説明

フィルタ構造体および該フィルタ構造体を用いる空気浄化装置

【課題】高い空気清浄効果を得ることができるとともに、消費電力を低減させ、設置スペースも小さくすることができるフィルタ構造体を提供する。
【解決手段】光触媒を担持したフィルタに光源からの紫外線を照射することによって、空気を清浄にするフィルタ構造体であって、前記フィルタにより仕切られる複数のセルの長手方向位置の一端面部が閉止されており、当該閉止端面部に前記光源がそれぞれ設置されるとともに、前記仕切られた複数のセルにおいて、相互に隣接するセルのうち、上下位置および/または左右位置のセルに閉止端面部が交互に配列されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィルタ構造体および該構造体を用いる空気浄化装置に関する。さらに詳しくは、高い空気清浄効果を得ることができるとともに、消費電力を低減させ、設置スペースも小さくすることができるフィルタ構造体および該フィルタ構造体を用いる空気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、家屋内や車室内などの空気中の脱臭や抗殺菌を目的として、光触媒を担持したフィルタと該フィルタに紫外線を照射する光源(以下、紫外線光源という)とからなるフィルタユニットを用いる空気浄化装置がある。かかるフィルタユニットでは、一般に、フィルタとして通気性を有する紙、繊維またはセラミック製の平板フィルタに光触媒を担持させたものが使用されており、たとえば図3に示されるように、紫外線光源51がフィルタ52の近傍において、気流方向Aの前側(上流側)に配置されている。また、後側(下流側)に配置する場合もある。なお、図3において、矢印Aは空気の流れを模式的に示している。
【0003】
図3に示す配置の場合、前記フィルタ52の表面52aの受光強度は確保することができるが、裏面52bは影になることから、充分な受光強度を確保することができず、フィルタ保有性能(受光強度が増すほど、高性能となるもの)を有効に発揮することができない。従来は、これを改善するために、図4に示されるように、紫外線光源51をフィルタ52の両面側に設置する構造を採用している(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002―172157号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のフィルタユニットの構造では、紫外線光源の本数が倍増することに比例して、消費電力が倍増するという問題があるとともに、フィルタユニットの設置スペースが大きくなってしまうという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、叙上の事情に鑑み、高い空気清浄効果を得ることができるとともに、消費電力を低減させ、設置スペースも小さくすることができるフィルタ構造体および該フィルタ構造体を用いる空気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のフィルタ構造体は、光触媒を担持したフィルタに光源からの紫外線を照射することによって、空気を清浄にするフィルタ構造体であって、前記フィルタにより仕切られる複数のセルの長手方向位置の一端面部が閉止されており、当該閉止端面部に前記光源がそれぞれ設置されるとともに、前記仕切られた複数のセルにおいて、相互に隣接するセルのうち、上下位置および/または左右位置のセルに閉止端面部が交互に配列されてなることを特徴としている。
【0008】
また、本発明の空気浄化装置は、光触媒を担持したフィルタに光源からの紫外線を照射することによって、空気を清浄にする空気浄化装置であって、前記フィルタにより仕切られる複数のセルの長手方向位置の一端面部が閉止されており、当該閉止端面部に前記光源がそれぞれ設置されるとともに、該隣接するセルのうち、上下位置および/または左右位置のセルの閉止端面部が交互に配列されてなるフィルタ構造体と、空気を前記フィルタの内部に導入する導入手段とを備えてなることを特徴としている。
【0009】
なお、本発明において、格子状に配列とは、立体構造またはハニカム構造などを含むものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、セルの閉止端面部に光源を設置し、隣接するセルのうち、上下位置および/または左右位置のセルの閉止端面部を交互に配列しているため、フィルタの表裏面から紫外線光を当てることができるとともに、光源が空気の流れの妨げにならず、空気を光触媒に均一に接触させることができる。これにより、紫外線光源から受ける受光強度が強くなり、高い空気清浄効果を得ることができる。また、光源の本数を減らして、消費電力を低減させることができる。さらに、装置全体の設置スペースを小さくすることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面に基づいて、本発明のフィルタ構造体および該フィルタ構造体を用いる空気浄化装置を説明する。
【0012】
本発明の一実施の形態にかかわるフィルタ構造体は、図1〜2に示されるように、ケース1内に格子状に配列(立体構造またはハニカム構造)される光触媒を担持したフィルタ2と、該フィルタ2により仕切られる複数のセルCの中央部に配置される紫外線光源3とから構成されている。本実施の形態では、この複数のセルCは、長手方向位置の一端面部を閉止板4により閉止して通気を封止して、その他端面部を開放して通気できるようにされており、前記紫外線光源3はこの閉止板4に設置(支持)されている。また、この複数のセルCは、相互に隣接するセルCのうち、上下位置および左右位置のセルCに閉止端面部、すなわち閉止板4の配置が交互になるように配列されている。
【0013】
なお、本実施の形態では、前記格子状のフィルタ2は複数のフィルタエレメント2aからなるため、このフィルタ2は、いわば、隣接するセルの境界位置のフィルタエレメント2aを共有して(兼ねて)、2〜4枚のフィルタエレメント2aにより囲まれた四角形状のフィルタユニットをハニカム状に積み重ねた構造にされている。このため、この構造は、セルCの閉止端面部が向き合うフィルタユニットを市松模様的に交互に配置したものと考えることもできる。
【0014】
本実施の形態にかかわるフィルタ構造体では、図2における矢印Aで示されるように、セルCの開口から導入された空気は、フィルタエレメント2aを通過したのち、該セルCに隣接するセルCの開口から排出される。このため、紫外線光源3が空気の流れの妨げにならず、空気をフィルタの光触媒に均一に接触させることができる。
【0015】
前記光触媒は、紫外線を含む光の照射を受けることにより光触媒の表面に発生した正孔が、光触媒表面の吸着水と反応して、ラジカルOH(水酸基ラジカル)が生成され、このラジカルOHが有機物の分子結合を切断することにより、臭い成分を無臭化することができるものであれば、本発明において、とくに限定されるものではない。たとえば、アナタース型の結晶構造を有する酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)および酸化タングステン(WO3)、酸化セリウムなどの金属酸化物、硫化カドミウムまたは硫化亜鉛などの硫化物を用いることができる。とくに酸化チタンは、構造安定性や光触媒能力、さらには取扱い上の安全性などから生活空間で使用するのに最適であり、二酸化チタンを用いることにより、弱い紫外線でも充分な脱臭機能を発揮でき、広範囲な物質、たとえばアンモニア、アセトアルデヒド、酢酸または硫化水素などの悪臭を除去することができる。また、前記フィルタ2には、必要に応じて、活性炭、ゼオライトまたはシリカゲルなどの粉末からなる吸着剤を担持さセルこともできる。また、光触媒の担持方法としては、蒸着法、スパッタ法、熱分解法、金属酸化法またはゾルゲル法などを適宜選定することができる。
【0016】
前記フィルタ2としては、たとえば紙製フィルタ、セラミック製フィルタ、シリカ繊維フィルタ、ポリエステル系不織布のフィルタなどを用いることができる。
【0017】
前記紫外線光源3は、前記フィルタ本体3の内部に挿通され、一端が前記閉止板4に支持されている。この閉止板4の支持構造としては、とくに限定されるものではなく適宜選定することができる。また、前記光源2として、本発明においては、管状光源、たとえばブラックライト、蛍光ランプまたはキセノンランプなどを使用することができるが、たとえばBLB―20Wランプ((株)東芝製)やBLBランプ(型式:TCB30−200)((株)ハイベック製)を使用することができる。なお、紫外線光源3は、管状光源に限定されるものではなく、U字状を呈する光源とすることもできる。また、紫外線光源3の本数も適宜選定することができる。
【0018】
本実施の形態では、たとえばブローにより臭い成分を含む空気がフィルタ2の内部に導入されると、フィルタ2に付着した臭い成分を光触媒と光源が照射する紫外線により化学的に分解して脱臭を行い、空気を清浄にする。
【0019】
つぎに本発明の実施例を説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
実施例1
【0020】
実験にあたり、寸法が150mm×850mm×10mm(幅×長さ(奥行き長さ)×厚さ)である24枚の光触媒担持フィルタ(フィルタエレメント)を用いて、立体構造をしたモジュール(フィルタ構造体)を考えることにした。
【0021】
本実施例1では、図1〜2に示されるように、前記フィルタを格子状に配置したフィルタ構造体(4セル×4セルの構造)を採用した。この構造における紫外線光源の数は16本であり、設置スペースは、約0.44m(=180mm×4(セル)×180mm×4(セル)×850mm)である。
比較例
【0022】
前記実施例1と同じ寸法および同じ枚数のフィルタ(フィルタエレメント)を用いて、図4に示される光源の配置のように、フィルタの表裏側にそれぞれ24本の紫外線光源を配置する構造とすると、このときの設置スペースは約0.77m(=150mm×24(枚)×850mm×250mm(光源スペースを含む高さ))である。
【0023】
前記実施例1は比較例と比較すると、高い空気清浄効果を維持させつつ、消費電力が比較例の消費電力の3分の1(1/3)となり、消費電力を低減させることができることがわかる。また、本実施例1では、設置スペースを比較例の5分の3(3/5)に小さくすることもできることがわかる。
実施例2
【0024】
つぎに前記実施例1のフィルタの厚さを2分の1(1/2)にした48枚のフィルタで構成したフィルタ構造体とする場合(この場合の体積は前記実施例1のフィルタ24枚の体積は同じである)、このときの格子状のセルの配列は5セル×6セルとなり、30本の紫外線光源を使用した。この実施例2の設置スペースは、約0.83m(=0.9m×1.08m×0.85m)である。この場合、比較例と比較すると、設置スペースはほとんど変わらないが、消費電力は5分の3(3/5)になる。また、実施例2では、フィルタの厚さを2分の1(1/2)としているため、光源強度の距離減衰が少なくなり、受光強度が増して、空気清浄効果を向上させることができることがわかる。
【0025】
したがって、本実施の形態では、小さい設置スペースで高い空気清浄効果が得られることにより、環境浄化への寄与を向上させることができる。
【0026】
なお、本実施の形態にかかわるフィルタ構造体は、複数のフィルタエレメントから構成されているが、本発明においては、これに限定されるものではなく、一体に格子状に形成されるフィルタから構成することができる。また、フィルタ構造体は、1枚のフィルタ(フィルタエレメント)から構成することもできる。この場合、セルは上下または左右に配列される。
【0027】
また、前記実施の形態では、紫外線光源から受ける受光強度を高めるとともに、気流を乱さないようにされているため、フィルタの全面積を100%活用することができる。その結果、空気の清浄効果が高いフィルタ構造体を得ることができるため、空気浄化器や室内冷暖房機などの環境浄化機器である空気清浄装置に適用することができる。
かかる空気浄化装置は、本発明において、とくに限定されるものではないが、フィルタ構造体と、たとえば空気を前記フィルタ2の内部に導入する導入手段であるブローやファン(図示せず)とともに、フィルタ2の上流位置または/および下流位置に配置される空気ろ過手段であるフィルタなどを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施の形態にかかわるフィルタ構造体の正面図である。
【図2】図1におけるI−I線断面矢視である。
【図3】従来のフィルタと光源の一配置例を示す模式図である。
【図4】従来のフィルタと光源の他の配置例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0029】
1 ケース
2 フィルタ
2a フィルタエレメント
3 紫外線光源
4 閉止板
C セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒を担持したフィルタに光源からの紫外線を照射することによって、空気を清浄にするフィルタ構造体であって、前記フィルタにより仕切られる複数のセルの長手方向位置の一端面部が閉止されており、当該閉止端面部に前記光源がそれぞれ設置されるとともに、前記仕切られた複数のセルにおいて、相互に隣接するセルのうち、上下位置および/または左右位置のセルに閉止端面部が交互に配列されてなるフィルタ構造体。
【請求項2】
前記フィルタが格子状を呈する請求項1記載のフィルタ構造体。
【請求項3】
前記フィルタが複数のフィルタエレメントからなる請求項1または2記載のフィルタ構造体。
【請求項4】
光触媒を担持したフィルタに光源からの紫外線を照射することによって、空気を清浄にする空気浄化装置であって、前記フィルタにより仕切られる複数のセルの長手方向位置の一端面部が閉止されており、当該閉止端面部に前記光源がそれぞれ設置されるとともに、該隣接するセルのうち、上下位置および/または左右位置のセルの閉止端面部が交互に配列されてなるフィルタ構造体と、空気を前記フィルタの内部に導入する導入手段とを備えてなる空気浄化装置。
【請求項5】
前記フィルタが格子状を呈する請求項4記載の空気浄化装置。
【請求項6】
前記フィルタが複数のフィルタエレメントからなる請求項4または5記載の空気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−7588(P2007−7588A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−193319(P2005−193319)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(000191009)新東工業株式会社 (474)
【Fターム(参考)】