説明

フィルム及びその製造方法

【課題】同一基材上でクリーニングと機能層の形成及び処理を行なうことができ、生産性の高いフィルム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】フィルム10は、基材Bと、基材Bの表面に形成された機能層12Aと、基材Bの搬送方向の先端部の機能層が形成されてない領域に形成されたクリーニング層12Bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学素子、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの表示装置、半導体装置、薄膜太陽電池など、各種の装置に、ガスバリアフィルム、保護フィルム、光学フィルタや反射防止フィルム等の光学フィルムが利用されている。
【0003】
光学フィルムは、一般的に、ロール・ツー・ロールの方式により製造される。例えば、合成樹脂性の長尺基材を巻き回したロールから長尺基材を送出し、長尺基材を搬送ローラで移送しながら長尺基材上に塗布液を塗布し、塗布液を硬膜させることで長尺基材上に機能層を形成し、その後長尺基材を巻き取ることにより製造される(特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−343505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、画像表示装置の大型化、高微細化に伴い、各種の光学フィルム上に付着しているゴミ、異物などの低減が求められている。
【0005】
機能層への搬送ローラからの異物付着を防止するため、全ての搬送ロールを手作業で掃除し、処理に先立ってクリーニング用PETを搬送する方法が適用されている。
【0006】
しかしながら、上述の方法では非常に時間が掛かる作業であるため、生産性の観点から問題がある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、同一基材上でクリーニングと機能層の形成及び処理を行なうことができ、生産性の高いフィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明のフィルムは、長尺基材と、前記長尺基材の搬送方向の先端部の表面に形成されたクリーニング層と、前記長尺基材の表面で、前記クリーニング層が形成されていない領域に形成された機能層を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明のフィルムは、同一の長尺基材上に、搬送方向の先端部の表面に形成されたクリーニング層と機能層を備えている。クリーニング層を先端にして、フィルムを、塗布機等を備える成膜装置内を搬送させることで、クリーニング層により搬送ローラに付着した異物を除去することができる。クリーニング層により異物を除去した後に、機能層が通過する。製品となる機能層にダメージを与えることなく、フィルムを搬送し、また、機能層に対して各種の処理を施すことができる。本発明のフィルムによれば、同一基材上でクリーニングと機能層への処理を行なうことができ、クリーニングに伴う人的、時間的ロスを少なくすることができる。
【0010】
本発明のフィルムは、前記発明において、前記クリーニング層と前記機能層が同一組成であり、かつ前記クリーニング層と前記機能層が異なる成膜条件で形成されることが好ましい。
【0011】
クリーニング層と前記機能層が同一組成であり、成膜条件を異ならせることで形成されているので、長尺基材上で連続してクリーニング層と機能層を形成することができる。
【0012】
本発明のフィルムは、前記発明において、前記クリーニング層と前記機能層が、放射線硬化性のモノマー又はオリゴマーを含むことが好ましい。
【0013】
放射線硬化性のモノマー又はオリゴマーを含んでいるので、放射線の強度を変化させることで、長尺基材上に容易にクリーニング層と機能層を形成することができる。
【0014】
前記目的を達成するために、本発明のフィルムの製造方法は、長尺基材を送り出す工程と、前記長尺基材に塗布液を塗布する工程と、前記塗布液に対して第1の成膜条件を施すことでクリーニング層を形成する工程と、前記塗布液に対して第1の成膜条件と異なる第2の成膜条件を施すことで機能層を形成する工程と、前記長尺基材を巻き取る工程と、を備えることを特徴とする。
【0015】
上述の方法によれば、同一基材上にクリーニング層と機能層を容易に形成することができる。
【0016】
本発明のフィルムの製造方法は、前記発明において、前記機能層を形成する工程後に、前記塗布液に対して第1の成膜条件を施すことでクリーニング層を形成する工程を含むことが好ましい。
【0017】
機能層を形成する工程の後に、クリーニング層を形成する工程を備えているので、フィルムの両端にクリーニング層が形成される。フィルムは、巻き取ってロールにした後、再度ロールから引き取られて処理され、他の層が積層されることがある。つまり、フィルムにおいて、両端の何れもが次の工程での先端になり得る。したがって、長尺基材上に複数の層を積層する場合、両端にクリーニング層を設けることで、どの工程においても、機能層が処理される前に異物を除去することができる。
【0018】
本発明のフィルムの製造方法は、前記発明において、前記塗布液が、放射線硬化性のモノマー又はオリゴマーを含むことが好ましい。
【0019】
本発明のフィルムの製造方法は、前記発明において、前記第1の成膜条件と第2の成膜条件の異なる条件として放射線の強度を含み、前記第1の成膜条件下での放射線強度が前記第2の成膜条件下での放射線強度より弱いことが好ましい。
【0020】
放射線の強度を変化させることで、同一長尺基材上に容易にクリーニング層と機能層を形成することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、同一基材上でクリーニングと機能層の形成及び処理を行なうことができ、生産性の高いフィルム及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。本発明は以下の好ましい実施の形態により説明されるが、本発明の範囲を逸脱すること無く、多くの手法により変更を行うことができ、本実施の形態以外の他の実施の形態を利用することができる。従って、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。また、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を含む範囲を意味する。
【0023】
図1は、本発明に係るフィルムの概念図を示す。図1に示すように、フィルム10は、長尺の基材B(フィルム原反)と、基材Bの表面に形成された所定のポリマーを主成分とする機能層12Aと、基材Bの両端に形成されたクリーニング層12Bを備えている。
【0024】
本発明において、基材Bには、特に限定はなく、PETフィルム等の各種の樹脂フィルム、アルミニウムシートなどの各種の金属シートなど、機能層12Aとクリーニング層12Bの成膜が可能なものであれば、ガスバリアフィルム、光学フィルム、保護フィルムなどの各種の機能性フィルムに利用されている各種の基材(ベースフィルム)が、全て利用可能である。
【0025】
機能層12Aは、例えば、この機能層12A上に積層される無機材料からなる薄膜に対するプライマー層としての機能を備えることができる。機能層12Aにより、基材Bと薄膜の密着性を向上させることができる。また、機能層12Aは緩衝層としての機能を備えている。機能層12Aの機能は、上述の機能に限定されることなく、例えば、光学補償層や、反射防止層の機能を備えるものであっても良い。
【0026】
一方、クリーニング層12Bは、粘着性を有する層であって、搬送ローラを通過した際に、搬送ローラ上の異物を捕集し、搬送ローラから異物を除去するものであれば良い。クリーニング層12Bの粘着力は、0.02〜0.5N/25mmの範囲であることが好ましい。
【0027】
フィルム10では、クリーニング層12Bが搬送方向の先端となるよう搬送され、フィルム10の機能層12Aに対して各種の処理がなされる。クリーニング層12Bによる異物除去後であるので、機能層12Aに異物が付着するのを防止することができる。
【0028】
機能層12Aとクリーニング層12Bは同一組成であることが好ましい。これらの具体的材料として、放射線硬化性のモノマー又はオリゴマーを主成分とする膜である。具体的には、使用されるモノマー又はオリゴマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有し、光の照射によって付加重合するモノマー又はオリゴマーであることが好ましい。そのようなモノマー及びオリゴマーとしては、分子中に少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上の化合物を挙げることができる。その例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの単官能アクリレートや単官能メタクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンやグリセリン等の多官能アルコールにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを付加した後(メタ)アクリレート化したもの等の多官能アクリレートや多官能メタクリレートを挙げることができる。
【0029】
更に特公昭48−41708号公報、特公昭50−6034号公報及び特開昭51−37193号公報に記載されているウレタンアクリレート類;特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報及び特公昭52−30490号公報に記載されているポリエステルアクリレート類;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレートやメタクリレートを挙げることができる。
【0030】
これらの中で、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0031】
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合性化合物B」も好適なものとして挙げることができる。
【0032】
使用される光重合開始剤又は光重合開始剤系としては、米国特許第2367660号明細書に開示されているビシナルポリケタルドニル化合物、米国特許第2448828号明細書に記載されているアシロインエーテル化合物、米国特許第2722512号明細書に記載のα−炭化水素で置換された芳香族アシロイン化合物、米国特許第3046127号明細書及び同第2951758号明細書に記載の多核キノン化合物、米国特許第3549367号明細書に記載のトリアリールイミダゾール2量体とp−アミノケトンの組み合わせ、特公昭51−48516号公報に記載のベンゾチアゾール化合物とトリハロメチル−s−トリアジン化合物、米国特許第4239850号明細書に記載されているトリハロメチル−トリアジン化合物、米国特許第4212976号明細書に記載されているトリハロメチルオキサジアゾール化合物等を挙げることができる。特に、トリハロメチル−s−トリアジン、トリハロメチルオキサジアゾール及びトリアリールイミダゾール2量体が好ましい。
【0033】
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合開始剤C」も好適なものとしてあげることができる。光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがさらに好ましい。液晶性化合物の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm〜50J/cmであることが好ましく、100〜2000mJ/cmであることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
【0034】
なお、アクリレートやメタクリレートは、空気中の酸素によって重合阻害を受ける。従って、本発明において、有機膜12としてこれらを利用する場合には、重合時の酸素濃度もしくは酸素分圧を低くすることが好ましい。窒素置換法によって重合時の酸素濃度を低下させる場合、酸素濃度は2%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。減圧法により重合時の酸素分圧を低下させる場合、全圧が1000Pa以下であることが好ましく、100Pa以下であることがより好ましい。また、100Pa以下の減圧条件下で2J/cm以上のエネルギーを照射して紫外線重合を行うのが特に好ましい。
【0035】
本発明において、モノマーの重合率は80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。ここでいう重合率とはモノマー混合物中の全ての重合性基(例えばアクリレートやメタクリレートであれば、アクリロイル基およびメタクリロイル基)のうち、反応した重合性基の比率を意味する。
【0036】
次に、基材B上に機能層12Aとクリーニング層12Bを成膜する製造方法を、有機成膜装置20を使用した場合を例に説明する。
【0037】
図2に、フィルム10の製造方法を実施する有機成膜装置20の一例を概念的に示す。有機成膜装置20は、塗布手段26、加熱手段28、および、UV照射装置30を有するもので、予め調製した放射線硬化性のモノマー又はオリゴマーが含有された塗布液を基材Bに塗布手段26で塗布し、加熱手段28で乾燥して、UV照射装置30で重合することにより、機能層とクリーニング層を成膜する。
【0038】
この有機成膜装置20は、ロール・ツー・ロールによって有機膜を成膜するもので、基材Bは、基材ロール40として回転軸32に装填され、長手方向に搬送されつつクリーニング層と機能層が成膜される。機能層とクリーニング層が成膜された基材Bがロール42として巻取り軸34に巻き取られる。
【0039】
基材ロール40から送り出された基材Bは、搬送ローラ36に案内され最初に塗布手段26に搬送される。塗布手段26では、基材Bの表面に、放射線硬化性のモノマー又はオリゴマーが含有された塗布液が塗布される。
【0040】
基材Bは、次いで、加熱手段28に搬送される。加熱手段28では、塗布手段26が塗布した塗布液中の溶媒を乾燥する。塗布液の加熱方法には、特に限定はなく、ヒータによる加熱、温風による加熱等、基材Bの搬送速度等に応じて、UV照射装置30に至る前に、塗布液を加熱可能なものであれば、公知の加熱手段が全て利用可能である。
【0041】
基材Bは、次いで、UV照射装置30に搬送される。UV照射装置30では、塗布手段26が塗布し加熱手段28で加熱乾燥した塗布液に、UV(紫外線)を照射することにより、放射線硬化性のモノマー又はオリゴマーを重合させる。
【0042】
本実施の形態では、塗布液が塗布された基材Bが最初にUV照射装置30を通過する際には、比較的弱いUVを数秒間照射する。放射線硬化性のモノマー又はオリゴマーを含む塗布液は重合するが、UV照射の強度が弱いので、塗布液は粘着性を有した状態で硬膜する。比較的弱いUV照射により、基材Bの搬送方向の先端にクリーニング層を形成することができる。
【0043】
クリーニング層が形成された基材Bが、搬送ローラ36に案内され、巻取り軸34に搬送される。基材Bには既にクリーニング層が形成されているので、搬送ローラ36を通過する際に、搬送ローラ36上の異物を除去することができる。
【0044】
また、クリーニング層の粘着性により、基材Bが巻き取り軸34に巻き取られるときに、基材Bの巻きズレ等が生じるのを防止することができる。
【0045】
クリーニング層を形成した後、UVの照射強度を強くして、塗布液にUVを照射する。これにより、基材B上に機能層が形成される。基材Bは搬送ローラ36に案内され、連続して巻き取り軸34により巻き取られる。搬送ローラ36はクリーニング層により異物が除去されているので、搬送ローラの異物が機能層に付着するのを防止することができる。
【0046】
次に、有機成膜装置20により製造されたクリーニング層と機能層を有する基材Bの表面に、真空成膜装置22によって、薄膜層が形成される場合を説明する。
【0047】
クリーニング層と機能層を有する基材Bを巻回した基材ロール42が、図3に概念的に示すような、真空成膜装置22に装填される。
【0048】
真空成膜装置22は、基材Bの表面(すなわち機能層の表面)に、真空成膜法によって薄膜を成膜(形成)するもので、供給室50と、成膜室52と、巻取り室54とを有する。
【0049】
真空成膜装置22も、有機成膜装置20と同様に、ロール・ツー・ロールによる成膜を行なう装置で、基材ロール42から基材Bを送り出し、長手方向に搬送しつつ薄膜を成膜して、機能層と薄膜とを成膜したフィルムを巻取り軸58によってロール状に巻き取る。
【0050】
供給室50は、回転軸56と、搬送ローラ60と、真空排気手段61とを有する。真空成膜装置22において、基材Bにクリーニング層と機能層を成膜してなる基材Bを巻回した基材ロール42は、供給室50の回転軸56に装填される。回転軸56に基材ロール42が装填されると、基材Bは、供給室50から、成膜室52を通り、巻取り室54の巻取り軸58に至る所定の搬送経路を通される(送通される)。真空成膜装置22においても、基材ロール42からの基材Bの送り出しと、巻取り軸58における光学フィルム10の巻き取りとを同期して行なって、長尺な基材Bを所定の搬送経路で長手方向に搬送しつつ、基材Bに薄膜の成膜を連続的に行なう。
【0051】
供給室50においては、図示しない駆動源によって回転軸56を図中時計方向に回転して基材ロール42から基材Bを送り出し、搬送ローラ60によって所定の経路を案内して、基材Bを成膜室52に送る。基材Bの搬送方向の先端にクリーニング層が形成されているので、搬送ローラ60を通過する際に、搬送ローラ60上の異物が除去される。
【0052】
また、供給室50には、真空排気手段61が配置され、供給室50内を、成膜室52における成膜圧力に応じた所定の真空度(圧力)に減圧する。これにより、供給室50の圧力が、成膜室52の圧力(成膜)に悪影響を与えることを防止する。なお、真空排気手段61は、後述する成膜室52の真空排気手段72と同様、公知の物を用いればよい。
【0053】
なお、真空中で機能層に接触する搬送ローラ60は、基材Bの端部(搬送方向と直交する方向(幅方向)の端部)のみに接触する段差付きローラが好ましい。
【0054】
また、供給室50には、図示した部材以外にも、搬送ローラ対や、基材Bの幅方向の位置を規制するガイド部材など、基材Bを所定の経路で搬送するための各種の部材(搬送手段)を有してもよい。しかしながら、薄膜の成膜中は、供給室50内は、成膜室の圧力に応じた真空度となるので、機能層に接触する部材は、段差付きローラである搬送ローラ60と同様、基材Bの端部のみに接触する構成を有する物とする。
【0055】
基材Bは、搬送ローラ60によって案内され、成膜室52に搬送される。成膜室52は、基材Bの表面(すなわち機能層の表面)に、真空成膜法によって薄膜を成膜(形成)するものである。図示例において、成膜室52は、ドラム62と、成膜手段64a,64b、64c、および64dと、搬送ローラ68および70と、真空排気手段72とを有する。なお、成膜室52が、スパッタリングやプラズマCVD等による成膜をおこなうものである場合には、成膜室52には、さらに、高周波電源等も設置される。
【0056】
基材Bは、供給室50と成膜室52とを分離する隔壁74に形成されるスリット74aから、成膜室52に搬送される。
【0057】
なお、図示例の真空成膜装置22は、好ましい態様として、供給室50および巻取り室54にも真空排気手段を設け、成膜室52における成膜圧力に応じて、供給室50および巻取り室54も真空とするが、本発明を実施する装置は、これに限定はされない。例えば、供給室50および巻取り室54には、真空排気手段を設けずに、基材Bが通過するスリットを、基材Bに接触することなく、かつ、基材Bが通過可能な最小限のサイズとすることにより、成膜室52を略気密に構成してもよい。あるいは、供給室50および巻取り室54には、真空排気手段を設けずに、供給室50および巻取り室54と、成膜室52との間に、基材Bが通過するサブチャンバを設け、このサブチャンバ内を真空ポンプによって真空にしてもよい。
【0058】
なお、成膜室52の上流(基材Bの搬送方向上流)にサブチャンバ等を設ける場合には、このサブチャンバ等の内部で基材を搬送する手段も、機能層に接触する場合には、基材Bの端部のみに接触する構成とする必要がある。
【0059】
成膜室52のドラム62は、中心線を中心に図中反時計方向に回転する円筒状の部材である。
【0060】
供給室50から供給され、搬送ローラ68によって所定の経路に案内された基材Bは、ドラム62の周面の所定領域に掛け回されて、ドラム62に支持/案内されつつ、所定の搬送経路を搬送され、成膜手段64a〜64d等によって、表面(有機膜12の上)に、薄膜を形成される。また、成膜室52が、スパッタリングやプラズマCVD等による成膜をおこなうものである場合には、ドラム62は、対向電極としても作用するように、接地(アース)されてもよく、あるいは高周波電源に接続されてもよい。
【0061】
成膜手段64a〜64dは、真空成膜法によって、基材Bの表面に薄膜を成膜するためのものである。
【0062】
ここで、本発明の製造方法においては、薄膜の形成方法には、特に限定は無く、CVD、プラズマCVD、スパッタリング、真空蒸着、イオンプレーティング等、公知の真空成膜法(気相堆積法)が、全て、利用可能である。
【0063】
従って、成膜手段64a〜64dは、実施する真空成膜法に応じた、各種の部材で構成される。
【0064】
例えば、成膜室52がICP−CVD法(誘導結合型プラズマCVD)によって薄膜の成膜を行なうものであれば、成膜手段64a〜64dは、誘導磁場を形成するための誘導コイルや、成膜領域に反応ガスを供給するためのガス供給手段等を有して構成される。
【0065】
成膜室52が、CCP−CVD法(容量結合型プラズマCVD)によって薄膜の成膜を行なうものであれば、成膜手段64a〜64dは、中空状でドラム46に対向する面に多数の小孔を有し反応ガスの供給源に連結される、高周波電極および反応ガス供給手段として作用するシャワー電極等を有して構成される。
【0066】
成膜室52が、CVD法によって薄膜の成膜を行なうものであれば、成膜手段64a〜64dは、反応ガスの導入手段等を有して構成される。
【0067】
さらに、成膜室52が、スパッタリングによって薄膜の成膜を行なうものであれば、成膜手段64a〜64dは、ターゲットの保持手段や高周波電極、スパッタガスの供給手段等を有して構成される。
【0068】
真空排気手段72は、成膜室52内を真空排気して、真空成膜法による薄膜の成膜に応じた真空度とするものである。
【0069】
真空排気手段72にも、特に限定はなく、ターボポンプ、メカニカルブースターポンプ、ロータリーポンプなどの真空ポンプ、さらには、クライオコイル等の補助手段、到達真空度や排気量の調整手段等を利用する、真空成膜装置に用いられている公知の(真空)排気手段が、各種、利用可能である。
【0070】
ドラム62に支持/搬送されつつ、成膜手段64a〜64dによって薄膜を成膜された基材Bすなわち機能性フィルム10は、搬送ローラ70によって所定経路に案内されて、巻取り室54に搬送されて、巻取り軸58によってロール状に巻き取られる。
【0071】
基材Bにはクリーニング層が形成されているので、搬送ローラ等の基材Bと接触する部材から異物が機能層に付着するのを防止することができる。
【0072】
一般的に、真空成膜装置22では、清掃作業をする場合、大気圧下の状態に開放して行なわれる。清掃完了後、真空成膜装置内を再度真空状態にする必要があり、多くの人手と時間を必要とする。一方で、クリーニング層が形成された基材Bを利用することで、真空成膜装置22内の清掃を容易に行なうことができる。これにより真空成膜装置22の清掃に伴う稼動停止の頻度を大幅に少なくすることができる。
【0073】
さらに、ロール状に巻き取られた積層フィルム(光学フィルム)ロールは、有機成膜装置20に搬送される。薄膜が形成された基材B上に新たにクリーニング層と機能層が形成される。
【0074】
図4は、機能層12A及びクリーニング層12Bの成膜工程と薄膜14の成膜工程が、3回繰り返し実行された状態のフィルム10を示している。
【0075】
図4では、各機能層12A及びクリーニング層12B上に薄膜14が形成される。機能層12Aの形成において、必ずクリーニング層12Bが形成される。これにより、どの有機成膜装置、無機成膜装置においても確実に異物の除去が可能となる。
【0076】
なお、フィルムとして、有機ELディスプレイや液晶ディスプレイのような表示装置など、各種のデバイスや装置の保護フィルムを製造する際には、薄膜として、酸化ケイ素膜等を成膜すればよい。
【0077】
さらに、光反射防止フィルム、光反射フィルム、各種のフィルタ等の光学フィルムを製造する際には、薄膜として、目的とする光学特性を有する、あるいは発現する材料からなる膜を成膜すればよい。
【0078】
中でも特に、機能層の優れた表面平滑性により、ガスバリア性の優れた薄膜を成膜できるので、本発明は、ガスバリアフィルムの製造に最適である。
【0079】
以上、本発明の光学フィルムの製造方法について詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行なってもよいのは、もちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明に係るフィルムを示す図
【図2】フィルムの製造方法を実施する装置の一例を示す図
【図3】フィルム上に薄膜を形成する装置の一例を示す図
【図4】本発明に係るフィルムを他の例を示す図
【符号の説明】
【0081】
10…フィルム、12A…機能層、12B…クリーニング層、14…薄膜、20…有機成膜装置、22…真空成膜装置、26…塗布手段、28…乾燥手段、30…UV照射装置、36,60,68,70,78…搬送ローラ、52…成膜室、64a,64b,64c,64d…成膜手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺基材と、
前記長尺基材の搬送方向の先端部の表面に形成されたクリーニング層と、
前記長尺基材の表面で、前記クリーニング層が形成されていない領域に形成された機能層と、を備えることを特徴とするフィルム。
【請求項2】
前記クリーニング層と前記機能層が同一組成であり、かつ前記クリーニング層と前記機能層が異なる成膜条件で形成される請求項1記載のフィルム。
【請求項3】
前記クリーニング層と前記機能層が、放射線硬化性のモノマー又はオリゴマーを含む請求項1又は2記載のフィルム。
【請求項4】
長尺基材を送り出す工程と、
前記長尺基材に塗布液を塗布する工程と、
前記塗布液に対して第1の成膜条件を施すことでクリーニング層を形成する工程と、
前記塗布液に対して第1の成膜条件と異なる第2の成膜条件を施すことで機能層を形成する工程と、
前記長尺基材を巻き取る工程と、
を備えたことを特徴とするフィルムの製造方法
【請求項5】
前記機能層を形成する工程後に、前記塗布液に対して第1の成膜条件を施すことでクリーニング層を形成する工程を含む請求項4記載のフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記塗布液が、放射線硬化性のモノマー又はオリゴマーを含む請求項4又は5記載のフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記第1の成膜条件と第2の成膜条件の異なる条件として放射線の強度を含み、前記第1の成膜条件下での放射線強度が前記第2の成膜条件下での放射線強度より弱い請求項6記載のフィルムの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−69838(P2010−69838A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242684(P2008−242684)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】