説明

フィルタ装置

【課題】短期間での交換を必要とせず、もって再利用するための短期間での洗浄をも必要とせず、さらにはプレフィルタ、メインフィルタの役目を1枚のフィルタで行え、さらには再利用のために行われる前記洗浄作業にも配慮したフィルタ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】枠部材を略方形状に枠組みして表裏面に貫通する開口部を有する枠体を形成し、枠体の開口部内には、シート状フィルタ材料を山状谷状のジグザグ繰り返し折り構造に折り曲げて構成したフィルタ部材を取り付けてなり、フィルタ部材は、シート状フィルタ材料の表面側及び裏面側の双方に谷状底部に被接着部材分が形成されて接着部材により対向する箇所が接着され、縦方向の複数箇所に形成された谷状底部の非接着部材分は、洗浄メンテナンスの際の谷状底部が連通する洗浄水通過路として機能し、洗浄効率アップ、フィルタ部材破損防止が企図された、を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、オフィスビルやマンションさらには一般家庭など空調設備などにも取り付けることが出来、もって外気の塵や埃あるいは花粉などを確実に、かつ短期間の取り替えを必要とせず、しかも長期間の洗浄メンテナンスをも必要とすることなく使用することが可能なフィルタ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、オフィスビルやマンションなどに設置されるいわゆる大型をなす空調設備、さらには一般家庭で使用される空調設備などにも、フィルタ装置は使用され、取り付けられており、このフィルタ装置により、外気の塵や埃あるいは花粉などが確実に捕集され、前記空調設備の安全、快適な運用が企図されている。
ここで、従来のオフィスビルやマンションなどで使用されるフィルタ装置としては、通常、塵や埃など比較的大きな粒子、例えば10μm以上の粒子からなる塵や埃を捕集するフィルタ部材と、車の排気ガスやタバコの煙など比較的小さな粒子からなるもの、例えば0.3μm以上の粒子である塵や埃を捕集するフィルタ部材との2種類からなるフィルタ部材を用いたフィルタ装置が一般に知られている。
【0003】
すなわち、通常、オフィス用のフィルタ装置としては、粗塵用のいわゆるプレフィルタとメインのいわゆる中性能フィルタ(メインフィルタ)とで構成し、前者のフィルタ部材は、例えば2ヶ月に一度洗浄・再使用し、後者のフィルタ部材は、洗浄・再使用することなく、例えば1年毎に新品に取り替えるのが一般的となっていた。
この様に、業界においては、フィルタ部材とは、短期間に使い捨てる部材としての認識で統一されていたのである。
【0004】
しかるに、環境保護意識が近年急速に、かつ国際的に高まる中、いわゆる地球資源をどれだけ有効活用するかは、企業評価の有力な基準になりつつあり、特に、空調設備では、高効率設備の導入と共に、消耗品であるフィルタ部材の消費量抑制もニーズとして急速に要求されてきている実情がある。
【0005】
そこで、特に、いわゆるプレフィルタといわゆるメインフィルタとを分離せずに一体化し、さらに係るフィルタ部材を簡単に使い捨てすることなく、洗浄して再利用することができれば、大幅な省資源化に繋がり、また、いわゆるフィルタ装置のメンテナンスの手間・コストもきわめて効率的に抑えられるものとなる。
しかも、今日のように、禁煙のエリアが広がり、空調設備のフィルタ装置においても、必要以上にたばこの煙を捕集することを要しないとの事情もある。
【特許文献1】特開2001−170423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かくして、本発明は、上記従来の課題に対処すべく創案されたものであり、短期間での交換を必要とせず、もって再利用するための短期間での洗浄をも必要とせず、さらにはプレフィルタ、メインフィルタの役目を1枚のフィルタで行え、さらには再利用のために行われる前記洗浄作業にも配慮したフィルタ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のフィルタ装置は、
所定の幅を有する枠部材を略方形状に枠組みして表裏面に貫通する開口部を有する枠体を形成し、
該枠体の開口部内には、シート状フィルタ材料を前記枠体の幅と略同等の幅で、山状谷状のジグザグ繰り返し折り構造に折り曲げて構成したフィルタ部材を前記ジグザグ繰り返し折り構造の方向が水平方向となるよう取り付けてなり、
前記フィルタ部材は、前記山状谷状のジグザグ繰り返し折り構造のジグザグ方向に向かい、かつ前記シート状フィルタ材料の表面側及び裏面側の双方に前記谷状底部に被接着部材分が形成されて接着部材により対向する箇所が接着され、前記フィルタ部材のジグザグ繰り返し折り構造の方向への伸縮が規制されると共に、縦方向の複数箇所に間隔をあけて形成された前記谷状底部の非接着部材分は、洗浄メンテナンスの際の洗浄水通過路として機能させ、洗浄効率アップ、洗浄によるフィルタ部材破損防止を企図した、
ことを特徴とし、
または、
前記フィルタ部材は、前記シート状フィルタ材料を二重に重ね合わせて、山状谷状のジグザグ繰り返し折り構造に折り曲げて構成した、
ことを特徴とし、
または、
前記二重に重ね合わされた2枚のシート状フィルタ材料は、導入側のシート状フィルタ材料を、粒子の大きい粉塵が補集できるタイプに、送出側のシート状フィルタ材料を、導入側と比較して粒子の小さい粉塵をも補集できるタイプに配置した、
ことを特徴とし、
または、
前記フィルタ部材は、合成樹脂材料から構成されている、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によるフィルタ装置であれば、短期間での交換を必要とせず、もって再利用するための短期間での洗浄をも必要とせず、さらにはプレフィルタ、メインフィルタの役目を1枚のフィルタで行え、さらには再利用のために行われる洗浄作業にも配慮できるとの優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係るフィルタ装置につき図を参照して説明する。
該フィルタ装置1は、まず、枠体3を有する。
枠体3は、所定の幅を有する枠部材2を略方形状に枠組みして表裏面に貫通する開口部を有するよう形成されている。
【0010】
該枠部材2の材質は、何ら限定されるものではないが、いわゆる再資源化に対応する部材であることが好ましく、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)などの再生チップ材等が好ましい。
【0011】
そして、該枠体3の開口部内には、シート状フィルタ材料を前記枠体3の幅と略同等の幅を有して、山状谷状のジグザグ繰り返し折り構造の状態に折り曲げ、もってジグザグ繰り返し折り構造に構成したフィルタ部材4が取り付けられている。
【0012】
ここで、当該シート状フィルタ材料について述べると、該シート状フィルタ材料には一般に合成繊維が使用される。そして、かかる合成繊維の材質としては、一般的にポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド(ナイロン)がある。また、その他にビニロン、綿なども使われることがある。
【0013】
これらについては、それぞれに材質上の特徴があり、その特性に応じて各方面に使用される。そして、その用途を誤るとフィルタ材料としての性能を損なうのみでなく、フィルタ材料の寿命やフィルタ性能に大きな影響を与えるものとなる。
また、本発明によるシート状フィルタ材料は、10μm以上の粒子からなる塵や埃を捕集するタイプや、車の排気ガスやタバコの煙など比較的小さな粒子からなるもの、例えば0.3μm以上の粒子である塵や埃を捕集するタイプのいずれのタイプをも選択できる。
【0014】
次に、該シート状フィルタ材料は、山状谷状のジグザグ繰り返し折り構造の状態に折り畳まれ、略方形状の形状に構成される。そして、該略方形状をなすフィルタ部材4は水平方向(左右方向)に向かいジグザグ繰り返し折り構造が連続するよう、かつ若干延び縮み出来るようにあらかじめ配置される。
【0015】
次に、その状態から、あるいは平面シート状にのばした状態から、上下方向に対し、所定の間隔をあけて接着剤を水平方向、すなわちジグザグ繰り返し折り構造の連続する方向に向けて塗布する。
この塗布操作は、上下方向に向かい所定の間隔をあけて複数箇所で行われる。そして、この塗布は、前記フィルタ部材4の表面側及び裏面側の双方で行われる。
すると、図2あるいは図3に示すように、シート状フィルタ材料からなるフィルタ部材4は、山状谷状のジグザグ繰り返し折りが各々密着した構造の状態に折り畳まれ、略方形状の形状に形成されるものとなる。
【0016】
ところで、接着剤14の塗布は、谷状底部5の箇所については行われず、非接着部分とされる(図4及び図5参照)。そして、該谷状底部5の非接着部分は、後述する洗浄メンテナンスの際の洗浄水通過路として機能することになる。
これにより洗浄メンテナンスの効率も向上し、またフィルタ部材4の必要以上の損傷を押さえることが出来る。
【0017】
ところで、図5に示すように、シート状フィルタ材料を2枚使用し、この2枚のシート状フィルタ材料を二重に重ね合わせて、山状谷状のジグザグ繰り返し折り構造に折り曲げて構成しても構わない。
この場合、同じ素材のシート状フィルタ材料、すなわち、粒子径が1μmから1000μmまでを捕集できるタイプの素材で構成したシート状フィルタ材料を2枚重ねて使用することも考えられる。
【0018】
しかし、同じ素材を使用したとしても、それらを2枚重ね合わせて使用する結果、1μmより小さい粒子径の粉塵をも捕集できるものとなる。
さらに、前記二重に重ね合わす2枚のシート状フィルタ材料について、導入側(上流側)のシート状フィルタ材料を、粒子の大きい粉塵が補集できるタイプに、送出側(下流側)のシート状フィルタ材料を、導入側と比較して粒子の小さい粉塵をも補集できるタイプに配置しても構わない。
ここで、本発明により構成されたフィルタ装置1は、その使用により短期間の間に新品に交換しなければならなかったり、短期間にメンテナンスを行わなければならなかったりすることがない。
【0019】
従来は数ヶ月の間に新品に交換せざるを得なかったり、数ヶ月の間に洗浄メンテナンスを行わなければならなかった。
ちなみに、従来型のフィルタ装置は、その初期圧力損失が190パスカルであったのに対し、本発明によるフィルタ装置1は、前述したフィルタ部材4の構造を採用することにより110パスカル以下という低数値を実現したものである。
【0020】
従って、本発明によるフィルタ装置1は、少なくとも1年間に一度の洗浄メンテナンスを行えばよい。しかも3回の洗浄メンテナンスに耐えられるよう設計されているのである。
すなわち、本発明のフィルタ装置1につき、その使用開始からカウントすると一度の購入で、最長4年間(運転時間では1万2千時間)使い続けられることになる。
【0021】
そして、本発明によるフィルタ装置の洗浄後の圧損回復を試験データでみてみると、2回目の洗浄後に計測した圧力損失値が90パスカルのものが、その後の1年間の使用によって粉塵負荷後フィルタ圧力損失値が265パスカルとなった。
その後、3回目(最終)の洗浄をしたとき、洗浄後は93パスカルとなり、2回目の洗浄後に計測した圧力損失値が90パスカルと全く変わらない値となっているのである。この様に、本発明のフィルタ装置1では、複数回の洗浄メンテナンスに充分耐えられることが理解できる。
【0022】
特に、オフィスや商業店舗と異なり、24時間空調が稼働するホテルでは、一般よりも早くフィルタ装置の運転時間を消費するので本発明によるフィルタ装置1の使用はきわめて好ましいといえる。
【0023】
さらに、ホテル側においては、セキュリティー強化のため外注業者の受け入れ回数を減らしたいと考えており、フィルタ部材4の交換や洗浄のために2ヶ月に一度、メンテ業者が建物に入ることはあまり歓迎されないのである。その面からも本発明によるフィルタ装置1の使用はきわめて好ましいものである。
【0024】
次に、本発明によるフィルタ装置1の洗浄システムにつき説明する。
例えば、1年間の長期に亘って使用されたフィルタ装置1は、メンテナンスのために洗浄される。
【0025】
まず、本発明の洗浄のシステムとしては、まず、図から理解されるように、空気洗浄機6に投入される。
該空気洗浄機6内では、粉塵を捕集しているフィルタ部材4の下流面に向かい高圧エア7を例えばパルス状に送出しながら、例えば起電器8による振動を併用して、粉塵9を排出させる。
【0026】
次に、いわゆる真空脱気システムを通過させる。すなわち、洗浄性を高めるために、フィルタ装置1内のフィルタ部材4に捕集されている粉塵9の周囲に残留している空気と洗浄水を置換すべく、真空脱気槽10で脱気するのである。
続いて、超音波洗浄が行われる。
【0027】
超音波によるエアフィルタ洗浄は、これまで1つの周波数を使って、動かしながら洗浄するのが主流だったが、本発明では、フィルタ部材4を動かさず、ムダ・ムラ・ムリのない洗浄を実現するために、3つの周波数を高速で切り替えるシステムを導入している。すなわち、図から理解されるように、超音波発振子11を切り替え、図に示すような3種類の周波数によって異なる水流を発生させ、それにより効率的な洗浄を行うのである。
【0028】
さらに、シャワー12による洗浄が行われる。高圧ポンプ13によってシャワー12の水流を生じさせ、該シャワー12の水流によって、フィルタの上流面あるいは下流面からフィルタ部材4の内部を通過させて粉塵9を洗い出すのである。
【0029】
その際、前述した非接着部である複数箇所の谷折り底部分5が洗浄水通過路となって、比較的容易に洗浄水が流れだし、もって効率的な洗浄が出来ると共に、フィルタ部材4へのダメージを与えることがない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係るフィルタ装置の概略構成を説明する構成説明図である。
【図2】本発明に係るフィルタ部材の構成を説明する構成説明図(その1)である。
【図3】本発明に係るフィルタ部材の構成を説明する構成説明図(その2)である。
【図4】本発明によるフィルタ部材の谷折り底部を説明する構成説明図(その1)である。
【図5】本発明によるフィルタ部材の谷折り底部を説明する構成説明図(その2)である。
【図6】本発明による洗浄システムの構成を説明する構成説明図である。
【符号の説明】
【0031】
1 フィルタ装置
2 枠部材
3 枠体
4 フィルタ部材
5 谷折り底部分
6 空気清浄機
7 高圧エア
8 起電器
9 粉塵
10 真空脱気槽
11 超音波発振子
12 シャワー
13 高圧ポンプ
14 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の幅を有する枠部材を略方形状に枠組みして表裏面に貫通する開口部を有する枠体を形成し、
該枠体の開口部内には、シート状フィルタ材料を前記枠体の幅と略同等の幅で、山状谷状のジグザグ繰り返し折り構造に折り曲げて構成したフィルタ部材を前記ジグザグ繰り返し折り構造の方向が水平方向となるよう取り付けてなり、
前記フィルタ部材は、前記山状谷状のジグザグ繰り返し折り構造のジグザグ方向に向かい、かつ前記シート状フィルタ材料の表面側及び裏面側の双方に前記谷状底部に被接着部材分が形成されて接着部材により対向する箇所が接着され、前記フィルタ部材のジグザグ繰り返し折り構造の方向への伸縮が規制されると共に、縦方向の複数箇所に間隔をあけて形成された前記谷状底部の非接着部材分は、洗浄メンテナンスの際の前記谷状底部が連通する洗浄水通過路として機能し、洗浄効率アップ、洗浄によるフィルタ部材破損防止が企図された、
ことを特徴とするフィルタ装置。
【請求項2】
前記フィルタ部材は、前記シート状フィルタ材料を二重に重ね合わせて、山状谷状のジグザグ繰り返し折り構造に折り曲げて構成した、
ことを特徴とする請求項1記載のフィルタ装置。
【請求項3】
前記二重に重ね合わされた2枚のシート状フィルタ材料は、導入側のシート状フィルタ材料を、粒子の大きい粉塵が補集できるタイプに、送出側のシート状フィルタ材料を、導入側と比較して粒子の小さい粉塵をも補集できるタイプに配置した、
ことを特徴とする請求項2記載のフィルタ装置。
【請求項4】
前記フィルタ部材は、合成樹脂材料から構成されている、
ことを特徴とする請求項1、請求項2または請求項4記載のフィルタ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−58037(P2010−58037A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225841(P2008−225841)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(504378283)株式会社ユニパック (6)
【Fターム(参考)】