説明

フィルタ装置

【課題】工作機械における部品の切削加工時に発生する粒径約0.1〜10ミクロンの大きさのオイルミストの捕集に適するフィルタ装置を提供すること。
【解決手段】ケース2の底部の中心に排気口4を形成すると共に排気口4から外方に延びる排気管5を設け、ケース2の側部8にミストを含む空気を導入する吸気口10を設け、第1ホルダー25を排気口4を囲むようにケース2内に立設し、第1ホルダー25と同心状に第2ホルダー38と第3ホルダー40を配置し、メッシュ1〜0.1μmの襞状不織布により形成した第1フィルタ31を第1ホルダー25の外側に、メッシュ3〜5μmの襞状不織布により形成した第2フィルタ38を第2ホルダー35の外側に、メッシュ30〜50μmの襞状不織布により形成した第3フィルタ43を第3ホルダー40の外側に夫々装着するように設け、排気管5を吸入手段の吸込み側に取り付けるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械における部品の切削加工時に発生する粒径約0.1〜10ミクロンの大きさのオイルミストの捕集に適するフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マシニングセンタ、CNC旋盤等の工作機械では、密閉された加工室内でプログラムに基づいて自動的に作動する切削工具によって金属材料によりなる被加工物に穴あけ、ネジ切り、研削等の加工を施し、加工時に切削液から発生するオイルミストを加工室に付設されたミスト捕集装置により捕集するように構成されている。かかる用途に用いられるミスト捕集装置については、フィルタ方式、デミスタ方式、衝突板方式、電気集塵方式等の各種構造のものが知られている。
【0003】
特許文献1には、モータ装置によりフィルタを回転させることによりケース内に吸引される空気中の粒径が1ミクロン程度の微細なオイルミストを除去することができるミスト類の捕集装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、分離タンク内の主軸に、円盤型回転ブラシとミストを遠心力によって振り切る振り切り部材を固定し、タンク内の下方に配置したサイクロンに吸入手段を連結したミスト捕集装置が開示されている。
【0005】
工作機械における部品の切削加工時に発生するオイルミストは、粒径約0.1〜1ミクロンの微細な大きさであるため、これを完全に回収することは困難とされている。何れにしても、発生したミスト類を効率的に処理しなければ、作業環境の快適化や作業者の健康面での安全を図ることは困難であると言えよう。
【特許文献1】特開2006−314878号公報
【特許文献2】特開2006−192362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、工作機械における部品の切削加工時に発生する粒径約0.1〜10ミクロンの大きさのオイルミストの捕集に適するフィルタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために請求項1に記載した発明は、上方の開口部にカバーを被着したケースの底部の中心に排気口を形成すると共に当該排気口から外方に延びる排気管を設け、そのケースの側部にミストを含む空気を導入する吸気口を設け、多数の透孔が周部に形成された筒形の第1ホルダーを前記排気口を囲むように該ケース内に立設し、その第1ホルダーと同心状に第2ホルダーと第3ホルダーを配置し、メッシュ1〜0.1μmの襞状不織布により筒形に形成された第1フィルタを第1ホルダーの外側に、メッシュ3〜5μmの襞状不織布により筒形に形成された第2フィルタを第2ホルダーの外側に、メッシュ30〜50μmの襞状不織布により筒形に形成された第3フィルタを第3ホルダーの外側に夫々装着するように設け、前記排気管を吸入手段の吸込み側に取り付けるように構成したことを特徴とする。
【0008】
同様の目的を達成するために請求項2に記載した発明は、請求項1に記載のフィルタ装置において、前記第3フィルタに代えて、メッシュ30〜50μm、厚さ10mmの不織布からなるデミスタ材を前記第3ホルダーの外側に2〜3回巻くように設けたことを特徴とするものである。
【0009】
同様の目的を達成するために請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載のフィルタ装置において、前記ケースの底部にドレン口を設け、そのドレン口にドレンタンクを付設したことを特徴とするものである。
【0010】
同様の目的を達成するために請求項4に記載した発明は、上方の開口部にカバーを被着したケースの底部の中心に排気口を形成すると共に当該排気口から外方に延びる排気管を設け、そのケースの側部にミストを含む空気を導入する吸気口を設け、多数の透孔が周部に形成された筒形のホルダーを前記排気口を囲むように該ケース内に立設し、メッシュ1〜0.1μmの襞状不織布により筒形に形成されたフィルタを該ホルダーの外側に装着し、そのフィルタの襞の外周面に、メッシュ1〜0.1μmの所定厚さの極細繊維電石不織布からなる1枚又は複数枚のデミスタ材をほぼ沿うように巻装し、さらに、隣り合う各デミスタ材間の窪んだ箇所にプラスチック製網板部材を挿入してその上から押えバンドを装着するように設け、前記排気管を吸入手段の吸込み側に取り付けるように構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
(請求項1の発明)
このフィルタ装置は、ルーツ式ブロワ等の真空度−3〜−30kPaを有する吸入手段の吸込み側に取り付ける構造であり、工作機械における部品の切削加工時に発生する粒径約0.1〜10ミクロンの大きさのオイルミストの捕集を効率的に行なうことができ、フィルタの清掃や交換作業等の保守管理が行ない易い。
【0012】
(請求項2の発明)
このフィルタ装置は、請求項1に記載の第3フィルタに代えて、メッシュ30〜50μm、厚さ10mmの不織布からなるデミスタ材を第3ホルダーの外側に巻装する構成としており、特に油分の多いミストの捕集に効果を有する。
【0013】
(請求項3の発明)
このフィルタ装置は、ケースの底部に設けたドレン口にドレンタンクを備えており、ドレンタンクに貯まるドレンを適時に回収できるので利便性がよい。
【0014】
(請求項4の発明)
このフィルタ装置は、フィルタの襞の外周面に極細繊維電石不織布からなデミスタ材を巻装する簡素な構造の採用により小型化を図ることができ、工作機械における部品の切削加工時に発生する粒径約0.1〜10ミクロンの大きさのオイルミストの捕集を効率的に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の最良の形態例を図面に基づいて説明する。図1は第1実施形態のフィルタ装置の縦断側面図、図2は同、横断面図、図3は同、要部を断面にして示す斜視図、図4は第1実施形態のフィルタ装置の捕集性能を示すグラフ、図5は第2実施形態のフィルタ装置の縦断側面図、図6は同、横断面図、図7は第1フィルタとデミスタ材の一部を示す説明図、図8は第1フィルタに対するデミスタ材の固定状態を示す説明図、図9は第2実施形態のフィルタ装置の捕集性能を示すグラフである。
【0016】
(第1実施形態例)
本発明に係る第1実施形態のフィルタ装置1は、ルーツ式ブロワ等の真空度−3〜−30kPaを有する吸入手段の吸込み側に装着されるものである。
図1において、このフィルタ装置1のケース2は、上方が開放された有低円筒形とされ、その底部3の中心に排気口4を形成すると共に当該排気口4から外方に延びる排気管5を一体に設けている。6は排気管5の先端に一体に設けられた取り付けのためのフランジ、7は底部3の適宜位置に形成したドレン口である。ケース2の側部8には、ミストを含む空気を導入する吸気口10が形成された吸気管11を横向きに設ける。12は吸気管11の先端に一体に設けられた取り付けのためのフランジ、13は吸気管11に設けられた真空ゲージの取り付け口である。
【0017】
なお、ケース2の側部8については、底部3と一体に設ける構成に限らず、別体構成とすることもできる。
【0018】
15はケース2の側部8の外周に等角度間隔に設けられた数個の支持突部、16は各支持突部15に起立可能に設けられたボルトである。ケース2の開口部2aには、リング形パッキン19が装着されている。その開口部2aに被着された円形のカバー21は、前記ボルト16に夫々対応するように設けられた同数個の係止片22に前記ボルト16を通して蝶ナット17により締め付けるように設けられている。
【0019】
25は多数の小径の透孔26が周部に形成された円筒形の第1ホルダーである。第1ホルダー25はケース2の側部8よりも少し低い高さに設けられていて、前記排気口4を囲むようにケース2内に立設されている。第1ホルダー25の外側には、メッシュ1〜0.1μmの襞状不織布により円筒形に形成された第1フィルタ31を装着し、排気口4の中央に一体に形成されたブリッジ4aに立設した支持ボルト27に中央部を通した円板形状のカバー28を蝶ナット29で締め付けて固定されている。また、第1フィルタ31とケース2の底部3との間、及び第1フィルタ31とカバー28との間には、薄い厚さのリング形パッキン30a,30bを介在させている。
【0020】
第2ホルダー35と第3ホルダー40は、第1ホルダー25を中心として同心状に順に配置されており、何れもケース2の側部8とほぼ同じ高さに設けられている。図3に示すように、円筒形の第2ホルダー35の周部には、多数の小径の透孔36が形成されている。同様に、円筒形の第3ホルダー40の周部には、多数の小径の透孔41が形成されている。32はケース2の底部3に設けられた第2ホルダー35の位置決め用突起であり、同ホルダー35の内面よりも少し中心寄りの4箇所に配置されている。同様に、33は第2ホルダー35の位置決め用突起である。
【0021】
第2ホルダー35の外側には、メッシュ3〜5μmの襞状不織布により円筒形に形成された第2フィルタ38を装着し、第3ホルダー40の外側には、メッシュ30〜50μmの襞状不織布により円筒形に形成された第3フィルタ43を装着するように設ける。
【0022】
第2フィルタ38とケース2の底部3との間、及び第2フィルタ38とカバー21との間には、薄い厚さのリング形パッキン37a,37bを介在させている。同様に、第3フィルタ43とケース2の底部3との間、及び第3フィルタ43とカバー21との間には、薄い厚さのリング形パッキン42a,42bを介在させている。
【0023】
前記ドレン口7には、第1コック45を介してドレンタンク46を付設する。ドレンタンク46の出口には第2コック47を設ける。
これにより、本発明に係る第1実施形態のフィルタ装置1が構成される。
【0024】
なお、第3フィルタ43はメッシュ30〜50μmの襞状不織布により円筒形に形成された形態とされているが、これに代えて、メッシュ30〜50μm、厚さ10mmの不織布からなるデミスタ材を第3ホルダー40の外側に2〜3回巻くように設ける構成とすることもできる。
【0025】
(実験1)
第1実施形態のフィルタ装置1をルーツ式ブロワの吸込み側に取付け、オイルミストの捕集性能について下記条件にて実験を行なった。その結果を図4のグラフに示す。
オイルミスト(塩素系軽質オイルを使用)の発生量:5〜15mg/m
実験室(オートマチックマシンのワークルーム)の大きさ:2.5m
ルーツ式ブロワの性能
排気量:4.3m/min
真空圧:−2.0kPa
吸込み口径:80mm
回転数:1800rpm
モータ出力:3.7kW
【0026】
実験の結果、ルーツ式ブロワから排出されるミストの濃度は、0.01mg/mで安定して推移していた。なお、前述した第3フィルタを上記デミスタ材に変更したものについても実験を行なったが、第3フィルタを使用したものと同様の結果が得られた。また、ワークルームの大きさに対する回収空気量に関しては、当該ルームの容量の約2倍の量が必要であると考えられる。回収空気量の割合が多い場合には、排気が工場内に拡散して作業環境を悪化させる要因ともなるので、注意を要する。
【0027】
(第2実施形態例)
本発明に係る第2実施形態のフィルタ装置51は、ワークルームの大きさが2m以下の場合に適するものであり、前述した第1実施形態のフィルタ装置1とはフィルタ部分の構成が異なるが、それ以外のケースやドレンタンク等の構成については同様の構成とされている。よって、それと同一構成部分については、同フィルタ装置1の説明に用いた符号を流用して図面に記載して説明を省略する。
【0028】
55は多数の透孔56を有するパンチングメタル等の素材を使用して円筒形に形成したホルダーである。図5に示すように、ホルダー55は前記ケース2の側部8よりも少し低い高さに設けられていて、前記排気口4を囲むようにケース2内に立設されている。ホルダー55の外側には、メッシュ1〜0.1μmの襞状不織布により円筒形に形成されたフィルタ60が装着されている(図6)。
【0029】
図6〜図8に示すように、フィルタ60の襞61の外周面には、メッシュ1〜0.1μmの所定厚さ(約1mm)の極細繊維電石不織布からなる1枚又は複数枚、この実施例では3枚のデミスタ材63をほぼ沿うように巻装している。さらに、隣り合う各デミスタ材63,63間の窪んだ箇所には、プラスチック製網板部材65を夫々挿入してその上から押えバンド70を装着している。
【0030】
ホルダー55は、前記支持ボルト27に中央部を通した円板形状のカバー28を蝶ナット29で締め付けて固定されている。また、フィルタ60とケース2の底部3との間、及びフィルタ60とカバー57との間には、薄い厚さのリング形パッキン59a,59bを介在させている。
これにより、本発明に係る第2実施形態のフィルタ装置51が構成される。
【0031】
なお、デミスタ材63としての極細繊維電石不織布については、市販品[東レ(株)の「トレミクロン」(登録商標)を用いた。
【0032】
(実験2)
第2実施形態のフィルタ装置51をルーツ式ブロワの吸込み側に取付け、オイルミストの捕集性能について下記条件にて実験を行なった。
なお、オイルミストの発生量、実験室の大きさについては実験1の場合と同じとした。実験結果を図9のグラフに示す。
ルーツ式ブロワの性能
排気量:2.8m/min
真空圧:−7.0kPa
吸込み口径:80mm
回転数:1200rpm
モータ出力:3.7kW
【0033】
実験の結果、ルーツ式ブロワから排出されるミストの濃度は、0.01mg/mで安定して推移することが確認された。
【0034】
以上に述べた通り、このフィルタ装置は、ルーツ式ブロワ等の真空度−3〜−30kPaを有する吸入手段の吸込み側に取り付ける構造であり、粒径約0.1〜10ミクロンの大きさのオイルミストの捕集に適する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る第1実施形態のフィルタ装置の縦断側面図
【図2】同、横断面図
【図3】同、要部を断面にして示す斜視図
【図4】本発明に係る第1実施形態のフィルタ装置の捕集性能を示すグラフ
【図5】本発明に係る第2実施形態のフィルタ装置の縦断側面図
【図6】同、横断面図
【図7】フィルタとデミスタ材の一部を示す説明図
【図8】フィルタに対するデミスタ材の固定状態を示す説明図
【図9】第2実施形態のフィルタ装置の捕集性能を示すグラフ
【符号の説明】
【0036】
1・・・第1実施形態例のフィルタ装置
2・・・ケース
3・・・底部
4・・・排気口
5・・・排気管
7・・・ドレン口
10・・・吸気口
25・・・第1ホルダー
31・・・第1フィルタ
35・・・第2ホルダー
38・・・第2フィルタ
40・・・第3ホルダー
43・・・第3フィルタ
46・・・ドレンタンク
51・・・第2実施形態例のフィルタ装置
55・・・ホルダー
60・・・フィルタ
63・・・デミスタ材
65・・・プラスチック製網板部材
70・・・押えバンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方の開口部にカバーを被着したケースの底部の中心に排気口を形成すると共に当該排気口から外方に延びる排気管を設け、そのケースの側部にミストを含む空気を導入する吸気口を設け、多数の透孔が周部に形成された筒形の第1ホルダーを前記排気口を囲むように該ケース内に立設し、その第1ホルダーと同心状に第2ホルダーと第3ホルダーを配置し、メッシュ1〜0.1μmの襞状不織布により筒形に形成された第1フィルタを第1ホルダーの外側に、メッシュ3〜5μmの襞状不織布により筒形に形成された第2フィルタを第2ホルダーの外側に、メッシュ30〜50μmの襞状不織布により筒形に形成された第3フィルタを第3ホルダーの外側に夫々装着するように設け、前記排気管を吸入手段の吸込み側に取り付けるように構成したことを特徴とするフィルタ装置。
【請求項2】
前記第3フィルタに代えて、メッシュ30〜50μm、厚さ10mmの不織布からなるデミスタ材を前記第3ホルダーの外側に2〜3回巻くように設けたことを特徴とする請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項3】
前記ケースの底部にドレン口を設け、そのドレン口にドレンタンクを付設したことを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルタ装置。
【請求項4】
上方の開口部にカバーを被着したケースの底部の中心に排気口を形成すると共に当該排気口から外方に延びる排気管を設け、そのケースの側部にミストを含む空気を導入する吸気口を設け、多数の透孔が周部に形成された筒形のホルダーを前記排気口を囲むように該ケース内に立設し、メッシュ1〜0.1μmの襞状不織布により筒形に形成されたフィルタを該ホルダーの外側に装着し、そのフィルタの襞の外周面に、メッシュ1〜0.1μmの所定厚さの極細繊維電石不織布からなる1枚又は複数枚のデミスタ材をほぼ沿うように巻装し、さらに、隣り合う各デミスタ材間の窪んだ箇所にプラスチック製網板部材を挿入してその上から押えバンドを装着するように設け、前記排気管を吸入手段の吸込み側に取り付けるように構成したことを特徴とするフィルタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−220092(P2009−220092A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97894(P2008−97894)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(000127123)株式会社アンレット (41)
【Fターム(参考)】