説明

フィッシャー・トロプシュ合成用コバルト/ジルコニウム−リン/シリカ触媒及びその製造方法

本発明は、ジルコニウム、及びリンでシリカの表面を処理して製造されたジルコニウム−リン/シリカ支持体にコバルトが活性成分として担持されたコバルト/ジルコニウム−リン/シリカ触媒、及びその製造方法に関する。前記触媒は、シリカの大きい細孔構造、及びコバルトの還元性の増加により熱及び物質移動特性が優れるため反応性が優れており、フィッシャー・トロプシュ(FT)反応中にコバルト、及びその他の活性成分の分散が優れ、反応中のコバルト粒子の焼結を減少させ、その結果、高いCO転換率、及び安定した液体炭化水素に対する選択性をFT反応中に得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジルコニウム(Zr)とリン(P)を含有するシリカ支持体に、活性成分としてコバルトが担持されたフィッシャー・トロプシュ(FT)反応用触媒、その製造方法と、触媒存在下で天然ガス或いは石炭またはバイオマスのガス化により生成された合成ガスを利用して液体炭化水素を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィッシャー・トロプシュ(FT)反応のためには、鉄系又はコバルト系触媒が一般的に使用される。従来、FT反応には鉄系触媒が好まれたが、近年は液体燃料やワックスの生産を増やし触媒性能を向上させるために、コバルト系触媒が主に使用されている。鉄系触媒は、FT反応触媒のうち最も低価であり、高温でのメタンの生成が低く、オレフィンの選択性が高く、製品は燃料の他に軽質オレフィンまたはα−オレフィンとして化学産業の原料として利用され得る。更に、炭化水素以外にアルコール、アルデヒド、ケトンなどを含む副産物が多量に生成される。コバルト系触媒は鉄系触媒より200倍以上高価である。しかし、コバルト系触媒は高い活性と長い寿命、そしてCO2の生成が少ないと同時に液体パラフィン系炭化水素の生成収率が高い。しかしながら、CH4が高温で過量に生成されるため、低温でのみ使用される。更に、高価なコバルトを使用するため、 触媒はアルミナ、シリカ、チタニアなどのような表面積が大きい安定的な支持体上にコバルトを分散させて製造される。Pt、Ru、Reなどのような少量の貴金属が助触媒として添加される。
【0003】
ガス液化油(GTL)工程は、天然ガスの改質、合成ガスのFT合成、及びFT生成物の水素処理の3段階の主要サブプロセスからなる。触媒として鉄及びコバルトを使用して200〜350℃の反応温度と10〜30気圧の圧力で行われるFT反応は次の4つの主反応により説明することができる。
【0004】
(a)FT合成における鎖成長
CO+2H2→−CH2−+H2O △H(227℃)=−165kJ/mol
【0005】
(b)メタン生成
CO+3H2→CH4+H2O △H(227℃)=−215kJ/mol
【0006】
(c)水性ガスシフト反応
CO+H2O→CO2+H2 △H(227℃)=−40kJ/mol
【0007】
(d)バウダード(Boudouard)反応
2CO→C+CO2 △H(227℃)=−134kJ/mol
【0008】
主要生成物として直鎖炭化水素が生成されるメカニズムは、主にシュルツ・フローリー重合動力学機構により説明される。FT工程では、1次生産物の60%以上がディーゼル油よりも沸点が高い。それ故、ディーゼル油は次の水素化分解工程により生成され、ワックス成分は脱ろう工程を経て高品質の潤滑油基油に転換される。
【0009】
一般的に、高価な活性成分を分散させるために、コバルト及びその他の活性成分がアルミナ、シリカ、チタニアなどのような表面積が大きい支持体に導入して触媒を製造する。具体的に、活性成分としてコバルトを単一成分または多成分の支持体に分散させて製造された触媒が商業的に活用される。しかし、支持体に含まれるコバルトの粒子サイズが類似する場合、FT反応の活性は支持体の種類によって変わらない[Applied Catalysis A 161(1997)59]。それどころか、FT反応の活性はコバルトの分散性及び粒子サイズにより大きく影響を受ける[Journal of American Chemical Society,128(2006)395]。従って、前記支持体の表面を異なる追加の金属成分で前処理して支持体の性質を変化させることにより、FT反応の活性及び安定性を増進させようとする多くの試みが行われている。
【0010】
FT触媒の活性を増進させる別の方法として、二重多孔性構造を有するシリカ−アルミナ触媒を製造し、FT反応中に生成される高沸点の化合物の拡散速度を増進させることで、触媒の安定性を増進する方法がある[米国特許出願公開第2005/0107479号公報;Applied Catalysis A 292(2005)252]。
【0011】
シリカが支持体として使用される場合、コバルトとシリカ支持体との間の強い相互作用によりコバルトの還元性が減少し、そのため触媒の活性が減少する。還元度と活性度の減少はジルコニウムのような金属を使用してシリカの表面を前処理することで防ぐことができる[欧州特許第0167215号公報;Journal of Catalysis 185(1999)120]。前述したFT触媒は多様な比表面積を表しているが、FT反応の活性はコバルト成分の粒子サイズ、支持体の細孔サイズの分布、及びコバルト成分の還元度と密接な関係があることが知られている。これらの性能を増進するために、複雑な工程を経て製造された支持体を使用してFT反応の触媒を製造する方法が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0107479号公報
【特許文献2】欧州特許第0167215号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Applied Catalysis A 161(1997)59
【非特許文献2】Journal of American Chemical Society,128(2006)3956
【非特許文献3】Applied Catalysis A 292(2005)252
【非特許文献4】Journal of Catalysis 185(1999)120
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は合成ガスから液体炭化水素が生成されるフィッシャー・トロプシュ(F-T)反応用触媒、及びその触媒を製造する方法を提供し、本発明による触媒は、反応中のコバルトの焼結が抑制されることによって非活性化を抑えるので、活性化が向上され、高沸点の化合物に対する選択性が高く、表面がジルコニウム−リンで処理されたシリカ支持体が用いられる場合には、活性成分として、分散、及びコバルトの還元度が向上し、且つ安定性も向上する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一形態によると、活性成分としてコバルトが支持体に担持され、前記支持体は、比表面積が200〜800m2/gである多孔性シリカの表面にジルコニウム(Zr)とリン(P)とを同時に含有するジルコニウム−リン/シリカ支持体であり、前記ジルコニウム−リンの量はシリカに対して2〜30重量%の範囲、前記ジルコニウムの量はリンに対して5〜100重量%の範囲、コバルト(Co)の量はジルコニウム−リン/シリカ支持体に対して10〜40重量%の範囲であるFT反応用コバルト/ジルコニウム−リン/シリカ触媒を提供する。
【0016】
本発明の別の形態によると、比表面積が200〜800m2/gである多孔性シリカにジルコニウム前駆体とリン前駆体とを同時に含有させ、100〜200℃の温度で乾燥した後、300〜800℃の温度で焼成することで、ジルコニウム(Zr)−リン(P)/シリカ支持体を製造する段階と、ジルコニウム−リン/シリカ支持体にコバルト前駆体を担持させ、100〜200℃の温度で乾燥した後、100〜700℃の温度で焼成することで、コバルト/ジルコニウム−リン/シリカ触媒を製造する段階と、を含むFT反応用コバルト/ジルコニウム−リン/シリカ触媒の製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例2及び比較例1により製造された触媒を用いてFT反応が行われる時の反応時間によるCO転換率を示し、触媒の長期安定性を評価している。
【図2】実施例1〜3及び比較例1と2により製造された触媒を利用してFT反応を行った時の支持体に含有するZr/P重量比によるC5+液体炭化水素の収率、CO転換率及びメタンに対する選択性を表したものである。
【図3】実施例2及び比較例2により製造されたFT反応前後の触媒内のコバルト粒子の透過電子顕微鏡(TEM)の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を添付する図面を参照して詳しく説明し、発明の典型的な実施例を示す。
【0019】
本発明は、比表面積が200〜800m2/gである多孔性シリカの表面にジルコニウム(Zr)とリン(P)が同時に含有されるジルコニウム−リン/シリカ支持体に、活性成分としてコバルトが担持されたFT反応用コバルト/ジルコニウム−リン/シリカ触媒を提供する。
【0020】
前記コバルト/ジルコニウム−リン/シリカ触媒は、比表面積が190〜300m2/gであり、シリカをジルコニウム−リンで処理してシリカの表面の性質を変化させることで分散が増加し、反応中にコバルトの凝集(焼結)による触媒の非活性化を減少させ、コバルトの還元度が増加するため、(C5以上の)液体炭化水素に対する安定的な選択度を有する。従って、コバルト/ジルコニウム−リン/シリカ触媒はFT反応に効率的に使用される。
【0021】
合成ガスを利用して液体炭化水素が製造されるFT反応では、高価な活性成分を均一に分散するために、表面積が大きいシリカ、アルミナ、チタニウムなどを支持体として使用し、活性成分としてコバルトを使用し、そして助触媒を使用して触媒が一般的に製造される。しかし、シリカと比較して表面積が小さいリンとの親和力が強い支持体のうち、アルミナまたはチタニア支持体の表面がジルコニウム−リンで処理されると、支持体の比表面積が減少し、その結果、コバルトの分散が減少するため、触媒の活性が十分に増加しない。
【0022】
シリカ支持体は10〜20nmの均一な細孔径を有し、アルミナと比較して大きいため、ジルコニウム−リンを使用した表面処理による比表面積の減少が相対的に少なくなる。また、前記シリカの比表面積はチタニアより大きいため、ジルコニウム−リンを使用した表面処理による比表面積の減少が相対的に少なくなる。従って、前記シリカ支持体は、活性成分であるコバルトの担持及びコバルトの分散の増加に効果的に使用される。特に、シリカが十分に発達した細孔構造を有する場合、FT反応中に生成された水は大きい細孔を通して容易に拡散されるため、コバルトの酸化による触媒の非活性化が減少する。更に、支持体の表面性質はジルコニウム−リンを使用して支持体の表面を処理することによって改質されるため、コバルトの分散が増加し、コバルト粒子の凝集(焼結)が減少し、それ故、触媒の非活性化が抑制されてFT反応の安定的な活性を確保できる。
【0023】
本発明によるコバルト/ジルコニウム−リン/シリカ触媒は、多孔性シリカにコバルトの分散及び還元度を向上させるジルコニウムとリンとを導入して製造されたジルコニウム−リン/シリカ支持体を含み、活性成分としてコバルトがジルコニウム−リン/シリカ支持体に担持される。
【0024】
即ち、ジルコニウムとリンを使用してシリカの表面を同時に処理する際、ジルコニウムがシリカ支持体の表面性質を変化させて、非活性化を引き起こすコバルトのケイ酸コバルト及び酸化コバルトへの転換を抑制し、コバルトの分散を向上させることができ、リンはシリカの表面でのジルコニウムの分散を増加させて、安定したリン酸ジルコニウムを生成することができ、その結果、FT反応中に担持されたコバルトの焼結を抑制して触媒の非活性化及びFT反応中に発生した水によるコバルトの再酸化を減少させる。
【0025】
ジルコニウム及びリンは、ジルコニウム、ホウ素、アルカリ土類金属及びランタンのような従来の単一金属と比較してより安定した構造を有するリン酸ジルコニウムを形成して、シリカ支持体の物性を改善させる。前記リン酸ジルコニウムはコバルトの分散を増加させ、支持体とコバルト間の強い相互作用によるコバルト金属の還元度の減少を防ぎ、FT反応中でのコバルトの焼結を減少させる。従って、リン酸ジルコニウムで前処理したシリカ支持体はFT反応中での合成ガスからの液体炭化水素の生成に効果的に使用される。
【0026】
前記シリカは、比表面積が200〜800m2/gである当分野で一般的に使用される多孔性シリカである。シリカの比表面積が200m2/g未満の場合、ジルコニウム−リンを利用した表面処理過程で触媒の比表面積が大きく減少して、コバルトが担持されると同時に活性成分の分散が減少し、その結果、FT反応の活性を減少させる。一方、シリカの比表面積が800m2/gを超過すると、細孔サイズが小さいため、コバルトの粒子サイズがシリカの外面で増加するため、FT反応の活性が減少する。
【0027】
ジルコニウム−リンの使用量はシリカに対して2〜30重量%の範囲である。ジルコニウム−リンの使用量が2重量%未満の場合、支持体の表面性質が十分に変化できないため、FT反応の活性が十分に増加しない。一方、ジルコニウム−リンの使用量が30重量%を超過すると、支持体の比表面積が急激に減少するため、コバルトの分散が減少する。更に、ジルコニウムの使用量はリンに対して5〜100重量%の範囲である。ジルコニウムの使用量が5重量%未満の場合、多くのリンの存在により支持体の比表面積が減少し、リン酸コバルトが形成されるためコバルトの還元度が減少し、従って、FT反応の活性が減少する。一方、ジルコニウムの使用量が100重量%を超過すると、シリカの表面の改質によるリンの効果が減少し、リン酸ジルコニウムのような安定した化合物の生成が減少する。これは、コバルトの分散及び還元度の向上とコバルト粒子の焼結抑制が不十分となり、触媒の急速な非活性化を引き起こす。
【0028】
更に、コバルト/ジルコニウム−リン/シリカ触媒は、当分野で通常使用される助触媒、例えば、Ru、Pt及びRhを更に含む。助触媒の量はコバルト/ジルコニウム−リン/シリカ触媒に対して0.05〜2重量%の範囲である。助触媒の使用量が0.05重量%未満の場合、助触媒の効果がごくわずかであるため、コバルトの還元性、及びFT反応の活性が十分に増進しない。一方、助触媒の使用量が2重量%を超過すると、助触媒の価格の割にFT工程の経済性が良くない。
【0029】
また、本発明はフィッシャー・トロプシュ反応用コバルト/ジルコニウム−リン/シリカ触媒の製造方法を提供する。具体的に、ジルコニウム前駆体とリン前駆体とを多孔性シリカに同時に担持して、乾燥、及び焼成を行い、ジルコニウム(Zr)−リン(P)/シリカ支持体を製造する。その後、コバルト前駆体をジルコニウム−リン/シリカ支持体に担持して、乾燥及び焼成を行い、コバルト/ジルコニウム−リン/シリカ触媒を製造する。
【0030】
前記コバルト/ジルコニウム−リン/シリカ触媒の製造方法をより詳しく説明する。
【0031】
まず、ジルコニウム前駆体とリン前駆体とを多孔性シリカに同時に担持させ、乾燥及び焼成を行ってジルコニウム(Zr)−リン(P)/シリカ支持体を製造する。このとき、前記多孔性シリカは、比表面積が200〜800m2/gであり、細孔内に含まれる不純物と水は300〜800℃の温度で焼成して除去される。
【0032】
当分野で通常使用されるジルコニウム前駆体は限定されることなく使用される。例えば、前記ジルコニウム前駆体は、オキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO32・xH2O)、オキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl2・xH2O)、硫酸ジルコニウム(Zr(SO42)、及び塩化ジルコニウム(ZrCl4)からなる群から選択される単一化合物、またはこれらの化合物のうち少なくとも2種の化合物の混合物である。当分野で通常使用されるリン前駆体は限定されることなく使用される。例えば、前記リン前駆体は、リン酸(H3PO4)、オキシ塩化リン(POCl3)、五酸化リン(P25)、及び三塩化リン(PCl3)からなる群から選択される単一化合物、またはこれらの化合物のうち少なくとも2種の化合物の混合物である。
【0033】
ジルコニウム−リン前駆体は、当分野で通常使用される含浸法、共沈法などの方法を使用して担持され、乾燥、及び焼成してジルコニウム−リン/シリカ支持体を製造する。前記乾燥は100〜200℃の温度で行われる。前記乾燥が100℃未満の温度で行われる場合、触媒の製造に使用される溶媒が支持体の細孔内から十分に蒸発されず、触媒の焼成時にジルコニウム−リンが凝集されるため、分散が減少する。一方、前記乾燥が200℃を超過して行われる場合は、支持体の細孔内からの溶媒の急激な離脱によりシリカの外側表面にジルコニウム−リンの凝集が発生する。前記焼成は300〜800℃の温度で行われる。前記焼成が300℃未満で行われる場合、ジルコニウム−リン前駆体の残存によりシリカの表面が十分に改質されず、その結果、ジルコニウム−リンの改質効果が抑制される。一方、前記温度が800℃を超過すると、支持体の細孔が焼結により塞がれるため、支持体の比表面積が減少する。
【0034】
その次に、コバルト前駆体がジルコニウム−リン/シリカ支持体に担持され、100〜200℃の温度で乾燥され、100〜700℃の温度、好ましくは200〜600℃で焼成される。前記コバルト前駆体は当分野で通常使用される方法で担持され、例えば、含浸法、または共沈法で行われる。具体的に、前記含浸法は40〜90℃の温度で水溶液、またはアルコール溶液で行われる。前記過程で製造された物は100℃以上のオーブンで24時間乾燥された後、触媒として使用される。他に、共沈法によると、pH7〜8の水溶液内のジルコニウム−リン/シリカ支持体のスラリー相でコバルト前駆体は共沈される。40〜90℃で熟成した後、沈殿物をろ過、及び洗浄する。コバルトの量はジルコニウム−リンで処理されたシリカ支持体に対して10〜40重量%の範囲である。塩基性沈殿剤はpHを7〜8に維持させるために使用される。塩基性沈殿剤の例は炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、及びアンモニア水である。
【0035】
このような含浸法、及び共沈法は前記ジルコニウム−リン前駆体をシリカに担持させる方法にも適用される。
【0036】
更に、推奨する範囲の熟成時間がコバルトを含有するFT触媒の形成に有利であるため、触媒の熟成は0.1〜10時間、好ましくは0.5〜8時間行われる。前記熟成時間が0.1時間未満の場合、コバルトの分散が減少するため、FT反応の活性が低減する。一方、前記熟成時間が10時間を超過する場合、コバルトの粒子サイズが増加するため活性点の数が減少すると同時に、合成時間が増加する。
【0037】
前記のように製造されたコバルト/ジルコニウム−リン/シリカ触媒を洗浄、及び乾燥する。洗浄工程後、前述した方法により製造した生成物を100℃以上、好ましくは100〜200℃のオーブンで24〜48時間乾燥する。その後、前記乾燥した生成物は、FT反応に直ちに使用されるか、貴金属触媒成分を担持した後、焼成段階を経て使用されるか、焼成段階を経ずに使用される。
【0038】
前記焼成温度が100℃未満の場合、触媒の製造時に使用される溶媒、及び前駆体が触媒に残存するため、副反応が起こる。前記焼成温度が700℃を超過すると、活性成分の焼結により粒子サイズが増加するため、コバルトのような活性成分の分散が減少し、支持体の比表面積が減少する。
【0039】
コバルト/ジルコニウム−リン/シリカ触媒では、コバルトの量はジルコニウム−リン/シリカ支持体に対して10〜40重量%の範囲である。前記コバルトの含有量は10重量%未満の場合、FT反応において活性成分の量が十分ではないため、FT反応の活性を減少する。一方、前記コバルト含量が40重量%を超過すると、触媒の製造費用が増加し、コバルトの粒子サイズが増加し、触媒の比表面積が減少するため、FT反応の活性が減少する。
【0040】
更に、本発明は、本発明により製造された触媒存在下で合成ガスからFT反応を経て製造された液体炭化水素を提供する。FT反応は当分野で通常行われる方法にて行われ、特別に限定しない。本発明において、FT反応は、200〜600℃の範囲の温度の水素環境下で触媒を還元した後、固定床、流動床またはスラリー相反応器で触媒を使用して行われる。前記FT反応は、標準の条件、具体的に200〜300℃の温度、5〜30kg/cm2の圧力、500〜10000h-1の空間速度で、還元されたFT反応用触媒を使用して行われるが、これに限定されない。
【0041】
前述した方法により製造された触媒存在下で、220℃、20気圧、及び2000h-1の空間速度で行われたFT反応のCO転換率は、45〜85炭素モル%の範囲であり、炭化水素(C5以上)、具体的にナフサ、ディーゼル、中間留分、重油、ワックスなどの収率が25〜75炭素モル%の範囲である。
【0042】
本発明を下記実施例を参照して更に詳しく説明する。下記実施例は例示を目的とするだけであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0043】
実施例1
支持体として使用される多孔性シリカは500℃で4時間焼成して、細孔から不純物、及び水を除去した。前記前処理されたシリカ5gを、オキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO32・xH2O)1.465g、及びリン酸(H3PO4)0.0186gを水60mLに溶解して製造した溶液と混合して、ジルコニウム−リンが担持されたシリカを製造した。ジルコニウム−リンが担持されたシリカを500℃で5時間焼成して粉末のジルコニウム−リン/シリカ支持体を製造した。
【0044】
粉末のジルコニウム−リン/シリカ支持体3gを、硝酸コバルト(Co(NO32・6H2O)3.055gを脱イオン水60mLに溶解して製造されたコバルト前駆体溶液と混合した後、室温で12時間以上攪拌した。その後、105℃で12時間以上乾燥して、粉末のコバルト/ジルコニウム−リン/シリカ触媒を製造した。
【0045】
粉末のコバルト/ジルコニウム−リン/シリカ触媒3gを、硝酸ニトロシルルテニウム(Ru(NO)(NO33)0.0468gを脱イオン水60mLに溶解して製造された溶液と混合した後、室温で12時間以上攪拌した。その後、105℃で12時間以上乾燥し、空気雰囲気下で400℃で5時間焼成して、ルテニウム/コバルト/ジルコニウム−リン/シリカ触媒を製造した。このとき、Ru/Co/Zr−P/SiO2の組成は、金属の重量に基づき、Ru0.5重量%/Co20重量%/Zr9.9重量%−P0.1重量%/SiO2[Zr/P=99]であった。前記触媒は、比表面積が219m2/gであり、平均細孔体積が0.67cm3/gであり、平均細孔サイズが10.6nmである。
【0046】
反応を行う前に、製造された触媒0.3gを1/2インチステンレス製固定床反応器に置き、水素雰囲気(5vol%H2/He)下で400℃で12時間還元する。その後、次の反応条件[反応温度=220℃、反応圧力=20kg/cm2、空間速度=2000L/kgcat/hr]下で、一酸化炭素、水素、二酸化炭素、及びアルゴン(内部標準)の反応物を28.4:57.3:9.3:5の固定モル比で反応器に注入してFT反応を行った。触媒能力は使用済み触媒を使用して測定され、表1に要約する。約60時間の反応後に定常状態条件を得て、定常状態での10時間の平均値を得た。
【0047】
実施例2
オキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO32・xH2O)、リン酸(H3PO4)、硝酸コバルト(Co(NO32・6H2O)、及び硝酸ニトロシルルテニウム(Ru(NO)(NO33)が金属前駆体として使用されたことを除き、実施例1と同様の方法にて触媒が製造された。Ru/Co/Zr−P/SiO2の組成は、金属の重量に基づき、Ru0.5重量%/Co20重量%/Zr9.5重量%−P0.5重量%/SiO2[Zr/P=19]であった。前記触媒は、比表面積が232m2/gである。
【0048】
実施例1と同一条件下でFT反応が行われ、約60時間の反応後に定常状態条件が得られ、定常状態での10時間の平均値が得られ、その値を表1に表す。
【0049】
実施例3
オキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO32・xH2O)、リン酸(H3PO4)、硝酸コバルト(Co(NO32・6H2O)、及び硝酸ニトロシルルテニウム(Ru(NO)(NO33)が金属前駆体として使用されたことを除き、実施例1と同様の方法にて触媒が製造された。Ru/Co/Zr−P/SiO2の組成は、金属の重量に基づき、Ru0.5重量%/Co20重量%/Zr9.0重量%−P1.0重量%/SiO2[Zr/P=9]であった。前記触媒は、比表面積が231m2/gである。
【0050】
実施例1と同一条件下でFT反応が行われ、約60時間の反応後に定常状態条件が得られ、定常状態での10時間の平均値が得られ、その値を表1に表す。
【0051】
実施例4
オキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO32・xH2O)、リン酸(H3PO4)、及び硝酸コバルト(Co(NO32・6H2O)が金属前駆体として使用されたことを除き、実施例1と同様の方法にて触媒が製造された。Co/Zr−P/SiO2の組成は、金属の重量に基づき、Co20重量%/Zr9.9重量%−P0.1重量%/SiO2[Zr/P=99]であった。前記触媒は、比表面積が206m2/gである。
【0052】
実施例1と同一条件下でFT反応が行われ、約60時間の反応後に定常状態条件が得られ、定常状態での10時間の平均値が得られ、その値を表1に表す。
【0053】
実施例5
オキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO32・xH2O)、リン酸(H3PO4)、硝酸コバルト(Co(NO32・6H2O)、及び硝酸ニトロシルルテニウム(Ru(NO)(NO33)が金属前駆体として使用されたことを除き、実施例1と同様の方法にて触媒が製造された。Ru/Co/Zr−P/SiO2の組成は、金属の重量に基づき、Ru0.5重量%/Co20重量%/Zr5.0重量%−P1.0重量%/SiO2[Zr/P=5]であった。前記触媒は、比表面積が245m2/gである。
【0054】
実施例1と同一条件下でFT反応が行われ、約60時間の反応後に定常状態条件が得られ、定常状態での10時間の平均値が得られ、その値を表1に表す。
【0055】
実施例6
オキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO32・xH2O)、リン酸(H3PO4)、硝酸コバルト(Co(NO32・6H2O)、及び硝酸ニトロシルルテニウム(Ru(NO)(NO33)が金属前駆体として使用されたことを除き、実施例1と同様の方法にて触媒が製造された。Ru/Co/Zr−P/SiO2の組成は、金属の重量に基づき、Ru0.5重量%/Co20重量%/Zr4.8重量%−P0.2重量%/SiO2[Zr/P=24]であった。前記触媒は、比表面積が240m2/gである。
【0056】
実施例1と同一条件下でFT反応が行われ、約60時間の反応後に定常状態条件が得られ、定常状態での10時間の平均値が得られ、その値を表1に表す。
【0057】
実施例7
オキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO32・xH2O)、リン酸(H3PO4)、硝酸コバルト(Co(NO32・6H2O)、及び硝酸ニトロシルルテニウム(Ru(NO)(NO33)が金属前駆体として使用されたことを除き、実施例1と同様の方法にて触媒が製造された。Ru/Co/Zr−P/SiO2の組成は、金属の重量に基づき、Ru0.5重量%/Co20重量%/Zr9.9重量%−P0.1重量%/SiO2[Zr/P=99]であった。前記触媒は、比表面積が219m2/gである。
【0058】
温度が240℃であることを除いて実施例1と同一条件下でFT反応が行われ、約60時間の反応後に定常状態条件が得られ、定常状態での10時間の平均値が得られ、その値を表1に表す。
【0059】
実施例8
オキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO32・xH2O)、リン酸(H3PO4)、及び硝酸コバルト(Co(NO32・6H2O)が金属前駆体として使用されたことを除き、実施例4と同様の方法にて触媒が製造された。Co/Zr−P/SiO2の組成は、金属の重量に基づき、Co20重量%/Zr9.9重量%−P0.1重量%/SiO2[Zr/P=99]であった。前記触媒は、比表面積が206m2/gである。
【0060】
温度が240℃であることを除いて実施例1と同一条件下でFT反応が行われ、約60時間の反応後に定常状態条件が得られ、定常状態での10時間の平均値が得られ、その値を表1に表す。
【0061】
実施例9
オキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO32・xH2O)、リン酸(H3PO4)、硝酸コバルト(Co(NO32・6H2O)、及び硝酸ニトロシルルテニウム(Ru(NO)(NO33)が金属前駆体として使用されたことを除き、実施例1と同様の方法にて触媒が製造された。Ru/Co/Zr−P/SiO2の組成は、金属の重量に基づき、Ru0.5重量%/Co20重量%/Zr19.8重量%−P0.2重量%/SiO2[Zr/P=99]であった。前記触媒は、比表面積が215m2/gである。
【0062】
実施例1と同一条件下でFT反応が行われ、約60時間の反応後に定常状態条件が得られ、定常状態での10時間の平均値が得られ、その値を表1に表す。
【0063】
実施例10
オキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO32・xH2O)、リン酸(H3PO4)、硝酸コバルト(Co(NO32・6H2O)、及び硝酸ニトロシルルテニウム(Ru(NO)(NO33)が金属前駆体として使用されたことを除き、実施例1と同様の方法にて触媒が製造された。Ru/Co/Zr−P/SiO2の組成は、金属の重量に基づき、Ru0.5重量%/Co20重量%/Zr28.5重量%−P1.5重量%/SiO2[Zr/P=19]であった。前記触媒は、比表面積が215m2/gである。
【0064】
実施例1と同一条件下でFT反応が行われ、約60時間の反応後に定常状態条件が得られ、定常状態での10時間の平均値が得られ、その値を表1に表す。
【0065】
実施例11
オキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO32・xH2O)、リン酸(H3PO4)、硝酸コバルト(Co(NO32・6H2O)、及び硝酸ニトロシルルテニウム(Ru(NO)(NO33)が金属前駆体として使用されたことを除き、実施例1と同様の方法にて触媒が製造された。Ru/Co/Zr−P/SiO2の組成は、金属の重量に基づき、Ru0.5重量%/Co20重量%/Zr1.9重量%−P0.1重量%/SiO2[Zr/P=19]であった。前記触媒は、比表面積が224m2/gである。
【0066】
実施例1と同一条件下でFT反応が行われ、約60時間の反応後に定常状態条件が得られ、定常状態での10時間の平均値が得られ、その値を表1に表す。
【0067】
実施例12
オキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO32・xH2O)、リン酸(H3PO4)、硝酸コバルト(Co(NO32・6H2O)、及び硝酸ニトロシルルテニウム(Ru(NO)(NO33)が金属前駆体として使用されたことを除き、実施例2と同様の方法にて触媒が製造された。Ru/Co/Zr−P/SiO2の組成は、金属の重量に基づき、Ru0.5重量%/Co20重量%/Zr9.5重量%−P0.5重量%/SiO2[Zr/P=19]であった。前記触媒は、比表面積が232m2/gである。
【0068】
触媒5.0gを水素雰囲気(体積比5のH2/He)下で400℃で12時間還元して、反応前に無気条件下でスラリー反応器に移送した。その後、スクアラン300mLを溶媒として使用し、還元された触媒5.0gを使用したことを除いては実施例2と同様の方法で、次の反応条件[反応温度=220℃、反応圧力=20kg/cm2、空間速度=2000L/kgcat/hr]下で、一酸化炭素、水素、二酸化炭素、及びアルゴン(内部標準)の反応物を28.4:57.3:9.3:5の固定モル比でスラリー反応器に注入して、FT反応を行った。約60時間の反応後に定常状態条件が得られ、定常状態での10時間の平均値が得られ、その値を表1に表す。
【0069】
比較例1
オキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO32・xH2O)、硝酸コバルト(Co(NO32・6H2O)、及び硝酸ニトロシルルテニウム(Ru(NO)(NO33)が金属前駆体として使用されたことを除き、実施例1と同様の方法にて触媒が製造された。Ru−Co/Zr−SiO2の組成は、金属の重量に基づき、Ru0.5重量%/Co20重量%/Zr10重量%/SiO2であった。前記触媒は、比表面積が217m2/gであり、平均細孔体積が0.65cm3/gであり、平均細孔サイズが10.6nmである。
【0070】
反応が行われる前に、製造された触媒0.3gを1/2インチステンレス製固定床反応器に置き、水素雰囲気(5vol%のH2/He)下で400℃で12時間還元して反応させる。その後、次の反応条件[反応温度=220℃、反応圧力=20kg/cm2、空間速度=2000L/kgcat/hr]下で、一酸化炭素、水素、二酸化炭素、及びアルゴン(内部標準)の反応物を28.4:57.3:9.3:5の固定モル比で反応器に注入してFT反応を行った。約60時間の反応後に定常状態条件が得られ、定常状態での10時間の平均値が得られ、その値を表1に表す。
【0071】
比較例2
オキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO32・xH2O)、リン酸(H3PO4)、硝酸コバルト(Co(NO32・6H2O)、及び硝酸ニトロシルルテニウム(Ru(NO)(NO33)が金属前駆体として使用されたことを除き、実施例1と同様の方法にて触媒が製造された。Ru/Co/Zr−P/SiO2の組成は、金属の重量に基づき、Ru0.5重量%/Co20重量%/Zr8.0重量%−P2.0重量%/SiO2[Zr/P=4]であった。前記触媒は、比表面積が225m2/gである。
【0072】
実施例1と同一条件下でFT反応が行われ、約60時間の反応後に定常状態条件が得られ、定常状態での10時間の平均値が得られ、その値を表1に表す。
【0073】
比較例3
オキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO32・xH2O)、リン酸(H3PO4)、硝酸コバルト(Co(NO32・6H2O)、及び硝酸ニトロシルルテニウム(Ru(NO)(NO33)が金属前駆体として使用されたことを除き、実施例1と同様の方法にて触媒が製造された。Ru/Co/Zr−P/SiO2の組成は、金属の重量に基づき、Ru0.5重量%/Co20重量%/Zr7.0重量%−P3.0重量%/SiO2[Zr/P=2.3]であった。前記触媒は、比表面積が221m2/gである。
【0074】
実施例1と同一条件下でFT反応が行われ、約60時間の反応後に定常状態条件が得られ、定常状態での10時間の平均値が得られ、その値を表1に表す。
【0075】
比較例4
オキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO32・xH2O)、リン酸(H3PO4)、硝酸コバルト(Co(NO32・6H2O)、及び硝酸ニトロシルルテニウム(Ru(NO)(NO33)が金属前駆体として使用されたことを除き、実施例1と同様の方法にて触媒が製造された。Ru/Co/Zr−P/SiO2の組成は、金属の重量に基づき、Ru0.5重量%/Co20重量%/Zr5.0重量%−P5.0重量%/SiO2[Zr/P=1]であった。前記触媒は、比表面積が218m2/gである。
【0076】
実施例1と同一条件下でFT反応が行われ、約60時間の反応後に定常状態条件が得られ、定常状態での10時間の平均値が得られ、その値を表1に表す。
【0077】
比較例5
オキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO32・xH2O)、リン酸(H3PO4)、硝酸コバルト(Co(NO32・6H2O)、及び硝酸ニトロシルルテニウム(Ru(NO)(NO33)が金属前駆体として使用されたことを除き、実施例2と同様の方法にて触媒が製造された。Ru/Co/Zr−P/SiO2の組成は、金属の重量に基づき、Ru0.5重量%/Co20重量%/Zr0.95重量%−P0.05重量%/SiO2[Zr/P=19]であった。前記触媒は、比表面積が258m2/gである。
【0078】
実施例1と同一条件下でFT反応が行われ、約60時間の反応後に定常状態条件が得られ、定常状態での10時間の平均値が得られ、その値を表1に表す。
【0079】
比較例6
オキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO32・xH2O)、リン酸(H3PO4)、硝酸コバルト(Co(NO32・6H2O)、及び硝酸ニトロシルルテニウム(Ru(NO)(NO33)が金属前駆体として使用されたことを除き、実施例2と同様の方法にて触媒が製造された。Ru/Co/Zr−P/SiO2の組成は、金属の重量に基づき、Ru0.5重量%/Co20重量%/Zr38.0重量%−P2.0重量%/SiO2[Zr/P=19]であった。前記触媒は、比表面積が182m2/gである。
【0080】
実施例1と同一条件下でFT反応が行われ、約60時間の反応後に定常状態条件が得られ、定常状態での10時間の平均値が得られ、その値を表1に表す。
【0081】
比較例7
比表面積が200m2/gであるAl23(Catapal B)が支持体として使用され、オキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO32・xH2O)、リン酸(H3PO4)、硝酸コバルト(Co(NO32・6H2O)、及び硝酸ニトロシルルテニウム(Ru(NO)(NO33)が金属前駆体として使用されたことを除き、実施例2と同様の方法にて触媒が製造された。Ru/Co/Zr−P/Al23の組成は、金属の重量に基づき、Ru0.5重量%/Co20重量%/Zr9.50重量%−P0.50重量%/Al23(Catapal B)[Zr/P=19]であった。前記触媒は、比表面積が147m2/gであり、平均細孔体積が0.29cm3/gであり、平均細孔サイズが7.7nmである。
【0082】
実施例1と同一条件下でFT反応が行われ、約60時間の反応後に定常状態条件が得られ、定常状態での10時間の平均値が得られ、その値を表1に表す。
【0083】
比較例8
比表面積が80m2/gであるTiO2が支持体として使用され、オキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO32・xH2O)、リン酸(H3PO4)、硝酸コバルト(Co(NO32・6H2O)、及び硝酸ニトロシルルテニウム(Ru(NO)(NO33)が金属前駆体として使用されたことを除き、実施例2と同様の方法にて触媒が製造された。Ru/Co/Zr−P/TiO2の組成は、金属の重量に基づき、Ru0.5重量%/Co20重量%/Zr9.50重量%−P0.50重量%/TiO2[Zr/P=19]であった。前記触媒は、比表面積が52m2/gであり、平均細孔体積が0.23cm3/gであり、平均細孔サイズが19.5nmである。
【0084】
温度が24℃であることを除いて実施例1と同一条件下でFT反応が行われ、約60時間の反応後に定常状態条件が得られ、定常状態での10時間の平均値が得られ、その値を表1に表す。
【0085】
【表1】

【0086】
表1にみられるように、本発明の実施例1〜3、及び5〜12により製造されたルテニウム/コバルト/ジルコニウム−リン/シリカ触媒を使用して得たC5以上の液体炭化水素の収率は、比較例1〜8により製造された触媒を使用して得たものに比べて優れていた。
【0087】
更に、ルテニウムを添加しなかった実施例4と比較して、本発明の実施例1〜3により製造されたコバルト/ジルコニウム−リン/シリカ触媒に助触媒としてルテニウムを添加することで液体炭化水素(C5以上)の収率は増加した。240℃でも、実施例7、及び8によるメタンの選択性の増加に比べて、液体炭化水素(C5以上)の収率の増加が高かった。
【0088】
比較例2〜4により製造された触媒にルテニウムを添加したが、Zr/Pの重量比が5〜100の範囲内ではないため液体炭化水素(C5以上)の収率が減少した。それ故、Zr/P比がZr、及びPがシリカ表面を適切に処理するために使用される望ましい範囲内である場合にのみ所望する触媒活性が得られることが分かった。
【0089】
更に、ジルコニウム−リン/シリカの重量%が2〜30の範囲内ではなかったため、比較例5と6では所望する触媒活性が得られなかった。
【0090】
比較例7、及び8の場合、アルミナ支持体、及びチタニウム支持体が、シリカ支持体の代わりにルテニウム/コバルト/ジルコニウム−リン/支持体触媒に使用された。比較例7、及び8の結果から分かるように、Al23の細孔サイズが小さすぎるか、TiO2の比表面積が小さすぎると、FT反応の活性は著しく増加しなかった。
【0091】
本発明の実施例12により製造されたルテニウム/コバルト/ジルコニウム−リン/シリカ触媒は、スラリー相反応での活性が優れ、液体炭化水素(C5以上)の選択性が高く、固定床反応器と比較して非活性化が遅かった。例えば、実施例2の固定床反応器ではCO転換に50時間以上かかり、10%減少する一方、実施例12のスラリー反応器では100時間後に45%以上のCO転換率が維持された。
【0092】
一方、図1は、実施例2、及び比較例1により製造された触媒を使用してFT反応が行われた時の反応時間によるCO転換率を表している。実施例2により製造されたZr/P重量比が19である触媒が使用されたときにFT反応活性が高かった。一方、比較例1(Zr/P=8)により製造されたリンを使用しなかった触媒を使用した時、FT反応の活性は最初のうちは高かったが、20時間後には急激に減少した。その結果、ジルコニウム(Zr)、及びリン(P)の重量比を適切に調節することで、触媒の非活性化は抑制され得る。従って、触媒の長期安定性が増加する。
【0093】
図2は、実施例1〜3、及び比較例1と2により製造された触媒を使用してFT反応が行われる時の液体炭化水素の収率、CO転換率、及びメタンの選択性を支持体に含有されたZr/P重量比の変動とともにを表している。Zr/Pの重量比が5〜100の範囲の時、FT反応活性が高かった。一方、Zr/Pの重量比が5未満であるか、リンが使用されなかったとき(Zr/P=8)、FT反応活性は減少した。従って、所望するFT反応活性を得るために、Zr/Pの重量比は所望範囲に調節される必要がある。
【0094】
図3は、実施例2、及び比較例2により製造された触媒内のFT反応前後のコバルト粒子の透過電子顕微鏡(TEM)のイメージである。
【0095】
実施例2のTEMイメージに見られるように、活性が安定した触媒の場合では、FT反応前後にコバルト粒子がほとんど焼結されなかった。一方、比較例2のTEMイメージに見られるように、活性後に安定した触媒内のFT反応後のコバルト粒子は著しく増大した。
【0096】
当業者にとって、本発明の精神または範囲から逸脱することなく多くの改変、及び変更が可能であることは明らかである。ここに開示する本発明の明細書、及び実施から本発明のその他の実施形態は明らかである。明細書、及び実施例は次の特許請求の範囲に表される本発明の真の範囲、及び精神に基づくただの例と見なされることを目的としている。
【産業上の利用可能性】
【0097】
最近の急激な石油価格の上昇の解決策として注目を集めているGTL技術の開発において、FT合成用触媒の改善はGTL技術の競争力向上と直結している。特に、FT反応用触媒の改善はGTL工程での熱効率、及び炭素利用率の向上を可能とし、FT反応工程の系統的設計を最適化することができる。その結果、CO転換率が高く、液体炭化水素の生成が安定し、ジルコニウム、及びリンで処理されたシリカ支持体を使用して非活性化が減少したFT反応用触媒を製造することにより、メタンの選択性が低い、競争力のあるGTL工程、及び液体炭化水素(C5以上)の安定した生成を開発することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分としてコバルトが支持体に担持されるフィッシャー・トロプシュ反応用コバルト/ジルコニウム−リン/シリカ触媒であって、
前記支持体は比表面積が200〜800m2/gである多孔性シリカの表面にジルコニウム(Zr)、及びリン(P)が同時に含有するジルコニウム−リン/シリカ支持体であり、
前記ジルコニウム−リンの量はシリカに対して2〜30重量%の範囲であり、前記ジルコニウムの量はリンに対して5〜100重量%の範囲であり、前記コバルト(Co)の量はジルコニウム−リン/シリカ支持体に対して10〜40重量%の範囲であるフィッシャー・トロプシュ反応用コバルト/ジルコニウム−リン/シリカ触媒。
【請求項2】
Ru、Pt、及びRhからなる群から選択される助触媒をコバルト/ジルコニウム−リン/シリカ触媒に対して0.05〜2重量%含有する、請求項1記載のコバルト/ジルコニウム−リン/シリカ触媒。
【請求項3】
比表面積が190〜300m2/gである、請求項1記載のコバルト/ジルコニウム−リン/シリカ触媒。
【請求項4】
フィッシャー・トロプシュ反応用コバルト/ジルコニウム−リン/シリカ触媒の製造方法であって、
比表面積が200〜800m2/gである多孔性シリカにジルコニウム前駆体とリン前駆体とを同時に含有させ、100〜200℃の温度で乾燥した後、300〜800℃の温度で焼成してジルコニウム(Zr)−リン(P)/シリカ支持体を製造する段階と、
前記ジルコニウム−リン/シリカ支持体にコバルト前駆体を担持させ、100〜200℃の温度で乾燥した後、100〜700℃の温度で焼成してコバルト/ジルコニウム−リン/シリカ触媒を製造する段階と、
を有するフィッシャー・トロプシュ反応用コバルト/ジルコニウム−リン/シリカ触媒の製造方法。
【請求項5】
前記担持工程は、含浸法または共沈法により行われる、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記共沈法は、pHが7〜8の範囲に維持されるように、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、及びアンモニア水からなる群から選択される塩基性沈殿剤を使用して行われる、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記ジルコニウム前駆体は、オキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO32・xH2O)、オキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl2・xH2O)、硫酸ジルコニウム(Zr(SO42)、及び塩化ジルコニウム(ZrCl4)からなる群から選択される単一化合物、またはこれらの化合物のうち少なくとも2種の化合物の混合物である、請求項4記載の方法。
【請求項8】
前記リン前駆体は、リン酸(H3PO4)、オキシ塩化リン(POCl3)、五酸化リン(P25)、及び三塩化リン(PCl3)からなる群から選択される単一化合物、またはこれらの化合物のうち少なくとも2種の混合物である、請求項4記載の方法。
【請求項9】
前記ジルコニウム−リンの量はシリカに対して2〜30重量%の範囲である、請求項4記載の方法。
【請求項10】
前記ジルコニウムの量はリンに対して5〜100重量%の範囲である、請求項4記載の方法。
【請求項11】
前記コバルト前駆体は、硝酸塩、酢酸塩、及び塩化物からなる群から選択される単一化合物、またはこれらの化合物のうち少なくとも2種の混合物である、請求項4記載の方法。
【請求項12】
前記コバルトの量はジルコニウム−リン/シリカ支持体に対して10〜40重量%の範囲である、請求項4記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−517426(P2011−517426A)
【公表日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501710(P2011−501710)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【国際出願番号】PCT/KR2009/000734
【国際公開番号】WO2009/119977
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(510256159)コリア リサーチ インスティテュート オブ ケミカル テクノロジー (4)
【出願人】(510256160)デリム インダストリアル カンパニー リミテッド (1)
【出願人】(509300751)ドゥサン メカテック カンパニー リミテッド (3)
【出願人】(510256171)コリア ナショナル オイル コーポレイション (1)
【出願人】(509300717)ヒュンダイ エンジニアリング カンパニー リミテッド (4)
【出願人】(510256182)エスケイ エナジー カンパニー リミテッド (2)
【出願人】(502144914)コーリア ガス コーポレーション (3)
【氏名又は名称原語表記】KOREA GAS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】215, Jeongja−dong, Bundang−ku Seongnam−si, Kyeonggi−do 463−754,                            The Republic of Korea
【Fターム(参考)】