説明

フィルタユニット

【課題】燃料電池を用いた発電装置等のハウジングの内部のように狭い場所に装着された場合であっても、十分量の空気を流入させることができることで空気を効率的に浄化することができるフィルタユニットを提供することを目的とする。
【解決手段】周面が通気性の外壁と内壁を有してなる二重管構造の筒状ケーシングの両壁の間にガス吸着剤を充填し、一方の端面を通気性または非通気性とし、他方の端面を粉塵除去用ろ材を充填した筒状ケーシングの一方の端面に固定することで一体化し、二重管構造の筒状ケーシングの少なくとも周面から空気を流入させ、取り込まれた空気はその流通方向を粉塵除去用ろ材を充填した筒状ケーシングの長手方向に変えられて、粉塵除去用ろ材を充填した筒状ケーシングの二重管構造の筒状ケーシングの端面が固定された端面と反対側の端面から浄化した空気を流出させるようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、燃料電池等を備えた発電装置や精密機械等の装置のハウジング内に装着可能なフィルタユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
空気中のガスや粉塵を除去するフィルタユニット46は、一般的に、図6に示すような空気の流通路となる筒状ケーシング47に上流側からガス吸着剤48と粉塵除去フィルタ用ろ材としてのプレフィルタ用ろ材49と高性能フィルタ用ろ材50が直列に充填された構造となっている。
【0003】
このようなフィルタユニット46は、例えば、クリーンルーム等のように広い場所に装着される場合は、筒状ケーシング47の上流側の端面から十分量の空気を流入させることができるので空気を効率的に浄化することができる。
しかし、例えば、図8に示すような、近年、開発が進められている燃料電池を用いた家庭用の発電装置等のハウジング13の内部に設置された装着装置12にフィルタユニット46を装着する場合は、筒状ケーシング47の上流側の端面がハウジング13の内面近くに位置すると、十分量の空気を流入させにくいので、空気の効率的な浄化ができないという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、燃料電池を用いた発電装置等のハウジングの内部のように狭い場所に装着された場合であっても、十分量の空気を流入させることができることで空気を効率的に浄化することができるフィルタユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のフィルタユニットは、請求項1記載の通り、周面が通気性の外壁と内壁を有してなる二重管構造の筒状ケーシングの両壁の間にガス吸着剤を充填し、一方の端面を通気性または非通気性とし、他方の端面を粉塵除去用ろ材を充填した筒状ケーシングの一方の端面に固定することで一体化し(但し二重管構造の筒状ケーシングの一方の端面が通気性である場合は当該端面の内側にはガス吸着剤が充填されているものとする)、二重管構造の筒状ケーシングの少なくとも周面から空気を流入させ、取り込まれた空気はその流通方向を粉塵除去用ろ材を充填した筒状ケーシングの長手方向に変えられて、粉塵除去用ろ材を充填した筒状ケーシングの二重管構造の筒状ケーシングの端面が固定された端面と反対側の端面から浄化した空気を流出させるようにしたことを特徴とする。
また、請求項2記載のフィルタユニットは、請求項1記載のフィルタユニットにおいて、内壁から外壁に向かってシート状ガス吸着剤を巻回することでガス吸着剤を充填したことを特徴とする。
また、請求項3記載のフィルタユニットは、請求項1または2記載のフィルタユニットにおいて、二重管構造の筒状ケーシングの外壁と内壁に複数の通気孔を設けることによって両壁に通気性を付与し、この外壁および/または内壁の通気孔の孔径および/または孔数を制御することによって、内壁から流出する空気の面風速が一定となるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のフィルタユニットは、二重管構造の筒状ケーシングの少なくとも周面から空気を流入させるようにしたので、例えば、燃料電池を用いた発電装置等のハウジングの内部のように狭い場所に装着された場合であっても、十分量の空気を流入させることができることから、空気を効率的に浄化することができる。従って、例えば、浄化した空気を燃料電池の酸素極に効率的に供給することができるので、電池特性が良好な燃料電池を用いた発電装置等を得ることができる。
また、本発明のフィルタユニットにおいて、ガス吸着剤としてシート状のものを用いた場合は、二重管構造の筒状ケーシングにガス吸着剤を簡単に充填することができる。
また、二重管構造の筒状ケーシングの外壁と内壁に複数の通気孔を設けることによって両壁に通気性を付与し、この外壁および/または内壁の通気孔の孔径および/または孔数を制御することによって、内壁から流出する空気の面風速が一定となるようにした場合は、ガス吸着剤の部分間での耐久性のバラツキをなくすことができるので、フィルタユニット全体の長寿命化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は、本発明のフィルタユニットの一実施の形態を示す概略断面図である。
フィルタユニット1は、上流側にガス吸着フィルタ部2、下流側に粉塵除去フィルタ部3を設けた構成となっており、周面が通気性の外壁4と内壁5を有してなる二重管構造の筒状ケーシング6の両壁の間にシート状ガス吸着剤7を内壁5から外壁4に向かって巻回することで充填し、上流側の端面を非通気性の蓋部材8で封止し、下流側の端面を粉塵除去用ろ材としてのプレフィルタ用ろ材10と高性能フィルタ用ろ材11を充填した筒状ケーシング9の上流側の端面に固定することで一体化されている。筒状ケーシング9は、下流側の先端部をテーパ状にしたテーパ部9aを有し、このテーパ部9aの先端部に装着装置と連結するための管状連結部9bを有している。
フィルタユニット1は、ガス吸着フィルタ部2の筒状ケーシング6の周面から空気を流入させ、取り込んだ空気をガス吸着剤7を流通させた後、空気の流通方向を筒状ケーシング9の長手方向に変え、プレフィルタ用ろ材10と高性能フィルタ用ろ材11を流通させて管状連結部9bから浄化して流出させる。
【0008】
従って、本発明のフィルタユニット1の装着対象となる装着装置が、図2に示すような、燃料電池を用いた発電装置等のハウジング13の内部に設置した装着装置12であっても、ガス吸着フィルタ部2の筒状ケーシング6の周面から空気を流入させるようにしたので、十分量の空気が取り込まれ、取り込まれた空気を効率的に浄化して管状連結部9bから流出させることができる。
【0009】
なお、フィルタユニット1のガス吸着フィルタ部2の筒状ケーシング6の周面から取り込まれた空気は、その流通方向を筒状ケーシング9の長手方向に変えられて送り込まれるので、ガス吸着剤7を流通した後の筒状ケーシング6の内壁5から流出する際の面風速は部分間で相違する(下流側近くでは速く上流側近くでは遅い)。このように内壁5から流出する際の空気の面風速が一定ではない場合、ガス吸着剤7における空気が速く流通する部分は、それだけ多くの空気が通過するためにガス吸着能の低下が速くなり、ガス吸着剤の寿命がそれだけ短くなってしまう。
そこで、例えば、筒状ケーシング6の外壁4と内壁5に複数の通気孔を設けることによって両壁に通気性を付与し、この外壁4および/または内壁5の通気孔の孔径および/または孔数を制御することによって、筒状ケーシング6の内壁5から流出する空気の面風速が一定となるようにすることによって、フィルタユニット1の寿命を長くすることができる。
また、空気が一定の風速でガス吸着剤7を流通するようにして内壁5から流出する際の空気の面風速を一定にするために、ガス吸着フィルタ部2の筒状ケーシング6の外壁4と内壁5の間へのガス吸着剤7の充填密度を変えてもよい(下流側近くでは密にして上流側近くでは疎にする)。
【0010】
図3は、本発明のフィルタユニットの他の実施の形態を示す概略断面図である。
フィルタユニット14は、上流側にガス吸着フィルタ部15、下流側に粉塵除去フィルタ部16を設けた構成となっており、周面が通気性の外壁17と内壁18を有してなる二重管構造の筒状ケーシング19の両壁の間にシート状ガス吸着剤20aを内壁18から外壁17に向かって巻回することで充填し、また、上流側の端面を通気性としてその内側にガス吸着剤20bを充填し、下流側の端面を粉塵除去用ろ材としてのプレフィルタ用ろ材22と高性能フィルタ用ろ材23を充填した筒状ケーシング21の上流側の端面に固定することで一体化されている。筒状ケーシング21は、下流側の先端部をテーパ状にしたテーパ部21aを有し、このテーパ部21aの先端部に装着装置と連結するための管状連結部21bを有している。筒状ケーシング19と筒状ケーシング21の一体化は、筒状ケーシング21の上流側の端面に筒状ケーシング19の外壁17の大きさと同じ大きさのフランジ21cを設けることで行っている。このような構成とすることで、フィルタユニット14への空気の流入面積を拡大すれば、取り込まれた空気をより効率的に浄化することができる。
【0011】
なお、本発明のフィルタユニットの筒状ケーシングは樹脂製であることが好ましい。樹脂製にすれば、ユニットを使い捨てにする場合に好都合であり、また、筒状ケーシング同士の一体化が容易となる。ガス吸着剤はシート状のものを用いることで、筒状ケーシングへの充填が容易になるが、粒状活性炭等をそのまま充填してもよい。粉塵除去用ろ材としては、粗塵を除去するためのプレフィルタ用ろ材や、細かい粒子を除去するためのHEPAフィルタ用ろ材等の高性能フィルタ用ろ材を用いることができる。本発明のフィルタユニットにはファンが設けられていないので、本発明のフィルタユニットはファンを内蔵した装着装置の吸気部に装着されることになる。装着装置との連結方法は限定されるものではなく、フィルタユニットの交換の容易性を考えると、フィルタユニットの連結部にOリングなどを設置して、ワンタッチ方式で行えるようにすることが好ましい。
【実施例】
【0012】
次に、実施例1と2、比較例、従来例のフィルタユニットについて、圧力損失、ガス除去効率、フィルタ寿命等の効果を比較した。
【0013】
(実施例1)
図4に示すフィルタユニット25は、上流側にガス吸着フィルタ部31、下流側に粉塵除去フィルタ部35を設けた構成となっており、周面が通気性の外壁26と内壁27を有してなる二重管構造の筒状ケーシング28の両壁の間にシート状ガス吸着剤29を内壁27から外壁26に向かって巻回することで充填し、上流側の端面を非通気性の蓋部材30で封止し、下流側の端面を粉塵除去用ろ材としてのプレフィルタ用ろ材33と高性能フィルタ用ろ材34を充填した筒状ケーシング32の上流側の端面に固定することで一体化されている。矢印は空気の流通方向を示す。
【0014】
(実施例2)
図5に示すフィルタユニット36は、上流側にガス吸着フィルタ部37、下流側に粉塵除去フィルタ部45を設けた構成となっており、周面が通気性の外壁38と内壁39を有してなる二重管構造の筒状ケーシング40の両壁の間にシート状ガス吸着剤41aを内壁39から外壁38に向かって巻回することで充填し、また、上流側の端面を通気性としてその内側にガス吸着剤41bを充填し、下流側の端面を粉塵除去用ろ材としてのプレフィルタ用ろ材43と高性能フィルタ用ろ材44を充填した筒状ケーシング42の上流側の端面に固定することで一体化されている。矢印は空気の流通方向を示す。
【0015】
(従来例)
図6に示すフィルタユニット46は、筒状ケーシング47に上流側からガス吸着剤48、プレフィルタ用ろ材49、高性能フィルタ用ろ材50が直列に充填されている。
【0016】
(比較例)
図7に示すフィルタユニット51は、筒状ケーシング52に上流側からガス吸着剤54、プレフィルタ用ろ材55、高性能フィルタ用ろ材56が直列に充填され、ガス吸着剤54を充填した部分に接する筒状ケーシング52の周面部分に通気孔52aを設けている。
【0017】
圧力損失、ガス除去効率(ケミカル効率)、フィルタ寿命(ケミカル寿命)の評価方法を以下に記載する。
圧力損失:
フィルタユニットに風量0.06(m3/min)を通風し、その時のフィルタユニット前後の差圧を微差圧計(マノメータ)で測定した。
ガス除去効率:
フィルタユニットに所定の濃度のガスを通風し、その時のフィルタユニット前後のガス濃度をイオンクロマトグラフにて測定して、以下の式にてガス除去効率を算出した。
ガス除去効率(%)=(1−(下流ガス濃度/上流ガス濃度))×100
粉塵除去効率:
フィルタユニットに所定の濃度のガスを連続して通風し、ガス除去効率の経時変化を測定し、ガス除去効率80%を確保できた時間を寿命とした。
【0018】
【表1】

【0019】
表1から明らかなように、実施例1と2のフィルタユニットは、従来例と比較例のフィルタユニットと比較して圧力損失が小さかった。また、比較例のフィルタユニットと比較してフィルタ寿命が長寿命化していた。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、燃料電池を用いた発電装置等のハウジングの内部のように狭い場所に装着された場合であっても、十分量の空気を流入させることができることで空気を効率的に浄化することができるフィルタユニットを提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態を示すフィルタユニットの概略断面図
【図2】図1のフィルタユニットをケーシング内に装着した状態を示す説明図
【図3】本発明の他の実施の形態を示すフィルタユニットの概略断面図
【図4】本発明の実施例1のフィルタユニットの概略断面図
【図5】本発明の実施例2のフィルタユニットの概略断面図
【図6】従来例のフィルタユニットの概略断面図
【図7】比較例のフィルタユニットの概略断面図
【図8】図6のフィルタユニットをケーシング内に装着した状態を示す説明図
【符号の説明】
【0022】
1 フィルタユニット
2 ガス吸着フィルタ部
3 粉塵除去フィルタ部
4 外壁
5 内壁
6 筒状ケーシング
7 シート状ガス吸着剤
8 蓋部材
9 筒状ケーシング
9a テーパ部
9b 管状連結部
10 プレフィルタ用ろ材
11 高性能フィルタ用ろ材
12 装着装置
13 ハウジング
14 フィルタユニット
15 ガス吸着フィルタ部
16 粉塵除去フィルタ部
17 外壁
18 内壁
19 筒状ケーシング
20a シート状ガス吸着剤
20b ガス吸着剤
21 筒状ケーシング
21a テーパ部
21b 管状連結部
21c フランジ
22 プレフィルタ用ろ材
23 高性能フィルタ用ろ材
25 フィルタユニット
26 外壁
27 内壁
28 筒状ケーシング
29 シート状ガス吸着剤
30 蓋部材
31 ガス吸着フィルタ部
32 筒状ケーシング
33 プレフィルタ用ろ材
34 高性能フィルタ用ろ材
35 粉塵除去フィルタ部
36 フィルタユニット
37 ガス吸着フィルタ部
38 外壁
39 内壁
40 筒状ケーシング
41a シート状ガス吸着剤
41b ガス吸着剤
42 筒状ケーシング
43 プレフィルタ用ろ材
44 高性能フィルタ用ろ材
45 粉塵除去フィルタ部
46 フィルタユニット
47 筒状ケーシング
48 ガス吸着剤
49 プレフィルタ用ろ材
50 高性能フィルタ用ろ材
51 フィルタユニット
52 筒状ケーシング
52a 通気孔
54 ガス吸着剤
55 プレフィルタ用ろ材
56 高性能フィルタ用ろ材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周面が通気性の外壁と内壁を有してなる二重管構造の筒状ケーシングの両壁の間にガス吸着剤を充填し、一方の端面を通気性または非通気性とし、他方の端面を粉塵除去用ろ材を充填した筒状ケーシングの一方の端面に固定することで一体化し(但し二重管構造の筒状ケーシングの一方の端面が通気性である場合は当該端面の内側にはガス吸着剤が充填されているものとする)、二重管構造の筒状ケーシングの少なくとも周面から空気を流入させ、取り込まれた空気はその流通方向を粉塵除去用ろ材を充填した筒状ケーシングの長手方向に変えられて、粉塵除去用ろ材を充填した筒状ケーシングの二重管構造の筒状ケーシングの端面が固定された端面と反対側の端面から浄化した空気を流出させるようにしたことを特徴とするフィルタユニット。
【請求項2】
内壁から外壁に向かってシート状ガス吸着剤を巻回することでガス吸着剤を充填したことを特徴とする請求項1記載のフィルタユニット。
【請求項3】
二重管構造の筒状ケーシングの外壁と内壁に複数の通気孔を設けることによって両壁に通気性を付与し、この外壁および/または内壁の通気孔の孔径および/または孔数を制御することによって、内壁から流出する空気の面風速が一定となるようにしたことを特徴とする請求項1または2記載のフィルタユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−98234(P2007−98234A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−289420(P2005−289420)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000232760)日本無機株式会社 (104)
【Fターム(参考)】