説明

フィルムミラー及びフィルムミラーの製造方法

【課題】簡易な生産設備で製造でき、高い正反射率、優れた耐候性を有するフィルムミラーと、そのフィルムミラーの製造方法を実現する。
【解決手段】光入射側から順に、ポリマー層1、銀反射層2、第1の紫外線非耐性ポリマー層3、粘着層4、第2の紫外線非耐性ポリマー層5を少なくとも有するフィルムミラー10において、フィルムミラー10における光入射側表面から銀反射層2までの厚さ(例えば、ポリマー層1の厚さ)を1μm以上50μm以下にして、粘着層4に紫外線吸収剤を含有させることとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムミラー及びフィルムミラーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の地球温暖化は一層深刻な事態に発展し、将来の人類の生存すら脅かされる可能性がでてきている。その主原因は、20世紀に入りエネルギー源として多量に使用されてきた化石燃料から放出された大気中の二酸化炭素(CO)であると考えられている。従って近い将来、化石燃料をこのまま使い続けることは許されなくなると考えられる。また、他方で、中国、インド、ブラジル等のいわゆる発展途上国の急激な経済成長に伴うエネルギー需用の増大により、かつては無尽蔵と考えられていた石油、天然ガスの枯渇が現実味を帯びてきている。
【0003】
石油、天然ガス等の化石燃料エネルギーに代わる代替エネルギーとしては、現在、バイオマスエネルギー、風力エネルギー、太陽エネルギー等のエネルギーが検討されているが、化石燃料の代替エネルギーとして最も安定しており、かつ量の多い自然エネルギーは、太陽エネルギーであると考えられる。
しかしながら、太陽エネルギーは非常に有力な代替エネルギーであるものの、これを活用する観点からは、(1)太陽エネルギーのエネルギー密度が低いこと、及び(2)太陽エネルギーの貯蔵及び移送が困難であることが問題となると考えられる。
【0004】
これに対して、太陽エネルギーのエネルギー密度が低いという問題は、反射装置で太陽エネルギーを集めることによって解決することが、特許文献1に提案されている。
反射装置は、太陽光による紫外線や熱、風雨、砂嵐等に晒されるため、従来、ガラス製ミラーが用いられてきた。ガラス製ミラーは環境に対する耐久性が高い反面、輸送時に破損してしまうことがあるという問題や、大型のガラス製ミラーになると、かなりの重量となるため、ミラーを設置する架台の強度を持たせる必要があり、プラントの建設費がかさむといった問題などを抱えていた。
更に、破損し易いガラス製ミラーを取り扱う際には、破損部分で怪我をしない様な配慮が必要となる。そして多くの場合、反射装置は屋外に設置されている場合が多く、作業環境(風雨、砂、埃等)による影響もあり、組み付け時や交換時の作業には熟練が要求されている。
【0005】
上記問題を解決するために、ガラス製ミラーを樹脂製の反射シート(反射フィルム)に置き換えることが考案されている。樹脂製の反射シートとしては、例えば、特許文献2に開示されている反射シートが知られている。
ガラス製ミラーを樹脂製の反射シートに置き換えた場合は、破損のトラブルが低減し、その取り扱い性が向上する。更に、反射シートの形状を自在に曲げることが可能であるため、ロール状に巻くこともできるので、連続成膜製法が可能になり、生産効率を高めることができる。
【0006】
一方、樹脂性の反射シートはガラス製ミラーに比べて耐環境性が劣るという欠点がある。特に反射率の高い銀を反射層として選択した場合、銀は320nm近傍の短波長の光を透過するため、反射シートを太陽光に暴露すると銀反射層の下層側のポリマー層が紫外線により劣化してしまう。銀反射層の支持体であるポリマー層が劣化して亀裂や収縮が発生してしまうと、反射ミラーとしての機能を果たさなくなる。そのため、反射シートを屋外で長期に亘って安定使用することが難しかった。
反射シートを太陽光に晒す場合は、耐環境性を克服する必要があるので、反射シートの最表面に紫外線吸収剤入りアクリル樹脂(透明樹脂層)を接着層にて貼り合せる手法が特許文献3に開示されている。しかし、特許文献3に記載されているのは銀反射層の反射面より太陽側にポリマー層、接着層及び厚いアクリルフィルムの3層を有する構成であり、このように銀反射層の反射面よりも太陽側(光入射側)に配置された透明層の総厚が厚いと、その透明樹脂層における光散乱、光吸収によって反射光量が減衰されてしまう。つまり、透明樹脂層の薄膜化と耐光性維持はトレードオフの関係で両立は困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−54577号公報
【特許文献2】特開2007−114325号公報
【特許文献3】特表2009−520174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、簡易な生産設備で製造でき、銀反射層の反射面よりも太陽側に配置された層による光散乱や光吸収を低減することで高い正反射率を有し、それでいて優れた耐候性を有するフィルムミラーと、そのフィルムミラーの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
すなわち、本発明の一の態様は、
光入射側から順に、ポリマー層、銀反射層、第1の紫外線非耐性ポリマー層、粘着層、第2の紫外線非耐性ポリマー層を少なくとも有するフィルムミラーであって、
当該フィルムミラーの光入射側表面から銀反射層までの厚さが、1μm以上50μm以下であり、前記粘着層は、紫外線吸収剤を含有していることを特徴としている。
【0010】
上記構成によって、光入射側表面から銀反射層までの厚さを、1μm以上50μm以上と比較的薄い層厚に抑えることにより、光散乱や光吸収を低減でき、それによって高い正反射率を有することが可能となる。一方で、光入射側表面から銀反射層までの厚さを薄くすることにより、銀反射層に紫外線が到達しやすくなり、銀反射層を透過した紫外線によって銀反射層を支持するポリマー層が劣化する可能性が高まってしまう。
そこで、本発明者は、鋭意研究の結果、銀反射層の光反射とは反対側の層構成を、粘着層を2つの紫外線非耐性ポリマー層で挟み、更に、粘着層に紫外線吸収剤を含有させた構成とすることで、上述のポリマー層の劣化の問題を解決することを見出した。従って、上記構成によって、高い正反射率と耐候性を両立させることが可能となるのである。
【0011】
尚、好ましくは、前記フィルムミラーの光入射側表面から銀反射層までの厚さが、1μm以上20μm以下である。光入射側表面から銀反射層までの厚さが、より薄くなるため、正反射率をより高めることが可能となる。
好ましくは、前記ポリマー層は、腐食防止剤と紫外線吸収剤の少なくとも一方を含有している。これによって耐候性をより高めることが可能となる。
好ましくは、前記粘着層は、前記第1の紫外線非耐性ポリマー層と前記第2の紫外線非耐性ポリマー層を貼り合わせており、その厚さが5μm以上50μm以下である。当該厚さにすることで、充分な量の紫外線吸収剤を粘着層に含有させることが可能となり、耐候性をより高めることが可能となる。
好ましくは、前記粘着層は、アクリル系粘着剤を含有している。
好ましくは、前記第1の紫外線非耐性ポリマー層と前記第2の紫外線非耐性ポリマー層の少なくとも一方は、ポリエチレンテレフタレートを含有している。
好ましくは、前記第1の紫外線非耐性ポリマー層と前記第2の紫外線非耐性ポリマー層は、同一の材料からなる。
好ましくは、前記第2の紫外線非耐性ポリマー層の光入射側とは反対側の面に、基材貼付用粘着層を有する。
【0012】
また、本発明の他の態様は、
第1の紫外線非耐性ポリマー層の一方の面に、銀反射層を蒸着により形成する工程と、
前記銀反射層上に、ポリマー層を形成する工程と、
第1の紫外線非耐性ポリマー層の他方の面に、紫外線吸収剤を含有している粘着層を介して第2の紫外線非耐性ポリマー層を貼り合わせて設ける工程と、
を有するフィルムミラーの製造方法であって、
前記ポリマー層を、当該ポリマー層となる材料を前記銀反射層上に少なくとも1回塗布することによって、1μm以上50μm以下の厚さに形成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高い正反射率、優れた耐候性を有するフィルムミラーを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の太陽熱発電用フィルムミラーの構成の一例を示す概略断面図(a)と、本発明の太陽熱発電用反射装置の構成の一例を示す概略断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る太陽熱発電用フィルムミラーについて詳細について説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0016】
(1)太陽熱発電用フィルムミラーの構成概要
本発明のフィルムミラー10は、光入射側から順に、ポリマー層1と、銀反射層2と、第1の紫外線非耐性ポリマー層3と、粘着層4と、第2の紫外線非耐性ポリマー層5とを少なくとも有している。なお、これらの層の間に他の層を介していてもよいし、それぞれの層が隣接していてもよい。
例えば、銀反射層2と、その銀反射層2を支持する第1の紫外線非耐性ポリマー層3の間にアンカー層を設けてもよい。アンカー層は必須ではないが、アンカー層を具備する態様が好ましい。
また例えば、ポリマー層1の光入射側の面にハードコート層を設けてもよい。
【0017】
ここで、太陽熱発電用のフィルムミラー10の好ましい層構成の一例について、図1(a)を用いて説明する。また、太陽熱発電用反射装置20の概要を、図1(b)を用いて説明する。
フィルムミラー10は、図1(a)に示すように、第1の紫外線非耐性ポリマー層3の一方の面に銀反射層2、ポリマー層1が順に積層されて設けられている。また、第1の紫外線非耐性ポリマー層3の他方の面に粘着層4を介して第2の紫外線非耐性ポリマー層5が設けられている。
特に、本発明のフィルムミラー10において、フィルムミラー10の光入射側表面から銀反射層2までの厚さ(例えば、ポリマー層1の厚さ)が、1μm以上50μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以上20μm以下である。また、本発明のフィルムミラー10において、粘着層4は紫外線吸収剤を含有している。
【0018】
太陽熱発電用反射装置20は、図1(b)に示すように、フィルムミラー10の第2の紫外線非耐性ポリマー層5における粘着層4とは反対面に設けた基材貼付用粘着層6を支持基材7に接合し、フィルムミラー10と支持基材7を貼り合わせてなる反射鏡である。
【0019】
以下に、フィルムミラーの構成要素について説明する。なお、本明細書の記載における「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0020】
(2)紫外線非耐性ポリマー層
第1の紫外線非耐性ポリマー層3と、第2の紫外線非耐性ポリマー層5に用いることができる樹脂材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレンなどが挙げられる。これら樹脂材料をフィルム状やシート状に形成した樹脂フィルム(樹脂シート)を第1の紫外線非耐性ポリマー層3、第2の紫外線非耐性ポリマー層5として使用する。
後述するポリマー層1は50μm以下の厚さに形成した場合、その単体で形状を維持することが難しい場合があるが、紫外線非耐性ポリマー層に使用される樹脂材料は50μm以下の厚さであっても容易に単体で形状が維持できる。そのため、紫外線非耐性ポリマー層は工業的に加工しやすくRoll to Rollという生産手法に非常に適した素材である。但し、紫外線非耐性ポリマー層は、太陽光および太陽光類似光源に晒した場合には光沢度、引張破断伸びが劣化しやすい素材である。
【0021】
本発明において、紫外線非耐性ポリマー層とは、キセノンウェザオメーター(またはキセノンウェザメーター:XWOM)試験機による耐光性試験において、照度60W/m、ブラックパネル温度63℃、湿度30〜60%RHの条件下、1000時間照射を行い、光沢度(測定角度60°)と引張破断伸びのいずれか一方が耐光性試験前と比較して50%以下の数値になった素材・樹脂フィルムを、紫外線非耐性ポリマー層として定義する。なお、キセノンウェザオメーターとしては、例えば、スガ試験機社、ATLAS社などから製造されている試験機を使用できる。
【0022】
この第1の紫外線非耐性ポリマー層3、第2の紫外線非耐性ポリマー層5に用いる樹脂フィルムの製造方法としては、原料樹脂と添加剤を加熱混錬して押出機により溶融押し出しして未延伸フィルムを形成し、その未延伸フィルムを二軸延伸する溶融製膜方法と、溶剤に原料樹脂と添加剤を溶解してなる溶液を支持体上に塗布することで支持体上に塗膜を形成し、その塗膜を乾燥してフィルムを形成する流延製膜方法のいずれかを用いることができる。
【0023】
また、第1の紫外線非耐性ポリマー層3、第2の紫外線非耐性ポリマー層5の表面には、密着性を向上するため、或いは滑り性をよくするための各種機能層が形成されていてもよい。機能層形成方法としては、真空蒸着、ウェットコーティングを用いることができる。
この第1の紫外線非耐性ポリマー層3と第2の紫外線非耐性ポリマー層5は、同一の材料からなるものであってもよいし、異なる材料からなるものであってもよい。なお、第1の紫外線非耐性ポリマー層3と第2の紫外線非耐性ポリマー層5の少なくとも一方は、ポリエチレンテレフタレートを含有していることが好ましい。
【0024】
(3)銀反射層
銀反射層2としては、例えば、銀または銀合金を用いることができる。
銀反射層2は、光を反射させる光反射膜としての役割を果たす。光反射層を銀または銀合金からなる膜とすることにより、ミラーの可視光領域での反射率を高め、入射角による反射率の依存性を低減できる。可視光領域とは、400〜700nmの波長領域を意味する。入射角とは、膜面に対して垂直な線に対する角度を意味する。
この銀反射層2は、湿式、乾式のどちらでも形成することができる。湿式ではコーティング、めっきで形成することが好ましく、乾式では蒸着、特に真空蒸着で形成することが好ましい。
【0025】
銀反射層2に用いる銀合金としては、光反射層の耐久性が向上する点から、金、パラジウム、スズ、ガリウム、インジウム、銅、チタン及びビスマスからなる群から選ばれる一種以上の他の金属(銀以外の金属)と、銀からなる合金が好ましい。他の金属としては、高温耐湿性、反射率の点から、金が特に好ましい。
銀反射層2が銀合金からなる膜である場合、銀は、銀反射層2における銀と他の金属との合計(100原子%)中、90〜99.8原子%が好ましい。また、他の金属は、耐久性の点から0.2〜10原子%が好ましい。
また、銀反射層2の層厚は、60〜300nmが好ましく、80〜200nmが特に好ましい。銀反射層2の層厚を上記範囲とすることにより、光の透過や、表面に凹凸が生じることによる光の散乱等を原因とする可視光領域での反射率の低下を抑えることが可能となる。
【0026】
(4)ポリマー層
ポリマー層1に用いる樹脂材料としては、紫外線による黄変を防止する観点では、例えば、シリコーン、アクリル、ポリオレフィン(特に、シクロオレフィン樹脂)、セルロース、塩化ビニルのいずれかを含む材料であることが好ましい。
これらの中でも、特に耐候性に優れる材料として、シロキサン結合を持ったシリコーン樹脂、または少なくとも二種以上のアクリル系モノマーを共重合したアクリル系共重合体を好適に用いることができる。
【0027】
シリコーン樹脂としては、例えば、トリメトキシシラン(関東化学)、ソルガードNP−730(日本ダクロシャムロック)、トスガード510(東芝シリコーン)、KP−64(信越化学工業)等を採用することができる。
かかるシリコーン樹脂の主成分は、R、R’をメチル基、エチル基等の有機基、Xを0及び自然数とすれば、RSi(OR’)4−Xで表される。
【0028】
アクリル系共重合体としては、具体的には、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートのような側鎖中に官能性基を有しないモノマー(以下、非官能性モノマーという)から選ばれる一種又は二種以上のモノマーを主成分とし、これに2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、等のモノマーから選ばれる一種又は二種以上のモノマーの側鎖中にOHやCOOHなどの官能性基を有するモノマー(以下、官能性モノマーという)の一種又は二種以上を組み合せて、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、塊状重合法等の重合法により共重合させることにより得られる重量平均分子量が4万〜100万、好ましくは10万〜40万のアクリル系共重合体が挙げられる。
中でも、エチルアクリレート、メチルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等の比較的Tgの低いポリマーを与える非官能性モノマーを50〜90質量%、メチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等の比較的Tgの高いポリマーを与える非官能性モノマーを10〜50質量%、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリル酸、イタコン酸等の官能性モノマーを0〜10質量%含有するようなアクリル系重合体が最も好適である。
【0029】
また、本発明のポリマー層1に好適に用いることができるシクロオレフィン樹脂は、脂環式構造を含有する重合体樹脂からなるものである。
好ましいシクロオレフィン樹脂は、環状オレフィンを重合又は共重合した樹脂である。
環状オレフィンとしては、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、エチルテトラシクロドデセン、エチリデンテトラシクロドデセン、テトラシクロ〔7.4.0.110,13.02,7〕トリデカ−2,4,6,11−テトラエンなどの多環構造の不飽和炭化水素及びその誘導体、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン、シクロヘプテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの単環構造の不飽和炭化水素及びその誘導体等が挙げられる。
好ましいシクロオレフィン樹脂は、環状オレフィン以外の単量体を付加共重合したものであってもよい。付加共重合可能な単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテンなどのエチレン又はα−オレフィン、1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどのジエン等が挙げられる。
シクロオレフィン樹脂として、下記のノルボルネン系樹脂も挙げられる。ノルボルネン系樹脂は、ノルボルネン骨格を繰り返し単位として有していることが好ましく、その具体例としては、例えば、特開2003−139950号公報、特開2003−14901号公報、特開2003−161832号公報、特開2003−195268号公報、特開2003−211588号公報、特開2003−211589号公報、特開2003−268187号公報、特開2004−133209号公報、特開2004−309979号公報、特開2005−121813号公報、特開2005−164632号公報、特開2006−72309号公報、特開2006−178191号公報、特開2006−215333号公報、特開2006−268065号公報、特開2006−299199号公報等に記載されたものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。又、これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。具体的には、日本ゼオン(株)製ゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製アートン、三井化学(株)製アペル(APL8008T、APL6509T、APL6013T、APL5014DP、APL6015T)などが好ましく用いられる。
【0030】
本発明においては、ポリマー層1が、熱硬化性樹脂又は紫外線硬化性樹脂を含有することが好ましい。
熱硬化性樹脂としては、各種エポキシ樹脂やエポキシ基含有(メタ)アクリレート、ウレタン変性(メタ)アクリレート等のアクリレート系樹脂を使用することができる。ここで、エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA(BPA)型エポキシ樹脂、ビスフェノールF(BPF)エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらの熱硬化性樹脂の中でも、ビスフェノールA(BPA)型エポキシ樹脂やビスフェノールF(BPF)エポキシ樹脂が好適である。
紫外線硬化性樹脂としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、エポキシアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、テトラメチレングリコールテトラアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の各種アクリレート系樹脂や、前述の熱硬化性樹脂としても使用可能なエポキシ基含有(メタ)アクリレート、ウレタン変性(メタ)アクリレート等のアクリレート系樹脂が挙げられる。また、これらは、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。また、このようなアクリレートの代わりにメタクリレートを使用してもよい。
紫外線硬化性樹脂を使用する場合には、光重合開始剤を添加する必要がある。例えば、ベンゾインエチルエーテル、イソプロピルベンゾインエーテル等のベンゾインエーテル、ベンジルヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のベンジルケタール、ベンゾフェノン、アセトフェノン等のケトン類及びその誘導体、チオキサントン類、ビスイミダゾール類等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。また、これら光重合開始剤に、必要に応じてアミン類、イオウ化合物、リン化合物等の増感剤を任意の比で添加してもよい。
【0031】
ポリマー層1の厚さは、1〜50μmであることが好ましく、より好ましくは1〜20μmである。
ポリマー層1は、腐食防止剤と紫外線吸収剤の少なくとも一方を含有していることが好ましい。更に、ポリマー層1は酸化防止剤を含有してもよい。
ポリマー層1の厚さが1μm以上であれば、ブリードアウトを防ぎ、銀反射層2を腐食から保護するための腐食防止剤を良好に含有することができる。また、ポリマー層1自身を紫外線から保護する目的で紫外線吸収剤、酸化防止剤等を良好に含有することができる。
ポリマー層1が50μm以下、特に20μm以下であれば、ポリマー層1の光吸収、光散乱を最小限にすることができ、反射率低下の影響を軽度にとどめることができる。
【0032】
このポリマー層1は、周知の塗工方式、塗布方式によって形成される。
本発明における塗工方式には、ダイ方式、クローズドエッジダイ方式、リバースロールコート方式、グラビア方式、コンマ方式等を適用することができる。これにより均一な膜厚のポリマー層1が容易に形成できる。
ポリマー層1となる材料を塗布、塗工する際のウェット膜厚としては250〜60μm、塗布液粘度を10〜2000mPa・s、ポリマー溶液の固形分比率が20〜50%とすると乾燥時の膜厚、塗布面の平滑性が好ましいものとなる。また、塗工速度を1〜20m/分とすることで安定した塗布と効率を両立させることが可能となる。塗工速度が早過ぎると品質が悪化し、設備も大掛かりなものとなる。塗工速度が遅すぎると効率が悪い。
なお、ポリマー層1を形成する際、ポリマー層となる材料を銀反射層2上に少なくとも1回塗布、塗工することによって、ポリマー層1を1μm以上50μm以下の厚さに形成する。つまり、ポリマー層1を所望する膜厚に形成するために、複数回の塗布、塗工工程および乾燥工程を繰り返すことが好ましい。
【0033】
また、ポリマー層塗工の後工程に別の塗工材料の塗布工程及び乾燥工程を行ってもよい。例えば、ハードコート材料、増反射材料などを塗布することにより、それぞれ傷付き防止、反射率向上による発電効率の向上などを目的とした各種機能層を設けることが可能となる。
【0034】
(4−1)腐食防止剤
銀反射層2の腐食を防止する目的でポリマー層1に含有する腐食防止剤としては、アミン類及びその誘導体、ピロール環を有する化合物、トリアゾール環を有する化合物、ピラゾール環を有する化合物、チアゾール環を有する化合物、イミダゾール環を有する化合物、インダゾール環を有する化合物、銅キレート化合物類、チオ尿素類、メルカプト基を有する化合物、ナフタレン系の少なくとも一種又はこれらの混合物から選ばれることが望ましい。
アミン類及びその誘導体としては、例えば、エチルアミン、ラウリルアミン、トリ−n−ブチルアミン、o−トルイジン、ジフェニルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−N−ジメチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、アセトアミド、アクリルアミド、ベンズアミド、p−エトキシクリソイジン、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジシクロヘキシルアンモニウムサリシレート、モノエタノールアミンベンゾエート、ジシクロヘキシルアンモニウムベンゾエート、ジイソプロピルアンモニウムベンゾエート、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、シクロヘキシルアミンカーバメイト、ニトロナフタレンアンモニウムナイトライト、シクロヘキシルアミンベンゾエート、ジシクロヘキシルアンモニウムシクロヘキサンカルボキシレート、シクロヘキシルアミンシクロヘキサンカルボキシレート、ジシクロヘキシルアンモニウムアクリレート、シクロヘキシルアミンアクリレート等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
ピロール環を有する物としては、例えば、N−ブチル−2,5−ジメチルピロール,N−フェニル−2,5ジメチルピロール、N−フェニル−3−ホルミル−2,5−ジメチルピロール,N−フェニル−3,4−ジホルミル−2,5−ジメチルピロール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
トリアゾール環を有する化合物としては、例えば、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−ヒドロキシ−1,2,4−トリアゾール、3−メチル−1,2,4−トリアゾール、1−メチル−1,2,4−トリアゾール、1−メチル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4−メチル−1,2,3−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、4,5,6,7−テトラハイドロトリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−メチル−1,2,4−トリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
ピラゾール環を有する化合物としては、例えば、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾロン、ピラゾリジン、ピラゾリドン、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−ヒドロキシピラゾール、4−アミノピラゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
チアゾール環を有する化合物としては、例えば、チアゾール、チアゾリン、チアゾロン、チアゾリジン、チアゾリドン、イソチアゾール、ベンゾチアゾール、2−N,N−ジエチルチオベンゾチアゾール、P−ジメチルアミノベンザルロダニン、2−メルカプトベンゾチアゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
イミダゾール環を有する化合物としては、例えば、イミダゾール、ヒスチジン、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5ジヒドロキシメチルイミダゾール、4−フォルミルイミダゾール、2−メチル−4−フォルミルイミダゾール、2−フェニル−4−フォルミルイミダゾール、4−メチル−5−フォルミルイミダゾール、2−エチル−4−メチル−5−フォルミルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−4−フォルミルイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
インダゾール環を有する化合物としては、例えば、4−クロロインダゾール、4−ニトロインダゾール、5−ニトロインダゾール、4−クロロ−5−ニトロインダゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
銅キレート化合物類としては、例えば、アセチルアセトン銅、エチレンジアミン銅、フタロシアニン銅、エチレンジアミンテトラアセテート銅、ヒドロキシキノリン銅等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
チオ尿素類としては、例えば、チオ尿素、グアニルチオ尿素等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
メルカプト基を有する化合物としては、すでに上記に記載した材料も加えれば、メルカプト酢酸、チオフェノール、1,2−エタンジオール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、1−メチル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、グリコールジメルカプトアセテート、3‐メルカプトプロピルトリメトキシシラン等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
ナフタレン系としては、チオナリド等が挙げられる。
尚、腐食防止剤の含有量は、ポリマー層1に対して0.1〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜15質量%、さらに好ましくは3〜10質量%である。
【0035】
(4−2)紫外線吸収剤
ポリマー層1の劣化を防止する目的で含有する紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ太陽光利用の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。
本発明に用いられる紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、トリアジン系化合物等を挙げることができるが、ベンゾフェノン系化合物や着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号、同8−337574号公報記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号、特開2003−113317号公報記載の高分子紫外線吸収剤を用いてもよい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例として、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’ ’,6’ ’−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(2−オクチルオキシカルボニルエチル)−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−(1−メチル−1−フェニルエチル)−5’−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。
ベンゾフェノン系化合物の具体例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
また、市販品として、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)900、チヌビン(TINUVIN)928、チヌビン(TINUVIN)360(いずれもチバ・ジャパン社製)、LA31(ADEKA社製)、RUVA−100(大塚化学製)が挙げられる。
なお、これら紫外線吸収剤は、銀反射層2の劣化を防止する目的でポリマー層1に含有するようにしてもよい。
また、これら紫外線吸収剤は、後述する粘着層4も含有する添加剤である。
尚、紫外線吸収剤の含有量は、ポリマー層1に対して0.1〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜15質量%、さらに好ましくは3〜10質量%である。
【0036】
(4−3)酸化防止剤
ポリマー層1の劣化を防止する目的で含有する酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、チオール系酸化防止剤及びホスファイト系酸化防止剤等を挙げることができる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス−〔メチレン−3−(3’、5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリス(3’、5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコールビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネー〕、3,9−ビス[1,1−ジ−メチル−2−〔β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−2,4,8,10−テトラオキオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が挙げられる。特に、フェノール系酸化防止剤としては、分子量が550以上のものが好ましい。
チオール系酸化防止剤としては、例えば、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)等を挙げられる。
ホスファイト系酸化防止剤としては、例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス−(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)−ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレン−ジホスホナイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
【0037】
また、上記酸化防止剤とともに、下記の光安定剤を用いることもできる。
ヒンダードアミン系の光安定剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、1−メチル−8−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−セバケート、1−[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2、6,6−テトラメチルピペリジン、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタン−テトラカルボキシレート、トリエチレンジアミン、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン等が挙げられる。
その他ニッケル系紫外線安定剤として、〔2,2’−チオビス(4−t−オクチルフェノレート)〕−2−エチルヘキシルアミンニッケル(II)、ニッケルコンプレックス−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル・リン酸モノエチレート、ニッケル・ジブチル−ジチオカーバメート等も使用することが可能である。
特にヒンダードアミン系の光安定剤としては、3級のアミンのみを含有するヒンダードアミン系の光安定剤が好ましく、具体的には、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、又は1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノール/トリデシルアルコールと1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸との縮合物が好ましい。
【0038】
なお、ポリマー層1に含有する酸化防止剤、安定剤は、銀反射層2の劣化を防止する目的でポリマー層1に含有するようにしてもよい。
また、これら酸化防止剤、安定剤は、後述する粘着層4に含有してもよい。
【0039】
(5)粘着層
粘着層4に用いる材料としては、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、2液混合付加型のシリコーン樹脂、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリ酢酸ビニル系粘着剤、アクリル系粘着剤、ニトリルゴム、ドライラミネート剤、ウェットラミネート剤、ヒートシール剤、ホットメルト剤などを挙げることができる。なかでもアクリル系粘着剤を含有していることが好ましい。
粘着層4の粘着力としては、第1の紫外線非耐性ポリマー層3と粘着層4との界面の粘着力は5N/25mm以上(好ましくは10N/25mm以上)であり、第2の紫外線非耐性ポリマー層5と粘着層4との界面の粘着力は1〜10N/25mm(好ましくは2〜5N/25mm)である。紫外線非耐性ポリマー層(3、5)と粘着層4との界面の粘着力が1N/25mmより小さいと、層間の界面で自然剥離が発生する場合があるので好ましくない。
【0040】
粘着層4を第1の紫外線非耐性ポリマー層3に形成するラミネート方法は特に制限されず、例えばRoll to Roll方式で連続的に行うことが経済性及び生産性の点から好ましい。
粘着層4の厚さは通常5μm以上50μm以下の範囲から選ばれることが好ましい。当該範囲にすることによって、充分な粘着力を得つつ、溶剤の残留も防ぎ、乾燥も短時間で行えるため生産効率を良好にできる。
【0041】
特に、本発明に係るフィルムミラー10の粘着層4は、紫外線吸収剤を含有している。
粘着層4が紫外線吸収剤を含有していることで、粘着層4の下層側となる第2の紫外線非耐性ポリマー層5の光劣化を防止することができる。
そして、粘着層4に保護された第2の紫外線非耐性ポリマー層5が光劣化せずに、その形状を長期に亘って維持することで、第2の紫外線非耐性ポリマー層5は粘着層4を介して第1の紫外線非耐性ポリマー層3を下支えするように保持することができ、その第1の紫外線非耐性ポリマー層3の光入射側に形成された銀反射層2の光反射面を良好に維持することができる。
つまり、屋外環境下での紫外線暴露に対して、粘着層4の下層側の第2の紫外線非耐性ポリマー層5の劣化が防止され、第2の紫外線非耐性ポリマー層5にクラックや剥がれなどの発生を抑えることで、銀反射層2の光反射面を良好に維持し、より多くの太陽光を反射することができるので、ミラー単位面積あたりの発電効率を高めることが可能になる。
【0042】
なお、粘着層4が含有する紫外線吸収剤は、上記したポリマー層1に含有する紫外線吸収剤と同様であるので、ここでは詳述しない。
【0043】
(6)アンカー層
本発明のフィルムミラーにおいては、第1の紫外線非耐性ポリマー層3と銀反射層2との密着性を向上させる観点から、第1の紫外線非耐性ポリマー層3と銀反射層2の間にアンカー層を設けることが好ましい。
アンカー層に使用する樹脂としては、密着性の他、耐熱性及び平滑性の条件を満足するものであれば特に制限はなく、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体系樹脂等の単独又はこれらの混合樹脂が使用できる。なかでも耐候性の点からポリエステル系樹脂とメラミン系樹脂の混合樹脂が好ましく、さらにイソシアネート等の硬化剤を混合した熱硬化性樹脂とすればより好ましい。
アンカー層の厚さは、密着性、平滑性、金属反射層の反射率等の観点から、0.01〜3μmが好ましく、より好ましくは0.1〜1μmである。
アンカー層の形成方法は、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法等、従来公知の湿式コーティング方法が使用できる。
【0044】
(7)他の構成層
本発明のフィルムミラーにおいては、必要に応じて下記の示す機能層を有していてもよい。
【0045】
(耐傷性易滑層)
本発明のフィルムミラーにおいては、ミラーの最外層として、耐傷性易滑層(ハードコート層)を設けることができる。この耐傷性易滑層は傷防止のために設けられる。
耐傷性易滑層は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、有機シリケート化合物、シリコーン系樹脂などで構成することができる。特に、硬度と耐久性などの点で、シリコーン系樹脂やアクリル系樹脂が好ましい。さらに、硬化性、可撓性及び生産性の点で、活性エネルギー線硬化性のアクリル系樹脂、又は熱硬化性のアクリル系樹脂からなるものが好ましい。
活性エネルギー線硬化性のアクリル系樹脂又は熱硬化性のアクリル系樹脂とは、重合硬化成分として多官能アクリレート、アクリルオリゴマーあるいは反応性希釈剤を含む組成物である。その他に必要に応じて光開始剤、光増感剤、熱重合開始剤あるいは改質剤等を含有しているものを用いてもよい。
アクリルオリゴマーとは、アクリル系樹脂骨格に反応性のアクリル基が結合されたものを始めとして、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレートなどであり、また、メラミンやイソシアヌール酸などの剛直な骨格にアクリル基を結合したものなども用いられうる。
また、反応性希釈剤とは、塗工剤の媒体として塗工工程での溶剤の機能を担うと共に、それ自体が一官能性あるいは多官能性のアクリルオリゴマーと反応する基を有し、塗膜の共重合成分となるものである。
市販されている多官能アクリル系硬化塗料としては、三菱レイヨン株式会社(商品名“ダイヤビーム”シリーズなど)、長瀬産業株式会社(商品名“デナコール”シリーズなど)、新中村株式会社(商品名“NKエステル”シリーズなど)、DIC株式会社(商品名“UNIDIC”シリーズなど)、東亜合成化学工業株式会社(商品名“アロニックス”シリーズなど)、日本油脂株式会社(商品名“ブレンマー”シリーズなど)、日本化薬株式会社(商品名“KAYARAD”シリーズなど)、共栄社化学株式会社(商品名“ライトエステル”シリーズ、“ライトアクリレート”シリーズなど)などの製品を利用することができる。
本発明において、耐傷性易滑層中には、本発明の効果が損なわれない範囲で、さらに各種の添加剤を必要に応じて配合することができる。例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤などの安定剤、界面活性剤、レベリング剤及び帯電防止剤などを用いることができる。レベリング剤は、特に、耐傷性易滑層を塗工する際、表面凹凸低減に効果的である。レベリング剤としては、例えば、シリコーン系レベリング剤として、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体(例えば、東レダウコーニング(株)製SH190)が好適である。
【0046】
(犠牲防食層)
本発明のフィルムミラーには、犠牲防食層を設けることができる。本発明でいう犠牲防食層とは、金属から構成される金属反射層(銀反射層2)を犠牲防食により保護する層のことであり、犠牲防食層を金属反射層の裏面と基材(例えば、第1の紫外線非耐性ポリマー層3)との間に配置することにより、金属からなる金属反射層の耐食性を向上させることができる。本発明において、犠牲防食層としては、銀よりもイオン化傾向の高い銅が好ましく、銅の犠牲防食層は、銀から構成される金属反射層の下に設けることによって、銀の劣化を抑制することができる。
【0047】
(8)太陽熱発電用反射装置
太陽熱発電用反射装置20は、図1(b)に示すように、少なくともフィルムミラー10と、支持基材7とから構成される。太陽熱発電用反射装置20は、フィルムミラー10と支持基材7とを貼付するための基材貼付用粘着層6を有している。なお、基材貼付用粘着層6は、太陽熱発電用反射装置20の構成要素であるとともにフィルムミラー10の構成要素でもあって、フィルムミラー10が備える機能層とされることもある。
【0048】
(8−1)基材貼付用粘着層
太陽熱発電用反射装置20において支持基材7とフィルムミラー10を接着するための基材貼付用粘着層6としては、特に制限されず、例えばドライラミネート剤、ウェットラミネート剤、ヒートシール剤、ホットメルト剤などを用いることができる。また、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ニトリルゴムなどを用いてもよい。また、粘着層4に用いたものと同じ材料であってもよい。
フィルムミラー10の第2の紫外線非耐性ポリマー層5に基材貼付用粘着層6を設けるラミネート方法は特に制限されず、例えばロール式で連続的に行う方法が経済性及び生産性の点から好ましい。
【0049】
(8−2)支持基材
太陽熱発電用反射装置20の支持基材7としては、例えば、鋼板、銅板、アルミニウム板、アルミニウムめっき鋼板、アルミニウム系合金めっき鋼板、銅めっき鋼板、錫めっき鋼板、クロムめっき鋼板、ステンレス鋼板などの金属材料を好ましく用いることができる。また、樹脂やセラミック材料を用いてもよい。本発明においては、特に耐食性の良好なめっき鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板などを用いることが好ましい。
これらの支持基材7の厚みは、取扱性、熱伝導性、熱容量等の観点から、0.05mm〜3mm程度が好ましい。
【0050】
この太陽熱発電用反射装置20を、太陽光を集光する目的の太陽熱発電用ミラーとして用いる場合、反射装置の形状を樋状(半円筒状)として、その半円の中心部分に内部に流体を有する筒状部材を設け、筒状部材に太陽光を集光させることで内部の流体を加熱し、その熱エネルギーを変換して発電する形態が一形態として挙げられる。
また、平板状の反射装置を複数個所に設置し、それぞれの反射装置で反射された太陽光を一枚の反射鏡(中央反射鏡)に集光させて、反射鏡により反射して得られた熱エネルギーを発電部で変換することで発電する形態も一形態として挙げられる。特に後者の形態においては、用いられる反射装置に高い正反射率が求められる為、本発明の太陽熱発電用のフィルムミラー10が特に好適に用いられる。
【0051】
(9)フィルムミラー及び太陽熱発電用反射装置の製造方法
フィルムミラー10、太陽熱発電用反射装置20の製造方法の一例を説明する。
まず、所定の樹脂材料をフィルム状に形成してなる第1の紫外線非耐性ポリマー層3の一方の面に、銀反射層2を真空蒸着により形成する。
次いで、その銀反射層2上に、ポリマー層となる材料を少なくとも1回塗布することによって、厚さ1μm以上50μm以下となるポリマー層1を形成する。
次いで、第1の紫外線非耐性ポリマー層3の他方の面に、紫外線吸収剤を含有している粘着層4をラミネート方式で形成する。その粘着層4に、所定の樹脂材料をフィルム状に形成してなる第2の紫外線非耐性ポリマー層5を貼り合わせることで、フィルムミラー10を製造することができる。
更に、フィルムミラー10における第2の紫外線非耐性ポリマー層5の下面に、基材貼付用粘着層6をラミネート方式で設ける。その基材貼付用粘着層6によって支持基材7をフィルムミラー10に貼り付けるようにして、太陽熱発電用反射装置20を製造することができる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明について実施例および比較例を用いて具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の実施例や比較例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0053】
[比較例1]
(ミラーNo.1の作製)
第1の紫外線非耐性ポリマー層3として、二軸延伸ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、厚さ25μm)を用いた。この第1の紫外線非耐性ポリマー層3の一方の面に、光反射層として真空蒸着法によって厚さ80nmの銀反射層2を形成した。
また、第1の紫外線非耐性ポリマー層3の銀反射層2側とは反対側の面にアクリル系粘着剤のエスダイン#7851(積水化学工業製)を15μm厚に塗布して粘着層4を形成し、その粘着層4に第2の紫外線非耐性ポリマー層5(ポリエチレンテレフタレート、厚さ25μm)を貼着した。粘着層4には紫外線吸収剤のチィヌビン1577(BASF製)を固形分に対して5%混合した。
さらに、銀反射層2の太陽光照射面側に紫外線吸収剤のチィヌビン477(BASF製)と銀の腐食防止剤としてのグリコールジメルカプトアセテートをそれぞれ固形分に対して5%含むアクリル樹脂BR−85(三菱レイヨン製)の酢酸メチル溶液をウェット膜厚5μmにグラビアコーターで塗布し、乾燥温度80℃×乾燥時間10秒の処理をして、ドライ膜厚0.1μmのポリマー層1を形成し、フィルムミラー10を作製した。
このフィルムミラー10の第2の紫外線非耐性ポリマー層5に、粘着剤SZ7543(日本カーバイド製)をウェット膜厚125μmにコンマコーターで塗布し、乾燥温度80℃×乾燥時間120秒の処理をして、ドライ膜厚25μmの基材貼付用粘着層6を形成した。その基材貼付用粘着層6によって、3mm厚のアルミニウム板である支持基材7を貼り付け、比較例1のミラーとして太陽熱発電用反射装置20を作製した。
【0054】
[比較例2]
(ミラーNo.2の作製)
銀反射層2の太陽光照射面側に塗布するアクリル樹脂の酢酸メチル溶液のドライ膜厚を90μmにした以外は、比較例1のミラーNo.1の作成方法と同様の方法で、比較例2のミラーとして太陽熱発電用反射装置を作製した。
【0055】
[比較例3]
(ミラーNo.3の作製)
銀反射層2の太陽光照射面側に塗布するアクリル樹脂の酢酸メチル溶液のドライ膜厚を30μmにしたことと、粘着層4に紫外線吸収剤を混合しない以外は、比較例1のミラーNo.1の作成方法と同様の方法で、比較例3のミラーとして太陽熱発電用反射装置を作製した。
【0056】
[実施例1]
(ミラーNo.4の作製)
銀反射層2の太陽光照射面側に塗布するアクリル樹脂の酢酸メチル溶液のドライ膜厚を1μmにした以外は、比較例1のミラーNo.1の作成方法と同様の方法で、実施例1のミラーとして太陽熱発電用反射装置20を作製した。
【0057】
[実施例2]
(ミラーNo.5の作製)
銀反射層2の太陽光照射面側に塗布するアクリル樹脂の酢酸メチル溶液のドライ膜厚を30μmにした以外は、比較例1のミラーNo.1の作成方法と同様の方法で、実施例2のミラーとして太陽熱発電用反射装置20を作製した。
【0058】
[実施例3]
(ミラーNo.6の作製)
銀反射層2の太陽光照射面側に塗布するアクリル樹脂の酢酸メチル溶液のドライ膜厚を50μmにした以外は、比較例1のミラーNo.1の作成方法と同様の方法で、実施例3のミラーとして太陽熱発電用反射装置20を作製した。
【0059】
[太陽熱発電用反射装置(フィルムミラー)の評価]
上記のように作製した太陽熱発電用反射装置(比較例1〜3、実施例1〜3)について、下記の測定方法に従って、銀の腐食、反射率について評価した。
【0060】
[銀の腐食の測定]
JIS−K8943に規定されている硫化アンモニウムを用いて、JIS−H8623付属書に記載の方法に沿って試験を行った。ミラー表面に硫化アンモニウムを0.5mL滴下して24時間放置した後に、黒色に変化した面積の割合を測定した。黒色の面積が小さいほど良好な腐食耐性を持つ。
下記の基準に従って、面積の割合を○、△、×の3段階で評価した。
○:黒色変色部面積割合が10%未満
△:黒色変色部面積割合が10%以上20%未満
×:黒色変色部面積割合が20%以上
【0061】
[初期の5度正反射率の測定(劣化試験前反射率)]
上記作製したミラーの太陽光入射面側における5度正反射率を測定した。日立ハイテクノロジーズ社製の分光光度計U−4100(固体試料測定システム)を使って、入射角5度の基準サンプルに対する相対反射率測定を行なった。波長範囲は250〜2500nmで測定し、部分的に反射率が落ちる波長範囲が無いかどうかを確認した。可視光領域(400〜800nm)における反射率を平均し、これを5度正反射率とした。
下記の基準に従って、反射率を○、△、×の3段階で評価した。
○:可視光領域反射率平均が90%以上
△:可視光領域反射率平均が90%未満80%以上
×:可視光領域反射率平均が80%未満
【0062】
[耐候性の評価(劣化試験後反射率)]
上記作製したミラーを、温度85℃、相対湿度85%の環境下で30日間放置した後、ミラーの太陽光入射面側に対しキセノンランプ照射(スガ試験機SX75を使用、放射強度180W/m×1000時間)を行った。
このキセノンランプ照射後に上記と同様の方法で5度正反射率を測定した。上記の初期の5度正反射率に対し、変動幅が少ないほど耐候性に優れていることを表す。
下記の基準に従って、反射率の変動を○、△、×の3段階で評価した。
○:反射率の変動幅が5%未満である。
△:反射率の変動幅が5%以上10%未満である。
×:反射率の変動幅が10%以上である。
【0063】
各項目についての評価結果を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
表1に示した評価結果から明らかなように本発明に係る実施例の各種特性は、比較例に対して優れていることが分かる。
比較例1では、ポリマー層1の厚さが0.1μmと薄いため、そのポリマー層1中に紫外線吸収剤や腐食防止剤を好適に担持できなかったこと、及びポリマー層1の薄さそのものによる硫化物の透過により、銀反射層2に腐食が生じてしまった。
比較例2では、ポリマー層1の厚さが90μmと厚いため、光散乱が起こるなどしたことにより、反射率が悪化してしまった。
比較例3では、粘着層4に紫外線吸収剤を含有しなかったため、第2の紫外線非耐性ポリマー層5に光劣化が生じるという、耐侯性の悪化が確認された。
これに対し、実施例1から実施例3のように、粘着層4に紫外線吸収剤を含有するとともに、ポリマー層1の厚さを1μm〜50μmとすることにより、銀反射層2に腐食が生じず、良好な反射率を有するフィルムミラー10、太陽熱発電用反射装置20を得ることができた。
【0066】
以上のように、本発明に係るフィルムミラー10(太陽熱発電用反射装置20)は、銀反射層2の光入射側に設けたポリマー層1が、1μm〜50μmの厚さを有しているため、ポリマー層1中に紫外線吸収剤や腐食防止剤を良好に担持できるとともに、光散乱を抑えて高い反射率を得ることができるので、長期に亘って高い正反射率を有し、優れた耐候性を有する反射ミラーとして使用することができる。
【0067】
また、フィルムミラー10のポリマー層1を塗布により形成した厚みは1μm〜50μmと比較的薄いものであるが、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる第1の紫外線非耐性ポリマー層3、第2の紫外線非耐性ポリマー層5を用いることで、フィルムミラー10に自己支持性を付与することができ、フィルムミラー10を好適に反射ミラーとして使用することが可能になる。特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる第1の紫外線非耐性ポリマー層3、第2の紫外線非耐性ポリマー層5を用いることで、Roll to Roll式の生産手法でフィルムミラー10を製造することができるので、簡易な生産設備でフィルムミラー10の製造が可能になる。
【0068】
また、第2の紫外線非耐性ポリマー層5は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなり、紫外線に対する耐性が劣る材料であるが、粘着層4が紫外線吸収剤を含有していることで、粘着層4の下層側となる第2の紫外線非耐性ポリマー層5の光劣化を防止することができる。
そして、粘着層4に保護された第2の紫外線非耐性ポリマー層5が光劣化せずに、その形状を長期に亘って維持することで、第2の紫外線非耐性ポリマー層5は粘着層4を介して第1の紫外線非耐性ポリマー層3を下支えするように保持することができ、その第1の紫外線非耐性ポリマー層3の光入射側に形成された銀反射層2の光反射面を良好に維持することができる。その結果、長期に亘って高い正反射率を有し、優れた耐候性を有する反射ミラーとして使用することができる。
【0069】
なお、本発明の適用は上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 ポリマー層
2 銀反射層
3 第1の紫外線非耐性ポリマー層
4 粘着層
5 第2の紫外線非耐性ポリマー層
6 基材貼付用粘着層
7 支持基材
10 フィルムミラー
20 太陽熱発電用反射装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光入射側から順に、ポリマー層、銀反射層、第1の紫外線非耐性ポリマー層、粘着層、第2の紫外線非耐性ポリマー層を少なくとも有するフィルムミラーであって、
当該フィルムミラーの光入射側表面から銀反射層までの厚さが、1μm以上50μm以下であり、
前記粘着層は、紫外線吸収剤を含有していることを特徴とするフィルムミラー。
【請求項2】
前記フィルムミラーの光入射側表面から銀反射層までの厚さが、1μm以上20μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のフィルムミラー。
【請求項3】
前記ポリマー層は、腐食防止剤と紫外線吸収剤の少なくとも一方を含有していることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルムミラー。
【請求項4】
前記粘着層は、前記第1の紫外線非耐性ポリマー層と前記第2の紫外線非耐性ポリマー層を貼り合わせており、その厚さが5μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のフィルムミラー。
【請求項5】
前記粘着層は、アクリル系粘着剤を含有していることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のフィルムミラー。
【請求項6】
前記第1の紫外線非耐性ポリマー層と前記第2の紫外線非耐性ポリマー層の少なくとも一方は、ポリエチレンテレフタレートを含有していることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のフィルムミラー。
【請求項7】
前記第1の紫外線非耐性ポリマー層と前記第2の紫外線非耐性ポリマー層は、同一の材料からなることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載のフィルムミラー。
【請求項8】
前記第2の紫外線非耐性ポリマー層の光入射側とは反対側の面に、基材貼付用粘着層を有することを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載のフィルムミラー。
【請求項9】
第1の紫外線非耐性ポリマー層の一方の面に、銀反射層を蒸着により形成する工程と、
前記銀反射層上に、ポリマー層を形成する工程と、
第1の紫外線非耐性ポリマー層の他方の面に、紫外線吸収剤を含有している粘着層を介して第2の紫外線非耐性ポリマー層を貼り合わせて設ける工程と、
を有するフィルムミラーの製造方法であって、
前記ポリマー層を、当該ポリマー層となる材料を前記銀反射層上に少なくとも1回塗布することによって、1μm以上50μm以下の厚さに形成することを特徴とするフィルムミラーの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−242714(P2012−242714A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114401(P2011−114401)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】