-Ge合金のCuはCuO2を形成することなくGeが反応してGeO2となるような、温度と酸素分圧を見出した。しかしながら、工程における最高温度、および、その温度での時間についての制限は、通常の商業的焼きなましをする温度(典型的には625℃もしくは650℃である)、および、スターリング銀のような銀-銅合金を生成するための時間によって生じる。我々は、コントロールされた雰囲気下でAg-Cu-(Zn)-Ge合金は焼きなまし温度が625℃および650℃などであってもGeをGeO2へと選択的に酸化させるための処理をすることができることを確立した。好ましくは、焼きなまし雰囲気は湿式の選択的酸化性雰囲気(wet selectively oxidizing atmosphere)である。「湿式」('wet')に関して、これは水分(H2O)を含む雰囲気であることを意味している。このような雰囲気では、露点(dew point)は、少なくとも+1℃、好ましくは少なくとも+25℃、さらに好ましくは+40℃である。好ましくは、露点は+1℃〜+80℃の範囲に存在し、さらに好ましくは+2℃〜+50℃の範囲に存在する。この露点は、水蒸気を含んだ雰囲気が飽和蒸気圧となるために冷却されなければならない温度として定義される。露点の温度よりも冷却すると結露する。さらに包括的な定義が "Handbook of Chemistry and Physics", 65th Ed. (1985-85), CRC Press Inc., USA, F-75ページ に記載されている。我々は、選択的酸化性雰囲気には水素と水分を含むものを選択した。例えば、水蒸気を含む95%窒素/5%水素ガスの混合物(v/v)などの、窒素、水素、および水蒸気の雰囲気、または、窒素、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、および水蒸気からなる炉内雰囲気である。
【0025】
実際には、実質的に乾燥している不活性な炉内雰囲気もしくは乾燥した還元性炉内雰囲気(reducing furnace atmosphere)に水蒸気を加えることによって調節して、湿式の選択的酸化性焼きなまし雰囲気(wet selectively oxidizing annealing atmosphere)を作るのが好ましい。ここで、炉内雰囲気の例としては、大部分が窒素、または、窒素および水素であって、典型的には、窒素、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタンからなるものなどがある。炉内の露点は、露点計(dew point meter)、もしくは炉内のプローブなどの従来の方法を用いて計測することができる。ガスの混合比は選択的酸化性雰囲気を調整するために、適宜調節される。
【0026】
上述のように、本発明に係るある実施例では、選択的酸化性雰囲気下で線の焼きなましが行われる。通常通りであれば、焼きなましは逐次的な焼きなまし工程(annealing step)として(例えば、中間の伸線工程(intervening drawing step)を伴う)行われ、少なくとも最終焼きなまし工程は、選択的酸化性雰囲気下で行うべきである。本発明にかかるさらなる実施例は、最終焼きなまし工程に先立つ1以上の工程の焼きなまし工程が還元性雰囲気下で行われる。しかしながら、本発明に係る他の実施例では、全ての焼きなまし工程は選択的酸化性雰囲気下で行われる。
【0027】
本発明に係る実施例では、線の焼きなましは、400℃〜750℃の温度範囲で、典型的には400℃〜700℃の範囲、好ましくは500℃〜675℃の範囲、さらに好ましくは600℃〜650℃の範囲、そして、特に625℃で行われる。本発明に係る実施例では、焼きなましは総計で、高い焼きなまし温度において5分以上、低い焼きなまし温度において5時間までの範囲で行われ、好ましくは15分から2時間までの範囲で行われる。
【0028】
作成された線(すなわち、合金が伸線されて(has been drawn)、完成した線とするために焼きなまされた後)を加熱することによって、さらに曇り耐性が改善されることがある。加熱は空気もしくは水蒸気の雰囲気下で、40℃〜220℃の温度範囲、好ましくは50℃〜200℃の温度範囲、より好ましくは60℃〜180℃の温度範囲で行われる。好ましくは作成後の加熱処理は、1分〜24時間の時間範囲で、好ましくは10分〜4時間の範囲で行われる。このようにして、酸化ゲルマニウム保護被膜(germanium oxide protective coating)が合金の表面にさらに作成される。有益なことには、この作成後の処理は合金の曇り耐性(protection against tarnishing)をさらに高める。ここで、曇り耐性は、線はその重さに対して表面部分が多いので、微細な線においては非常に重要である。
【0029】
本発明に係る構造は、全体的に、もしくは主として銀線から構成されるものであっても、例えば包帯中に銀の抗菌効果を利用するために含有させるときのように、銀線が微量成分であっても良い。線は細長い片(strips)以外の固体部分(solid section)であり、糸巻き(spool)もしくはリール上のコイルとして提供されることがある。本発明に係る織物構造(woven structures)を構成するために用いられる線は、円形断面であることがあり、そのほかに用いられる断面は、完成した鎖に必要とされる外観に応じて、例えば、楕円、多角形、細長い片、もしくは平らな線であることがある。線は典型的には円形断面を有する。その直径もしくは大きさは、0.05〜2.0mmで、典型的には0.1〜1.0mmである。線は1本のストランドであっても良いし、複数のストランドがより合わされたものであっても良い。
【0030】
〔ファブリック構造を構成するための線の硬さ〕
本発明に係る構造を形成する前は、本発明に係る線は十分軟性(fully soft)より硬いが半硬質(half hardness)よりもやわらかいのが望ましい。これらの表現は、宝飾品(jewellery)の取引でよく理解されている意味である。宝飾品用の線では、硬さもしくは可鍛性(malleability)は、軟性(soft)もしくは極軟性(dead soft)、クォーターハード(quarter-hard)、半硬質(half-hard)、硬質(hard)、および、スプリング硬質(spring hard)で等級が付けられている。名称の代わりに数値でも、線の硬さを指定できる。線がドロープレート(drawplate)の徐々に小さくなる孔を引き出された回数に基づいた、ゼロから10もしくは10以上までの番号方式である。番号の増え方は、その前の数の倍になる。軟性(soft)もしくは極軟性(dead soft)は、焼きなました後でプレートから引き出すことができず、数値は0である。それは可塑性があり、手で簡単に様々な形に曲げることができるが、圧力がかかった状態で形状を保つことができない。クォーターハード線はプレートから1回引き出すことができ、半硬質線は2回引き出され、硬質線は4回引き出される。本発明にかかる構造を構成するのに用いる線は好ましくはクォーターハード線である。クォーターハード線は機械織り(machine weaving)もしくは機械編みに必要な折曲げ強度(bending strength)および、破壊強度(breaking strength)を有しているが、織っているもしくは編んでいるときの加工硬化と、その後の析出硬化の両方に十分な量の物質を固溶体中に有している。
【0031】
〔線から形成することができる構造〕
線は平台型(flat-bed)もしくは環状の編み機を用いて、例えば一層のトリコットステッチ構造(tricot stitch structure)、もしくは二層構造、または、チューブ状であることも平らなシート状であることもあり得るさらに目が粗い網状構造などの構造を作るために、横編み(weft-knit)されることがある。特に、一層もしくは二層に基づいた、一層のチューブ状ケーブル様構造(single-layer tubular cable-like structures)は、ブレスレットおよびネックレスなどの宝飾品の作成において従来の鎖の代わりに用いられることがあり、見た目の美しさと輝きが助長されている。この線は縦編みされることもある。この線はさらに、例えば複数の銀のフィラメントをより合わせて構成した諸より糸(plied yarns)を編んだものなどの、編み上げケーブル構造(braided cable structures)を構成することがある。例えば、US-A-4170921 および US-A6070434 (Fig. 6)を参照のこと。例えば、編まれた銀の被覆物で芯(銀、そのほかの金属、もしくは、プラスチック製品のフィラメントなど)を覆った構造などを構成することもある。この線で編まれる構造としての、さらなる可能性は鉤針編み(Crochet)である。本明細書中では、鉤針編み(Crochet)の語は、1本の糸もしくはフィラメントから(銀/銅/ゲルマニウム合金などの糸もしくはフィラメント)、先が鉤になっている針で、一目ごとに輪になっている構造をつくる針仕事をする工程を意味する。また、それ自体が宝飾品の鎖として有用であることある基準となる列を形成することと、連続したステッチの列から構成された、飾りのない(plain)ファブリック構造、もしくは、すかし編みファブリック構造を作ることとの両方を含む。レースやベルト状の構造も構成することができる。
【0032】
本発明に係る編み物(knitting)もしくは鉤針編みしたもの(crocheting)についての実施例は、編み物もしくは鉤針編みを含む工程の間、実質的に銀合金線と平行で隣接して置かれる犠牲糸(sacrificial thread)をさらに用い、銀合金線と同時に送り込む。犠牲糸は、編み物構造が構成された後に除去することができる任意の適切な物質とすることができる。例えば、犠牲糸に適切な物質には、綿、易溶性の金属ならびに天然ポリマーもしくは合成ポリマー(ポリアミド類、ポリエステル類、セルロース繊維類、アクリルスチレンポリマー類、PVA、およびその他のビニルポリマー類、アリジナート(aliginate)などを含む)を含めることができる。複数のストランドの繊維もしくは糸を用いても良いし、単一フィラメントの繊維もしくは糸を用いても良い。犠牲糸を用いる利点の一つは編んでいる繊維構造の中の間隔を制御するためのスペーサーとなることである。従って、犠牲糸の厚みを編んでいる糸と隣接部分との間隔を増加もしくは減少させる一つの方法として用いることができる。典型的には、犠牲糸は線と同じ直径とすることができる。上述の通り、犠牲糸が分解もしくは溶解することが望ましいことがあり、犠牲糸は好ましくは、ファブリック構造が形成された後に容易に分解もしくは溶解させられるものから選択される。大部分の有機繊維は、例えば、ほとんど残渣を残さないかまたは全く残渣を残さないで熱分解および/または酸化されることもあるし、あるいは、硫酸もしくは硝酸のような強酸が用いられることもある。さらに、もしくは他の方法として、犠牲糸には編む工程もしくは鉤針編み工程で摩擦を減少させるためのデンプンなどの潤滑剤を用いても良い。
【0033】
編み物構造、三つ編み構造、鉤針編み構造、もしくは、織物構造を構成した後で、炉で加熱した後(約300℃で約30〜45分)、ゆっくりと冷却することにより、析出硬化処理をすることがある。従来のスターリング銀合金と、ときには他のAg-Cu二元合金、またAg-Cu-Ge合金とには、特性に驚くべき違いが存在する。この違いは、スターリング型二元合金(binary Sterling-type alloys)をゆっくり冷却したときには、粗い析出が起きて、ほとんど析出硬化しないが、一方、Ag-Cu-Ge合金をゆっくりと冷却したとき(特に結晶微細化剤の有効量を含んでいるとき)には、微細な析出が起きて、有用な析出硬化が得られることである。さらに、ゲルマニウムをスターリング銀に添加すると、銀合金の熱伝導率が変化し、標準スターリング銀と比べて異なったものになる。また、国際軟銅規格(The International Annealed Copper Scale; IACS)は、金属の伝導率(conductivity)の基準となっている。この基準によれば、銅の値を100%とすると、純銀は106%であり、標準スターリング銀は96%となるが、1.1%のゲルマニウムを含んだスターリング合金では56%の伝導率となる。この事実は、Argentiumスターリングおよび他のゲルマニウム含有銀合金では標準スターリング銀もしくはその同類であるゲルマニウム非含有物よりも熱が散逸するのが遅いために、加工片が冷えるまでに時間がかかるので、そのまま大気中で放冷させる間か、もしくは調節した空冷でゆっくり放冷させる間に、商業的に有用なレベル(好ましくは110Vickers硬度以上、より好ましくは115Vickers硬度以上)にまで析出硬化可能であるために重要である。銅ホウ素母合金を用いるか、もしくは、分解可能なホウ素化合物を用いてホウ素で結晶微細化された多くのAg-Cu-Ge-Zn合金もまた、上述の条件で析出硬化する。
【0034】
本発明に係る構造は、例えば、鎖、ブレスレット、ネックレス、イヤリング、キーホルダーなどの、装用できるものを作る際に有用である。本発明に係る実施例では、銀線は、例えば触媒や水の処理などの様々な追加的な構造に組み入れられることがある。従って、銀線がカーペットなどの基剤(backing material)、防護服または流行の服などの織った衣服もしくは編んだ衣服の微量成分として、円形もしくは平らな一般的な織物として、縦編みされた織物、スリーブ類(sleeves)、テープ、針孔を開けた布もしくはその他の布、ならびに、より合わせ、または三つ編みした索具もしくはロープ、に組み入れられることがある。銀線単独で、あるいは、その他の金属製繊維もしくはフィラメント、または、天然もしくは合成の有機繊維またはフィラメントと混合したものは、例えば濾過(例えば、水の濾過では銀の抗菌効果が有益であることがある)もしくは触媒の補助的適用などに用いる3次元非織物構造などの、多孔性媒体(porous media)を形成されることがある。銀線は、その抗菌性により包帯の成分として組み込まれることがある。更なる実施例としては、銀線は、高いガス透過性を示す焼結金属繊維(sintered metal fibres)の不織高多孔性媒体(non-woven high porosity matrix)を構成することもあるし、ひだにされることがある層を構成することもある。焼結金属繊維は1〜3層などの複数の層を有する媒体を形成することがある。また、任意に、濾過、あるいは、触媒、気固および/または気液濾過(gas-solid and/or gas/liquid filtration)および/または臭気の除去、および/または、液固濾過を含む他の適用のための内部もしくは表面の支えの網またはスクリム(scrim)を含む。高い多孔性を出せるために、本発明にかかる繊維を用いて作ったフィルター媒体は比較的圧力を低下させないことがある。それらはそのまま用いられても良いし、抗菌性を出すために包帯に組み込んだときのように織物製品の中の微量成分として組み込んでも良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀合金の線を含むことを特徴とするファブリック構造。
【請求項2】
前記合金が銀、銅、およびゲルマニウムの合金であることを特徴とする、請求項1記載の構造。
【請求項3】
前記合金が、不純物ならびに任意の結晶微細化剤を除いて、合金の重さに対して80〜96%が銀、0.1〜5%がゲルマニウム、および1〜19.9%が銅で構成されることを特徴とする、請求項2記載の構造。
【請求項4】
前記合金が、不純物ならびに結晶微細化剤を除いて、合金の重さに対して92.5〜98%が銀、0.3〜3%がゲルマニウム、および1〜7.2%が銅で構成され、1〜40ppmのホウ素を結晶微細化剤として含むことを特徴とする、請求項3記載の構造。
【請求項5】
前記合金が、不純物ならびに結晶微細化剤を除いて、合金の重さに対して92.5〜96%が銀、0.5〜2%がゲルマニウム、および1〜7%が銅で構成され、1〜40ppmのホウ素を結晶微細化剤として含むことを特徴とする、請求項4記載の構造。
【請求項6】
前記合金がさらに亜鉛を含むことを特徴とする、前述の請求項のいずれかに記載の構造。
【請求項7】
前記亜鉛の重量が前記銅の重量に対して1:1未満の割合で存在することを特徴とする、請求項6記載の構造。
【請求項8】
前記合金が、81〜95.409 wt % のAg、0.5〜6 wt% のCu、0.05〜5 wt% のZn、0.02〜2 wt% のSi、重さにして0.01〜2 wt % のB、オプションとして0.01〜1.5 wt% のIn、オプションとして0.25〜6 wt% のSn、および、0.01〜2.0 wt% 未満のGeを含むことを特徴とする、前述の請求項のいずれかに記載の構造。
【請求項9】
実質的に銀線で構成されることを特徴とする、前述の請求項のいずれかに記載の構造。
【請求項10】
前記線の直径が0.05〜2.0mmであることを特徴とする、前述の請求項のいずれかに記載の構造。
【請求項11】
前記線の直径が0.1〜1mmであることを特徴とする、請求項10記載の構造。
【請求項12】
前記銀線が単一のストランドであることを特徴とする、前述の請求項のいずれかに記載の構造。
【請求項13】
前記銀線が複数のストランドを含むことを特徴とする、請求項1から12のいずれかに記載の構造。
【請求項14】
織物であることを特徴とする、前述の請求項のいずれかに記載の構造。
【請求項15】
編まれた物であることを特徴とする、請求項1から13のいずれかに記載の構造。
【請求項16】
単一の層を含むことを特徴とする、請求項15記載の構造。
【請求項17】
2以上の層の輪が一緒に編まれていることを特徴とする、請求項15記載の構造。
【請求項18】
横編みされていることを特徴とする、請求項15、16もしくは17記載の構造。
【請求項19】
縦編みされていることを特徴とする、請求項15、16もしくは17記載の構造。
【請求項20】
チューブ状もしくはケーブル状であることを特徴とする、請求項15から19のいずれかに記載の構造。
【請求項21】
平らなシートであることを特徴とする、請求項15から19のいずれかに記載の構造
【請求項22】
クォーターハード線を構成することによって得られることを特徴とする、前述の請求項のいずれかに記載の構造。
【請求項23】
前記構造が形成された後に析出硬化することを特徴とする、前述の請求項のいずれかに記載の構造。
【請求項24】
約30分間、約300℃に熱することによって析出硬化することを特徴とする、請求項23記載の構造。
【請求項25】
ファブリック構造を構成するための方法であって、
十分軟性より大きいが半硬質よりも小さい焼き戻し硬度を有する銀線を提供するステップ、
前記線で前記構造を形成するステップ、および
前記線を析出硬化させるために前記構造を熱するステップ、
からなることを特徴とする方法。
【請求項26】
編む前の前記線がクォーターハードであることを特徴とする、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記ファブリック構造が前記線を編むことによって構成されることを特徴とする、請求項25もしくは26記載の方法。
【請求項28】
前記構造が横編みで構成されることを特徴とする、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記構造が縦編みで構成されることを特徴とする、請求項27記載の方法。
【請求項30】
前記線が少なくともAgを80wt%以上含む析出硬化可能なAg Cu Ge合金の線であることを特徴とする、請求項25から29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記合金の結晶微細化剤として効果的なホウ素の量が20ppmまでであることを特徴とする、請求項30記載の方法。
【請求項32】
線を構成するもととなる熔融した銀合金の中に、分解可能なホウ素化合物を含めることによって、微細化された結晶構造を有する銀合金の線を含むことを特徴とする、ファブリック構造。
【請求項33】
前記分解可能なホウ素化合物が水素化ホウ素ナトリウムであることを特徴とする、請求項32記載の構造。
【請求項34】
機械編みによって構成されることを特徴とする、請求項32もしくは33記載の構造。

【公表番号】特表2008−519914(P2008−519914A)
【公表日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540725(P2007−540725)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【国際出願番号】PCT/GB2005/050202
【国際公開番号】WO2006/051338
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(505436438)ミドルセックス シルバー カンパニー リミテッド (8)
【氏名又は名称原語表記】MIDDLESEX SILVER CO.LIMITED
【Fターム(参考)】