説明

フィルム溜め方法、及びバッファ装置

【課題】フィルムを適度に緊張させ皺の発生を予防できるフィルム溜め方法、及びバッファ装置を提供する。
【解決手段】バッファ装置2は、フィルム1の両縁部3にそれぞれ接触する一対のテンションロール4と、一対のテンションロール4の重さを釣合錘5の荷重によって打ち消す保持手段6と、一対のテンションロール4を下降させる動力を発生する駆動手段7と、駆動手段7の動力を一対のテンションロール4に伝達し又は遮断するクラッチ8とを備える。クラッチ8が駆動手段7の動力を一対のテンションロール4に伝達したとき、一対のテンションロール4が下降する。クラッチ8が駆動手段7の動力を遮断したとき、一対のテンションロール4が一対の釣合錘5と釣り合った状態で停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性のフィルムを、何らかの前工程と後工程において、それぞれ異なる速度で搬送する場合に、これら前後工程の速度差を調整するためのフィルム溜め方法、及びバッファ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリーン印刷装置を用いてフィルムの上面に導電パターンを印刷し、同フィルムをドライヤで乾燥させる場合、スクリーン印刷装置から断続的に搬出されるフィルムが、ドライヤを一定の速度で通過する。このため、フィルムがスクリーン印刷装置から繰出される速度と、同フィルムがドライヤに引込まれる速度との差を調整できるように、スクリーン印刷装置とフィルムとの間に、ダンサロールが設けられる。ダンサロールに係る技術は特許文献1に開示されている。
【0003】
例えば、図4に示すように、上流サクションロールR1と、下流サクションロールR2との間に、ダンサロール40を設ける。上流サクションロールR1を電動機で矢印F方向に回転させることにより、スクリーン印刷装置から搬出されるフィルム1を下方へ案内し、下流サクションロールR2を電動機で矢印F’方向に回転させることにより、フィルム1をダンサロール40の上方へ牽引する。
【0004】
この場合、ダンサロール40が導電パターンに触れるのを避けなければならない。そこで、フィルム1の幅方向の両縁部が印刷の余白になることに着目し、特許文献2に示すようなフィルム1の両縁部に接触する2つのローラを、ダンサロールに代えて適用することが考えられる。
【特許文献1】特開2002−87670号公報
【特許文献2】特開2002−179305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スクリーン印刷装置がフィルム1に印刷を施す動作を終えたところで、上流サクションロールR1は、下流サクションロールR2よりも速い回転速度で回転する。これに従ってフィルム1の撓み量が増大し、ダンサロール40は自重で下降する。しかしながら、フィルム1の両縁部が、ダンサロールに代わる上記2つのローラによって押し下げられると、この反力に起因してフィルム1の両縁部の間に皺が発生するという問題が起こる。
【0006】
本発明は、以上に述べた実情に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、フィルムを適度に緊張させ皺の発生を予防できるフィルム溜め方法、及びバッファ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るフィルム溜め方法は、幅方向の両縁部を有する長尺状のフィルムを、その長手方向に搬送し、前記フィルムの両縁部に、一対のテンションロールを前記フィルムの上方からそれぞれ接触させ、前記一対のテンションロールが前記フィルムを押し下げる工程で、前記一対のテンションロールの下降及び停止を交互に繰り返すことを特徴とする。
【0008】
本発明に係るバッファ装置は、幅方向の両縁部を有する長尺状のフィルムが、その長手方向に搬送される過程で、前記フィルムを下方に撓ませるものであって、前記フィルムの両縁部にその上方から接触する一対のテンションロールと、前記一対のテンションロールの重さに相当する釣合錘の荷重を前記一対のテンションロールに上向きに加える保持手段と、前記一対のテンションロールを下降させる動力を発生する駆動手段と、前記駆動手段の動力を前記一対のテンションロールに伝達し又は遮断するクラッチとを備え、前記クラッチが前記駆動手段の動力を前記一対のテンションロールに伝達することにより、前記一対のテンションロールを下降させ、前記クラッチが前記駆動手段の動力を遮断した状態で、前記一対のテンションロールが、前記保持手段の釣合錘に釣り合うことを特徴とする。
【0009】
更に、本発明に係るバッファ装置は、前記クラッチが、前記駆動手段の動力を前記一対のテンションロールに伝達する動作と、前記駆動手段の動力を遮断する動作とを、交互に繰り返すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るフィルム溜め方法によれば、一対のテンションロールがそれぞれフィルムの両縁部を押し下げるとき、フィルムの両縁部の間に皺が発生しようとするが、一対のテンションロールが停止した時点で、一対のテンションロールがフィルムを押し下げる力をフィルムから除けるので、フィルムの皺を未然に防止することができる。
【0011】
例えば、スクリーン印刷装置で導電パターンをフィルムの上面に印刷し、同フィルムがドライヤに搬送される場合、一対のテンションロールはフィルムの上面の両縁部にそれぞれ接触する。これらのテンションロールが下方に変位する工程で、一対のテンションロールの下降及び停止を交互に繰り返すことにより、フィルムに皺を発生させることなく、フィルムを下方へ撓ませることができる。また、上記の工程でフィルムを撓ませた分、スクリーン印刷装置からドライヤに搬送されるフィルムの速度差を吸収することができる。
【0012】
本発明に係るバッファ装置によれば、クラッチが駆動手段の動力を一対のテンションロールに伝達したとき、一対のテンションロールがそれぞれ下降し、フィルムの両縁部を押し下げる。これにより、フィルムの両縁部の間に皺が発生しようとするが、クラッチが駆動手段の動力を遮断した時点で、一対のテンションロールが停止するので、上記のようにフィルムの皺を未然に防止することができる。
【0013】
更に、本発明に係るバッファ装置によれば、クラッチが、駆動手段の動力を一対のテンションロールに伝達する動作と、駆動手段の動力を遮断する動作とを交互に繰り返すことができる。これにより、フィルムに皺を発生させることなく、フィルムを下方へ撓ませ、例えばスクリーン印刷装置からドライヤに搬送されるフィルムの速度差を吸収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1,2は、上流サクションロールR1及び下流サクションロールR2の間で長尺状のフィルム1を下方へ撓ませるバッファ装置2を示している。図中の矢印T方向は、フィルム1の長手方向であり、フィルム1の幅方向に直交する方向である。フィルム1は、その幅方向の両縁部3の間の領域に印刷が施される。以下に記す「一対」は、互いに同じ2つの要素がフィルム1の幅方向に隔たり相対向していることを意味する。
【0015】
バッファ装置2は、フィルム1の両縁部3にそれぞれ接触する一対のテンションロール4と、一対のテンションロール4の重さを一対の釣合錘5の荷重によって打ち消す保持手段6と、一対のテンションロール4を下降させる動力を発生する駆動手段7と、駆動手段7の動力を一対のテンションロール4に伝達し又は遮断するクラッチ8とを備える。
【0016】
一対のテンションロール4の重さには、これらを回転自在に支持する支軸41と、支軸41の両端に設けられた一対のスライダ42との重さが含まれる。一対のテンションロール4は、支軸41にボルト等で締め付けられている。このボルト等を緩めれば、一対のテンションロール4を支軸41に沿って移動させ、一対のテンションロール4同士の間隔を調節できる。一対のテンションロール4からフィルム1が逸れるのを防止するために、一対のテンションロール4の外側に鍔部43を設けても良い。符号44,45は、バッファ装置2のフレーム21の適所に設けられたガイドローラを指している。
【0017】
また、バッファ装置2のフレーム21には支柱22が設けられ、一対のガイドレール23は直立する姿勢で支柱22に固定されている。一対のスライダ42は、それぞれ一対のガイドレール23に係合しているので、一対のテンションロール4は、フレーム21に対して昇降自在である。保持手段6は、支柱22の上部に一対の回転輪61を設け、フレーム21の底部に軸受された連結軸62の両端に一対の回転輪63を設け、これらの回転輪61,63に、端部64を有する一対の牽体65を巻掛したものである。符号66は、釣合錘5を昇降自在に案内する一対のガイドレールを指している。
【0018】
一対の牽体65の端部64は一対の釣合錘5に接合され、一対の牽体65の途中に一対のスライダ42が取付けられている。一対の牽体65は、釣合錘5の荷重を一対のスライダ42に伝え、一対のテンションロール4、支軸41、及び一対のスライダ42に、一対の釣合錘5の荷重を上向きに加える役割を果たしている。回転輪61,63としてタイミングプーリ又はスプロケット等を適用し、牽体65としてタイミングベルト又はチェーン等を適用しても良い。
【0019】
駆動手段7は、サーボモータ等から成る電動機71と、電動機71の出力軸72にクラッチ8を介して接続された駆動輪73と、連結軸62に取付けられた従動輪74と、駆動輪73及び従動輪74に巻掛された無端状の牽体75とを備える。電動機71はフレーム21の底部に固定しても良い。電動機71の出力軸72が図2の矢印D方向へ回転するに従って回転輪61,63が回転する。これにより、一対の牽体65には、一対のスライダ42を下降させる張力と同時に、釣合錘5を上昇させる張力が発生し、一対のスライダ42と共に一対のテンションロール4が下降する。クラッチ8は、電動機71の出力軸72から駆動輪73に伝達される動力(回転力)の大きさを自在に調節できる電磁クラッチである。クラッチ8の動作は、コンピューター等から送出される電気信号に基づき達成されるようにしても良い。
【0020】
以上に述べたバッファ装置2を稼動させるとき、先ず電動機71を起動し、電動機71の出力軸72を回転させる。そして、クラッチ8が駆動手段7の動力を一対のテンションロール4に伝達したとき、一対のテンションロール4が下降し、クラッチ8が駆動手段7の動力を遮断したとき、一対のテンションロール4が一対の釣合錘5と釣り合う状態となって停止する。また、バッファ装置2により実現できるフィルム溜め方法は、次の通りである。
【0021】
例えば、スクリーン印刷装置がフィルム1に印刷を施した直後、図2に示す上流サクションロールR1は、下流サクションロールR2よりも速い回転速度で矢印F方向に回転する。これに従ってフィルム1の撓み量が徐々に増大する工程で、クラッチ8は、駆動手段7の動力を一対のテンションロール4に伝達する動作と、駆動手段7の動力を遮断する動作を交互に繰り返すことにより、一対のテンションロール4が下降及び停止を交互に繰り返す。
【0022】
このようなフィルム溜め方法によれば、一対のテンションロール4が下降するとき、図1に示すフィルム1の両縁部3が一対のテンションロール4に押し下げられ、フィルム1の両縁部3の間に皺が発生しようとするが、一対のテンションロール4が停止した時点で、一対のテンションロール4がフィルム1を押し下げる力がフィルム1から除かれる。このため、フィルム1の両縁部3の間に皺が発生することはない。一対のテンションロール4が下限まで降下したところで、クラッチ8は駆動手段7の動力を遮断する。
【0023】
続いて、図3に示すように、上流サクションロールR1が停止し、下流サクションロールR2が矢印F’方向に回転するに従ってフィルム1の撓み量が徐々に減少する。この工程で、クラッチ8は駆動手段7の動力を遮断し続けているので、フィルム1の撓みが小さくなる従って一対のテンションロール4は、フィルム1に押し上げられて上昇する。また、クラッチ8が駆動手段7の動力を遮断している間、一対のテンションロール4の重さは釣合錘5によって打ち消されるので、一対のテンションロール4を押し上げるフィルム1が、一対のテンションロール4の反力を強く受けることはなく、フィルム1に皺が発生することはない。
【0024】
尚、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様で実施できる。例えば、一対のスライダ42が昇降できる範囲の下限又は上限にあることをセンサで検出するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、フィルムの材質又は用途に関わらず、フィルムをその搬送の途中で撓ませるのに有益な技術である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係るバッファ装置の正面図。
【図2】本発明の実施形態に係るバッファ装置の動作の一例を示す側面図。
【図3】本発明の実施形態に係るバッファ装置の動作の他例を示す側面図。
【図4】従来例のバッファ装置を示す側面図。
【符号の説明】
【0027】
1:フィルム
2:バッファ装置
3:両縁部
4:テンションロール
5:釣合錘
6:保持手段
7:駆動手段
8:クラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向の両縁部を有する長尺状のフィルムを、その長手方向に搬送し、前記フィルムの両縁部に、一対のテンションロールを前記フィルムの上方からそれぞれ接触させ、前記一対のテンションロールが前記フィルムを押し下げる工程で、前記一対のテンションロールの下降及び停止を交互に繰り返すことを特徴とするフィルム溜め方法。
【請求項2】
幅方向の両縁部を有する長尺状のフィルムが、その長手方向に搬送される過程で、前記フィルムを下方に撓ませるバッファ装置であって、
前記フィルムの両縁部にその上方から接触する一対のテンションロールと、前記一対のテンションロールの重さに相当する釣合錘の荷重を前記一対のテンションロールに上向きに加える保持手段と、前記一対のテンションロールを下降させる動力を発生する駆動手段と、前記駆動手段の動力を前記一対のテンションロールに伝達し又は遮断するクラッチとを備え、
前記クラッチが前記駆動手段の動力を前記一対のテンションロールに伝達することにより、前記一対のテンションロールを下降させ、前記クラッチが前記駆動手段の動力を遮断した状態で、前記一対のテンションロールが、前記保持手段の釣合錘に釣り合うことを特徴とするバッファ装置。
【請求項3】
前記クラッチが、前記駆動手段の動力を前記一対のテンションロールに伝達する動作と、前記駆動手段の動力を遮断する動作とを、交互に繰り返すことを特徴とする請求項2に記載のバッファ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−73587(P2009−73587A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241822(P2007−241822)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】