説明

フィルタの製造方法および製造装置

【課題】切断位置を検出し切断を自動で行いさらに所定の山数を満たすフィルタの製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のフィルタの製造方法は、プリーツ加工された濾材をプリーツの一部を残して、プリーツ形状を固定するための樹脂を塗布し、樹脂により固定されていないプリーツ部分のプリーツを開き、一部のプリーツが開いたことにより生じるプリーツの斜面の勾配変化を検知し、検知されたプリーツ斜面の勾配の変化部分を切断して一定長さのプリーツ濾材を得る工程を含むことを特徴としたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリーツ形状を有するフィルタの製造方法および製造装置に関するものであり、さらに詳しくは濾材の裁断に際し読み取りエラーが少なく歩留まりの高いフィルタの製造方法および製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気清浄機器に使用されるフィルタとしては、圧力損失が少なく捕集効率を高くするためにプリーツ(山谷折り)形状を有するものが主流となっている。
【0003】
プリーツ付の濾材は、通常、長手方向に連続して製造された濾材にプリーツ加工し、樹脂でプリーツ形状を固定したのち、フィルタユニットに組み込む大きさに濾材を裁断する。裁断は、人がプリーツの数を数えて人の手により切断するか、機械によりプリーツの数量を読み取り制御して切断するか(例えば、特許文献1参照)であった。
【0004】
しかしながら、人手による切断方法は切断作業に時間を要し、切断位置のずれなどがあり、また機械によりプリーツの数量を読み取るにしても、読み取りエラーを生じやすく、ラインの速度を落とさざるを得ないか、歩留まりが低下するという問題があった。
【特許文献1】特開2000−015021号公報(段落番号[0012])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の従来技術の問題点を解消しようとするものであり、濾材の裁断に際し読み取りエラーが少なく歩留まりの高いフィルタの製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下の構成を採用する。すなわち、
(1)プリーツ加工された濾材をプリーツの一部を残して、プリーツ形状を固定するための樹脂を塗布し、樹脂により固定されていないプリーツ部分のプリーツを開き、一部のプリーツが開いたことにより生じるプリーツの間隔の変化を検知し、検知されたプリーツの間隔の変化部分を切断して一定長さのフィルタ用濾材を得る工程を含むことを特徴とするフィルタの製造方法。
【0007】
(2)コンベアの速度比によってプリーツを開くようにしたことを特徴とする前記(1)に記載のフィルタの製造方法。
【0008】
(3)一部のプリーツが開いたことにより生じるプリーツの間隔の変化をプリーツの斜面の勾配の変化による光の反射率の変化により検知することを特徴とする前記(1)または(2)に記載のフィルタの製造方法。
【0009】
(4)プリーツの一部を残して、プリーツ形状を固定するための樹脂を塗布したプリーツ加工された濾材の、樹脂により固定されていないプリーツ部分のプリーツを開く手段と、該プリーツを開く手段によって一部のプリーツが開いたことにより生じるプリーツの間隔の変化を検知する手段と、検知されたプリーツの間隔の変化部分を切断する手段とを有することを特徴とするフィルタの製造装置。
【0010】
(5)プリーツを開く手段がコンベアの速度比によるものであることを特徴とする前記(4)に記載のフィルタの製造装置。
【0011】
(6)プリーツの間隔の変化を検知する手段がプリーツの斜面の勾配の変化による光の反射率の変化を検知するものであることを特徴とする前記(4)または(5)に記載のフィルタの製造装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、切断すべきプリーツ部分と切断しないプリーツ部分との差を明確にした上で検知するので、濾材の裁断に際し読み取りエラーが少なく歩留まりの高いフィルタの製造方法および製造装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のフィルタの製造方法は、プリーツ加工された濾材をプリーツの一部を残して、プリーツ形状を固定するための樹脂を塗布し、樹脂により固定されていないプリーツ部分のプリーツを開き、一部のプリーツが開いたことにより生じるプリーツの斜面の勾配変化を検知し、検知されたプリーツ斜面の勾配の変化部分を切断して一定長さのプリーツ濾材を得る工程を含むことを特徴としたものである。
【0014】
本発明において扱う濾材としては、紙、マット、フェルト、合成繊維不織布、ガラス繊維不織布、プラスチック等を用いることができる。また、これらを重ね合わせて用いてもよい。また、表面に10−10〜10−7C/cmの電荷を有するエレクトレット合成繊維不織布を用いることも、集塵性能を高める上で好ましい。
【0015】
本発明において扱う濾材には、プリーツ加工が施される。プリーツ加工は、例えば、レシプロ機やロータリープリーツ機により施すことができる。
【0016】
プリーツ加工された濾材には、プリーツ形状を固定するための樹脂を塗布する。
【0017】
プリーツ形状を固定するための樹脂としては、熱可塑性を有するホットメルト樹脂が作業性に優れる点で好ましく、例えば、ポリオレフィン系ホットメルト樹脂、ポリウレタン系ホットメルト樹脂、ポリアミド系ホットメルト樹脂等を用いることできる。
【0018】
ホットメルト樹脂は、予めホットメルトアプリケーターなどの加熱手段により融点以上に加熱・溶融し、ノズルによりプリーツの線上に間隔をおいて塗布すると良い。ノズルの直径としては、0.3〜1.0mmが作業性の点から好ましい。
【0019】
樹脂の塗布は、一方の面側に塗布した後にもう一方の面側に塗布してもよいし、両面同時に塗布してもよい。
【0020】
本発明のフィルタの製造方法は、プリーツの一部を残して樹脂を塗布することが重要である。そうすることで、長手方向につながっている濾材を切断するに際し、後述するように切断箇所を容易に検知することが可能となる。
【0021】
プリーツの一部を残して樹脂を塗布する態様としては例えば、両面側から山及び谷を樹脂で固定する態様において一方の面側に樹脂を塗布しない箇所を残してもよいし、両方の面側のいずれからも樹脂を塗布しない箇所を残してもよい。
【0022】
切断工程について説明する。切断工程では、コンベアにより搬出された濾材の樹脂により固定されていないプリーツ部分のプリーツを開くことにより、樹脂が塗布された部分のプリーツと塗布されていない部分のプリーツとの間に、開き方に差を設けることができ、切断すべき箇所を検知し易くし、切断する。
【0023】
樹脂により固定されていないプリーツ部分のプリーツを開く方法には、プリーツが開けばどのような方法でもよいが、たとえば「複数コンベア方式」や「Rつきコンベア方式」がある。
【0024】
「Rつきコンベア方式」では、カット部のコンベアをR(滑らかな凸)形状とすることで強制的に樹脂により固定されていないプリーツ部分を開くことができる。しかし、山高さ、樹脂の太さに応じ「開き」量を制御するためにはコンベアのR形状の曲率を変えなければならないため、多品種に対応するためには品種数、生産条件の数だけのコンベアの種類が必要となり、コスト増加が懸念される。
【0025】
「複数コンベア方式」では、複数の速度比の異なるコンベアにより濾材を運び、樹脂により固定されていないプリーツ部分のプリーツを強制的に開く。図7を用いて、「複数コンベア方式」によりプリーツを開く方法について説明する。まず、濾材はコンベア5の速度で運ばれ、その後コンベア6に移る。コンベア6の速度はコンベア5の速度よりも速いため、濾材はコンベア6に引っ張られ、樹脂により固定されていないプリーツ部分のプリーツ4が開く。このとき樹脂が塗布されている部分のプリーツ部分のプリーツは樹脂が硬化しているためほとんど変化しない。コンベアの速度比(コンベア速度比=コンベア6の速度/コンベア5の速度)は、フィルタの山高さやプリーツ形状を固定している樹脂の太さによるが、例えば山高さ35mm、樹脂の太さが10mmの場合で1.2〜1.4が好ましい。 さらに、速度制御が可能であるコンベアを使用することで、コンベアの速度比を自由に設定することができ、「開き」量を制御することができる。
【0026】
濾材の樹脂により固定されていないプリーツ部分のプリーツが開いたことにより生じるプリーツ間隔の変化を反射型センサーや画像センサーによって検出する。検出手段としては、コスト面より光反射型センサーが好ましい。図10は検出手段として反射型センサーを用いた例を示す。センサーは、プリーツ斜面に光を照射する投光部9とその反射光を受光する受光部10とを有する。反射型センサーでは、プリーツが開いたことにより生じる斜面の勾配の変化を光の反射率の変化として検出することができ、光の反射率がある値を超えたところをカット位置と判断することができる。
【0027】
濾材のカット位置を検出した後、カット位置が切断場所となるタイミングでコンベア6および7を停止させ、濾材は切断装置により切断されフィルタ用濾材となる。
【0028】
切断装置としては、回転刃、丸刃(折り切)、超音波、レーザーなどがあり、切断動作としては、特に限定しないが、1点での切断を行う方法の場合、濾材1の幅方向の片端からもう一方の端へとエアシリンダーなどの駆動手段により、切断装置が幅方向と水平に動作させ、切断を行う。切断後、コンベア6および7は動き出し、フィルタ用濾材は、コンベア7によってさらに運ばれる。カット位置の検出、コンベア停止、切断、コンベア動作開始の繰り返しにより、樹脂により固定されていないプリーツ4の切断を連続的に行うことができる。
【0029】
プリーツ加工工程、樹脂塗布工程、切断工程は単独行うこともできるし、連続して行うこともできる。また、プリーツ加工工程と樹脂塗布工程、樹脂塗布工程と切断工程をそれぞれ連続で行うこともできる。
【0030】
フィルタ用濾材は、そのまま専用のケース(空気清浄機など)に収納されフィルタとして用いることもできるが、幅方向の2辺、あるいは幅方向と長さ方向の4辺に枠体が取り付けられフィルタとなるものもある。図8に2辺に枠材8が取り付けられた2辺枠フィルタの傾斜図を、図9に4辺に枠材8が取り付けられた4辺枠のフィルタの傾斜図を示す。
【0031】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、設備は実施例に限定されるものではなく、実施例1ではコンベアを3台用いているが、樹脂により固定されていないプリーツ部分のプリーツを開くことができれば何台でもよい。
【実施例】
【0032】
[実施例1]
山高さ25mm、幅300mm、長さ400mm、山数100山、の図1に示すフィルタ用濾材を製造した。
【0033】
濾材として合成繊維不織布(エレクトレット化されたポリプロピレンメルトブロー不織布と短繊維不織布との積層体)を用い、樹脂はポリオレフィン系ホットメルト樹脂(軟化点140℃)を用いた。
切断すべきプリーツ部において、切断する谷部分(図3 4;谷部分)の両側のプリーツ部の山側部分(図3 2A;プリーツ部の山側)を残して、プリーツ形状を固定するための樹脂を塗布した。
樹脂の太さは約φ0.5mm、樹脂の本数は5本とし、ほぼ等間隔となるようノズルを配置した。実施形態1の塗布パターンを図3、図4に示す。
【0034】
樹脂の塗布は、ホットメルトアプリケーターにより約160℃で加熱し溶融した状態(160℃における粘度11Ns/m、オープンタイム20〜30秒)で行い、ノズル径はφ0.4mm、折り畳み機構はロータリープリーツで行った。樹脂により固定されていないプリーツ部分を開く方法としては、「複数コンベア方式」とし、速度比は、1.3とし、図11に示すような光反射型センサーを用い、濾材のカット位置を検出した後、カット位置が切断場所となるタイミングでコンベア6および7を停止させ、濾材は切断装置により切断した。切断方法は、「丸刃」を用い押し切る方法で行った。
【0035】
結果は、切断作業に要した時間は切断位置の確認に平均1秒以内/回、切断に平均3秒/回であり、切断サンプル数4000個に対し、カット位置の誤検出はなく、収率は100%であった。
【0036】
[実施例2]
濾材、樹脂は実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
切断すべきプリーツ部において、切断する谷部分(図5 4;谷部分)とその両側のプリーツ部の山側部分(図5 2A;プリーツ部の山側)を残して、プリーツ形状を固定するための樹脂を塗布した。
【0037】
それ以外は実施例1と同様にして、図2に示すフィルタ用濾材を製造した。実施形態2の塗布パターンを図5、図6に示す。
【0038】
結果は、切断作業に要した時間は切断位置の確認に平均1秒以内/回、切断に平均3秒/回であり、切断サンプル数4100個に対し、カット位置の誤検出はなく収率は100%であった。
【0039】
[比較例1]
切断工程を作業者が裁縫鋏を用い、ホットメルト樹脂の塗布されていない部分を目視判断し、手動で切断する方法とした点以外は実施例1と同様である。
【0040】
結果は、人手による作業であるため個人差があるが、切断作業に要した時間は切断位置の確認に平均5秒/回、切断に平均5秒/回の平均10秒/回の時間が必要となった。
また、フィルタの幅サイズが大きくなると、切断距離が長くなり、更に切断作業に必要な時間が長くなるとともに、作業者への負担が増えることが懸念される。
【0041】
[比較例2]
切断工程での検出手段を、温度センサーによりホットメルト樹脂が塗布されていない山部を検出し、カット位置と判断する方法とした点以外は実施例1と同様である。
【0042】
結果は、切断作業に要した時間は切断位置の確認に平均1秒以内/回、切断に平均3秒/回であり、切断サンプル数200個に対し、カット位置の誤検出が32個であった。誤検出は濾材の蛇行により樹脂(約φ0.5mm)の検出位置がずれ、良好な切断位置の検出ができなかったためである。
【0043】
[比較例3]
切断工程での検出手段を、切断位置よりも手前で予めプリーツの山部へマークをつけておき(図示せず)マークセンサーを用いてマークを検出し、所定の山数を検出した時点でカット位置と判断する方法とした点以外は実施例1と同様である。
【0044】
結果は、切断作業に要した時間は切断位置の確認に平均1秒以内/回、切断に平均3秒/回であり、切断サンプル数200個に対し、カット位置の誤検出が63個であった。誤検出は濾材の蛇行によりマークの検出位置がずれ、良好な切断位置の検出ができなかった。また、マークの検出ミスによりカウント数がずれた場合、切断位置がずれたままであった。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施例1で用いたフィルタ用濾材の斜視図である。
【図2】実施例2で用いたフィルタ用濾材の斜視図である。
【図3】実施例1で用いたフィルタの展開時のホットメルト樹脂の塗布状態を示す正面図である。
【図4】実施例1で用いたフィルタのプリーツ加工時のホットメルト樹脂の塗布状態を示す断面図である。
【図5】実施例2で用いたフィルタの展開時のホットメルト樹脂の塗布状態を示す正面図である。
【図6】実施例2で用いたフィルタのプリーツ加工時のホットメルト樹脂の塗布状態を示す断面図である。
【図7】コンベアの配置の一例を示す側面図である。
【図8】2辺枠のフィルタの一例を示す傾斜図である。
【図9】4辺枠のフィルタの一例を示す傾斜図である。
【図10】光反射型センサー検知手段の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0046】
1:濾材
2:プリーツ部
3:ホットメルト樹脂
4:谷部分
5:コンベア
6:コンベア
7:コンベア
8:枠材
9:投光部
10:受光部
A:プリーツ部の山側(表側)
B:プリーツ部の谷側(裏側)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリーツ加工された濾材をプリーツの一部を残して、プリーツ形状を固定するための樹脂を塗布し、樹脂により固定されていないプリーツ部分のプリーツを開き、一部のプリーツが開いたことにより生じるプリーツの間隔の変化を検知し、検知されたプリーツの間隔の変化部分を切断して一定長さのフィルタ用濾材を得る工程を含むことを特徴とするフィルタの製造方法。
【請求項2】
コンベアの速度比によってプリーツを開くようにしたことを特徴とする請求項1に記載のフィルタの製造方法。
【請求項3】
一部のプリーツが開いたことにより生じるプリーツの間隔の変化をプリーツの斜面の勾配の変化による光の反射率の変化により検知することを特徴とする請求項1または2に記載のフィルタの製造方法。
【請求項4】
プリーツの一部を残して、プリーツ形状を固定するための樹脂を塗布したプリーツ加工された濾材の、樹脂により固定されていないプリーツ部分のプリーツを開く手段と、該プリーツを開く手段によって一部のプリーツが開いたことにより生じるプリーツの間隔の変化を検知する手段と、検知されたプリーツの間隔の変化部分を切断する手段とを有することを特徴とするフィルタの製造装置。
【請求項5】
プリーツを開く手段がコンベアの速度比によるものであることを特徴とする請求項4に記載のフィルタの製造装置。
【請求項6】
プリーツの間隔の変化を検知する手段がプリーツの斜面の勾配の変化による光の反射率の変化を検知するものであることを特徴とする請求項4または5に記載のフィルタの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−296124(P2008−296124A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144613(P2007−144613)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】