説明

フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物およびそれを含むフィルム

【課題】フィルムにした際に、剛性と耐衝撃性とのバランスに優れ、かつ外観に優れる樹脂組成物を提供。
【解決手段】プロピレン重合体成分(成分(A))60〜90重量%と、エチレンに由来する構造単位の含有量が20〜48重量%である共重合体成分(成分(B))10〜40重量%とからなり、成分Aの極限粘度([η]A)に対する成分Bの極限粘度([η]B)の比が0.8≦[η]B/[η]A≦2.0であるプロピレン系共重合体(成分(C))と、前記成分(C)100重量部に対して、下記一般式で示される核剤0.001〜0.25重量部とを含有してなり、メルトフローレートが3〜25g/10分であるフィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムにした際に、剛性と耐衝撃性とのバランスに優れ、かつ外観に優れるフィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物およびそれを含むフィルムに関するものである。ここで、「フィルムが外観に優れる」とは、「肉眼で認識できる程度の大きさのフィッシュアイがフィルム中に全くまたは殆ど存在しない」ということを主に意味する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンは、剛性、耐熱性、包装適性に優れるため、食品包装、繊維包装などの包装材料の分野で幅広く用いられている。包装材料の特性としては、剛性、耐衝撃性、ヒートシール性や耐ブロッキング性などが求められ、さらに、フィッシュアイが少なく外観に優れることが求められる。例えば、特許文献1には、特定の構造に従う化合物を含んでなるポリオレフィン樹脂製品が、結晶化温度、および剛性が改善できることが記載され、特許文献2には、特定の要件を満足するプロピレン系ブロック共重合体と、平均粒子径が特定の範囲にある造核剤とを含有するポリプロピレン系樹脂組成物が、剛性と耐衝撃性、特に、落錘衝撃強度が改善できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2004−530006号公報
【特許文献2】特開2006−213918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、剛性と耐衝撃性とのバランスに優れ、かつ外観に優れるフィルムについて、更なる改良が求められていた。
本発明の目的は、フィルムにした際に、剛性と耐衝撃性とのバランスに優れ、かつ外観に優れるフィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物およびそれを含むフィルムを提供することにある。
【0005】
本発明者らは、鋭意検討の結果、本発明が、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、プロピレンに由来する構造単位が主な構造単位である重合体成分(成分(A))60〜90重量%と、エチレンに由来する構造単位の含有量が20〜48重量%であるプロピレン−エチレン共重合体成分(成分(B))10〜40重量%とからなり(但し、成分(A)と成分(B)との合計の重量を100重量%とする。)、成分(A)の極限粘度([η]A)が1.2〜4.0dL/gであり、成分Aの極限粘度([η]A)に対する成分Bの極限粘度([η]B)の比([η]B/[η]A)が0.8≦[η]B/[η]A≦2.0であるプロピレン系共重合体(成分(C))と、前記成分(C)100重量部に対して、下記一般式(I)で示される核剤0.001〜0.25重量部とを含有してなり、温度230℃、荷重21.18Nで測定されるメルトフローレートが3〜25g/10分であるフィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物に係るものである。

(I)

(式(I)中、MおよびMは、それぞれ同一または相異なり、1個の陽イオンであってもよく、ナトリウム、水素、カルシウム、ストロンチウムおよびリチウムよりなる群から少なくとも一つが選ばれる。R、R、R、R、R、R、R、R、R10およびR11は、それぞれ同一または相異なり、水素原子、炭素数1〜9のアルキル基、水酸基、炭素数1〜9のアルコキシ基、炭素数1〜9のアルキレンオキシ基、アミノ基、炭素数1〜9のアルキルアミノ基、ハロゲン原子またはフェニル基を表し、R〜R11の基の中の任意の2つのアルキル基は、相互に結合して炭素数3〜6の炭素環を形成してよく、RとRとは相互にトランス配置またはシス配置である。)
また、本発明は、上記プロピレン系共重合体を含むフィルムに係るものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、剛性と耐衝撃性とのバランスに優れ、かつ外観に優れるフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に用いられるプロピレン系共重合体は、プロピレンに由来する構造単位が主な構造単位である重合体成分(以下、「成分(A)」と記載することがある。)と、エチレンに由来する構造単位の含有量が20〜48重量%であるプロピレン−エチレン共重合体成分(以下、「成分(B)」と記載することがある。)とからなる。
【0009】
成分(A)におけるプロピレンに由来する構造単位の含有量として、好ましくは、90〜100重量%であり、より好ましくは、95〜100重量%であり、更に好ましくは、100重量%である。
【0010】
成分(A)には、必要に応じて、エチレンおよび/または炭素数4〜12のα−オレフィンを共重合させることができ、エチレンおよび/または炭素数4〜12のα−オレフィンに由来する構造単位の含有量として、好ましくは、10重量%以下であり、より好ましくは、5重量%以下である。炭素数4〜12のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が挙げられ、好ましくは1−ブテンである。成分(A)として、好ましくは、プロピレンの単独重合体である。
【0011】
成分(B)におけるエチレンに由来する構造単位の含有量としては、20〜48重量%であり、好ましくは、25〜45重量%である(但し、成分(B)の重量を100重量%とする。)。20重量%未満の場合、耐衝撃性が悪化することがあり、48重量%を超えた場合、外観が悪化(フィッシュアイが増加)することがある。
また、成分(B)は、エチレンに由来する構造単位の他に、プロピレンに由来する構造単位を有し、プロピレンに由来する構造単位の含有量としては、52〜80重量%であり、好ましくは、55〜75重量%であり(但し、エチレンに由来する構造単位の含有量とプロピレンに由来する構造単位の含有量との合計を100重量%とする。)。
【0012】
本発明に用いられるプロピレン系共重合体における成分(A)の含有量としては、60〜90重量%であり、成分(B)の含有量としては、10〜40重量%である(但し、成分(A)と成分(B)との合計の重量を100重量%とする。)。好ましくは、成分Aの含有量は60〜87重量%であり、成分(B)の含有量は13〜40重量%であり、より好ましくは、成分(A)の含有量は65〜85重量%であり、成分(B)の含有量は15〜35重量%である。
成分(A)の含有量が60重量%未満である(すなわち、成分(B)の含有量が40重量%を超える)場合、剛性が低下することがあり、成分(A)の含有量が90重量%を超える(すなわち、成分Bの含有量が10重量%未満となる)場合、耐衝撃性が悪化することがある。
【0013】
本発明に用いられるプロピレン系共重合体における成分(A)の極限粘度(以下、「[η]A」と記載することがある。)は、1.2〜4.0dL/gである。好ましくは、1.3〜3.5dL/gであり、より好ましくは、1.4〜3.0dL/gである。[η]Aが1.2dL/g未満の場合、外観が悪化(フィッシュアイが増加)、あるいは、流動性が高く加工が困難になることがあり、[η]Aが4.0dL/gを超える場合、剛性が低下、あるいは、流動性が低く加工性が悪化することがある。
【0014】
本発明に用いられるプロピレン系共重合体における成分(B)の極限粘度(以下、「[η]B」と記載することがある。)としては、耐衝撃性や外観を維持するという観点から、好ましくは、1.8〜4.5dL/gであり、より好ましくは、2.0〜4.5dL/gであり、更に好ましくは、2.0〜4.0dL/gである。なお、本発明において、プロピレン系共重合体における成分(A)および成分(B)の極限粘度は、ウベローデ型粘度計を用いて135℃テトラリン中で測定する。
【0015】
本発明に用いられるプロピレン系共重合体における成分(A)の極限粘度に対する[η]Bの比(以下、「[η]B/[η]A」と記載することがある。)としては、0.8≦[η]B/[η]A≦2.0の範囲であり、好ましくは、0.9≦[η]B/[η]A≦2.0であり、より好ましくは、1.0≦[η]B/[η]A≦1.9である。[η]B/[η]Aが0.8以下の場合、耐衝撃性が悪化することがあり、2.0を超える場合、外観が悪化(フィッシュアイが増加)することがある。
【0016】
本発明に用いられるプロピレン系共重合体の製造方法としては、例えば、通常の立体規則性触媒を用いて、原料であるプロピレンやエチレンなどを重合させる方法が挙げられる。
【0017】
立体規則性触媒としては、例えば、固体状チタン触媒成分と、有機金属化合物触媒成分と、さらに必要に応じて用いられる電子供与体とを接触させて形成される触媒、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物と、アルキルアルミノキサンとを接触させて形成される触媒系、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とそれと反応してイオン性の錯体を形成する化合物と、有機アルミニウム化合物とを接触させて形成される触媒が挙げられる。中でも好ましくは、固体状チタン触媒成分と、有機金属化合物触媒成分と、さらに必要に応じて用いられる電子供与体とを接触させて形成される触媒である。
【0018】
固体状チタン触媒成分としては、例えば、ケイ素化合物の存在下に、チタン化合物を有機マグネシウム化合物で還元して得られる固体触媒成分前駆体と、ハロゲン化化合物(例えば、四塩化チタン)と、電子供与体(例えば、エーテル化合物、エーテル化合物とエステル化合物の混合物)とを接触させて形成される三価のチタン化合物含有固体触媒成分が挙げられる。
【0019】
有機金属化合物触媒成分としては、例えば、少なくとも分子内に一個のAl−炭素結合を有する有機アルミニウム化合物が挙げられ、好ましくは、トリアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウムとジアルキルアルミニウムハライドとの混合物、または、アルキルアルモキサンであり、より好ましくは、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロライドとの混合物またはテトラエチルジアルモキサンである。
【0020】
電子供与体としては、例えば、酸素含有化合物、窒素含有化合物、リン含有化合物、硫黄含有化合物が挙げられ、好ましくは、酸素含有化合物または窒素含有化合物であり、より好ましくは、酸素含有化合物であり、更に好ましくは、アルコキシケイ素類またはエーテル類である。
【0021】
具体的には、例えば、Si−O結合を有するケイ素化合物の存在下に、一般式Ti(OR4−n(Rは、炭素数1〜20の炭化水素基を表し、Xは、ハロゲン原子を表し、nは0<n≦4の数字を表す。)で表されるチタン化合物を、有機マグネシウム化合物で還元して得られる固体生成物と、エステル化合物及びエーテル化合物と、四塩化チタンとを接触させて形成される三価のチタン化合物含有固体触媒成分(以下、「成分(a)」と記載することがある。)と、有機アルミニウム化合物(以下、「成分(b)」と記載することがある。)と、Si−OR結合(Rは、炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)を有するケイ素化合物(以下、「成分(c)」と記載することがある。)とを接触させて形成される触媒が挙げられる。
【0022】
また、有機アルミニウム化合物の使用量としては、成分(b)中のAl原子/成分(a)中のTi原子のモル比として、通常、1〜2000であり、好ましくは、5〜1500であり、成分(c)/成分(b)中のAl原子のモル比として、通常、0.02〜500であり、好ましくは、0.05〜50である。
【0023】
本発明に用いられるプロピレン系共重合体を製造するための重合方法は、例えば、バッチ式(ひとつの反応槽に原料を投入して反応させる形式)で行ってもよいし、連続式(複数の反応槽を連結して、各槽で順次反応させる方式)で行ってもよい。また、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンのごとき不活性炭化水素溶媒によるスラリー重合もしくは溶液重合、重合温度において液状のオレフィンを媒体としたバルク重合または気相重合、および、それらを連続的に行うバルク−気相重合法等が挙げられ、好ましくは、生産性の観点から、実質的に不活性炭化水素溶媒の不存在下に、第一工程でプロピレンに由来する構造単位が主成分である重合体成分(成分(A))を製造し、次いで、第二工程で気相中プロピレンとエチレンを重合しプロピレン−エチレン共重合体成分(成分(B))を製造する方法である。重合温度としては、通常、−30〜300℃であり、好ましくは、20〜180℃である。重合圧力としては、工業的かつ経済的であるという点で、通常、常圧〜10MPaであり、好ましくは、200kPa〜5MPaである。特に後述の第二工程が気相重合であることが好ましい。
【0024】
本発明に用いられるプロピレン系共重合体のプロピレンに由来する構造単位が主成分である重合体成分(成分(A))およびプロピレン−エチレン共重合体成分(成分(B))の極限粘度、エチレン含量の調整方法としては、重合時の各工程で水素ガスや金属化合物などの分子量調節剤およびエチレンを適切な量を加える方法、重合時の温度・圧力などを調節する方法が挙げられる。
【0025】
本発明に用いられるプロピレン系共重合体のプロピレンに由来する構造単位が主成分である重合体成分(成分(A))およびプロピレン−エチレン共重合体成分(成分(B))のそれぞれの含有量は、プロピレン系共重合体製造時の重合時間、重合槽の大きさ、重合槽中の重合体の保持量、重合温度、重合圧力などにより制御することができる。必要に応じて、ポリプロピレンの残留溶媒や製造時に副生する超低分子量のオリゴマー等を除去するために、ポリプロピレンが融解する温度以下の温度で乾燥を行ってもよい。乾燥方法としては、例えば、特開昭55−75410号、特許第2565753号公報に記載された方法等が挙げられる。
【0026】
本発明に用いられる核剤は、下記一般式(I)で示される化合物である。


(I)

(式(I)中、MおよびMは、それぞれ同一または相異なり、1個の陽イオンであってもよく、ナトリウム、水素、カルシウム、ストロンチウムおよびリチウムよりなる群から少なくとも一つが選ばれる。R、R、R、R、R、R、R、R、R10およびR11は、それぞれ同一または相異なり、水素原子、炭素数1〜9のアルキル基、水酸基、炭素数1〜9のアルコキシ基、炭素数1〜9のアルキレンオキシ基、アミノ基、炭素数1〜9のアルキルアミノ基、ハロゲン原子またはフェニル基を表し、R〜R11の基の中の任意の2つのアルキル基は、相互に結合して炭素数3〜6の炭素環を形成してよく、RとRとは相互にトランス配置またはシス配置である。)
【0027】
、R、R、R、R、R、R、R、R10およびR11における炭素数1〜9のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等が挙げられ、炭素数1〜9のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられ、炭素数1〜9のアルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等が挙げられ、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、炭素数1〜9のアルキレンオキシ基としては、例えば、下記一般式(1)で表される基等が挙げられる。

R−(R’−O)− (1)

(式中、Rは、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、R’は、炭素数2または3個のアルキレン基を表し、nは、2〜4の整数を表す。ただし、RおよびR’の合計の炭素数は、9個以下である。)
【0028】
上記一般式(1)で表される基として、好ましくは、H−(CHCHO)−、H−(CHCHO)−、H−(CHCHO)−、CH−(CHCHO)−、CH−(CHCHO)−、CH−(CHCHO)−、C−(CHCHO)−、C−(CHCHO)−、C−(CHCHO)−、C−(CHCHO)−、H−(CH(CH)CHO)−、H−(CH(CH)CHO)−、CH−(CH(CH)CHO)−またはC−(CH(CH)CHO)−である。
【0029】
一般式(I)で示される化合物として、好ましくは、下記の構造式(II)で示されるジナトリウム−ビシクロ(2,2,1)ヘプタン−2,3−ジカルボキシラート、

(II)

または、下記構造式(III)で示される1,2−シクロヘキサンジカルボキシル酸カルシウム塩

(III)

である。
【0030】
構造式(III)で示される1,2−シクロヘキサンジカルボキシル酸カルシウム塩は、前記プロピレン系共重合体を含む樹脂組成物に対する分散性を向上させるために、分散剤と混合して用いてもよい。分散剤としては、例えば、脂肪酸、脂肪酸のアルキルエステル、脂肪酸の金属塩、炭素数10〜30のアルコール類、多価アルコールおよびそのエステル類が挙げられる。
脂肪酸として、好ましくは、炭素数が10〜24の脂肪酸であり、前記脂肪酸の金属塩はアルカリ金属またはアルカリ土類金属の金属塩である。アルカリ金属としてはナトリウム、カリウム、リチウムであり、アルカリ土類金属としてはカルシウム、マグネシウム、亜鉛等である。また、多価アルコールおよびそのエステル類は、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトールおよびそのエステル等である。中でも脂肪酸の金属塩が好ましく用いられる。
【0031】
本発明のフィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物における核剤の含有量は、プロピレン系共重合体100重量部に対して、0.001〜0.25重量部である。好ましくは、0.005〜0.25重量部であり、より好ましくは、0.005〜0.20重量部である。核剤の含有量が0.001重量部未満の場合、剛性が低下することがあり、0.25重量部を超えた場合、外観が悪化(フィッシュアイが増加)することがある。
【0032】
本発明のフィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系共重合体と核剤とを溶融混練して得られる。
【0033】
上記の溶融混練は、従来公知の方法及び装置を用いて行うことができる。例えば、プロピレン系共重合体と核剤と各種添加剤とを、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、タンブルミキサー等の混合装置を用いて混合した後、溶融混練する方法;定量供給機を用いて、一定の割合で、プロピレン系共重合体と核剤と各種添加剤とをそれぞれ連続的に供給することによって均質な混合物を得た後、該混合物を、単軸又は二軸以上の押出機、バンバリーミキサー、ロール式混練機等を用いて、溶融混練する方法が挙げられる。
【0034】
上記の溶融混練温度は、180℃〜350℃であることが好ましい。より好ましくは、180℃〜320℃であり、更に好ましくは、180℃〜300℃である。
【0035】
本発明のフィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物は、温度230℃、荷重21.18Nで測定されるメルトフローレートが3〜25g/10分である。好ましくは、4〜15g/10分であり、より好ましくは、5〜10g/10分である。メルトフローレートが3g/10分未満であると、剛性が低下、あるいは、フィルム加工時の押出負荷が高くなり、フィルムの生産性に劣ることがあり、メルトフローレートが25g/10分を超える場合、耐衝撃性が悪化、あるいは、流動性が高く加工が困難になることがある。
【0036】
本発明のフィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物には、加工性を改良するという目的から、有機過酸化物を含有させても良い。
【0037】
有機過酸化物としては、公知の有機過酸化物が挙げられ、公知の有機過酸化物を単独で用いてもよく、少なくとも2種を併用してもよい。中でも、半減期が1分となる分解温度が120℃〜200℃である有機過酸化物が好ましい。
【0038】
半減期が1分となる分解温度が120℃〜200℃である有機過酸化物としては、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブテン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ベルオキシ)バレラート、ジ−t−ブチルベルオキシイソフタレート、ジクミルパーオキサイド、α−α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等が挙げられる。
半減期が1分となる分解温度が150℃以上である有機過酸化物がより好ましい。
【0039】
有機過酸化物の配合量としては、プロピレン系共重合体100重量部に対して、0.001〜5重量部、好ましくは、0.005〜3重量部、より好ましくは、0.01〜1重量部とすることで、加工性や色調の観点から優れる。
【0040】
本発明で用いられる有機過酸化物は、そのまま用いても良く、他のポリプロピレン系樹脂のパウダーに含浸させた含浸パウダー(マスターバッチ)として用いても良い。
【0041】
本発明のフィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物には、必要に応じて、添加剤やその他の樹脂を添加しても良い。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、粘着剤、防曇剤、アンチブロッキング剤等が挙げられる。その他の樹脂としては、オレフィン系樹脂、エチレンとα−オレフィンの共重合体であるエラストマー等が挙げられ、これらは不均一系触媒で製造されたものであっても、均一系触媒(例えば、メタロセン触媒等)で製造されたものであっても良い。さらに、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体やスチレン−イソプレン−スチレン共重合体を水添したスチレン系共重合体ゴム等のエラストマーが挙げられる。
【0042】
本発明のフィルムは、上記のフィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物を含むフィルムであり、単層フィルムであってもよく、本発明のフィルムからなる層を少なくとも1層含む多層フィルムであってもよい。また、本発明のフィルムは未延伸フィルムであってもよく、本発明のポリプロピレン系フィルムを延伸した延伸フィルムであってもよい。好ましくは、未延伸フィルムである。
【0043】
多層フィルムは本発明のフィルムからなる層とその他の層からなるフィルムであって、その他の層としては、例えば、プロピレン単独重合体からなる層、プロピレンと、エチレンおよび炭素数4以上のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーとからなるプロピレン系ランダム共重合体からなる層、およびプロピレンと、エチレンおよび炭素数4以上のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーとからなるプロピレン系ブロック共重合体からなる層、前記プロピレン単独重合体、前記プロピレン系ランダム共重合体、および前記プロピレン系ブロック共重合体からなる群から選択される1種以上のプロピレン系重合体と、ポリエチレンやポリブテン等のオレフィン系樹脂、およびエチレンとα−オレフィンの共重合体であるエラストマーからなる群から選択される1種以上の高分子物質との混合物からなる層、ポリプロピレン2軸延伸フィルムからなる層、未延伸または延伸ナイロンフィルムからなる層や延伸ポリテレフタル酸エチルフィルムからなる層等が挙げられる。
【0044】
本発明のフィルムは、該フィルムが単層フィルムである場合には、例えば、Tダイ法、インフレーション法、カレンダー法等を用いて製造することができる。また、本発明のフィルムが多層フィルムである場合には、例えば、共押し出し加工法、押出ラミネート法、熱ラミネート法、ドライラミネート法等の多層フィルム形成法で製造することができる。
【0045】
本発明のフィルムは、厚みが5〜500μmであることが好ましく、5〜100μmであることがより好ましい。
【0046】
本発明のフィルムには、通常工業的に採用されている方法によって、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、オゾン処理等の表面処理が施されてもよい。
【0047】
本発明のフィルムの用途としては、包装用途等が挙げられ、例えば、食品、繊維、雑貨等の包装の用途が挙げられる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明について実施例および比較例を用いて説明する。なお、発明の詳細な説明および実施例および比較例における各項目の測定値は、下記の方法で測定した。
(1)プロピレン系共重合体のプロピレンに由来する構造単位が主成分である重合体成分(成分(A))およびエチレンに由来する構造単位の含有量が20〜48重量%であるプロピレン−エチレン共重合体成分(成分(B))の含有量(単位:重量%)
プロピレン系共重合体の成分(A)および成分(B)の重合時の物質収支から、成分Aの含有量(以下、「P」と記載することがある。)、成分(B)の含有量(以下、「P」と記載することがある。)を求めた。
(2)プロピレン系共重合体のプロピレン−エチレン共重合体成分(成分(B)のエチレン含量(単位:重量%)
プロピレン系共重合体の全体のIRスペクトル測定を行い、高分子分析ハンドブック(1995年、紀伊国屋書店発行)の第616頁に記載されている(ii)ブロック共重合体に関する方法に従って求め、下式(1)により成分(B)のエチレン含量を求めた。

=(E−E×P)/P 式(1)

(ただし、E、EおよびEはそれぞれプロピレン系共重合体の全体、成分(A)および成分(B)におけるエチレン含有量を表し、PおよびPは成分(A)および成分(B)の含有量を示す。)
(3)極限粘度([η]、単位:dL/g)
ウベローデ型粘度計を用いて135℃テトラリン中で測定を行った。
(3−1)成分(A)、成分(B)の極限粘度([η]A、[η]B)
下記重合工程(4)の重合終了時にサンプリングした成分(A)の極限粘度([η]A)と下記重合工程(5)の重合終了後に得られた共重合体の全体の極限粘度(以下、「[η]T」と記載することがある。)、および、成分(A)の含有量(P)と成分(B)の含有量(P)を用いて、下式(2)から成分(B)の極限粘度([η]B)を算出した。

[η]A×P/100+[η]B×P/100=[η]T 式(2)

(4)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
プロピレン系共重合体のメルトフローレートはJIS K7210に従って、温度230℃、荷重21.18Nで測定した。
(5)剛性(ヤング率、単位:MPa)
120mm×30mmのフィルム(製膜方向(MD)と長辺方向が一致するように採取した。)を用いて、23℃、湿度50%の雰囲気下において、安田精機製作所製オートストレインを用いて、つかみ間隔60mm、引張速度5mm/分で引張り試験を行い、引張−応力カーブのゼロ点での接線から初期弾性率を測定した。
(6)耐衝撃性(単位:kJ/m)
0℃に設定した恒温槽中にフィルムをおいて、東洋精機製フィルムインパクトテスターを使用して、直径15mmの半球状衝撃頭を用いて、フィルムの衝撃強度を測定した。
(7)外観評価(フィッシュアイ、単位:個/100cm
厚み30μmのフィルムについて、デジタル欠陥検査装置(マミヤオーピー社製GX70LT)を用いて、直径50μm以上あるフィッシュアイを計測した。検査条件は、検出閾値:30以上、検出禁止閾値:24以上、光源ゲイン:1.0、読み取り速度:30m/分、検出下限サイズ:縦4画素、横2画素、平均透過光量:60%、測定範囲:縦17cm×横12cmで行った。
【0049】
[実施例1]
チーグラー・ナッタ型触媒を用いて第一工程で極限粘度が2.3dL/gのプロピレン単独重合体部分を製造し、次いで、第二工程で極限粘度が3.6dL/g、エチレン含有量が37重量%のプロピレンとエチレンとの共重合体部分を製造して、プロピレン系共重合体(以下、「BCPP1」と記載することがある。)を得た。プロピレンとエチレンとの共重合体部分の含有量は16重量%であった。
得られたプロピレン系共重合体100重量部に対して、核剤としてHyperform HPN−68L(ミリケン・ジャパン株式会社製、主成分の化学名:ジナトリウム=(1R,2R,3S,4S)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシラート(80重量%含有))を0.05重量部、ハイドロタルサイト(DHT4C、協和化学工業(株)製)0.01重量部、エルカ酸アミド(ニュートロン−S、日本精化(株)製)0.10重量部、スミライザーGP(2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、住友化学(株)製)0.075重量部、スミライザーGS(2,4−ジ−t−アミル−6−[1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル]フェニルアクリレート、住友化学(株)製)0.075重量部、有機過酸化物として2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリブチルパーオキシ)ヘキサン0.040重量部を加え、均一に混合し、40mmφ単軸押出機(VS40−28型、田辺プラスチックス機械社製、フルフライト型スクリュー付き)を用いて、250℃で溶融混練してペレットを得た。得られたペレットのMFRは、7.6g/10分であった。
得られたペレットを、50mmφTダイ製膜装置(田辺プラスチックス株式会社製V−50−F600型フィルム成型装置、400mm幅Tダイ付き)を用いて、樹脂温度250℃で溶融押出を行った。溶融押出されたものを50℃の冷却水を通水した冷却ロールで冷却して、厚さ30μmのフィルムを得た。得られたフィルムのヤング率、耐衝撃性および外観評価を表2に示した。
【0050】
[実施例2]
添加するHyperform HPN−68L(ミリケン・ジャパン株式会社製、主成分の化学名:ジナトリウム=(1R,2R,3S,4S)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシラート(80重量%含有))を0.10重量部に、有機過酸化物2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリブチルパーオキシ)ヘキサンを0.038重量部に変更した以外は、実施例1と同様に行った。得られたフィルムのヤング率、耐衝撃性および外観評価を表2に示した。
【0051】
[実施例3]
添加する核剤を、Hyperform HPN−20E(ミリケン・ジャパン株式会社製、主成分の化学名:1,2−シクロヘキサンジカルボキシル酸カルシウム塩(66重量%含有)、副成分の化学名:ステアリン酸亜鉛(34重量%含有))に変更した以外は、実施例2と同様に行った。得られたフィルムのヤング率、耐衝撃性および外観評価を表2に示した。
【0052】
[実施例4]
チーグラー・ナッタ型触媒を用いて第一工程で極限粘度が1.8dL/gのプロピレン単独重合体部分を製造し、次いで、第二工程で極限粘度が3.4dL/g、エチレン含有量が29重量%のプロピレンとエチレンとの共重合体部分を製造して、プロピレン系共重合体(以下、「BCPP2」と記載することがある。)を得た。プロピレンとエチレンとの共重合体部分の含有量は23重量%であった。
得られたプロピレン系共重合体100重量部に対して、核剤としてHyperform HPN−68L(ミリケン・ジャパン株式会社製、主成分の化学名:ジナトリウム=(1R,2R,3S,4S)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシラート(80重量%含有))を0.10重量部、ハイドロタルサイト(DHT4C、協和化学工業(株)製)0.01重量部、エルカ酸アミド(ニュートロン−S、日本精化(株)製)0.10重量部、スミライザーGP(2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、住友化学(株)製)0.10重量部、イルガフォス168(チバ・スペシャリティ−ケミカルズ社製、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、)0.10重量部、有機過酸化物として2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリブチルパーオキシ)ヘキサン0.012重量部を加え、均一に混合し、40mmφ単軸押出機(VS40−28型、田辺プラスチックス機械社製、フルフライト型スクリュー付き)を用いて、250℃で溶融混練してペレットを得た。得られたペレットのMFRは、5.1g/10分であった。
得られたポリプロピレン系樹脂組成物を、実施例1と同様に押出加工を行いフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示した。
【0053】
[実施例5]
チーグラー・ナッタ型触媒を用いて第一工程で極限粘度が2.7dL/gのプロピレン単独重合体部分を製造し、次いで、第二工程で極限粘度が2.7dL/g、エチレン含有量が31重量%のプロピレンとエチレンとの共重合体部分を製造して、プロピレン系共重合体(以下、「BCPP3」と記載することがある。)を得た。プロピレンとエチレンとの共重合体部分の含有量は21重量%であった。
得られたプロピレン系共重合体100重量部に対して、核剤としてHyperform HPN−68L(ミリケン・ジャパン株式会社製、主成分の化学名:ジナトリウム=(1R,2R,3S,4S)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシラート(80重量%含有))を0.05重量部、ハイドロタルサイト(DHT4C、協和化学工業(株)製)0.01重量部、エルカ酸アミド(ニュートロン−S、日本精化(株)製)0.10重量部、スミライザーGP(2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、住友化学(株)製)0.10重量部、イルガフォス168(チバ・スペシャリティ−ケミカルズ社製、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、)0.10重量部、有機過酸化物として2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリブチルパーオキシ)ヘキサン0.056重量部を加え、均一に混合し、40mmφ単軸押出機(VS40−28型、田辺プラスチックス機械社製、フルフライト型スクリュー付き)を用いて、250℃で溶融混練してペレットを得た。得られたペレットのMFRは、8.0g/10分であった。
得られたポリプロピレン系樹脂組成物を、実施例1と同様に押出加工を行いフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示した。
【0054】
[実施例6]
添加するHyperform HPN−68L(ミリケン・ジャパン株式会社製、主成分の化学名:ジナトリウム=(1R,2R,3S,4S)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシラート(80重量%含有))を0.10重量部に変更した以外は、実施例5と同様に行った。得られたフィルムのヤング率、耐衝撃性および外観評価を表2に示した。
【0055】
[比較例1]
核剤を添加しなかった以外は、実施例2と同様に行った。得られたフィルムのヤング率、耐衝撃性および外観評価を表2に示した。
【0056】
[比較例2]
添加する核剤を、タルク(林化成株式会社製、化学名:含水ケイ酸マグネシウム(4SiO・3MgO・HO))に変更した以外は、実施例2と同様に行った。得られたフィルムのヤング率、耐衝撃性および外観評価を表2に示した。
【0057】
[比較例3]
添加する核剤を、アデカスタブNA−21((株)ADEKA製、化学名:ビス[2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸]アルミニウム)に、スミライザーGP(2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、住友化学(株)製)の添加量を0.10重量部に、スミライザーGS(2,4−ジ−t−アミル−6−[1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル]フェニルアクリレート、住友化学(株)製)0.075重量部の代わりにイルガフォス168(チバ・スペシャリティ−ケミカルズ社製、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、)0.10重量部に、有機過酸化物2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリブチルパーオキシ)ヘキサン0.032重量部に変更した以外は、実施例1と同様に行った。得られたフィルムのヤング率、耐衝撃性および外観評価を表2に示した。
【0058】
[比較例4]
添加する核剤を、AL−PTBBA(共同薬品株式会社製、化学名:ヒドロキシ−ジ(p−tert−ブチル安息香酸)アルミニウム)0.10重量部に変更した以外は、比較例3と同様に行った。得られたフィルムのヤング率、耐衝撃性および外観評価を表2に示した。
【0059】
[比較例5]
添加するHyperform HPN−68L(ミリケン・ジャパン株式会社製、主成分の化学名:ジナトリウム=(1R,2R,3S,4S)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシラート(80重量%含有))を0.30重量部に、有機過酸化物2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリブチルパーオキシ)ヘキサンを0.032重量部に変更した以外は、実施例1と同様に行った。得られたフィルムのヤング率、耐衝撃性および外観評価を表2に示した。
【0060】
[比較例6]
チーグラー・ナッタ型触媒を用いて第一工程で極限粘度が1.4dL/gのプロピレン単独重合体部分を製造し、次いで、第二工程で極限粘度が2.9dL/g、エチレン含有量が38重量%のプロピレンとエチレンとの共重合体部分を製造して、プロピレン系共重合体(以下、「BCPP4」と記載することがある。)を得た。プロピレンとエチレンとの共重合体部分の含有量は14重量%であった。
得られたプロピレン系共重合体100重量部に対して、核剤としてHyperform HPN−68L(ミリケン・ジャパン株式会社製、主成分の化学名:ジナトリウム=(1R,2R,3S,4S)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシラート(80重量%含有))を0.10重量部、ハイドロタルサイト(DHT4C、協和化学工業(株)製)0.01重量部、エルカ酸アミド(ニュートロン−S、日本精化(株)製)0.10重量部、スミライザーGP(2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、住友化学(株)製)0.10重量部、イルガフォス168(チバ・スペシャリティ−ケミカルズ社製、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、)0.10重量部を加え、均一に混合し、40mmφ単軸押出機(VS40−28型、田辺プラスチックス機械社製、フルフライト型スクリュー付き)を用いて、250℃で溶融混練してペレットを得た。得られたペレットのMFRは、9.0g/10分であった。
得られたポリプロピレン系樹脂組成物を、実施例1と同様に押出加工を行いフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示した。
【0061】
[比較例7]
チーグラー・ナッタ型触媒を用いて第一工程で極限粘度が1.1dL/gのプロピレン単独重合体部分を製造し、次いで、第二工程で極限粘度が2.7dL/g、エチレン含有量が37重量%のプロピレンとエチレンとの共重合体部分を製造して、プロピレン系共重合体(以下、「BCPP5」と記載することがある。)を得た。プロピレンとエチレンとの共重合体部分の含有量は20重量%であった。
得られたプロピレン系共重合体100重量部に対して、核剤としてHyperform HPN−68L(ミリケン・ジャパン株式会社製、主成分の化学名:ジナトリウム=(1R,2R,3S,4S)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシラート(80重量%含有))を0.10重量部、ハイドロタルサイト(DHT4C、協和化学工業(株)製)0.01重量部、エルカ酸アミド(ニュートロン−S、日本精化(株)製)0.10重量部、スミライザーGP(2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、住友化学(株)製)0.10重量部、イルガフォス168(チバ・スペシャリティ−ケミカルズ社製、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、)0.10重量部を加え、均一に混合し、40mmφ単軸押出機(VS40−28型、田辺プラスチックス機械社製、フルフライト型スクリュー付き)を用いて、250℃で溶融混練してペレットを得た。得られたペレットのMFRは、24g/10分であった。
得られたポリプロピレン系樹脂組成物を、実施例1と同様に押出加工を行いフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示した。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレンに由来する構造単位が主な構造単位である重合体成分(成分(A))60〜90重量%と、エチレンに由来する構造単位の含有量が20〜48重量%であるプロピレン−エチレン共重合体成分(成分(B))10〜40重量%とからなり(但し、成分(A)と成分(B)との合計の重量を100重量%とする。)、成分(A)の極限粘度([η]A)が1.2〜4.0dL/gであり、成分Aの極限粘度([η]A)に対する成分Bの極限粘度([η]B)の比([η]B/[η]A)が0.8≦[η]B/[η]A≦2.0であるプロピレン系共重合体(成分(C))と、前記成分(C)100重量部に対して、下記一般式(I)で示される核剤0.001〜0.25重量部とを含有してなり、温度230℃、荷重21.18Nで測定されるメルトフローレートが3〜25g/10分であるフィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物。

(I)

(式(I)中、MおよびMは、それぞれ同一または相異なり、1個の陽イオンであってもよく、ナトリウム、水素、カルシウム、ストロンチウムおよびリチウムよりなる群から少なくとも一つが選ばれる。R、R、R、R、R、R、R、R、R10およびR11は、それぞれ同一または相異なり、水素原子、炭素数1〜9のアルキル基、水酸基、炭素数1〜9のアルコキシ基、炭素数1〜9のアルキレンオキシ基、アミノ基、炭素数1〜9のアルキルアミノ基、ハロゲン原子またはフェニル基を表し、R〜R11の基の中の任意の2つのアルキル基は、相互に結合して炭素数3〜6の炭素環を形成してよく、RとRとは相互にトランス配置またはシス配置である。)
【請求項2】
プロピレン系共重合体100重量部に対して、更に、有機過酸化物0.001〜5重量部を含有する、請求項1に記載のフィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項3】
核剤が、下記構造式(II)で示されるジナトリウム−ビシクロ(2,2,1)ヘプタン−2,3−ジカルボキシラート、

(II)

または、下記構造式(III)で示される1,2−シクロヘキサンジカルボキシル酸カルシウム塩である、請求項1または2に記載のフィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物。

(III)
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載のフィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物を含むフィルム。
【請求項5】
未延伸フィルムである請求項4に記載のフィルム。

【公開番号】特開2012−224817(P2012−224817A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96026(P2011−96026)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】