説明

フィルタ装置

【課題】洗浄および濾過の効率が良く、安価でかつ安定性の良いフィルタ装置を提供する。
【解決手段】フィルタ装置は、垂直円筒状フィルタエレメント21と、フィルタエレメント21をその軸線周りに回転させる濾過液ノズル62とを備えている。濾過液ノズル62フィルタエレメント21の回転方向と同一方向であって、フィルタエレメント21外面にそう周方向に濾過液の流路Pが形成される。邪魔板91によって、流路P内の濾過液の流れをフィルタエレメント21外面高さ方向全体にわたって遮り、フィルタエレメント21の周方向からその半径方向内向きにそらされた流路Tが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流体、例えば、工作機械の切削液からスラッジを除去するために用いられるフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のフィルタ装置としては、本出願人が先に提案した下記のものが知られている(特許文献1参照。)。
【0003】
このフィルタ装置は、垂直円筒状フィルタエレメントと、フィルタエレメントをその軸線周りに回転自在に収容している濾過タンクと、フィルタエレメント外面と相対しかつフィルタエレメント軸線と直交する方向に向けられている洗浄用ノズルと、フィルタエレメント外面と相対しかつフィルタエレメント軸線と食い違う方向に向けられている回転用ノズルと、未濾過液を洗浄用ノズルおよび回転用ノズルをそれぞれ通じて濾過タンクに供給する供給手段と、フィルタエレメントを通過した濾過済液を濾過タンクから排出する排出手段とを備えているものである。
【0004】
この発明によるフィルタ装置では、フィルタエレメントの目詰まりを防止するために、回転用ノズルから噴出される未濾過液の圧力によってフィルタエレメントを回転させながら、フィルタエレメント外面に向かって洗浄用ノズルから未濾過液を噴出させて、フィルタエレメント外面を洗浄するようにしている。
【0005】
このような仕方でフィルタエレメント外面を洗浄する場合、フィルタエレメント外面の高さ方向において、洗浄用ノズルに近いレベルの部分の洗浄性は良好であるが、洗浄用ノズルから遠いレベルの部分の洗浄性は不良である。そのため、フィルタエレメント外面が縞々に洗浄、換言すれば、フィルタエレメント外面全体を均一に洗浄できないという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−0937873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の目的は、フィルタエレメント外面全体を均一に洗浄することのできるフィルタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明によるフィルタ装置は、垂直円筒状フィルタエレメント外面にそう周方向に濾過液流路が形成されており、濾過液流路内に邪魔板が設けられており、邪魔板によって、濾過液流路内の濾過液の流れが、フィルタエレメントの周方向からその半径方向内向きにそらされるようになされているものである。
【0009】
この発明によるフィルタ装置では、邪魔板によってそらされた濾過液がフィルタエレメント外面高さ方向全体に衝突させられる。したがって、濾過液の流体圧によってフィルタエレメント外面全体を均一に洗浄することができる。
【0010】
さらに、フィルタエレメントが、濾過タンク内に収容されており、濾過タンクが、フィルタエレメント外面を所定間隔をおいて取り囲んでいる垂直円筒状胴壁を有しており、フィルタエレメント外面および胴壁内面間に、濾過液流路が形成されていることが好ましい。
【0011】
また、フィルタエレメントが、濾過タンク内に収容されており、濾過タンクが、フィルタエレメント外面を所定間隔をおいて取り囲んでいる胴壁を有しており、フィルタエレメント外面および濾過タンク胴壁内面間にガイド板が配置されており、フィルタエレメント外面およびガイド板内面間に、濾過液流路が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、洗浄および濾過の効率が良く、安価でかつ安定性の良いフィルタ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明によるフィルタ装置の垂直縦断面図である。
【図2】同フィルタ装置のフィルタユニットの垂直縦断面図である。
【図3】同フィルタユニットの平面図である。
【図4】他の実施の形態によるフィルタ装置の図1相当の垂直縦断面図である。
【図5】さらなる他の実施の形態によるフィルタ装置の図1相当の垂直縦断面図である。
【図6】さらなる他の実施の形態によるフィルタ装置の図3相当の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の実施の形態を図面を参照しながらつぎに説明する。
【0015】
図1を参照すると、フィルタユニット11と、フィルタユニット11を収容している濾過タンク12と、濾過タンク12に併設されている貯留タンク13とが示されている。
【0016】
フィルタユニット11は、外観が全体として垂直筒状をなすように折り畳まれたプリーツ加工品製フィルタエレメント21と、フィルタエレメント21の上下両端開口をそれぞれ閉鎖している加硫ゴム製上端板22および下端板23と、フィルタエレメント21および上下の端板22、23を一体化しているパンチングメタル製補強部材24とよりなる。
【0017】
下端板23を、周囲にインペラ25を備えたインペラプレート26がフィルタユニット11とともに回転させられるように受けている。
【0018】
図2を参照すると、両端板22、23およびインペラプレート26の中心孔31、32、38には、フィルタユニット11およびインペラプレート26を回転自在かつ着脱自在に支持するように垂直状支持軸33が通されている。支持軸33は、濾過タンク12内の高さの中程を横断している一端閉鎖水平状濾過済液回収パイプ34の長さの中程に直立状に固定されている。支持軸33の上端部にはキャップ35が着脱自在に被せられている。支持軸33の下端面には軸孔36が上向きにあけられている。軸孔36の周壁には連通孔37があけられている。軸孔36および連通孔37を通じて、フィルタエレメント21の内側スペースが濾過済液回収パイプ34に連通させられている。
【0019】
濾過タンク12は、垂直有底筒状タンク本体41と、タンク本体41の上端開口に施されている天蓋42とよりなる。タンク本体41は、垂直円筒状胴壁41Aを有している。胴壁41Aは、支持軸33の軸線、すなわち、フィルタエレメント21の回転軸線と同心である。フィルタエレメント21外面およびタンク本体41の胴壁41A内面間には、濾過液の流路Pを形成するための一定幅をもつ間隙が生じている。
【0020】
タンク本体41の底壁には円錐状スラッジ回収タンク43が連接されている。スラッジ回収タンク43の底部には排出口44が設けられ、これには底蓋45が施されている。スラッジ回収タンク43の高さの中程には汚液排出パイプ46が接続されている。
【0021】
天蓋42にはリリースポート51が形成されている。リリースポート51にはリリース弁52の流入側が接続されている。リリース弁52は、流量調整を可能とするバタフライ式絞り弁である。さらに、天蓋42には圧力ゲージ53が備えられている。
【0022】
タンク本体41の胴壁41A外面近くには一端閉鎖垂直筒状ノズル本体61が固定されている。ノズル本体61には3つの濾過液ノズル62が上下に間隔をおいて設けられている。各濾過液ノズル62は、タンク本体41の胴壁41Aに貫通させられている。全ての濾過液ノズル62の向きは、同一で、フィルタエレメント21外面の接線方向である。最下位の濾過液ノズル62は、インペラ25と同一レベルに配置されている。
【0023】
貯留タンク13には、これを2つのスペースに区画する垂直仕切壁71が設けられ、これによって、未濾過液タンク72および濾過済液タンク73が設けられている。
【0024】
未濾過液タンク72内に水中ポンプ81が浸漬され、これに、供給パイプ82の入口端が接続されている。供給パイプ82の出口端は、ノズル本体61の開口端に接続されている。濾過済液回収パイプ34の開口端には、排出パイプ83の入口端が接続されている。排出パイプ83の出口端は、濾過済液タンク73内に臨ませられている。リリース弁52の流出側には、リリースパイプ84の入口端が接続されている。リリースパイプ84の出口端は、未濾過液タンク72内に臨ませられている。
【0025】
貯留タンク13および工作機械間には、送りパイプ85および戻りパイプ86によって、未濾過液タンク72および濾過済液タンク73間における循環経路が形成されている。
【0026】
タンク本体41の胴壁41A内面には邪魔板91が固定されている。邪魔板91は、垂直帯板状のもので、胴壁41A内面からフィルタエレメント21外面に向かって立ち上がりかつフィルタエレメント21の高さ方向にのびている。図3を参照すると、邪魔板91は、濾過液ノズル62の近くに配置されている。
【0027】
ポンプ81によって濾過タンク12内に未濾過液が満杯に供給される。例えば、ポンプ81の吐出圧は、1.0kg/cm2、その吐出量は、80〜120l/min程度である。濾過タンク12内に供給された未濾過液は、各濾過液ノズル62を通じて、フィルタエレメント21外面に向かって噴出される。最下位の濾過液ノズル62からは、インペラ25に向かって、フィルタエレメント21外面の接線方向から未濾過液が噴出され、これにより、フィルタユニット11が回転させられる。
【0028】
各濾過液ノズル62から噴出される未濾過液によって、濾過液流路P内には、図3に示すように、平面から見て、反時計方向の一方向の流れSが形成される。この流れSの流れ方向終端近くに、邪魔板91が位置させられている。この邪魔板91によって、流路Pがフィルタエレメント21外面高さ方向全体にわたって遮られる。その結果、フィルタエレメントの周方向の流れSは、その半径方向内向きの流れTに変更される。この内向きの流れTによってフィルタエレメント21外面に付着したスラッジ等が洗い落とされる。
【0029】
濾過タンク12内の圧力によって、未濾過液は、フィルタエレメント21を通過させられて、濾過済液となる。濾過済液は、濾過済液回収パイプ34を介して、排出パイプ83に送られ、排出パイプ83によって濾過済液73タンクへ送られる。
【0030】
フィルタエレメント21を通過させられる未濾過液の流量は、ポンプ81によって濾過タンク12内に供給された未濾過液の全量ではなく、例えば、80%である。残りの20%は、リリース弁52およびリリースパイプ84を通じて、未濾過液タンク72に戻される。このリリース量は、未濾過液タンク72内の圧力を、例えば、0.2〜0.4kg/cm2程度に保持しうるように、リリース弁52によって調整される。濾過タンク12内の圧力を、一旦、上記の圧力に調整した後に、その圧力を超える圧力を圧力ゲージ53が示す場合、フィルタエレメント21が目詰まりした可能性がある。その場合、天蓋42をあけて、フィルタユニット11を未濾過液タンク72内から取り出し、新品と交換するか、メインテナンスを行う。
【0031】
もし仮に、極端な場合、フィルタエレメントが完全に目詰まりして、濾過が全く行われ無い場合、リリース弁52およびリリースパイプ84が無いと、濾過タンク12内には未濾過液が全く送り込まれなくなる。そうすると、濾過液ノズル62が全く機能しなくなる。これを防止するために、リリース弁52およびリリースパイプ84を通じて、一定量の未濾過液が循環されることが好ましい。
【0032】
スラッジ回収タンク43内にスラッジが溜まると、底蓋45を開けて、それを排出する。その場合、リリースパイプ84から、濾過タンク12内に圧力エアを送り込むようにすれば良い。
【0033】
以下に、上記実施の形態を、さまざまに変化させたバリエーションを説明する。以下の説明において、上記実施の形態と対応する部分には、同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0034】
図4では、濾過タンク12内の濾過液を、濾過液ノズル62を通じて、循環させる構成が示されている。タンク本体胴壁41Aの底部近くおよびノズル本体61が循環パイプ101によって接続されている。循環パイプ101には循環ポンプ102が備えられている。図1では、ノズル本体61に接続されていた供給パイプ82の出口端は、天蓋42に接続されている。
【0035】
このような構成を採用すると、濾過タンク12に供給される濾過液の量と、濾過液ノズル62に供給される濾過液の量とを、互いに関連させることなく、それぞれ別個に自在に設定することが可能である。フィルタエレメント21の回転速度、流路P内の濾過液の流速等を設定する上で、好都合である。
【0036】
図5では、濾過タンク12のタンク本体胴壁111を縦長のものとし、その上端を開放した構成が示されている。濾過タンク12の底にフィルタユニット11が深くむ沈められている。この場合、濾過液の水圧によって、排出パイプ83を通じて、濾過済液の排出が可能となる。
【0037】
図6では、濾過タンク12が、水平横断面正方形状のタンク本体胴壁121が示されている。フィルタエレメント21外面およびタンク本体胴壁121内面間にはガイド板122が配置されている。ガイド板122は、フィルタエレメント21回転軸線と同心の円筒の四半分を欠いた欠円筒状のもので、フィルタエレメント21外面に対し所定間隔をおきかつフィルタエレメント21外面にこれの周方向所要長さにわたって相対させられている。フィルタエレメント21外面およびガイド板122内面間には流路Pが形成されている。濾過液ノズル62から噴出させられた濾過液によって、流路P内には反時計方向の周方向流れSが形成される。その流れ方向下流端には邪魔板123が一体的に設けられている。邪魔板123によって、周方向流れSが内向きの流れTに変更される。
【0038】
上記において、貯留タンク13内に仕切壁71が設けられているが、仕切壁71は必ずしも必要はなく、未濾過液および濾過済液の混合液を処理液として、これを循環させながら濾過を行えば良い。
【0039】
さらに、フィルタエレメントとして、折り癖の付けられたプリーツフィルタが例示されているが、必ずしも、これに限定されず、内外面ともに平滑であるフィルタエレメントであっても良い。
【0040】
また、フィルタエレメントを回転させるために、ノズルからの濾過液噴出圧を利用する代わりに、濾過タンクの外部から、モータを駆動源とする駆動機構を利用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0041】
この発明によるフィルタ装置は、流体、例えば、工作機械の切削液からスラッジを除去することを達成するのに適している。
【符号の説明】
【0042】
12 濾過タンク
21 フィルタエレメント
62 濾過液ノズル
91 邪魔板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直円筒状フィルタエレメント外面にそう周方向に濾過液流路が形成されており、濾過液流路内に邪魔板が設けられており、邪魔板によって、濾過液流路内の濾過液の流れが、フィルタエレメントの周方向からその半径方向内向きにそらされるようになされているフィルタ装置。
【請求項2】
フィルタエレメントが、濾過タンク内に収容されており、濾過タンクが、フィルタエレメント外面を所定間隔をおいて取り囲んでいる垂直円筒状胴壁を有しており、フィルタエレメント外面および胴壁内面間に、濾過液流路が形成されている請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項3】
フィルタエレメントが、濾過タンク内に収容されており、濾過タンクが、フィルタエレメント外面を所定間隔をおいて取り囲んでいる胴壁を有しており、フィルタエレメント外面および濾過タンク胴壁内面間にガイド板が配置されており、フィルタエレメント外面およびガイド板内面間に、濾過液流路が形成されている請求項1に記載のフィルタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−79100(P2011−79100A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234015(P2009−234015)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(000241555)豊菱産業株式会社 (15)
【出願人】(396014212)
【Fターム(参考)】