説明

フィルターユニット

【課題】被処理液中の金属成分を化学濾過するフィルターユニットにおいて、被処理液の透過を濾過材の全処理可能領域で満遍なく行うことのできるフィルターユニットを提供すること。
【解決手段】被処理液の流入口をハウジングの下部端板(入口端板)の中央に、処理液の排出口をハウジングの上部端板(出口端板)に、それぞれ形成し、濾過体のエンドプレートを支持部材で支持して、エンドプレートとハウジングの下部端板間に等間隔の被処理液通路を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中の金属成分を除去するフィルターユニットに係り、特に、金属不純物を含む高濃度、高粘度液体中から金属成分を除去するのに適したフィルターユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体中の金属成分を、繊維基材にイオン交換能やキレート形成能をもたせた濾過材を用いて除去することが行われている。
【0003】
このような濾過材は、例えば、中空円筒状の濾過体に形成し、円筒状のハウジング内に収容してフィルターユニットとして用いられる。
【0004】
図10は、このような従来のフィルターユニットの一例を示したものである。
このフィルターユニット1は円筒状のハウジング2内に円筒状の濾過体3を同軸的に配置して構成されており、ハウジング2の上部端板4の濾過体3の外側となる位置に設けた流入口5から被処理液をハウジング2内に供給して濾過体3の円筒状の濾過材6を透過させ、この透過液(処理液)をハウジング2の中央に設けた排出口7から排出するように構成されている。
【0005】
このような構造のフィルターユニット1を、微粒子状の不純物を除去する物理濾過に用いる場合には、ハウジング2内の被処理液の流入口5に近い部分の濾過材6を優先的に透過するが、濾過材に微粒子が堆積して被処理液の透過抵抗が高くなると、順次微粒子の堆積の少ない透過抵抗の低い領域で濾過が行われるようになって、最終的に濾過材は万遍なく有効に利用される。
【0006】
しかし、金属イオン吸着能やキレート形成能を持たせた濾過材を用いて金属イオンを除去する場合には、濾過材に金属イオンが吸着されて金属イオン吸着能がなくなっても、この部分の透過抵抗は物理濾過の場合と比べて大きくならないため、金属イオン吸着能をもつ領域が残っていても金属イオン吸着能のなくなったA領域を被処理液が透過してしまうことがあり、濾過材の全処理可能領域で満遍なく行うことができないという問題があった。
【0007】
被処理液が、例えば高濃度のアルカリや糖液のような高粘度液体の場合には、この傾向が特に強くなり、被処理液の濾過材の透過は、ハウジングの被処理液の流入口近傍で集中して行われ、このため、濾過材が有効に使用されず使用寿命が短いという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、従来構造のフィルターユニットでは、被処理液中の金属成分を除去する場合には、金属イオンを吸着した領域でも被処理液の透過抵抗がさほど大きくならないため、被処理液の透過を濾過材の全処理可能領域で満遍なく行うことが難しく、特に、高粘度液体の場合には、ハウジング内の被処理液の流れに偏りが生じやすく、このため、濾過材の使用寿命が短くなるという問題があった。
【0009】
本発明は、かかる従来の難点を解決すべくなされたもので、上記問題のないフィルターユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のフィルターユニットは、被処理液流入口と処理液排出口を備えた直立円筒状のハウジング内に、金属成分を吸着する濾過材を円筒状に成形し一端に排液管を有する上部プレートを固定し他端にエンドプレートを固定した濾過体を同軸状に配置し、前記ハウジングの被処理液流入口から流入する被処理液を前記濾過体内に透過させ、前記濾過体内の処理液を上部プレートの排液管を介して前記ハウジングの処理液排出口から排出するよう構成されたフィルターユニットにおいて、前記被処理液の流入口を前記ハウジングの下部端板(入口端板)の中央部に、前記処理液排出口を前記ハウジングの上部端板(出口端板)の中央部に、それぞれ形成するとともに、前記濾過体のエンドプレートを支持部材で支持して、前記エンドプレートと前記下部端板間に等間隔の被処理液通路を形成してなることを特徴とする。
【0011】
前記エンドプレートを支持する支持部材は、前記エンドプレートと前記下部端板間に介在するように配置することが望ましい。
このような支持部材は、独立した部品でもよく、エンドプレートの底面に突設させた等高の突起物、例えば等しい高さに突出させた複数のボルトのようなものであってもよい。
また、側壁に周方向に沿ってほぼ均等に被処理液通路を有するリング状部材を、下部端板の被処理液流入口の外周に同心状に配置したものとしてもよい。この場合、下部端板に形成する被処理液の流入口を段孔に形成するとともに、リング状部材に底板を設け、この底板にリング内に連通する短管を突設して、この短管を前記下部端板の流入孔に挿入した構成としてもよい。
【0012】
また、被処理液通路を有するリング状部材とエンドプレート間の空間に、耐食性の良好なプラスチック製の球状ビーズ等の充填物を充填してもよく、この場合被処理液の流入口の段孔と被処理液通路を有するリング状部材に突設された短管の間に耐食性の良好なプラスチック製のメッシュまたは、パンチングプレートで作成された受け皿を挟み込み球状ビーズを保持する。受け皿は前記被処理液の流入口の段孔に取付られた形でも、前記被処理液通路を有するリング状部材に突設された短管の底面に取り付けられた形でもよい。
【0013】
本発明のフィルターユニットでは、被処理液の流入口は、下部端板の中央部に設けられる。被処理液の流入口は、1個に限らず、複数個(3個以上)設けることもできる。この場合、各流入口は、下部端板の中心に対して同心円上に等間隔で配置することが望ましい。
【0014】
さらに、本発明のフィルターユニットでは、ハウジングと濾過体間に形成される被処理液体の流路の断面積を上部にいくほど減少させるテーパーリングを、ハウジングの内壁に沿って配設することができる。
なお、濾過体の上部には、従来と同様に、中央部に濾液出口となる短管が突設された上部プレートが固着され、この短管は上部端板の中央部に設けた処理液の排出口にハウジング内で接続される。
【0015】
本発明の濾過体に使用される濾過材は、用途に応じて各種のものが使用可能であるが、例えば、高粘度液体中の金属除去を目的とする場合には、繊維基材の少なくとも表面にイオン交換能又は金属キレート形成能を有する官能基が固定化された機能性繊維基材を、繊維間を密接させて多数集束、固定したものを使用することができる。
【0016】
このような濾過材は、例えば、通液可能な円筒状のコア上に、必要に応じてイオン交換樹脂を介在させながら複数層円筒状に巻回して固定し、この円筒状の巻回体の一端に、濾液出口となる短管を有する上部プレートを固定し、他端に穴のないエンドプレートを固定して濾過体とされる。
【0017】
濾過材の形状は、円筒状に限られるものではなく、例えば断面が正20角形のような円筒状類似の形状や、その他の断面形状をもつ筒状体であってもよい。
【0018】
また、濾過体は、上記金属吸着能を有する繊維基材で形成した不織布をひだ付け加工し、プリーツ状に通液性の円筒状のコアの外周に複数層巻きつけ、各不織布の層間にイオン交換樹脂を保持させ、上述した上部プレート、エンドプレートを固定して構成することもできる。
【0019】
本発明に使用する高粘度液体用のフィルターユニットは、濾過体の直径:濾過体の高さ(下部プレートの底面と上部プレートの上面間の距離)の比が1:0.8〜1:3.5、好ましくは1:1〜1:2.5、特に好ましくは1:1.2〜1:2である。
【0020】
また、本発明の高粘度液体用のフィルターユニットは、特に、粘度が、10〜400mPa・sの液体の濾過に適している。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、フィルターユニットのハウジングの下部端板の中央部に被処理液の流入口を形成し、濾過体のエンドプレートを支持部材で支持して、エンドプレートと下部端板間に等間隔の空隙を形成させたので、被処理液の流入口から上方に向けて供給された被処理液は、エンドプレートに衝突してエンドプレートに沿って放射状に広がりながら濾過体外周とハウジングの内側面で形成される円筒状の被処理液通路に至り、そこで上方に流れの向きを変えて濾過材の表面に沿って上方に進み、その過程で濾過材を透過して金属成分が除去される。
【0022】
また、被処理液通路を有するリング状部材をハウジングの下部端板と、濾過体のエンドプレート間に設けることで、エンドプレート外周方向へ放射状に均一に流れを形成させることができ、さらに被処理液通路を有するリング状部材の中に球状の充填物を充填することによって、エンドプレート外周方向への放射状の流れをより均一に流すことができる。
【0023】
このように本発明によれば、ハウジング内に供給された被処理液は、主にエンドプレートの底面の作用や充填物の拡散作用により、エンドプレート外周方向へ放射状に均一に流れ、濾過体外周とハウジングの内側面で形成される円筒状の被処理液通路に至り、均等に濾過処理されるので、濾過材は満遍なく被処理液を透過させ、したがって濾過材を効率よく使用することができる。
【0024】
さらに、テーパーリングをハウジング内に配設した場合には、濾過体の周方向のみならず、長手方向にも均等に被処理液体が透過するので、高粘度液体の処理であっても設計どおりの透過性能を発揮し長期にわたり使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施形態の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の濾過体の斜視図である。
【図3】本発明の下部端板の変形例の平面図である。
【図4】図3に示した下部端板の斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の断面図である。
【図5A】図5の支持部材を拡大して示す斜視図である。
【図5B】第2の実施形態の支持部材の変形例を拡大して示す斜視図である。
【図5C】図5Bの支持部材の要部を拡大して示す斜視図である。
【図6】本発明の第3の実施形態の断面図である。
【図7】第3の実施形態の分解図である。
【図8】濾過材から試験試料を採取するための高さ方向の裁断方法を説明する図である。
【図9】濾過材から試験試料を採取するための周方向の裁断方法を説明する図である。
【図10】従来のフィルターユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0027】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態の縦断面図、図2は、濾過体の斜視図である。
これらの図において、符号11は濾過体であり、透液性の円筒状のコア12上に、表面に例えば、イオン交換基、キレート形成基のような金属イオン除去機能を有する官能基を結合した繊維基材13を円筒状に成形し、最外層を透液性の押え部材14で、上下両端を上部プレート15とエンドプレート16で固定して構成されている。
【0028】
エンドプレート16は、押え部材14と同径の円板状とされており、図2に示すように下面側に4個の樹脂ボルト16aが、高さが等しくなるように突設されている。
上部プレート15も押え部材14の外径とほぼ同径の円板状をなしており、上面側の中央には、濾液出口となるコア12と同径の短管15aが設けられ、短管15aの外周には複数のO−リング溝が形成されている。
【0029】
ハウジング17は、直胴部18と、この直胴部18の下部に配置される下部端板19、上部に配置される上部端板20、直胴部18の上下端に下部端板19、上部端板20を液密に固定するための袋キャップ21,22、O−リング23,24から構成されている。
直胴部18は、内径が濾過体11の外径よりも大径で長さが濾過体11の長さよりもやや長い円筒体である。直胴部18の内面の上下端部は面取りされてO−リング23,24の収容部とされている。また、直胴部18の外周面の両端は大径部18aとされており、大径部18aの外周にはネジ溝が形成されている。
【0030】
下部端板19は円板状をなしており、その中央には被処理液の流入口25が形成されている。下部端板19の上面の外周寄りには同心状に環状凸部26が形成されている。環状凸部26の外径は、直胴部18の内径よりやや小径とされて直胴部18の下端が嵌合可能とされている。また、環状凸部26の内径は濾過体11の外径よりも大径とされている。
【0031】
上部端板20は円板状をなしており、その中央には、処理液の排出口27が形成され、処理液の排出口27からやや外れてエア抜きの穴28が形成されている。処理液の排出口27の下面側には濾過体11の上部プレート15に設けた短管15aが挿入可能な段穴27aが形成され、外周寄りには下部端板19の環状凸部26と同形、同寸の環状凸部29が形成されている。
【0032】
直胴部18と、下部端板19,上部端板20を固定する袋キャップ21,22は、それぞれ内面に直胴部18の大径部のネジ部に螺合するネジ部の形成された筒状部21a,22aと、その一端に設けられた下部端板19,上部端板20の縁部に係止される係止部から構成されている。
【0033】
なお、この実施形態のフィルターユニットに用いる濾過材を構成する繊維基材は、用途に応じて各種の公知の材料を用いることができる。また、濾過材以外の各構成部品は、耐食性の良好なプラスチックやステンレスなどの合金の接液部に耐食性の良好なプラスチックでライニング又はコーティングした物によって形成することができる。
【0034】
次に、このフィルターユニットの作用について説明する。
被処理液である、例えば粘度が、10〜400mPa・sの高粘度液体は、ハウジング17の下部端板19の流入口25からハウジング17内に入る。ハウジング17内に入った被処理液は、エンドプレート16の底面に衝突して流れが四方に分散しエンドプレート16の底面に沿ってほぼ均等な放射状の流れとなって濾過体11の縁部に至り、ここで流れの向きが上方に変わって濾過体11の外周に沿って上昇し、上昇につれて濾過体11を透過する。
【0035】
この実施形態によれば、被処理液の流入口がエンドプレートの中央にあり、かつハウジング内に流入した被処理液は、均等に濾過体の全周に供給されるので、濾過効率が高く濾過体の使用寿命も長くなる。
【0036】
図3は、本発明の下部端板の変形例を示す平面図、図4はその斜視図である。
この下部端板19は中央部に被処理液の流入口が複数(3個)形成されている。
この下部端板19aの3個の被処理液の流入口25aはそれぞれ同径とされ、それぞれの中心は、下部端板19aの中心に対して同心円C上に配置され、かつ等間隔とされている。
【0037】
この下部端板19aを備えた実施形態でも、それぞれの流入口25aからハウジング17内に入った被処理液は、エンドプレートの底面に衝突して流れが四方に分散し均等に濾過体の全周に供給されるので、濾過効率が高く濾過体の使用寿命も長くなる。
なお、この実施形態では、第1の実施形態における樹脂ボルト16aを流入口にあわせて同心円上に等間隔に配置された3個とし、中心からの放射方向に対して流入口と位置が重ならないように、濾過体の回転方向位置を調整して配置することが望ましい。
【0038】
[第2の実施形態]
図5は、第2の実施形態の断面図、図5Aはこの実施形態の支持部材の斜視図、図5Bは、その部分拡大図である。
この実施形態は、支持部材20aが、充填物を充填した有底のリング状部材から構成され、下部端板19aの流入口が、リング状部材の中央下面に突設する短管が充填物との受け皿を介して嵌合される段穴とされている点を除いて実施形態1と同一構造なので、図1と共通する部分に同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0039】
この実施形態の支持部材20aは、図5Aに示すように、有底短円筒状のリング状部材(X)とこのリング状部材(X)に充填された耐食性の良好なプラスチック製の球状ビーズ等の充填物(Y)と、充填物(Y)を受ける受け皿(Z)から構成されている。
【0040】
受け皿(X)の側壁は、処理液通路となる穴202が円盤カッターなどで切削された耐食性の良好なプラスチック板で形成され、その底面の中央部には短管203が下方に突設されている。側壁の穴202は、横に長細い矩形をなしており周方向の位置を1/2ピッチずつずらして高さ方向に複数列形成されている。
【0041】
なお、リング状部材は、このようなカッターで形成された穴202の代わりに、短円筒形の枠体にメッシュを張ったようなもので構成してもよい。
【0042】
下部端板19aの被処理液の流入口25の内面側は段穴25aに形成されており、この段穴25aの段部には充填物(Y)より小径の多数の孔の形成された受け皿(Z)が配置され、その上にリング状部材(X)の短管203が嵌合されている。したがって、被処理液は、流入口25から多孔板(Z)を通過してハウジング17内に流入し、充填物(Y)の隙間を縫うように流れて四方に分散される。
【0043】
この実施形態では、流入口25からハウジング17内に供給された被処理液は、充填物の隙間を縫って流れる過程で、流れがより一層均一化されて濾過体の全周に供給されるので、濾過効率が高く濾過体の使用寿命も長くなる。
【0044】
なお、充填物(Y)としては、例えば粒径2〜3mm程度のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)のような耐薬品性のプラスチックが用いられるが、例えばイオン交換基のような溶解成分の吸着能をもつ官能基を結合させた機能性樹脂粒子を用いることもできる。
【0045】
図5Cは、支持部材20aの変形例の斜視図である。
この支持部材20bは、図5Bのリング状部材(X)の側壁の穴202を複数の矩形の穴に代えて複数の円形の穴を形成した短円筒形としたものである。
【0046】
支持部材20bの側壁201には、周方向にほぼ等間隔で6個の被処理液通路となる円形の穴202が形成されており、下部には中心に被処理液流入部となる短管203を突設した底板204が固着されている。
【0047】
側壁201の被処理液通路の穴202aは、6個に限定されるものではなく、周方向にほぼ均等でさえあれば、6個より多くしても差し支えない。なお、複数の穴202の断面総面積は、短管203の断面積よりも大きくすることが好ましい。
【0048】
これらの支持部材20a,20bの底板204を含む高さは、下部端板19aの環状凸部26の高さと等高とされ、短管203の外径、高さは下部端板19aの段穴25aに嵌合可能な寸法とされている。
【0049】
次に、これらの実施形態の作用を、図5に示した第2の実施形態に基づいて説明する。
流入口25から支持部材20a内に入った被処理液は、ビーズ状充填物(Y)の間隙を濾過体11のエンドプレート16の底面に沿ってほぼ均等に流れ、濾過体11の縁部に至り、ここで流れの向きが上方に変わって濾過体11の外周に沿って上昇する。
【0050】
このように、被処理液は均等に濾過体の全周に供給されるので、被処理液は濾過材の全周から均等に透過し、金属イオンは全周にわたって均等に吸着されて濾過体の使用寿命が延長される。
【0051】
[第3の実施形態]
図6は、第3の実施形態の断面図、図7はこの実施形態の分解図である。
この実施形態は、テーパーリング30をハウジング17内に内装した点を除いて第2の実施形態と同一構造なので、図5と共通する部分に同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0052】
この実施形態のテーパーリング30は、上端の端面が環状凸部29の端面と同形、同寸とされ下端の端面は内径が環状凸部26の肉厚の半分にあたる分より大径とされ、高さは直胴部18よりも下部端板19aの環状凸部26,上部端板20の環状凸部29の分だけ短くされた円筒形をなしている。テーパーリング30の外径は上端から下端まで同径とされ、内径は上端から下端に向けて直線的又は凸曲線的に漸減する
【0053】
この実施形態では、濾過体11の外周に沿って上方に向かう被処理液の流れは、上昇につれて濾過体11を透過する分だけ液量が少なくなるが、テーパーリング30により流路断面積が上方にいくほど減少するため、圧力降下が少なく、濾過材の全面にわたり、有効に濾過作用を発揮する。
【0054】
したがって、濾過材は周方向のみならず高さ方向でも均一に被処理液が透過するようになり、濾過効率が一層高くなり濾過材の使用寿命も長くなる。
【0055】
(実施例及び比較例)
次に実施例および比較例について説明する。
実施例には、次の被処理液、測定装置及びフィルターユニットを使用した。
[被処理液]
高濃度アルカリ処理液:48質量%(18N)水酸化ナトリウム水溶液(旭硝子株式会社製、商品名:スーパーアルカリ)
被処理液中のCu濃度:10μg/kg(ppb)
被処理液中のNi濃度:50μg/kg(ppb)
【0056】
[使用薬品]
硝酸:70質量%(15.7N)硝酸(関東化学株式会社製;電子工業用グレード)を超純水に加え調整した1.0N(6質量%)硝酸。
塩酸:35質量%(11.3N)塩酸(関東化学株式会社製;特級グレード)を超純水に加え調整した1.0N(4質量%)塩酸。
【0057】
[金属不純物の測定]
金属不純物の測定は、ICP質量分析装置(ICP−MS)(パーキンエルマー社製、商品名:ELANDRC−II)により行った。
【0058】
[処理装置](共通)
実施例1は図1に示した構造、実施例2は図5に示した構造、実施例3は図6に示した構造、比較例1は図10に示した構造のフィルターユニットである。
濾過体(陰イオン交換体充填カラム):ポリエチレン基材
直径 140mm、高さ257.5mm
陰イオン交換体は、末端基が90%以上OH基となっているものを使用。
ハウジングの材質: ポリ塩化ビニル(PVC)
配管の材質:PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体
ポンプ:ベローズポンプ(株式会社イワキ製、商品名:FS−15HT)
充填物:PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)からなる粒径2〜3mmの球状ビーズ
【0059】
[実施例の濾過体の仕様]
(実施例1〜3(実施形態1〜3))
下部プレート−上部プレート間の高さ:257.5mm
下部プレートと上部プレートの直径:140mm
支持部材の直径:112mm
支持部材の高さ:33mm
支持部材の短管の内径:34mm
支持部材の6個の穴の穴径:9mm
【0060】
(実施例3(実施形態3))
テーパーリングの高さ:241.5mm
テーパーリングの上端内径:158mm
テーパーリングの下端内径:約180mm
テーパーリングのテーパー角:約2.5°
【0061】
[実験方法]
・試験モジュールの洗浄
上記した処理装置、PFA製配管、PVC製カラム、ポンプはすべて金属汚染を排除するために予め、1.0N 硝酸(濃度:6質量%)に1時間以上浸漬させた後、超純水で流水洗浄した。この硝酸洗浄済の部品を組み立ててフィルターユニットとした。
【0062】
・被処理液の通液
液温25℃の48質量%水酸化ナトリウム水溶液をポンプにより、フィルターユニットの被処理液流入口から500ml/min(SV=10/hr)の条件で圧入し、最大2000kgの精製を行った。
【0063】
・吸着金属成分の分析
この使用済フィルターユニットを取り外し、超純水を0.75L/minで供給し、流出液がpH9〜10となるまで流水洗浄した。濾過材を濾過体の周方向及び高さ方向で12分割し、各分割された濾過体を再生剤1.0N塩酸 1Lに1時間浸漬した後、溶液を抜取ってICP−MSで分析を行い金属不純物の分布状況を測定した。
【0064】
濾過材の試験は、濾過材を、図8に示すように、高さ方向に三等分(上(14A)、中(14B)、下(14C))し、さらに図9に示すように、円周方向に4等分(0〜90°(14a)、90°〜180(14b)°、180°〜270(14c)°、270°〜360°(14d))して全体として12分割した資料について行った。
【0065】
その結果を表1(実施例1〜3)、表2(比較例1)に示す。
【表1】

【表2】

【0066】
表中の「金属到達濃度」は、通液初期から金属濃度が上昇し始めるまでの金属濃度であり、「ライフ」は処理液の金属濃度が上昇し始めた時の通液量であり、「総除去金属量」は「ライフ」に達したときに濾過材に捕捉されていた総金属量であり、高さ方向の分割位置(上、中、下)と円周方向の位置(角度)で特定された各部の数字(mg)は、このとき濾過材の各部に捕捉されていた金属量である。
【0067】
表1から明らかなように、実施例1では、被処理液が流入口から上方に向けて供給され、エンドプレートに衝突してエンドプレートに沿って放射状に広がりながら濾過体外周とハウジングの内側面で形成される円筒状の被処理液通路に至り、そこで上方に進むため、濾過体の全周において均等に金属成分が吸着される。実施例2では、支持部材の流れの均一化効果により周方向の均一性がさらに改善され、金属吸着量も一段と増加している。さらに、実施例3では、テーパーリングの効果により、周方向と高さ方向のそれぞれにおいて吸着量の均一化が行われるとともに、総金属吸着量も多くなり実施形態の中では最も効率よく濾過材を使用することができる。
これに対して比較例(従来品)では、表2から明らかなように、濾過材の上部においてのみ金属吸着が行われ、周方向でも金属吸着量に大きいばらつきがあり、ライフにおける総除去金属量も低い値となっている。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本願発明のフィルターユニットは、高濃度アルカリからの金属成分の除去に限らず、高濃度アルカリ以外の高濃度、高粘度液体中から金属成分を除去するフィルターユニットとしても使用することができる。
【符号の説明】
【0069】
11……濾過体、12……コア、13……繊維基材、14……押え部材、15……上部プレート、16……エンドプレート、17……ハウジング、18……直胴部、19,19a‥‥下部端板、20……上部端板、20a,20b……支持部材、21,22……‥袋キャップ、23,24……O−リング、25……被処理液の流入口、26,29‥‥環状凸部、27……処理液の排出口、28……エア抜きの穴、30……テーパーリング、X‥‥リング状部材、Y‥‥充填物、Z‥‥受け皿。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理液流入口と処理液排出口を備えた直立円筒状のハウジング内に、金属成分を吸着する濾過材を円筒状に成形し一端に排液管を有する上部プレートを固定し他端にエンドプレートを固定した濾過体を同軸状に配置し、前記ハウジングの被処理液流入口から流入する被処理液を前記濾過体内に透過させ、前記濾過体内の処理液を上部プレートの排液管を介して前記ハウジングの処理液排出口から排出するよう構成されたフィルターユニットにおいて、
前記被処理液流入口を前記ハウジングの下部端板の中央部に、前記処理液排出口を前記ハウジングの上部端板の中央部に、それぞれ形成するとともに、前記濾過体のエンドプレートを支持部材で支持して、前記エンドプレートと前記下部端板間に等間隔の被処理液通路を形成してなることを特徴とするフィルターユニット。
【請求項2】
前記濾過体は、前記エンドプレートと前記下部端板間に介在する支持部材により支持されることを特徴とする請求項1記載のフィルターユニット。
【請求項3】
前記支持部材は、前記ハウジングの下部端板の内底面に前記被処理液の流入口を囲んで同心的に配設された、側壁に周方向に沿ってほぼ均等に被処理液通路が穿設されたリング状部材であることを特徴とする請求項1又は2記載のフィルターユニット。
【請求項4】
前記リング状部材内には、ビーズ状の充填物が収容されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のフィルターユニット。
【請求項5】
前記被処理液の流入口は、前記ハウジングの下部端板の中央に、複数個が前記下部端板と同心の円上に等間隔で形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のフィルターユニット。
【請求項6】
前記ハウジングには、前記ハウジングと前記濾過体間に形成される被処理液体の流路の断面積を上部にいくほど減少させるテーパーリングが、前記ハウジングの内壁に沿って配設されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のフィルターユニット。
【請求項7】
前記濾過材の処理液排出口は、O−リングを介して前記上部端板の処理液排出口内に液密に挿入されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載のフィルターユニット。
【請求項8】
被処理液が、高粘度液体であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載のフィルターユニット。
【請求項9】
前記高粘度液体は、粘度が、10〜400mPa・sであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載のフィルターユニット。
【請求項10】
前記濾過材は、繊維基材の少なくとも表面にイオン交換能又は金属キレート形成能を有する官能基が固定化された機能性繊維基材を、繊維間を密接させて多数集束、固定してなることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項記載のフィルターユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−71231(P2012−71231A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216474(P2010−216474)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000245531)野村マイクロ・サイエンス株式会社 (116)
【Fターム(参考)】