説明

フィルタ装置

【課題】作動油の濾過性能を長期間維持できるフィルタ装置を提供する。
【解決手段】前段のフィルタ40が目詰まりすると安全弁50が作動して、次段のフィルタ40で作動油を濾過できるように構成した。これにより、前段のフィルタ40が目詰まりして安全弁50が作動しても、後段のフィルタ40で作動油を濾過できるため、従来のフィルタ装置と比べて、作動油の濾過性能を長期間維持できる。また、安全弁50が作動すると、弁体53a〜53cが磁石58a〜58cに吸着されて保持されるように構成した。これにより、安全弁50における作動油の圧力損失を低減できるので、無駄なエネルギ消費を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体中の粒子を捕集するフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、建設機械の油圧回路等において、油圧回路を流れる作動油中の汚染物を捕集するために油圧回路中にフィルタを設けている。このフィルタが目詰まりすることで油圧回路内の圧力が高くなるのを防ぐため、安全弁を設けている。フィルタの上流側の圧力が所定の圧力を超えると、安全弁が作動して、フィルタの上流側の作動油をフィルタの下流側に導く(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−262814号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、安全弁が作動した場合には、作動油がフィルタで濾過されず、フィルタで捕集すべき汚染物も作動油とともに下流へ流れてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1) 請求項1の発明によるフィルタ装置は、相手側の機器に取り付けられるハウジング内に設けられる第1および第2のフィルタと、第1のフィルタで流体を濾過する際の圧力損失が所定の値以下であれば第1のフィルタで流体を濾過し、第1のフィルタで流体を濾過する際の圧力損失が所定の値を超えると、第2のフィルタで流体を濾過するように流体の流れを切り替える切替手段とを備えることを特徴とする。
(2) 請求項2の発明は、請求項1に記載のフィルタ装置において、第1および第2のフィルタは、互いに着脱可能であることを特徴とする。
(3) 請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のフィルタ装置において、第2のフィルタは、ハウジングが相手側の機器に取り付けられた際に、第1のフィルタよりも相手側機器に近い位置に取り付けられることを特徴とする。
(4) 請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィルタ装置において、切替手段が第2のフィルタで流体を濾過するように流体の流れを切り替えたことを検出する検出電極をさらに備えることを特徴とする。
(5) 請求項5の発明は、請求項4に記載のフィルタ装置において、切替手段が第2のフィルタで流体を濾過するように流体の流れを切り替えたことを検出電極が検出するまでの期間に基づいて、第2のフィルタが目詰まりするまでの期間を予測する予測手段をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、作動油の濾過性能を長期間維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
−−−第1の実施の形態−−−
図1〜4を参照して、本発明によるフィルタ装置の第1の実施の形態を説明する。図1(a)は徒来のフィルタ装置を直列に接続した場合の油圧回路の概略を示す図であり、図1(b)は本発明によるフィルタ装置1の油圧回路の概略を示す図である。図2は本発明によるフィルタ装置1の外観を示す図であり、図3は、相手側の機器(相手側機器)60に取り付けられたフィルタ装置1の断面図である。なお、61は相手側機器60からの流体(作動油)の供給口であり、62は、相手側機器60の作動油の戻り口である。
【0008】
図2,3に示すように、本発明によるフィルタ装置1は円筒状のハウジング10を有する。ハウジング10の一方端には、作動油の流入口11と流出口12とが設けられている。フィルタ装置が相手側機器60に取り付けられると、相手側機器60の供給口61と流入口11とが接続され、相手側機器60の戻り口62と流出口12とが接続される(図3)。ハウジング10の内部には、少なくとも2つ以上の円筒状のフィルタ40が設けられている。本実施の形態では、フィルタ40が3つ設けられたフィルタ装置を例に説明する。フィルタ40は、円筒の内側から外側へ作動油が流れる際に作動油を濾過して、汚染物などの作動油から取り除くべき異物を除去する。
【0009】
最上流側(図示最上段)のフィルタ40(第1フィルタ40a)の円筒内側の一方の端面(図示上面)41aはハウジング10の流入口11と接続されている。第1フィルタ40aの円筒内側の他方の端面(図示下面)42aは、安全弁50(第1安全弁50a)の上流面(図示上面)に当接している。
【0010】
第1フィルタ40aの下方に設けられたフィルタ40(第2フィルタ40b)は、円筒内側の一方の端面(図示上面)41bが第1安全弁50aの下流面(図示下面)に面している。第2フィルタ40bの円筒内側の他方の端面(図示下面)42bは、安全弁50(第2安全弁50b)の上流面(図示上面)に当接している。
【0011】
第2フィルタ40bの下方に設けられたフィルタ40(第3フィルタ40c)は、円筒内側の一方の端面(図示上面)41cが第2安全弁50bの下流面(図示下面)に面している。第3フィルタ40cの円筒内側の他方の端面(図示下面)42cは、安全弁50(第3安全弁50c)の上流面(図示上面)に当接している。第3安全弁50cの下流面(図示下面)は、ハウジング10の内部で露出している。
【0012】
図4(a),(b)に第1安全弁50aの構造を示す。なお、第2安全弁50bおよび第3安全弁50cの構造は第1安全弁50aの構造と同じであるので詳細の構造については説明を省略する。第1安全弁50aは、流入口51aと、流出口52aと、強磁性体からなる円筒状の弁体53aと、流路54aが設けられた弁座55aと、ばね56aと、ばね56aを支える支持部57aと、磁石58aとを備えている。流入口51aは、第1安全弁50aの上流面に設けられた開口である。流出口52aは、第1安全弁50aの下流面に設けられた開口である。
【0013】
弁体53aは弁座55aの内周面で円筒の軸線方向に摺動可能に設けられており、ばね56aにより図示上方に付勢されている。なお、弁体53aは弁座55aに設けられた不図示の当接部に当接することで、図示上方への移動が規制されており、弁座55aの図示上方には抜けて脱落することがない。弁体53aはばね56aの付勢力によって図示上方に移動することで、弁座55aに設けられた流路54aを閉止する。また、後述するように弁体53aは図示下方に移動することで、流路54aを開放する。
【0014】
上述したように、流路54aは弁座55aに設けられた開口部であり、流入口51aと流出口52aとを連通する。磁石58aは、弁体53aと略同径の内外径を有する環状の磁石であり、弁体53a直下の支持部57aに取り付けられている。磁石58aは、弁体53aが図示下方に移動されて弁体53aの下部と当接すると、図4(b)に示すように、弁体53aを吸着して保持する。弁体53aが下方に移動すると、流路54aを開放するので、流入口51aと流出口52aとが連通される。
【0015】
ドレン経路14は、各フィルタ4の外周面および安全弁50の外周面と、ハウジング10の内周面によって形成される空間である。ドレン経路14は流出口12を介して相手側機器60の戻り口62と接続されている。なお、第3安全弁50cの流出口52cは、ドレン経路14と接続されている。
【0016】
−−−作動油の流れについて−−−
作動油は、相手側機器60の供給口61から流入口11を介して第1フィルタ40aの円筒内側に流入する。第1フィルタ40aが目詰まりを起こしていなければ、第1フィルタ40aの円筒内側の圧力が所定の圧力よりも低くなるため、第1安全弁50aの上流面と下流面との圧力差が小さい。したがって、弁体53aはばね56aの付勢力によって図示上方に移動したままの状態を保ち、流路54aを閉止する。そのため、第1フィルタ40aの円筒内側に流入した作動油は、第1フィルタ40aで濾過されて円筒外側のドレン経路14へ流入する。このとき、作動油に含まれていた汚染物などの異物は第1フィルタ40aによって作動油から分離される。作動油から分離された異物はフィルタ40aで捕集されて保持される。ドレン経路14へ流入した作動油は、流出口12を介して相手側機器60の戻り口62へ流出する。
【0017】
作動油から分離された異物によって第1フィルタ40aが目詰まりを起こしてくると、作動油が第1フィルタ40aを通過する際の圧力損失が増えるため、第1フィルタ40aの円筒内側の圧力が上昇し、第1安全弁50aの上流面と下流面との圧力差が大きくなる。目詰まりの進行によって第1フィルタ40aにおける圧力損失が増えて、第1フィルタ40aの円筒内側の圧力が所定の圧力よりも高くなると、弁体53aは、第1安全弁50aの上流面と下流面との圧力差によってばね56aの付勢力に抗して図示下方へ移動して、流路54aを開放する。すなわち、第1安全弁50aが作動する。弁体53aは、磁石58aに吸着されて保持される。なお、弁体53aが磁石58aに吸着されて保持されると、ばね56aの付勢力や、第1安全弁50aの上流面と下流面との圧力差にかかわらず流路54aが開放される。したがって、ばね56aに付勢力に抗して弁体53aを下方に移動させる必要がなくなるため、第1安全弁50aを通過する際の作動油の圧力損失は減少する。
【0018】
第1安全弁50aが作動すると、第1フィルタ40aの円筒内側に流入した作動油は、第1安全弁50aの流入口51a、流路54a、および流出口52aを介して第2フィルタ40bの円筒内側に流入する。すなわち、第1安全弁50aは、第1フィルタ40aで作動油を濾過する際の圧力損失が所定の圧力を超えると第2フィルタ40bで作動油を濾過するように作動油の流れを切り替える切替手段である。第2フィルタ40bが目詰まりを起こしていなければ、第2フィルタ40bの円筒内側の圧力が所定の圧力よりも低くなるため、第2安全弁50bの上流面と下流面との圧力差が小さい。したがって、弁体53bはばね56bの付勢力によって図示上方に移動したままの状態を保ち、流路54bを閉止する。そのため、第2フィルタ40bの円筒内側に流入した作動油は、第2フィルタ40bで濾過されて円筒外側のドレン経路14へ流入する。ドレン経路14へ流入した作動油は、流出口12を介して相手側機器60の戻り口62へ流出する。
【0019】
第1フィルタ40aの場合と同様に、第2フィルタ40bの目詰まりが進行して第2フィルタ40bの円筒内側の圧力が所定の圧力よりも高くなると、第1安全弁50aの場合と同様に、第2安全弁50bが作動する。
【0020】
第2安全弁50bが作動すると、第2フィルタ40bの円筒内側に流入した作動油は、第2安全弁50bの流入口51b、流路54b、および流出口52bを介して第3フィルタ40cの円筒内側に流入する。第3フィルタ40cが目詰まりを起こしていなければ、第3フィルタ40cの円筒内側の圧力が所定の圧力よりも低くなるため、第3安全弁50cの上流面と下流面との圧力差が小さい。したがって、弁体53cはばね56cの付勢力によって図示上方に移動したままの状態を保ち、流路54cを閉止する。そのため、第3フィルタ40cの円筒内側に流入した作動油は、第3フィルタ40cで濾過されて円筒外側のドレン経路14へ流入する。ドレン経路14へ流入した作動油は、流出口12を介して相手側機器60の戻り口62へ流出する。
【0021】
第1フィルタ40aおよび第2フィルタ40bの場合と同様に、第3フィルタ40cの目詰まりが進行して第3フィルタ40cの円筒内側の圧力が所定の圧力よりも高くなると、第3安全弁50cが作動する。
【0022】
第3安全弁50cが作動すると、第3フィルタ40cの円筒内側に流入した作動油は、第3安全弁50cの流入口51c、流路54c、および流出口52cを介してドレン経路14へ流入する。ドレン経路14へ流入した作動油は、流出口12を介して相手側機器60の戻り口62へ流出する。
【0023】
このように、第1の実施の形態のフィルタ装置1では、第1フィルタ40aで作動油を濾過し、第1フィルタ40aが目詰まりすると第1安全弁50aが作動して、少ない圧力損失で第2フィルタ40bで作動油を濾過できる。また、第2フィルタ40bが目詰まりすると第2安全弁50bが作動して、少ない圧力損失で第3フィルタ40cで作動油を濾過できる。
【0024】
本実施の形態のフィルタ装置1では、次の作用効果を奏する。
(1) フィルタ40が目詰まりすると安全弁50が作動して、次段のフィルタ40で作動油を濾過できるように構成した。これにより、前段のフィルタ40が目詰まりして安全弁50が作動しても、後段のフィルタ40で作動油を濾過できるため、従来のフィルタ装置と比べて、作動油の濾過性能を長期間維持できる。また、フィルタ40の交換頻度を低減できるので、メンテナンスに要する時間や費用を低減できる。
【0025】
(2) 図1(a)に示すような従来のフィルタ装置を直列に配設した場合には、前段のフィルタが目詰まりした後に、前段の安全弁を介して後段のフィルタに作動油を供給する際には、前段の安全弁を作動させる必要があるため、作動油の供給圧力が後段のフィルタで濾過するのに必要な圧力以上に高い圧力となってしまう。これに対して、本実施の形態のフィルタ装置1では、安全弁50が作動すると、弁体53a〜53cが磁石58a〜58cに吸着されて保持されるように構成した。これにより、安全弁50における作動油の圧力損失を低減できるので、無駄なエネルギ消費を低減できる。また、フィルタ装置1を多段化しても、フィルタ装置1における圧力損失が大幅に増加することがないので、フィルタ装置1の多段化が容易となる。
【0026】
−−−第2の実施の形態−−−
図5,6を参照して、本発明によるフィルタ装置の第2の実施の形態を説明する。以下の説明では、第1の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第1の実施の形態と同じである。本実施の形態では、主に、1つのフィルタ40と1つの安全弁50とによって1つのフィルタユニット2を構成する点で、第1の実施の形態と異なる。
【0027】
図5は、本実施の形態のフィルタユニット2の構造を示す図である。フィルタユニット2には、第1の実施の形態のフィルタ40と安全弁50とが1つのハウジング20内に設けられている。ハウジング20の一方端(図示上面)には、作動油の流入口21と流出口22とが設けられている。ハウジング20の他方端(図示下面)には、ドレン流入口23と流出口52とが設けられている。
【0028】
フィルタ40の円筒内側の一方の端面(図示上面)41はハウジング20の流入口21と接続されている。フィルタ40の円筒内側の他方の端面(図示下面)42は、安全弁50の上流面(図示上面)に当接している。安全弁50は、流入口51と、流出口52と、強磁性体からなる円筒状の弁体53と、流路54が設けられた弁座55と、ばね56と、ばね56を支える支持部57と、磁石58とを備えている。安全弁50の各構成要素51〜58は、第1の実施の形態の第1安全弁50aの各構成要素51a〜58aにそれぞれ対応している。
【0029】
図6に示すように、2つのフィルタユニット2は一方のフィルタユニット2の図示下面と、他のフィルタユニット2の図示上面とで接続できる。フィルタユニット2同士を接続すると、図示上方のフィルタユニット2の流出口52と、図示下方のフィルタユニット2の流入口21とが接続され、図示上方のフィルタユニット2のドレン流入口23と、図示下方のフィルタユニット2の流出口22とが接続される。図示最下段のフィルタユニット2の下面には、図示最下段のフィルタユニット2の流出口52と、ドレン流入口23とを接続し、かつ、作動油がフィルタユニット2の外部に漏れないように蓋25が取り付けられる。
【0030】
フィルタユニット2が相手側機器60に取り付けられると、図6における図示最上段の、相手側機器60(不図示)に最も近いフィルタユニット2の流入口21が相手側機器60の供給口61と接続され、流出口22が相手側機器60の戻り口62と接続される(不図示)。なお、図6では、フィルタユニット2の段数が3段であるが、相手側機器60に取り付けられるフィルタユニット2の段数は1段であってもよく、2段であってもよく、4段以上であってもよい。なお、作動油の流れについては、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0031】
第2の実施の形態のフィルタ装置では、第1の実施の形態の作用効果に加えて次の作用効果を奏する。
(1) 1つのフィルタ40と1つの安全弁50とによって1つのフィルタユニット2を構成したので、目詰まりを起こしたフィルタ40が設けられたフィルタユニット2だけを交換できるので、交換に要するフィルタ装置についてのコストを低減できる。
【0032】
(2) フィルタユニット2同士を接続可能に構成したので、相手側機器60に対する取り付けスペースや、フィルタユニット2の交換頻度などに応じて、相手側機器60に取り付けるフィルタユニット2の段数を任意に調節でき、柔軟性が高い。
【0033】
−−−第3の実施の形態−−−
図7,8を参照して、本発明によるフィルタ装置の第3の実施の形態を説明する。以下の説明では、第1および第2の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第1および第2の実施の形態と同じである。本実施の形態では、主に、相手側機器60から最も離れたフィルタ40で最初に作動油を濾過するように構成した点で、第1および第2の実施の形態と異なる。
【0034】
図7は、本実施の形態のフィルタユニット3の構造を示す図である。フィルタユニット3は、第2の実施の形態のフィルタユニット2のハウジング20のさらに外側に、円筒状のハウジング30が設けられた構造となっている。ハウジング20の外周面とハウジング30の内周面との間の空間によって作動油のバイパス流路31を形成している。図7におけるバイパス流路31の図示下方端をバイパス流路流入口32と呼び、図7におけるバイパス流路31の図示上方端をバイパス流路流出口33と呼ぶ。なお、後述するように、ドレン経路14における作動油の流れは、第2の実施の形態とは逆に、図示上方から下方へと流れるため、流出口22がハウジング20の他方端(図示下面)に設けられ、ドレン流入口23がハウジング20の一方端(図示上面)に設けられている。
【0035】
図8に示すように、2つのフィルタユニット3は一方のフィルタユニット3の図示下面と、他のフィルタユニット3の図示上面とで接続できる。フィルタユニット3同士を接続すると、図示上方のフィルタユニット3の流出口52と、図示下方のフィルタユニット3の流入口21とが接続され、図示上方のフィルタユニット3の流出口22と、図示下方のフィルタユニット3のドレン流入口23とが接続される。さらに、図示上方のフィルタユニット3のバイパス流路流入口32と、図示下方のフィルタユニット3のバイパス流路流出口33とが接続される。
【0036】
図示最上段のフィルタユニット3の上面には、図示最上段のフィルタユニット3のドレン流入口23を閉止するとともに、流入口21とバイパス流路流出口33とを接続し、かつ、作動油がフィルタユニット3の外部に漏れないように蓋35が取り付けられる。
【0037】
フィルタユニット3は、相手側機器60に対してフィルタユニット3の図示下面で取り付けられる(図8)。フィルタユニット3が相手側機器60に取り付けられると、図8における図示最下段の、相手側機器60に最も近いフィルタユニット3のバイパス流路流入口32が相手側機器60の供給口61と接続され、流出口22および流出口52が相手側機器60の戻り口62と接続される。なお、図8では、フィルタユニット3の段数が3段であるが、相手側機器60に取り付けられるフィルタユニット3の段数は1段であってもよく、2段であってもよく、4段以上であってもよい。
【0038】
−−−作動油の流れについて−−−
作動油は、相手側機器60の供給口61から図示最下段のフィルタユニット3のバイパス流路流入口32に入り、バイパス流路31を図示下方から上方に向かって流れて、図示最上段のフィルタユニット3の流入口21から、図示最上段のフィルタ40の円筒内側に流入する。図示最上段のフィルタ40の円筒内側に流入した作動油は、図示最上段のフィルタ40で濾過されてドレン経路14へ流入し、ドレン経路14を図示下方に流れて、図示最下段のフィルタユニット3の流出口22から相手側機器60の戻り口62へと流れる。
【0039】
図示最上段のフィルタ40が目詰まりを起こすと、第1および第2の実施の形態と同様に、図示最上段の安全弁50が作動して、作動油を図示中段のフィルタ40の円筒内側に導く。図示中段のフィルタ40の円筒内側に導かれた作動油は、図示中段のフィルタ40で濾過されてドレン経路14へ流入し、ドレン経路14を図示下方に流れて、図示最下段のフィルタユニット3の流出口22から相手側機器60の戻り口62へと流れる。
【0040】
図示中段のフィルタ40が目詰まりを起こすと、図示中段の安全弁50が作動して、作動油を図示最下段のフィルタ40の円筒内側に導く。図示最下段のフィルタ40の円筒内側に導かれた作動油は、図示最下段のフィルタ40で濾過されてドレン経路14へ流入し、流出口22から相手側機器60の戻り口62へと流れる。
【0041】
図示最下段のフィルタ40が目詰まりを起こすと、図示最下段の安全弁50が作動して、流出口52を介して作動油を相手側機器60の戻り口62へ導く。
【0042】
上述した第3の実施の形態のフィルタ装置によれば、第1および第2の実施の形態の作用効果に加え、次の作用効果を奏する。
(1) フィルタユニット3同士を接続可能に構成し、図8の図示最下段のフィルタユニット3で相手側機器60に取り付け、バイパス流路流入口32を利用して作動油を相手側機器60から最も離れた(図示最上段の)フィルタ40に導くように構成した。したがって、図示上方のフィルタ40から順に目詰まりが起きるように構成されることとなる。また、図示上方のフィルタユニット3から順に取り外しができるように構成されることとなる。これにより、目詰まりを起こしていないフィルタユニット3を取り外すことなく、目詰まりを起こしたフィルタユニット3だけを交換できるので、交換作業が容易となる。
【0043】
−−−第4の実施の形態−−−
図9,10を参照して、本発明によるフィルタ装置の第4の実施の形態を説明する。以下の説明では、第1〜第3の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第1〜第3の実施の形態と同じである。本実施の形態では、主に、安全弁50が作動したことを検出するように構成した点で、第1〜第3の実施の形態と異なる。
【0044】
図9は、第4の実施の形態のフィルタユニット2について、安全弁50の弁体53直下の支持部57を弁体53側から見たときの図である。なお、第4の実施の形態のフィルタユニット2の構造は、以下に説明する安全弁50の作動検出に関する部分を除いて、第2の実施の形態のフィルタユニット2と同じである。支持部57には、互いに電気的に絶縁された電極71,72が配設されている。安全弁50が作動して、弁体53が磁石58に吸着されて保持されると、弁体53の下端が電極71,72に接触して、電極71と電極72とが電気的に接続される。すなわち、弁体53と電極71,72とによってスイッチが構成され、弁体53が磁石58に吸着されて保持されると電極71,72間が閉路される。電極71,72は、安全弁50が作動したことを検出する検出電極である。
【0045】
図10に示すように、電極71,72には、それぞれ電極71,72間の抵抗の変化を検出する検出装置81が接続されている。なお、検出装置81は、各フィルタユニット2の電極71,72間の抵抗の変化をそれぞれ検出する。82は制御装置であり、不図示の表示モニタなどが接続されている。制御装置82は、検出装置81で検出した各フィルタユニット2の電極71,72間の抵抗の変化の情報等を得る。そして、制御装置82は、得られた情報に基づいて、どのフィルタユニット2のフィルタ40が目詰まりしたのかという情報や、次にどのフィルタユニット2のフィルタ40がいつ頃目詰まりするのかというような情報を不図示の表示モニタを介して相手側機器60の操作者などに提示する。制御装置82は、フィルタユニット2のフィルタ40が目詰まりするまでの期間を予測する予測手段である。
【0046】
たとえば、制御装置82は、図示最上段のフィルタユニット2の安全弁50が作動するまでの時間を計測するとともに、相手側機器60の一定期間内の運転時間の情報を取得して、図示中段や最下段のフィルタユニット2のフィルタ40がいつ頃目詰まりするのかを演算して不図示の表示モニタに表示する。具体的な数字を上げて例示すれば、たとえば、図示最上段のフィルタユニット2の安全弁50が作動するまでに要した作動油の濾過時間が750時間であり、相手側機器60の一ヶ月の運転時間が250時間であるとの情報を得ると、制御装置82は、図示中段および図示最下段のフィルタユニット2のフィルタ40が約3ヶ月後および約6ヶ月後に目詰まりを起こすと予測して、予測結果を不図示の表示モニタに表示する。
【0047】
また、たとえば、制御装置82は、図示最上段のフィルタユニット2のフィルタ40が目詰まりを起こした(安全弁50が作動した)日時や、前回図示最上段のフィルタユニット2のフィルタ40を交換した日時など記録して、表示モニタに表示する。さらに、制御装置82は、たとえば、いずれかのフィルタユニット2のフィルタ40が目詰まりを起こす時期に近づいたと判断される場合には、予備のフィルタユニット2の準備を促す旨の表示を不図示の表示モニタに表示する。
【0048】
なお、制御装置82は、検出装置81の近くに配設してもよく、検出装置81から離れた遠隔地に配設してもよい。また、検出装置81と制御装置82との間を有線で接続してもよく、無線で接続してもよい。
【0049】
上述した第4の実施の形態のフィルタ装置によれば、第1〜第3の実施の形態の作用効果に加え、次の作用効果を奏する.
(1) 安全弁50の作動の有無を電極71,72間の抵抗の変化として検出装置81で検出して、制御装置82に情報を伝達するように構成した。これにより、連結されたどのフィルタユニット2が目詰まりを起こしているかを遠隔地から把握することができる。
(2) フィルタ40が目詰まりを起こすまでの期間(時間)を予測して提示するように構成した。これにより、相手側機器60の使用者は、たとえば、フィルタ40が目詰まりを起こすまでの時間と、実際の相手側機器60の稼働時間とを比較することで、作動油の汚染度を判別することができる。
【0050】
なお、上述の説明では、相手側機器60からの流体を作動油として説明したが、エンジンオイル(潤滑油)や水溶液などその他の種類の流体であっても良い。また、上述した各実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。
【0051】
なお、本発明は、上述した実施の形態のものに何ら限定されず、相手側の機器に取り付けられるハウジング内に設けられる第1および第2のフィルタと、第1のフィルタに流体が供給された際の第1のフィルタにおける圧力損失が所定の値以下であれば第1のフィルタに流体を供給し、第1のフィルタに流体が供給された際の第1のフィルタにおける圧力損失が所定の値を超えると、第2のフィルタに流体を供給するように流体の流れを切り替える切替手段とを備える各種構造のフィルタ装置を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】(a)は徒来のフィルタ装置を直列に接続した場合の油圧回路の概略を示す図であり、(b)は本発明によるフィルタ装置1の油圧回路の概略を示す図である。
【図2】フィルタ装置1の外観を示す図である。
【図3】相手側の機器(相手側機器)60に取り付けられたフィルタ装置1の断面図である。
【図4】第1安全弁50aの構造を示す図である。
【図5】第2の実施の形態のフィルタユニット2の構造を示す図である。
【図6】フィルタユニット2同士を接続した際の断面図である。
【図7】第3の実施の形態のフィルタユニット2の構造を示す図である。
【図8】相手側の機器(相手側機器)60に取り付けられたフィルタ装置の断面図である。
【図9】第4の実施の形態のフィルタユニット2について、安全弁50の弁体53直下の支持部57を弁体53側から見たときの図である。
【図10】フィルタユニット2同士を接続した際の断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 フィルタ装置 2,3 フィルタユニット
10,20,30 ハウジング 40 フィルタ
50 安全弁 53 弁体
54 流路 58 磁石
71,72 電極 81 検出装置
82 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側の機器に取り付けられるハウジング内に設けられる第1および第2のフィルタと、
前記第1のフィルタで流体を濾過する際の圧力損失が所定の値以下であれば前記第1のフィルタで流体を濾過し、前記第1のフィルタで流体を濾過する際の圧力損失が所定の値を超えると、前記第2のフィルタで流体を濾過するように流体の流れを切り替える切替手段とを備えることを特徴とするフィルタ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルタ装置において、
前記第1および第2のフィルタは、互いに着脱可能であることを特徴とするフィルタ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のフィルタ装置において、
前記第2のフィルタは、前記ハウジングが相手側の機器に取り付けられた際に、前記第1のフィルタよりも前記相手側機器に近い位置に取り付けられることを特徴とするフィルタ装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィルタ装置において、
前記切替手段が前記第2のフィルタで流体を濾過するように流体の流れを切り替えたことを検出する検出電極をさらに備えることを特徴とするフィルタ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のフィルタ装置において、
前記切替手段が前記第2のフィルタで流体を濾過するように流体の流れを切り替えたことを前記検出電極が検出するまでの期間に基づいて、前記第2のフィルタが目詰まりするまでの期間を予測する予測手段をさらに備えることを特徴とするフィルタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−119393(P2009−119393A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−297528(P2007−297528)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】