説明

ファンフィルタユニット

【課題】簡単な作業で、ファンフィルタユニットによる空気浄化効率を向上させる。
【解決手段】筐体内に、ファンケースを有するファンユニット11と、フィルタケース22を有するフィルタユニット21とが収容され、前記筐体は、厚み方向一側の面に前記ファンケース12及び前記フィルタケース22が当該面に沿った方向に並んで固定された基板2と、該基板2に、前記ファンケース12及び前記フィルタケース22を覆うように取り付けられたカバー部材とで構成され、前記基板2上に囲繞部材41を設けてポッティング剤を充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体工場や精密機械工場等のクリーンルームのように、クリーン度が要求される室内に設置されるファンフィルタユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種のファンフィルタユニットは、筐体内にファンと集塵フィルタとが収容されていて、特にクリーンルームの天井部に設置されて、クリーンルーム内の空気を浄化するようにしている(例えば特開2004−225982号公報参照)。
【特許文献1】2004−225982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ファンフィルタユニットを、クリーンルームの天井部ではなくて、クリーンルーム内に設置される装置(例えば半導体製造装置やFPD製造装置等)に取り付けるようにすれば、その装置からの発塵によるクリーンルーム内の汚染を防止することができて好ましい。
【0004】
このようにファンフィルタユニットを前記装置に設置する場合、ファンフィルタユニットは、天井部に設置する場合とは異なり、比較的小型のものになる。このような小型のものは、大型のものに比べて空気浄化能力がどうしても劣るため、空気浄化効率を出来る限り向上させる必要がある。
【0005】
ここで、ファンフィルタユニットを、空気吸込み口及び空気吐出口を有するファンケースを有するファンユニットと、内部に集塵フィルタが設けられたフィルタケースを有するフィルタユニットと、これらを収容する筐体とで構成すれば、ファンフィルタユニットの組立作業が簡単になる。この場合、筐体には、フィルタケースより導出された、浄化された空気を筐体外へ吹き出す吹出し口と、ファンケースの空気吸込み口を筐体の外側と連通させるための連通孔とが形成される。
【0006】
仮に、前記連通孔が筐体内部の空間と連通していると、前記連通孔から汚染空気が筐体内部の空間に進入し、その進入した汚染空気が、集塵フィルタにより浄化された空気と混じって前記吹出し口より吹き出すことになるため、空気浄化効率を向上させることが困難になる。
【0007】
そこで、前記連通孔における空気吸込み口の周囲を封止剤等により封止することが考えられる。しかし、封止する部分の直ぐ近傍には空気吸込み口があるため、封止剤の使用量が多すぎると、封止剤が空気吸込み口を塞いでしまう可能性がある一方、少なすぎると、確実に封止することが困難になる。このため、封止剤の使用量を厳密に管理する必要があり、この点で作業性が悪いという問題がある。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、筐体内に、空気吸込み口及び空気吐出口を有するファンケースを有するファンユニットと、内部に集塵フィルタが設けられたフィルタケースを有するフィルタユニットとが収容されたファンフィルタユニットにおいて、簡単な作業で、前記連通孔から汚染空気が筐体内部の空間に進入することを防止し、ファンフィルタユニットによる空気浄化効率を向上させることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、筐体内に、空気吸込み口及び空気吐出口が形成されたファンケースを有するファンユニットと、前記ファンケースの空気吐出口より吐出された空気を浄化する集塵フィルタが内部に設けられたフィルタケースを有するフィルタユニットとが収容されたファンフィルタユニットであって、前記筐体は、厚み方向一側の面に前記ファンケース及び前記フィルタケースが当該面に沿った方向に並んで固定された基板と、該基板に、前記ファンケース及び前記フィルタケースを覆うように取り付けられたカバー部材とで構成され、前記ファンケースの空気吸込み口は、該ファンケースの基板側の面に形成され、前記基板における前記空気吸込み口に対応する部分には、該空気吸込み口を前記筐体の外側と連通させるための連通孔が形成され、前記フィルタケースには、前記ファンケースの空気吐出口と接続されかつ該空気吐出口より吐出された空気を前記フィルタケース内に導入する導入口と、前記集塵フィルタにより浄化された空気を前記フィルタケース外に導出する導出口とが形成され、前記カバー部材に、前記導出口より導出された空気を筐体外へ吹き出す吹出し口が形成され、前記基板の筐体内側の面に、前記フィルタケースのファンケース側の面と共に前記ファンケースの周囲を囲む囲繞部材が設けられ、前記基板の筐体内側の面上において前記囲繞部材と前記フィルタケースのファンケース側の面とにより囲まれた部分における前記ファンケースの周囲に、ポッティング剤が充填されている、という構成とした。
【0010】
前記の構成により、ファンフィルタユニットが設置された室内の汚染空気が、ファンケースの空気吸込み口からファンケース内に吸い込まれ、その汚染空気がファンケースの空気吐出口より吐出され、その後、フィルタケース内に導入されて、フィルタケース内の集塵フィルタにより浄化された後、この浄化された空気がフィルタケースの導出口よりフィルタケース外に導出され、この導出された空気が筐体の吹出し口より吹き出す。
【0011】
ここで、汚染空気は、基板の連通孔からファンケースと基板との間の隙間部分に進入し、その隙間部分から筐体内におけるポッティング剤に対して基板とは反対側に位置する、吹出し口と連通する空間を通って吹出し口へ流動しようとするが、ファンケースの基板側の面の周縁部と基板の筐体内側の面との間の隙間がポッティング剤により封止されているので、前記汚染空気は、吹出し口と連通する空間へは進入できず、このため、集塵フィルタにより浄化された空気と混じって吹出し口より吹き出すことはない。また、連通孔が、ポッティング剤により塞がれることはない。
【0012】
さらに、前記ポッティング剤は、基板の筐体内側の面を水平にした状態で、囲繞部材とフィルタケースのファンケース側の面とにより囲まれた部分に充填することで、その囲まれた部分の外側へ流れることはなく、ポッティング剤が硬化するまで、基板の筐体内側の面の水平状態を維持しておけばよく、硬化した後は、基板をどのように傾けても逆さまにしても、ポッティング剤が筐体外に漏れることはなく、ファンフィルタユニットの取付姿勢の自由度を制限しない。
【0013】
したがって、基板上に囲繞部材を設けてポッティング剤を充填するという簡単な作業で、ファンフィルタユニットによる空気浄化効率を向上させることができる。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、前記ファンユニットは、前記ファンケースの内側から外側に延びる複数のリード線を有し、前記基板の筐体内側の面における前記ポッティング剤の充填部分に、前記複数のリード線が通過するリード線通過孔が開口している。
【0015】
すなわち、リード線通過孔により筐体の内側と外側とが連通することにより、筐体外側の汚染空気が筐体内に進入し、この進入した汚染空気が、集塵フィルタにより浄化された空気と混じって吹出し口より吹き出すことになるため、リード線通過孔を封止する必要があるが、基板の筐体内側の面におけるポッティング剤の充填部分にリード線通過孔が開口しているので、リード線通過孔は、前記ポッティング剤の充填により封止される。したがって、リード線通過孔を別途に封止する作業が不要になるとともに、その封止作業の忘れや封止剤の塗布量不足といった問題が生じるようなことはない。
【0016】
本発明の他の実施形態によれば、前記囲繞部材は、前記ファンケースと前記基板との間に介在されかつ該基板の筐体内側の面に密着される平板状部と、該平板状部の周縁部のうち前記フィルタケース側を除く縁部から基板とは反対側に立設されて、前記フィルタケースのファンケース側の面と共に前記ファンケースの周囲を囲む立壁部とを有している。
【0017】
このことにより、囲繞部材が平板状部を有していることで、平板状部がない場合に比べて立壁部の厚みを薄くすることができる。すなわち、平板状部がないと、薄い厚みの立壁部では、剛性が低くて基板上の所定位置に立てることが困難であるが、平板状部を有していれば、基板上に平板状部を固定するだけで、薄い厚みの立壁部でも、基板上の所定位置に立てることが可能になり、倒れるようなことはない。したがって、小型のファンフィルタユニットでも、囲繞部材を容易に設けることができる。
【0018】
前記のように、基板の筐体内側の面におけるポッティング剤の充填部分にリード線通過孔が開口している場合、前記囲繞部材は、前記ファンケースと前記基板との間に介在されかつ該基板の筐体内側の面に密着される平板状部と、該平板状部の周縁部のうち前記フィルタケース側を除く縁部から基板とは反対側に立設されて、前記フィルタケースのファンケース側の面と共に前記ファンケースの周囲を囲む立壁部とを有し、前記囲繞部材の平板状部に、前記基板側に突出して前記リード線通過孔に挿入される環状突部と、該環状突部の内側に位置しかつ前記リード線が通過する貫通孔とが形成されている、ことが好ましい。
【0019】
このことで、リード線が通過する貫通孔の径を適切に設定しておくことで、リード線を基板に仮固定することができるとともに、このような仮固定を行うための部材を別途に設ける必要はない。そして、ポッティング剤によりリード線を基板に本固定することが容易にできる。このリード線の本固定により、リード線が筐体外側から引っ張られても、リード線のファンユニット側の端部には大きな力が作用せず、しかも、リード線とリード線通過孔の内周面との間に環状突部が介在することにより、リード線が筐体外に出た直後の箇所で曲げられても、リード線には亀裂が生じ難くなる。また、前述の如く、囲繞部材が平板状部を有していることで、平板状部がない場合に比べて立壁部の厚みを薄くすることができる。したがって、小型のファンフィルタユニットでも、囲繞部材を容易に設けることができるとともに、リード線を適切に固定しつつリード線通過孔を良好に封止することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明のファンフィルタユニットによると、基板上に囲繞部材を設けてポッティング剤を充填するという簡単な作業で、ファンフィルタユニットによる空気浄化効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係るファンフィルタユニットのカバー部材側を示す斜視図である。
【図2】前記ファンフィルタユニットの基板側を示す斜視図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】ファンフィルタユニットのカバー部材を外した状態でかつポッティング剤を充填する前の状態を示す、カバー部材側から見た図である。
【図5】図4のV−V線に相当する、ポッティング剤の充填後の断面図である。
【図6】囲繞部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
図1及び図2は、本発明の実施形態に係るファンフィルタユニットAの外観を示す。このファンフィルタユニットAは、工場等のクリーンルーム内に設置される装置(例えば半導体製造装置やFPD製造装置等)に取り付けられるものであって、該装置からの発塵によるクリーンルーム内の汚染を防止するものである。ファンフィルタユニットAは、金属製の基板2と樹脂製のカバー部材3とで構成された筐体1を備えている。筐体1の一面を基板2が構成し、残りの面をカバー部材3が構成している。本実施形態では、便宜上、基板2が水平状態にありかつ基板2の筐体1内側の面が上側を向いているものとする。但し、ファンフィルタユニットAの実際の取付状態では、これに限定するものではない。
【0024】
図3及び図4に示すように、筐体1内に、樹脂製のファンケース12を有するファンユニット11と、金属製のフィルタケース22を有するフィルタユニット21とが収容されている。ファンケース12(つまりファンユニット11)及びフィルタケース22(つまりフィルタユニット21)は、基板2の厚み方向一側の面である上面(筐体1内側の面)に、該上面に沿った方向に並んで固定されている。カバー部材3は、基板2の上面に固定されたファンケース12及びフィルタケース22を覆うように、基板2にネジ31により取付固定されている。以下、ファンフィルタユニットAにおいて、フィルタユニット21の側を前側といい、ファンユニット11の側を後側という。また、前側から見て左側を左側といい、前側から見て右側を右側という。
【0025】
前記ファンケース12は、軸心が上下方向に延びかつ上下両端部が閉塞された略円筒状をなしている。ファンケース12の外周面の下部における周方向の3箇所には、ファンケース12を基板2の上面にネジ32により固定するための固定部12aが径方向外側に突出するように形成されている。
【0026】
図示は省略するが、ファンケース12内には、送風機(ファン又はブロア)が収容されている。この送風機は、遠心ファン、シロッコファン等で構成されていて、複数の羽根を有しかつ上下方向に延びる軸回りに回転可能なインペラと、このインペラの上側に位置して、該インペラを回転駆動するモータと、このモータを駆動するための回路基板とを有している。
【0027】
ファンユニット11は、ファンケース12の内側から外側に延びる複数のリード線14を有している。これらのリード線14は、ファンケース12の内側に位置する前記回路基板に接続されており、この回路基板から上側に延びた後、ファンケース12の上端面部に設けた開口(前記モータのロータ軸の端部に抜け止めを係止するために開けられた開口(図示せず))とこの開口を閉塞する、銘板を兼ねた円板状の閉塞部材13との間の隙間を通ってファンケース12の外側に延びている。そして、リード線14は、ファンケース12の外側において、ファンケース12の上面に沿って、前側でかつ右側(後述の接続部12eとは反対側)に向かって延び、ファンケース12の上端面部の周縁部の直ぐ外側で下側に折れ曲がって、基板2におけるファンケース12の周側面の右前側部分とフィルタケース22の後側の面との間の部分に、基板2の厚み方向に貫通するように形成されたリード線通過孔2aを通って、筐体1の内側から外側へ出て行く。筐体1の外側へ出たリード線14は、コネクタ15(図1参照)を介して、電源を含むモータ駆動装置(図示せず)に接続される。尚、リード線14には、必ずしもコネクタが接続されている必要はない。ファンケース12の周側面におけるリード線14の折れ曲がり部分の近傍には、リード線14をリード線通過孔2aに向かって折れ曲がるように案内するガイド部12bが形成されている。このガイド部12bは、フィルタケース12の周側面と共にリード線14の周囲を囲っている。
【0028】
前記複数のリード線14は、前記モータ(送風機)を駆動するためのものであって、少なくとも該モータへ電力を供給する2本の電力線を含み、これら2本の電力線に加えて、少なくとも1本の信号線を含んでいてもよい。本実施形態では、複数のリード線14は、2本の電力線と1本の信号線との合計3本である。
【0029】
ファンケース12には、空気吸込み口12c(図1及び図4参照)及び空気吐出口12d(図3及び図4参照)が形成されている。空気吸込み口12cは、ファンケース12の下面(基板2側の面)における中心部(前記インペラの中心部に対応する部分)に形成されている。そして、基板2における空気吸込み口12cに対応する部分には、空気吸込み口12cを筐体1の外側と連通させるための連通孔2bが空気吸込み口12cと合致するように形成されている。連通孔2bの筐体1側の開口は、ファンケース12によって覆われることになる。
【0030】
空気吐出口12dは、ファンケース12の周側面における左前側部分から前側(フィルタケース22側)へ突出するように形成された接続部12eの先端に設けられている。この接続部12eの先端(空気吐出口12d)は、フィルタケース22の後述の導入口22aと接続されている。
【0031】
前記モータが駆動されて前記インペラが回転すると、このインペラにより、筐体1外の空気が、空気吸込み口12cからファンケース12内に吸い込まれ、この吸い込まれた空気がインペラの径方向外側へ吐出されて、空気吐出口12dよりファンケース12の外側へ吐出される(つまり、フィルタケース22内に導入される)。
【0032】
前記フィルタケース22は、略矩形箱状をなしており、ファンケース12よりも高さが高くされている。これに対応して、カバー部材3の上面における前側部分は、フィルタケース12の上面に沿って水平に延びている一方、カバー部材3の上面におけ後側部分は、後側に向かって下側に傾斜している。
【0033】
フィルタケース22の後側(ファンケース12側)の面における下側部分には、ファンケース12の空気吐出口12dと接続されかつ該空気吐出口12dより吐出された空気をフィルタケース内に導入する導入口22aが形成されている。この導入口22aは、ファンケース12の接続部12eの先端部(空気吐出口12dの周縁部)と略同じ大きさでありかつ同じ形状をなしており、接続部12eの先端部が導入口22aに嵌合された状態で挿入されている。
【0034】
フィルタケース22内には、空気吐出口12dより吐出された空気(導入口22aからフィルタケース22内に導入された空気)を浄化する集塵フィルタ23が設けられている。本実施形態では、この集塵フィルタ23は、HEPAフィルタとされているが、これに限らず、要求されるクリーン度に応じて、前記クリーンルーム内に設置された装置内の塵埃を除去できるものとすればよい。
【0035】
フィルタケース22の前側の面(導入口22aが形成された面とは反対側の面)の略全体に、集塵フィルタ23により浄化された空気(塵埃が除去された空気)をフィルタケース22の外側へ導出する導出口22bが形成されている。カバー部材3の前側の面(カバー部材3における導出口22bと対向する部分)に、導出口22bより導出された空気を筐体1外へ吹き出す吹出し口3aが形成されている。この吹出し口3aには、網目部材4が設けられており、この網目部材4の網目を通って、浄化された空気が筐体1外へ吹き出すことになる。尚、導出口22bは、フィルタケース22の前側の面に限らず、フィルタケース22の上側、左側又は右側の面に形成してもよい。吹出し口3aは、導出口22bの近傍であればよいが、導出口22bよりフィルタケース22の外側へ導出された空気がスムーズに筐体1の外側に吹き出すように、カバー部材3において導出口22bと対向する面に形成することが好ましい。
【0036】
図4に示すように、基板2の上面(筐体1内側の面)には、フィルタケース22の後側(ファンケース12側)の面と共にファンケース12の周囲を囲む囲繞部材41が設けられている。すなわち、基板2の上面に対して垂直な方向(上下方向)から見て、ファンケース12の周囲を、フィルタケース22の後側の面及び囲繞部材41(詳しくは、囲繞部材41の後述の立壁部41b)によって、略四角形状に囲んでいる。フィルタケース22の後側の面は、ファンケース12の前側に位置し、囲繞部材41(立壁部41b)は、ファンケース22の左側、後側及び右側に位置する。囲繞部材41は、後述の如く、ファンケース12の周囲にポッティング剤45(図3及び図5参照)を充填する際に、そのポッティング剤45が基板2上から漏れ出ないようにするためのものである。
【0037】
本実施形態では、図6に示すように、囲繞部材41は、ファンケース12と基板2との間に介在されかつ基板2の上面に接着剤により密着される平板状部41aと、この平板状部41aの周縁部のうちフィルタケース21側を除く縁部から基板2とは反対側(上側)に立設されて、フィルタケース21の後側の面と共にファンケース12の周囲を囲む立壁部41bとを有している。このような囲繞部材41は、厚みの比較的薄い樹脂シート(例えばPETシート)を真空成形によって容易に成形することができる。立壁部41bの厚みが薄くても、立壁部41bにおける基板2側の端部全体が平板状部41aで繋がっていることで、立壁部41bが倒れるようなことはなく、基板2上に平板状部41aを固定するだけで、ポッティング剤45の漏れ防止という立壁部41bの役割を果たす。本実施形態では、立壁部41bの剛性をより向上させるために、立壁部41bに上下方向に延びる複数のリブ41cを形成している。尚、図4では、リブ41cを省略している。
【0038】
前記立壁部41bの周方向の両端部(ファンケース12の左側及び右側に位置する部分の前端部)には、フィルタケース22側に延設された延設部41dがそれぞれ設けられており、これら両延設部41dがフィルタケース22の左側及び右側の面における後端部に固定されている。
【0039】
前記平板状部41aには、基板2の連通孔2bに対応する部分に位置しかつ連通孔2bと略同径である第1貫通孔41eと、ファンケース12の固定部12aを基板2に固定する際に用いるネジ32が挿通される3つの第2貫通孔41fと、リード線通過孔2aに対応する部分に位置する環状突部41g(図1及び図5参照)と、この環状突部41gの内側に位置する第3貫通孔41hとが形成されている。
【0040】
前記環状突部41gは、図5に示すように、基板2側(下側)に突出してリード線通過孔2aに挿入されている。この環状突部41gの内側に形成された前記第3貫通孔41hを前記複数のリード線14が通過する。第3貫通孔41hの内径は、複数のリード線14が第3貫通孔41hに対してリード線14の自重では動かない程度の大きさに設定されており、リード線14を第3貫通孔41h(つまり基板2)に仮固定することができる。尚、リード線14の本固定は、後述の如くポッティング剤45の充填により行う。
【0041】
前記基板2の上面上(本実施形態では、前記平板状部41aの上面上であるが、平板状部41aは基板2の上面に密着されるので、実質的に基板2の上面上であると言える)において囲繞部材41の立壁部41bとフィルタケース22の後側(ファンケース12側)の面とにより囲まれた部分におけるファンケース12の周囲(図4において斜線を施した部分)には、ポッティング剤45(図3及び図5参照)が充填されている。このポッティング剤45は、充填後に硬化して固まる。このようなポッティング剤45としては、1液性エポキシ樹脂組成物接着剤のような1液性の接着剤であって、硬化前の粘度が10Pa・s以上でかつ30Pa・s以下のものが好ましい。また、ポッティング剤45は、低分子シロキサンのような電子部品に悪影響を及ぼすような材料を含まないことが好ましい。尚、図4は、ポッティング剤45を充填する前の状態を示している。
【0042】
前記ポッティング剤45が硬化すると、このポッティング剤45によりファンケース12の下面周縁部と平板状部41aの上面との間の隙間が封止される。また、リード線通過孔2aが、基板2の上面における前記ポッティング剤45の充填部分に開口しており、これにより、ポッティング剤45が硬化すると、リード線通過孔2a(平板状部41aの第3貫通孔41h)が封止されるとともに、リード線14が第3貫通孔41h(つまり基板2)に本固定される。このリード線14の本固定により、リード線14が筐体1外側から引っ張られても、リード線14の、前記回路基板と接続された端部には大きな力が作用せず、リード線14が前記回路基板から外れるようなことはない。しかも、リード線14とリード線通過孔2aの内周面との間に樹脂製の環状突部41gが介在することにより、リード線14が筐体1外に出た直後の箇所で曲げられても、リード線14には亀裂が生じ難くなる。
【0043】
ポッティング剤45の充填量は、ファンケース12の下面周縁部と平板状部41aの上面との間の隙間及びリード線通過孔2a(第3貫通孔41h)を確実に封止できる量とすればよく、比較的多い目に充填しても、囲繞部材41(立壁部41b)により、充填されるポッティング剤45が基板2上から漏れ出ることはない。このため、充填量を厳密に管理する必要はない。
【0044】
ポッティング剤45の充填前に、基板2の下面におけるリード線14の周囲の箇所にマスキングテープを貼って、リード線通過孔2a(平板状部41aの第3貫通孔41h)をマスキングする。これにより、ポッティング剤45が、その充填時にリード線通過孔2(第3貫通孔41h)から漏れ出るのを防止する。前記マスキングテープは、ポッティング剤45の硬化後に取り外される。
【0045】
尚、ポッティング剤45の充填時に、ポッティング剤45がファンケース12の下面周縁部と平板状部41aの上面との間に僅かな量だけ進入するが、ファンケース12の下面と平板状部41aの上面との間の隙間量は極僅かであるため、その進入したポッティング剤45が平板状部41aの第1貫通孔41eの所まで達することはなく、第1貫通孔41e及び基板2の連通孔2bからポッティング剤45が漏れ出ることはない。仮に、ポッティング剤45が、その充填時に第1貫通孔41e及び基板2の連通孔2bから漏れ出る場合には、ポッティング剤45の充填前に、基板2の連通孔2bもリード線通過孔2aと同様にマスキングしておき、ポッティング剤45の硬化後に取り外せばよい。
【0046】
本実施形態では、ポッティング剤45を、ファンケース12の接続部12eにおける空気吐出口12dの周縁部と、ファンケース12の上端面部における閉塞部材13の周縁部とに塗布することで、空気吐出口12dの周縁部とフィルタケース22の導入口22aの周縁部との間の隙間及びファンケース12の上端面部の開口周縁部と閉塞部材13の周縁部との間の隙間を封止する。これにより、ファンケース12内に吸い込まれた空気は全てフィルタケース22内に導入される。
【0047】
前記筐体1内におけるポッティング剤45に対して上側(基板2とは反対側)の空間は、フィルタケース22の上側及び左右両側の空間を介して吹出し口3aと連通している。しかし、ファンケース12の下面周縁部と基板2の上面との間の隙間がポッティング剤45により封止されているので、吹出し口3aは、ファンケース12の下面と平板状部41aの上面との間の隙間部分及び基板2の連通孔2b(平板状部41aの第1貫通孔41e)とは連通していない。
【0048】
前記ファンフィルタユニットAを製造するには、先ず、基板2上に、囲繞部材41の平板状部41aを接着して囲繞部材41を固定するとともに、予め作製されたフィルタユニット21のフィルタケース22を固定する。その後、フィルタケース22の導入口22aに、予め作製されたファンユニット11のファンケース12の接続部12eを接続しながら、基板2上に前記平板状部41aを介してファンケース12をネジ32により固定する。
【0049】
続いて、ファンケース12の外側に出ているリード線14をガイド部12bで案内しかつ基板2のリード線通過孔2a(囲繞部材41の平板状部41aの第3貫通孔41h)を通す。これにより、図4に示す状態となる。
【0050】
次いで、マスキングテープによりリード線通過孔2aをマスキングした後、基板2を水平状態にしかつ基板2におけるファンケース12及びフィルタケース22を固定した面が上向きになるようにする。
【0051】
その後、基板2の上面上(平板状部41aの上面上)において囲繞部材41の立壁部41bとフィルタケース22のファンケース12側の面とにより囲まれた部分におけるファンケース12の周囲(図4において斜線を施した部分)にポッティング剤45を充填する。また、ポッティング剤45の充填前若しくは充填後又は充填時に、ポッティング剤45を、ファンケース12の接続部12eにおける空気吐出口12dの周縁部と、ファンケース12の上端面部における閉塞部材13の周縁部とに塗布する。
【0052】
前記ポッティング剤45の硬化後、基板2に、予め吹出し口3aに網目部材4を設けたカバー部材3を、ファンケース12(ファンユニット11)及びフィルタケース22(フィルタユニット21)を覆うようにして、ネジ31により固定し、こうしてファンフィルタユニットAが完成する。尚、ポッティング剤45の硬化後は、基板2をどのように傾けても、ポッティング剤45が筐体1の外側に漏れることはない。
【0053】
前記ファンフィルタユニットAが作動する(前記モータが駆動される)と、前記クリーンルーム内の汚染空気がファンケース12の空気吸込み口12cからファンケース12内に吸い込まれ、その汚染空気がファンケース12の空気吐出口12d及びフィルタケース22の導入口22aを介してフィルタケース22内に導入されて、フィルタケース22内の集塵フィルタ23により浄化される(汚染空気中の塵埃が除去される)。この浄化された空気がフィルタケース22の導出口22a及び筐体1のカバー部材3の吹出し口3aを介して筐体1外へと吹き出す。
【0054】
ここで、汚染空気は、基板2の連通孔2b及び平板状部41aの第1貫通孔41eから、ファンケース12の下面と平板状部41aの上面との間の隙間部分に進入する。そして、汚染空気は、その隙間部分から筐体1内におけるポッティング剤45に対して上側の空間(吹出し口3aと連通する空間)を通って吹出し口3aへ流動しようとするが、ファンケース12の下面周縁部と基板2の上面との間の隙間がポッティング剤45により封止されているので、前記汚染空気は、吹出し口3aと連通する空間へは進入できず、このため、集塵フィルタ23により浄化された空気と混じって吹出し口3aより吹き出すことはない。また、ファンケース12内に吸い込まれた空気が途中で漏れることはなく、その全ての空気がフィルタケース22内に導入されて集塵フィルタ23により浄化され、この浄化された空気のみが、吹出し口3aよりクリーンルームへ吹き出すことになる。
【0055】
したがって、本実施形態では、基板2上に囲繞部材41を設けてポッティング剤45を充填するという簡単な作業で、ファンフィルタユニットAによる空気浄化効率を向上させることができる。
【0056】
また、基板2の上面におけるポッティング剤45の充填部分に、ファンユニット11に接続される複数のリード線14が通過するリード線通過孔2aが開口しているので、リード線通過孔2aをポッティング剤45の充填により封止することができ、リード線通過孔2aを別途に封止する作業が不要になる。また、リード線通過孔2aの封止作業の忘れや封止剤の塗布量不足といった問題が生じるようなことはなく、リード線通過孔2aをポッティング剤45により確実に封止することができる。
【0057】
さらに、囲繞部材41を平板状部41aと立壁部41bとで構成したので、囲繞部材41を、厚みの比較的薄い樹脂シートで構成することができ、小型のファンフィルタユニットAであっても、囲繞部材41を容易に設けることができる。しかも、平板状部41aに、リード線通過孔2aに嵌合する環状突部41gと、この環状突部41gの内側に位置しかつリード線14が通過する第3貫通孔41hとを形成したので、ポッティング剤45の充填と相俟って、リード線14を適切に固定しつつリード線通過孔2a(第3貫通孔41h)を良好に封止することができる。
【0058】
本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0059】
例えば、前記実施形態では、リード線通過孔2aを、基板2の上面におけるポッティング剤45の充填部分に開口するように基板2に形成したが、これに限らず、リード線通過孔2aを、基板2の上面におけるポッティング剤45の非充填部分に開口するように基板2に形成してもよく、或いは、カバー部材3に形成してもよい。但し、リード線通過孔2aが基板2の上面におけるポッティング剤45の充填部分に開口していない場合には、ポッティング剤45の充填に加えて、封止剤(ポッティング剤45と同じ者であってもよく、異なるものであってもよい)によりリード線通過孔2aを封止する作業が別途に必要になるとともに、その封止作業の忘れや封止剤の塗布量不足といった問題が生じる可能性があるため、前記実施形態のようにリード線通過孔2aを形成することが好ましい。
【0060】
また、前記実施形態では、囲繞部材41を平板状部41aと立壁部41bとで構成したが、平板状部41aがなくて、立壁部41bに相当する部分で構成してもよい。この場合、立壁部41bに相当する部分の厚みを比較的厚くすることで、剛性を高くするとともに、基板2の上面への接着面積を確保するようにすることが好ましい。平板状部41aがない場合、リード線14を基板2に仮固定するための部材(環状突部41gに相当する部材)を別途に設けるか、又は、その部材を立壁部41bに相当する部分に一体成形してもよい。
【0061】
前記実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、クリーン度が要求される室内に設置されるファンフィルタユニットに有用であり、特にそのような室内に設置される装置に取り付けられる比較的小型のファンフィルタユニットに有用である。
【符号の説明】
【0063】
A ファンフィルタユニット
1 筐体
2 基板
2a リード線通過孔
2b 連通孔
3 カバー部材
11 ファンユニット
12 ファンケース
12c 空気吸込み口
12d 空気吐出口
12e 接続部
14 リード線
21 フィルタユニット
22 フィルタケース
23 集塵フィルタ
41 囲繞部材
41a 平板状部
41b 立壁部
41g 環状突部
41h 第3貫通孔(環状突部の内側に位置する貫通孔)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に、空気吸込み口及び空気吐出口が形成されたファンケースを有するファンユニットと、前記ファンケースの空気吐出口より吐出された空気を浄化する集塵フィルタが内部に設けられたフィルタケースを有するフィルタユニットとが収容されたファンフィルタユニットであって、
前記筐体は、厚み方向一側の面に前記ファンケース及び前記フィルタケースが当該面に沿った方向に並んで固定された基板と、該基板に、前記ファンケース及び前記フィルタケースを覆うように取り付けられたカバー部材とで構成され、
前記ファンケースの空気吸込み口は、該ファンケースの基板側の面に形成され、
前記基板における前記空気吸込み口に対応する部分には、該空気吸込み口を前記筐体の外側と連通させるための連通孔が形成され、
前記フィルタケースには、前記ファンケースの空気吐出口と接続されかつ該空気吐出口より吐出された空気を前記フィルタケース内に導入する導入口と、前記集塵フィルタにより浄化された空気を前記フィルタケース外に導出する導出口とが形成され、
前記カバー部材に、前記導出口より導出された空気を筐体外へ吹き出す吹出し口が形成され、
前記基板の筐体内側の面に、前記フィルタケースのファンケース側の面と共に前記ファンケースの周囲を囲む囲繞部材が設けられ、
前記基板の筐体内側の面上において前記囲繞部材と前記フィルタケースのファンケース側の面とにより囲まれた部分における前記ファンケースの周囲に、ポッティング剤が充填されている、ファンフィルタユニット。
【請求項2】
請求項1記載のファンフィルタユニットにおいて、
前記ファンユニットは、前記ファンケースの内側から外側に延びる複数のリード線を有し、
前記基板の筐体内側の面における前記ポッティング剤の充填部分に、前記複数のリード線が通過するリード線通過孔が開口している、ファンフィルタユニット。
【請求項3】
請求項1記載のファンフィルタユニットにおいて、
前記囲繞部材は、前記ファンケースと前記基板との間に介在されかつ該基板の筐体内側の面に密着される平板状部と、該平板状部の周縁部のうち前記フィルタケース側を除く縁部から基板とは反対側に立設されて、前記フィルタケースのファンケース側の面と共に前記ファンケースの周囲を囲む立壁部とを有している、ファンフィルタユニット。
【請求項4】
請求項2記載のファンフィルタユニットにおいて、
前記囲繞部材は、前記ファンケースと前記基板との間に介在されかつ該基板の筐体内側の面に密着される平板状部と、該平板状部の周縁部のうち前記フィルタケース側を除く縁部から基板とは反対側に立設されて、前記フィルタケースのファンケース側の面と共に前記ファンケースの周囲を囲む立壁部とを有し、
前記囲繞部材の平板状部に、前記基板側に突出して前記リード線通過孔に挿入される環状突部と、該環状突部の内側に位置しかつ前記リード線が通過する貫通孔とが形成されている、ファンフィルタユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−47587(P2013−47587A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186012(P2011−186012)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000228730)日本電産サーボ株式会社 (276)
【Fターム(参考)】