説明

フィルター装置

【課題】液体の流路となる管内に挿入するだけでこの管内を流れる液体を適切にろ過でき、かつ、このろ過に有効に働くろ材のろ過面積をできるだけ大きく確保できるフィルター装置を提供する。
【解決手段】フィルター装置を構成する主体部Bの筒一端部1は閉塞されている。主体部Bの筒両端部1、2間には弾性変形して管Pの内面に密着してこの管P内の空間を液密状態に区分する少なくともフランジ部4が備えられている。筒一端部1とフランジ部4との間の筒側部3にはろ材7により覆われた前記液体の第一通過部6が設けられており、フランジ部4よりもフィルター装置の筒他端部2側に液体の第二通過部8が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体の流路となる管内に挿入されてこの管内を流れる液体の濾過をなすフィルター装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ラジエターの冷却水の流路となる管P内にこの管Pを一次側と二次側と仕切るように設けられるフィルター100がある。(特許文献1の第1図/図6参照)しかるに、このタイプのフィルター100はろ過に有効な面積が小さくなり易い。
【0003】
ラジエターキャップCに吊り下げられてラジエターの冷却水の流路となる管P内に配されるフィルター200がある。(特許文献1/図7参照)しかるに、かかるフィルター200は前記管Pを完全に仕切るものでないため、冷却水のろ過に必ずしも十分なものでない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭63−49539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、液体の流路となる管内に挿入するだけでこの管内を流れる液体を適切にろ過でき、かつ、このろ過に有効に働くろ材のろ過面積をできるだけ大きく確保できるフィルター装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、フィルター装置を、筒状をなす主体部を有すると共に、液体の流路となる管内にこの管の中心軸にこの主体部の筒軸を沿わせるように挿入されてこの管内を流れる液体の濾過をなすフィルター装置であって、
前記主体部の筒一端部は閉塞されており、
前記主体部の筒両端部間には前記挿入において弾性変形して前記管の内面に密着してこの管内の空間を液密状態に区分する少なくとも一箇所のフランジ部が備えられており、
前記筒一端部とフランジ部との間の筒側部にはろ材により覆われた前記液体の第一通過部が設けられており、
前記フランジ部よりもフィルター装置の筒他端部側に前記液体の第二通過部が設けられているものとした。
【0007】
かかる構成によれば、第一に、フィルター装置を前記管に挿入することにより前記フランジ部によってこの管内を液密に区分する。そして、この挿入によって第一通過部と第二通過部とにより主体部内を通らなければ区分された一方側から他方側への液体の移動がなされない状態を直ちに作り出すことができる。これにより、かかるフィルター装置にあっては前記管を流れる液体の全体に対してろ過を施すことができる。また、第二に、第一通過部は主体部の筒一端部とフランジ部との間に亘る筒側部に形成され、前記区分により液体はこの筒側部に形成された第一通過部を流路として主体部内外を移動することから、第一通過部を覆うろ材の全体をろ過に有効に利用できると共に、第一通過部の面積、つまり前記ろ材のろ過面積をできるだけ大きく確保することができる。
【0008】
前記フランジ部を、その突きだし端に向かうに連れて、主体部の筒一端部及び筒他端部のいずれか一方の側に近づくように、傾斜状に突き出させるようにしておくこともある。このようにした場合、フィルター装置を前記管に挿入するときにフランジ部をこれに伴って弾性変形し易くすることができ、逆に一旦挿入されたフィルター装置をフランジ部の前記傾斜により管から抜け出し難くすることができる。
【0009】
前記主体部の筒両端部間に、管内への挿入終了位置でこの管側に設けられた被当接部に当接される位置決め鍔部を備えさせておくこともある。このようにした場合、前記管にフィルター装置を位置決め鍔部が被当接部に当接される位置まで挿入することで、前記フランジ部により管内の空間を適切に区分させた状態を、安定的に維持させることができる。
【0010】
前記フランジ部を、位置決め鍔部を挟んだ両側にそれぞれ備えさせておくこともある。このようにした場合、前記管へのフィルター装置の挿入にあたっては管への挿入先頭側に位置されるフランジ部が被当接部を弾性変形して乗り越えた後でなければ位置決め鍔部はこの被当接部には当接されず、この弾性変形の抵抗が生じない限りフィルター装置が所定の位置まで管内に挿入されていないことをこの挿入の作業者に明確に認識させることができる。
【0011】
前記主体部の筒一端部とフランジ部の形成箇所とを、この主体部の筒軸に沿って延びる複数の縦連接片と、隣り合う縦連接片間に亘る横連接片とを備えてなる筒側部構成体により連接させ、これらの各連接片の間を第一通過部とするようにしておくこもある。この場合、前記ろ材が各連接片の肉厚内に位置されるように、筒状にしたろ材をインサートにしたインサート成形により前記主体部を成形することが好適な一つの態様とされる。
【0012】
このようにした場合、前記各連接片によって主体部の一部にできるだけ広い範囲でろ材により覆われた第一通過部を適切に形成させることができる。また、かかるインサート成形により、ろ材を各連接片間に隙間無くしっかりと張り込むことができると共に、前記のような構成を備えたフィルター装置を容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明にかかるフィルター装置によれば、液体の流路となる管内に挿入するだけでこの管内の空間を液密状態に区分してこの管内を流れる液体を適切にろ過できると共に、このろ過に有効に働くろ材のろ過面積をできるだけ大きく確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1はフィルター装置の斜視図である。
【図2】図2は図1と異なる向きから見たフィルター装置の斜視図である。
【図3】図3はフィルター装置の縦断面図である。
【図4】図4はフィルター装置の横断面図である。
【図5】図5はフィルター装置の使用状態を示した構成図である。
【図6】図6は従来例の構成図である。
【図7】図7は従来例の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1〜図5に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかるフィルター装置は、液体の流路となる管P内に挿入されてこの管P内を流れる液体の濾過をなすものである。具体的には、かかるフィルター装置は、筒状をなす主体部Bを有すると共に、液体の流路となる管P内にこの管Pの中心軸Pxにこの主体部Bの筒軸Bxを沿わせるように挿入されてこの管P内を流れる液体の濾過をなすものである。
【0016】
図示の例では、フィルター装置は、ラジエターのタンクとなる管Pに挿入されて、このラジエターを循環する液体の濾過をなすのに適した構成のものとなっている。図中符号Pa、Pbは前記管Pとラジエターの図示しないコアとの連通部であり、図示の例では、図5の上側の連通部Paを通じて管P内に液体が流入され、図5の下側の連通部Pbを通じて管P内から液体が流出するようになっている。図示の例では、フィルター装置は、前記管Pに図5における上方から挿通されると共に、この挿通に伴ってこの管P内の空間を後述するフランジ部4により液密状態に上下に区分する。このように区分された上側の空間に流入側の連通部Paが位置され、下側の空間に流出側の連通部Pbが位置される。図示の例では、ラジエターのコア側から上側の空間に流入されてきた液体はフィルター装置を経て下側の空間に至り再びかかるコア側に流出し、この過程においてフィルター装置による液体の前記濾過がなされる。
【0017】
前記主体部Bは、その筒一端部1を閉塞させ、その筒他端部2を開放させている。そして、フィルター装置は、この主体部Bの筒他端部2を先頭にして、前記管Pに挿通されるようになっている。
【0018】
この主体部Bの筒両端部1、2間には前記挿入において弾性変形して前記管Pの内面に密着してこの管P内の空間を液密状態に区分するフランジ部4が備えられている。図示の例では、かかるフランジ部4は、主体部Bの筒他端部2に近接した箇所と、これよりもやや上方となる箇所との二箇所に形成されている。これによって、前記液密状態を確実に作出できるようになっている。また、図示の例では、二箇所のフランジ部4、4の間には後述の位置決め鍔部5が設けられている。また、図示の例では、主体部Bの筒一端部1では後述の縦連接片3bに拡幅部3fが形成されている。主体部Bの外径はこのフランジ部4では前記管Pの内径よりもやや大きく、且つ、位置決め鍔部5と拡幅部3fの形成箇所では前記管Pの内径と略等しい太さを主体部Bは持つように構成されている。主体部Bの外径は、かかるフランジ部4、位置決め鍔部5および拡幅部3fの形成箇所以外の箇所では前記管Pの内径より小さく、かかる箇所においては管Pと主体部Bとの間には液体の流路が形成されるようになっている。
【0019】
二箇所のフランジ部4、4はそれぞれ、主体部Bから外側に突き出し、且つ、主体部Bの筒軸Bxを切れ目なく周回している。フランジ部4は薄肉であり弾性変形特性を持つように構成されている。また、二箇所のフランジ部4、4はそれぞれ、その突きだし端4aに向かうに連れて、主体部Bの筒一端部1の側に近づくように、傾斜状に突き出されている。これにより、この実施の形態にあっては、フィルター装置を主体部Bの筒他端部2を先頭にして前記管Pに挿入するときに二箇所のフランジ部4、4はこれに伴って弾性変形し易く、逆に一旦挿入されたフィルター装置はフランジ部4の前記傾斜により管Pから抜け出し難く管P内に安定的に位置づけられるようになっている。
【0020】
かかる二箇所のフランジ部4、4の間に、管P内への挿入終了位置でこの管P側に設けられた被当接部Pcに当接される位置決め鍔部5が備えられている。かかる位置決め鍔部5は、主体部Bから外側に突き出し、且つ、主体部Bの筒軸Bxを切れ目なく周回している。この位置決め鍔部5は厚肉であり前記フランジ部4のような弾性変形をしないように構成されている。図示の例では、被当接部Pcは、前記管Pにおける流入側の連通部Paと流出側の連通部Pbとの間となる箇所に形成されている。図示の例では、この被当接部Pcは、管Pの内面に形成された膨出部として構成されている。この膨出部の形成位置において管Pの内径は位置決め鍔部5の外径よりも小さくなっている。これにより、この実施の形態にあっては、前記管Pにフィルター装置を位置決め鍔部5が被当接部Pcに当接される位置まで挿入することで、前記フランジ部4により管P内の空間を適切に区分させた状態、つまり、フランジ部4を挟んだ一方側に前記流入側の連通部Paが位置され、他方側に流出側の連通部Pbが位置された状態を、安定的に維持させる事ができる。特に、この実施の形態にあっては、前記フランジ部4は、位置決め鍔部5を挟んだ両側にそれぞれ備えられていることから、前記管Pへのフィルター装置の挿入にあたっては管Pへの挿入先頭側に位置されるフランジ部4が被当接部Pcを弾性変形して乗り越えた後でなければ位置決め鍔部5はこの被当接部Pcには当接されず、この弾性変形の抵抗が生じない限りフィルター装置が所定の位置まで管P内に挿入されていないことをこの挿入の作業者に明確に認識させることができる。
【0021】
また、前記主体部Bにおける前記筒一端部1とフランジ部4との間の筒側部3にはろ材7により覆われた前記液体の第一通過部6が設けられている。そして、前記フランジ部4よりもフィルター装置の筒他端部2側に前記液体の第二通過部8が設けられている。
【0022】
具体的には、主体部Bの筒一端部1と前記二箇所のフランジ部4、4におけるこの筒一端部1側に位置されるフランジ部4との間にある筒側部3が前記第一通過部6として機能するようになっている。
【0023】
図示の例では、かかる主体部Bの筒一端部1とフランジ部4の形成箇所とが、この主体部Bの筒軸Bxに沿って延びる複数の縦連接片3b…3bと、隣り合う縦連接片3b、3b間に亘る横連接片3cとを備えてなる筒側部構成体3aにより連接されており、これらの各連接片3b、3cの間が第一通過部6となっている。
【0024】
主体部Bの筒一端部1は主体部Bの筒軸Bxに直交する内外面を備えた円板状部によって形成されている。縦連接片3bは主体部Bの外周部に位置され、また、この主体部Bの筒軸Bxを巡る向きにおいて、隣り合う縦連接片3bとの間に略等しい間隔を開けて四本備えられている。各縦連接片3bはそれぞれ片一端を円板状部1aに一体に連接させ、且つ、片他端を前記フランジ部4の形成箇所に一体に連接させている。横連接片3cは、縦連接片3bの長さ方向略中程の位置において、隣り合う縦連接片3b相互間に亘るように設けられている。横連接片3cは、主体部Bの外周部が倣う仮想の円の円弧に沿うように設けられている。主体部Bにおける筒一端部1とフランジ部4の形成箇所との間では、これらの各連接片によって形成された篭状を呈する筒側部構成体3aと、各連接片3b、3cの間に張り込まれたろ材7とによって、筒側部3を構成している。
【0025】
図示の例では、各連接片3b、3cは、それぞれ幅広の両面を備えた細長い板状をなすように構成されている。各連接片3b、3cはその厚さ方向にある両端部3d、3eの一方3dを主体部Bの外方に向け、これら端部3d、3eの他方3eを主体部Bの内方に位置させるようにして、配されている。
【0026】
図示の例では、前記ろ材7はシート状をなしている。図示の例ではろ材7をメッシュとして構成している。かかるろ材7はろ過すべき液体の性状などに応じて選択されるものであり、典型的には不織布なども用いられる。図示の例では、かかるろ材7が各連接片の肉厚内に位置されるように、筒状にしたろ材7をインサートにしたインサート成形により前記主体部Bを成形している。すなわち、図示の例では、シート状をなすろ材7を筒状に成形した状態で金型内にインサートとして配して合成樹脂により主体部Bを成形し、フィルター装置を構成させている。これにより、この実施の形態にあっては、各連接片3b、3cによって主体部Bの一部にできるだけ広い範囲でろ材7により覆われた第一通過部6を適切に形成できるようになっている。また、かかるインサート成形により、ろ材7を各連接片3b、3c間に隙間無くしっかりと張り込むことができると共に、前記のような構成を備えたフィルター装置を容易に製造することができる。
【0027】
図示の例では、各縦連接片3bの前記片一端はこの縦連接片3bの他の箇所よりも主体部Bの外方に向けられた端部3dを外側に位置させるように幅広に構成された拡幅部3fとなっており、前記管Pに挿入されたフィルター装置は、その上部側をこの四箇所の縦連接片3bの拡幅部3fによって支持され、その下部側を前記位置決め鍔部5によって支持されるようになっている。
【0028】
また、この実施の形態にあっては、前記主体部Bの開放された筒他端部2が前記第二通過部8として機能するようになっている。
【0029】
この実施の形態にかかるフィルター装置は、第一に、前記管Pに挿入することにより前記フランジ部4によってこの管P内を液密に区分する。そして、この挿入によって第一通過部6と第二通過部8とにより主体部B内を通らなければ区分された一方側から他方側への液体の移動がなされない状態を直ちに作り出すことができる。これにより、かかるフィルター装置にあっては前記管Pを流れる液体の全体に対してろ過を施すことができる。また、第二に、第一通過部6は主体部Bの筒一端部1とフランジ部4との間に亘る筒側部3に形成され、前記区分により液体はこの筒側部3に形成された第一通過部6を流路として主体部B内外を移動することから、第一通過部6を覆うろ材7の全体をろ過に有効に利用できると共に、第一通過部6の面積、つまり前記ろ材7のろ過面積をできるだけ大きく確保することができる。
【符号の説明】
【0030】
B 主体部
1 筒一端部
2 筒他端部
3 筒側部
4 フランジ部
6 第一通過部
7 ろ材
8 第二通過部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状をなす主体部を有すると共に、液体の流路となる管内にこの管の中心軸にこの主体部の筒軸を沿わせるように挿入されてこの管内を流れる液体の濾過をなすフィルター装置であって、
前記主体部の筒一端部は閉塞されており、
前記主体部の筒両端部間には前記挿入において弾性変形して前記管の内面に密着してこの管内の空間を液密状態に区分する少なくとも一箇所のフランジ部が備えられており、
前記筒一端部とフランジ部との間の筒側部にはろ材により覆われた前記液体の第一通過部が設けられており、
前記フランジ部よりもフィルター装置の筒他端部側に前記液体の第二通過部が設けられていることを特徴とするフィルター装置。
【請求項2】
フランジ部は、その突きだし端に向かうに連れて、主体部の筒一端部及び筒他端部のいずれか一方の側に近づくように、傾斜状に突き出されていることを特徴とする請求項1に記載のフィルター装置。
【請求項3】
主体部の筒両端部間に、管内への挿入終了位置でこの管側に設けられた被当接部に当接される位置決め鍔部が備えられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフィルター装置。
【請求項4】
フランジ部が、位置決め鍔部を挟んだ両側にそれぞれ備えられていることを特徴とする請求項3に記載のフィルター装置。
【請求項5】
主体部の筒一端部とフランジ部の形成箇所とが、この主体部の筒軸に沿って延びる複数の縦連接片と、隣り合う縦連接片間に亘る横連接片とを備えてなる筒側部構成体により連接されており、これらの各連接片の間が第一通過部となっていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のフィルター装置。
【請求項6】
ろ材が各連接片の肉厚内に位置されるように、筒状にしたろ材をインサートにしたインサート成形により主体部を成形してなることを特徴とする請求項5に記載のフィルター装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−224507(P2011−224507A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98720(P2010−98720)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】