説明

フィルム改質用樹脂組成物およびフィルム

【課題】フィルムに塗工した際に黄色く見えにくいフィルム改質用樹脂組成物およびこれを塗工したフィルムを提供する。
【解決手段】550〜650nmに吸収ピークを有し、最大吸収値の半値幅が50〜200nmである光吸収剤を0.0001〜0.1重量%含有し、さらにウレタン(メタ)アクリレート化合物を含有することを特徴とするフィルム改質用樹脂組成物。また、該フィルム改質用樹脂組成物が塗工されていることを特徴とするフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィルムに塗工した際に黄色く見えにくいフィルム改質用樹脂組成物およびこれを塗工したフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックはその加工性、透明性等に加えて、軽量、安価といった特長を有することから、自動車業界、家電業界を始めとして種々の産業で使用されており、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイなどのフラットパネルディスプレイやタッチパネル、パーソナルコンピュータなどのディスプレイ用としても広く用いられている。一方、プラスチックはガラスと比較して柔らかく、表面が傷つきやすい等の欠点を有しているため、各種硬化性樹脂によって表面がコートされている。
【0003】
このようなコート剤は透明性が要求されることが多いため、全光線透過率やヘーズ等の特性値によって透明性が評価されている。しかし、近年では単に透明性を有しているだけではなく、色目にも優れることが要求されるようになっている。具体的には、ポリエステルフィルム等に硬化性樹脂を塗工するとフィルムが黄色味を帯びて見える場合があるが、黄色は耐候性不足による黄変や劣化を連想させることから好ましい色目ではなく、無色または黄色く見えない色目となることが求められるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許文献1には、着色を低減した透明導電材料が開示されている。しかしながら、該技術は導電層の金属酸化物に由来する着色に対応するものであることや、高屈折率層及び低屈折率層からなる複合層を積層していることが前提となるものであり、適用範囲が限定されている。また、特許文献2には、b* の値が3以下であることを特徴とする反射防止積層体が開示されているが、これも高屈折率薄膜層と低屈折率薄膜層を交互に積層させてなる反射防止膜を設けることが前提となっており、同様に適用範囲が限定されている。
【特許文献1】特開2004-322380号公報
【特許文献2】特開2002-122703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、フィルムに塗工した際に黄色く見えにくいフィルム改質用樹脂組成物およびこれを塗工したフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、550〜650nmに極大吸収ピークを有し、最大吸収値の半値幅が50〜200nmである光吸収剤を含有することを特徴とするフィルム改質用樹脂組成物である。また、該フィルム改質用樹脂組成物が塗工されていることを特徴とするフィルムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のフィルム改質用樹脂組成物は、黄色く見えにくい光学特性を有しているため、これを塗工したフィルムも黄色く見えにくくなり、黄変や劣化を連想させることのない色目となる。また、本発明はハードコート剤、反射防止剤、防汚剤、導電層形成剤等の各種フィルム改質剤に幅広く適用することができ、該機能を有するフィルムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1、2で用いた光吸収剤の吸光スペクトル
【図2】実施例3、4で用いた光吸収剤の吸光スペクトル
【図3】比較例2で用いた光吸収剤の吸光スペクトル
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のフィルム改質用樹脂組成物は、550〜650nmに極大吸収ピークを有し、最大吸収値の半値幅が50〜200nmである光吸収剤を含有する。550〜650nmに極大吸収ピークを有することにより、黄色く見えにくくなる。なお、この極大吸収ピークは最大吸収ピークでなくてもよい。また、最大吸収値の半値幅が50〜200nmであることにより、黄色味のみが低減されることによって他の色目が目立ってしまうことがない。なお、最大吸収値の半値幅とは、最大吸収値の半分以上の吸収を示す波長の幅であって、最大吸収波長を含む領域の波長幅を示す。最大吸収値の半値幅が狭い場合はシャープや吸収特性を有し、広い場合はブロードな吸収特性を有することとなる、
【0010】
このような特性を有する光吸収剤の具体例として、日本化薬株式会社製のKAYASET BLUE A−2R、KAYASET BLUE N等が挙げられる。また、単独ではこのような吸収特性を有しない光吸収剤であっても、2種以上を組み合わせて前記範囲に入るように調整したものを使用することも可能である。
光吸収剤の好ましい添加量は光吸収剤の種類によって異なるものの、フィルム改質用樹脂組成物の固形分100重量部に対して、0.0001〜0.1重量部とすることが好ましく、0.001〜0.05重量部とすることがより好ましい。
【0011】
本発明のフィルム改質用樹脂組成物は、フィルム改質用樹脂を含有する。フィルム改質用樹脂の成分は特に限定されず、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂や、(メタ)アクリレート化合物等の活性エネルギー線硬化性樹脂等の他、非反応性樹脂を含有するものでも良い。なお、フィルム改質用樹脂としてウレタン(メタ)アクリレート化合物を含有する場合、フィルムに塗工した際に黄色く見えやすいため、本願発明の効果が顕著に発現する。
【0012】
また、前記フィルム改質用樹脂の他、有機微粒子、無機微粒子、導電性粒子、触媒、重合開始剤、架橋剤、帯電防止剤、屈折率調整剤、酸化防止剤、老化防止剤、光増感剤、レベリング剤、消泡剤、防腐剤、可塑剤、流動調整剤、増粘剤、pH調整剤、分散剤、溶剤等が添加されていてもよい。
【0013】
本発明のフィルム改質用樹脂組成物は、各種フィルムへの塗工に用いられる。フィルムの種類は特に限定されず、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。なお、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルムを用いた場合は黄色く見えやすいため、本願発明の効果が顕著に発現する。
【0014】
本発明のフィルム改質用樹脂組成物のフィルムへの塗布方法、塗布厚みについては特に制限はなく、公知の方法、例えばグラビアコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法などを用いることができ乾燥後塗膜の厚みを20μm以下となるように塗布する。より好ましくは、2〜8μmである。
【0015】
以下、本発明について実施例、比較例を挙げてより詳細に説明するが、具体例を示すものであって、特にこれらに限定するものではない。
【実施例】
【0016】
フィルム改質用樹脂組成物ベースの調製
ウレタンアクリレートであるUN−904M(根上工業株式会社製 固形分80%)100重量部に対して、重合開始剤としてイルガキュア184(チバ・ジャパン株式会社製、商品名)を4重量部加え、さらにメチルエチルケトンを加えて固形分を50%に調整することにより、フィルム改質用樹脂組成物ベースを調製した。
【0017】
実施例1
前記フィルム改質用樹脂組成物ベース100重量部に対して、光吸収剤としてKAYASET BLUE A−2R(日本化薬株式会社製、固形分100%、585nmに極大吸収ピーク、最大吸収値の半値幅120nm、図1参照)を0.005重量部添加することにより(フィルム改質用樹脂組成物の固形分100重量部に対して0.1重量部添加)、実施例1のフィルム改質用樹脂組成物を調製した。
【0018】
実施例2
前記フィルム改質用樹脂組成物ベース100重量部に対して、光吸収剤としてKAYASET BLUE A−2Rを0.01重量部添加することにより(フィルム改質用樹脂組成物の固形分100重量部に対して0.2重量部添加)、実施例2のフィルム改質用樹脂組成物を調製した。
【0019】
実施例3
前記フィルム改質用樹脂組成物ベース100重量部に対して、光吸収剤としてKAYASET BLUE N(日本化薬株式会社製、固形分100%、595nmに極大吸収ピーク、最大吸収値の半値幅90nm、図2参照)を0.005重量部添加することにより(フィルム改質用樹脂組成物の固形分100重量部に対して0.1重量部添加)、実施例3のフィルム改質用樹脂組成物を調製した。
【0020】
実施例4
前記フィルム改質用樹脂組成物ベース100重量部に対して、光吸収剤としてKAYASET BLUE Nを0.01重量部添加することにより(フィルム改質用樹脂組成物の固形分100重量部に対して0.2重量部添加)、実施例4のフィルム改質用樹脂組成物を調製した。
【0021】
比較例1
前記フィルム改質用樹脂組成物ベースをそのまま比較例1のフィルム改質用樹脂組成物とした。
【0022】
比較例2
前記フィルム改質用樹脂組成物ベース100重量部に対して、光吸収剤としてTAP18(山田化学工業株式会社製、固形分100%、 590nmに極大吸収ピーク、最大吸収値の半値幅20nm、図3参照)を0.005重量部添加することにより(フィルム改質用樹脂組成物の固形分100重量部に対して0.1重量部添加)、比較例2のフィルム改質用樹脂組成物を調製した。
【0023】
試験評価方法
188μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(東レフィルム株式会社、商品名ルミラー188U46)に各フィルム改質用樹脂組成物を硬化膜厚が5μmとなるよう塗布し、UVを照射することによって樹脂組成物を硬化させ、試験体を作成した。各試験体について、JIS Z 8722に基づいて分光測色を行った。また、ポリエチレンテレフタレートフィルム単体での測定も行い、参考例とした。b*が0.9以下であれば黄色が目立たないが、a*が−0.3を下回ると目立つため、b*が0.9以下かつa*が−0.3以上のものを合格と判定した。
【0024】
【表1】






【0025】
実施例1〜4のフィルム改質用樹脂組成物を塗布したフィルムは、フィルム単体である参考例1と同様にb*が0.9以下かつa*が−0.3以上であり、特に色目は目立たない。一方、光吸収剤を添加していない比較例1のフィルム改質用樹脂組成物を塗布したフィルムはb*が0.9を超え、黄色く見える。また、比較例2のフィルム改質用樹脂組成物を塗布したフィルムはb*が0.9以下であるもののa*が−0.3を下回っており、緑が目立つ色目となっており、好ましくない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
550〜650nmに極大吸収ピークを有し、最大吸収値の半値幅が50〜200nmである光吸収剤を含有することを特徴とするフィルム改質用樹脂組成物。
【請求項2】
フィルム改質用樹脂組成物の固形分100重量部に対して、前記光吸収剤を0.0001〜0.1重量部含有することを特徴とする請求項1記載のフィルム改質用樹脂組成物。
【請求項3】
ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含有することを特徴とする請求項1または2記載のフィルム改質用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載のフィルム改質用樹脂組成物が塗工されていることを特徴とするフィルム。
【請求項5】
550〜650nmに極大吸収ピークを有し、最大吸収値の半値幅が50〜200nmであることを特徴とする請求項5記載のフィルム。
【請求項6】
前記フィルムがポリエステルフィルムであることを特徴とする、請求項4または5記載のフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−84624(P2011−84624A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237374(P2009−237374)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】