説明

フィルタエレメント用インナーチューブ及びフィルタエレメント

【課題】濾材同士を接合するために行われていた多くの工程を簡略化し、濾材同士を接着するためのテープやクリップ等を使用する工程を経ることなく、濾材を配設可能なフィルタエレメント用インナーチューブ及びフィルタエレメントを提供する。
【解決手段】流体を通過させるための孔11を有する中空円筒状のフィルタエレメント用インナーチューブ10の外周部の軸方向に、濾材20の周方向における両端部20a,20aと溶着するための突起部15を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタエレメント用インナーチューブ及びフィルタエレメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用油濾過器等に用いられるフィルタエレメントとして、帯状の濾材をひだ折りして中空円筒状となした濾過部と、その内周に配設された、流体を通過させるための孔を有する中空円筒状のインナーチューブとを備えてなるフィルタエレメントは知られている。インナーチューブは、濾過部の内周に位置して、通常、濾過部の外側から内側へと流れる流体を濾過する際、濾過部を支持し、その変形を防ぐ構造体である。
上記フィルタエレメントの製造は、ひだ折りした濾材をエンドレス状に形成するために、濾材の端部同士を接合し、次いでこれをインナーチューブに被せる工程を備えて行われている。そして、濾材の端部同士を接合する方法としては、次のような方法がある。
(1)ホットメルトアプリケーター等を使用して、濾材の端部同士を重ねた面にホットメルト接着剤を流し込み接着する方法。
(2)濾材の端部同士を重ねた面にシールテープを挟み、超音波溶着機を使用して、該テープを溶かして溶着する方法(特許文献1参照)。
(3)濾材の端部同士を重ね合わせた状態で、該重ね合わせ部分を断面U字状の帯状クリップで挟み、かしめて接合する方法。
さらに、特許文献2に示されるように、プラスチッククリップで濾材の端部を把持し、超音波融着により、エンボス加工成形して一体化させる方法等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平06−96101号公報
【特許文献2】特許第3936188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、従来の技術では、濾材をインナーチューブの外周に配設する前に、ひだ折りした濾材の端部同士を接合する工程を必須としている。また、前記(2)の超音波溶着機を用いた方法では、濾材にテープを貼り、ずれないように仮止めし、超音波溶着した後、はみ出したテープを取り除く、といった煩雑な作業を必要としている。また、設備を自動化するのに、テープの自動供給が難しく、トラブルが発生しやすいという問題があった。
そこで、本発明は、濾材同士を接合するために行われていた多くの工程を簡略化し、濾材同士を接着するためのテープやクリップ等を使用する工程を経ることなく、濾材を配設可能なフィルタエレメント用インナーチューブ及びフィルタエレメントを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)帯状の濾材をひだ折りして中空円筒状に形成される濾過部の内側に配設される、流体を通過させるための孔を有する中空円筒状のフィルタエレメント用インナーチューブであって、
外周部の軸方向に、前記濾材の周方向における両端部と溶着するための突起部を備えた、フィルタエレメント用インナーチューブである。
(2)前記突起部は、外周部の軸方向に帯状に延びるように形成されたものである。
(3)前記突起部の表面は、凹凸面に形成されたものである。
(4)帯状の濾材をひだ折りして中空円筒状に形成した濾過部と、該濾過部の内側に配設された、流体を通過させるための孔を有する中空円筒状のインナーチューブとを備えたフィルタエレメントであって、
前記インナーチューブは、その外周部の軸方向に突起部を備え、
該突起部を前記濾材の周方向における両端部で挟み込むようにして、前記濾材の周方向における両端部と前記突起部とが溶着されてなる、フィルタエレメントである。
【発明の効果】
【0006】
(1)本発明に係るインナーチューブによれば、外周部の軸方向に、濾材の周方向における両端部と溶着するための突起部を備えているため、突起部を濾材の周方向における両端部で挟み込むようにして、濾材の周方向における両端部と突起部とを溶着し、濾材をインナーチューブの外側の所定位置に配設することができる。したがって、従来行われていた、濾材をインナーチューブの外周に配設する前に、ひだ折りした濾材の端部同士を接合する工程を経ることなく、かつ濾材同士を接着するためのテープやクリップ等を使用せずに、濾材の端部同士の接合と、インナーチューブへの濾材の組付けとを同一工程により行うことができ、作業効率が向上する。
濾材同士を接着するためのテープやクリップ等を使用せずに、濾材をインナーチューブに直接に配設することができ、製造工程の自動化ないし半自動化もしやすい。
(2)前記突起部は、外周部の軸方向に帯状に延びるように形成されたものである構成により、濾材の両端部をインナーチューブに確実に固定することができる。
(3)前記突起部の表面は、凹凸面に形成されたものである構成により、濾材の両端部と突起部との馴染みがよくなり、溶着がしやすくなる。
(4)本発明に係るフィルタエレメントによれば、従来行われていた、濾材をインナーチューブの外周に配設する前に、ひだ折りした濾材の端部同士を接合する工程を経ることなく、かつ濾材同士を接着するためのテープやクリップ等を使用せずに、濾材の端部同士の接合と、インナーチューブへの濾材の組付けとを同一工程により行うことができ、作業効率が向上する。
濾材同士を接着するためのテープやクリップ等を使用せずに、濾材をインナーチューブに直接に配設することができ、製造工程の自動化ないし半自動化もしやすい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1のインナーチューブ10の斜視図である。
【図2】実施例1のインナーチューブ10を示すもので、(a)は全体の平面図、(b)は(a)のB部分(突起部15部分)の拡大図、(c)は正面図である。
【図3】実施例1のインナーチューブ10に濾材20を装着した状態の、(a)は平面図、(b)は断面図(図3(a)のB−B断面図)である。
【図4】実施例1のインナーチューブ10に濾材20を装着した状態の突起部15部分(図3(a)のC部分)の拡大図である。
【図5】濾材20と突起部15の溶着方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ひだ折りした濾材20の両端部20a,20aを接合する機能をインナーチューブ10に設けた突起部15に持たせることにより、従来行われていた、濾材の両端部同士を接合する工程を省略し、省資源、省エネルギー化を実現した。
インナーチューブ10は、例えばポリアミド系合成樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系合成樹脂その他の熱可塑性樹脂を主材として成形されてなる構造体であり、流体を通過させるための多数の孔11を有する中空円筒状に形成されている。インナーチューブ10は、濾材20と溶着可能な合成樹脂製とする。
また、突起部15は、インナーチューブ10と一体成形によって形成されている。突起部15は濾材20と溶着可能な合成樹脂製であるため、この突起部15に従来技術におけるテープの機能を持たせることが可能となる。このため、従来技術で用いられていたテープは不要となる。
インナーチューブ10の内部には、直径方向に架橋された補強片12を設けることができる。
濾材20は、不織布その他のシート状の帯状の濾材が用いられ、突起部15と溶着可能な材料により形成される。これを交互に折る等のひだ折り加工を施し、インナーチューブ10の外周に沿うように配設し、濾過部とする。この濾過部の軸方向における各端部は、合成樹脂製エンドプレート等により閉塞し、フィルタエレメントとなす。濾過部の軸方向における各端部及びフィルタエレメントの各端部の処理は、公知の手段を採用し得る。濾過部の外周に、流体を通過させるための多数の孔を有する中空円筒を設けることは任意である。
【実施例1】
【0009】
図1,2に示すとおり、インナーチューブ10の外周部の軸方向には、濾材20の周方向における両端部20a,20aと溶着するための突起部15が設けられている。突起部15は、円筒体をなすインナーチューブ10の円筒体の周方向の一部において外側に向けて突出し、インナーチューブ10の軸方向(高さ方向)のほぼ全域にわたって直線状に延びる帯状片状に形成されている。突起部15の突出長さや厚さ、断面形状は、インナーチューブ10の材質、濾材20の材質等を考慮して選定する。
突起部15の表面は、凹凸面に形成されている。図示の例では、断面鋸歯状ないし波状となるように凸部15aが形成され、各凸部15aは、軸方向に向けて直線状に延びている。
【0010】
図3,4に示すとおり、インナーチューブ10の外側に、帯状の濾材20をひだ折りして中空円筒状に形成した濾過部が配設される。突起部15を、濾材20の周方向における両端部20a,20aで挟み込むようにして、濾材の周方向における両端部20a,20aと突起部15とが溶着されることにより、濾材20は突起部15に固定されている。
【0011】
濾材の周方向における両端部20a,20aと突起部15との溶着手段は、限定されないが、超音波溶着が好ましい一例として挙げられる。
上記溶着は、例えば、図5に示すように、ひだ折り加工された濾材20を裏返し(表裏反転)した状態、すなわち濾材20がインナーチューブ10を包囲しない状態で、該濾材20の周方向における両端部20a,20aで突起部15を挟み込み、その一方の側に受け治具31を当て、他方の側から、超音波溶着のホーン32を加圧する。
溶着が完了した後、裏返してあった濾材20を再度反転することにより、濾材20がインナーチューブ10を包囲するようにインナーチューブ10の外側に配設された状態(図3に示す状態)とすることができる。
【0012】
以上、実施するための形態を説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲で適宜、付加、変形等なし得るものである。オイルフィルタ、エアフィルタ等の各種流体の濾過器に適用することができる。
【符号の説明】
【0013】
10 フィルタエレメント用インナーチューブ
11 孔
15 突起部
15a 凸部
20 濾材
20a 濾材の端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の濾材をひだ折りして中空円筒状に形成される濾過部の内側に配設される、流体を通過させるための孔を有する中空円筒状のフィルタエレメント用インナーチューブであって、
外周部の軸方向に、前記濾材の周方向における両端部と溶着するための突起部を備えた、フィルタエレメント用インナーチューブ。
【請求項2】
前記突起部は、外周部の軸方向に帯状に延びるように形成された、請求項1に記載のフィルタエレメント用インナーチューブ。
【請求項3】
前記突起部の表面は、凹凸面に形成された、請求項1又は2に記載のフィルタエレメント用インナーチューブ。
【請求項4】
帯状の濾材をひだ折りして中空円筒状に形成した濾過部と、該濾過部の内側に配設された、流体を通過させるための孔を有する中空円筒状のインナーチューブとを備えたフィルタエレメントであって、
前記インナーチューブは、その外周部の軸方向に突起部を備え、
該突起部を前記濾材の周方向における両端部で挟み込むようにして、前記濾材の周方向における両端部と前記突起部とが溶着されてなる、フィルタエレメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−689(P2013−689A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135801(P2011−135801)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000222163)東洋エレメント工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】