説明

フィルムのしわ取り装置、フィルムの張力調整方法及びフィルムのしわ取り方法並びにフィルムの巻取り装置

【課題】フィルムに適度な張力を与えるとともにフィルムの幅方向に生じるしわを解消してフィルムの巻回速度を上昇させる。
【解決手段】フィルムのしわ取り装置30は、長手方向に移動する帯状フィルム11が沿う又はその帯状フィルムが掛け回される第1部材31と、第1部材とともにフィルム11を挟みそのフィルム11に臨む空気孔32bが形成されたむ第2部材32と、空気孔からエアを帯状フィルムに吹き付けてその帯状フィルムを第1部材に押しつけるエア吹き付け手段とを備える。フィルムの巻取り装置は、上記しわ取り装置30と、巻回されたフィルムを送り出す供給部12と、供給部から送り出されるフィルムを巻回する巻取り部13と、供給部と巻取り部の間のフィルム搬送経路に設けられた複数の搬送ローラとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器、電気機器、産業機器、自動車等に使用されるフィルムを用いたコンデンサや電池等を製造する際に使用可能なフィルムのしわ取り装置等に関する。更に詳しくは、特に、ハイブリッド自動車のモータ駆動用インバータ回路の平滑用、フィルタ用、スナバ用として最適な金属化フィルムコンデンサ等を製造する際に使用可能なフィルムのしわ取り装置、フィルムの張力調整方法及びフィルムのしわ取り方法並びにフィルムの巻取り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から、あらゆる電気機器がインバータ回路で制御され、省エネルギー化、高効率化が進められている。中でも自動車業界においては、電気モータとエンジンで走行するハイブリッド車が市場導入される等、地球環境に優しく、省エネルギー化、高効率化に関する技術の開発が活発化している。このようなハイブリッド車に用いられる電気モータは使用電圧領域が数百ボルトと高いため、このような電気モータに関連して使用されるコンデンサとして、高耐電圧で低損失の電気特性を有する金属化フィルムコンデンサが注目されている。この種の金属化フィルムコンデンサは、樹脂からなる誘電体フィルム上に金属蒸着電極を形成した帯状の金属化フィルムを一対の金属蒸着電極が誘電体フィルムを介して対向するように巻回することによりコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子の両端面に金属溶射によるメタリコンからなる取り出し電極を夫々形成することによって作られる。
【0003】
従来、このようなコンデンサ素子を製造する装置として、帯状の金属化フィルムが巻回されたボビン又はリールを装填可能な巻き出し軸を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。この装置では、2組の金属化フィルムを夫々装填できるように巻き出し軸が2本設けられ、2本の巻き出し軸からそれぞれ繰り出された帯状の金属化フィルムを2枚1組として重ね合わせて巻回する巻取り部と、捲き出し軸と巻取り部の中間に設けられて金属化フィルムをそれぞれ搬送する複数の搬送ローラが設けられる。そして、この複数の搬送ローラは、金属化フィルムの搬送をガイドするガイドローラ、位置変動により巻き出し軸の回転速度を制御してフィルムに一定の張力を与えるダンサーローラ、及び巻取り部に巻回されたフィルムを外部から加圧する加圧ローラを含むものである。
【0004】
この従来のコンデンサ素子製造装置では、ダンサーローラにより回転速度が制御された2本の巻き出し軸から繰り出される帯状の金属化フィルムを複数の搬送ローラにより搬送して巻取り部に巻回させ、加圧ローラがその巻取り部に巻回されたフィルムを外部から加圧するようにしている。この加圧ローラの加圧により、薄い金属化フィルムを用いた場合でも、巻回されたフィルム間にエアが入り込むことを防止することができるので、その金属化フィルムにしわが入ることがなく、安定した性能のコンデンサ素子を製造することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−94188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の装置では、巻き出し軸から繰り出される帯状のフィルムは複数の搬送ローラにより搬送されて巻取り部に巻回されるため、搬送方向における一定の張力がフィルムに生じるけれども、その搬送方向に直交するフィルムの幅方向には張力が生じないのでフィルムの幅方向に生じるしわを防止することはできなかった。このフィルムの幅方向に生じるしわは巻取り部に巻回した後に加圧ローラが巻回されたフィルムを外部から加圧することにより解消しているけれども、そのしわを解消するためには巻回されたフィルム間にエアが入り込むことを確実に防止する必要がある。このエアの入り込みは、フィルムを巻回する巻取り部の回転速度と関係しており、生産性向上のためにその回転速度を上昇させると、フィルムの幅方向におけるしわを解消する以前にフィルムが加圧ローラにより押しつぶされてそのフィルム間にエアが入り込む危険性が増大することになる。このため、巻取り部にフィルムを巻回する速度を上昇させるには限界があり、1800rpm程度がその限界と言われている。よって、従来の装置では、巻取り部の巻回速度を上昇させてその生産性を向上させるには一定の制限があった。
【0007】
本発明の目的は、フィルムの主に幅方向に生じるしわを解消しうるフィルムのしわ取り装置及び方法を提供することにある。
【0008】
本発明の別の目的は、フィルムに適度な張力を与えるとともにフィルムの主に幅方向に生じるしわを解消してフィルムの巻回速度を上昇し得るフィルムの張力調整方法及びフィルムの巻取り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のフィルムのしわ取り装置は、長手方向に移動する帯状フィルムが沿う又は帯状フィルムが掛け回される第1部材と、フィルムに所定の間隔を空けて対向して第1部材とともにフィルムを挟みフィルムに臨む空気孔が形成された第2部材と、空気孔からエアを帯状フィルムに吹き付けて帯状フィルムを第1部材に押しつけるエア吹き付け手段とを備える。
【0010】
本発明のフィルムの張力調整方法は、第1部材に沿い又は掛け回されて長手方向に移動する帯状フィルムにエアを吹き付けて帯状フィルムを第1部材に押しつけ、第1部材に押しつけられて摺動するフィルムの摺動抵抗によりフィルムに張力を生じさせ、フィルムの張力をフィルムに吹き付けるエアの圧力により制御することを特徴とする。
【0011】
本発明のフィルムのしわ取り方法は、第1部材に沿い又は掛け回されて長手方向に移動する帯状フィルムにエアを吹き付けて帯状フィルムを第1部材に押しつけ、フィルムに吹き付けられてフィルムの表面に流れるエアによりフィルムのしわを伸ばすことを特徴とする。
【0012】
本発明のフィルムの巻取り装置は、ボビン又はリールに巻回されたフィルムを送り出す供給部と、供給部から送り出されるフィルムを巻回する巻取り部と、供給部と巻取り部の間のフィルム搬送経路に設けられた複数の搬送ローラと、巻取り部近傍に設けられた上記しわ取り装置又はフィルムの張力調整方法に用いる装置とを備える。
【0013】
このフィルムの巻取り装置における供給部が一対設けられ、巻取り部は一対の供給部からそれぞれ供給されるフィルムを重ね合わせて巻回するように構成され、複数の搬送ローラが巻取り部に巻回されたフィルムから成るコンデンサ素子の周面に付勢状態で当接する加圧ローラを含むようなものである場合には、重ね合わされた2枚のフィルムを巻取り部に巻回される以前に加圧ローラとともに圧縮する補助ローラ又は加圧ローラと別に設けられて重ね合わされた2枚のフィルムを巻取り部に巻回される以前に圧縮する一対の重合ローラを備えることが好ましい。
【0014】
また、このフィルムの巻取り装置における複数の搬送ローラの全部又は一部は、外周から吹き出すエアにより掛け回されたフィルムを浮上可能に構成された筒部と、筒部の両側に設けられ筒部に掛け回されて浮上するフィルムの幅方向の移動を制限する壁部材とを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のフィルムのしわ取り装置では、第1部材に沿って又は第1部材に掛け回されて長手方向に移動する帯状フィルムにエアを吹き付けることにより帯状フィルムを第1部材に押しつけることができる。このため、そのフィルムは第1部材に押しつけられて摺動することになり、そのフィルムの摺動抵抗によりフィルムに張力を生じさせることができる。このフィルムの張力はフィルムに吹き付けるエアの圧力に比例するので、その張力をエアの吹き付け圧力により制御することが可能となる。
【0016】
また、帯状フィルムを第1部材に押しつけたエアは、第1部材とともにフィルムを挟む第2部材によりフィルムの表面を流れ、そのフィルムをその長手方向及び幅方向の両側に引っ張る。このため、フィルムが第1部材に押しつけられて摺動する場合のみならず、フィルムが沿い又は掛け回される第1部材がフィルムとともに移動又は回転したとしても、その長手方向に移動する帯状フィルムに生じるしわを伸ばすことができる。
【0017】
このようなしわ取り装置を備える本発明のフィルムの巻取り装置では、長手方向のみならず幅方向のしわが伸ばされた状態のフィルムを巻取り部に巻回することができるため、巻取り部の回転速度を上昇させたとしても、フィルム間にエアが入り込むことはない。即ち、フィルムの主に幅方向に生じるしわを解消することにより生産性向上のために巻取り部によるフィルムの巻回速度を上昇させることが可能になる。このため、本発明の巻取り装置により、安定した性能のコンデンサ素子の製造効率を従来よりも著しく向上させることができる。
【0018】
また、フィルムの巻取り装置がコンデンサ素子の周面に付勢状態で当接する加圧ローラとともに重ね合わされた2枚のフィルムを圧縮する補助ローラ又は加圧ローラと別に設けられた一対の重合ローラを備える場合、巻取り部に巻き取る前に予め重ね合わされた2枚のフィルム間のエアを取り除くことができ、その後、密着した2枚のフィルムを巻取り部に加圧ローラにて押しつけながら巻取る事により、エアの巻き込みを確実に減らすとともに、巻取られるフィルム間のズレを防止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明実施形態のフィルムの巻取り装置の構成を示した概念図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】吹き付けるエアにより幅方向のしわが解消された状態を示す図2に対応する断面図である。
【図4】図2のC−C線断面図である。
【図5】搬送ローラの構成を示す図1のB−B線断面図である。
【図6】図5のD−D線断面図である。
【図7】別の搬送ローラの構成を示す図5に対応する断面図である。
【図8】図7のE−E線断面図である。
【図9】本発明の別のしわ取り装置の構成を示す図3に対応する断面図である。
【図10】図9のF−F線断面図である。
【図11】本発明の更に別のしわ取り装置の構成を示す図3に対応する断面図である。
【図12】図11のG−G線断面図である。
【図13】円柱状部材を有するしわ取り装置の構成を示す断面図である。
【図14】図13のH−H線断面図である。
【図15】加圧ローラに補助ローラを当接させたフィルムの巻取り装置の構成を示す概念図である。
【図16】加圧ローラと別に一対の重合ローラを設けた図15に対応する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1に、本発明の実施の形態によるフィルムの巻取り装置10を示す。この巻取り装置10は、図示しないボビン又はリールに巻回された帯状フィルム11を送り出す供給部12を備える。この実施の形態における供給部12とは、図示しないボビン又はリールに巻回された金属化フィルム11を装填可能に構成された巻き出し軸であり、本実施の形態では、この帯状の金属化フィルム11を2枚1組として一対で重ね合わせて巻回する構成のものであるため、2組の帯状金属化フィルム11を夫々装填できるように、供給部としての巻き出し軸12も一対、即ち2本備えられる。なお、この金属化フィルム11としては、コンデンサ用のものとしては、ポリプロピレンからなる誘電体フィルムの片面に金属蒸着電極を形成することによって構成された、幅80mm、厚さ3μmのものが例示される。
【0022】
また、巻取り装置10には、供給部12から送り出されるフィルム11を巻回する巻取り部13が備えられる。フィルム11を巻回する巻取り部は巻芯13により構成され、供給部である巻き出し軸12と巻取り部である巻芯13の間のフィルム11の搬送経路には複数の搬送ローラ16,17,18,19が設けられる。図における搬送ローラは、ガイドローラ16、ダンサーローラ17、アイドルローラ18及び加圧ローラ19から成る場合を示す。ここで、ガイドローラ16は、金属化フィルム11の搬送経路に複数本固定して設けられて金属化フィルム11の搬送をガイドするものである。また、ダンサーローラ17はガイドローラ16間にある揺動片17aの揺動端に枢支され、この揺動片17aが揺動することにより移動可能に設けられる。揺動片17aの揺動は図示しないポテンショメータ又はエンコーダ等の検出器により検出され、ポテンショメータ等の検出出力により巻き出し軸12の回転速度を制御可能に構成される。
【0023】
ここで、図1では巻取り部である巻芯13に巻回された金属化フィルム11から成るコンデンサ素子を符号14で示す。加圧ローラ19は、このコンデンサ素子14の周面に付勢状態で当接し、フィルム11を巻芯13に巻回する際にそのフィルム11間にエアが巻き込まれることを防止するローラであり、ウレタンゴム製のものが例示されるけれども、ウレタンゴム製のものに限定するものではない。なお、複数の搬送ローラ16,17,18,19により、金属化フィルム11に形成された図示しない金属蒸着電極が加圧ローラ19の周面に接するようにして金属化フィルム11が搬送されるものとする。そして、加圧ローラ19はスライド板21に回転自在に取付けられ、スライド板21は巻芯13に対して移動可能に設けられる。具体的に、スライド板21の下面には複数の溝から成るラックギヤ21aが形成され、そのラックギヤ21aと噛み合うピニオンギヤ22が設けられる。このピニオンギヤ22は図示しないエンコーダにより回転し、ピニオンギヤ22の回転によりスライド板21は図1の左右方向に移動可能に構成される。
【0024】
図示しないが、巻取り装置10には、コンデンサ素子14の外径を検出するセンサが設けられる。一対の金属化フィルム11を巻回してコンデンサ素子14を作製すると、その巻取り作業が進むに連れてコンデンサ素子14の外径は徐々に大きくなり、これに伴ってコンデンサ素子14の周面に当接して付勢している加圧ローラ19は外方へ押されることになるけれども、このような外径の増大は図示しないセンサによって検知され、この結果に基づいてピニオンギヤ22を回転させてスライド板21をコンデンサ素子14から遠ざかる方向(図中の右側)に移動可能に構成される。これにより、そのスライド板21とともに加圧ローラ19もコンデンサ素子14から遠ざかる方向に移動し、コンデンサ素子14の周面を加圧ローラ19が付勢する力を常に一定にするように構成される。アイドルローラ18は、このスライド板21に設けられ、スライド板21が移動することにより加圧ローラ19とともにアイドルローラ18も移動可能に構成される。
【0025】
複数の搬送ローラ16,17,18,19の全部又は一部は、フィルム11が掛け回される外周から吹き出すエアによりフィルム11を浮上させてそのフィルム11を搬送するように構成される。この実施の形態では、加圧ローラ19を除く、ガイドローラ16、ダンサーローラ17及びアイドルローラ18の全てがフィルム11を浮上させて搬送するものである場合を示す。これらは同一構造であり、図1におけるダンサーローラ17の下流側に設けられたガイドローラ16を代表して説明すると、図5及び図6に示すように、このローラ16は、外周から吹き出すエアにより掛け回されたフィルム11を浮上可能に構成された筒部23と、その筒部23の両側に設けられて筒部23に掛け回されて浮上するフィルム11の幅方向の移動を制限する壁部材24,25とを備える。
【0026】
図5及び図6に示すガイドローラ16は、金属又は樹脂等からなる固形物を切削加工することにより筒部23と壁部材24,25がそれぞれ一体となって形成されたものを例示し、筒部23は、中心軸に沿って貫通孔23aが形成された円筒状をなし、その軸方向の両端を封止するように壁部材24,25が設けられる。図5に示すように、壁部材24,25は筒部23の外径より大きな外径を有し、その筒部23の両側にフィルム11の幅より僅かに広い間隔を空けてその筒部23と同軸に設けられる。筒部23の一端側における壁部材24には、筒部23と同軸の雄ねじ24aが形成され、巻取り装置10のパネル10aにはこの雄ねじ24aを取付ける挿通孔10bが形成される。パネル10aに形成された挿通孔10bにこの雄ねじ24aを挿通し、ワッシャ26aを介してナット26bを螺合することにより、このローラ16は巻取り装置10のパネル10aに固定される。
【0027】
また、この一端側の壁部材24には、貫通孔23aに連通する連通孔24bが中心軸に貫通して形成され、その連通孔24bの一端側にはエア供給用の第1エアチューブ27を固定可能な第1カプラ28が設けられる。なお、筒部23の他端側における壁部材25には、筒部23における貫通孔23aの他端側を封止する蓋板29aが雄ねじ29bにより取付けられる。壁部材24,25間における筒部23には貫通孔23aに一端が連通する複数のエア孔23cが、その他端を外周面に開口させるようにその中心軸から放射状に形成される。この複数のエア孔23cはフィルム11が掛け回される部分に形成され、第1エアチューブ27により供給され第1カプラ28を介して貫通孔23aの内部に供給された圧縮エアは、一点鎖線矢印で示すように、貫通孔23aを通過した後この複数のエア孔23cからローラ16の筒部23における外表面に吹き出され、この吹き出されたエアによりこのローラ16に掛け回されたフィルム11を図6に示すように浮上可能に構成される。そして、筒部23の両側に設けられた壁部材24,25は筒部23に掛け回されて浮上するフィルム11の幅方向の両側に位置し、そのフィルム11の幅方向の移動を制限した状態で搬送可能に構成される。
【0028】
図1に戻って、加圧ローラ19が設けられたスライド板21には帯状フィルム11の主に幅方向のしわを取るしわ取り装置30が設けられ、アイドルローラ18に掛け回されたフィルム11がこのしわ取り装置30を通過した後に加圧ローラ19に達するように構成される。図1の拡大図及び図2〜図4に示すように、このしわ取り装置30は、長手方向に移動する帯状フィルム11が沿う第1部材31と、その帯状フィルム11に所定の間隔を空けて対向してその第1板材31とともにフィルム11を挟む第2部材32とを備える。この実施の形態における第1及び第2部材31,32はそれぞれ所定の厚みを持った方形状の板材から成り、この対向面の両側にフィルム11の幅より広い間隔を空けて設けられたスペーサ板材33を介して重ね合わされる場合を示す。
【0029】
第1部材である第1板材31の四隅には雌ねじ孔31aが形成され、雌ねじ孔31aに対向する第2部材である第2板材32及びスペーサ板材33にはそれぞれ取付孔32a,33aが形成される。そして、ボルト34の雄ねじ部34aをこれらの取付孔32a,33aに挿入させて雌ねじ孔31aに螺合させることにより第2板材32を、スペーサ板材33の厚さに相当する所定の隙間を空けて第1板材31に対向させ、その状態で固定される。なお、所定の隙間はその第1及び第2板材31,32が挟むフィルム11の厚さによって異なり、厚さが3μmのフィルム11を用いるこの実施の形態における隙間は150μmである。150μmとする理由は、後述するフィルム11の張力のコントロールがしやすい事による。即ち、この隙間が狭いとエアが外部に流れ出し難く、結果、内部圧力が上がりやすいため、フィルム11の張力が上昇する。その一方、この隙間が広いと、エアが外部に漏れ出し、内部圧力が上がらないため、フィルム11の張力を上げにくいからである。適度な隙間としては100〜150μm程度と考えられる。
【0030】
第2部材である第2板材32には、フィルム11に臨むようにそのフィルム11の幅方向の中間にエアを吹き付け可能な空気孔32bが形成される。この空気孔32bは第2板材32の中央にこの第2板材32を貫通して設けられ、フィルム11に対向する第2板材32の内面は、その空気孔32bに連通してフィルム11の幅方向に延びる凹溝32cが形成される。第2板材32の外面側には第2エアチューブ36を固定する第2カプラ37が設けられ、この第2エアチューブ36はエア供給源である図示しないエアタンクに接続される。そして、この図示しないエアタンクから第2エアチューブ36を介して供給された圧縮エアは、第2カプラ37を通過して空気孔32bからフィルム11に吹き付けられ、そのエア圧により帯状フィルム11を第1部材である第1板材31に押しつけるように構成される。よって、図示しないエアタンク、第2エアチューブ36及び第2カプラ37は空気孔32bからエアを帯状フィルム11に吹き付けてその帯状フィルム11を第1部材31に押しつけるエア吹き付け手段として機能するものである。
【0031】
一方、第1部材である第1板材31のフィルム11に対向する面は粗面加工される。具体的な加工方法としてはサンドブラスト加工が挙げられ、粗面の程度は中心線平均あらさ(Ra)で6.3〜25μm程度が好ましい。この粗面加工する目的としては、フィルム11と第1板材31の密着を防ぐ事にある。即ち、板材31が鏡面である場合には、フィルム11が一度密着してしまうと、その板材31とフィルム11間にエアが入らない為、その板材31とフィルム11を引き剥がすのは困難になる。この点で、粗面で接していれば、点接触となり、板材31とフィルム11間にエアが存在することになり、密着を防ぐ効果がある。なお、平均あらさに関する数値は例示であって、サンドブラスト加工以外の加工方法であっても第1板材31とフィルム11間の密着を防ぐ方法であれば可能である。
【0032】
次に、このように構成された本実施の形態におけるフィルムの巻取り装置の動作について説明する。
【0033】
図1に示すように、ボビン又はリールに巻回されて巻き出し軸12に装填された帯状の金属化フィルム11は、巻き出し軸12が回転することによりそのボビン又はリールから巻き出され、ガイドローラ16、ダンサーローラ17、ガイドローラ16、アイドルローラ18及びしわ取り装置30を経て、図中の左方向の巻取り部である巻芯13へと搬送される。2本の巻き出し軸21からそれぞれ繰り出された金属化フィルム11,11は加圧ローラ19において重ね合わされ、巻取り部である巻芯13には重ね合わせた状態の2枚の金属化フィルム11,11を一対としてその巻芯13上の周囲に巻回する。巻芯13は回転することによりそれぞれの金属化フィルム11,11を、一対の金属蒸着電極が誘電体フィルムを介して対向するように巻回し、加圧ローラは巻芯13に巻回されたフィルム11を外部から加圧して巻回された金属化フィルム11から成るコンデンサ素子14を作製する。
【0034】
金属化フィルム11を巻回してコンデンサ素子14を作製するとその外径は徐々に大きくなるけれども、この外径の増大は図示しないセンサによって検知され、この結果に基づいてスライド板21はコンデンサ素子14から遠ざかる方向に移動し、コンデンサ素子14の周面を加圧ローラ19が付勢する力を常に一定に制御する。一方、回転することにより金属化フィルム11を送り出す巻き出し軸12では、巻回されたフィルム11の外径は減少し、ダンサーローラ17に掛け回されてガイドローラ16間にあるフィルム11の全長は徐々に縮まって、そのダンサーローラ17は図1の上方に移動する。この移動は揺動片17aの回転角度として図示しないポテンショメータ等によって検出され、この検出信号により巻き出し軸12の回転速度は増加され、フィルム11の供給量を必要とする量に一致させる。
【0035】
そして、巻き出し軸12と巻芯13との間の搬送経路における、ガイドローラ16、ダンサーローラ17、ガイドローラ16及びアイドルローラ18にあっては、帯状のフィルム11が掛け回される外周から吹き出すエアによりフィルム11を浮上させてそのフィルム11を供給部12から巻取り部13まで搬送する。これにより、これらのローラ16,17,18においてフィルム11の搬送抵抗を著しく低下させることができる。そして、筒部23の両側に設けられた壁部材24,25は筒部23に掛け回されて浮上するフィルム11の幅方向の移動を制限して、そのフィルム11が搬送経路から逸脱するようなことを防止する。このとき、フィルム11を浮上させて搬送するこれらの搬送ローラ16,17,18では、フィルム11の搬送抵抗が著しく低下するので、フィルム11に触れただけでその移動を制限可能であり、フィルム11を浮上させないで接触させ回転することによりそのフィルムを搬送する従来のローラに比較して、フィルム11の幅方向の移動の制限は容易となる。このため、接触するフィルムを回転することにより搬送する従来のローラでは、フィルムが接触する接触抵抗により、壁部材による幅方向の移動の制限が効かずにフィルムが壁部材の周囲に乗り上げてしまうようなこともあるけれども、フィルム11を浮上させる本発明の搬送ローラ16〜18では、フィルム11が壁部材24,25に乗り上げてしまうようなことを有効に防止することができる。
【0036】
一方、しわ取り装置30にあっては、第1板材31と第2板材32の間を長手方向に移動する金属化帯状フィルム11に、第2板材32の空気孔32bからエアが吹き付けられる。そのエアは第2板材からフィルム11に吹き付けられるので、そのフィルム11は第1板材31に押しつけられる。このため、その帯状フィルム11は第1板材31に押しつけられた状態で巻芯13方向に移動することになり、このフィルム11には第1板材31に摺動することに起因する摺動抵抗が移動しようとする方向と反対方向に生じる。即ち、回転することによりフィルム11を巻取る巻芯13としわ取り装置30の間におけるフィルム11に摺動抵抗に略等しい張力が生じる。ここで、粗面加工された第1板材31の内面における動摩擦係数は一定であるので、摺動抵抗はフィルム11を第1板材31に押しつける力、即ちフィルム11に吹き付けるエアの圧力に比例することになる。よって、このしわ取り装置30を巻取り部である巻芯13の近傍に設けることにより、回転する巻芯13に巻回される直前のフィルム11に生じる摺動抵抗に略等しい張力をフィルム11に吹き付けるエアの圧力により制御することが可能になる。
【0037】
このフィルム11に生じる張力が小さすぎた場合、フィルム11にシワが無くても、このフィルム11を巻回する巻芯13のに回転数を上げていくと、巻き上げたフィルム11の外径が大きくなる傾向があり、フィルム11間にエアが巻き込まれたと思われる現象を生じることになる。幅80mm、厚さが3μmのフィルム11を用いるこの実施の形態では、フィルムの張力を200gと設定した場合はこのような現象はかなり少なくなる。このことから、フィルム11の張力は、フィルムの幅が70〜80mmでは、150〜200g程度が適切と思われる。なお、第1板材31のフィルム11が押しつけられる内面は粗面加工されているので、粗面加工された内面における凹凸によりそのフィルム11と第1板材31の間に常にエアを介在させることができ、そのフィルム11と第1板材31の間が真空になってフィルム11が大気圧により第1板材31に接着されるような事態は防止される。
【0038】
また、このしわ取り装置30にあっては、第1及び第2板材31,32は所定の間隔を空けて対向してフィルム11を挟むので、空気孔32bからフィルム11に吹き付けられたエアは、その後フィルム11の表面に流れ、その流れるエアによりフィルム11を周囲に押し広げてしわを伸ばし、移動方向でないフィルム11の幅方向におけるしわまでも伸ばす。特に、この実施の形態では凹溝32cを形成したので、図3及び図4に示すように、吹き付けられたエアは凹溝32cに従ってフィルム11の幅方向に導かれる。このため、その幅方向に流れるエアは空気孔32bからフィルムの幅方向両側に広がるように流れてそのフィルムを幅方向の両側に押し広げて幅方向に生じるしわを効果的に解消する。このため、図2に示すようにエアの吹き付けがない場合に、搬送方向の直交する横方向の断面において蛇行するような幅方向のしわが生じたフィルム11は、空気孔32bからエアを吹き付けることにより、図3に示すように幅方向のしわが解消された状態で第1板材31に押し付けられる。
【0039】
図1に戻って、上述のようにしわ取り装置30によってその長手方向の張力が調整されかつ幅方向のしわが解消されたそれぞれの帯状の金属化フィルム11,11は、その状態で加圧ローラ19の外周に掛け回されて重ね合わされ、直ちに巻芯13に巻回される。そして、巻芯13へのフィルム11,11の巻回作業中は、その巻芯13に巻回されたフィルム11,1から成るコンデンサ素子14の周面を加圧ローラ19により常時付勢することにより、薄い金属化フィルム11を用いた場合でも、金属化フィルム11,11にしわが入ることがなくなり、安定した性能のコンデンサ素子14を製造する。
【0040】
本発明のフィルムの巻取り装置では、上述のようにフィルム11のしわを解消するしわ取り装置30を備えるので、長手方向のみならず幅方向のしわまでもが伸ばされた状態のフィルム11を巻芯13に巻回することができる。このため、そのフィルム11は巻芯13に先に巻回されたフィルム11の外表面にしわが伸ばされた幅方向の大部分が当初から密着し、加圧ローラ19によりその全部を先に巻回されたフィルム11の外周面に確実に密着させることができる。よって、巻芯13の回転速度を上昇させたとしても、フィルム11間にエアが入り込むことを回避することができる。即ち、フィルム11のしわを解消することにより生産性向上のために巻芯13によるフィルム11の巻回速度を上昇させることが可能になる。具体的には、巻取り部である巻芯13のフィルム11を巻回する速度を従来の2倍又は3倍程度まで著しく上昇させることができ、例えば、従来から困難とされた6000rpmの回転速度で巻芯13を回転させたとしても、巻回されたフィルム11のしわを抑えつつフィルム11間にエアが入り込むことを防止することができる。このため、しわ取り装置30を備えた本発明の巻取り装置10により、安定した性能のコンデンサ素子14の製造効率を従来よりも著しく向上させることができる。
【0041】
なお、上述した実施の形態では、第1板材31と第2板材32がスペーサ板材33を介して重ね合わされたしわ取り装置30を説明したが、第1板材31に所定の間隔を空けて第2板材32が対向し、その第2板材32が第1板材31とともにフィルム11を挟むようなものである限り、スペーサ板材33は必ずしも設けることを必要としない。例えば、図示しないが、第1板材及び第2板材のいずれか一方又は双方の両側を残してフィルムを挟む中央部分を切削し、その切削された部分の両側に所定の厚さのスペーサ部を形成し、このスペーサ部を介して両者を重ね合わせることにより、第1板材31に所定の間隔を空けて第2板材32を対向させてもよい。
【0042】
また、上述した実施の形態では、貫通孔23aに一端が連通する複数のエア孔23cが筒部23に形成されたローラ16を例示したが、外周から吹き出すエアにより掛け回されたフィルム11を浮上可能である限り、筒部23にエア孔23cを形成することを要しない。例えば、図7及び図8に示すように、貫通孔23aから外周面にエアが通過可能な多孔質材料から筒部23を形成し、その筒部23の両側に壁部材24,25を接着するようにしても良い。この場合、壁部材24,25はエアを通過不能な金属又は樹脂により形成し、筒部23のフィルム11が掛け回されることのない外周部分をシールド部材38により封止することが考えられる。このようなローラ16であっても、貫通孔23aに供給された圧縮エアはその貫通孔23aからシールド部材38により封止されていない筒部23を一点鎖線矢印で示すように通過して、フィルム11が掛け回された外周から矢印で示すように吹き出し、その筒部23に掛け回されたフィルムを浮上させることができる。そして、壁部材24,25によりその筒部23に掛け回されて浮上するフィルム11の幅方向の移動を制限することができる。
【0043】
また、上述した実施の形態では、第2部材である第2板材32の幅方向の中間に単一の空気孔32bを形成し、この空気孔32bに連通してフィルム11の幅方向に延びる凹溝32cが形成される場合を例示したが、凹溝32cを必ずしも設けることは必要とせず、空気孔32bも単一である必要はない。例えば、図9〜図12に示すように、凹溝を設けることなく、複数の空気孔32bを第2部材である第2板材32に形成しても良い。この場合、エアを帯状フィルム11に吹き付けてその帯状フィルム11を第1部材31である第1板材31に押しつけることができる限り、図9及び図10に示すように、エア吹き付け手段として機能する第2エアチューブ36及び第2カプラ37を複数の空気孔32bにそれぞれ設けても良く、図11及び図12に示すように、第2部材である第2板材32に別部材から成る空気室形成部材41を重合させて空気室42を形成し、その空気室形成部材41にエア吹き付け手段である単一の第2エアチューブ36及び第2カプラ37を接続してその空気室42に図示しないエアタンクからの圧縮エアを供給し、その空気室42に複数の空気孔32bを連通させることにより、複数の空気孔32bからエアを帯状フィルム11に吹き付けるようにしても良い。このようにしても、フィルム11に生じる摺動抵抗に略等しい張力をフィルム11に吹き付けるエアの圧力により制御することが可能になり、フィルム11の表面に流れるエアによりフィルム11のしわを伸ばすことができる。
【0044】
また、上述した実施の形態では、第1部材31として帯状フィルム11が沿う所定の厚みを持った方形状の板材から成り、その板材からなる第1板材31に帯状フィルム11が押しつけられて摺動する場合を説明したが、第1部材は帯状フィルム11が掛け回されるものであって、フィルム11とともに移動又は回転するようなものであっても良い。例えば、図13及び図14に示すように、第1部材として帯状フィルム11が外周に掛け回される断面が円形を成す円柱状部材61を第1部材として用いても良い。この場合であっても、第2部材は、フィルム11に所定の間隔を空けて対向してその第1部材61とともにフィルム11を挟むものであることを必要とする。このため、図13及び図14に示す第2部材62は、その円柱状部材61のフィルム11が掛け回された部分を所定の間隔を空けて覆うように断面において半円状に湾曲した内面を有する覆い部62aと、その覆い部62aの両端に円柱状部材61の両端を支持する支持部62b,62cを備える。そして、その支持部62b,62cに円柱状部材61が雄ねじ64を介して回転可能に取付けられる。なお、図では帯状フィルム11が360度折り返されて掛け回されて覆い部62aが半円を成す場合を示すけれども、掛け回しの程度は360度に限らず、360度未満であって第2部材62における覆い部62aの断面が半円に満たないようなものであっても良い。
【0045】
この場合には、帯状フィルム11が図13の破線矢印で示すように長手方向に移動する際にその円柱状部材61は実線矢印で示すようにフィルム11とともに回転するので、そのフィルムは第1部材である円柱状部材61と摺動することはなくなる。よって、フィルム11の張力は円柱状部材61の回転抵抗により調整することになるけれども、その第2部材62の覆い部62aに空気孔62dを形成して、その空気孔62dからエア吹き付け手段によりエアを帯状フィルム11に吹き付けることにより、その帯状フィルム11を第1部材である円柱状部材61に押しつけることができ、円柱状部材61を第2部材62に回転可能に支持させても、そのフィルム11に吹き付けられて表面に流れるエアによりそのフィルム11のしわを伸ばすことはできる。ここで、図における符号62eはその空気孔62dに連通してフィルム11の幅方向に延びる凹溝62eであり、その作用及び効果は上述した実施の形態における第2板材32に形成された凹溝32cと同一であるので繰り返しての説明を省略する。ただし、この凹溝62eを必ずしも設けることは必要とせず、空気孔62dも単一である必要がない点は上述した実施の形態と同一である。
【0046】
また、図13及び図14に示すように、円柱状部材のように帯状フィルム11が掛け回される第1部材61であっても、その第1部材61を第2部材62に回転不能の状態で取付け、その第1部材61に帯状フィルム11を摺動させるようにしても良い。掛け回された帯状フィルム11を第1部材61に摺動させる場合には、その第1部材61は断面が円形を成す円柱状であることを要せず、図示しないが、フィルム11が掛け回される円弧状部分を有する断面が半円状または扇状を成す棒状部材であっても良い。このようにフィルム11が掛け回されて移動不能の第1部材61及び覆い部62aを有する第2部材62を備えたしわ取り装置60であっても、その第2部材62の覆い部62aに形成された空気孔62dからエア吹き付け手段によりエアを帯状フィルム11に吹き付けることにより、その帯状フィルム11を第1部材に押しつけることができ、フィルム11の張力をそのフィルム11に吹き付けるエアの圧力により制御することが可能になり、そのフィルム11に吹き付けられて表面に流れるエアによりそのフィルム11のしわを伸ばすことができる。
【0047】
また、上述した実施の形態では、このコンデンサ素子14の周面に単一の加圧ローラ19が付勢状態で当接するフィルムの巻取り装置10を説明したが、図15に示すように、フィルム11間にエアが巻き込まれることを確実に防止するために、この加圧ローラ19にウレタンゴム製のローラから成る補助ローラ71を付勢状態で当接させ、この加圧ローラ19と補助ローラ71間に2枚のフィルム11を重ね合わされた状態で通過させ、巻芯13に巻回する以前に重ね合わされたフィルム11を圧縮してそのフィルム11の間に存在するエアを外部に排出するようにしても良い。また、図16に示すように、2枚のフィルム11を重ね合わせて、その重ね合わされた2枚のフィルム11を巻取り部である巻芯13に巻回される以前に圧縮し、その間に存在するエアを排出させるための一対の重合ローラ72,73を、コンデンサ素子14の周面に付勢状態で当接する単一の加圧ローラ19と別に設けても良い。
【0048】
即ち、シワとフィルム11間にエアが入るのは別問題とする考えもあり、当然、シワが入ればエアは入るのだが、シワが無くとも、巻芯13の巻回速度を上昇させるとフィルム11間にエアが入るという問題がある。エアが入る要因としては、フィルム11の張力と加圧ローラ19の圧力及び構造と考えられるけれども、加圧ローラ19とともに重ね合わされたフィルム11を圧縮する補助ローラ71、又は一対の重合ローラ72,73を備えれば、巻芯13に巻回される以前に重ね合わされたフィルム11間のエアを効果的に排除できるので、加圧ローラ19によりその全部をコンデンサ素子14の外周面に確実に密着させることができる。よって、巻芯13の回転速度を上昇させたとしても、フィルム11間にエアが入り込むことを確実に回避するとともに、巻取られるフィルム間のズレを防止することができる。よって、生産性向上のために巻芯13によるフィルム11の巻回速度を更に上昇させることができ、より安定した性能のコンデンサ素子14の製造効率を著しく向上させることができる。
【0049】
また、上述した実施の形態では、金属化フィルム11として、ポリプロピレンからなる誘電体フィルム11の片面に金属蒸着電極を形成することによって構成された、幅80mm、厚さ3μmのものを用いた例で説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、誘電体フィルム11の両面に金属蒸着電極を形成した金属化フィルム11とセパレータフィルム11とを2枚1組として一対で用いたり、幅や厚みが異なる金属化フィルム11を用いることも可能であり、金属蒸着電極を有しない帯状のフィルムであっても同様の効果が得られるものである。
【0050】
また、上述した実施の形態では、巻芯13に対して移動可能に設けられたスライド板21に加圧ローラ19が回転自在に取付けられた例を示したが、コンデンサ素子14の外径の変化にかかわらず、コンデンサ素子14の周面を加圧ローラ19が付勢する力を常に一定にしうる限り、加圧ローラ19をスライド板21に設けることを必要としない。例えば、図示しないが、揺動片の揺動端に加圧ローラを設け、揺動片を揺動付勢して加圧ローラをコンデンサ素子14の周面に押しつけるようにしても良い。又は、加圧ローラ19を動かすことなく、巻芯13を動かす構造として加圧ローラ19が付勢する力を常に一定に制御するようにしても良い。
【0051】
また、上述した実施の形態では、ボルト34を雌ねじ孔31aに螺合させることにより第2板材32を第1板材31に対向させた状態で固定する例を示したが、マグネットを用いて、所定の隙間を空けて第2板材32を第1板材31に対向させた状態で固定するようにしても良い。この場合その固定作業を容易にし得るものと考えられる。
【0052】
更に、上述した実施の形態では、加圧ローラ19を除く、ガイドローラ16、ダンサーローラ17及びアイドルローラ18の全てがフィルム11を浮上させて搬送するものである場合を例示したが、ガイドローラ16、ダンサーローラ17及びアイドルローラ18のいずれか1つ又は2つがフィルム11を浮上させて搬送するものであっても良く、フィルム11を搬送経路から逸脱させない限り、これらのローラはフィルム11を浮上させて搬送するものでなくても良い。
【符号の説明】
【0053】
10 フィルムの巻取り装置
11 帯状フィルム
12 巻き出し軸(供給部)
13 巻芯(巻取り部)
14 コンデンサ素子
16 ガイドローラ(搬送ローラ)
17 ダンサーローラ(搬送ローラ)
18 アイドルローラ(搬送ローラ)
19 加圧ローラ(搬送ローラ)
23 筒部
24,25 壁部材
30 フィルムのしわ取り装置
31 第1板材(第1部材)
32 第2板材(第2部材)
32b 空気孔
60 フィルムのしわ取り装置
61 円柱状部材(第1部材)
62 第2部材
62d 空気孔
71 補助ローラ
72,73 重合ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に移動する帯状フィルム(11)が沿う又は前記帯状フィルム(11)が掛け回される第1部材(31,61)と、
前記フィルム(11)に所定の間隔を空けて対向して前記第1部材(31,61)とともに前記フィルム(11)を挟み前記フィルム(11)に臨む空気孔(32b,62d)が形成された第2部材(32,62)と、
前記空気孔(32b,62d)からエアを前記帯状フィルム(11)に吹き付けて前記帯状フィルム(11)を前記第1部材(31,61)に押しつけるエア吹き付け手段と
を備えたフィルムのしわ取り装置。
【請求項2】
第1部材(31,61)に沿い又は掛け回されて長手方向に移動する帯状フィルム(11)にエアを吹き付けて前記帯状フィルム(11)を前記第1部材(31,61)に押しつけ、
前記第1部材(31,61)に押しつけられて摺動する前記フィルム(11)の摺動抵抗により前記フィルム(11)に張力を生じさせ、
前記フィルム(11)の張力を前記フィルム(11)に吹き付けるエアの圧力により制御する
ことを特徴とするフィルムの張力調整方法。
【請求項3】
第1部材(31,61)に沿い又は掛け回されて長手方向に移動する帯状フィルム(11)にエアを吹き付けて前記帯状フィルム(11)を前記第1部材(31,61)に押しつけ、
前記フィルム(11)に吹き付けられて前記フィルム(11)の表面に流れるエアにより前記フィルム(11)のしわを伸ばす
ことを特徴とするフィルムのしわ取り方法。
【請求項4】
ボビン又はリールに巻回されたフィルム(11)を送り出す供給部(12)と、
前記供給部(12)から送り出されるフィルム(11)を巻回する巻取り部(13)と、
前記供給部(12)と前記巻取り部(13)の間のフィルム搬送経路に設けられた複数の搬送ローラ(16〜19)と、
前記巻取り部(13)近傍に設けられた請求項1記載のしわ取り装置(30,60)又は請求項2記載の方法に用いる装置と
を備えたフィルムの巻取り装置。
【請求項5】
供給部(12)が一対設けられ、巻取り部(13)は一対の前記供給部(12)からそれぞれ供給されるフィルム(11)を重ね合わせて巻回するように構成され、複数の搬送ローラ(16〜19)が前記巻取り部(13)に巻回された前記フィルム(11)から成るコンデンサ素子(14)の周面に付勢状態で当接する加圧ローラ(19)を含み、
重ね合わされた2枚の前記フィルム(11)を前記巻取り部(13)に巻回される以前に前記加圧ローラ(19)とともに圧縮する補助ローラ(71)又は前記加圧ローラ(19)と別に設けられて重ね合わされた2枚の前記フィルム(11)を前記巻取り部(13)に巻回される以前に圧縮する一対の重合ローラ(72,73)を備えた請求項4記載のフィルムの巻取り装置。
【請求項6】
複数の搬送ローラ(16〜19)の全部又は一部は、外周から吹き出すエアにより掛け回されたフィルム(11)を浮上可能に構成された筒部(23)と、前記筒部(23)の両側に設けられ前記筒部(23)に掛け回されて浮上する前記フィルム(11)の幅方向の移動を制限する壁部材(24,25)とを備える請求項5記載のフィルムの巻取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−66095(P2011−66095A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213902(P2009−213902)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000227537)日特エンジニアリング株式会社 (106)
【Fターム(参考)】