説明

フィルタ装置

流体貯蔵タンクに導入されるように付与されるフィルタ装置であって、好ましくは交換可能である少なくとも1つのフィルタ要素(11)を備え、流体は外部からフィルタ要素(11)を通って、清浄側を形成していてハウジング壁部(1)によって包囲される中空の内方フィルタ室(19)に流れうるようになっている。ハウジング壁部(1)は流体室(15)を形成しており、清浄化された流体は、中空の内方フィルタ室(19)から流体室(15)に流れうるようになっている。ハウジング壁部には少なくとも1つの壁部開口(31)が形成されており、壁部開口は、貯蔵タンク内において流体高さが可変である領域内に配置される流体通路を形成している。このフィルタ装置において、貯蔵タンク内の流体高さの関数として作動されうるとともに、貯蔵タンク内の流体表面の位置の近位に在る少なくとも1つの壁部開口(31)からなる流体通路を形成する、制御デバイス(39,41,43)が付与されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは交換可能である少なくとも1つのフィルタ要素を有していて流体貯蔵タンクに導入されるように形成されるフィルタ装置に関する。流体は外部からフィルタ要素を通って内方フィルタキャビティまで流れうる。内方フィルタキャビティは清浄側を形成していて、流体室を形成するハウジング壁部によって包囲される。清浄化された流体は、内方フィルタキャビティから流体室内に流れうる。ハウジング壁部には、少なくとも1つの壁部開口が形成されており、これら壁部開口は、貯蔵タンクにおいて流体高さが可変である領域内に配置される流体通路を形成する。
【背景技術】
【0002】
このタイプの解決手段は、技術用語ではインタンク型の解決手段とも称される。このような装置は、流体圧式動作回路を備えたデバイス又は機器において主として使用される。これは特に可動式機械、例えば掘削機、ホイール型ローダ又は伸縮可能なローダ(telescopic loader)の場合である。これらローダには、ポンプによって供給されるとともに作動されうる、例えば流体圧式シリンダの形態を有する作動流体圧部が広範囲に形成される。動作に際して、フィルタ要素はリターンフィルタを形成しており、清浄化された油圧油は、リターンフィルタの清浄側から流体圧タンク内に直接移動する。油圧油は、関連する流体圧式ポンプによって、流体圧タンクから再び直接取込まれる。
【0003】
動作回路を通る経路において、典型的には空気が油圧油内に導入される。この空気によって流体圧式システムの挙動が損なわれる。このことは、例えば流体圧部が「軟化」すると称される。さらに、空気が取込まれるときに、流体圧式ポンプのキャビテーションのおそれがある。この点、油圧油がタンク内に残存する時間の間に、タンク内において上昇するとともに漏出する空気によって、特定のガス抜きが行われるのが好ましい。
【0004】
特に、複雑なシステム構成要素を狭小な空間に配列する必要がある移動式機械において、構成要素は空間を可能な限り節約したデザインとして構築される必要がある。これは、関連する流体圧タンクが小容量を有するように形成される必要があることを意味する。しかしながら、より小型のタンクを使用すると、油圧油はより迅速かつより頻繁に循環され、タンク内における残存時間がそれに応じて短縮される。このことは、次いで油圧油内の空気がもはや適切に漏出できなくなることにつながる。なぜなら、タンク内において空気が上昇して漏出する機会がほとんどないためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この問題に鑑みて、本発明の目的は、関連する貯蔵タンクが小容量のデザインであってもなお効果的にガス抜きできるようにするフィルタ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この目的は、特許請求の範囲の請求項1に記載される特徴を全体として有するフィルタ装置によって達成される。
請求項1に記載の特徴部分によると、冒頭で述べたタイプのフィルタ装置において、貯蔵タンクにおける流体高さの関数として作動されうるとともに、貯蔵タンクにおいて流体表面の位置に対してより近位に在る少なくとも1つの壁部開口に通される流体通路を形成する制御デバイスが設けられる。したがって、流体表面の近傍に在る流体の流出流量が規定され、流出領域の位置は流体高さの変化に追従する。この場合、流体高さが変動するにもかかわらず、清浄化された流体は、流体表面の近傍に在るフィルタ装置からこのように出現し、油圧油からの気泡の分離及び消失が実質的に促進される。また、流出領域がこの位置に在るために、貯蔵タンク内に含まれる油圧油との混合作用が弱くなる。達成される油圧油の広範囲のガス抜き作用によって、流体圧式動作回路の動作挙動は、幾つかの点、例えばノイズの発生を低下させる点、損傷、例えばキャビテーション又は温度上昇の低下を防止する点、動力学的な動作上の問題を防止する点、又は油圧油の早期の経年劣化若しくは望ましくない粘性の変化を防止する点において改善される。
【0007】
例示のための特に有利な実施形態において、制御デバイスは、流体高さの変動を、少なくとも1つの壁部開口を通る流体通路の開口断面の位置を調整するための位置決め動作に変換するフロートを有する。このフロートの作動により、極めて簡易な構成によって信頼性の高い制御が可能になる。
【0008】
例示のための有利な実施形態において、配列体は、少なくとも1つの壁部開口を形成するハウジング壁部が、カップ状のフィルタハウジングの一部であるように形成されうる。フィルタハウジングは、フィルタ要素の内方フィルタキャビティから出現する流体の流れに曝露される閉塞されたカップ底部を有しており、カップ底部は、ディフューザとして作用する流れ偏向デバイスを備えている。
【0009】
フィルタハウジングが少なくともカップ底部の領域において円筒状に形成されていて、清浄化された流体がカップ底部の方向においてフィルタハウジングの軸線と本質的に同軸に内方フィルタキャビティから出現する、例示のための実施形態において、ディフューザとして作用する流れ偏向デバイスは、カップ底部の湾曲部によって形成されうる。
【0010】
流れの条件を最適化するために、配列体は、湾曲部が円環部の内壁の一部によって形成されるように形成されうる。それにより、底部に突き当たる軸線方向の流れは、半径方向の流れに拡散され、続いてハウジング壁部に沿って上昇する軸線方向の流れになる。このようにして、作動圧力が高い場合及び流体の量が多い場合のうちの少なくとも一方の場合においても、流体は、フィルタハウジングの関連する流体通路から、しぶき又は泡を貯蔵タンク内に発生させることなく、本質的に減衰された流れの形態をなして出現する。
【0011】
制御デバイスの実行に関し、配列体は、制御デバイスがフロートとして使用される浮体を備えたスリーブを有するように形成されるのが好ましい。フロートは弁スプールのタイプを形成し、ハウジング壁部を軸線方向に移動可能に支持される。ハウジング壁部には少なくとも1つの壁部開口が形成されており、スリーブ壁部には、流体通路に対して調整されうる少なくとも1つの開口が形成されており、少なくとも1つの壁部を通る流体通路の開口断面が、フロートによって引き起こされる軸線方向の運動によって制御される。
【0012】
より大量の流体を伴う流出流の抵抗が低下するのを促進するため、ハウジング壁部において周囲に分配される複数の壁部開口が、流体通路として位置していてもよい。
したがって、スリーブ壁部において周囲に分配されるように配列される複数の開口が、弁のスプールとして位置していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実用的な実施形態に対して概略的な縮尺で描かれた、本発明の例示的な一実施形態に係るフィルタ装置の斜視図である。
【図2】フロートが形成された制御デバイスを上昇端位置において示す、図1の例示的な実施形態の長手方向の断面図である。
【図3】制御デバイスを反対に降下させた位置において示す、例示的な実施形態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に示される例示的な一実施形態を利用して本発明を詳説する。
いわゆるインタンク型フィルタ装置を利用して本発明を以下に詳説する。図面に示されるフィルタ装置は、図示されない流体圧タンク内に導入される。
【0015】
フィルタ装置は、一体部材としてモールド成形されたカップ底部3によって底部側が閉塞された、主として円筒状カップの形態を有するフィルタハウジング1を備えている。フィルタ装置を図示されない流体圧タンクの上方タンク壁部に在るタンク開口に導入するためのフランジプレート5が、フィルタハウジング1の上端に位置している。フィルタハウジング1の上方終端部を形成するハウジング頭部9は、フィルタ要素11を交換するために取外されうるカバー7とともにフランジプレート5に在る。フィルタ要素11は、フィルタカートリッジのタイプを形成するように内方ハウジング13を有している。内方ハウジング13は、ハウジング頭部9の上端において支持されていて、ハウジング1内においてカップ底部3の方向において同軸に延在しているものの、カップ底部3からより遠位において終端していて、流れ空間15を形成している。流出開口17が内方ハウジング13の下方端に位置しており、清浄化された流体は、フィルタ装置の動作に際して、カップ底部3に向かう軸線方向の流れを伴って、フィルタ要素11の内方フィルタキャビティ19から流出開口17を通って流出する。内方ハウジング13の上端はハウジング頭部9に向かって開放されており、ハウジング頭部9には、流体案内部がこれらフィルタ装置における従来の態様で位置している。流体連通部21は、外方フィルタキャビティ23に移動する戻り油圧油の供給作用のために形成されている。外方フィルタキャビティ23は汚染側を形成していて、内方ハウジング13内のフィルタ媒体25の外側を包囲している。このフィルタ媒体は、例えばプリーツ付フィルタマットの形態を有していて、流体透過性を有する支持管27に設置される。支持管27は、封止部が形成されるとともに流出開口17に接続される内方フィルタキャビティ19を包囲している。動作に際して、還流流体は、外方フィルタキャビティ23からフィルタ媒体25を通って内方フィルタキャビティ19に流れるとともに、内方フィルタキャビティ19から流出開口17を通ってカップ底部3まで軸線方向に流れる。これらフィルタ装置における従来の態様により、バイパス弁配列体29がフィルタ要素11の上端に位置している。バイパス弁配列体29は、外方フィルタキャビティ23と、内方フィルタキャビティ19との間の対応する差圧の作用として、これらキャビティ間の流体経路を一掃する。
【0016】
軸線方向において内方フィルタキャビティ19から流出開口17を通り、動作時において下方に向けられる流体経路において流出する清浄化された流体は、貯蔵タンクの底部に到達しない。なぜなら、フィルタハウジング1は閉塞された底部3を有しており、底部3は、流出開口17から或る距離をおいて流れ空間15に隣接している。清浄化された流体が流れ空間15から出現するように、壁部開口31は、流体通路としてフィルタハウジング1の壁部に形成されている。これら壁部開口31は、動作中に貯蔵タンク内の流体高さが変化する領域まで、カップ底部3に対して、ひいては特に貯蔵タンクの基部領域に対して、上方にオフセットされるように配列されている。清浄化された流体は、フィルタ要素のフィルタキャビティから貯蔵タンクの基部に向かって軸線方向下向きに流出するのが通常であるのに対して、本発明においては、流れ偏向部が閉塞されたカップ底部3に形成されており、それにより、上方にオフセットされた壁部開口31から流出する、上方に向けられた流れが、流れ空間15内において下方に導かれる軸線方向の流れから形成されるようになる。
【0017】
カップ底部3に形成される流れ偏向デバイスは、ディフューザとして形成される。この目的のために、カップ底部3は、円環部の一部の内壁に対応する湾曲部33を有しており、それにより流出開口17からの軸線方向の流れが隆起部35に突き当たるようになる。隆起部35において、軸線方向の流れは、図2において流れ矢印37により示されるように、半径方向の流れに拡散され、続いてフィルタハウジング1の内壁に沿って壁部開口31の方向に上昇する軸線方向の流れになる。
【0018】
本発明は、壁部開口31によって形成される流体通路の開口断面を貯蔵タンクのその時点における高さの状態に適合させる制御デバイスを提供する。この目的のために、弁のスプールのタイプを形成するフリーブ39が、フィルタハウジング1の外側において、軸線方向に移動可能に支持される。スリーブ39の上端には、フィルタハウジング1を環状に包囲する空気受容部の形態を有する浮体41が配置されている。浮体41は、流体高さの変化に応じた位置決め動作をスリーブ39に対して付与するフロートとして使用される。スリーブ39には、制御作用のために窓状の開口43が形成されている。浮体41によって形成されていて動作に際して流体高さの表面領域に常に在るフロートと、開口43との間、同様に壁部開口31との間の位置的関係によって、フィルタハウジング1の壁部開口31に形成される流体通路が流体表面に対して近位に在ることが動作に際して常に保証される。したがって、換言すると、清浄化された流体の流れがフィルタハウジング1内部において十分遠位まで上昇でき、それにより、貯蔵タンクに向かって出現する流体が、流体高さの表面の僅か下方の領域までに制限されるようになることが保証される。したがって、カップ底部3における流れ偏向部によって、結果的に貯蔵タンクに向かって出現する流体が流体表面の方向において上方にオフセットされる。それとともに、流体高さが降下する場合であっても流体が壁部開口からその時点の流体高さを超えて出現しうる危険がなくなることが保証される。そのため、表面に出現する流体に起因するしぶき又は泡が貯蔵タンクにおいて発生しうる危険が回避される。各実施例におけるフロート制御部とディフューザとの組合せによって、流れの挙動が最適化されるとともに、流体のガス抜きが表面近傍の流出流によって促進される。
停止ピン45がフィルタハウジング1のカップ底部3に位置しており、図3に示されるスリーブ39の底端位置が制限される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の貯蔵タンクに導入されるように形成されるフィルタ装置であって、好ましくは交換可能である少なくとも1つのフィルタ要素(11)を有しており、流体は外部から該フィルタ要素(11)を通って、清浄側を形成するとともにハウジング壁部(1)によって包囲される内方フィルタキャビティ(19)まで流れうるようになっており、前記ハウジング(1)は流体室(15)を形成しており、清浄化された流体は、前記内方フィルタキャビティ(19)から前記流体室(15)まで流れうるようになっており、前記ハウジング壁部には少なくとも1つの壁部開口(31)が形成されており、該壁部開口(31)は、前記貯蔵タンクにおける流体高さが可変である領域内に配置される流体通路を形成する、フィルタ装置において、
制御デバイス(39,41,43)が位置しており、該制御デバイス(39,41,43)は、前記貯蔵タンクにおける前記流体高さの関数として作動されうるとともに、前記貯蔵タンクにおいて流体表面の位置に対してより近位に在る前記少なくとも1つの壁部開口(31)に通される前記流体通路を形成することを特徴とする、フィルタ装置。
【請求項2】
前記制御デバイス(39,41,43)が、前記少なくとも1つの壁部開口(31)を通る前記流体通路の開口断面の位置を調整するように前記流体高さの変動を位置決め動作に変換するフロート(41)を有することを特徴とする、請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの壁部開口(31)が形成される前記ハウジング壁部が、閉塞されたカップ底部(3)を有するカップ状のフィルタハウジング(1)の一部であり、前記カップ底部(3)は、前記フィルタ要素(11)の前記内方フィルタキャビティ(19)から出現する流体の流れに曝露され、
前記カップ底部(3)は、ディフューザとして作用する流れ偏向デバイス(33,35)を有することを特徴とする、請求項2に記載のフィルタ装置。
【請求項4】
前記フィルタハウジング(1)は、少なくとも前記カップ底部(3)の領域において円筒形に形成されており、
清浄化された流体は、前記カップ底部(3)の方向において前記フィルタハウジング(1)の軸線に対して本質的に同軸に前記内方フィルタキャビティ(19)から出現し、
前記カップ底部は、前記流れ偏向デバイスを形成する湾曲部(33,35)を有することを特徴とする、請求項3に記載のフィルタ装置。
【請求項5】
前記湾曲部が円環部(33)の内壁の一部によって形成されており、それにより、前記カップ底部(3)に突き当たる軸線方向の流れが半径方向の流れに拡散され、続いて前記ハウジング壁部(1)に沿って上昇する軸線方向の流れになることを特徴とする、請求項4に記載のフィルタ装置。
【請求項6】
前記制御デバイス(39,41,43)は、フロートとして使用される浮体(41)が備え付けられるスリーブ(39)を有しており、前記浮体(41)は弁のスプールのタイプを形成するとともに、ハウジング壁部(1)において軸線方向に移動可能に支持されており、前記ハウジング壁部(1)には前記少なくとも1つの壁部開口(31)が形成されており、前記スリーブの壁部には、前記流体通路に対して調整されうる少なくとも1つの開口(43)が形成されており、前記フロートによって引き起こされる軸線方向の移動によって、前記少なくとも1つの壁部開口(31)に通される前記流体通路の開口断面を制御することを特徴とする、請求項2から5のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項7】
前記流体通路を形成する前記少なくとも1つの壁部開口(31)が、前記流体高さが変化する領域全体にわたって延在することを特徴とする、請求項6に記載のフィルタ装置。
【請求項8】
複数の壁部開口(31)が、流体通路として前記ハウジング壁部(1)において周囲に分配されるように位置することを特徴とする、請求項6又は7に記載のフィルタ装置。
【請求項9】
複数の開口(43)が、前記スリーブの壁部において周囲に分配されるように位置することを特徴とする、請求項6から8のいずれか1項に記載のフィルタ装置。
【請求項10】
前記スリーブ(39)の軸線方向の移動の終端位置を制限する停止デバイス(45)が、前記ハウジング壁部(1)に位置することを特徴とする、請求項6から9のいずれか1項に記載のフィルタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−523950(P2012−523950A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505066(P2012−505066)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001481
【国際公開番号】WO2010/118803
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(511004689)ハイダック フィルターテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (21)
【Fターム(参考)】