説明

フィラメント糸の製造装置および製造方法

【課題】糸の太さ斑や物性斑等の均斉性や強度・伸度等の品質に優れた単糸細繊度・多フィラメントである、熱可塑性ポリマーから構成されるフィラメント糸を製造することが可能なフィラメント糸の製造装置および製造方法を提供すること。
【解決手段】複数の吐出孔が環状に配列された紡糸口金からフィラメント糸を紡出し、環状のシール気流吹き出し面を設けたシール気流吹き出し手段からシール気流を吹き付け紡糸口金をシールし、上記シール気流吹き出し手段よりもフィラメント糸の走行経路方向の下流側において、環状の空気流吹き出し面を設けた内吹き環状冷却手段から、上記シール気流より低温の空気流を吹き付けてフィラメント糸を冷却し、フィラメント糸の走行経路の内側の領域において、フィラメント糸の走行経路方向の雰囲気温度勾配が最大となる位置が、環状冷却手段の空気流吹き出し面のフィラメント糸の走行経路方向の上流側の上端と、紡糸口金との間の位置となることを特徴とするフィラメント糸の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラメント糸の製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルやポリアミド等の熱可塑性ポリマーから構成されるフィラメント糸は、一般に溶融紡糸、即ち、紡糸パックに供給された溶融した熱可塑性ポリマーを紡糸パックに装備された紡糸口金からフィラメント糸として紡出し、空気流により冷却、固化させた後、油剤付与等を施し、必要に応じ同工程あるいは別工程で熱処理や延伸等を行い、巻き取る等の過程を経て製造される。
【0003】
上記したような熱可塑性ポリマーから構成されるフィラメント糸は、衣料用分野、産業用分野等の非常に幅広い分野で活用され、近年は、フィラメント糸に対するニーズが多様化し、様々な機能性を付与した特品フィラメント糸が数多く開発され、上市されるようになった。例えば、衣料用分野では、ソフトな風合い等を付与する狙いで単糸細繊度化・多フィラメント化や、吸水・速乾性の向上や光沢感を変更する等の狙いで単糸異形断面化、また、鮮明性に優れた染色の実現等の新たな機能性付与の狙いでポリマーを改質する等の改良が行われている。また、産業用分野では、同様に単糸細繊度化・多フィラメント化や単糸異形断面化の他、高強度化、高弾性化や、耐候性、難燃性等の新たな機能性付与を狙ったポリマーの改質等の改良が行われている。更に最近は、上記したような機能性を複数組み合わせて付与する試みも盛んに行われ始め、多品種少量生産のニーズが高まっている。
【0004】
しかしながら、上記したような特品フィラメント糸は優れた機能性を有する高機能品種である一方、紡糸が極めて難しい難紡糸品種でもある。例えば、単糸細繊度化・多フィラメント化すると、溶融紡糸で実施される冷却を、フィラメント糸の各単糸に対して均一に行うことが困難となり、冷却斑や糸揺れ等が発生し、糸の太さ斑等が極めて悪化する問題が挙げられ、品質向上や生産性向上、延いては拡販や用途拡大の妨げとなっている。
【0005】
そこで従来から、これら問題を解決するため、冷却手段等の改良を試みた様々な方法が提案されている。
例えば溶融紡糸における冷却手段としては、フィラメント糸の各単糸を紡出する吐出孔を円周状に配列し、更に円筒状の空気流吹き出し部を設けて、フィラメント糸を外周側から空気流を吹き付けて冷却する内吹き環状冷却手段が知られている。本発明者らの知見によれば、内吹き環状冷却手段は、円周状に配列されたフィラメント糸の外周側から空気流を吹き付けて冷却するため、空気流はフィラメント糸の内周側に向かって合流、増速されるため、冷却能力が高く多品種対応等の汎用性に富み、またフィラメント糸の外周側に空気流吹き出し部が配置されるため、現場雰囲気の外乱を受け難い。従って、内吹き環状冷却手段は、均一冷却、冷却能力、汎用性等に優れたポテンシャルの高い冷却手段と考えられるのである。
【0006】
しかしながら、上記したような優れた機能性を有する特品フィラメント糸を製造するにあたっては、冷却手段に内吹き環状冷却手段を用いるだけでは不足があった。すなわち、各品種のフィラメント糸の単糸数や単糸繊度、紡糸速度、ポリマー物性等に応じて、冷却手段から吹き出される空気流の風速、および風量等の冷却条件を各品種に合わせて正確に適正化する必要があった。特に、多品種少量生産のニーズの高まりに応じて頻度が増加している品種切替時には、これら冷却条件を設定・管理する作業において、作業者が測定器を使用して空気流の風速や風量等を測定して冷却条件を管理する方法では、作業者による測定誤差が発生するといった問題と共に、多くの作業者と時間を必要とするため、作業性良く冷却手段から吹き出される空気流の風速、および風量等の冷却条件を各品種毎に設定・管理することが困難であるといった問題があった。
【0007】
一方、溶融紡糸を用いたフィラメント糸の製造において、操業性の大きな問題として、紡糸口金の汚れの問題がある。すなわち、ポリマーから発生するモノマー、オリゴマーの揮発性の低分子物が紡糸口金面に付着し、酸化劣化により炭化し、堆積するため紡糸口金の汚れを起こすという問題である。この問題は溶融紡糸を用いたフィラメント糸の製造に付きまとう大きな問題であり、上記したような優れた機能性を有する特品フィラメント糸の製造においても大きな問題となっていた。
【0008】
これらの問題に対して、例えば特許文献1においては、各紡糸筒内の所定位置に圧力測定器を設け、測定値と設定値を対比し許容範囲を外れた場合に制御装置から出力される異常信号に基いて流量調節弁の開口量を制御することによって、各紡糸筒内の冷却用気体の流速の状態を自動的に所定の間隔でもって正確に測定し、流速を一定に制御することができることが記載されている。
【0009】
また、例えば特許文献2においては、環状部材から成るシール環を紡糸口金ホルダーの下端部に密着せしめて、または一体化せしめて設け、紡糸口金直下域を不活性ガスでシールするようにした溶融紡糸装置であって、該シール環が0.1≦L1(シール環厚み)/ D1(シール環内径)≦0.4の関係を満足し、その内壁面に孔間距離15mm以下に配列させた不活性ガス噴出口を有し、シール環内壁との間に上方が開口された巾0.5mm〜5mmの環状空隙部が形成されるように設けたスリット板を具備して成る不活性ガスシール方法が提案されており、シール環厚みを厚くする事無く、効果的に紡糸口金面の汚れを抑制することが可能となり、フィラメントの冷却が遅れること無く長時間安定な溶融紡糸が可能となることが記載されている。
【0010】
しかしながら、本発明者らの知見によれば、内吹き環状冷却手段においては、フィラメント糸の外周側が空気流吹き出し部により半密閉されており、紡糸口金直下の圧力が大気圧に対して高く保たれ、更にはフィラメント糸の単糸数や単糸繊度、紡糸速度、ポリマー物性等の紡糸条件によっても紡糸口金直下の圧力が変化するため、内吹き環状冷却手段に特許文献2で提案されたようなシール気流吹き出し手段(特許文献2では不活性ガスを用いて紡糸口金面直下をシールする方法と記載)を適用した場合には、内吹き環状冷却手段から吹き出される空気流、およびシール気流吹き出し手段から吹き出されるシール気流の風速、および風量等の冷却条件を各品種のフィラメント糸の単糸数や単糸繊度、紡糸速度、ポリマー物性等に応じて設定・管理することが困難であるという問題があった。本発明者らの知見によれば、この問題に対して、特許文献1で提案されたような、紡糸筒内の静圧を測定し、流量調節弁の開口量を制御し吹き出し風速を一定に保つことによりフィラメント糸の冷却条件を一定に保つ方法では、内吹き環状冷却手段から吹き出される空気流、およびシール気流吹き出し手段から吹き出されるシール気流それぞれの風速、および風量等を把握することはできるものの、フィラメント糸の冷却において重要となる、空気流とシール気流の適正な供給バランスを見出し、設定・管理することはできなかった。すなわち、例えば空気流の供給量が過剰で、シール気流吹き出し手段から吹き出されるシール気流の供給量が不足している場合には、紡糸口金直下での酸素濃度が抑制された領域を形成できず、上記したような紡糸口金面の汚れを抑制することができない。一方、空気流の供給量が不足しており、シール気流吹き出し手段から吹き出されるシール気流の供給量が過剰な場合には、紡糸口金直下におけるシール気流および空気流の乱れが大きくなるため、フィラメント糸に過度の糸揺れを発生させてしまう。これら何れの場合にも、糸揺れによる製糸安定性の劣化や、各単糸間の冷却斑の増大を引き起こしやすいという問題があった。
【0011】
以上のように、優れた機能性を有する特品フィラメント糸を操業性良く製造する手法は極めて重要であり、従来から様々な手法が提案されているが、各品種毎の冷却条件設定・管理における作業性の問題と、紡糸口金の汚れの問題を同時に解決する手法が無く、優れた機能性を有する特品フィラメント糸の製造の大きな妨げとなってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特公平6−84566号
【特許文献2】特許第4137150号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、上記した問題点を解決し、作業性良好の下、品種切換時の冷却条件を設定し適正に管理でき、かつ、操業性良好の下、紡糸口金直下におけるシール気流および空気流の乱れや、紡糸口金面汚れにより発生する糸切れ、および糸揺れの抑制を両立することにより、糸の太さ斑や物性斑等の均斉性や強度・伸度等の品質に優れた単糸細繊度・多フィラメントである、熱可塑性ポリマーから構成されるフィラメント糸を製造することが可能なフィラメント糸の製造装置および製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明によれば、熱可塑性ポリマーを溶融紡糸し、フィラメント糸を製造する方法であって、以下の(1)〜(6)の要件を満足するフィラメント糸の製造方法が提供される。
(1)複数の吐出孔が環状に配列された紡糸口金から前記フィラメント糸を紡出すること。
(2)前記フィラメント糸の走行経路の外周側に環状のシール気流吹き出し面を設けたシール気流吹き出し手段から内向きにシール気流を吹き付けて前記紡糸口金をシールすること。
(3)前記シール気流吹き出し手段より前記フィラメント糸の走行経路方向の下流側において、前記フィラメント糸の走行経路の外周側に環状の空気流吹き出し面を設けた内吹き環状冷却手段から前記フィラメント糸に内向きに前記シール気流より低温の空気流を吹き付けて前記フィラメント糸を冷却すること。
(4)少なくとも前記紡糸口金から前記内吹き環状冷却手段の前記フィラメント糸の走行経路方向の下流側の下端まで、外部に対して半密閉すること。
(5)前記フィラメント糸の走行経路の内側の領域において、雰囲気温度測定手段により雰囲気温度を測定すること。
(6)前記雰囲気温度測定手段により得られる前記フィラメント糸の走行経路方向の雰囲気温度分布から、前記フィラメント糸の走行経路方向の雰囲気温度の勾配が最大となる位置を算出すること。
(7)前記フィラメント糸の走行経路方向の雰囲気温度の勾配が最大となる位置が、前記内吹き環状冷却手段の空気流吹き出し面の前記フィラメント糸の走行経路方向の上流側の上端と、前記紡糸口金との間の位置となるように、前記シール気流および前記空気流のそれぞれの流量を制御すること。
また、本発明の別の形態によれば、熱可塑性ポリマーを溶融紡糸し、フィラメント糸を製造する装置であって、前記フィラメント糸の各単糸を紡出する複数の吐出孔を環状に配列した紡糸口金と、前記フィラメント糸の走行経路の外周側から内向きにシール気流を吹き付ける環状のシール気流吹き出し面を設けたシール気流吹き出し手段と、前記フィラメント糸の走行経路の外周側から内向きに空気流を吹き付けてフィラメント糸を冷却する環状の空気流吹き出し面を設けた内吹き環状冷却手段とを有するフィラメント糸の製造装置であって、以下の(8)〜(11)の要件を満足するフィラメント糸の製造装置が提供される。
(8)前記内吹き環状冷却手段の前記空気流吹き出し面が、前記シール気流吹き出し手段の前記シール気流吹き出し面より、前記フィラメント糸の走行経路方向の下流側に設けられ、少なくとも前記紡糸口金から前記内吹き環状冷却手段の前記フィラメント糸の走行経路方向の下流側の下端まで、外部に対して半密閉されること。
(9)前記シール気流吹き出し手段の前記シール気流吹き出し面から吹き出される前記シール気流の流量と、前記内吹き環状冷却手段の前記空気流吹き出し面から吹き出される前記空気流の流量をそれぞれ調節することができる流量調節手段をそれぞれ設けること。
(10)前記シール気流吹き出し手段の前記シール気流吹き出し面から吹き出される前記シール気流の温度が、前記内吹き環状冷却手段の前記空気流吹き出し面から吹き出される前記空気流の温度よりも高いこと。
(11)前記フィラメント糸の走行経路の内側の領域に、雰囲気温度を測定する温度測定手段を設けること。
また、本発明の好ましい形態によれば、前記温度測定手段の位置を前記フィラメント糸の走行経路方向に移動させる温度測定位置移動手段を制御する温度測定位置制御手段と、前記温度測定手段により得られる前記フィラメント糸の走行経路方向の雰囲気温度分布から、前記フィラメント糸の走行経路方向の雰囲気温度勾配が最大となる位置を算出する演算手段と、前記雰囲気温度勾配が最大となる位置が、前記内吹き環状冷却手段の空気流吹き出し面の前記フィラメント糸の走行経路方向の上流側の上端と、前記紡糸口金との間の所定の位置に一致するように、前記シール気流吹き出し手段のシール気流吹き出し面から吹き出されるシール気流および前記内吹き環状冷却手段の空気流吹き出し面から吹き出される空気流のそれぞれの流量調節手段を制御する流量制御手段を設ける前記のフィラメント糸の製造装置が提供される。
【0015】
本発明において、「熱可塑性ポリマー」とは、ポリエステルやポリアミド等の熱可塑性ポリマーに限られず、可塑剤を含有したセルロースエステル系熱可塑性ポリマー等も含まれるものとする。
【0016】
本発明において、対象はマルチフィラメント糸であるが、一つの紡糸口金から複数のモノフィラメント糸を紡糸口金から紡出する場合にも、同様の効果が期待できるため、本発明に含まれるものとする。
【0017】
本発明において、「環状に配列したフィラメント糸の各単糸を紡出する複数の吐出孔」とは、紡糸口金の中心からみて最外周に配列される吐出孔の最外周列の円周と、紡糸口金の中心からみて最内周に配列される吐出孔の最内周列の円周に囲まれる輪の領域内にマルチフィラメント糸の各単糸を紡出する吐出孔群が配列されていることを示す。
【0018】
本発明において、「シール気流」とは、主にスチームからなる気流を示すが、スチームのみに限られず、希ガス、窒素等の不活性気体、水分を含む空気等や、それらの混合物も含むものとする。
【0019】
本発明において、「空気流」とは、主に空気からなる気流を示すが、空気のみに限られず、地球上の通常の空気あるいはそれに含まれる酸素等の成分、水分を含む空気、あるいは希ガス、窒素等の不活性気体、スチーム等や、それらの混合物も含むものとする。
【0020】
本発明において、「環状のシール気流吹き出し面」とは、紡糸口金直下にシール気流が流入する気流流路上において、内吹き環状冷却手段の空気流吹き出し面と内径が同程度である面であり、仮想的に定義された面のことをいう。
【0021】
本発明において、「外部に対して半密閉」とは、紡糸口金下面から内吹き環状冷却手段のフィラメント糸の走行経路方向の下流側の下端までは、各部材間において気流の漏れや吸込みが発生しないように、パッキン等のシール材でシールされ、内吹き環状冷却手段のフィラメント糸の走行経路方向の下流側の下端のみが外部に対して開放されている状態のことをいう。なお、紡糸口金下面から内吹き環状冷却手段のフィラメント糸の走行経路方向の下流側の下端までは、各部材間において気流の漏れや吸込みが発生しないようにされていればよく、わずかな隙間や孔が存在する場合も含まれるものとする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、以下に説明するとおり、作業性良好の下、品種切換時の冷却条件を設定し適正に管理でき、かつ、操業性良好の下、紡糸口金直下におけるシール気流および空気流の乱れや、紡糸口金面汚れにより発生する糸切れ、および糸揺れの抑制を両立することにより、糸の太さ斑や物性斑等の均斉性や強度・伸度等の品質に優れた単糸細繊度・多フィラメントである、熱可塑性ポリマーから構成されるフィラメント糸を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態の好ましい溶融紡糸の構成の一例を模式的に例示した概略図である。
【図2(a)】本実施形態の一実施例に係る紡糸口金周辺の拡大図および好ましい流れの概略図である。
【図2(b)】本実施形態の一実施例に係る紡糸口金周辺の拡大図および好ましい流れの概略図である。
【図3】従来用いられる溶融紡糸の構成の一例を模式的に例示した、フィラメント糸の走行経路方向の断面の概略図および好ましい流れの形態の一例である。
【図4】従来用いられる溶融紡糸の構成の一例を模式的に例示した、フィラメント糸の走行経路方向の断面の概略図および好ましくない流れの形態の一例である。
【図5】従来用いられる溶融紡糸の構成の一例を模式的に例示した、フィラメント糸の走行経路方向の断面の概略図および好ましくない流れの形態の一例である。
【図6】紡糸口金の下面からの距離に対して、フィラメント糸の走行経路の内側の領域における圧力分布の一例を模式的に例示した概念図である。
【図7】紡糸口金の下面からの距離に対して、フィラメント糸の走行経路の内側の領域における雰囲気温度分布の一例を模式的に例示した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の最良の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細を説明する。
【0025】
図1は本実施形態の好ましい溶融紡糸の構成の一例を模式的に例示した概略図である。また、図2(a)、図2(b)は本実施形態の一実施例に係る紡糸口金周辺の拡大図および好ましい流れの概略図である。
【0026】
図3は従来用いられる溶融紡糸の構成の一例を模式的に例示した、フィラメント糸の走行経路方向の断面の概略図および好ましい流れの形態の一例である。
【0027】
図4、図5は従来用いられる溶融紡糸の構成の一例を模式的に例示した、フィラメント糸の走行経路方向の断面の概略図および好ましくない流れの形態の一例である。
【0028】
図6、図7は紡糸口金の下面からの距離に対して、フィラメント糸の走行経路の内側の領域における圧力および雰囲気温度分布の一例を模式的に例示した概念図である。
【0029】
図1〜図5において、1は紡糸口金、2は紡糸パック、3はスピンブロック、4はシール気流吹き出し手段、5は均圧室、6はシール気流吹き出し面、7はシール気流吹き出し面から吹き出されるシール気流、8は加熱装置や加熱筒、9は内吹き環状冷却手段、10は空気流供給口、11は気流室、12は空気流吹き出し部、13は環状の空気流吹き出し面(空気流吹き出し部12の空気流が吹き出されるフィラメント糸側の面)、14は空気流吹き出し面から吹き出される空気流、15はフィラメント糸、16は糸油剤付与・集束・ガイド・案内等の手段、17は糸引取手段、18は糸巻取手段、19は温度測定手段、20は測定位置移動手段である。また、QTDは冷却開始距離である。
【0030】
図1において、紡糸口金1より紡出されたフィラメント糸15は、シール気流吹き出し手段4に設けられた均圧室5、シール気流吹き出し面6を経て吹き出されたシール気流14を吹き付けられた後、内吹き環状冷却手段9に設けられた空気流供給口10、気流室11、空気流吹き出し部12を経て、空気流吹き出し面13から吹き出された空気流14により冷却されて、固化した後、糸油剤付与・集束・ガイド・案内等の手段16、糸引取手段17を経て、糸巻取手段18によりパッケージとして巻き取られる。また、巻き取られたフィラメント糸15は、この後、必要に応じ、図示しない別工程において熱処理や延伸等の処理が施される。
【0031】
なお、図1〜図5において、フィラメント糸を構成する熱可塑性ポリマーを供給する押出機やポンプ、フィルター配管等や、紡糸口金に穿設される吐出孔等の図示をしていないが、無論、設けられても良い。また、紡糸パックを加熱・保温する紡糸パック加熱器や断熱部材、保温部材等や、空気流およびシール気流を供給するファンやブロワ等の気流発生手段、気流配管、気流フィルター、空気流およびシール気流の成分や温度、湿度、流速、流量、流れ方向等やそれらの分布等の気流調整手段等の図示をしていないが、設けられても良い。また、一般に溶融紡糸において、現場雰囲気等の外乱影響を防止する等の狙いから、紡糸パック、スピンブロック、冷却手段や、フィラメント糸の高強力化等を狙って徐冷等の目的で設けられる加熱装置や加熱筒、保温筒等の周辺でシールが行われる場合が多いが、これも図1〜図5では図示をしていないが、行われても良い。
また、図1〜図5において、図示されていない断熱部材や保温部材、加熱部材や冷却部材、加熱手段や冷却手段、温度等の計測手段、加熱装置や加熱筒、保温筒等、糸交絡手段や、加熱ローラーや加熱チューブ等の糸加熱手段、糸加湿手段、糸リラックス手段、糸道ダクト、延伸ローラー等の糸延伸手段、サクションガン等の糸吸引手段、フィラメント糸を気流で送り出す糸送出手段、コンベヤ等の糸搬送手段、冷却手段を移動させる移動手段等や、あるいはフィラメント糸から発生するモノマー等を吸引除去するモノマー吸引手段等が単数あるいは複数あるいは複数種設けられても良い。なお、本実施形態において、「固化」とは、熱可塑性ポリマーから構成されるフィラメント糸やその各単糸がガラス転移温度以下となった状態を示すものとする。また、「フィラメント糸の走行経路方向の上流側」とは、フィラメント糸の走行経路からみて、紡糸口金側のことをいい、「フィラメント糸の走行経路方向の下流側」とは、フィラメント糸の走行経路からみて、糸油剤付与・集束・ガイド・案内等の手段側のことをいう。
【0032】
次に本発明の第1の実施形態について説明する。本発明の第1の実施形態は、例えば図1、図2(a)に示すように、熱可塑性ポリマーを溶融紡糸し、フィラメント糸を製造する方法であって、複数の吐出孔が環状に配列された紡糸口金からフィラメント糸を紡出し、環状のシール気流吹き出し面を設けたシール気流吹き出し手段から、フィラメント糸の走行経路の外周側から内向きにシール気流を吹き付け紡糸口金をシールし、上記シール気流吹き出し手段よりもフィラメント糸の走行経路方向の下流側において、環状の空気流吹き出し面を設けた内吹き環状冷却手段から、フィラメント糸の走行経路の外周側から内向きに、上記シール気流より低温の空気流を吹き付けてフィラメント糸を冷却し、フィラメント糸の走行経路の内側の領域において、フィラメント糸の走行経路方向の雰囲気温度勾配が最大となる位置が、環状冷却手段の空気流吹き出し面のフィラメント糸の走行経路方向の上流側の上端と、紡糸口金との間の位置となることを特徴とするフィラメント糸の製造方法である。
【0033】
この本発明の第1の実施形態の特長や効果等について説明する。
【0034】
本発明者らの紡糸テストや数値解析等による鋭意検討の結果、空気流とシール気流の供給量、および供給バランスに応じて、紡糸口金直下でそれぞれの気流が形成する渦の衝突位置が変化し、この渦の衝突位置と、フィラメント糸周りの気流の乱れとの相関が極めて大きいことを見出した。これにより、渦の衝突位置を観察することによって、フィラメント糸周りの気流の乱れ、すなわち渦を形成する気流の風速分布や渦の形態等の経時的な変動が少ない安定的な渦を形成することができれば、背景技術で記載したような各品種毎の冷却条件設定・管理における作業性の問題と、紡糸口金の汚れの問題を同時に解決できる見通しが得られる。
【0035】
これらについて図面を参照しながら詳細を説明する。空気流とシール気流の供給量、および供給バランスが適正である場合には、空気流およびシール気流により、紡糸口金から吐出された直後のフィラメント糸に過度の糸揺れを発生させることはなく、例えば図3に示すような安定的な渦を形成し、これによって紡糸口金直下での酸素濃度が低減され、酸化物発生を抑制でき、また紡糸口金直下での雰囲気温度を適正に維持することができるため、紡糸口金下面の温度低下や温度斑の発生を抑制することができる。
【0036】
しかしながら、例えば図4に示すように、空気流の供給量が過剰で、シール気流吹き出し手段から吹き出されるシール気流の供給量が不足している場合には、紡糸口金直下での酸素濃度が十分に抑制された領域を形成できず、シール気流の供給量が更に不足した場合には、シール気流の吹き出し孔へ内吹き環状冷却手段から吹き出される空気流が逆流し、シール気流がほとんど供給されないこともあるため、紡糸口金下面の温度低下や温度斑の発生、酸化物発生を抑制することができなくなる場合があった。一方、例えば図5に示すように、空気流の供給量が不足しており、シール気流吹き出し手段から吹き出されるシール気流の供給量が過剰な場合には、紡糸口金直下におけるフィラメント糸が過度に速度が大きいシール気流の流れに曝され、更にシール気流が形成する渦がフィラメント糸の走行方向に長く伸び不安定になるため、フィラメント糸外周側において上昇流が発生するなど、非常に不安定な流れの形態となり、フィラメント糸に過度の糸揺れを発生させてしまう場合があった。これらいずれの場合にも、糸揺れによる製糸安定性の劣化、各単糸間の冷却斑の増大を引き起こしやすいという問題があるため、空気流とシール気流の供給量、および供給バランスによって決まる渦衝突位置を、各品種のフィラメント糸の単糸数や単糸繊度、紡糸速度、ポリマー物性等に応じて、適正に設定・管理することが極めて重要となる。
【0037】
本発明者らの知見によれば、高温に曝される紡糸口金直下において、風速および風向の微小な変化を正確に測定することは極めて困難であり、また、例えば図6に示すように、シール気流と空気流の渦衝突位置付近においては、フィラメント糸の走行経路の内側の領域における動圧・静圧・全圧のいずれについても変化が非常に小さいため、圧力を測定することによって渦衝突位置を求めることも極めて難しい。一方、本発明者らの鋭意検討の結果、例えば図7に示すように、シール気流と空気流の渦衝突位置と、フィラメント糸の走行経路の内側の領域における雰囲気温度の急勾配点はほぼ一致することを見出した。このことにより、シール気流と空気流の渦衝突位置を求めるために、雰囲気温度を測定するだけでよいこととなり、紡糸口金直下におけるシール気流および空気流の乱れや、紡糸口金面汚れにより発生する糸切れ、および糸揺れを抑制する上で、極めて有効な方法を見出したと言える。以上のことから、フィラメント糸の走行経路の内側の領域において、フィラメント糸の走行経路方向の雰囲気温度を複数点測定し、雰囲気温度勾配が最大となる位置を算出することにより、シール気流と空気流の渦衝突位置を求めることができる。これにより、シール気流と空気流の供給量、および供給バランスを適正に設定・管理することができる。ここで、フィラメント糸が持つ熱量によってフィラメント糸近傍においては雰囲気温度が高くなるため、渦衝突位置と雰囲気温度の急勾配点がずれる場合があることから、雰囲気温度の測定位置はフィラメント糸の走行経路の内側の領域の中央部とするのが好ましい。
【0038】
本発明者らの知見によれば、ここで、シール気流と空気流の渦衝突位置が環状冷却手段の空気流吹き出し面のフィラメント糸の走行経路方向の上流側の上端よりも、フィラメント糸の走行経路方向の下流側である場合には、例えば図5に示すような非常に不安定な流れの形態となり、フィラメント糸に過度の糸揺れを発生させてしまう場合がある。適性な渦衝突位置は、各品種のフィラメント糸の単糸数や単糸繊度、紡糸速度、ポリマー物性等に応じて変化するものであるが、シール気流と空気流の渦衝突位置、すなわちフィラメント糸の走行経路の内側の領域における雰囲気温度の急勾配点を、環状冷却手段の空気流吹き出し面のフィラメント糸の走行経路方向の上流側の上端と、紡糸口金との間の位置となるように、シール気流と空気流の供給量、および供給バランスを適正に設定・管理することが極めて有効である。したがって、雰囲気温度の測定は、フィラメント糸の走行経路内側の領域であって、かつ、環状冷却手段の空気流吹き出し面のフィラメント糸の走行経路方向の上流側の上端と、紡糸口金との間の複数の位置で行うことが好ましい。
【0039】
次に本発明の第2の実施形態について説明する。本発明の第2の実施形態は、例えば図1、図2(a)に示すように、熱可塑性ポリマーを溶融紡糸し、フィラメント糸を製造する装置であって、前記フィラメント糸の各単糸を紡出する複数の吐出孔を環状に配列した紡糸口金と、前記フィラメント糸の走行経路の外周側から内向きにシール気流を吹き付ける環状のシール気流吹き出し面を設けたシール気流吹き出し手段と、前記フィラメント糸の走行経路の外周側から内向きに空気流を吹き付けてフィラメント糸を冷却する環状の空気流吹き出し面を設けた内吹き環状冷却手段とを有するフィラメント糸の製造装置であって、前記内吹き環状冷却手段の前記空気流吹き出し面が、前記シール気流吹き出し手段の前記シール気流吹き出し面より、前記フィラメント糸の走行経路方向の下流側に設けられ、少なくとも前記紡糸口金から前記内吹き環状冷却手段の前記フィラメント糸の走行経路方向の下流側の下端まで、外部に対して半密閉され、前記シール気流吹き出し手段の前記シール気流吹き出し面から吹き出される前記シール気流の流量と、前記内吹き環状冷却手段の前記空気流吹き出し面から吹き出される前記空気流の流量をそれぞれ調節することができる流量調節手段をそれぞれ設け、前記シール気流吹き出し手段の前記シール気流吹き出し面から吹き出される前記シール気流の温度が、前記内吹き環状冷却手段の前記空気流吹き出し面から吹き出される前記空気流の温度よりも高く、前記フィラメント糸の走行経路の内側の領域に、雰囲気温度を測定する温度測定手段を設けることを特徴とするフィラメント糸の製造装置である。
【0040】
この本発明の第2の実施形態の特長や効果等について説明する。
【0041】
本発明者らの知見によれば、第1の実施形態で記載したように、フィラメント糸の走行経路の内側の領域において、フィラメント糸の走行経路方向の雰囲気温度を複数点測定し、雰囲気温度勾配が最大となる位置を算出することにより、シール気流と空気流の渦衝突位置を求めることができる。更に、各品種のフィラメント糸の単糸数や単糸繊度、紡糸速度、ポリマー物性等に応じて変化する適正な渦衝突位置に、算出した渦衝突位置が一致するように、雰囲気温度勾配が最大となる位置、すなわち渦衝突位置の算出と、シール気流と空気流の流量をそれぞれ調節することができる流量調節手段による流量調節を複数回数繰り返すことにより、シール気流と空気流の供給量、および供給バランスを適正に設定・管理することができる。また、本実施形態は各品種毎に変化する適正な渦衝突位置を紡糸テストにより求める場合に用いても極めて有効である。
【0042】
次に本発明の第3の実施形態について説明する。本発明の第3の実施形態は、例えば図2(b)に示すように、前記温度測定手段の位置を前記フィラメント糸の走行経路方向に移動させる温度測定位置移動手段を制御する温度測定位置制御手段と、前記温度測定手段により得られる前記フィラメント糸の走行経路方向の雰囲気温度分布から、前記フィラメント糸の走行経路方向の雰囲気温度勾配が最大となる位置を算出する演算手段と、前記雰囲気温度勾配が最大となる位置が、環状冷却手段の空気流吹き出し面の前記フィラメント糸の走行経路方向の上流側の上端と、前記紡糸口金との間の所定の位置に一致するように、シール気流吹き出し手段のシール気流吹き出し面から吹き出されるシール気流および内吹き環状冷却手段の空気流吹き出し面から吹き出される空気流のそれぞれの流量調節手段を制御する流量制御手段を設けることを特徴とする請求項2記載のフィラメント糸の製造装置である。
【0043】
この本発明の第3の実施形態の特長や効果等について説明する。
【0044】
本発明者らの知見によれば、第2の実施形態で記載したように、渦衝突位置の算出と、シール気流と空気流の流量調節を複数回数繰り返すことにより、シール気流と空気流の供給量、および供給バランスを適正に設定・管理することができる。ここで、温度測定位置制御手段を用いて温度測定位置移動手段を制御し、温度測定手段をフィラメント糸の走行経路方向に移動させながら、フィラメント糸の走行経路の内側の領域の雰囲気温度をフィラメント糸の走行経路方向に複数点測定し、フィラメント糸の走行経路方向の雰囲気温度勾配が最大となる位置を算出する演算手段により演算することにより、より正確に雰囲気温度勾配が最大となる位置、すなわち渦衝突位置を算出することができる。更に流量調節手段を制御する流量制御手段により、シール気流と空気流の流量を制御することにより、
作業者による測定誤差の発生を防止し、多くの作業者と時間を必要とすることなく、作業性良くシール気流と空気流の供給量、および供給バランスを各品種毎に適正に設定・管理することができる。
【0045】
では次に、本発明の第1〜第3の実施形態の他の形態について説明する。
【0046】
本実施形態は溶融紡糸の構成により特に限られない。溶融紡糸工程で低配向未延伸糸(以下UDY:Un Drawn Yarn)を得る構成や、部分配向糸(以下POY:Partially Oriented Yarn)を得る構成、紡糸と延伸を直結して延伸糸(以下FOY:Full Oriented Yarn)を1工程で得る紡糸直延伸(以下DSD:Direct Spin Draw)の構成、紡糸速度が高速で延伸を必要としないOSY(One Step Yarn)に対応した構成にも好適である。なお、図1では、UDYやPOY、OSYに対応した構成の図示となっているが、本実施形態がこれに限定されるものではない。また、本実施形態は紡糸速度により特に限られず、300〜10000m/分程度の範囲であっても好適である。なお、ポリエステルフィラメント糸において、一般に紡糸速度はUDYに対応した構成で300〜1800m/分程度、POYに対応した構成で1800〜5000m/分程度、DSDの構成で300〜1800m/分程度(なお、巻取速度は2000〜5000m/分程度)、OSYに対応した構成で3000〜10000m/分程度であるが、上記はあくまで一例を示したものであり、ポリエステルやその他の熱可塑性ポリマーから構成されるフィラメント糸において、紡糸速度が上記速度の範囲を超えるUDY、POY、DSD、OSYであっても好適である。なお、本実施形態において、「紡糸速度」とは、フィラメント糸が紡糸口金から紡出されて初めて固化した際の糸速度、あるいは初めて通過する糸引取手段での糸速度を示すものとする。
本実施形態はフィラメント糸15を構成する熱可塑性ポリマーにより特に限られず、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレン、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリケトンや、可塑剤を含有したセルロースエステル系熱可塑性ポリマー等にも好適であり、溶融紡糸により溶融紡糸される合成繊維や半合成繊維等の化学繊維等に好適である。本実施形態に好適なポリエステルの一例を挙げれば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート等が挙げられる。また、ポリアミドの一例を挙げれば、ナイロン6、ナイロン66等が挙げられる。また、本実施形態は、共重合されたポリアミドにも好適である。また、ポリフェニレンとしてはポリフェニレンサルファイド、ポリオレフィンとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンとしてはポリスチレン等が挙げられる。
また、本実施形態は熱可塑性ポリマーに製糸安定性等を損なわない範囲で他の共重合成分が含まれていても好適である。ポリエステルで一例を挙げれば、鮮明性に優れた染色が可能なポリエステルカチオン可染糸において、一般的に共重合されるソジウムソルホネートイソフタル酸やポリエチレングリコール等が含まれたものでも本実施形態は好適である。また、製糸安定性等を損なわない範囲で二酸化チタン等の艶消し剤、酸化ケイ素、カオリン、着色防止剤、安定剤、抗酸化剤、消臭剤、難燃剤、糸摩擦低減剤、着色顔料、表面改質剤等の各種機能性粒子や有機化合物等の添加剤が含有されていても好適である。
また、本実施形態はフィラメント糸15の各単糸の成分構成により特に限られない。各単糸を構成する成分が単数でも複数でも良く、例えば、芯鞘型複合や海島型複合、サイドバイサイド型複合等の複合の構成であっても好適である。また、複数成分が混合されたアロイやブレンド等の構成でも好適である。また、複合の各成分がアロイやブレンド等の複数成分から構成されても好適である。
本実施形態はフィラメント糸15の単糸数により特に限られず、モノフィラメント糸、フィラメント糸にも好適である。また、ステープルの分野のように単糸数が数千本、例えば2000本程度のフィラメント糸にも好適である。なお、フィラメント糸の単糸数あるいは紡糸口金から紡出される総単糸数が多ければ多いほど、従来の技術との差異が明確となる。また、ステープル以外の衣料用、産業用の分野では、単糸数が1〜1000本あるいは1〜600本程度までの範囲のフィラメント糸が多い。また、本実施形態はフィラメント糸15の各単糸の単糸繊度により特に限られず、0.1〜数百dtex程度の範囲であっても好適である。なお、dtexはデシテックスを示す。例えば、溶融紡糸後の単糸繊度が0.1〜16dtex、あるいは0.1〜10dtex、0.1〜3.5dtex程度の範囲のフィラメント糸にも好適である。なお、単糸繊度が小さければ小さいほど、従来の技術との差異が明確となる。また、得られたフィラメント糸は溶融紡糸の後に、必要に応じ、更に同工程あるいは別工程にて、1.7〜6倍、あるいは1.2〜2倍程度に延伸あるいは延伸・仮撚加工等され、単糸繊度0.1〜2.6dtex、あるいは0.1〜1.6dtex、0.1〜1.1dtex程度の範囲のフィラメント糸とされる。また、本実施形態はフィラメント糸15の各単糸の断面形状により特に限られず、丸断面、楕円、三角形等の多角形断面、六葉等の多葉断面、楕円八葉等の楕円多葉断面、C型、Y型、十字型等の文字型断面等や、中空部を有する断面等や、これらに近い断面等であっても好適である。
本実施形態は紡糸口金1から紡出されるフィラメント糸15の糸条数により特に限られず、単数あるいは複数であっても好適である。例えば、糸条数が1〜8糸条、1〜6糸条あるいは1〜4糸条であっても好適である。また、上記したフィラメント糸や単糸に関連する各形態が組み合わされたフィラメント糸や単糸が紡出されても好適であり、また、単数あるいは複数あるいは複数種の紡糸口金から、単数あるいは複数あるいは複数種のフィラメント糸や単糸が紡出されても本実施形態は好適である。
本実施形態は紡糸口金1により特に限られない。様々な紡糸口金に好適であり、紡糸口金の個数、外形形状、外形寸法、取付位置・向き、表面形状、表面仕上げ、表面処理、構造、部材構成、材質等により特に限られない。また、紡糸口金1に穿設される吐出孔により特に限られない。様々な吐出孔に好適であり、吐出孔の個数、外形形状、外形寸法、孔径、孔長、表面形状、表面仕上げ、表面処理、構造、部材構成、材質等により特に限られない。なお、本実施形態において、紡糸口金の下面は、紡糸口金のフィラメント糸の走行経路方向の下流側の、フィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の面である、紡糸口金の下面を全体的に示すものであり、仮に紡糸口金の下面に凹凸があったり、曲面があったりしても、それらを含めて紡糸口金の下面を全体的に示すものとする。
本実施形態は紡糸口金1に穿設される吐出孔の環状配列の形態により特に限られない。品質や製糸安定性等を損なわない範囲で、部分的に吐出孔が穿設されない非穿設部が設けられる配列や、吐出孔の穿設数の分布に疎密が設けられる配列等にも好適である。また、非穿設部、穿設数の疎密が単数あるいは複数あるいは複数種設けられても良い。なお、図1〜図5等において、フィラメント糸15を数本の直線で図示しているが、これはフィラメント糸が紡出されるさまを単に示したものであり、フィラメント糸の単糸数や糸条数、フィラメント糸の集束形態、たわみ状態等や、吐出孔の配列数や配列形態等の形態を限定するものではなく、本実施形態はこれに限定されない。なお、本実施形態は紡糸口金1に穿設される吐出孔の配列により特に限られないが、例えば、特に、一つの紡糸口金から紡出される単糸数が複数の場合は、好ましくは、フィラメント糸の走行経路の最外周面が、フィラメント糸の紡出や走行等を妨げない範囲で、空気流吹き出し面13や内吹き環状冷却手段9の上流側部材の内側面等に、フィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向に近接するように、紡糸口金1に穿設される吐出孔を配列すると良い。また、本実施形態は紡糸口金1に穿設される吐出孔の配列により特に限られないが、好ましくは、フィラメント糸の走行経路からみた最内周面の内側のフィラメント糸の非走行領域ができるだけ大きくなるように、紡糸口金1に穿設される吐出孔を配列すると良い。更に好ましくは、フィラメント糸の走行経路からみた最外周面の外側のフィラメント糸の非走行領域ができるだけ小さくなるように、紡糸口金1に穿設される吐出孔を配列すると良い。
本実施形態は紡糸パック2により特に限られない。様々な紡糸パックに好適であり、紡糸パックの個数、外形形状、外形寸法、取付位置・向き、表面形状、表面仕上げ、表面処理、構造、部材構成、材質等により特に限られない。
本実施形態はスピンブロック3により特に限られない。様々なスピンブロックに好適であり、スピンブロックの個数、外形形状、外形寸法、取付位置・向き、表面形状、表面仕上げ、表面処理、構造、部材構成、材質等により特に限られない。また、図1〜図5等では図示をしていないが、スピンブロックに通常配設される紡糸パックを加熱・保温する紡糸パック加熱器や熱可塑性ポリマーの供給配管、断熱部材、保温部材等や、ポンプ等や追加の加熱部材、加熱手段等が設けられても良く、また、本実施形態はこれらにより特に限られない。なお、図1〜図5等における紡糸口金1、紡糸パック2、スピンブロック3の図示は、あくまで一例であり、紡糸口金1、紡糸パック2、スピンブロック3の外形形状等の形態を限定するものではなく、本実施形態はこれに限定されない。
【0047】
本実施形態はシール気流吹き出し手段4により特に限られない。様々なシール気流吹き出し手段に好適であり、シール気流吹き出し手段の個数、外形形状、外形寸法、取付位置・向き、表面形状、表面仕上げ、表面処理、構造、部材構成、材質等により特に限られない。
【0048】
本実施形態は均圧室5により特に限られない。様々な均圧室に好適であり、均圧室の形状、寸法、位置・向きにより特に限られない。また、図1〜図5等では図示をしていないが、均圧室やその周辺に、断熱部材、保温部材、加熱部材、加熱手段、冷却部材、冷却手段、温度等の計測手段等の部材や、シール気流吹き出し手段の気流流路内にラビリンス構造やハニカム等の整流格子の構造、圧力損失部材等や空気流吹き出し部12の部材で記載したような部材、断熱部材、保温部材、加熱部材、加熱手段、冷却部材、冷却手段、温度等の計測手段等の部材が単数あるいは複数あるいは複数種設けられても好適である。
【0049】
本実施形態はシール気流吹き出し面6により特に限られない。様々なシール気流吹き出し面に好適であり、シール気流吹き出し面の個数、外形形状、外形寸法、位置、向きにより特に限られない。なお、シール気流吹き出し面の外形形状は一般に環状が多い。紡糸口金面を均一にシールすると共に、フィラメント糸の各単糸を環状方向に均一に冷却し易い等の理由からである。従って、シール気流吹き出し面の外形形状は環状が好ましいが特に限られず、例えば、シール気流吹き出し面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の断面の形状が環状を逸脱しない範囲で楕円や多角形形状、あるいはそれに近い形状であっても本実施形態は好適である。なお、シール気流吹き出し面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の断面の形状が環状を逸脱しない範囲で楕円や多角形形状、あるいはそれに近い形状である場合、シール気流吹き出し面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径は、シール気流吹き出し面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の断面の内接円あるいは外接円の直径が適用される。また、シール気流吹き出し面の外形形状がフィラメント糸の走行経路方向に沿って変化しても好適であり、また、フィラメント糸の走行経路方向に沿って、シール気流吹き出し面とフィラメント糸との距離が変化しても好適である。また、その変化が単数あるいは複数あるいは複数種あっても本実施形態は好適である。また、内径がシール気流吹き出し面に一致するようなシール気流整流手段を設けても良い。ここでシール気流整流手段の部材は特に限られず、穴やオリフィス、スリット等から構成される部材や、金網、パンチングメタル、ハニカム等の整流格子、粒子や繊維、板等から構成される多孔部材、不織布、繊維等を織ったり編んだりして構成される多孔部材、多孔を有する多孔質部材、セルロースのシートやリング、リボン等を積層して構成される多孔部材、スリット状の溝を有する金属シートや薄板、リング、リボン等を積層して構成される多孔部材、金属粒子や金属繊維等を積層して構成される多孔部材、金属線状体や金属リボン等を巻き付けて構成される多孔部材等やこれらに近い部材であっても好適であり、あるいは単数あるいは複数あるいは複数種の部材から構成されても本実施形態は好適である。また、シール気流整流手段の材質は特に限られず、アルミ、銅、青銅、真鍮、鉄、炭素鋼、ボンデ鋼、ステンレス、ステンレス合金、タングステン、タングステン合金等の金属や、セメント、合成樹脂、天然樹脂、繊維、化学繊維、天然繊維、紙、木材、セルロース、セラミック、カーボン等であっても好適であり、単数あるいは複数あるいは複数種の材質から構成されても本実施形態は好適である。
【0050】
本実施形態はシール気流7により特に限られない。様々なシール気流に好適であり、シール気流の成分や温度、湿度、流速、流量、流れ方向等や、それらの分布等により特に限られない。シール気流の成分は主にスチームが好ましいが、スチームのみに限られず、希ガス、窒素等の不活性気体、水分を含む空気等や、それらの混合物であっても本実施形態は好適である。シール気流の温度は例えば、一般に100℃あるいは150℃程度から20℃あるいは250℃程度が用いられる場合が多いが、特に限られない。例えば、徐冷等の目的で上記温度以上の高温のシール気流が用いられても本実施形態は好適である。シール気流の流速は例えば、一般に1〜5m/分程度から100〜200m/分程度が用いられる場合が多いが、特に限られない。フィラメント糸の単糸数、単糸繊度、紡糸速度や、冷却開始距離QTD等により、上記範囲内かそれ以外の範囲の流速が用いられても本実施形態は好適である。シール気流の流れ方向は特に限られず、例えば、水平方向、水平方向よりフィラメント糸の走行経路方向に対し上流側上方向、下流側下方向や、フィラメント糸やその各単糸の走行方向に対し垂直な方向、あるいはそれより上流側上方向、下流側下方向や、フィラメント糸やその各単糸の走行方向等であっても本実施形態は好適である。なお、特に限られないが、好ましくは、シール気流の流れ方向は、フィラメント糸やその各単糸の走行方向に対し垂直な方向、あるいはそれより上流側上方向が良い。シール気流の流れ方向をフィラメント糸やその各単糸の走行方向に対し垂直な方向より下流側下方向とすると、紡糸口金面を十分にシールすることができなくなる等の理由からである。シール気流の成分や温度、乾き度、流速、流量、流れ方向等の分布は特に限られず、様々な分布に本実施形態は好適である。シール気流のフィラメント糸の走行方向や走行経路方向の流速分布は特に限られず、製糸安定性等を損なわない範囲で、フィラメント糸の走行方向や走行経路方向に沿って変化の殆どない分布や、フィラメント糸の走行方向や走行経路方向の上流側から下流側に向かって漸増、漸減する分布、あるいはフィラメント糸の走行方向や走行経路方向の上流側から下流側に向かって増加と減少が単数あるいは複数あるいは複数種ある分布等であっても好適である。シール気流のフィラメント糸の走行経路を囲う環状方向の流速分布についても特に限られず、同様に製糸安定性等を損なわない範囲で様々な分布に本実施形態は好適である。なお、特に限られないが、シール気流吹き出し手段において、シール気流のフィラメント糸の走行経路を囲う環状方向の流速分布は一般に均一になるようにすることが多く、そのようにすることが好ましい。紡糸口金面を均一にシールすると共に、フィラメント糸の各単糸を環状方向に均一に冷却し易い等の理由からである。なお、シール気流の成分や温度、乾き度、流速、流量、流れ方向、動圧、静圧等やそれらの分布等は一般に調整、制御、管理されることが多い。また、フィラメント糸の品種により、調整されることも多い。また、図1〜図5において、シール気流吹き出し面6から吹き出されるシール気流7を矢印で図示しているが、これはシール気流が吹き出されるさまを単に示したものであり、シール気流の流速や流量、流れ方向等の形態を限定するものでなく、本実施形態はこれに限られない。
【0051】
本実施形態は加熱装置や加熱筒8により特に限られない。様々な加熱装置や加熱筒に好適であり、その個数、外形形状、外形寸法、取付位置、表面形状、表面仕上げ、表面処理、構造、部材構成、材質等により特に限られない。加熱装置や加熱筒の加熱方式は特に限られない。電気式、熱媒式、遠赤外線式、誘導加熱式等々、様々な加熱方式が利用できる。電気式は特に限られるものではない。例えば、電熱線やヒータ等の発熱源が、アルミ、銅、青銅、真鍮、鉄、炭素鋼、ステンレス、ステンレス合金、タングステン、タングステン合金等の金属に鋳込まれたり、埋め込まれたり、内蔵、装備されていても良く、セメントや合成樹脂、セラミック、カーボン等に固められたり、埋め込まれたり、内蔵、装備されていても良い。発熱源はニクロム線等の電熱線やシーズヒータ、バンドヒータ、スペースヒータ、カートリッジヒータ、フレキシブルシーズヒータ等々でも良く、材質としては、アルミ、銅、青銅、真鍮、鉄、炭素鋼、ボンデ鋼、ステンレス、ステンレス合金、タングステン、タングステン合金、セラミック、カーボン等々でも良い。ステンレスとしては、SUS304、SUS304L、SUS310S、SUS316、SUS316L、SUS321、SUS430、SUS630等々でも良い。ステンレス合金としては、ニクロム、”インコネル(登録商標)”、”ハステロイ(登録商標)”等々でも良い。熱媒式は特に限られるものではない。例えば、熱媒が”ダウサム(登録商標)”等々の熱媒でも良い。また、断熱部材や保温部材、温度や圧力、流速等の計測手段等が単数あるいは複数あるいは複数種設けられても好適である。
本実施形態は内吹き環状冷却手段9により特に限られない。様々な内吹き環状冷却手段に好適であり、その個数、外形形状、外形寸法、取付位置・向き、表面形状、表面仕上げ、表面処理、構造、部材構成、材質等により特に限られない。また、内吹き環状冷却手段やその周辺に、断熱部材、保温部材、加熱部材、加熱手段、冷却部材、冷却手段、温度等の計測手段等の部材や、内吹き環状冷却手段の気流流路内にラビリンス構造やハニカム等の整流格子の構造、圧力損失部材等や上記空気流吹き出し部の部材で記載したような部材、断熱部材、保温部材、加熱部材、加熱手段、冷却部材、冷却手段、温度等の計測手段等の部材が単数あるいは複数あるいは複数種設けられても好適である。また、本実施形態は内吹き環状冷却手段の上流側部材や上流側部材の内側面等により特に限られない。特に限られないが、内吹き環状冷却手段の上流側部材の内側面のフィラメント糸の走行経路方向の下流側の下端における内吹き環状冷却手段の上流側部材の内側面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径は、好ましくは、空気流吹き出し面の上端における空気流吹き出し面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径と同じになるように、あるいは小さくなるように設けるのが良い。内吹き環状冷却手段の上流側部材で、空気流吹き出し面13や空気流吹き出し部12等を、より確実に支持、保持あるいはシール等できるためである。また、内吹き環状冷却手段の上流側部材の内側面のフィラメント糸の走行経路方向の下流側の下端における内吹き環状冷却手段の上流側部材の内側面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径を、空気流吹き出し面の上端における空気流吹き出し面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径と同じになるように、あるいは小さくなるように内吹き環状冷却手段の上流側部材を配設することで、フィラメント糸の走行経路の最外周面と内吹き環状冷却手段の上流側部材の内側面が更に近接して、フィラメント糸の走行経路の最外周面と内吹き環状冷却手段の上流側部材の内側面との間の流路が更に狭くなり、フィラメント糸の走行経路からみた最外周面の外側のフィラメント糸の非走行領域に、糸揺れ・冷却斑等を引き起こす原因となる上昇気流が形成され難くなり、これら問題を更に発生し難くすることができるためである。また、上記した空気流吹き出し面、空気流吹き出し部、気流室、空気流供給口等の各形態含め、内吹き環状冷却手段に関する上記した各形態が組み合わされた内吹き環状冷却手段であっても本実施形態は好適である。また、単数あるいは複数あるいは複数種の紡糸口金あるいは紡糸パックに対し、単数あるいは複数あるいは複数種の内吹き環状冷却手段が設けられても本実施形態は好適である。なお、図1〜図5等における空気流吹き出し面13、空気流吹き出し部12、気流室11、空気流供給口10、内吹き環状冷却手段9等の図示は、あくまで一例であり、これらの外形形状等の形態を限定するものではなく、本実施形態はこれに限定されない。また、図1における空気流供給口10に記載の矢印は、空気流が流れるさまを単に示したものであり、気流の流速や流量、流れ方向等の形態を限定するものではなく、本実施形態はこれに限られない。
本実施形態は空気流供給口10、気流室11により特に限られない。様々な気流室、空気流供給口に好適であり、その個数、外形形状、外形寸法、取付位置・向き、表面形状、表面仕上げ、表面処理、構造、部材構成、材質等により特に限られない。また、ラビリンス構造やハニカム等の整流格子の構造、圧力損失部材等や上記空気流吹き出し部の部材で記載したような部材、断熱部材、保温部材、加熱部材、冷却部材、加熱手段、冷却手段、温度や圧力、流速等の計測手段、気流調整手段等が単数あるいは複数あるいは複数種設けられても好適である。また、空気流吹き出し面から吹き出される空気流14のフィラメント糸の走行経路を囲う環状方向の流速分布が均一になるように、気流室11や内吹き環状冷却手段9内の気流流路等に圧力損失部材等が設けられても良い。また、気流室11や内吹き環状冷却手段9内の気流流路等の大きさ等が、フィラメント糸の走行方向や走行経路方向に沿って殆ど変化しない構成や、フィラメント糸の走行方向や走行経路方向の上流側から下流側に向かって拡大、縮小する構成、あるいはフィラメント糸の走行方向や走行経路方向の上流側から下流側に向かって拡大と縮小が単数あるいは複数あるいは複数種ある構成等であっても好適である。また、単数あるいは複数あるいは複数種の冷却手段や空気流吹き出し部に対し、単数あるいは複数あるいは複数種の気流室、空気流供給口が設けられても好適であり、また、単数あるいは複数あるいは複数種の気流室、空気流供給口に、単数あるいは複数あるいは複数種の気流、例えば、気流の物質や組成、温度、流速、流量等が異なる気流が供給されても本実施形態は好適である。
本実施形態は空気流吹き出し部12により特に限られない。様々な空気流吹き出し部に好適であり、空気流吹き出し部の個数、外形形状、外形寸法、取付位置・向き、表面形状、表面仕上げ、表面処理、構造、部材構成、材質等により特に限られない。また、空気流吹き出し部の空気流吹き出し面の外形形状に関しては、下記空気流吹き出し面の外形形状に関する記載の通りであり、また、空気流吹き出し部の全体としての外形形状に関しても下記記載が全般的に当てはまる。なお、空気流吹き出し部の気流吹き出し面以外の面の外形形状は特に限られず、また、空気流吹き出し部の空気流が供給される空気流吹き出し面の対向面の形状は特に限られず、例えば、対向面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の断面の形状が環状を多少逸脱した形状であっても本実施形態は好適である。なお、内吹き環状冷却手段において、空気流吹き出し部の外形形状や空気流吹き出し部の空気流が供給される空気流吹き出し面の対向面の形状は一般に環状が多い。フィラメント糸の各単糸を、フィラメント糸の走行経路を囲う環状方向に、均一に冷却し易く、また、環状方向に、均一に空気流へ圧力損失を与え易く、また、環状方向に、均一に空気流を供給し易い等の理由からである。また、空気流吹き出し部のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の断面の形状が部分的に異なる形状であっても本実施形態は好適であり、異なる部分が単数あるいは複数あるいは複数種あっても好適である。また、空気流吹き出し部のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の断面の形状が、フィラメント糸の走行経路方向に沿って、単数あるいは複数あるいは複数種変化しても本実施形態は好適である。また、空気流吹き出し部の長さは特に限られないが、各単糸の固化位置付近における糸応力は強度・伸度等の品質と深い相関があり、各単糸間の冷却斑が増大すると品質低下につながることが知られているという理由から、少なくとも固化位置付近まで空気流による整流ができるような長さとするのが好ましい。また、空気流吹き出し部の部材は特に限られず、穴やオリフィス、スリット等から構成される部材や、金網、パンチングメタル、ハニカム等の整流格子、粒子や繊維、板等から構成される多孔部材、不織布、繊維等を織ったり編んだりして構成される多孔部材、多孔を有する多孔質部材、セルロースのシートやリング、リボン等を積層して構成される多孔部材、スリット状の溝を有する金属シートや薄板、リング、リボン等を積層して構成される多孔部材、金属粒子や金属繊維等を積層して構成される多孔部材、金属線状体や金属リボン等を巻き付けて構成される多孔部材等やこれらに近い部材であっても好適であり、あるいは単数あるいは複数あるいは複数種の部材から構成されても本実施形態は好適である。また、空気流吹き出し部の材質は特に限られず、アルミ、銅、青銅、真鍮、鉄、炭素鋼、ボンデ鋼、ステンレス、ステンレス合金、タングステン、タングステン合金等の金属や、セメント、合成樹脂、天然樹脂、繊維、化学繊維、天然繊維、紙、木材、セルロース、セラミック、カーボン等であっても好適であり、単数あるいは複数あるいは複数種の材質から構成されても本実施形態は好適である。また、断熱部材や保温部材、加熱部材、冷却部材、加熱手段、冷却手段、温度等の計測手段等が設けられても本実施形態には好適である。また、空気流吹き出し部が単数あるいは複数あるいは複数種の空気流吹き出し部から構成されても好適であり、また、単数あるいは複数あるいは複数種の空気流吹き出し部が冷却手段に設けられても好適であり、また、単数あるいは複数あるいは複数種の紡糸口金あるいは紡糸パックに対し、単数あるいは複数あるいは複数種の空気流吹き出し部が設けられても本実施形態は好適である。
本実施形態は空気流吹き出し部の空気流が吹き出されるフィラメント糸側の面である空気流吹き出し面13により特に限られない。様々な空気流吹き出し面に好適であり、空気流吹き出し面の個数、外形形状、外形寸法、取付位置・向き、表面形状、表面仕上げ、表面処理、構造、部材構成、材質等により特に限られない。なお、内吹き環状冷却手段において、空気流吹き出し面の外形形状は一般に環状が多い。フィラメント糸の各単糸を、フィラメント糸の走行経路を囲う環状方向に、均一に冷却し易く、また、環状方向に、均一に空気流を供給し易い等の理由からである。従って、空気流吹き出し面の外形形状は環状が好ましいが特に限られず、例えば、空気流吹き出し面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の断面の形状が環状を逸脱しない範囲で楕円や多角形形状、あるいはそれに近い形状であっても本実施形態は好適である。なお、空気流吹き出し面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の断面の形状が環状を逸脱しない範囲で楕円や多角形形状、あるいはそれに近い形状である場合、空気流吹き出し面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径は、空気流吹き出し面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の断面の内接円あるいは外接円の直径が適用される。また、空気流吹き出し面の外形形状がフィラメント糸の走行経路方向に沿って変化しても好適であり、また、フィラメント糸の走行経路方向に沿って、空気流吹き出し面とフィラメント糸との距離が変化しても好適である。また、その変化が単数あるいは複数あるいは複数種あっても本実施形態は好適である。
本実施形態は空気流吹き出し部から吹き出される空気流14により特に限られない。様々な空気流に好適であり、空気流の成分や温度、湿度、流速、流量、流れ方向等や、それらの分布等により特に限られない。空気流の成分は例えば、空気や通常の空気に含まれる酸素等の成分、水分を含む空気や、希ガス、窒素等の不活性気体、スチーム等や、これらの混合物であっても本実施形態は好適である。なお、一般には空気や乾燥空気が用いられる場合が多い。空気流の温度は例えば、一般に数℃あるいは10℃程度から20℃あるいは30℃程度が用いられる場合が多いが、特に限られない。例えば、徐冷等の目的で上記温度以上の高温の空気流が用いられても本実施形態は好適である。空気流の流速は例えば、一般に1〜5m/分程度から100〜200m/分程度が用いられる場合が多いが、特に限られない。フィラメント糸の単糸数、単糸繊度、紡糸速度や、冷却開始距離QTD等により、上記範囲内かそれ以外の範囲の流速が用いられても本実施形態は好適である。空気流の流れ方向は特に限られず、例えば、水平方向、水平方向よりフィラメント糸の走行経路方向に対し上流側上方向、下流側下方向や、フィラメント糸やその各単糸の走行方向に対し垂直な方向、あるいはそれより上流側上方向、下流側下方向や、フィラメント糸やその各単糸の走行方向等であっても本実施形態は好適である。なお、特に限られないが、好ましくは、空気流の流れ方向は、フィラメント糸やその各単糸の走行方向に対し垂直な方向、あるいはそれより下流側下方向が良い。空気流の流れ方向をフィラメント糸やその各単糸の走行方向に対し垂直な方向より上流側上方向とすると、フィラメント糸やその各単糸に働く空気抵抗等が増加する等の理由からである。空気流の成分や温度、湿度、流速、流量、流れ方向等の分布は特に限られず、様々な分布に本実施形態は好適である。空気流のフィラメント糸の走行方向や走行経路方向の流速分布は特に限られず、製糸安定性等を損なわない範囲で、フィラメント糸の走行方向や走行経路方向に沿って変化の殆どない分布や、フィラメント糸の走行方向や走行経路方向の上流側から下流側に向かって漸増、漸減する分布、あるいはフィラメント糸の走行方向や走行経路方向の上流側から下流側に向かって増加と減少が単数あるいは複数あるいは複数種ある分布等であっても好適である。空気流のフィラメント糸の走行経路を囲う環状方向の流速分布についても特に限られず、同様に製糸安定性等を損なわない範囲で様々な分布に本実施形態は好適である。なお、特に限られないが、内吹き環状冷却手段において、空気流のフィラメント糸の走行経路を囲う環状方向の流速分布は一般に均一になるようにすることが多く、そのようにすることが好ましい。フィラメント糸の各単糸を環状方向に均一に冷却し易い等の理由からである。なお、空気流の成分や温度、湿度、流速、流量、流れ方向、動圧、静圧等やそれらの分布等は一般に調整、制御、管理されることが多い。また、フィラメント糸の品種により、調整されることも多い。また、図1〜図5において、空気流吹き出し部から吹き出される空気流14を多数の矢印で図示しているが、これは空気流が吹き出されるさまを単に示したものであり、空気流の流速や流量、流れ方向等の形態を限定するものでなく、本実施形態はこれに限られない。
本実施形態は糸油剤付与・集束・ガイド・案内等の手段16により特に限られない。様々な手段に好適であり、手段の個数、外形形状、外形寸法、取付位置・向き、表面形状、表面仕上げ、表面処理、構造、部材構成、材質等により特に限られない。また、糸油剤付与手段はガイド給油方式でもローラー給油方式であっても好適であり、糸油剤付与・集束・ガイド・案内等の手段は非回転手段でも回転手段でも本実施形態は好適である。また、上記手段は設けなくても設けても良く、設ける場合は糸油剤付与・集束・ガイド・案内等の手段であれば良く、あるいはそれらの何れかが一つが設けられても良く、あるいはそれらが単数あるいは複数あるいは複数種設けられても、上記各形態が組み合わされた手段が同様に設けられても良く、特に限られず好適である。
本実施形態は糸引取手段17、糸巻取手段18により特に限られない。様々な糸引取手段、糸巻取手段に好適であり、手段の個数、外形形状、外形寸法、取付位置・向き、表面形状、表面仕上げ、表面処理、構造、部材構成、材質等により特に限られず、例えば、糸引取手段は、ローラーやサクションガン等の糸吸引手段、フィラメント糸を気流で送り出す糸送出手段、コンベヤ等の糸搬送手段等であっても好適であり、例えば、糸巻取手段は、フィラメント糸を巻き取るワインダー方式や、フィラメント糸を籠のような容器で受け取るキャン方式等の糸巻取手段であっても本実施形態は好適である。また、糸引取手段のローラーに複数回フィラメント糸が掛けられても好適であり、糸引取手段が延伸手段を兼ねても好適である。また、糸引取手段や糸巻取手段に、糸油剤付与・集束・ガイド・案内等の手段や、加熱ローラー、加熱チューブ等の糸加熱手段、糸加湿手段、糸リラックス手段、糸延伸手段、糸吸引手段、糸送出手段、糸搬送手段等が単数あるいは複数あるいは複数種設けられても好適である。また、糸引取手段や糸巻取手段が単数あるいは複数あるいは複数種設けられても、上記各形態が組み合わされた糸引取手段や糸巻取手段が同様に設けられても好適である。
【0052】
本実施形態は温度測定手段19により特に限られない。様々な温度測定手段に好適であり、温度測定手段の測定方式、個数、外形形状、外形寸法、取付位置・向き、表面形状、表面仕上げ、表面処理、構造、部材構成、材質等により特に限られない。温度測定手段の測定方式は、例えば、白金抵抗体や熱電対等の温度検知部材を使用した温度センサや、水晶振動子の共振周波数を利用した温度センサ等、様々な測定方式が利用できる。温度測定手段の個数、取付位置、および測定間隔は特に限られないが、より正確に雰囲気温度勾配が最大となる位置、すなわち渦衝突位置を算出できるように、好ましくは10〜20mm、更に好ましくは5〜10mm間隔で雰囲気温度を測定できるように、単数あるいは複数の温度測定手段を設けることが好ましい。また、温度測定手段の外形形状、外形寸法は特に限られないが、好ましくはフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の断面積を、フィラメント糸の糸当たりや引っかかりによる毛羽等の発生を引き起こさないように、またフィラメント糸の走行経路方向に流れる気流の抵抗とならないように、本発明の効果を損なわない範囲でなるべく小さくするのが好ましい。また、温度測定手段のコーナー部の形状を本発明の効果を損なわない範囲でなるべく滑らかにするのが好ましい。
【0053】
本実施形態は温度測定位置移動手段20により特に限られない。様々な温度測定位置移動手段に好適であり、温度測定位置移動手段の個数、外形形状、外形寸法、取付位置・向き、表面形状、表面仕上げ、表面処理、構造、部材構成、材質等により特に限られない。温度測定位置移動手段の機構は、ラックアンドピニオン等のギア、ベルト、チェーン、台形ねじ、ボールねじ等、様々な駆動方式を用いた直動機構が利用できる。また、温度測定位置移動手段の外形形状、外形寸法は特に限られないが、好ましくはフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の断面積を、フィラメント糸の糸当たりや引っかかりによる毛羽等の発生を引き起こさないように、またフィラメント糸の走行経路方向に流れる気流の抵抗とならないように、本発明の効果を損なわない範囲でなるべく小さくするのが好ましい。また、温度測定位置移動手段のコーナー部の形状を本発明の効果を損なわない範囲でなるべく滑らかにするのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、極めて汎用性の高い発明であり、溶融紡糸によって得られる多くのフィラメント糸に好適である。特に、糸の太さ斑や品質等の均斉性や、強度・伸度等の品質、毛羽等の品位に優れた単糸細繊度化・多フィラメント化されたフィラメント糸や単糸異形断面化されたフィラメント糸、あるいは熱可塑性ポリマーが改質されたフィラメント糸やガラス転移温度が高い等の特殊な熱可塑性ポリマーから構成されるフィラメント糸等の難紡糸フィラメント糸を製造するに好適である。また、本発明は、フィラメント糸の溶融紡糸の構成により特に限られるものではなく、UDYあるいはPOYに対応した溶融紡糸の構成に限らず、DSDやOSYに対応した溶融紡糸の構成にも応用できるが、その応用範囲がこれらに限られるものではない。
【符号の説明】
【0055】
1 紡糸口金
2 紡糸パック
3 スピンブロック
4 シール気流吹き出し手段
5 均圧室
6 シール気流吹き出し面
7 シール気流
8 加熱装置や加熱筒
9 内吹き環状冷却手段
10 空気流供給口
11 気流室
12 空気流吹き出し部
13 空気流吹き出し面
14 空気流
15 フィラメント糸
16 糸油剤付与・集束・ガイド・案内等の手段
17 糸引取手段
18 糸巻取手段
19 温度測定手段
20 測定位置移動手段
QTD 冷却開始距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリマーを溶融紡糸し、フィラメント糸を製造する方法であって、以下の(1)〜(6)の要件を満足することを特徴とするフィラメント糸の製造方法。
(1)複数の吐出孔が環状に配列された紡糸口金から前記フィラメント糸を紡出すること。
(2)前記フィラメント糸の走行経路の外周側に環状のシール気流吹き出し面を設けたシール気流吹き出し手段から内向きにシール気流を吹き付けて前記紡糸口金をシールすること。
(3)前記シール気流吹き出し手段より前記フィラメント糸の走行経路方向の下流側において、前記フィラメント糸の走行経路の外周側に環状の空気流吹き出し面を設けた内吹き環状冷却手段から前記フィラメント糸に内向きに前記シール気流より低温の空気流を吹き付けて前記フィラメント糸を冷却すること。
(4)少なくとも前記紡糸口金から前記内吹き環状冷却手段の前記フィラメント糸の走行経路方向の下流側の下端まで、外部に対して半密閉すること。
(5)前記フィラメント糸の走行経路の内側の領域において、雰囲気温度測定手段により雰囲気温度を測定すること。
(6)前記雰囲気温度測定手段により得られる前記フィラメント糸の走行経路方向の雰囲気温度分布から、前記フィラメント糸の走行経路方向の雰囲気温度の勾配が最大となる位置を算出すること。
(7)前記フィラメント糸の走行経路方向の雰囲気温度の勾配が最大となる位置が、前記内吹き環状冷却手段の空気流吹き出し面の前記フィラメント糸の走行経路方向の上流側の上端と、前記紡糸口金との間の位置となるように、前記シール気流および前記空気流のそれぞれの流量を制御すること。
【請求項2】
熱可塑性ポリマーを溶融紡糸し、フィラメント糸を製造する装置であって、前記フィラメント糸の各単糸を紡出する複数の吐出孔を環状に配列した紡糸口金と、前記フィラメント糸の走行経路の外周側から内向きにシール気流を吹き付ける環状のシール気流吹き出し面を設けたシール気流吹き出し手段と、前記フィラメント糸の走行経路の外周側から内向きに空気流を吹き付けてフィラメント糸を冷却する環状の空気流吹き出し面を設けた内吹き環状冷却手段とを有するフィラメント糸の製造装置であって、以下の(1)〜(4)の要件を満足することを特徴とするフィラメント糸の製造装置。
(1)前記内吹き環状冷却手段の前記空気流吹き出し面が、前記シール気流吹き出し手段の前記シール気流吹き出し面より、前記フィラメント糸の走行経路方向の下流側に設けられ、少なくとも前記紡糸口金から前記内吹き環状冷却手段の前記フィラメント糸の走行経路方向の下流側の下端まで、外部に対して半密閉されること。
(2)前記シール気流吹き出し手段の前記シール気流吹き出し面から吹き出される前記シール気流の流量と、前記内吹き環状冷却手段の前記空気流吹き出し面から吹き出される前記空気流の流量をそれぞれ調節することができる流量調節手段をそれぞれ設けること。
(3)前記シール気流吹き出し手段の前記シール気流吹き出し面から吹き出される前記シール気流の温度が、前記内吹き環状冷却手段の前記空気流吹き出し面から吹き出される前記空気流の温度よりも高いこと。
(4)前記フィラメント糸の走行経路の内側の領域に、雰囲気温度を測定する温度測定手段を設けること。
【請求項3】
前記温度測定手段の位置を前記フィラメント糸の走行経路方向に移動させる温度測定位置移動手段を制御する温度測定位置制御手段と、前記温度測定手段により得られる前記フィラメント糸の走行経路方向の雰囲気温度分布から、前記フィラメント糸の走行経路方向の雰囲気温度勾配が最大となる位置を算出する演算手段と、前記雰囲気温度勾配が最大となる位置が、前記内吹き環状冷却手段の空気流吹き出し面の前記フィラメント糸の走行経路方向の上流側の上端と、前記紡糸口金との間の所定の位置に一致するように、前記シール気流吹き出し手段のシール気流吹き出し面から吹き出されるシール気流および前記内吹き環状冷却手段の空気流吹き出し面から吹き出される空気流のそれぞれの流量調節手段を制御する流量制御手段を設けることを特徴とする請求項2記載のフィラメント糸の製造装置。

【図1】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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