説明

フィルタおよび油水分離装置

【課題】短時間で容易に組み立て可能とする。
【解決手段】油吸着材が配置されるフィルタ用容器2を構成する筒体11の開口部11a側に規定された配置部P1には、筒体11における他方の開口部から開口部11aに向かう第1の向きでの筒体11内における板材12の移動を規制する4つの移動規制用凸部21aが形成され、板材12は、板面が筒体11の筒長方向に対して直交するように筒体11内に配置した状態で筒体11に対して筒長方向に沿って移動させたときに各凸部21aに対する板材12の当接を回避可能な当接回避用凹部32が筒体11における各凸部21aの形成位置に対応して4つ形成されると共に、各凹部32の形成部位を除く外縁部領域に規定された凸部当接部33がフィルタ用容器2内の油吸着材によって各凸部21aに対して上記の第1の向きで押し付けられて第1の向きでの移動が規制された状態で配置部P1に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理対象液から油分を除去するフィルタ、およびフィルタを備えて処理対象液から油分を除去可能に構成された油水分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のフィルタを備えた油水分離装置として、エマルション(エマルジョン)破壊油吸着槽(以下、単に「吸着槽」ともいう)を備えて構成された油水分離装置が特開2006−239669号公報に開示されている。この油水分離装置では、フィルタとして機能する上記の吸着槽が、外筒と、外筒の下側開口部を閉塞する下部板と、外筒の上側開口部を閉塞する上部板と、上部板に取り付けられて外筒内に配設された内筒とを備えて構成された容器体を備えると共に、この容器体内に、繊維状のエマルション破壊粒子付油吸着材と、繊維状の油吸着材と、粒状の活性炭とが充填されて構成されている。この場合、この吸着槽では、上記の容器体内にエマルション破壊粒子付油吸着材や油吸着材を詰め込んだ状態において、上部板および下部板を連通させた通しボルトの両端にナットを締め付けることで、外筒の両開口部が上部板および下部板によって閉塞される。これにより、この吸着槽では、処理対象液を通過させる流路が、内筒内、および内筒と外筒との隙間に形成され、この流路を処理対象液が通過させられる際に、エマルション破壊粒子付油吸着材や油吸着材によって処理対象液中の油分が吸着されて除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−239669号公報(第4−8頁、第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の油水分離装置における吸着槽には、以下の問題点が存在する。すなわち、従来の吸着槽では、上部板および下部板を連通させた通しボルトの両端にナットを締め付けることで、上部板および下部板によって外筒の両開口部を閉塞する構成が採用されている。この場合、処理対象液中の油分を効率よく除去するには、十分な量の油吸着材を容器体内に充填する必要がある。したがって、従来の吸着槽の組み立てに際しては、内筒内、および外筒と内筒との隙間に必要量の油吸着材(エマルション破壊粒子付油吸着材や油吸着材等)を押し込み、その状態において、外筒の両端部に上部板および下部板を押し付けて、通しボルトの両端にナットを締め付ける必要がある。このため、従来の吸着槽では、充填した油吸着材の復元力に抗して外筒の両端部に上部板および下部板を押し付けながら通しボルトの両端にナットを締め付ける作業が極めて煩雑であり、これに起因して、その組立て作業に長時間を要しているという問題点がある。この結果、従来の吸着槽および油水分離装置では、吸着槽の組立て作業に長時間を要していることに起因して、吸着槽を再利用する際のコスト(エマルション破壊粒子付油吸着材や油吸着材だけを新品に交換して吸着槽を再製するのに要するコスト)も高騰している。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、短時間で容易に組み立て可能で、再利用する際のコストを低減し得るフィルタ、および油水分離装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく請求項1記載のフィルタは、円筒状の筒体と、当該筒体における両開口部の一方側に規定された第1の板材配置部に配置された円板状の第1の板材と、前記筒体における前記両開口部の他方側に規定された第2の板材配置部に配置された円板状の第2の板材とを備えて構成されたフィルタ用容器を備え、当該フィルタ用容器内に油吸着材が配置されると共に、前記筒体の筒長方向に沿って前記フィルタ用容器内を通過させられる処理対象液に含まれている油分を前記油吸着材によって吸着して除去可能に構成されたフィルタであって、前記第1の板材配置部には、前記他方の開口部から前記一方の開口部に向かう第1の向きでの前記筒体内における前記第1の板材の移動を規制する少なくとも2つの第1の移動規制用凸部が当該筒体の内壁面から突出するように形成され、前記第1の板材は、前記筒体の内径以下の直径に形成されると共に前記処理対象液を通過させる第1の通過孔が形成され、かつ、板面が前記筒長方向に対して直交するように前記筒体内に配置した状態において当該筒体に対して当該筒長方向に沿って移動させたときに前記各第1の移動規制用凸部に対する当該第1の板材の当接を回避可能な第1の当接回避用凹部が当該筒体における当該各第1の移動規制用凸部の形成位置に対応してそれぞれ形成されると共に、当該各第1の当接回避用凹部の形成部位を除く外縁部領域に規定された第1の凸部当接部が前記フィルタ用容器内に配置された前記油吸着材によって前記各第1の移動規制用凸部に対して前記第1の向きで押し付けられて当該第1の向きでの移動が規制された状態で前記第1の板材配置部に配置されている。
【0007】
また、請求項2記載のフィルタは、請求項1記載のフィルタにおいて、前記第1の板材には、複数の前記第1の通過孔が分散して形成されている。
【0008】
さらに、請求項3記載のフィルタは、請求項1または2記載のフィルタにおいて、前記第2の板材配置部には、前記一方の開口部から前記他方の開口部に向かう第2の向きでの前記筒体内における前記第2の板材の移動を規制する少なくとも2つの第2の移動規制用凸部が当該筒体の内壁面から突出するように形成され、前記第2の板材は、前記筒体の内径以下の直径に形成されると共に前記処理対象液を通過させる第2の通過孔が形成され、かつ、板面が前記筒長方向に対して直交するように前記筒体内に配置した状態において当該筒体に対して当該筒長方向に沿って移動させたときに前記各第2の移動規制用凸部に対する当該第2の板材の当接を回避可能な第2の当接回避用凹部が当該筒体における当該各第2の移動規制用凸部の形成位置に対応してそれぞれされると共に、当該各第2の当接回避用凹部の形成部位を除く外縁部領域に規定された第2の凸部当接部が前記油吸着材によって前記各第2の移動規制用凸部に対して前記第2の向きで押し付けられて当該第2の向きでの移動が規制された状態で前記第2の板材配置部に配置されている。
【0009】
また、請求項4記載のフィルタは、請求項1から3のいずれかに記載のフィルタにおいて、前記第2の板材には、複数の前記第2の通過孔が分散して形成されている。
【0010】
さらに、請求項5記載のフィルタは、請求項3または4記載のフィルタにおいて、前記第1の板材および前記第2の板材が同一材料で同一形状に形成されている。
【0011】
また、請求項6記載のフィルタは、請求項1から5のいずれかに記載のフィルタにおいて、前記筒体の内径以下の直径の円板状に形成されると共に前記処理対象液を通過させる第3の通過孔が形成されて、前記第1の板材および前記第2の板材の間に位置するように前記筒体内に配設された第3の板材を備えている。
【0012】
さらに、請求項7記載のフィルタは、請求項6記載のフィルタにおいて、前記筒体において前記第3の板材が配置される第3の板材配置部には、前記第1の向きでの当該筒体内における当該第3の板材の移動を規制する少なくとも2つの第3の移動規制用凸部が当該筒体の内壁面から突出するように形成され、前記第3の板材は、板面が前記筒長方向に対して直交するように前記筒体内に配置した状態において当該筒体に対して当該筒長方向に沿って移動させたときに前記各第3の移動規制用凸部に対する当該第3の板材の当接を回避可能な第3の当接回避用凹部が当該筒体における当該各第3の移動規制用凸部の形成位置に対応してそれぞれ形成されると共に、当該各第3の当接回避用凹部の形成部位を除く外縁部領域に規定された第3の凸部当接部が前記油吸着材によって前記各第3の移動規制用凸部に対して前記第1の向きで押し付けられて当該第1の向きでの移動が規制された状態で前記第3の板材配置部に配置されている。
【0013】
また、請求項8記載のフィルタは、請求項6または7記載のフィルタにおいて、前記第3の板材には、複数の前記第3の通過孔が分散して形成されている。
【0014】
さらに、請求項9記載のフィルタは、請求項7または8記載のフィルタにおいて、前記第1の板材および前記第3の板材が同一材料で同一形状に形成されている。
【0015】
また、請求項10記載のフィルタは、請求項9記載のフィルタにおいて、前記第1の移動規制用凸部および前記第3の移動規制用凸部が前記筒長方向において重なる位置に形成されている。
【0016】
さらに、請求項11記載のフィルタは、請求項1から10のいずれかに記載のフィルタを2つ備え、一方の当該フィルタにおける前記一方側の開口部と、他方の当該フィルタにおける前記一方側の開口部とを互いに対向させた状態において当該両フィルタが一体化されている。
【0017】
また、請求項12記載の油水分離装置は、請求項1から11のいずれかに記載のフィルタを備え、前記処理対象液を、前記筒体の筒長方向に沿って前記フィルタ用容器内を通過させることによって当該処理対象液に含まれている油分を前記油吸着材によって吸着させて除去する。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載のフィルタでは、筒体における両開口部の一方側に規定された第1の板材配置部に、筒体における他方の開口部から一方の開口部に向かう第1の向きでの筒体内における第1の板材の移動を規制する少なくとも2つの第1の移動規制用凸部が筒体の内壁面から突出するように形成され、かつ、板面が筒体の筒長方向に対して直交するように筒体内に配置した状態において筒体に対して筒長方向に沿って移動させたときに各第1の移動規制用凸部に対する第1の板材の当接を回避可能な第1の当接回避用凹部が筒体における各第1の移動規制用凸部の形成位置に対応して第1の板材にそれぞれ形成されると共に、各第1の当接回避用凹部の形成部位を除く外縁部領域に規定された第1の凸部当接部がフィルタ用容器内に配置した油吸着材によって各第1の移動規制用凸部に対して第1の向きで押し付けられて第1の向きでの移動が規制された状態で第1の板材配置部に第1の板材が配置されている。
【0019】
また、請求項12記載の油水分離装置では、請求項1から11のいずれかに記載のフィルタを備えて、処理対象液を、筒体の筒長方向に沿ってフィルタ用容器内を通過させることによって処理対象液に含まれている油分を油吸着材によって吸着させて除去する構成が採用されている。
【0020】
したがって、請求項1記載のフィルタおよび請求項12記載の油水分離装置によれば、筒体内に油吸着材を収容した状態において第1の板材を第2の板材に向かって移動させることで油吸着材を圧縮し、その状態において筒体に対して第1の板材を回転させて各第1の移動規制用凸部と第1の凸部当接部とを平面視において一致させた状態で第1の板材に加えている力を緩めるだけで、油吸着材の復元力によって第1の板材における各第1の凸部当接部が筒体における各第1の移動規制用凸部に当接させられて第1の向きでの移動が規制された状態で第1の板材配置部に第1の板材が配置されるため、上部板および下部板を連通させた通しボルトの両端にナットを締め付けることで、上部板および下部板によって外筒の両開口部を閉塞する構成の従来の吸着槽とは異なり、短時間で、しかも容易にフィルタを組み立てることができる。また、請求項1記載のフィルタおよび請求項12記載の油水分離装置によれば、油吸着材によって十分な量の油分が吸着されてフィルタの処理能力が低下したときには、組立て作業と逆の手順に従って筒体から第1の板材を取り外して油吸着材を取り出すことができるため、フィルタ用容器を再利用する際のコスト(油吸着材だけを新品に交換してフィルタを再製するのに要するコスト)を十分に低減することができる。
【0021】
また、請求項2記載のフィルタでは、複数の第1の通過孔が第1の板材に分散して形成されている。また、請求項4記載のフィルタでは、複数の第2の通過孔が第2の板材に分散して形成されている。また、請求項8記載のフィルタでは、複数の第3の通過孔が第3の板材に分散して形成されている。したがって、請求項2,4,8記載のフィルタおよび請求項12記載の油水分離装置によれば、フィルタ用容器内に流入した処理対象液が各通過孔を通過するようにして筒体の筒径方向に拡がるため、筒体の筒径方向の全域において油吸着材に油分を吸着させることができる結果、処理対象液中の油分を確実かつ効率良く取り除くことができる。
【0022】
さらに、請求項3記載のフィルタでは、筒体における両開口部の他方側に規定された第2の板材配置部に、筒体における一方の開口部から他方の開口部に向かう第2の向きでの筒体内における第2の板材の移動を規制する少なくとも2つの第2の移動規制用凸部が筒体の内壁面から突出するように形成され、かつ、板面が筒体の筒長方向に対して直交するように筒体内に配置した状態において筒体に対して筒長方向に沿って移動させたときに各第2の移動規制用凸部に対する第2の板材の当接を回避可能な第2の当接回避用凹部が筒体における各第2の移動規制用凸部の形成位置に対応して第2の板材にそれぞれ形成されると共に、各第2の当接回避用凹部の形成部位を除く外縁部領域に規定された第2の凸部当接部がフィルタ用容器内に配置した油吸着材によって各第2の移動規制用凸部に対して第2の向きで押し付けられて第2の向きでの移動が規制された状態で第2の板材配置部に第2の板材が配置されている。したがって、請求項3記載のフィルタおよび請求項12記載の油水分離装置によれば、筒体に対する第2の板材の溶接等が不要となる分だけ、フィルタ用容器を安価に製造することができる。
【0023】
また、請求項5記載のフィルタでは、第1の板材および第2の板材が同一材料で同一形状に形成されている。さらに、請求項9記載のフィルタでは、第1の板材および第3の板材が同一材料で同一形状に形成されている。したがって、請求項5,9記載のフィルタおよび請求項12記載の油水分離装置によれば、部品コストを低減することができるため、フィルタの製造コストを十分に低減することができる。
【0024】
また、請求項6記載のフィルタおよび請求項12記載の油水分離装置によれば、筒体の内径以下の直径の円板状に形成されて第1の板材および第2の板材の間に位置するように筒体内に配設された第3の板材を備えたことにより、第3の板材が存在しない構成とは異なり、第1の板材と第2の板材との間において油吸着材等に偏りが生じる事態を回避することができる。また、例えば、シート状のエマルション破壊材等を収容する構成を採用した場合には、第3の板材に接するようにこのエマルション破壊材を収容することにより、このエマルション破壊材がフィルタ用容器内において傾いたり、大きく変形したりする事態を回避して、第3の板材の板面に沿って筒体の筒径方向にエマルション破壊材を拡げた状態を維持することができる。このため、筒体の筒長方向に沿ってフィルタ用容器内を見たときにエマルション破壊材が存在しない領域が生じる事態を回避することができる結果、処理対象液中に含まれているエマルションが確実にエマルション破壊材を通過させられる。これにより、処理対象液中にエマルション化した状態で含まれている油分を確実に取り除くことができる。
【0025】
さらに、請求項7記載のフィルタおよび請求項12記載の油水分離装置では、筒体において第3の板材が取り付けられる第3の板材配置部に、筒体における他方の開口部から一方の開口部に向かう第1の向きでの筒体内における第3の板材の移動を規制する少なくとも2つの第3の移動規制用凸部が筒体の内壁面から突出するように形成され、かつ、板面が筒体の筒長方向に対して直交するように筒体内に配置した状態において筒体に対して筒長方向に沿って移動させたときに各第3の移動規制用凸部に対する第3の板材の当接を回避可能な第3の当接回避用凹部が筒体における各第3の移動規制用凸部の形成位置に対応して第3の板材にそれぞれ形成されると共に、各第3の当接回避用凹部の形成部位を除く外縁部領域に規定された第3の凸部当接部がフィルタ用容器内に配置した油吸着材によって各第3の移動規制用凸部に対して第1の向きで押し付けられて第1の向きでの移動が規制された状態で第3の板材配置部に第3の板材が配置されている。
【0026】
したがって、請求項7記載のフィルタおよび請求項12記載の油水分離装置によれば、まず、第2の板材と第3の板材との間に油吸着材を配置し、その後に第3の板材と第1の板材との間に油吸着材を配置することができる結果、第3の板材配置部に第3の板材を配置する際に油吸着材を圧縮するのに要する力、および第1の板材配置部に第1の板材を配置する際に油吸着材を圧縮するのに要する力が十分に小さくて済むため、第3の板材配置部に第3の板材を配置しない構成と比較して、フィルタを一層容易に組み立てることができる。
【0027】
また、請求項10記載のフィルタおよび請求項12記載の油水分離装置によれば、筒長方向において重なる位置に第1の移動規制用凸部および第3の移動規制用凸部を形成したことにより、第3の板材配置部に第3の板材を配置する際に、第1の移動規制用凸部に対して第3の当接回避用凹部を位置合わせして第1の移動規制用凸部に対する当接を回避した状態の第3の板材を第3の板材配置部に向けて移動させたときに、第3の板材を筒体に対して回転させることなく、第3の移動規制用凸部に対する第3の板材の当接を回避することができるため、第3の板材配置部に第3の板材が配置されたフィルタを一層容易に組み立てることができる。
【0028】
さらに、請求項11記載のフィルタおよび請求項12記載の油水分離装置によれば、請求項1から10のいずれかに記載のフィルタを2つ備え、一方のフィルタにおける一方側の開口部と、他方のフィルタにおける一方側の開口部とを互いに対向させた状態において両フィルタを一体化したことにより、1つのフィルタの筒長方向に沿った長さが過剰に長くなって組み立てが困難となる事態を招くことなく、処理対象液の流路を十分に長くすることができる。これにより、処理能力が十分に高いフィルタを容易に組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係る油水分離装置100におけるフィルタ1および気液分離槽110の内部構造を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るフィルタ1,1Aの他の使用形態の一例について説明するための断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るフィルタ1のさらに他の使用形態の一例について説明するための断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るフィルタ1Aのさらに他の使用形態の一例について説明するための断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るフィルタ1,1Aにおける板材13が取り付けられた状態の筒体11を開口部11a側から見た平面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るフィルタ1,1Aの筒体11における配置部P1(開口部11a)の外観斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るフィルタ1,1Aにおける板材12の平面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るフィルタ1,1Aにおける筒体11の各移動規制用凸部21a(21b)と板材12の当接回避用凹部32とを一致させるように筒体11に対して板材12を回転させた状態の平面図である。
【図9】本発明の実施の形態に係るフィルタ1,1Aにおける筒体11の配置部P1(P3)に板材12を取り付けた状態の平面図である。
【図10】本発明の他の実施の形態に係る板材12aの平面図である。
【図11】本発明のさらに他の実施の形態に係る板材12bの外観斜視図である。
【図12】本発明のさらに他の実施の形態に係る板材12cの外観斜視図である。
【図13】本発明の他の実施の形態に係るフィルタ1Bの内部構造を示す断面図である。
【図14】本発明のさらに他の実施の形態に係るフィルタ1Cの内部構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るフィルタおよび油水分離装置の実施の形態について説明する。
【0031】
図1に示す油水分離装置100は、フィルタ1、および気液分離槽110を備え、エアコンプレッサや、エアドライヤ等のドレン発生源(図示せず)から排出されたドレン水W(「処理対象液」の一例)に含まれている油分を除去してドレン水Wを浄化可能に構成されている。フィルタ1は、筒体11および板材12,12,13を備えて構成されたフィルタ用容器2内に油吸着材3およびエマルション破壊材4が充填されて(「フィルタ用容器内に油吸着材が配置される」との構成の一例)、矢印Cの向きでドレン水Wが通過させられることによって油分を除去することができるように構成されている。
【0032】
筒体11は、一例として、厚み1mm程度のステンレススチールによって内径200mm程度の円筒状に形成されている。この場合、図1に示すように、このフィルタ1では、筒体11における両開口部11a,11bの一方側(この例では、開口部11a側)に板材12を配置するための(取り付けるための)配置部P1(「第1の板材配置部」の一例)が規定されると共に、両開口部11a,11bの他方側(この例では、開口部11b側)に板材13を配置するための(取り付けるための)配置部P2(「第2の板材配置部」の一例)が規定され、かつ、筒長方向(同図における上下方向)における配置部P1,P2の間に板材12を配置するための(取り付けるための)配置部P3(「第3の板材配置部」の一例)が規定されている。
【0033】
また、配置部P1には、開口部11bから開口部11aに向かう矢印A1の向き(「第1の向き」の一例)での筒体11内における板材12の移動を規制する4つの移動規制用凸部21a(「第1の移動規制用凸部」の一例)が筒体11の内壁面から突出するように形成されている。さらに、配置部P2には、板材13が溶接によって固定的に配置されている。また、配置部P3には、開口部11bから開口部11aに向かう矢印A1の向き(「第1の向き」)での筒体11内における板材12の移動を規制する4つの移動規制用凸部21b(「第3の移動規制用凸部」の一例)が筒体11の内壁面から突出するように形成されている。
【0034】
この場合、図5,6に示すように、このフィルタ1では、断面L字状のステンレス鋼を所定サイズに切断して上記の4つの移動規制用凸部21aが構成され、各移動規制用凸部21aが90°の等角度間隔で、かつ筒体11における筒長方向の位置が互いに一致するように配置部P1に溶接されている。また、筒体11の配置部P3には、上記の各移動規制用凸部21aと同様にして断面L字状のステンレス鋼を所定サイズに切断した4つの移動規制用凸部21bが90°の等角度間隔で、かつ筒体11における筒長方向の位置が互いに一致するように溶接されている。この場合、このフィルタ1では、各移動規制用凸部21aと各移動規制用凸部21bとが筒体11の筒長方向において重なる位置に(開口部11a側から見たときに、各移動規制用凸部21aの存在によって各移動規制用凸部21bが見えなくなる位置関係となるように)それぞれ溶接されている。また、筒体11の開口部11a側の端部には、その内径が筒体11の外径と等しい円環状のフランジ14が溶接されている。
【0035】
板材12は、厚み1mm程度のステンレススチールによって外径195mm程度の円板状(平面視正円形状)に形成されている。この場合、このフィルタ1では、配置部P1に取り付けられる板材12が「第1の板材」に相当すると共に、配置部P3に取り付けられる板材12が「第3の板材」に相当する。なお、このフィルタ1では、「第1の板材」および「第3の板材」として、同一材料で同一形状に形成された同じ板材12を使用しているが、これらを互いに相違する板材(形状、厚みおよび材質等のうちのいずれか1つ以上が相違する板材)で構成することもできる。この板材12には、図7に示すように、ドレン水Wを通過させる複数の通過孔31(「第1の通過孔」および「第3の通過孔」に相当)が全域に分散して形成されている。
【0036】
この場合、油吸着材3等が充填された筒体内を筒長方向に沿ってドレン水Wが移動させられるときには、一般的に、筒体の径方向中央部よりも、筒体の内壁面に接する部位の方がドレン水Wが移動し易くなる傾向がある。このため、上記の板材12のような仕切り板が存在しない筒体では、筒体の径方向中央部よりも、筒体の内壁面に接する部位の方がドレン水Wの通過量が多くなる結果、筒体の径方向中央部よりも、筒体の内壁面に接する部位の近傍において油吸着材3の処理能力が短期間で低下するおそれがある。したがって、このフィルタ1では、外縁部側の通過孔31よりも、中央部側の通過孔31の方が大径となるように板材12に複数の通過孔31を形成することにより、フィルタ用容器2における筒体11の内壁面に沿って移動しようとするドレン水Wの一部を筒体11の径方向中央部に案内して、筒体11の径方向の全域にドレン水Wを均一に分散させて処理する構成が採用されている。
【0037】
また、この板材12には、図8に示すように、筒長方向に対して直交するように筒体11内に位置させた状態において筒体11に対して筒長方向に沿って移動させたときに各移動規制用凸部21a,21bに対する板材12の当接を回避可能な当接回避用凹部32(板材12の外縁部が中心に向かって凹むように切り欠いた切欠き部:「第1の当接回避用凹部」および「第3の当接回避用凹部」に相当)が筒体11における各移動規制用凸部21a,21bの形成位置に対応して90°の等角度間隔で形成されている。これにより、図7〜9に示すように、この板材12では、周方向において隣り合う当接回避用凹部32,32の間(「第1の当接回避用凹部の形成部位を除く外縁部領域」および「第3の当接回避用凹部の形成部位を除く外縁部領域」に相当)が、後述するようにして、各移動規制用凸部21a,21bに当接させる凸部当接部33(「第1の凸部当接部」および「第3の凸部当接部」に相当)として機能する。
【0038】
板材13は、「第2の板材」に相当し、厚み6mm程度のステンレススチールによって外径200mm程度の円板状に形成されると共に、図1,5に示すように、その中央部には、ドレン水Wを導入(または排出)するための接続用配管を接続する通過孔41が設けられている。この場合、このフィルタ1では、筒体11の配置部P2に板材13が溶接によって固定的に取り付けられている。これにより、このフィルタ1では、筒体11および板材13によって構成される有底円筒部自体が圧力容器として機能するように構成されている。油吸着材3は、綿状のポリプロピレンや、ポリプロピレンをシート状に加工した織布または不織布で構成されている。この場合、油吸着材3としては、薄板状のポリプロピレンの小片や、細筒状のポリプロピレンの裁断片を使用することもできる。エマルション破壊材4は、アミン系のエマルション破壊シート(繊維状のポリプロピレンをベースとしてシート状に加工された材)で構成されている。
【0039】
一方、気液分離槽110は、図示しないドレン配管を介してドレン水Wと共に圧送される気体(空気)を除去するための分離槽であって、図1に示すように、筒体111、天板112および底板113で構成された圧力容器を備えている。筒体111は、一例として、フィルタ1におけるフィルタ用容器2の筒体11と同径の円筒形に形成されている。天板112は、一例として、その外径がフィルタ1におけるフィルタ用容器2のフランジ14の外径と同径の円板状に形成されて、筒体111における一方の端部(同図における上端部)に溶接されている。底板113は、その外径が筒体111と同径の円板状に形成されて、筒体111における他方の端部(同図における下端部)に溶接されている。
【0040】
この場合、筒体111における側面には、上記のドレン配管を接続可能に構成されて、ドレン水Wを導入するための導入口114が設けられている。また、天板112の径方向中央部には、導入口114から導入したドレン水Wをフィルタ1に送水するための送水管115が配設されている。さらに、筒体111における上方側面には、分離した気体(空気)を排出するための)排出口116が設けられ、この排出口116には、減圧弁117が取り付けられている。この気液分離槽110は、天板112がフィルタ1のフランジ14に対してボルト締めされることによってフィルタ1と一体化される。
【0041】
なお、フィルタ1の使用形態としては、上記の油水分離装置100のように気液分離槽110と組み合わせて使用する形態に限定されない。例えば、図2に示すように、上記のフィルタ1を他のフィルタ1Aと組み合わせて1つのフィルタとして機能させる使用形態を採用することができる(「一方のフィルタにおける一方側の開口部と、他方のフィルタにおける一方側の開口部とを互いに対向させた状態において両フィルタが一体化されているフィルタ」の一例)。また、図3に示すように、中央部に通過孔51aが形成された蓋体51によって開口部11aを閉塞してフィルタとして機能させる使用形態を採用することができる。
【0042】
この場合、上記のフィルタ1Aは、矢印Cの向きでドレン水Wを通過させることによって油分を除去するために、フィルタ用容器2内における油吸着材3やエマルション破壊材4の収容位置がフィルタ1とは相違するものの、その他の構成は、フィルタ1と同様に構成されている。したがって、図4に示すように、このフィルタ1Aについても開口部11aを蓋体51によって閉塞してフィルタとして機能させる使用形態を採用することができる。なお、フィルタ1,1Aにおいて同様の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0043】
また、上記のフィルタ1,1Aは、油吸着材3やエマルション破壊材4の収容順序が相違するだけで、ほぼ同様の組立て手順に従って組み立てることができる。したがって、以下、主として、フィルタ1の組立て方法について説明する。このフィルタ1の組み立てに際しては、まず、板材13(配置部P2)と配置部P3との間に油吸着材3やエマルション破壊材4を充填する。具体的には、まず、開口部11aから筒体11内に油吸着材3を収容して、配置部P2に溶接されている板材13の上に載置する。この際には、筒体11の筒長に対する1/2の高さ(配置部P2,P3間の筒長方向に沿った長さに対応する高さ)よりも十分に高い位置まで油吸着材3を収容する。なお、油吸着材3は、油分を吸着することによって筒体11内での体積が未使用状態よりも減少する傾向がある。したがって、油分の吸着によって体積が減少した状態において、後述するように板材12を移動規制用凸部21bに対して十分に強い力で押し付けることができる十分な量の油吸着材3を配置部P2,P3間に充填する。
【0044】
次いで、開口部11aから筒体11内に複数枚のエマルション破壊材4を収容して油吸着材3の上に載置する。続いて、配置部P3に取り付ける板材12を開口部11aから筒体11内に収容し、板面が筒体11の筒長方向に対して直交する姿勢を維持しつつ、筒体11に対して板材12を筒長方向に沿って配置部P3に向けて移動させる。この際には、図8に示すように、配置部P1に溶接された各移動規制用凸部21aや、配置部P3に溶接された各移動規制用凸部21bに対して板材12の凸部当接部33が当接することのないように、平面視において筒体11の各移動規制用凸部21a,21bと板材12の当接回避用凹部32とを一致させるように筒体11に対して板材12を回転させた状態において板材12を筒長方向に沿って移動させる。これにより、板材13と板材12との間において油吸着材3やエマルション破壊材4が十分に圧縮される。この場合、油吸着材3の上に載置したエマルション破壊材4が板材12に対して面的に接触した状態で油吸着材3やエマルション破壊材4が圧縮されるため、フィルタ用容器2内においてエマルション破壊材4に傾きや大きな変形が生じる事態が回避される。
【0045】
次いで、板材12が配置部P3よりもやや下方に位置するまで(配置部P3よりもやや配置部P2寄りに位置するまで:板材12が各移動規制用凸部21bよりも配置部P2側に位置するまで)移動させた状態において、筒体11に対して板材12を時計回り、または反時計回りのいずれかの向きに45°程度回転させる。この後、板材13に向かって板材12を押し付けている力を緩めることにより、図9に示すように、圧縮された油吸着材3やエマルション破壊材4の復元力によって板材12の凸部当接部33が筒体11の各移動規制用凸部21bに対して図1に示す矢印A1の向きで押し付けられる。これにより、矢印A1の向きでの移動が規制された状態で、配置部P3に対して板材12が取り付けられる。
【0046】
続いて、開口部11aから筒体11内に油吸着材3を収容して、配置部P3に取り付けられている板材12の上に載置する。この際には、筒体11の筒長に対する1/2の高さ(配置部P3,P1間の筒長方向に沿った長さに対応する高さ)よりも十分に高い位置まで油吸着材3を収容する。この際にも、油分の吸着によって体積が減少した状態において、後述するように板材12を移動規制用凸部21aに対して十分に強い力で押し付けることができる十分な量の油吸着材3を配置部P3,P1間に充填する。次いで、筒体11内に複数枚のエマルション破壊材4を収容して、油吸着材3の上に載置する。続いて、配置部P1に取り付ける板材12の板面が筒体11の筒長方向に対して直交する姿勢を維持しつつ、板材12を筒体11の筒長方向に沿って配置部P1に向けて移動させる。
【0047】
この際には、図8に示すように、配置部P1に溶接された各移動規制用凸部21aに対して板材12の凸部当接部33が当接することのないように、平面視において筒体11の各移動規制用凸部21aと板材12の当接回避用凹部32とを一致させるように筒体11に対して板材12を回転させた状態において板材12を移動させる。これにより、配置部P3に取り付けた板材12と、配置部P1に向かって移動させている板材12との間において油吸着材3やエマルション破壊材4が十分に圧縮される。この場合、油吸着材3の上に載置したエマルション破壊材4が配置部P1に取り付ける板材12に対して面的に接触した状態で油吸着材3やエマルション破壊材4が圧縮されるため、フィルタ用容器2内においてエマルション破壊材4に傾きや大きな変形が生じる事態が回避される。
【0048】
次いで、板材12が配置部P1よりもやや下方に位置するまで(配置部P1よりもやや配置部P2,P3寄りに位置するまで:板材12が各移動規制用凸部21aよりも配置部P2,P3側に位置するまで)移動させた状態において、筒体11に対して板材12を時計回り、または反時計回りのいずれかの向きに45°程度回転させる。この後、板材13に向かって板材12を押し付けている力を緩めることにより、図9に示すように、圧縮された油吸着材3の復元力によって板材12の凸部当接部33が筒体11の各移動規制用凸部21aに対して図1に示す矢印A1の向きで押し付けられる。これにより、矢印A1の向きでの移動が規制された状態で、配置部P1に対して板材12が取り付けられて、フィルタ1が完成する。
【0049】
なお、前述したフィルタ1Aについては、上記のフィルタ1の組立て時とほぼ同様の組立て手順に従って組み立てることができるが、フィルタ1の組立て時とは異なり、配置部P2,P3の間にエマルション破壊材4および油吸着材3の順でこれらを収容すると共に、配置部P3,P1の間にエマルション破壊材4および油吸着材3の順でこれらを収容する。これにより、上記のフィルタ1と同様にして、油吸着材3に対して、ドレン水Wの通過方向(矢印Cの向き)における上流側にエマルション破壊材4を位置させることができる。この場合、このフィルタ1Aでは、図2,4における矢印B1の向きが「第1の向き」に相当し、矢印B2の向きが「第2の向き」に相当する。
【0050】
また、フィルタ1,1Aとは相違するが、配置部P2,P3間に油吸着材3だけを配置すると共に、配置部P3,P1の間に油吸着材3およびエマルション破壊材4を配置する構成や、配置部P3,P1の間には油吸着材3だけを配置すると共に、配置部P2,P3の間に油吸着材3およびエマルション破壊材4を配置する構成(図示せず)を採用することもできる。このような構成を採用する場合においては、その組立て時における油吸着材3およびエマルション破壊材4の収容順序を適宜変更することにより、油吸着材3に対して、ドレン水Wの通過方向の上流側にエマルション破壊材4が位置するように構成するのが好ましい。
【0051】
一方、油水分離装置100によってドレン水Wを浄化する際には、図1に示すように、組立てが完了したフィルタ1を気液分離槽110に取り付けると共に、気液分離槽110の導入口114にドレン配管(供給用配管)を接続し、かつ、フィルタ1の通過孔41に、処理後のドレン水Wを排水溝等に案内する配管(排出用配管)を接続する。この状態において、ドレン発生源からドレン配管を介してドレン水Wが送水されると、まず、空気等の気体が混入したドレン水Wが導入口114から気液分離槽110内に導入され、図1に破線で示すように、気液分離槽110内において、空気とドレン水Wとが分離される。この場合、気液分離槽110内において分離された気体は、気液分離槽110内が所定の圧力を超えたときに減圧弁117が開放されることにより、排出口116から気液分離槽110の外部に排出される。一方、気液分離槽110内において気体が分離されて除去されたドレン水Wは、導入口114から導入されるドレン水Wや気体の圧力によって送水管115内を上昇させられて、開口部11aからフィルタ1内に導入される。
【0052】
この場合、フィルタ1に導入されたドレン水Wは、エマルション化した状態の油分および水分と、相互に分離した状態の油分および水分とが混在した状態となっている。したがって、このフィルタ1では、気液分離槽110の送水管115を介してフィルタ用容器2内に流入したドレン水Wが各エマルション破壊材4を通過する際に、エマルション化している油分および水分が分離され(エマルション破壊され)、分離した油分が、エマルション化していない状態でフィルタ用容器2内に流入した油分と共に油吸着材3によって吸着されて除去される構成が採用されている。この場合、このフィルタ1では、配置部P1,P3に取り付けた板材12に複数の通過孔31が分散して形成されているため、例えば、板材の中央部に1つの通過孔31が形成された板材を使用した構成とは異なり、フィルタ用容器2内に流入したドレン水Wが各通過孔31を通過して筒体11の筒径方向に拡がるようにしてフィルタ用容器2内を通過させられることとなる。これにより、フィルタ用容器2内のすべての油吸着材3を有効に利用することができる結果、ドレン水W中の油分が十分に除去されて、通過孔41から油分が含まれていない水分(浄化されたドレン水W)だけが排出される。
【0053】
一方、このフィルタ1では、長期間に亘る使用によって油吸着材3が十分な量の油分を吸着した状態となったときに、使用済みのフィルタ1を分解して、油吸着材3およびエマルション破壊材4だけを新品に交換することで、フィルタ用容器2を再利用することが可能となっている。具体的には、まず、配置部P1に取り付けられている板材12を図1に示す矢印A2の向きで板材13に向かって移動させて各移動規制用凸部21aと板材12の凸部当接部33との間に隙間を生じさせる。次いで、筒体11に対して板材12を時計回り、または反時計回りのいずれかの向きに45°程度回転させる。この際には、図8に示すように、各移動規制用凸部21aと当接回避用凹部32とが平面視において一致するまで板材12を回転させたときに、筒体11に対する板材12の係合が自動的に解除されて、油吸着材3やエマルション破壊材4の復元力によって板材12が図1に示す矢印A1の向きで移動させられる。続いて、筒体11から板材12を取り外す。
【0054】
次いで、配置部P3に取り付けられている板材12上の使用済みのエマルション破壊材4および油吸着材3を筒体11内から取り出した後に、配置部P3に取り付けられている板材12を取り外す。この際には、図1に示す矢印A2の向きで、板材12を板材13に向かって移動させて各移動規制用凸部21bと凸部当接部33との間に隙間を生じさせる。続いて、筒体11に対して板材12を時計回り、または反時計回りのいずれかの向きに45°程度回転させる。この際には、図8に示すように、各移動規制用凸部21bと当接回避用凹部32とが平面視において一致するまで板材12を回転させたときに、筒体11に対する板材12の係合が自動的に解除されて、油吸着材3やエマルション破壊材4の復元力によって板材12が図1に示す矢印A1の向きで移動させられる。続いて、筒体11から板材12を取り外す。
【0055】
次いで、板材13上の使用済みのエマルション破壊材4および油吸着材3を筒体11内から取り出した後に、筒体11、板材12,12,13を洗浄する。この後、前述した組立て手順と同様にして、フィルタ用容器2内に新しい(未使用の)油吸着材3やエマルション破壊材4を充填することにより、フィルタ1の再製作業が完了する。この場合、油吸着材3やエマルション破壊材4を収容する網材や籠材が存在しないこのフィルタ1では、油分を吸着した使用済みの油吸着材3と、処理能力が低下した使用済みのエマルション破壊材4とを分別して廃棄するだけで他の余分な廃材が発生しないため、低コストで、しかも容易に廃材を処理することができる。
【0056】
一方、気液分離槽110と組み合わせてドレン水Wを浄化する上記の油水分離装置100とは異なり、フィルタ1やフィルタ1Aを、いわゆるラインフィルタとして使用することもできる。具体的には、一例として、図2に示すように、フィルタ1の開口部11aと、フィルタ1Aの開口部11aとを互いに対向させるようにして両フランジ14,14を当接させ、その状態において両フランジ14,14を挿通させたボルトにナットを締め付けることによってフィルタ1,1Aを一体化させる。次いで、フィルタ1Aにおける通過孔41にドレン配管(供給用配管)を接続し、フィルタ1における通過孔41に排出用配管を接続して、同図に示す矢印Cの向きで、ドレン水Wを通過させる。これにより、両フィルタ1,1Aがラインフィルタとして機能して、ドレン水Wが浄化される。
【0057】
また、フィルタ1を単体で使用してラインフィルタとして使用する際には、まず、図3に示すように、フランジ14に蓋体51を取り付けて開口部11aを閉塞する。次いで、蓋体51の通過孔51aにドレン配管(供給用配管)を接続し、フィルタ1における通過孔41に排出用配管を接続して、同図に示す矢印Cの向きで、ドレン水Wを通過させる。これにより、フィルタ1が蓋体51と相俟ってラインフィルタとして機能して、ドレン水Wが浄化される。さらに、フィルタ1Aを単体で使用してラインフィルタとして使用する際には、まず、図4に示すように、フランジ14に蓋体51を取り付けて開口部11aを閉塞する。次いで、フィルタ1Aの通過孔41にドレン配管(供給用配管)を接続し、蓋体51の通過孔51aに排出用配管を接続して、同図に示す矢印Cの向きで、ドレン水Wを通過させる。これにより、フィルタ1Aが蓋体51と相俟ってラインフィルタとして機能して、ドレン水Wが浄化される。
【0058】
このように、フィルタ1,1Aを組み合わせて、または、単体でラインフィルタとして使用した場合においても、上記の油水分離装置100のように気液分離槽110と組み合わせて使用する使用形態と同様にして、長期間に亘る使用によって油吸着材3が十分な量の油分を吸着した状態となったときに、使用済みのフィルタ1,1Aを分解して、油吸着材3およびエマルション破壊材4だけを新品に交換することで、フィルタ用容器2を再利用することが可能となっている。
【0059】
このように、このフィルタ1,1Aでは、筒体11における両開口部11a,11bの一方側(この例では、図1における上方側)に規定された配置部P1に、開口部11bから開口部11aに向かう第1の向き(この例では、図1に示す矢印A1の向き)での筒体11内における板材12の移動を規制する4つの移動規制用凸部21aが筒体11の内壁面から突出するように形成され、かつ、板面が筒体11の筒長方向に対して直交するように筒体11内に位置させた状態において筒体11に対して筒長方向に沿って移動させたときに各移動規制用凸部21aに対する板材12の当接を回避可能な当接回避用凹部32が筒体11における各移動規制用凸部21aの形成位置に対応して板材12にそれぞれ形成されると共に、各当接回避用凹部32の形成部位を除く外縁部領域に規定された凸部当接部33がフィルタ用容器2内に充填した油吸着材3によって各移動規制用凸部21aに対して上記の第1の向き(矢印A1の向き)で押し付けられて第1の向きでの移動が規制された状態で配置部P1に板材12が取り付けられている。
【0060】
また、上記の油水分離装置100では、フィルタ1を備えて、ドレン水Wを、筒体11の筒長方向に沿ってフィルタ用容器2内を通過させることによってドレン水Wに含まれている油分を油吸着材3によって吸着させて除去する構成が採用されている。
【0061】
したがって、このフィルタ1,1Aおよび油水分離装置100によれば、筒体11内に油吸着材3やエマルション破壊材4を収容した状態において板材12を板材13に向かって移動させることで油吸着材3やエマルション破壊材4を圧縮し、その状態において筒体11に対して板材12を回転させて各移動規制用凸部21aと凸部当接部33とを平面視において一致させた状態で板材12に加えている力を緩めるだけで、油吸着材3やエマルション破壊材4の復元力によって板材12の各凸部当接部33が筒体11の各移動規制用凸部21aに当接させられて第1の向きでの移動が規制された状態で配置部P1に板材12が取り付けられるため、上部板および下部板を連通させた通しボルトの両端にナットを締め付けることで、上部板および下部板によって外筒の両開口部を閉塞する構成の従来の吸着槽とは異なり、短時間で、しかも容易にフィルタ1を組み立てることができる。また、このフィルタ1,1Aおよび油水分離装置100によれば、油吸着材3によって十分な量の油分が吸着されてフィルタ1,1Aの処理能力が低下したときには、組立て作業と逆の手順に従って筒体11から板材12を取り外して油吸着材3やエマルション破壊材4を取り出すことができるため、フィルタ用容器2を再利用する際のコスト(油吸着材3やエマルション破壊材4だけを新品に交換してフィルタ1,1Aを再製するのに要するコスト)を十分に低減することができる。
【0062】
また、このフィルタ1,1Aおよび油水分離装置100によれば、複数の通過孔31を第1の板材および第3の板材としての板材12に分散して形成したことにより、フィルタ用容器2内に流入したドレン水Wが各通過孔31を通過するようにして筒体11の筒径方向に拡がるため、筒体11の筒径方向の全域において油吸着材3に油分を吸着させることができる結果、ドレン水Wの油分を確実かつ効率良く取り除くことができる。
【0063】
また、このフィルタ1,1Aおよび油水分離装置100では、「第1の板材」としての板材12、および「第3の板材」としての板材12が同一材料で同一形状に形成されている。したがって、このフィルタ1,1Aによれば、部品コストを低減することができるため、フィルタ1,1Aの製造コストを十分に低減することができる。
【0064】
さらに、このフィルタ1,1Aおよび油水分離装置100によれば、筒体11の内径以下の直径の円板状に形成されて板材12,13の間に位置するように筒体11内に配設された板材12を備えたことにより、「第3の板材」としての板材12が存在しない構成とは異なり、「第1の板材」としての板材12と、「第2の板材」としての板材13との間において油吸着材3やエマルション破壊材4に偏りが生じる事態を回避することができる。また、このフィルタ1,1Aおよび油水分離装置100では、「第3の板材」としての板材12に接するようにエマルション破壊材4を収容する構成を採用しているため、このエマルション破壊材4がフィルタ用容器2内において傾いたり、大きく変形したりする事態を回避して、板材12の板面に沿って筒体11の筒径方向にエマルション破壊材4を拡げた状態を維持することができる。このため、筒体11の筒長方向に沿ってフィルタ用容器2内を見たときにエマルション破壊材4が存在しない領域が生じる事態を回避することができる結果、ドレン水Wに含まれているエマルションが確実にエマルション破壊材4を通過させられる。これにより、ドレン水Wにエマルション化した状態で含まれている油分を確実に取り除くことができる。
【0065】
また、このフィルタ1,1Aおよび油水分離装置100では、筒体11において第3の板材としての板材12が取り付けられる配置部P3に、筒体11における開口部11bから開口部11aに向かう第1の向き(この例では、図1に示す矢印A1の向き)での筒体11内における板材12の移動を規制する4つの移動規制用凸部21bが筒体11の内壁面から突出するように形成され、かつ、板面が筒体11の筒長方向に対して直交するように筒体11内に位置させた状態において筒体11に対して筒長方向に沿って移動させたときに各移動規制用凸部21bに対する板材12の当接を回避可能な当接回避用凹部32が筒体11における各移動規制用凸部21bの形成位置に対応して板材12にそれぞれ形成されると共に、各当接回避用凹部32の形成部位を除く外縁部領域に規定された凸部当接部33がフィルタ用容器2内に充填した油吸着材3によって各移動規制用凸部21bに対して第1の向き(矢印A1の向き)で押し付けられて第1の向きでの移動が規制された状態で配置部P3に板材12が取り付けられている。
【0066】
したがって、このフィルタ1,1Aおよび油水分離装置100によれば、まず、「第2の板材」としての板材13と、「第3の板材」としての板材12との間に油吸着材3やエマルション破壊材4を充填し、その後に「第3の板材」としての板材12と「第1の板材」としての板材12との間に油吸着材3やエマルション破壊材4を充填することができる結果、配置部P3に板材12を取り付ける際に油吸着材3やエマルション破壊材4を圧縮するのに要する力、および配置部P1に板材12を取り付ける際に油吸着材3やエマルション破壊材4を圧縮するのに要する力が十分に小さくて済むため、「第3の板材」としての板材12を配置部P3に取り付けない構成と比較して、フィルタ1,1Aを一層容易に組み立てることができる。
【0067】
さらに、このフィルタ1,1Aおよび油水分離装置100によれば、筒長方向において重なる位置に移動規制用凸部21a,21bを形成したことにより、配置部P3に「第3の板材」としての板材12を取り付ける際に、配置部P1に配設されている移動規制用凸部21aに対して当接回避用凹部32を位置合わせして移動規制用凸部21aに対する凸部当接部33の当接を回避した状態の板材12を配置部P3に向けて移動させたときに、この板材12を筒体11に対して回転させることなく、移動規制用凸部21bに対する板材12の当接を回避することができるため、配置部P3に板材12が取り付けられたフィルタ1,1Aを一層容易に組み立てることができる。
【0068】
また、このフィルタ1,1Aによれば、フィルタ1における開口部11aと、フィルタ1Aにおける開口部11aとを互いに対向させた状態において両フィルタ1,1Aを一体化したことにより、1つのフィルタ1(または、フィルタ1A)の筒長方向に沿った長さが過剰に長くなって組み立てが困難となる事態を招くことなく、ドレン水Wの流路を十分に長くすることができる。これにより、処理能力が十分に高いフィルタを容易に組み立てることができる。
【0069】
なお、「フィルタ」の構成は、上記のフィルタ1,1Aの構成に限定されるものではない。具体的には、当接回避用凹部32の周方向に沿った長さよりも、凸部当接部33の周方向に沿った長さの方が長い板材12)を例に挙げて説明したが、図10に示す板材12aのように、凸部当接部33a(「第1の凸部当接部」および「第3の凸部当接部」の他の一例)の周方向に沿った長さよりも、当接回避用凹部32a(板材12aの外縁部が中心に向かって凹むように切り欠いた切欠き部:「第1の当接回避用凹部」および「第3の当接回避用凹部」の他の一例)の周方向に沿った長さの方が長くなるように「第1の板材」および「第3の板材」を構成することもできる。
【0070】
この場合、この板材12aは、前述した板材12と同様にして、複数の通過孔31が分散して形成されると共に、外縁部側の通過孔31よりも中央部側の通過孔31の方が大径となるように形成されている。したがって、前述したフィルタ1において、板材12に代えて板材12aを使用した場合においても、板材12を使用したフィルタ1と同様の効果を奏することができるだけでなく、当接回避用凹部32aが当接回避用凹部32よりも広い(凸部当接部33aが凸部当接部33よりも狭い)ため、凸部当接部33aが移動規制用凸部21a,21bに当接し難くなっていることで、配置部P1,P3に対して一層容易に取り付けることができ、しかも、板材12よりも軽量のため、この板材12aを使用して構成したフィルタ(図示せず)を軽量に形成することができる。
【0071】
また、「第1の移動規制用凸部」としての移動規制用凸部21aや、「第3の移動規制用凸部」としての移動規制用凸部21bに当接する凸部当接部33,33aが平坦に形成された板材12,12aを例に挙げて説明したが、「第1の板材」や「第3の板材」の構成はこれに限定されない。例えば、図11に示す板材12bのように、「第1の移動規制用凸部」としての移動規制用凸部21aや、「第3の移動規制用凸部」としての移動規制用凸部21bに当接する凸部当接部33bに、移動規制用凸部21a,21bを嵌入させることが可能な回動規制用凹部35を形成することもできる。同様にして、図12に示す板材12cのように、移動規制用凸部21a,21bに当接する凸部当接部33cに、移動規制用凸部21a,21bに係合可能な回動規制用凸部36,36を形成することもできる。
【0072】
なお、上記の板材12b,12cは、凸部当接部33b,33cの形状(回動規制用凹部35や、回動規制用凸部36,36の有無)が相違する点を除き、前述した板材12,12aと同様に形成されている。また、図11,12では、矢印A1,B1が「第1の向き」に相当する。したがって、この板材12b,12cは、油吸着材3等と共に筒体11内に収容したときに、油吸着材3によって移動規制用凸部21a,21bに対して上向きに押し付けられるように配置部P1,P3に取り付けられた状態となる。このため、この板材12b,12cを備えたフィルタ(図示せず)および油水分離装置によれば、移動規制用凸部21a,21bに対して33b,33cを押し付けられるようにして、配置部P1,P3に取り付けられた状態において、筒体11に内における板材12b,12cの回動が回動規制用凹部35、または、回動規制用凸部36,36によって規制されるため、筒体11内において、これらの板材12b,12cが配置部P1,P3から外れる事態を確実に回避することができる。
【0073】
また、「第3の板材」としての板材12を筒体11における配置部P3に取り付けた構成(移動規制用凸部21bによる移動が規制された状態に配置した構成)のフィルタ1,1Aを例に挙げて説明したが、図13に示すフィルタ1Bのように、「第3の板材」としての板材12については、筒体11に対して取り付けることなく、「第1の板材配置部」としての配置部P1と、「第2の板材配置部」としての配置部P2との間に規定した位置P3aに位置するように油吸着材3やエマルション破壊材4と共に筒体11内に収容する構成を採用することもできる。なお、このフィルタ1B、および後に参照するフィルタ1Cにおいて、上記のフィルタ1,1Aと同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。このフィルタ1Bのフィルタ用容器2aは、位置P3a(前述したフィルタ1,1Aのフィルタ用容器2における配置部P3に対応する位置)に各移動規制用凸部21bが形成されていない点を除き、前述したフィルタ1,1Aのフィルタ用容器2と同様に構成されている。
【0074】
このフィルタ1Bの組み立てに際しては、一例として、筒体11の開口部11aから、油吸着材3、エマルション破壊材4、「第3の板材」としての板材12、油吸着材3、エマルション破壊材4、および「第1の板材」としての板材12をこの順で板材13の上に載置した後に、油吸着材3やエマルション破壊材4を圧縮するようにして「第1の板材」としての板材12を矢印A2の向きで板材13に向かって移動させて配置部P1に取り付ける。したがって、このフィルタ1B、およびこのフィルタ1Bを備えた油水分離装置によれば、前述したフィルタ1,1Aと同様にして、短時間で、しかも容易に組み立てることができる。また、このフィルタ1Bによれば、フィルタ1,1Aと同様にして短時間で容易に分解することができるため、フィルタ用容器2aを再利用する際のコストを十分に低減することができる。
【0075】
さらに、このフィルタ1B、およびこのフィルタ1Bを備えた油水分離装置によれば、「第3の板材」としての板材12が筒体11に対して上下動可能な状態で「第3の板材配置部」としての配置部P3に配置されている。したがって、このフィルタ1B、およびこのフィルタ1Bを備えた油水分離装置によれば、「第2の板材配置部」としての配置部P2と「第3の板材配置部」としての配置部P3との間の油吸着材3やエマルション破壊材4の充填圧力と、配置部P3と「第1の板材配置部」としての配置部P1との間の油吸着材3やエマルション破壊材4の充填圧力とを均一にすることができる。
【0076】
また、「第2の板材」としての板材13を筒体11の開口部11b側に溶接によって固定的に取り付けたフィルタ1,1A,1Bを例に挙げて説明したが、一例として、図14に示すフィルタ1Cにおけるフィルタ用容器2bのように、「第2の板材」としての板材12を筒体11に対して取り外し可能に配置部P2に取り付けることもできる。このフィルタ1Cは、一例として、同図に破線で示すように、円筒状の筒体の一端部が板体53によって閉塞された圧力容器としてのフィルタケース52内に収容した状態において、筒体11の開口部11aを円板状の蓋体51によって閉塞した状態において使用される。この場合、フィルタケース52の板体53における中央部には、通過孔53aが形成されている。
【0077】
このフィルタ1Cでは、筒体11における両開口部11a,11bの他方側(この例では、図14における上方側)に規定された配置部P2に、筒体11における開口部11aから開口部11bに向かう第2の向き(この例では、図14に示す矢印A2の向き)での筒体11内における板材12の移動を規制する4つの移動規制用凸部21c(「第2の移動規制用凸部」の一例)が筒体11の内壁面から突出するように形成され、かつ、板面が筒体11の筒長方向に対して直交するように筒体11内に位置させた状態において筒体11に対して筒長方向に沿って移動させたときに各移動規制用凸部21cに対する板材12の当接を回避可能な当接回避用凹部32(「第2の当接回避用凹部」の一例)が筒体11における各移動規制用凸部21cの形成位置に対応して板材12にそれぞれ形成される(この例では、4つ形成される)と共に、各当接回避用凹部32の形成部位を除く外縁部領域に規定された凸部当接部33(「第2の凸部当接部」の一例)がフィルタ用容器2内に充填した油吸着材3によって各移動規制用凸部21cに対して第2の向き(矢印A2の向き)で押し付けられて第2の向きでの移動が規制された状態で配置部P2に板材12が取り付けられている。したがって、このフィルタ1C、およびこのフィルタ1Cを備えた油水分離装置によれば、筒体11に対する板材13の溶接等が不要となる分だけ、フィルタ用容器2bを安価に製造することができる。
【0078】
また、このフィルタ1Cでは、「第1の板材」としての板材12、「第2の板材」としての板材12、および「第3の板材」としての板材12が同一材料で同一形状に形成されている。したがって、このフィルタ1C、およびこのフィルタ1Cを備えた油水分離装置によれば、部品コストを低減することができるため、フィルタ1Cの製造コストを十分に低減することができる。
【0079】
さらに、このフィルタ1C、およびこのフィルタ1Cを備えた油水分離装置によれば、複数の通過孔31を第2の板材としての板材12に分散して形成したことにより、フィルタ用容器2b内に流入したドレン水Wが各通過孔31を通過するようにして筒体11の筒径方向に拡がるため、筒体11の筒径方向の全域において油吸着材3に油分を吸着させることができる結果、ドレン水Wに含まれている油分を確実かつ効率良く取り除くことができる。
【0080】
また、エマルション破壊材4は、この種のフィルタにおいて必須の構成要素ではなく、エマルション破壊材4が存在しない構成を採用することもできる。この場合、板材13の通過孔41や板材12の各通過孔31から油吸着材3がはみ出す事態を回避するために、例えば、ポリプロピレンをシートに加工した不織布や織布(「油吸着材」の他の一例)をエマルション破壊材4に代えて収容することもできる。また、油吸着材3などと共に活性炭を収容することもできる。
【0081】
さらに、4つの移動規制用凸部21a、および4つの移動規制用凸部21bを筒体11に形成すると共に、これらに応じて、4つの当接回避用凹部32(32a)および4つの凸部当接部33(33a)を板材12(12a)に形成したフィルタ1,1Aや、4つの移動規制用凸部21aを筒体11に形成すると共に、これに応じて、4つの当接回避用凹部32(32a)および4つの凸部当接部33(33a)を板材12(12a)に形成したフィルタ1Bや、4つの移動規制用凸部21a、4つの移動規制用凸部21b、および4つの移動規制用凸部21cを筒体11に形成すると共に、これらに応じて、4つの当接回避用凹部32(32a)および4つの凸部当接部33(33a)を板材12(12a)に形成したフィルタ1Cを例に挙げて説明したが、「第1の移動規制用凸部」、「第2の移動規制用凸部」および「第3の移動規制用凸部」や、「第1の当接回避用凹部」、「第2の当接回避用凹部」および「第3の当接回避用凹部」や、「第1の凸部当接部」、「第2の凸部当接部」および「第3の凸部当接部」の数はこれに限定されず、2つ以上の任意の数に規定することができる。
【0082】
この場合、一例として、「第1の移動規制用凸部」、「第2の移動規制用凸部」および「第3の移動規制用凸部」の数を2つとしたときに、「第1の当接回避用凹部」、「第2の当接回避用凹部」および「第3の当接回避用凹部」や、「第1の凸部当接部」、「第2の凸部当接部」および「第3の凸部当接部」の数を4つ(「第1の移動規制用凸部」、「第2の移動規制用凸部」および「第3の移動規制用凸部」の数とは異なる数)に規定することもできる。
【0083】
また、平面視正円形状の板材12,12a〜12cを例に挙げて説明したが、「第1の板材」、「第2の板材」および「第3の板材」はこれに限定されず、平面視楕円形や、平面視多角形状などの任意の略円形(筒体11内における回転が可能な形状:「円板状」の他の一例)に形成することができる。さらに、筒体11の内壁面に移動規制用凸部21a〜21C等を溶接によって後付けした構成を例に挙げて説明したが、「第1の移動規制用凸部」、「第2の移動規制用凸部」および「第3の移動規制用凸部」の構成はこれに限定されず、一例として、筒体11の内壁面の一部が筒体11の中央部に向かって突出するようにプレス加工等によって筒体11を変形させることによって上記の各移動規制用凸部を形成することができる(図示せず)。
【0084】
さらに、「第1の板材配置部」としての配置部P1と、「第2の板材配置部」としての配置部P2との間に、「第3の板材配置部」としての配置部P3を1箇所だけ規定した構成のフィルタ1,1A〜1Cを例に挙げて説明したが、「第1の板材配置部」および「第2の板材配置部」の間に規定する「第3の板材配置部」の数はこれに限定されず、任意の複数箇所の「第3の板材配置部」を規定して「第3の板材」を配置することができる。また、「第1の板材配置部」、「第2の板材配置部」および「第3の板材配置部」に形成する「移動規制用凸部」の数は、互いに等しい数に限定されず、各板材配置部毎に互いに相違する数の「移動規制用凸部」を形成することもできる。さらに、「第1の板材」、「第2の板材」および「第3の板材」に形成する当接回避用凹部の数も、互いに等しい数に限定されず、互いに相違する数とすることができる。
【0085】
加えて、各板体に関し、「取り付け」または「溶接」によって各配置部に配置した構成を例に挙げて説明したが、「配置された」との状態には、「取り付け」および「溶接」以外の各種配置状態がこれに含まれる。同様にして、油吸着材に関しても、「充填」した状態でフィルタ容器内に配置した構成を例に挙げて説明したが、「配置された」との状態には、「充填」以外の各種配置状態がこれに含まれる。
【符号の説明】
【0086】
100 油水分離装置
1,1A〜1C フィルタ
2,2a,2b フィルタ用容器
3 油吸着材
4 エマルション破壊材
11 筒体
11a,11b 開口部
12,12a〜12c,13 板材
21a〜21c 移動規制用凸部
31,41 通過孔
32,32a 当接回避用凹部
33,33a〜33c 凸部当接部
110 気液分離槽
P1〜P3 配置部
P3a 位置
W ドレン水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の筒体と、当該筒体における両開口部の一方側に規定された第1の板材配置部に配置された円板状の第1の板材と、前記筒体における前記両開口部の他方側に規定された第2の板材配置部に配置された円板状の第2の板材とを備えて構成されたフィルタ用容器を備え、当該フィルタ用容器内に油吸着材が配置されると共に、前記筒体の筒長方向に沿って前記フィルタ用容器内を通過させられる処理対象液に含まれている油分を前記油吸着材によって吸着して除去可能に構成されたフィルタであって、
前記第1の板材配置部には、前記他方の開口部から前記一方の開口部に向かう第1の向きでの前記筒体内における前記第1の板材の移動を規制する少なくとも2つの第1の移動規制用凸部が当該筒体の内壁面から突出するように形成され、
前記第1の板材は、前記筒体の内径以下の直径に形成されると共に前記処理対象液を通過させる第1の通過孔が形成され、かつ、板面が前記筒長方向に対して直交するように前記筒体内に配置した状態において当該筒体に対して当該筒長方向に沿って移動させたときに前記各第1の移動規制用凸部に対する当該第1の板材の当接を回避可能な第1の当接回避用凹部が当該筒体における当該各第1の移動規制用凸部の形成位置に対応してそれぞれ形成されると共に、当該各第1の当接回避用凹部の形成部位を除く外縁部領域に規定された第1の凸部当接部が前記フィルタ用容器内に配置された前記油吸着材によって前記各第1の移動規制用凸部に対して前記第1の向きで押し付けられて当該第1の向きでの移動が規制された状態で前記第1の板材配置部に配置されているフィルタ。
【請求項2】
前記第1の板材には、複数の前記第1の通過孔が分散して形成されている請求項1記載のフィルタ。
【請求項3】
前記第2の板材配置部には、前記一方の開口部から前記他方の開口部に向かう第2の向きでの前記筒体内における前記第2の板材の移動を規制する少なくとも2つの第2の移動規制用凸部が当該筒体の内壁面から突出するように形成され、
前記第2の板材は、前記筒体の内径以下の直径に形成されると共に前記処理対象液を通過させる第2の通過孔が形成され、かつ、板面が前記筒長方向に対して直交するように前記筒体内に配置した状態において当該筒体に対して当該筒長方向に沿って移動させたときに前記各第2の移動規制用凸部に対する当該第2の板材の当接を回避可能な第2の当接回避用凹部が当該筒体における当該各第2の移動規制用凸部の形成位置に対応してそれぞれされると共に、当該各第2の当接回避用凹部の形成部位を除く外縁部領域に規定された第2の凸部当接部が前記油吸着材によって前記各第2の移動規制用凸部に対して前記第2の向きで押し付けられて当該第2の向きでの移動が規制された状態で前記第2の板材配置部に配置されている請求項1または2記載のフィルタ。
【請求項4】
前記第2の板材には、複数の前記第2の通過孔が分散して形成されている請求項1から3のいずれかに記載のフィルタ。
【請求項5】
前記第1の板材および前記第2の板材が同一材料で同一形状に形成されている請求項3または4記載のフィルタ。
【請求項6】
前記筒体の内径以下の直径の円板状に形成されると共に前記処理対象液を通過させる第3の通過孔が形成されて、前記第1の板材および前記第2の板材の間に位置するように前記筒体内に配設された第3の板材を備えている請求項1から5のいずれかに記載のフィルタ。
【請求項7】
前記筒体において前記第3の板材が配置される第3の板材配置部には、前記第1の向きでの当該筒体内における当該第3の板材の移動を規制する少なくとも2つの第3の移動規制用凸部が当該筒体の内壁面から突出するように形成され、
前記第3の板材は、板面が前記筒長方向に対して直交するように前記筒体内に配置した状態において当該筒体に対して当該筒長方向に沿って移動させたときに前記各第3の移動規制用凸部に対する当該第3の板材の当接を回避可能な第3の当接回避用凹部が当該筒体における当該各第3の移動規制用凸部の形成位置に対応してそれぞれ形成されると共に、当該各第3の当接回避用凹部の形成部位を除く外縁部領域に規定された第3の凸部当接部が前記油吸着材によって前記各第3の移動規制用凸部に対して前記第1の向きで押し付けられて当該第1の向きでの移動が規制された状態で前記第3の板材配置部に配置されている請求項6記載のフィルタ。
【請求項8】
前記第3の板材には、複数の前記第3の通過孔が分散して形成されている請求項6または7記載のフィルタ。
【請求項9】
前記第1の板材および前記第3の板材が同一材料で同一形状に形成されている請求項7または8記載のフィルタ。
【請求項10】
前記第1の移動規制用凸部および前記第3の移動規制用凸部が前記筒長方向において重なる位置に形成されている請求項9記載のフィルタ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載のフィルタを2つ備え、一方の当該フィルタにおける前記一方側の開口部と、他方の当該フィルタにおける前記一方側の開口部とを互いに対向させた状態において当該両フィルタが一体化されているフィルタ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載のフィルタを備え、前記処理対象液を、前記筒体の筒長方向に沿って前記フィルタ用容器内を通過させることによって当該処理対象液に含まれている油分を前記油吸着材によって吸着させて除去する油水分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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