説明

フィルム状触媒の製造方法

【課題】触媒層に損傷を与えることなく、所望形状に加工できるフィルム状触媒の製造方法を提供する。
【解決手段】支持体の一面又は両面に触媒層を形成して、フィルム状触媒を製造する工程、前記フィルム状触媒を曲げ加工する工程、必要に応じて切断する工程を有している、フィルム状触媒の製造方法であって、前記曲げ加工工程において、曲げ加工具として、互いに歯が噛み合うように対向配置された2つの歯車を使用し、前記フィルム状触媒の触媒層と2つの歯車との間に圧縮率が40〜95%の保護材を介在させた状態で曲げ加工する、フィルム状触媒の製造方法。触媒層に損傷を与えることなく、所望形状に加工できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気液反応用等の触媒として適しているフィルム状触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム状基材に触媒を担持させたフィルム状触媒が知られている(特許文献1)。このフィルム状触媒は、表面積を増加させる目的で波形やハニカム状に加工成形することがあるが、その成形加工時において、成形加工具との接触により、基材に担持させた触媒層にしわが生じたり、場合によっては、触媒が部分的に脱落したりする問題がある。
【0003】
特許文献2には、触媒層を有する金属基材を柔軟な板状部材で挟んだ後、一対の合成樹脂製歯車の間に通すことで、波形形状に成形した後、金属基材を加熱する方法が記載されており、柔軟な板状部材として上質紙やポリエチレン樹脂で挟んで触媒体を加工することが記載されている。このような板状部材の使用では、歯車間のかみ合わせの空間において触媒層に働く応力が十分に緩和できず、触媒層にダメージを与えてしまう場合があった。また歯車間のかみ合わせの空間においては触媒層および板状部材にかかる圧力が増大し、合成樹脂製歯車への応力付加が大きくなりこの歯車の耐久性が損なわれてしまう。また走行時に板状部材にしわが発生した場合には、該しわ部分で板状部材の総厚みが実質的に増大するため非常に大きな応力が触媒層にかかり触媒層の機械的な破壊が避けられないなど多くの課題が存在していた。
【0004】
特許文献3には、無機繊維又は網状体に触媒成分が塗布された触媒塗布体を加熱成形する金型を用いた成形装置でプレス成形する方法が記載されており、この金型の表面に可とう性の多孔質層を設けた成型装置が記載されている。これにより金型金属自体の磨耗が抑制されるが、このように金型に設けた表面の多孔質層自体に強度や耐久性を持たせることが困難であった。成形加工において金型および多孔質層に応力がかかった際に、特にその界面に応力が集中し多孔質層と金型に剥離が生じてしまうなど、また金型金属に多孔質層を安定的に定着させることが難しく、すなわち成形使用において耐久性を持たせることが難しかった。またアクリルゴムなどの素材を多孔質層に使用した場合には多孔質層の摩擦係数が高いために触媒体に摩擦力がかかることによる触媒体の損傷が発生するなどの課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2005/035122号
【特許文献2】特開8−141393号公報
【特許文献3】特開2000−189814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、触媒層に損傷を与えることなく、所望形状に加工できるフィルム状触媒の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、課題の解決手段として、下記の各発明を提供する。
1.支持体の一面又は両面に触媒層を形成して、フィルム状触媒を製造する工程、前記フィルム状触媒を曲げ加工する工程、を有している、フィルム状触媒の製造方法であって、
前記曲げ加工工程において、曲げ加工具として、互いに歯が噛み合うように対向配置された2つの歯車を使用し、フィルム状触媒の触媒層と2つの歯車との間に圧縮率が40〜95%の保護材を介在させた状態で曲げ加工する、フィルム状触媒の製造方法。
2.フィルム状触媒の厚み(t1)と前記保護材の総厚み(t2)との比率t2/t1が4〜20であり、前記2つの歯車の以下に定義される間隔(T)と前記t1、t2との関係が、t1<T<t1+t2である、フィルム状触媒の製造方法。
【0008】
ただし、Tは、2つの歯車の凸部と凹部を噛み合わせて、両歯車間距離を最短距離まで近づけたところを0基準とした歯車間距離である。
3.支持体の一面又は両面に触媒層を形成して、フィルム状触媒を製造する工程、前記フィルム状触媒をプレスして曲げ加工する工程、を有している、フィルム状触媒の製造方法であって、
前記曲げ加工具が、上側と下側の2つの板状曲げ加工具を備えており、前記2つの板状曲げ加工具が、平板上に波形の歯を有し、それぞれの波形の歯の凹部と凸部が重なり合うように対向配置されたものであり、
前記上側と下側の2つの板状曲げ加工具によりプレス加工するとき、前記フィルム状触媒の触媒層と前記曲げ加工具との間に圧縮率が40〜95%の保護材を介在させた状態で曲げ加工する、フィルム状触媒の製造方法。
4.前記保護材が、動摩擦係数が0.05〜0.25のものである、フィルム状触媒の製造方法。
5.前記保護材が不織布であるフィルム状触媒の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、触媒層に損傷を与えることなく、所望形状に加工されたフィルム状触媒を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の製造方法を説明するための概念図。
【図2】図1に示す歯車間隔を説明するための部分拡大図。
【図3】本発明の製造方法で得られたフィルム状触媒を用いた触媒集合体の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)第1の製造方法
<長尺状のフィルム状触媒の製造工程>
まず、最初の工程にて、長尺状の支持体の一面又は両面に触媒層を形成して、長尺状のフィルム状触媒を製造する。なお、第1の製造方法は、長尺状のフィルム状触媒の加工に適しているが、所望形状の1枚ごとのフィルム状触媒の加工にも適用できる。
【0012】
(塗料組成物の調製工程)
長尺状のフィルム状触媒の製造に用いる塗料組成物は、次のようにして調製することができる。
【0013】
塗料組成物に含まれる粉末状触媒は、触媒活物質又は触媒活物質が多孔性材料に担持されたものを用いることができる。
【0014】
触媒活物質としては、適用される化学反応に有効な成分であればよく、Ag,Au,Cu,Ni,Fe,Al、第4周期遷移金属元素、白金族元素、周期律表の3A属元素、アルカリ金属類、アルカリ土類金属等の金属元素およびその金属酸化物等を挙げることができる。
【0015】
多孔性材料は、触媒活物質を担持する触媒担体となるもので、活性炭、アルミナ、シリカ、ゼオライト、チタニア、シリカ−アルミナ、珪藻土等を挙げることができ、これらより選ばれる一種以上の多孔性材料が好ましく使用できる。より好ましくは高表面積を有する多孔性材料が使用でき、その他にもモレキュラーシーブ等を使用できる。
【0016】
触媒担体に触媒活物質を担持させる方法としては、通常の含浸法、共含浸法、共沈法、イオン交換法等の公知の方法が適用できる。
【0017】
粉末状触媒は、平均粒径で0.01〜500μmのものが好ましく、より好ましくは0.5〜150μm、さらに好ましくは1〜50μmの粒子径を有するもので、その分布がシャープなものが好ましい。さらにBET法による比表面積が1〜500m2/gのものが好ましく、より好ましくは5〜200m2/g、さらに好ましくは10〜100m2/gのものである。
【0018】
塗料組成物中の固形分(100質量%)のうち粉末状触媒の含有割合は、好ましくは60〜90質量%、より好ましくは60〜85質量%、さらに好ましくは70〜85質量%である。
【0019】
塗料組成物に用いられるバインダーは、粉末状触媒同士および支持体表面への結着性に優れ、且つ反応環境に耐え、反応系に悪影響を与えないものが好ましい。このようなバインダーとしては、カルボキシメチルセルロースやヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリ四フッ化エチレンやポリフツ化ビニリデン等のフッ素系樹脂、ポリビニルアルコール、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂等の種々の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂が用いられ、これら合成樹脂に硬化剤による架橋反応を導入することでより高分子化が図られるものも用いることができる。なかでもフェノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が好ましく、より好ましくは硬化時に縮合反応を伴う熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0020】
バインダーとして熱硬化性樹脂を用いると、硬化反応による架橋密度の向上から塗膜強度、結着性が向上し、さらに縮合反応による触媒塗膜の多孔化から粉末状触媒のもつ触媒活性を有効に引き出すことができる。
【0021】
本工程の製造方法で得られたフィルム状触媒をアルコールと1級アミン又は2級アミンから3級アミンを製造する反応に用いる場合、粉末状触媒とバインダーとの好ましい組合せの一例として、銅−ニッケル−ルテニウム3元系の粉末状触媒とフェノール樹脂との組合せを挙げることができる。
【0022】
塗料組成物中の固形分(100質量%)のうちバインダーの含有割合は、好ましくは10〜40質量%、より好ましくは15〜40質量%、さらに好ましくは15〜30質量%である。
【0023】
粉末状触媒とバインダーの含有割合を所定範囲内とすることにより、粉末状触媒の露出度をコントロールすることができるようになり、さらに粉末状触媒が本来有している触媒活性能を引き出すことができ、触媒層の脱落性も改善することができる。
【0024】
固形分中のバインダーの含有割合が40質量%以下であると、粉末状触媒の表面を覆うバインダーの厚みあるいはバインダーによる被覆率が適度となり、粉末状触媒のもつ触媒活性が十分に発揮される結果、高い触媒活性を示すことができる。固形分中のバインダーの配合割合が10質量%以上であると、触媒活性が十分に発現し、粉末状触媒同士または粉末状触媒−支持体間の結着力が向上し、フィルム状触媒の製造プロセス中および反応運転中に触媒層が剥離して一部が脱落する量が抑制される。
【0025】
塗料組成物では、粉末状触媒、バインダーに加えて、粉末状触媒表面の塗れ性を改善するとともに、バインダーを溶解し、これら配合物の混合・均一化を促進するために溶媒を用いる。
【0026】
溶媒は、粉末状触媒の触媒活性に悪影響を与えないものであればよく、使用されるバインダーの種類に応じて、水溶性または非水溶性の各種のものを選択することができ、この溶媒の選択によってフィルム状触媒の細孔構造をコントロールすることができる。また溶媒は、バインダーの溶解性が良好なものが好ましく、また2種以上の溶媒を組み合わせて使用しても良く、使用したバインダーに合わせた溶媒の選択によって、触媒層の細孔構造を制御することができる。
【0027】
溶媒としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、アリルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル等のグリコールないしその誘導体類;グリセロール、グリセロールモノエチルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル等のグリセロールないしその誘導体類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;流動パラフィン、デカン、デセン、メチルナフタレン、デカリン、ケロシン、ジフェニルメタン、トルエン、ジメチルベンゼン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、プロピルベンゼン、シクロヘキサン、部分水添されたトリフェニル等の炭化水素類、ポリジメチルシロキサン、部分オクチル置換ポリジメチルシロキサン、部分フェニル置換ポリジメチルシロキサン、フルオロシリコーンオイル等のシリコーンオイル類、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、クロロジフェニル、クロロジフェニルメタン等のハロゲン化炭化水素類、ダイルロル(ダイキン工業(株)製)、デムナム(ダイキン工業(株)製)等のフッ化物類、安息香酸エチル、安息香酸オクチル、フタル酸ジオクチル、トリメリット酸トリオクチル、セバシン酸ジブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ドデシル等のエステル化合物類、そのほかジメチルホルムアミド、N−メチル−ピロリドン、アセトニトリル、エチルアセテート等を挙げることができる。
【0028】
塗料組成物には、上記各成分のほかに、分散助剤として界面活性剤やカップリング剤、骨材として無機粒子、繊維状物質等、多孔化助剤として高沸点溶媒等を配合することができる。カップリング剤は、無機フィラーと有機のポリマーマトリックスとの間の界面に分子架橋を行い、物性を改善する効果がある。
【0029】
カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤およびアルミネート系カップリング剤として一般に知られたものが使用でき、複数のカップリング剤を組み合わせて配合してよく、濃度調整のために相溶性のある有機溶媒で希釈して用いてもよい。
【0030】
繊維状物質としては、有機繊維又は無機繊維が用いられる。有機繊維としては、ポリアミド系のナイロン6、ナイロン66やアラミッド繊維、ポリビニルアルコ−ル系繊維、ポリエステル系のポリエチレンテレフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレ−ト繊維、ポリアリレ−ト繊維、ポリ塩化ビニリデン系、ポリ塩化ビニル系、ポリアクリロニトリル系、ポリオレフィン系のポリエチレンやポリプロピレン繊維等を挙げることができる。また有機繊維には、有機再生繊維が含まれ、セルロ−ス系のレ−ヨン、アセテ−ト等を挙げることができる。無機繊維としては、ガラス繊維や炭素繊維、活性炭素繊維、セラミック繊維等を用いることができる。前記各繊維を配合することにより、骨材効果の発現により触媒層の機械強度を向上させることができる。
【0031】
塗料組成物の調製は、各成分を均一に混合できる方法であれば特に制限されないが、本発明においてはメディア型ミルやペントシェーカーを用いて調製することが好ましい。メディア型ミルを使用することにより、その構造、機構から、上記した塗料組成物を構成する各成分を均一に処理することができるため、粉末状触媒の粒子径・分散状態を制御して、フィルム状触媒の触媒層の孔径分布を制御することに適している。
【0032】
メディア型ミルとしては、ボールミル、アトライター、ADミル、ツインADミル、バスケットミル、ツインバスケットミル、ハンディミル、グレンミル、ダイノミル、アペックスミル、スターミル、ビスコミル、サンドグラインダー、ビーズを用いたペイントシェーカー等を挙げることができる。なお、本発明にはメディア型ミル以外の分散機として、ディゾルバータイプの混合分散機も用いることもできる。
【0033】
塗料組成物中の固形分は、製膜された触媒層からの溶媒の脱離時に細孔構造が制御され、細孔構造の形成に影響を与えるため、10〜80質量%が好ましく、より好ましくは20〜70質量%、さらに好ましくは25〜65質量%である。また塗料組成物の粘度は、塗布方式によって好ましい範囲で選択されるもので、例えば5〜10,000mPas、好ましく20〜5000mPas、より好ましく50〜1000mPasである。
【0034】
(フィルム状触媒の製造)
長尺状の支持体上に前記塗料組成物を塗布・製膜して、触媒中間体を製造する。その後、常温で乾燥(養生)することができる。塗布方法は従来公知の方法を用いることができ、ブレード、ロール、ナイフ、バー、スプレイ、ディップ、スピン、コンマ、キス、グラビア、ダイコーティング等、各種塗布法を挙げることができる。ここで支持体上への磁性層の形成は、塗布以外にも、PDV、CVDなどを用いることができる。
【0035】
フィルム状触媒は、触媒層の厚みが500μm以下であるものが好ましく、100μm以下であるものがより好ましく、50μm以下のものがさらに好ましい。また、単位面積当たりの触媒担持量は、0.5〜100g/m2が好ましく、1〜60g/m2がより好ましく、10〜30g/m2がさらに好ましい。
【0036】
本発明で用いる支持体は、長尺状のもの、もしくはシート状のものであり、長さや幅は特に制限されるものではなく、厚さは1mm以下であることが好ましい。
【0037】
支持体の材質は、銅箔、ステンレス箔、アルミ箔等を挙げることができ、好ましくは加工性および耐食性から銅箔、ステンレス箔を用いることができる。
【0038】
さらに支持体の表面は、触媒層との密着性を向上させる観点から、粗面化処理またはカップリング処理されていることが望ましい。このカップリング処理は前述したカップリング剤が使用でき、好ましく塗料調製に用いたものと同種のものが使用できる。
【0039】
乾燥および硬化工程は、支持体上に塗料組成物を塗布・製膜後、塗料組成物に含まれている溶媒や未反応のモノマー等を除去することを目的とするものであるが、乾燥時に乾燥に付随して硬化反応が進行する場合のほか、塗料組成物の組成に応じて加熱温度や加熱時間を調整することによって、乾燥と並行して、部分的に硬化反応を進行させることもできる。
【0040】
乾燥および硬化工程は、空気、水蒸気または窒素、アルゴン等の不活性ガス等を加熱した雰囲気中で行うか、またはこれら熱媒体を吹き付ける方法が好ましく用いられ、その他、赤外線や遠赤外線等輻射熱を利用する方法、電磁波による誘導電流を用いた加熱方式等種々の手段を用いることができ、これらを組み合わせた方法あるいは、常温における自然乾燥(風乾)による方法も用いることができる。この工程において脱離する成分としては、溶媒を主とする揮発成分および硬化反応生成物である。溶媒以外の揮発性分としては未反応のモノマー成分等が含まれる。
【0041】
乾燥および硬化条件は、塗料組成物に含まれるバインダーおよび溶媒を主とする揮発成分の物性に応じて調整することが必要であり、溶媒の選択と乾燥および硬化条件の設定によって触媒層の多孔構造(細孔容量)を制御することができる。なお、熱風による加熱処理においては、乾燥温度が高く、乾燥風量が大きいほど、触媒層からの前記成分の脱離が早く、細孔構造(孔径、容量)が大きくなると考えられる。また乾燥温度が低く、乾燥風量が小さいほど細孔構造が小さくなると考えられる。
【0042】
塗料組成物から溶媒を主とする揮発成分の脱離のほか、硬化・架橋反応が進行して形成される架橋構造(ネットワーク構造)の形成時、さらに縮合反応を伴う場合には縮合生成物の脱離段階に細孔構造が決定される。
【0043】
乾燥および硬化処理は、本発明に用いられる粉末状触媒が本来持っている触媒活性に悪影響を与えない乾燥方法および乾燥条件を採用する。
【0044】
本発明においては、目的とするフィルム状触媒を得るための熱風乾燥による代表的な乾燥および硬化条件としては、60〜400℃、好ましくは70〜250℃、より好ましくは80〜150℃の温度で、好ましくは0.5〜30m/sec、より好ましくは1〜20m/secの風速にて、好ましくは1秒以上、より好ましくは10分以上、さらに好ましくは30分以上、乾燥および硬化処理を実施することが望ましい。
【0045】
なお、硬化反応を伴わない乾燥のみを目的とする場合には、塗料組成物を支持体に塗布後、速やかに乾燥することが好ましく、このときの乾燥条件を調整することで、塗膜の多孔構造をコントロールすることができる。そのため支持体上に触媒層を製膜してから、溶媒を主とする揮発成分を脱離させるまでの時間は、より短いほうが望ましく、好ましく2時間以内、より好ましくは30分以内、さらに好ましくは5分以内である。
【0046】
本発明においては、バインダーが熱硬化性樹脂を含有する場合、塗布乾燥して得られた触媒層に未硬化物が残った状態(プレポリマーの状態)で触媒中間体を形状加工した後、最終加熱処理することが望ましい。
【0047】
この最終加熱処理を実施する前に行う触媒中間体の乾燥および硬化処理は、熱硬化性樹脂に未硬化物が残った状態で終了させてもよい。形状加工時のハンドリングが実施できるまで一部が硬化しており、触媒層の保持性、機械的強度が製膜時に比べ向上していることが望ましく、塗膜内部に揮発成分等が数%のオーダーで残留していてもよい。
【0048】
目的とするフィルム状触媒を得るための最終加熱処理前の乾燥は、熱風乾燥による代表的な条件としては、60〜400℃、好ましくは70〜250℃、より好ましくは80〜150℃の温度で、好ましくは0.5〜30m/sec、より好ましくは1〜20m/secの風速にて、好ましくは0.5〜300秒間、より好ましくは1〜100秒間、乾燥処理をすることが望ましい。
【0049】
<長尺状のフィルム状触媒を曲げ加工する工程>
次に、図1により、本工程について説明する。図1は、本工程を説明するための概念図である。
【0050】
送り出しロール1には、前工程で製造された長尺状のフィルム状触媒10が巻き取られており、送り出しロール1から、矢印方向に順次送り出される。長尺状のフィルム状触媒10の一面又は両面には、触媒層が形成されている。
【0051】
送り出しロール2、3には、いずれも保護材11が巻き取られており、送り出しロール1からの長尺状のフィルム状触媒10の送り出しと並行して送り出される。保護材11は、1枚でよいが、2枚重ね以上にしてもよい。2枚重ね以上にしたときには、曲げ加工時に歯車15と歯車16の間に存在する2枚の保護材間に滑りが生じ、フィルム状触媒に与えられる摩擦力が低減される。また2枚の保護材間に空隙が形成されるため、見かけ上の圧縮率が増大し、曲げ加工時のフィルム状触媒に与えるストレスを低減できる点で好ましい。
【0052】
図1に示すように、送り出しロール3から送り出された保護材11は、支えロール4を使用することで、途中で送り出し方向が変えられている。なお、長尺状のフィルム状触媒10の一面のみに触媒層が形成されている場合には、前記触媒層と接触する方の保護材11のみを送り出してもよいし、両方の保護材11を送り出してもよい。
【0053】
送り出しロール1と送り出しロール2、3の送り出し速度は同一、又は送り出しロール1の方が速くなる。例えば、0.5〜50m/minの範囲にすることができる。
【0054】
保護材11は、長尺状のフィルム状触媒10と同じ幅であるか、少し大きな幅を有しているものであり、長尺状のフィルム状触媒10の厚み(t1)と保護材11の総厚み(t2)との比率t2/t1は4〜20が好ましく、4〜12がさらに好ましい。
厚み(t1)は、触媒層の総厚み(支持体の両面に触媒層がある場合は、支持体厚み、一方の触媒層厚みおよび他方の触媒層厚みの合計厚み)である。厚み(t2)は曲げ加工に用いられる保護材の総厚み(支持体の両面に触媒層がある場合は、保護材2枚の総厚みであり、さらに支持体の片面に2枚ずつ重ねて曲げ加工する場合には、保護材4枚の総厚み)である。
【0055】
保護材11は、実施例に記載の方法により測定される圧縮率が40〜95%のものであり、好ましくは50〜95%、より好ましくは70〜95%のものである。圧縮率を前記範囲にすることにより、触媒層が歯車から受ける応力を保護材11が圧縮されることによって分散することが可能となり、曲げ加工時において長尺状のフィルム状触媒10の触媒層が損傷を受けて、しわが発生したり、触媒が脱落したりすることが防止される。
【0056】
また保護材11にしわが発生した場合にも、保護材11が歯車同士のかみ合わせの空間で圧縮によりその厚さが実質的に薄く変化するため触媒層への局所的な応力集中による触媒層の損傷が阻害される。
【0057】
保護材11は、動摩擦係数が0.05〜0.25のものが好ましく、0.05〜0.2のものがより好ましく、0.1〜0.2のものがさらに好ましい。動摩擦係数を前記範囲とすることにより、曲げ加工時において、長尺状のフィルム状触媒10と保護材11が接触した状態で力が加えられたとき、保護材11が長尺状のフィルム状触媒10の表面(触媒層表面)を滑って、触媒層に損傷を与えることが防止される。つまり、たとえ高い圧縮率でも、変形によって硬化した場合には、触媒層への損傷が予想されるので、好ましくは動摩擦係数が小さい保護材を用いて、触媒層への直接の影響を小さくすることが望ましい。
【0058】
保護材11は、空隙率が50%以上のものが好ましく、80〜98%のものがより好ましく、90〜98%のものがさらに好ましい。空隙率を前記範囲とすることにより、保護材自体が圧縮変形し易くすることができる。
【0059】
保護材を介在させた状態で歯車を用いて曲げ加工する際には、歯車と歯車の隙間にフィルム状触媒を保護材で挟んだ状態で応力が掛かる。このとき、空隙率が前記範囲で圧縮変形し易い保護材、例えば繊維の集合体からなる不織布シートを用いた場合、繊維と繊維の間には空隙構造が存在しているため、に形状加工のための応力が掛かった際には、保護材(不織布シート)が圧縮され、繊維間の距離が縮められて行くことにより、フィルム触媒に掛かる応力上昇や局部的な集中を緩和するように作用することができる。すなわち、本発明に使用する保護材の内部には、このような作用を発現させる観点で空隙を有することが好ましい。
【0060】
繊維の集合体からなる保護材では、空隙率が小さすぎると繊維と繊維同士が接触して交差する箇所が多くなり、繊維間に空隙を有しているにも拘わらず、繊維が変形し、実質的に空隙を減少させながら保護材が圧縮変形することから、曲げ加工時の応力を緩和する効果が現れない。一般的なフィルム素材、例えば特許文献2に開示されているポリエチレン樹脂では、この空隙率が非常に小さく、形状加工時にかかる応力を分散させる効果が無く、触媒層にダメージを与えてしまう。また同特許文献2に開示されている上質紙には、たしかにセルロース繊維間に空隙が存在しているが、その量は少なく、保護材を構成する繊維が変形・移動することなく、保護材の厚みが圧縮されながら応力を緩和するという効果が現れない。
【0061】
保護材11は、不織布からなるものが好ましく、不織布の材質は特に制限されず、公知のPET、PE、PPなど単独の繊維材質からなるものや、2種以上の繊維材質の繊維が含有されるもの、あるいは芯鞘構造をとっているものなどを使用することができる。
【0062】
長尺状のフィルム状触媒10は、両側から保護材11で挟まれた状態で、互いに歯が噛み合うように対向配置された2つの歯車15、16間に通される。このとき、2つの歯車15、16と長尺状のフィルム状触媒10との間には、それぞれ1枚ずつの保護材11が位置している。
【0063】
2つの歯車15、16は、鉄、ステンレス等の金属製のものも使用できる。このように歯車15、16を使用した時は、特許文献2のように、合成樹脂製の歯を有する歯車を用いた場合と比べると、曲げ加工が容易であるとともに耐摩耗性に優れ歯車の使用寿命を長くすることができる他、歯車を加熱しながら曲げ加工することもできる。
【0064】
歯車15,16には、例えば平歯車を使用する事ができ、円ピッチ(歯車のピッチ円の円周長さを歯数で割った値)が2〜20mm、歯たけが1〜20mmのものなどで加工することができる。
【0065】
このように長尺状のフィルム状触媒10が2つの歯車15、16間を通ることで、波形状に加工された長尺状のフィルム状触媒10’となる。波形状に加工された長尺状のフィルム状触媒10’は、2つの歯車15、16による押出作用で矢印方向に押し出されていき、2枚の保護材11は、それぞれ巻き取りロール2’、3’で巻き取られる。
【0066】
なお、1枚ごとのフィルム状触媒(例えば、正方形)を曲げ加工するときは、例えば、2つの歯車15、16間に正方形のフィルム状触媒を1枚ずつ差し込んで曲げ加工する方法、送り出しロール2から送り出される保護材11上に、正方形のフィルム状触媒を置いた状態又は置いた上で仮止めした状態で連続的に送り出し、曲げ加工する方法を適用することができる。この方法の場合には、切断工程は不要になる。
【0067】
この曲げ加工工程において、長尺状のフィルム状触媒10と2つの歯車15、16の間に所定の圧縮率を有する保護材11が介在されているため、歯車15、16により強い力が加えられても、長尺状のフィルム状触媒10が有する触媒層が損傷を受けることが防止され、所望形状に曲げ加工される。
【0068】
互いに噛み合う2つの歯車15、16の間隔(T)(図2参照)と前記t1、t2との関係は、t1<T<t1+t2である。前記関係にすることにより、2つの歯車の間でフィルム状触媒が保護材と密着した状態で保持され、保護材が圧縮されることによって歯車の形状に沿ってフィルム状触媒が良好な状態で送ることができる。従って、形状付与による曲げ加工性が良くなり、長尺状のフィルム状触媒10が有する触媒層が損傷をより受け難くなる。ここで、前記Tは、2つの歯車の凸部と凹部を噛み合わせて、両歯車間距離を最短距離まで近づけたところを0基準とした場合の歯車間距離である。
【0069】
<切断する工程>
前工程で波形状に加工された長尺状のフィルム状触媒10’は、所望形状および大きさに切断された後、例えば、図3に示すように複数枚を組み合わせた触媒集合体20として使用することができる。
【0070】
(2)第2の製造方法
次に、上記第1の製造方法とは別実施形態の製造方法について説明する。本実施形態の製造方法は、1枚ずつプレス加工する方法である。
【0071】
フィルム状触媒は、上記第1の製造方法と同様にして製造することができるが、予め所望形状および大きさに調製されたものを用いることができるため、第1の製造方法において長尺状のフィルム状触媒を用いた場合のような後工程の切断工程は不要になる。
【0072】
曲げ加工工程では、対向配置された2つの板状曲げ加工具を使用する。2つの板状曲げ加工具は金属製のものである、平板上に凹凸からなる波形歯を有する上側曲げ加工具と、平板上に、上側曲げ加工具の波形歯の凹部と凸部に重なり合う凸部と凹部の波形歯を有する下側曲げ加工具とからなるものである。
【0073】
まず、下側曲げ加工具の波形歯の上に保護材を置き、その上に所望形状のフィルム状触媒(両面又は1面に触媒層を有しているもの)を置き、さらにその上に保護材を置く。次に、上側曲げ加工具により、保護材を介してフィルム状触媒をプレスして、波形状に加工されたフィルム状触媒を得る。なお、2つの曲げ加工具を左右に配置してプレス加工する方法も適用できる。
【0074】
保護材は、上記した第1の製造方法と同じものであるから、曲げ加工時にフィルム状触媒の触媒層が損傷を受けることが防止される。
【0075】
本工程の製造方法で得られたフィルム状触媒は、前記触媒の種類により用途は異なるが、有機合成反応用の触媒として使用することができ、また状態として、気相、液相、液反応系に適用することができ、例えば、オレフィンの酸化、アルコールの酸化、オレフィンの異性化、芳香族類の異性化、カルボニル化、エステルの水素化、好ましくは脱水素反応、水素付加反応に用いることができる。特に、銅−ニッケル−ルテニウム3元系の粉末状触媒とバインダーとしてフェノール樹脂とを組み合わせたものは、脱水素反応、水素付加反応をも伴うアルコールと1級アミン又は2級アミンから3級アミンを製造する反応等に適している。
【実施例】
【0076】
(1)圧縮率
「風合い評価の標準化と解析」,第2版,社団法人日本繊維機会学会 風合い計量と規格化研究委員会,昭和55年7月10日発行に記載の方法に基づいて、以下の方法で測定した。測定機として、カトーテック(株)製の商品名KESFB3−AUTO−Aを用いて測定した。
【0077】
20cm×20cmの試験片を準備し、測定装置の試験台に取り付けた。前記試験片を2cm2の円形面を持つ銅板間で圧縮した。圧縮速度は20μm/sec、圧縮最大荷重は59kPaであった。圧縮率を下記式から求めた。
圧縮率(%)=(T0−Tm)/T0×100
(T0は、荷重49Paにおける試験片の厚み、Tmは、最大荷重59kPaにおける試験への厚みを示す)。
【0078】
(2)動摩擦係数(MIU)
「風合い評価の標準化と解析」,第2版,社団法人日本繊維機会学会 風合い計量と規格化研究委員会,昭和55年7月10日発行に記載の方法に基づいて、以下の方法で測定した。測定機として、カトーテック(株)製の商品名KESFB4−AUTO−Aを用いて測定した。
【0079】
20cm×20cmの試験片を準備し、測定装置の試験台に取り付けた。接触子の接触面を49cNの力で試験片に圧着し、試験片を0.1cm/secの一定速度で水平に2cm移動させた。試験片には、19.6cN/cmの一軸張力が与えられた。接触子は、0.5mm径のピアノ線を20本並べ、幅10mmでU字状に曲げたもので、重錘によって49cNの力で接触面を試験片に圧着させている。
【0080】
下記式(i)で表されるμ(摩擦係数)の値は、試験片の表面を移動する間中変動するので、摩擦係数(MIU)は、式(ii)で求められる。
【0081】
μ=F/P (i)
(Fは摩擦力[N]、Pは接触子の荷重[N]を示す)
MIU=(1/Lmax)∫0LmaxμdL (ii)
(Lは接触子が試験片表面を移動する距離、Lmaxは最大移動距離(=2cm)を示す)。
【0082】
(3)厚さ
保護材の厚さはJIS L 1096に準拠した方法にて測定し、測定子直径25.2mm、荷重0.343N、測定圧力0.7kPaとした。
【0083】
(4)空隙率
保護材の厚さをte(mm)とし、保護材の坪量Bw(g/m2)とすると、保護材の見掛け密度ρLはρL=Bw/te・10-3(g/cm3)で与えられる。
アキュピックII1340(島津製作所社製)を用い、ステンレス製の内径18.5mm,長さ39.5mm,容量10cm3のセルに保護材を入れ、次いで、試料セル中の保護材の容積をヘリウムの圧力変化によって測定し、求められた容積とサンプルの重さから保護材の密度ρrを算出する。
得られた2つの密度から、保護材の空隙率Rv(%)を次式より求める。
Rv=(1-ρL/ρr)×100 (%)
【0084】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。
【0085】
実施例および比較例
製造例1(粉末状触媒の製造)
合成ゼオライトに担持させた銅・ニッケル・ルテニウム3元系の触媒活物質よりなる粉末状触媒を、以下の様に調製した。
【0086】
容量1Lのフラスコに合成ゼオライト(平均粒径6μm)を仕込み、次いで硝酸銅、硝酸ニッケルおよび塩化ルテニウムを、各金属原子のモル比でCu:Ni:Ru=4:1:0.01となるように水に溶かしたものを入れ、攪拌しながら昇温した。90℃で10質量%炭酸ナトリウム水溶液をpH9〜10にコントロールしながら徐々に滴下した。1時間の熟成後、沈殿物を濾過・水洗後80℃で10時間乾燥し、600℃で3時間焼成して、粉末状触媒を得た。得られた粉末状触媒における、金属酸化物の割合は50質量%、合成ゼオライトの割合は50質量%であった。
【0087】
(フィルム状触媒の製造)
溶媒としてMIBK、バインダーとしてフェノール樹脂(住友ベークライト製PR−9480)、製造例1で調製した粉末状触媒の順に、250mlの広口ポリエチレン製ビンに入れた。粉末状触媒75質量部(65g)に対し、フェノール樹脂の不揮発分が25質量部となる配合比率とし、MIBKの配合量は、配合物の固形分が60質量%となる量とした。さらに分散メディアとして、直径1mmのガラスビーズ(見かけ容積65ml)を広口ポリエチレン製ビンに入れた。
【0088】
広口ポリエチレン製ビンをペイントシェーカーにセットし、30分間混合分散処理を行い、塗料組成物を得た。
【0089】
長尺状の銅箔(厚さ40μm、秤量310g/m2)を支持体とし、前記塗料組成物を銅箔の両面にコンマコーターにより塗布した。塗工機付帯の乾燥炉では100℃で120秒間処理を行い、その後、フィルム状触媒を得た。触媒層の厚さは片面50μmずつ製膜し、銅箔と併せた総厚で140μmであった。また触媒層は、片面あたり63g/m2の担持量であり、粉末状触媒の担持量は片面あたり47g/m2であった。
【0090】
(フィルム状触媒の曲げ加工)
保護材として下記のものを使用し、図1に示す装置を用い、表1に示す条件にて、波板状に加工されたフィルム状触媒を製造した。送り速度は2m/minとした。得られた波板状に加工されたフィルム状触媒について、下記の試験を行った。加工に用いた歯車15、16は同じ形状のものを用いており、円ピッチ4mm、歯たけ2.5mmのものを使用した。結果を表1に示す。
【0091】
保護材1:メルトブロー法で作製したPE(鞘)/PET(芯)からなる(坪量20g
/m2)の不織布
保護材2:東洋紡製のスパンボンド不織布エクーレ3151A(坪量15g/m2
保護材3:三井化学製のスパンボンド不織布シンテックスPS104(坪量20g/m2
保護材4:ユニチカ製のスパンボンド不織布エルベスS1003WDO(坪量100g/m2
保護材5:綿100%の織布(坪量144g/m2
保護材6:東洋紡製のスパンボンド不織布エクーレ3A01A(坪量100g/m2
保護材7:三井化学製のスパンボンド不織布シンテックスPS120(坪量100g/m2
保護材8:日本製紙製のPPC用紙リサイクルカット版100N(坪量68g/m2
保護材9:メルトブロー法で作製したPE(鞘)/PET(芯)からなる(坪量15g/m2)の不織布
保護材10:スパンボンド法で作製したPE(鞘)/PET(芯)からなる(坪量70g/m2)の不織布にフッ素加工を施したもの。
保護材11:PTFE繊維からなるパイルシート(起毛高さ2mm,坪量510g/m2
保護材12:PTFE繊維(東レ(株)製のトヨフロン)からなる綾織り織布(坪量466g/m2
保護材13:シリコーンゴムシート(坪量654g/m2,厚さ0.55mm)
保護材14:PETフィルム(坪量45 g/m2,厚さ0.03mm)
【0092】
(製造状態の評価試験)
評価は、<加工試験(1)>波板状に加工されたフィルム状触媒の表面と加工前の触媒材料の表面を、目視で比較観察。<加工試験(2)>保護材にしわが発生した状態で波板状に加工した際のフィルム状触媒の表面と加工前の触媒材料の表面を目視で比較観察。これらについて下記の基準で評価した。また走行状態について<加工試験(1)>中の状況について評価した。
【0093】
<表面状態評価>
◎:<加工試験(1)>触媒層表面に変化が認められない
<加工試験(2)>触媒層表面に変化が認められない
○:<加工試験(1)>触媒層表面に変化が認められない
<加工試験(2)>触媒層表面にしわの転写が見られるが剥がれ(膜の脱落)はない
×:<加工試験(1)>触媒層表面にしわの転写が見られるが剥がれ(膜の脱落)はない
<加工試験(2)>触媒層表面にダメージ(剥がれ)発生(膜の脱落)はない
××:<加工試験(1)>触媒層表面にダメージ(剥がれ)発生
<加工試験(2)>触媒層表面にダメージ(剥がれ)発生
<走行状態評価>
○:保護材およびフィルム状触媒の走行状態が安定
△:保護材もしくはフィルム状触媒の走行が若干乱れ、僅かに蛇行走行が発生
×:保護材もしくはフィルム状触媒が蛇行走行し、走行状態が不安定
【0094】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明のフィルム状触媒の製造方法は、各種有機合成反応用の触媒として使用するフィルム状触媒の製造方法として使用することができる。
【符号の説明】
【0096】
10 長尺状のフィルム状触媒
10’ 波形状に加工されたフィルム状触媒
11 保護材
15、16 歯車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の一面又は両面に触媒層を形成して、フィルム状触媒を製造する工程を行った後、前記フィルム状触媒を曲げ加工する工程を行う、フィルム状触媒の製造方法であって、
前記曲げ加工工程において、曲げ加工具として、互いに歯が噛み合うように対向配置された2つの歯車を使用し、前記フィルム状触媒の触媒層と2つの歯車との間に圧縮率が40〜95%の保護材を介在させた状態で曲げ加工する、フィルム状触媒の製造方法。
【請求項2】
前記フィルム状触媒の厚み(t1)と前記保護材の総厚み(t2)との比率t2/t1が4〜20であり、前記2つの歯車の以下に定義される間隔(T)と前記t1、t2との関係が、t1<T<t1+t2である、請求項1記載のフィルム状触媒の製造方法。
ただし、Tは、2つの歯車の凸部と凹部を噛み合わせて、両歯車間距離を最短距離まで近づけたところを0基準とした場合の歯車間距離である。
【請求項3】
支持体の一面又は両面に触媒層を形成して、フィルム状触媒を製造する工程を行った後、前記フィルム状触媒をプレスして曲げ加工する工程を行う、フィルム状触媒の製造方法であって、
前記曲げ加工具が、上側と下側の2つの板状曲げ加工具を備えており、前記2つの板状曲げ加工具が、平板上に波形の歯を有し、それぞれの波形の歯の凹部と凸部が重なり合うように対向配置されたものであり、
前記上側と下側の2つの板状曲げ加工具によりプレス加工するとき、前記フィルム状触媒の触媒層と前記曲げ加工具との間に圧縮率が40〜95%の保護材を介在させた状態で曲げ加工する、フィルム状触媒の製造方法。
【請求項4】
前記保護材が、動摩擦係数が0.05〜0.25のものである、請求項1〜3のいずれか1項記載のフィルム状触媒の製造方法。
【請求項5】
前記保護材が不織布である、請求項1〜4のいずれか1項記載のフィルム状触媒の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−262145(P2009−262145A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84049(P2009−84049)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】