説明

フィルタ及びその製造方法

【課題】レーザ溶着によりフィルタエレメントの保持枠とケース構成部材とを強固に接合できるとともに、小型化を図ることができるフィルタを提供する。
【解決手段】本フィルタ1は、第1ケース構成部材(下側ケース2)と、樹脂製の第2ケース構成部材(上側ケース3)と、濾材6及び濾材の周縁端を保持する樹脂製の保持枠7を有するフィルタエレメント8と、を備え、保持枠は、第1及び第2ケース構成部材のそれぞれに設けられた挟持部10,13の間に挟持され、保持枠には、挟持方向P1に突出し且つ挟持方向と交差する方向P2に位置をずらして配置された複数の保持枠側凸部20a、20bが設けられ、第2ケース構成部材の挟持部には、挟持方向に突出し且つ挟持方向と交差する方向に位置をずらして配置された複数のケース側凸部21a,21bが設けられ、複数の保持枠側凸部及びケース側凸部のそれぞれは挟持方向に沿う平面で接触しており、それらの接触部位にはレーザ溶着部w1,w2が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、レーザ溶着によりフィルタエレメントの保持枠とケース構成部材とを強固に接合できるとともに、小型化を図ることができるフィルタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のフィルタとして、流入口を有する樹脂製の下側ケースと、この下側ケースとの間で濾過室を形成し且つ流出口を有する樹脂製の上側ケースと、濾過室内に収容される濾材及びこの濾材の周縁端を保持する樹脂製の保持枠を有するフィルタエレメントと、を備え、上側ケース及び下側ケースのそれぞれに設けられた挟持部の間にフィルタエレメントの保持枠を挟持してなる自動変速機用フィルタが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
上記特許文献1には、例えば、図12に示すように、振動溶着により上側ケース103、下側ケース102及びフィルタエレメント108の保持枠107の3部材を接合することが開示されている。しかし、この特許文献1の技術では、例えば、図13に示すように、振動溶着時に発生するバリ溜め110を各ケース102,103に設ける必要があり、各ケース102,103の外周側から外方に突出するフランジ部111の幅が約10mmとなり、小型化を図ることができない。
【0004】
一方、上記特許文献2には、レーザ溶着により上側ケース、下側ケース及びフィルタエレメントの保持枠の3部材を接合することが開示されている。このようにレーザ溶着を採用することにより、振動溶着を採用するものに比べて小型化を図ることができる。
ここで、上記特許文献2の技術では、例えば、図14に示すように、フィルタエレメント108の保持枠107及び各ケース102,103の挟持部121のそれぞれに保持枠107の挟持方向P1に突出する突出部120,121を設け、これら突出部120,121同士を挟持方向P1に沿う平面で接触させ、その接触部位にレーザ溶着部130を形成するようにしている。
しかし、上記特許文献2の技術では、フィルタエレメント108の保持枠107と上側ケース103の挟持部とを1つのレーザ溶着部130で接合するようにしているので、レーザ溶着部130の必要十分な溶着面積を確保するには、各突出部120,121の挟持方向Pの高さ寸法を比較的大きな値に設定する必要がある。このように突出部120,121の挟持方向Pの高さ寸法を比較的大きな値に設定すると、保持枠107及び上側ケース103の成形時にひけ等により突出部120,121の成形精度(特に平面度)が低下し易くなり、その結果、突出部120,121同士の接触面で接触ムラが生じて、フィルタエレメント108の保持枠107と上側ケース103の挟持部113との接合強度が低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−273116号公報
【特許文献2】特開2008−68169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、レーザ溶着によりフィルタエレメントの保持枠とケース構成部材とを強固に接合できるとともに、小型化を図ることができるフィルタ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の通りである。
1.流入口を有する第1ケース構成部材と、
前記第1ケース構成部材との間で濾過室を形成し、流出口を有する樹脂製の第2ケース構成部材と、
前記濾過室内に収容される濾材、及び該濾材の周縁端を保持する樹脂製の保持枠を有するフィルタエレメントと、を備えるフィルタであって、
前記フィルタエレメントの前記保持枠は、前記第1ケース構成部材及び前記第2ケース構成部材のそれぞれに設けられた挟持部の間に挟持されており、
前記フィルタエレメントの前記保持枠には、前記保持枠の挟持方向(P1)に突出し且つ該保持枠の挟持方向(P1)と交差する方向(P2)に位置をずらして配置された複数の保持枠側凸部が設けられており、
前記第2ケース構成部材の前記挟持部には、前記保持枠の挟持方向(P1)に突出し且つ該保持枠の挟持方向(P1)と交差する方向(P2)に位置をずらして配置された複数のケース側凸部が設けられており、
前記複数の保持枠側凸部のそれぞれと前記複数のケース側凸部のそれぞれとは、前記保持枠の挟持方向(P1)に沿う平面で接触しており、それらの接触部位にはレーザ溶着部(w1,w2)が形成されていることを特徴とするフィルタ。
2.前記複数の保持枠側凸部及び前記複数のケース側凸部のうちの少なくとも一方の複数の凸部は、前記保持枠の挟持方向(P1)と直交する方向(P2)に対して傾斜する傾斜面上に設けられている上記1.記載のフィルタ。
3.前記保持枠側凸部と前記ケース側凸部とは、少なくとも一方の凸部が弾性変形した状態で圧接している上記1.又は2.に記載のフィルタ。
4.前記第2ケース構成部材は平面多角形状に形成されており、該第2ケース構成部材の隅部には前記保持枠の挟持方向(P1)に凹んだ肉盗み部が形成されている上記3.記載のフィルタ。
5.前記フィルタエレメントの前記保持枠及び前記第2ケース構成部材の前記挟持部のうちの一方には、前記保持枠の挟持方向(P1)に突出する突起部が設けられ、他方には、該突起部が入り込む凹部が設けられている上記1.乃至4.のいずれか一項に記載のフィルタ。
6.上記1.乃至5.のいずれか一項に記載のフィルタの製造方法であって、
前記第1ケース構成部材及び前記第2ケース構成部材のそれぞれの前記挟持部の間に前記フィルタエレメントの前記保持枠を挟持させて、前記複数の保持枠側凸部のそれぞれと前記複数のケース側凸部のそれぞれとを前記保持枠の挟持方向(P1)に沿う平面で接触させる工程と、
前記複数の保持枠側凸部及び前記複数のケース側凸部のそれぞれの接触部位にレーザ光を照射して前記レーザ溶着部(w1,w2)を形成する工程と、を備えることを特徴とするフィルタの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のフィルタによると、フィルタエレメントの保持枠に設けられた複数の保持枠側凸部のそれぞれと、第2ケース構成部材の挟持部に設けられた複数のケース側凸部のそれぞれとを挟持方向に沿う平面で接触させ、それらの接触部位にレーザ溶着部を形成するようにしたので、フィルタエレメントの保持枠と第2ケース構成部材の挟持部とは複数のレーザ溶着部で接合される。これにより、複数の保持枠側凸部及びケース側凸部のそれぞれの挟持方向の高さ寸法を比較的小さな値に設定しても、レーザ溶着部の必要十分な溶着面積を確保することができる。そして、複数の保持枠側凸部及びケース側凸部の挟持方向の高さ寸法を比較的小さな値に設定できるので、フィルタエレメント及び第2ケース構成部材の成形時にひけ等により複数の保持枠側凸部及びケース側凸部の成形精度(特に平面度)が低下し難く、これら凸部同士の接触部位での密着性を高めることができる。その結果、レーザ溶着によりフィルタエレメントの保持枠と第2ケース構成部材とを強固に接合できるとともに、フィルタの小型化を図ることができる。
また、前記複数の保持枠側凸部及び前記複数のケース側凸部のうちの少なくとも一方の複数の凸部が、前記保持枠の挟持方向(P1)と直交する方向(P2)に対して傾斜する傾斜面上に設けられている場合は、複数の凸部のそれぞれの挟持方向の高さ寸法を更に小さな値に設定でき、凸部同士の接触部位での密着性を更に高めることができる。
また、前記保持枠側凸部と前記ケース側凸部とは、少なくとも一方の凸部が弾性変形した状態で圧接している場合は、凸部同士の接触部位での密着性を更に高めることができる。
また、前記第2ケース構成部材が平面多角形状に形成されており、該第2ケース構成部材の隅部に前記保持枠の挟持方向(P1)に凹んだ肉盗み部が形成されている場合は、第2ケース構成部材の隅部を弾性変形し易くでき、第2ケース構成部材の隅部における凸部同士の接触部位での密着性を更に高めることができる。
さらに、前記フィルタエレメントの前記保持枠及び前記第2ケース構成部材の前記挟持部のうちの一方に突起部が設けられ、他方に凹部が設けられている場合は、突起部が凹部内に入り込むことによって、フィルタエレメントの保持枠と第2ケース構成部材の挟持部との挟持方向と直交する方向の位置決めが行われ、凸部同士の接触部位での密着性を更に高めることができる。
【0009】
本発明のフィルタの製造方法によると、第1ケース構成部材及び第2ケース構成部材のそれぞれの挟持部の間にフィルタエレメントの保持枠が挟持されて、複数の保持枠側凸部のそれぞれと複数のケース側凸部のそれぞれとが保持枠の挟持方向(P1)に沿う平面で接触され、次に、複数の保持枠側凸部及びケース側凸部のそれぞれの接触部位にレーザ光が照射されてレーザ溶着部が形成され、フィルタエレメントの保持枠と第2ケース構成部材の挟持部とが複数のレーザ溶着部で接合される。これにより、複数の保持枠側凸部及びケース側凸部のそれぞれの挟持方向の高さ寸法を比較的小さな値に設定しても、レーザ溶着部の必要十分な溶着面積を確保することができる。そして、複数の保持枠側凸部及びケース側凸部の挟持方向の高さ寸法を比較的小さな値に設定できるので、フィルタエレメント及び第2ケース構成部材の成形時にひけにより複数の保持枠側凸部及びケース側凸部の成形精度(特に、平面度)が低下し難く、これら凸部同士の接触部位での密着性を高めることができる。その結果、レーザ溶着によりフィルタエレメントの保持枠と第2ケース構成部材とを強固に接合できるとともに、フィルタの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】実施例に係るフィルタを示す斜視図である。
【図2】上記フィルタの平面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図3の要部拡大図である。
【図5】実施例に係る保持枠及び挟持部の分解状態を示す要部拡大断面図である。
【図6】図2のVI−VI線断面図である。
【図7】上記フィルタの製造方法を説明するための説明図である。
【図8】その他の形態のフィルタを説明するための説明図である。
【図9】更にその他の形態のフィルタを説明するための説明図である。
【図10】更にその他の形態のフィルタを説明するための説明図である。
【図11】図10のXI−XI線断面図である。
【図12】従来のフィルタを示す縦断面図である。
【図13】図12の要部拡大図である。
【図14】その他の従来のフィルタを示す要部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0012】
1.フィルタ
本実施形態1.に係るフィルタは、流入口を有する第1ケース構成部材と、この第1ケース構成部材との間で濾過室を形成し、流出口を有する樹脂製の第2ケース構成部材と、濾過室内に収容される濾材及びこの濾材の周縁端を保持する樹脂製の保持枠を有するフィルタエレメントと、を備えるフィルタであって、
フィルタエレメントの保持枠は、第1ケース構成部材及び第2ケース構成部材のそれぞれに設けられた挟持部の間に挟持されており、フィルタエレメントの保持枠には、保持枠の挟持方向(P1)に突出し且つ保持枠の挟持方向(P1)と交差(例えば、直交)する方向(P2)に位置をずらして配置された複数の保持枠側凸部が設けられており、第2ケース構成部材の挟持部には、保持枠の挟持方向(P1)に突出し且つ保持枠の挟持方向(P1)と交差(例えば、直交)する方向(P2)に位置をずらして配置された複数のケース側凸部が設けられており、これら複数の保持枠側凸部のそれぞれと複数のケース側凸部のそれぞれとは、保持枠の挟持方向(P1)に沿う平面で接触しており、それらの接触部位にはレーザ溶着部(w1,w2)が形成されていることを特徴とする(例えば、図4等参照)。
【0013】
なお、上記フィルタとしては、例えば、オイルフィルタ、燃料フィルタ、エアフィルタ等の流体フィルタを挙げることができる。また、上記フィルタは、例えば、トルコン式、CVT式などの自動変速機用フィルタとして好適に利用される。
【0014】
上記「第1ケース構成部材」の構造、形状、大きさ等は特に問わない。この第1ケース構成部材は、例えば、フィルタエレメントの保持枠に対して、レーザ溶着、振動用着、超音波溶着、熱版溶着、各種接着等により接合されていることができる。このレーザ溶着による接合形態としては、例えば、後述する第2ケース構成部材の挟持部とフィルタエレメントの保持枠との接合形態を適用することができる。また、この第1ケース構成部材は、例えば、底壁と、この底壁の周縁端から立ち上がる周壁とを有することができる。この周壁の先端側は、通常、挟持部として機能する。さらに、この第1ケース構成部材は、例えば、樹脂製であることができる。この樹脂の種類としては、例えば、後述する第2ケース構成部材の樹脂の種類を適用することができる。
【0015】
上記「第2ケース構成部材」の構造、形状、大きさ等は特に問わない。この第2ケース構成部材は、フィルタエレメントの保持枠に対してレーザ溶着により接合されている。また、この第2ケース構成部材は、例えば、底壁と、この底壁の周縁端から立ち上がる周壁とを有することができる。この周壁の先端側は、通常、挟持部として機能する。
【0016】
上記「フィルタエレメント」の構造、形状、大きさ等は特に問わない。このフィルタエレメントは、通常、第1ケース構成部材との間でダスティ側の濾過室を形成し、第2ケース構成部材との間でクリーン側の濾過室を形成する。また、このフィルタエレメントは、例えば、濾材及び保持枠をインサート成形により一体成形してなることができる。また、上記濾材の形状としては、例えば、ひだ折り状、シート状、波状、袋状等を挙げることができる。また、濾材の材質としては、例えば、不織布、織物、紙等を挙げることができる。また、上記保持枠は、例えば、濾材の周端縁を保持する筒状の保持部と、この保持部の外周面から側方に突出する突出部とを有しており、この突出部に後述する複数の保持枠側凸部が配置される傾斜面が形成されていることができる(例えば、図4参照)。
【0017】
なお、上記実施形態1.のフィルタとしては、例えば、上記第2ケース構成部材及びフィルタエレメントの保持枠のうちの一方がレーザ透過性樹脂を用いてなり、他方がレーザ吸収性樹脂を用いてなる形態を挙げることができる。この樹脂としては、例えば、ポリスチレン(PS)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリカーボネート(PC)等の非晶性樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)等の結晶性樹脂などを挙げることができる。これらのうち、レーザ透過性といった観点から、非晶性樹脂であることが好ましい。一方、レーザ吸収性といった観点から、非晶性樹脂及び結晶性樹脂のどちらであってもよい。さらに、第2ケース構成部材及び保持枠が同種の樹脂であることが好ましい。これら2部材の熱膨張率を同じにして接合性をより高め得るためである。
【0018】
上記「保持枠側凸部」の構造、形状、大きさ等は特に問わない。これら複数の保持枠側凸部は、例えば、レーザ光の照射方向及び照射方向に交差(例えば、直交)する方向に位置をずらして配置されていることができる。これにより、レーザ光は、手前側の保持枠側凸部で遮断されず奥側の保持枠側凸部に到達でき、複数の保持枠側凸部のそれぞれにレーザ溶着部を形成することができる。
【0019】
上記保持枠側凸部の接触面側の挟持方向(P1)の高さ寸法(h1)は、例えば、2〜10mm(好ましくは2〜5mm、特に2〜4mm)であることができる(例えば、図5参照)。これにより、保持枠側凸部の高さ寸法を比較的小さな値に設定でき保持枠(フィルタエレメント)の成形時に凸部に対するひけ等の影響を抑制できるとともに、レーザ溶着部の必要な溶着面積を確保できる。また、上記複数の保持枠側凸部の接触面の挟持方向(P1)と交差(例えば、直交)する方向(P2)の間隔(r1)は、例えば、2〜5.5mm(好ましくは2〜4.5mm、特に2〜3.5mm)であることができる(例えば、図5参照)。これにより、保持枠の厚さ寸法を小さくできるとともに、レーザ溶着部を好適に形成することができる。さらに、上記複数の保持枠側凸部の個数は、例えば、2〜5個(好ましくは2〜4個、特に2〜3個)であることができる。これにより、保持枠の厚さ寸法を小さくできるとともに、レーザ溶着部を好適に形成することができる。
【0020】
上記「ケース側凸部」の構造、形状、大きさ等は特に問わない。これら複数のケース側凸部は、例えば、レーザ光の照射方向及び照射方向に交差(例えば、直交)する方向に位置をずらして配置されていることができる。これにより、レーザ光は、手前側のケース側凸部で遮断されず奥側のケース側凸部に到達でき、複数のケース側凸部のそれぞれにレーザ溶着部を形成することができる。
【0021】
上記ケース側凸部の接触面側の挟持方向(P1)の高さ寸法(h2)は、例えば、2〜11mm(好ましくは2〜6mm、特に2〜5mm)であることができる(例えば、図5参照)。これにより、ケース側凸部の高さ寸法を比較的小さな値に設定でき第2ケース構成部材の成形時に凸部に対するひけ等の影響を抑制できるとともに、レーザ溶着部の必要な溶着面積を確保できる。また、上記複数のケース側凸部の接触面の挟持方向(P1)と交差(例えば、直交)する方向(P2)の間隔(r2)は、例えば、2〜5mm(好ましくは2〜4mm、特に2〜3mm)であることができる(例えば、図5参照)。これにより、第2ケース構成部材の挟持部の厚さ寸法を小さくできるとともに、レーザ溶着部を好適に形成することができる。さらに、上記複数のケース側凸部の個数は、例えば、2〜5個(好ましくは2〜4個、特に2〜3個)であることができる。これにより、第2ケース構成部材の挟持部の厚さ寸法を小さくできるとともに、レーザ溶着部を好適に形成することができる。
【0022】
なお、上記「保持枠の挟持方向(P1)に突出」とは、保持枠側凸部及び/又はケース側凸部が挟持方向(P1)に完全に一致する方向に突出する形態の他に、凸部同士が接触できる限りにおいて挟持方向(P1)に対して多少傾斜した方向に突出する形態を含むものとする。また、上記「保持枠の挟持方向(P1)に沿う平面で接触」とは、保持枠側凸部及びケース側凸部が挟持方向(P1)に完全に一致する方向に沿う平面で接触する形態の他に、凸部同士が接触できる限りにおいて挟持方向(P1)に対して多少傾斜した方向に沿う平面で接触する形態を含むものとする。また、上記保持枠側凸部及びケース側凸部のそれぞれの個数は、通常、同じとされ、それぞれの凸部の1つずつが一対一で接触することとなる。
【0023】
上記「レーザ溶着部」の構造、形状、大きさ等は特に問わない。これら複数のレーザ溶着部によって、フィルタエレメントの保持枠と第2ケース構成部材の挟持部とが接合されている。また、これら複数のレーザ溶着部は、例えば、保持枠の挟持方向(P1)及び挟持方向(P1)と交差(例えば、直交)する方向(P2)に位置をずらして配置されていることができる。さらに、これら複数のレーザ溶着部は、例えば、レーザ光の照射方向及び照射方向に交差(例えば、直交)する方向に位置をずらして配置されていることができる。
【0024】
上記レーザ溶着部の挟持方向(P1)の長さ寸法(h3)は、例えば、1〜3mm(好ましくは1〜2mm、特に1〜1.5mm)であることができる(例えば、図4参照)。これにより、保持枠側凸部及びケース側凸部の高さ寸法を比較的小さな値に設定でき保持枠(フィルタエレメント)及び第2ケース構成部材の成形時に各凸部に対するひけ等の影響を抑制できるとともに、レーザ溶着部の必要な溶着面積を確保できる。また、上記複数のレーザ溶着部の挟持方向(P1)と交差(例えば、直交)する方向(P2)の間隔(r3)は、例えば、2〜5mm(好ましくは2〜4mm、特に2〜3mm)であることができる(例えば、図4参照)。これにより、フィルタエレメントの保持枠及び第2ケース構成部材の挟持部の厚さ寸法を小さくできるとともに、レーザ溶着部を好適に形成することができる。さらに、上記複数のレーザ溶着部の個数は、例えば、2〜5個(好ましくは2〜4個、特に2〜3個)であることができる。これにより、フィルタエレメントの保持枠及び第2ケース構成部材の挟持部の厚さ寸法を小さくできるとともに、レーザ溶着部を好適に形成することができる。
【0025】
ここで、上記実施形態1.のフィルタとしては、例えば、複数の保持枠側凸部及び複数のケース側凸部のうちの少なくとも一方の複数の凸部は、保持枠の挟持方向(P1)と直交する方向(P2)に対して傾斜する傾斜面上に設けられている形態(例えば、図4参照)を挙げることができる。この傾斜面の傾斜角(θ)としては、例えば、30〜60度(好ましくは40〜50度、特に43〜47度)を挙げることができる(例えば、図4参照)。
【0026】
また、上記実施形態1.のフィルタとしては、例えば、保持枠側凸部とケース側凸部とは、少なくとも一方の凸部が弾性変形した状態で圧接している形態を挙げることができる。この凸部同士を圧接させる形態としては、例えば、(1)保持枠側凸部及びケース側凸部を挟持方向(P1)と直交する方向(P2)で重なるように突き合わせる形態(例えば、図6参照)、(2)保持枠側凸部及び/又はケース側凸部に適当な勾配が設定されている形態、(3)保持枠側凸部及び/又はケース側凸部の接触面に突起を設ける形態等のうちの1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
【0027】
また、上記実施形態1.のフィルタとしては、例えば、上記第2ケース構成部材は平面多角形状に形成されており、この第2ケース構成部材の隅部には保持枠の挟持方向(P1)に凹んだ肉盗み部が形成されている形態(例えば、図6参照)を挙げることができる。この肉盗み部の凹み深さは、例えば、5〜30mm(好ましくは5〜25mm、特に5〜20mm)であることができる。これにより、第2ケース構成部位の隅部を更に容易に弾性変形させ得るとともに、使用樹脂量を低減することができる。
【0028】
さらに、上記実施形態1.のフィルタとしては、例えば、上記フィルタエレメントの保持枠及び第2ケース構成部材の挟持部のうちの一方には、保持枠の挟持方向(P1)に突出する突起部が設けられ、他方には、突起部が入り込む凹部が設けられている形態(例えば、図11参照)を挙げることができる。この凹部には、例えば、凹部内に入り込む突起部の先端面が当接する底面が設けられていることができる。これにより、突起部が凹部に入り込むことによる挟持方向(P1)と直交する方向(P2)の位置決めに加えて、突起部の先端面が凹部の底面に当接することにより挟持方向(P1)の位置決めが行われる。
【0029】
2.フィルタの製造方法
本実施形態2.に係るフィルタの製造方法は、上記実施形態1.のフィルタの製造方法であって、第1及び第2ケース構成部材のそれぞれの挟持部の間にフィルタエレメントの保持枠を挟持させて、複数の保持枠側凸部のそれぞれと複数のケース側凸部のそれぞれとを保持枠の挟持方向(P1)に沿う平面で接触させる工程(A)と、複数の保持枠側凸部及び複数のケース側凸部のそれぞれの接触部位にレーザ光を照射してレーザ溶着部(w1,w2)を形成する工程(B)と、を備えることを特徴とする。
【0030】
上記工程(A)では、通常、上側及び下側ケースに挟持方向に所定の加重をかけた状態でフィルタエレメントの保持枠が挟持される。また、上記工程(A)では、例えば、保持枠側凸部とケース側凸部とは、少なくとも一方の凸部が弾性変形した状態で圧接されることができる。
【0031】
上記工程(B)では、通常、上記レーザ光は、第2ケース構成部材の挟持部又はフィルタエレメントの保持枠のうちのレーザ透過性を有する一方の部材を透過して複数の保持枠側凸部及びケース側凸部の接触部位に至り、レーザ吸収性を有する凸部を溶かし、その溶融熱で両凸部が溶着されてレーザ溶着部が形成される。また、上記工程(B)では、例えば、上記レーザ光は、第2ケース構成部材の外側方から保持枠の挟持方向(P1)と交差(例えば、直交)する方向(P2)に照射されることができる。
【実施例】
【0032】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本実施例では、本発明に係る「フィルタ」として自動変速機用のオイルフィルタ(以下、単に「フィルタ」とも略記する。)を例示する。
【0033】
(1)フィルタの構成
本実施例に係るフィルタ1は、図1〜図3に示すように、流入口2aを有するレーザ透過性樹脂製の下側ケース2(本発明に係る「第1ケース構成部材」として例示する。)と、この下側ケース2との間で濾過室5を形成し且つ流出口3aを有するレーザ透過性樹脂製の上側ケース3(本発明に係る「第2ケース構成部材」として例示する。)と、濾過室5内に収容されるひだ折状で不織布製の濾材6及びこの濾材6の周縁端を保持するレーザ吸収性樹脂製の保持枠7を有するフィルタエレメント8と、を備えている。この保持枠7は、上側ケース3及び下側ケース2のそれぞれに設けられた挟持部13,10の間に挟持されている。
【0034】
上記下側ケース2は、図3に示すように、矩形板状の底壁11と、この底壁11の周縁端から立ち上がる周壁12とを有している。この周壁12の先端側が挟持部10として機能する。また、上側ケース3は、矩形板状の底壁14と、この底壁14の周縁端から立ち上がる周壁15とを有している。この周壁15の先端側が挟持部13として機能する。これら上側及び下側ケース3,2の4隅部には、図2及び図6に示すように、保持枠7の挟持方向P1に所定の深さ(例えば、約20mm)で凹む平面円弧スリット状の肉盗み部17が形成されている。また、上記フィルタエレメント8は、下側ケース2との間でダスティ側の濾過室5aを形成し、上側ケース3との間でクリーン側の濾過室5bを形成している。なお、このフィルタエレメント8は、濾材6及び保持枠7をインサート成形により一体成形してなされている。
【0035】
上記フィルタエレメント8の保持枠7は、図3に示すように、濾材6の周縁端を保持する角筒状の保持部7aと、この保持部7aの外周面側の中央部から外側方に向かって突出する突出部7bとを有している。この突出部7bには、図4及び図5に示すように、保持枠7の挟持方向P1と直交する方向P2に対して所定角度(例えば、約45度)で傾斜する上下の傾斜面19が形成されている。これら上下の傾斜面19には、保持枠7の挟持方向P1に突出する複数(図中2つ)の保持枠側凸部20a,20bが設けられている。これら複数の保持枠側凸部20a,20bは、保持枠7の挟持方向P1及び挟持方向P1と直交する方向P2に位置をずらして配置されている。また、保持枠側凸部20aの接触面側の挟持方向P1の高さ寸法h1は約1mmとされ、保持枠側凸部20bの接触面側の挟持方向P1の高さ寸法h1は約1mmとされている。さらに、これら各保持枠側凸部20a,20bの各接触面の挟持方向P1と直交する方向P2の間隔r1は約2mmとされている。
【0036】
上記上側ケース3及び下側ケース2のそれぞれの挟持部13,10の先端側には、図4及び図5に示すように、保持枠7の挟持方向P1に突出する複数(図中2つ)のケース側凸部21a,21bが設けられている。これら複数のケース側凸部21a,21bは、保持枠7の挟持方向P1及び挟持方向P1と直交する方向P2に位置をずらして配置されている。また、ケース側凸部21aの挟持方向P1の接触面側の高さ寸法h2は約1mmとされ、ケース側凸部21bの挟持方向P1の接触面側の高さ寸法h2は約1mmとされている。さらに、これら各ケース側凸部21a,21bの各接触面の挟持方向P1と直交する方向P2の間隔r2は約2mmとされている。さらに、ケース側凸部21aの先端側には、フィルタエレメント8の保持枠7の傾斜面19の先端側に当接する傾斜面32が形成されている。
【0037】
上記複数の保持枠側凸部20a、20bのそれぞれと複数のケース側凸部21a,21bのそれぞれとは、図4に示すように、保持枠7の挟持方向P1に沿う平面で各凸部20a,20b,21a,21bが弾性変形した状態で圧接(接触)しており、それらの接触部位にはレーザ溶着部w1,w2が形成されている。また、保持枠7の突出部7bの傾斜面19と上側及び下側ケース3,2の挟持部13,10の傾斜面32との間にはレーザ溶着部w3が形成されている。したがって、フィルタエレメント8の保持枠7と上側ケース3の挟持部13とは複数(図中3つ)のレーザ溶着部w1〜w3により接合されている。ここで、複数(図中2つ)のレーザ溶着部w1,w2は、保持枠の挟持方向P1及び挟持方向P1と直交する方向P2に位置をずらして配置されている。また、このレーザ溶着部w1の挟持方向P1の長さ寸法h3は約2mmとされ、レーザ溶着部w2の挟持方向P1の長さ寸法h3は約2mmとされている。また、これら複数のレーザ溶着部w1,w2の挟持方向P1と直交する方向P2の間隔r3は約2mmとされている。
【0038】
(2)フィルタの製造方法
次に、上記構成のフィルタ1の製造方法について説明する。
先ず、上側及び下側ケース3,2に所定の加重をかけて上側及び下側ケース3,2の各挟持部13,10の間にフィルタエレメント8の保持枠7を挟持させ、複数の保持枠側凸部20a、20bのそれぞれと複数のケース側凸部21a,21bのそれぞれとを保持枠7の挟持方向P1に沿う平面で接触させる。ここで、接触する直前の各凸部20a,20b,21a,21bは、図7に示すように、挟持方向P1と直交する方向P2で重なり部30が形成されるように配置してある。したがって、各凸部20a,20b,21a,21bは、接触すると弾性変形して互いに圧接するようになっている。
【0039】
次に、複数の保持枠側凸部20a,20b及び複数のケース側凸部21a,21bのそれぞれの接触部位にレーザ光24を照射してレーザ溶着部w1〜w3を形成する。このとき、レーザトーチ23からのレーザ光24は、上側及び下側ケース3,2の周壁15,12の外側方から保持枠7の挟持方向P1と直交する方向P2に照射される(図4参照)。そのレーザ光24は、レーザ吸収性を有する手前側の保持枠側凸部20aで遮断されず奥側の保持枠側凸部20bに到達でき、複数の凸部20a,20b,21a,21b同士が溶着されてレーザ溶着部w1,w2が形成される。なお、レーザ光24はフィルタ1の全周にわたって照射される。
【0040】
なお、上記構成のフィルタ1によると、図3に示すように、流入口2aからダスティ側の濾過室5a内に流入される濾過前のオイルは、フィルタエレメント8の濾材6により濾過されてクリーン側の濾過室5b内に流入され、その濾過後のオイルは流出口3aから外部に流出されることとなる。
【0041】
(3)実施例の効果
本実施例のフィルタ1によると、フィルタエレメント8の保持枠7に設けられた複数の保持枠側凸部20a,20bのそれぞれと、上側ケース3の挟持部13に設けられた複数のケース側凸部21a,21bのそれぞれとを挟持方向P1に沿う平面で接触させ、それらの接触部位にレーザ溶着部w1,w2を形成するようにしたので、フィルタエレメント8の保持枠7と上側ケース3の挟持部13とは複数のレーザ溶着部w1,w2で接合される。これにより、複数の保持枠側凸部20a,20b及びケース側凸部21a,21bのそれぞれの挟持方向の高さ寸法h1,h2を比較的小さな値に設定しても、レーザ溶着部w1,w2の必要十分な溶着面積を確保することができる。そして、複数の保持枠側凸部20a,20b及びケース側凸部21a,21bの挟持方向の高さ寸法h1,h2を比較的小さな値に設定できるので、フィルタエレメント8及び上側ケース3の成形時にひけ等により複数の保持枠側凸部20a,20b及びケース側凸部21a,21bの成形精度(特に平面度)が低下し難く、これら凸部20a,20b,21a,21b同士の接触部位での密着性を高めることができる。その結果、レーザ溶着によりフィルタエレメント8の保持枠7と下側ケース3の挟持部13とを強固に接合できるとともに、フィルタ1の小型化を図ることができる。
【0042】
また、本実施例では、複数の保持枠側凸部20a,20bを挟持方向P1と直交する方向P2に対して傾斜する傾斜面19上に設けるようにしたので、各凸部20a,20bを水平面上に設けるものに比べて、各凸部20a,20bの挟持方向P1の高さ寸法h1,h2を更に小さな値に設定でき、凸部20a,20b,21a,21b同士の接触部位での密着性を更に高めることができる。
【0043】
また、本実施例では、保持枠側凸部20a,20bとケース側凸部21a,21bとを、両凸部20a,20b,21a,21bが弾性変形した状態で圧接させるようにしたので、凸部20a,20b,21a,21b同士の接触部位での密着性を更に高めることができる。
【0044】
また、本実施例では、上側ケース3を平面矩形状に形成し、上側ケース3の4隅部に挟持方向P1に凹んだ肉盗み部17を形成するようにしたので、比較的剛性の高い上側ケース3の4隅部においてケース側凸部21a,21bを弾性変形し易くでき、上側ケース3の4隅部における凸部20a,20b,21a,21b同士の接触部位での密着性を更に高めることができる。
【0045】
さらに、本実施例では、レーザ透過性を有する複数のケース側凸部21a,21bの間に空間S(図4参照)を形成するようにしたので、この空間Sを介してレーザ光24がレーザ吸収性を有する奥側の保持枠側凸部20bに到達し易く、レーザ溶着部w2をより確実に形成することができる。
【0046】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例では、フィルタエレメント8の保持枠7の突出部7bに傾斜面19を形成し、その傾斜面19上に複数の保持枠側凸部20a,20bを設けるようにしたが、これに限定されず、例えば、図8に示すように、フィルタエレメント8の保持枠7の突出部7bに挟持方向P1と直交する方向P2に沿って延びる水平面26を形成し、この水平面26上に複数の保持枠側凸部20a,20bを設けるようにしてもよい。この場合、レーザ光24を上側ケース3の周壁13の外側方から斜め下方に向かって照射すれば、凸部20a,20b,21a,21b同士の接触部位にレーザ溶着部w1,w2が形成されることとなる。
【0047】
また、上記実施例では、上側ケース3の挟持部13の端部の水平面上に複数のケース側凸部21a,21bを設けるようにしたが、これに限定されず、例えば、図9に示すように、上側ケース3の挟持部13の端部に挟持方向P1と直交する方向P2に対して傾斜する傾斜面27を形成し、この傾斜面27上に複数のケース側凸部21a,21bを設けるようにしてもよい。
【0048】
また、上記実施例において、図10及び図11に示すように、上側ケース3の挟持部13に挟持方向P1に突出する突起部28を設け、フィルタエレメント8の保持枠7に突起部28が入り込み得る凹部29を設けるようにしてもよい。この場合、突起部28が凹部29内に入り込むことによって、フィルタエレメント8の保持枠7と上側ケース3の挟持部13との挟持方向P1と直交する方向P2の位置決めが行われ、凸部20a,20b,21a,21b同士の接触部位での密着性を更に高めることができる。さらに、凹部29には、凹部29内に入り込む突起部28の先端面28aが当接する底面29aが設けられていることが好ましい。突起部28が凹部29に入り込むことによる挟持方向P1と直交する方向P2の位置決めに加えて、突起部28の先端面28aが凹部29の底面29aに当接することによって挟持方向P1の位置決めが行われるためである。なお、上記突起部28及び凹部29は、上側及び下側ケース3,2の4隅部のうちの一対の対角部位にのみ形成されていることが好ましい。
【0049】
また、上記実施例では、レーザ光24を挟持方向P1と直交する方向P2に照射するようにしたが、これに限定されず、例えば、図8に示すように、レーザ光24を挟持方向P1と直交する方向に対して所定角度で傾斜する方向に照射するようにしてもよい。
【0050】
また、上記実施例では、下側ケース2の挟持部10とフィルタエレメント8の保持枠7とを複数のレーザ溶着部w1〜w3により接合するようにしたが、これに限定されず、例えば、下側ケース2の挟持部10とフィルタエレメント8の保持枠7とを1つのレーザ溶着部により接合したり、振動溶着、超音波溶着、熱版溶着、接着剤による接着等により接合したりしてもよい。なお、ダスティ側の濾過室5aを形成する下側ケース2とフィルタエレメント8の保持枠7との接合強度は、クリーン側の濾過室5bを形成する上側ケース3とフィルタエレメント8の保持枠7との接合強度より小さな値としても適当な濾過機能を発揮することができる。
【0051】
さらに、上記実施例では、上側ケース3をレーザ透過性樹脂を用いてなし、フィルタエレメント8の挟持部7をレーザ吸収性樹脂を用いてなすようにしたが、これに限定されず、例えば、上側ケース3をレーザ吸収性樹脂を用いてなし、フィルタエレメント8の保持枠7をレーザ透過性樹脂を用いてなすようにしてもよい。
【0052】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0053】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
流体を濾過するフィルタとして広く利用される。特に自動変速機用フィルタとして好適に利用される。
【符号の説明】
【0055】
1;フィルタ、2;下側ケース、2a;流入口、3;上側ケース、3a;流出口、5;濾過室、6;濾材、7;保持枠、8;フィルタエレメント、10,13;挟持部、17;肉盗み部、19;傾斜面、20a,20b;保持枠側凸部、21a,21b;ケース側凸部、P1;保持枠の挟持方向、w1,w2;レーザ溶着部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入口を有する第1ケース構成部材と、
前記第1ケース構成部材との間で濾過室を形成し、流出口を有する樹脂製の第2ケース構成部材と、
前記濾過室内に収容される濾材、及び該濾材の周縁端を保持する樹脂製の保持枠を有するフィルタエレメントと、を備えるフィルタであって、
前記フィルタエレメントの前記保持枠は、前記第1ケース構成部材及び前記第2ケース構成部材のそれぞれに設けられた挟持部の間に挟持されており、
前記フィルタエレメントの前記保持枠には、前記保持枠の挟持方向(P1)に突出し且つ該保持枠の挟持方向(P1)と交差する方向(P2)に位置をずらして配置された複数の保持枠側凸部が設けられており、
前記第2ケース構成部材の前記挟持部には、前記保持枠の挟持方向(P1)に突出し且つ該保持枠の挟持方向(P1)と交差する方向(P2)に位置をずらして配置された複数のケース側凸部が設けられており、
前記複数の保持枠側凸部のそれぞれと前記複数のケース側凸部のそれぞれとは、前記保持枠の挟持方向(P1)に沿う平面で接触しており、それらの接触部位にはレーザ溶着部(w1,w2)が形成されていることを特徴とするフィルタ。
【請求項2】
前記複数の保持枠側凸部及び前記複数のケース側凸部のうちの少なくとも一方の複数の凸部は、前記保持枠の挟持方向(P1)と直交する方向(P2)に対して傾斜する傾斜面上に設けられている請求項1記載のフィルタ。
【請求項3】
前記保持枠側凸部と前記ケース側凸部とは、少なくとも一方の凸部が弾性変形した状態で圧接している請求項1又は2に記載のフィルタ。
【請求項4】
前記第2ケース構成部材は平面多角形状に形成されており、該第2ケース構成部材の隅部には前記保持枠の挟持方向(P1)に凹んだ肉盗み部が形成されている請求項3記載のフィルタ。
【請求項5】
前記フィルタエレメントの前記保持枠及び前記第2ケース構成部材の前記挟持部のうちの一方には、前記保持枠の挟持方向(P1)に突出する突起部が設けられ、他方には、該突起部が入り込む凹部が設けられている請求項1乃至4のいずれか一項に記載のフィルタ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のフィルタの製造方法であって、
前記第1ケース構成部材及び前記第2ケース構成部材のそれぞれの前記挟持部の間に前記フィルタエレメントの前記保持枠を挟持させて、前記複数の保持枠側凸部のそれぞれと前記複数のケース側凸部のそれぞれとを前記保持枠の挟持方向(P1)に沿う平面で接触させる工程と、
前記複数の保持枠側凸部及び前記複数のケース側凸部のそれぞれの接触部位にレーザ光を照射して前記レーザ溶着部(w1,w2)を形成する工程と、を備えることを特徴とするフィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−67801(P2011−67801A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223374(P2009−223374)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】