説明

フィンチューブ熱交換器及びこれを備えた空気調和機

【課題】伝熱管が小径化され、フィンが小形化、高密度化された場合でも、フィン形状の変形による性能低下を抑制する。
【解決手段】フィンチューブ熱交換器は、気体が通過可能に互いに所定の間隔をあけて平行に積層して配置された複数枚の板状フィン1と、該板状フィンを貫通すると共に蛇行するように構成され、内部を冷媒が通過する伝熱管2とを備えている。前記板状フィンには、複数枚の前記板状フィンを積層した方向に切り起された複数のスリット部3a,3b,…を備え、前記複数のスリット部のうち、気体の流れに対して最上流に位置するスリット部3aの前記板状フィンからの突出高さ(Hs1)を、前記気体の流れに対して2番目に位置するスリット部3bの前記板状フィンからの突出高さ(Hs2)よりも大きく構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィンチューブ熱交換器及びこれを備えた空気調和機に係り、特に空気調和機の室内機の熱交換器として好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来のフィンチューブ熱交換器は、互いに平行に一定間隔をあけて配置された複数枚の板状フィンと、該板状フィンを法線方向に貫通し蛇行する伝熱管などから構成され、板状フィンの間を流れる空気と伝熱管の内部を流れる冷媒との間で熱交換が為されるものである。
【0003】
近年、地球温暖化防止の観点から空気調和機への消費エネルギー低減が強く求められると共に、空気調和機を製造する時の消費エネルギー低減、使用する材料資源の削減などにも関心が高まっている。
【0004】
そのような中、フィンチューブ熱交換器においては、特許文献1に示すように、伝熱管の細径化や、フィンのスリット形状適正化によってコンパクト性を確保しながらも消費エネルギーを削減可能な高効率な熱交換器が提案されている。
【0005】
また、従来のフィンチューブ型熱交換器としては、特許文献2に示すように、フィンに設けたスリット高さをフィン中心線から前後(上流側及び下流側)に離れるほど低くするものや、フィンに設けたスリット高さをフィン中心線から下流側になるほど高くするものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−198055号公報
【特許文献2】特開平10−206085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1のものでは、伝熱管の径、段ピッチ、列ピッチ、スリットの切起し高さなどについて提案されているが、フィンチューブ熱交換器の製造時や組立時における寸法誤差については配慮されていない。このため、所定の寸法通りに製品を製作できた場合については所定の性能が確保できたとしても、実際には、フィンの製造装置である金型の経年劣化や、フィンチューブ熱交換器の曲げ加工時、運搬時、組立時などに外力を受けての変形などにより、僅かなフィン形状の変形は避けられない。最近、特許文献1に示されているように、フィンチューブ熱交換器の高効率化のため、その伝熱管径が4〜6mm程度に細径化(小径化)される傾向にあり、これに伴いフィンピッチ、段ピッチ、列ピッチ等も縮小化されて高密度化されると、前記フィン形状の変形による性能低下は避けられず、このため空気調和機の消費エネルギー低減効果を十分に発揮することは困難になる。また、伝熱管外径、列ピッチ、段ピッチ、フィンピッチなどの諸元が小形化、高密度化された場合、フィンそのものの剛性が低下するから、寸法誤差を生じないように熱交換器を製造することは困難か、或いは作業性を著しく悪化させる。
【0008】
また、伝熱管径が細径化され、フィンピッチ、段ピッチ、列ピッチ等が縮小化された高密度の熱交換器では、フィンにスリットを設けた場合でも、空気流の上流側に設けられたスリットで生じた温度境界層が、その下流側に位置するスリットの温度境界層に干渉を生じやすく、スリット切り起こしによる前縁効果での伝熱促進効果を発揮し難くなる。更に、前記各ピッチを縮小化したフィンチューブ熱交換器にすると、スリット切り起こしによる通風抵抗も増大し易くなる。
【0009】
更に、特許文献1に記載のフィンチューブ熱交換器は、段ピッチ側の寸法(上下方向寸法)が小さい天井埋め込み型空気調和機には採用できても、段ピッチ側に長尺の寸法が必要となる、例えば床置き型の空気調和機などにおいては、熱交換器としての剛性が不足して製品強度が不足することについても配慮されていない。
【0010】
特許文献2に記載のものでは、フィンに設けたスリット高さを、フィン中心線から前後に離れるほど低くしたり、或いは中心線から下流側になるほどスリット高さを高くして、スリット部に生じる温度境界層の影響を防止して熱伝達を促進するものが記載されているが、フィンチューブ熱交換器の製造時や組立時における寸法誤差、特に伝熱管外径、列ピッチ、段ピッチ、フィンピッチなどの諸元が小形化、高密度化された場合の寸法誤差についての配慮は為されていない。
【0011】
また、特許文献2のものでは流動される気流を前記スリットにより乱流化及び混合して伝熱管後流に生じる死水域を減少させるようにしているが、フィンの列方向の中心線に対して対称形状ではないため、長尺のフィン成形時にフィンの曲がりなど変形が生じやすく、生産性向上に課題がある。なお、フィンの列方向の中心線に対して対称形状にしたものも記載されているが、伝熱管後流側(下流側)のスリットはその高さが低いものとなっているため、気流を伝熱管後流側に導いて死水域を減少させる効果が小さくなってしまうことに対する配慮は為されていない。
【0012】
本発明の目的は、伝熱管が小径化され、フィンが小形化、高密度化された場合でも、フィン形状の変形による性能低下を抑制することができるフィンチューブ熱交換器及びこれを備えた空気調和機を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するため、本発明は、気体が通過可能に互いに所定の間隔をあけて積層して配置された複数枚の板状フィンと、該板状フィンを貫通すると共に蛇行するように構成され、内部を冷媒が通過する伝熱管とを備えたフィンチューブ熱交換器において、前記板状フィンには、複数枚の前記板状フィンを積層した方向に切り起された複数のスリット部を備え、前記複数のスリット部のうち、気体の流れに対して最上流に位置するスリット部の前記板状フィンからの突出高さ(Hs1)を、前記気体の流れに対して2番目に位置するスリット部の前記板状フィンからの突出高さ(Hs2)よりも大きく構成していることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、上記構成のフィンチューブ熱交換器を、天井埋込型、天井吊り型または床置き型の空気調和機(室内機)の少なくとも何れかに搭載しているフィンチューブ熱交換器を備えた空気調和機にある。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、伝熱管が小径化され、フィンが小形化、高密度化された場合でも、フィン形状の変形による性能低下を抑制することができるフィンチューブ熱交換器及びこれを備えた空気調和機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のフィンチューブ熱交換器の実施例1を説明する正面図。
【図2】図1に示す熱交換器を側面側から見た要部拡大図。
【図3】図1に示すスリット部の拡大断面図で、(a)は図1のA−A断面図、(b)は図1のB−B断面図、(c)は図1のH−H断面図。
【図4】図1に示す伝熱管の外径Dによる性能への影響を説明する線図。
【図5】図1に示すフィンの列ピッチPLによる性能への影響を説明する線図。
【図6】図1に示すフィンの段ピッチPtによる性能への影響を説明する線図。
【図7】図2に示すフィンピッチPfによる性能への影響を説明する線図。
【図8】図1に示すフィンのスリット幅Wsによる性能への影響を説明する線図。
【図9】本発明の実施例1のスリット配置における前縁効果を説明する図で、(a)は従来のスリット配置での温度分布の解析結果を示す図、(b)は実施例1のスリット配置での温度分布の解析結果を示す図。
【図10】本発明の実施例1のスリット配置における死水域低減効果を説明する図で、(a)は従来のスリット配置での気流解析結果を示す図、(b)は実施例1のスリット配置での気流解析結果を示す図、(c)は(b)図の斜視図。
【図11】図1に示すフィンチューブ熱交換器を備えた天井埋込型の空気調和機を示す縦断面図。
【図12】図11に示す天井埋込型空気調和機を下方側から見た底面図。
【図13】本発明のフィンチューブ熱交換器の実施例2を説明する要部拡大正面図。
【図14】図13のH−H断面図。
【図15】本発明のフィンチューブ熱交換器の実施例3を説明する要部拡大正面図。
【図16】図15のH−H断面図。
【図17】図15及び図16に示すフィンチューブ熱交換器を備えた床置き型の空気調和機を示す縦断面図。
【図18】図15及び図16に示すフィンチューブ熱交換器を備えた天井吊り型の空気調和機を示す縦断面図。
【図19】本発明のフィンチューブ熱交換器の実施例4を示す図で、図3(c)に相当する図。
【図20】実施例4のスリット配置における前縁効果を説明する図で、(a)は中心スリット3dを立ち上げたスリット配置での温度分布の解析結果を示す図、(b)は実施例4のスリット配置での温度分布の解析結果を示す図。
【図21】実施例4のスリット配置における通風抵抗を説明する図で、(a)は中心スリット3dを立ち上げたスリット配置での気流解析結果を示す図、(b)は実施例4のスリット配置での気流解析結果を示す図。
【図22】本発明のフィンチューブ熱交換器を備えた空気調和機を多室型空気調和機に適用した場合の例を示す冷凍サイクル構成図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0018】
本発明の実施例1を図1〜図12を用いて説明する。
図1は本発明のフィンチューブ熱交換器の実施例1を説明する正面図、図2は図1に示す熱交換器を側面側(空気の流入側)から見た要部拡大図、図3は図1に示すスリット部の拡大断面図で、(a)は図1のA−A断面図、(b)は図1のB−B断面図、(c)は図1のH−H断面図である。
【0019】
図1、図2において、フィンチューブ熱交換器100は、互いに所定の間隔をあけて設けられ空気(気体)が通過する複数枚の板状フィン1と、該板状フィン1を貫通するように垂直に挿入され、蛇行して形成された伝熱管2とを備えており、前記板状フィン1の面上には該板状フィンの積層方向(前記空気の通過方向に略直角な方向)にスリット部3(3a〜3g)が切り起されている。
【0020】
前記伝熱管2は、図2に示すように、複数の直管部2sと、該直管部2sの端部同士を接続している曲管部2rから形成されている。また、図1に示すように、この実施例では、前記伝熱管2は空気流れ方向(列方向)に3列配置されている。更に、前記伝熱管2の前記直管部2sの一部である各直管部21a,21b,21c…(1列目の伝熱管21)は図1に示すように、空気流れに対して直角の方向(段方向)に配列され、同様に直管部2sの一部である各直管部22a,22b…(2列目の伝熱管22)及び各直管部23a,23b…(3列目の伝熱管23)もそれぞれ段方向に配置されている。
【0021】
各直管部21a,21b…、22a,22b…、及び23a,23b…は、互いに平行で千鳥状に配置されている。本実施例では、前記伝熱管2の外径Dは、
4mm≦D≦6mm
の細径管を使用しており、また、前記各直管部の軸心同士の列方向の間隔である列ピッチPL、及び段方向の間隔である段ピッチPtは次の範囲となるように構成されている。
【0022】
8mm≦PL≦10mm
12mm≦Pt<14mm
例えば、前記伝熱管2の外径Dを5mm、列ピッチPLを9.4mm、段ピッチPtを13.89mmに構成すると良い。
【0023】
図4〜図6により、前述した伝熱管外径D、段ピッチPL及び段ピッチPtの性能への影響について説明する。これらの図により説明する性能評価は、フィンチューブ熱交換器を空気調和機(天井埋め込み型室内機)として使用した際のAPF(期間消費効率)で評価したものである。
【0024】
図4は伝熱管の外径Dによる性能への影響を調査した結果を説明する線図である。図4から判るように、伝熱管外径Dを小さくすることにより、フィンチューブ熱交換器の高さ(室内機の高さ)が同じ大きさであれば、伝熱管の段数や列数を増加させることが可能となり、伝熱管外径に応じて相似的に諸元を小さくして高密度化を図れるからフィン効率を向上できる。また、伝熱管外径Dを小さくすることにより伝熱管の後流側に発生する死水域も低減できるので、熱伝達率の向上及び圧力損失の低減も図れる。従って、伝熱管外径が5mm以上の場合、伝熱管外径を小さくするほどAPF性能が向上している。反面、伝熱管外径を5mmより小さくしていくと、伝熱管内を流れる冷媒の圧力損失が増加するため、この冷媒側圧力損失を同等に抑えるためには冷媒通路数(パス数)を増加させる必要がある。冷媒通路数を増加させると段ピッチPtが小さくなるからその分伝熱管2とスリット部3との間に確保すべき座面(平板部)1a(図1参照)の占有面積割合が増加し、相対的にスリット部3の占有面積率が低下する。更に、冷媒通路数の増加により冷媒分配も悪化し易い。このため、伝熱管外径を5mmより小さくしていくほどAPF性能は低下していく。従って、伝熱管外径Dに対してのAPF性能のピーク値が現れ、この性能ピーク値に対して、APFの性能低下が3%以内にとどめられる範囲は、図4から伝熱管外径Dが『4mm≦D≦6mm』であり、伝熱管外径Dはこの範囲に設定すると良い。
【0025】
図5は、フィンの列ピッチPLによる性能への影響を説明する線図である。列ピッチPLが約9mm以下の範囲では、列ピッチPLが大きいほど伝熱面積が増大するので熱交換性能は向上し、また列間の伝熱管3の間の距離も大きくなるので通風抵抗も小さくなり、APF性能は向上していく。一方、列ピッチPLが約9mmを超えると、列ピッチPLが大きくなるほど、列方向の長さが増大して空気が流れる通路の長さが増大すると共に、室内機筐体と熱交換器との間の通路も狭くなるから、通風抵抗(空気側圧力損失)が増大する。また、伝熱管2から離れて存在するスリット部3が多くなりフィン効率も低下することから、APF性能は低下していく。APF性能では、圧縮機能力が小さくなる領域での運転時間が多く、ファン動力の増大はAPF性能に大きく影響する。従って、列ピッチPLに対してのAPF性能のピーク値が現れ、この性能ピーク値に対して、APFの性能低下が3%以内にとどめられる範囲は、図5から列ピッチPLが『8mm≦PL≦10mm』であり、列ピッチPLはこの範囲に設定すると良い。
【0026】
図6は、フィンの段ピッチPtによる性能への影響を説明する線図である。段ピッチPtの性能影響を図6に示す。段ピッチPtが13mmより大きい範囲では、段ピッチPtを大きくしていくと、段ピッチ方向の伝熱管2の数が少なくなる。APF性能では、圧縮機能力が小さくなる領域での運転時間が多く、冷媒流量が少ない運転時間が多くなる。冷媒流量が少ないと伝熱管内の冷媒の流れが乱流とならず、冷媒は伝熱管内の下部を流れてしまうので、スリット部に伝達される熱量が減少する。従って、伝熱管の段ピッチPtを小さくして段ピッチ方向の伝熱管数を多くするほど、伝熱管の内面積を増加でき、熱伝達率の向上とフィン効率の向上を図れるから、伝熱性能は向上する。また、段ピッチPtが13mmより小さい範囲では、段ピッチPtを小さくするほど伝熱管2間の通風抵抗が増大すること、段ピッチPtが小さくなるとその分伝熱管2とスリット部3との間に確保すべき座面1a(図1参照)の占有面積割合も増加し、相対的にスリット部3の占有面積率が低下すること、及び伝熱管後流側に発生する空気のよどみ(死水域)の面積も増加することから、APF性能は低下する。従って、段ピッチPtに対してのAPF性能のピーク値が現れ、この性能ピーク値に対して、APFの性能低下が3%以内にとどめられる範囲は、図6から段ピッチPtが『12mm≦Pt<14mm』であり、段ピッチPtはこの
範囲に設定すると良い。
【0027】
図1、図2に示した板状フィン1は矩形の部材であり、この板状フィン1には伝熱管2の直管部2sが貫通する貫通孔が千鳥状に複数形成されている。また、例えば、直管部21aと直管部21bとの間には、板状フィン1の一方の面側に突出する第1スリット群(スリット部3a,3c,3e,3g)と、他方の面側に突出する第2スリット群(スリット部3b,3d,3f)とが、それぞれ形成されている(図3参照)。
【0028】
前記第1スリット群の各スリット部3a,3c,3e,3gは、図3の(a)図に示すように、板状フィン1を一方の面側に切り起こしたものであって、各スリット部はそれぞれ平面部32a,32c,32e,32gと、これを支える一方の斜面部31a,31c,31e,31g及び他方の斜面部33a,33c,33e,33gから構成されている。なお、(a)図ではスリット部3aのみ示しているが、他のスリット部3c,3e,3gも同様に構成されている。
【0029】
前記第2スリット群の各スリット部3b,3d,3fは、図3の(b)図に示すように、板状フィン1を他方の面側に切り起こしたものであって、各スリット部はそれぞれ平面部32b,32d,32fと、これを支える一方の斜面部31b,31d,31f及び他方の斜面部33b,33d,33fから構成されている。なお、(b)図でもスリット部3bのみ示しているが、他のスリット部3d,3fも同様に構成されている。
【0030】
図3の(c)図は、図1のH−H断面図で、前記第1スリット群(スリット部3a,3c,3e,3g)及び第2スリット群(スリット部3b,3d,3f)の構成を示している。図において、Hs1は、第1及び第2のスリット群の中で空気流れに対して最前列に位置するスリット部3aの前記板状フィン1からの突出高さ((a)図参照)、Hs2は、第1及び第2のスリット群の中で空気流れに対して2番目に位置するスリット部3bの前記板状フィン1からの突出高さ((b)図参照)で、これらの突出高さHs1,Hs2の関係は、最前列に位置するスリット部3aの前記板状フィン1からの突出高さHs1が、2番目に位置するスリット部3bの前記板状フィン1からの突出高さHs2よりも大きくなるように、即ち
Hs1>Hs2
となるように構成されている。前記突出高さの比(Hs1/Hs2)は、好ましくは、
1.2≦Hs1/Hs2≦1.6
となるように構成すると良い。
【0031】
このように構成することにより、板状フィン1の直後に配置されているスリット3aは板状フィン1との間隔が大きくなり、温度境界層の影響を最小限に抑えることが可能となる。また、スリット部の形状誤差が発生した際においても、熱交換器性能の低下を最小限に抑えることが可能となる。即ち、フィンチューブ熱交換器の製造時に曲げ加工などによりフィン形状が変形した場合でも、スリット3aは板状フィン1との間隔を大きく構成されているため、スリット部3aが僅かに変形しても、板状フィン1との間隔の変化の割合は僅かに抑えられる。このため、熱交換器の性能低下も最小限に抑制できるものである。
【0032】
本実施例における上述したスリット配置により、温度境界層の影響を最小限に抑えることが可能となる理由を図9により説明する。図9(a)(b)はそれぞれ図1のH−H断面に相当する図で、従来と本実施例でのスリット配置における前縁効果を説明する図である。即ち、(a)は従来のスリット配置での温度分布の解析結果(熱交換器の伝熱性能を説明する熱流体解析結果)を示す図、(b)は本実施例のスリット配置での温度分布の解析結果(熱交換器の伝熱性能を説明する熱流体解析結果)を示す図である。
【0033】
(a)で示す従来のスリット配置では、気体の流れに対して最上流に位置するスリット部3aの板状フィン1からの突出高さ(切り起し高さ)Hs1と、気体の流れに対して2番目に位置するスリット部3bの板状フィン1からの突出高さHs2が等しくなっている。このスリット配置の場合、スリット部3aの上流側において、前方のフィンで熱交換されて温度上昇した部分(いわゆる温度境界層)が、スリット部3aで温度上昇した部分(温度境界層)に干渉していることが確認できる。
【0034】
一方、(b)で示す本実施例のスリット配置では、気体の流れに対して最上流に位置するスリット部3aの板状フィン1からの突出高さHs1と、気体の流れに対して2番目に位置するスリット部3bの板状フィン1からの突出高さHs2とは、「Hs1>Hs2」の関係となっている。なお、この(b)図の例では、「Hs1/Hs2=1.3」とした場合を例として示している。
【0035】
(b)図に示すように、本実施例のスリット配置とした場合、前記最上流に位置するスリット部3aの上流側において、前方のフィンで熱交換されて温度上昇した部分(温度境界層)が、スリット部3aで温度上昇した部分(温度境界層)とは離れており、それらは干渉していない。これにより、前方のフィンで温度上昇のしていない新鮮な空気が最上流のスリット部3aに当たり易く(接触し易く)なり、更に下流側のスリット部3b,3c,…にも新鮮な空気が当たり易くなって前縁効果が向上し、熱交換器の熱交換量を増加できる。
【0036】
図10は、フィンチューブ熱交換器における通風抵抗を説明する気流解析結果を示す図で、伝熱管2とその周辺の部分を正面側から見た図である。この図10により、本実施例のスリット配置における死水域低減効果を説明する。図10の(a)は、図9(a)と同じ従来のスリット配置(Hs1=Hs2)での気流解析結果を示す図、(b)は図9(b)と同じ本実施例のスリット配置(Hs1/Hs2=1.3)での気流解析結果を示す図、(c)は(b)図の斜視図である。
【0037】
図10の(a)図と(b)図を比較すると、(a)図に示す従来の気流分布に比べて、(b)図に示す本実施例の気流分布では、伝熱管2の後流側に生じる速度が遅い部分(死水域)が減少していることがわかる。
本実施例における前記死水域低減効果を図10の(c)に示す斜視図によりわかり易く説明する。本実施例では、スリット部3a,3c,3e,3gを立上げている各斜面部31a,31c,31e,31gの高さ(Hs1)が、(a)図に示す従来のものより大きく形成されている。従って、これらの斜面部のうち、後流側の前記斜面部31e,31gは、上流側からの気流を伝熱管2の後方側に誘導する働きが従来のものより大きくなる。この働きによって、伝熱管2の後流側に生じる死水域(速度の遅い部分;よどみ)を減少させる効果が得られ、この死水域の低減効果により通風抵抗も低減できるから、熱伝達効率の向上も図れる。
【0038】
従って、本実施例によれば、伝熱管を細径化し、段ピッチ、列ピッチ、フィンピッチ等を縮小化して高密度で高効率な熱交換器を得ることができると共に、寸法誤差による性能のバラツキを最小限に抑えることもできるフィンチューブ熱交換器を得ることができる。
【0039】
図7は図2に示すフィンピッチPfによる性能への影響を説明する線図である。フィンピッチPfが1.25mmより大きい範囲では、フィンピッチPfを小さくするほどフィン枚数を増加してフィンの伝熱面積を増加でき、また代表寸法(熱交換器の外径寸法)も小さくできるから、熱伝達率の向上によりAPF性能が向上する。一方、フィンピッチPfを1.25mmより小さくしていくと、通風抵抗が増大して空気側圧力損失が大きくなること、及び温度境界層の影響も大きくなるため、APF性能が低下していく。性能のピークから3%以内の性能低下に抑えるためには、フィンピッチPfを
1.0mm≦Pf≦1.5mm
の範囲に設定することが好ましい。
なお、図2において、Tfはフィンチューブ熱交換器1の厚さであり、通常0.1mm程度のものが使用される。
【0040】
図8は図1及び図3(c)に示す板状フィン1における各スリット部の幅(スリット幅)Wsによる性能への影響を説明する線図である。前記スリット幅Wsが1.1mmよりも大きい範囲では、スリット幅Wsを小さくするほどスリット部3の数を多くできることにより熱伝達率を増加でき、APF性能を向上できる。即ち、スリット幅Wsを小さくするほどスリット部3の前縁部での温度境界層の更新による伝熱促進効果(前縁効果)が増加するため、熱伝達率が増加する。反面、前記スリット幅Wsが1.1mmよりも小さい範囲では、スリット幅Wsを小さくするほど空気の流れが乱流になり易く通風抵抗(空気側圧力損失)が増大すること、また上流側スリット部の温度境界層の影響が下流側のスリット部に出てくるためフィン効率が低下することのため、APF性能は低下していく。性能のピークから3%以内の性能低下に抑えるためには、スリット幅を
0.8mm≦Ws≦1.4mm
の範囲に設定することが好ましい。
【0041】
図11は図1に示すフィンチューブ熱交換器を搭載した状態の天井埋込型の空気調和機(室内機)を示す縦断面図、図12は図11に示す天井埋込型空気調和機を下方側から見た底面図である。
【0042】
図において、50は天井埋込型空気調和機(室内機)、51は天井70に埋め込まれて設置された筐体で、この筐体51の内部には図1に示すフィンチューブ熱交換器100が送風機52の周囲を取り巻くように設置されている。前記送風機52は電動機53により回転され、送風機52の回転により室内空気は、図11に示す矢印のように、吸込フィルタ54から吸い込まれ、送風機52を通過し、該送風機の周囲に配置された熱交換器100を通過して、風向ガイド55により任意の方向に曲げられ吹き出される。なお、図11において、56は前記熱交換器100の下部に設けられたドレンパンである。
【0043】
空気調和機50は、吸い込んだ室内空気を前記熱交換器100で所定の温度に調整し、室内に吹き出すことにより、空調作用を行う。
天井埋込型空気調和機では、送風機52と熱交換器100との間、及び熱交換器100と筐体51との間隔は狭く、コンパクト性を維持しながら高効率化を実現する必要がある。図1に示した本実施例のフィンチューブ熱交換器100は熱交換器を高密度化して小形化できるので、天井埋込型空気調和機への適用効果は大である。
【0044】
また、図12に示すように、天井埋込型空気調和機に設置されるフィンチューブ熱交換器100は、送風機52を取り巻く形に配置されるため、熱交換器100は複数箇所で曲げ加工がなされている。このため、曲げ加工時に僅かなフィン形状の変形が生じ易い。特に各フィンの最上流側のスリット部3aは曲げ加工時にダイスなどに接して外力を受け易く、変形し易いが、本実施例では最上流のスリット部3aの突出高さHs1が大きくなるように構成しているので、スリット部3aが外力を受けて変形しても、フィン変形による性能劣化を最小限に抑えることができる。従って、本実施例のフィンチューブ熱交換器を備えた空気調和機とすることにより、空気調和機のAPF性能を向上できる。
【実施例2】
【0045】
図13及び図14により本発明の実施例2のフィンチューブ熱交換器を説明する。図13はフィンチューブ熱交換器の要部拡大正面図、図14は図13のH−H断面図である。これらの図において図1〜図3と同一符号を付した部分は同一または相当する部分を示している。
【0046】
フィンチューブ熱交換器100(図1参照)は、互いに所定の間隔を空けられて空気が通過する複数枚の板状フィン1と、該板状フィン1に垂直に挿入され且つ蛇行するように設けられた伝熱管2を有し、前記板状フィン1にはスリット部3(3a〜3g)が切り起されている。図14に示すように、板状フィン1の一方面側には第1スリット群(スリット部3a、3c、3e、3g)が、板状フィン1の他方の面側には第2スリット群(スリット部3b、3d、3f)が形成されている。
【0047】
本実施例においても、実施例1と同様に、最も上流側のスリット部3aの突出高さHs1(Hsa)は上流側から2番目のスリット部3bの突出高さHs2(Hsb)よりも高くなっており、好ましくは『1.2≦Hs1/Hs2≦1.6』とする。更に、本実施例では、前記第1スリット群も第2スリット群も、各スリット部の板状フィン1からの突出高さが、フィンの列方向中心線cから外側に位置するスリット部ほど高くなるように構成されている。即ち、第1スリット群においては中心側のスリット部3c,3eの突出高さHsc,Hseよりも外側のスリット部3a,3gの突出高さHsa,Hsgを高くし、第2スリット群も同様に、中央のスリット3dの突出高さHsdよりも外側のスリット部3b,3fの突出高さHsb,Hsfが高くなるように構成されている。また、各スリット部の高さはフィンの列方向中心線cに対して左右対称になるように構成されており、フィンを裏返しに使用することも可能にしている。
【0048】
また、本実施例では、各スリット部3a〜3gの立ち上がり傾斜部31a〜31g(図13では立ち上がり傾斜部31f,31gのみ符号で表示)の立ち上がり位置を伝熱管2の同心円状に配置するように構成している。
【0049】
このように構成することにより、後流側のスリット部3f,3gの立ち上がり傾斜部31f,31gが空気の誘導壁となる為、伝熱管2の後流側に発生する死水域(空気が渦となってよどみが生じている部分)を板状フィンの裏表の両側で効率良く低減でき、この結果通風抵抗をより低減でき、熱伝達率もより向上することができるから、熱交換器性能を向上できる。
【実施例3】
【0050】
図15及び図16により本発明の実施例3のフィンチューブ熱交換器を説明し、またこの実施例3のフィンチューブ熱交換器の適用例を図17、図18により説明する。
【0051】
図15はフィンチューブ熱交換器の要部拡大正面図、図16は図15のH−H断面図である。
【0052】
図15及び図16に示す実施例は、図1〜図3で説明した実施例1のフィンチューブ熱交換器に対して、板状フィン1の列方向の端部近傍に山形形状のリブ4a,4bを設けたものである。前記リブ4a,4bはそれぞれ板状フィン1の段方向に連続して形成されており、伝熱管の小径化、フィンの高密度化により高効率化され且つ段方向に長く構成した板状フィン1の曲げ剛性を向上することができる。これにより、熱交換器製造時のねじれや曲がりなどのフィン変形を防止でき、生産効率や品質向上を図れると共に、床置き型や天井吊り型などの形態の異なる空気調和機にも広く適用可能となる。他の構成は図1〜図3に示したものと同様の構成となっており、図1〜図3に示したものと同様の効果も得られるものである。
【0053】
前述した図11、図12に示した天井埋込型空気調和機においては、設置される天井裏の懐高さの制限により、製品の高さはあまり大きくできない。従って、これに組み込まれるフィンチューブ熱交換器の段方向高さは、例えば250mm程度と比較的小さく、このため、板状フィン1製造時のフィン長手方向変形は生じにくい。しかし、図17に示されるような床置き型の空気調和機など製品高さが比較的大きい製品において、フィンチューブ熱交換器100を搭載する場合、熱交換器の段方向の高さが例えば840mm程度と大きくなり、板状フィン製造時の長手方向変形が生じ易くなる。これに対し、図15及び図16に示した板状フィン1を備えたフィンチューブ熱交換器を採用することにより、熱交換器の剛性向上を図れるから、床置き型の空気調和機の品質向上と生産効率を向上できる効果が得られる。
【0054】
なお、図17において、図11と同一符号を付した部分は同一または相当する部分を示し、同様の機能を備えるものであるから、説明は省略する。また、この実施例においても、空気調和機の組立時などにフィン最上流側のスリット部3aが変形しても、フィン変形による性能劣化を最小限に抑えることができる。
【0055】
図18は、図15及び図16に示すフィンチューブ熱交換器を搭載した天井吊り型の空気調和機を示す縦断面図である。この天井吊型の空気調和機は、天井面から露出するデザインであり、圧迫感を押さえる配慮からその製品高さを小さくすることが求められており、熱交換器の面積を確保する為には、熱交換器100は鉛直方向に対する傾き角度θを比較的大きくすることが必要となる。
【0056】
また、図11及び図12で示された天井埋込型空気調和機のように、伝熱管2の長手方向には曲げを設けない形状の為、熱交換器100は平面形状となる。そのため、熱交換器100の剛性確保が難しい。図15及び図16に示した実施例3のフィンチューブ熱交換器では、伝熱管2を細径化し、列ピッチPLを縮小化した場合においても、熱交換器100の剛性を確保することが容易であり、この熱交換器を図16に示す天井吊型空気調和機に採用することにより、高効率化と製品信頼性を両立させた空気調和機を得ることが可能となる。
【0057】
なお、図18において、図11と同一符号を付した部分は同一または相当する部分を示しており、同様の機能を備えるものであるから、説明は省略する。また、この実施例においても、空気調和機の組立時などにフィン最上流側のスリット部3aが変形しても、フィン変形による性能劣化を最小限に抑えることができる。
【0058】
このように実施例3に示したフィンチューブ熱交換器を用いることにより、様々な形態の空気調和機への適用が可能となり、空気調和機の高効率化を一層進めることが可能となる。
【実施例4】
【0059】
図19〜図21により、本発明のフィンチューブ熱交換器の実施例4を説明する。これらの図において、図1〜図3と同一符号を付した部分は同一或いは相当する部分を示している。
図19は本発明のフィンチューブ熱交換器の実施例4を示す図で、図3(c)に相当する図(図1のH−H断面に相当する図)である。
【0060】
本実施例では図19に示すように、図3(c)に示した前記実施例1におけるスリット配置に対して、列方向(空気の流れ方向)の中心に位置するスリット部(中心スリット部)3dを立ち上げず、板状フィン1の基板面と同一高さとしたものである。他の構成は図3(c)に示した実施例1と同様である。
【0061】
図20は図19に示した実施例4のスリット配置における各スリット部での前縁効果を説明する図で、(a)は中心スリット部3dを立ち上げたスリット配置での温度分布の解析結果を示す図、(b)は実施例4のスリット配置での温度分布の解析結果を示す図である。
【0062】
図20の(a)図に示すように、中心スリット部3dを立ち上げた場合、その上流側のスリット部3b及び下流側のスリット部3fの双方と温度境界層の干渉が生じ易い。これに対して、(b)図に示すように、中心スリット部3dを立ち上げない場合(即ち、立ち上げ高さをゼロとして立ち上げ無しとした場合)、この中心スリット部3dは、その上流側のスリット部3bと下流側のスリット部3fの双方とずれた位置に配置されることになるため、上流・下流のスリット部3b,3fの温度境界層とは干渉が少なくなり、実施例1のものに比べ、伝熱性能を更に向上させることができる。
【0063】
図21は実施例4のスリット配置における通風抵抗を説明する図で、(a)は中心スリット3dを立ち上げたスリット配置での気流解析結果を示す図、(b)は実施例4のスリット配置での気流解析結果を示す図である。
【0064】
図21の(a)図に示すように、中心スリット3dを立ち上げたスリット配置の場合、気流は、スリット間を小さな蛇行を繰り返して速い速度で通過し、この速い流れは各スリット部の前縁と十分に接触することなく流れてしまう。
これに対して、図21の(b)図に示す本実施例の場合(中心スリット3dを立ち上げない場合)のスリット配置では、気流が大きく蛇行して流れる。これにより、(a)のスリット配置に比べて(b)のスリット配置の方が、通風抵抗は若干増大するものの、気流を通過させる通路が全体的に確保されているため、全体的に流速が増加して流速の特に速い部分は少なくなる。また、熱交換が進んでいないより新鮮な空気が各スリット部に接触し易くなる。これらの理由により、本実施例では、通風抵抗増大の割合以上に、伝熱性能の向上を図ることができ、高性能のフィンチューブ熱交換器を得ることができる。
【0065】
図22は、上述した本発明のフィンチューブ熱交換器を備えた空気調和機を多室型空気調和機に適用した場合の例を示す冷凍サイクル構成図である。
単一の冷凍サイクルに対して、室内機が複数接続されたいわゆる多室型空気調和機と呼ばれるものがある。この多室型空気調和機は、室外機60から循環される冷媒(例えば、R410A,R32,R407C,R404A,R744,R161,R290,R134a,R152a,HFO1234yfなどの単一冷媒、またはこれらの混合冷媒)を、複数接続された室内機50a,50b,…に各々必要量循環させるために冷媒可変減圧機構(電子膨張弁)9a,9b…を備えており、この冷媒可変減圧機構の調整により運転されるものである。このような多室型の空気調和機においては、複数接続される各室内機50a,50b,…の形態や容量は様々なものが選択されるように設計されている。そのため、室外機1台に対して室内機が1台のみ接続されている空気調和機に比べて過渡的な変化が大きく、熱交換器100に対しては、性能及び信頼性がより高いものが要求される。
【0066】
そこで、図1〜図21で説明したような本発明のフィンチューブ熱交換器や、これを備えた空気調和機(室内機)を、多室型空気調和機に採用することにより、コンパクトで且つ高い性能、高い信頼性を安定的に得られ、室内機に冷媒可変減圧機構を備えている多室型空気調和機に求められる高い性能を発揮させることが可能となる。
【0067】
なお、図22において、6a,6bは室外機60に設けられた圧縮機で、該圧縮機6a,6bから吐出された冷媒は油分離器7、四方弁8、室外熱交換器101、室外膨張弁(電子膨張弁)9、受液器10を通って室内機50(50a,50b,…)側に流れる。また、室内機50側からの冷媒は前記四方弁8及びアキュームレータ5を通って、再び前記圧縮機6a,6bに吸入される。13は圧縮機6a,6bの吐出側と吸入側を接続する高低圧バイパス回路、14はこの高低圧バイパス回路を開閉するための開閉弁であり、圧縮機の吐出側圧力が上昇し過ぎた場合や、起動時など圧縮機吸入側の温度を上げて吐出温度を早く上昇させたい場合などに前記開閉弁14は開かれる。102は前記室外熱交換器101に外気を供給するための送風機である。前記各室内機50a,50b,…にはそれぞれフィンチューブ熱交換器100a,100b,…や、送風機52a,52b,…なども設けられている。前記フィンチューブ熱交換器100a,100b,…には、例えば前述した本発明の実施例1〜4の何れかで説明したものを使用する。
【0068】
以上説明したように、本実施例によれば、伝熱管が小径化され、段ピッチ、列ピッチ、フィンピッチ等を縮小化することでフィンが小形化、高密度化されても、伝熱性能を向上し且つ通風抵抗の増加も抑制して、高性能なフィンチューブ熱交換器を得ることができる。
また、フィンチューブ熱交換器の製造時や空気調和機への組込時などに外力を受けてフィンが変形し、寸法誤差が生じた場合でも、熱交換器の効率低下を抑制して、熱交換性能のバラツキを最小限に抑えることもできる。
更に、上述した本発明の各実施例のフィンチューブ熱交換器を様々な形態の空気調和機へ適用することにより、空気調和機の高効率化及び高信頼性化を一層進めることが可能となる。
【符号の説明】
【0069】
1:板状フィン、1a:座面(平板部)、
2,21(21a〜21c),22(22a,22b),23(23a〜23c):伝熱管、2s:直管部、2r:曲管部、
3(3a〜3g):スリット部(31a,31b,33a,33b:斜面部、32a,32b:平面部)、
4(4a,4b):リブ、
5:アキュームレータ、6a,6b:圧縮機、7:油分離器、8:四方弁、9:室外膨張弁、9a,9b:冷媒可変減圧機構、10:受液器、
13:高低圧バイパス回路、14:開閉弁、
50(50a,50b):空気調和機(室内機)、51:筐体、52(52a,52b):送風機、53:電動機、54:吸込フィルタ、55:風向ガイド、56:ドレンパン、
60:室外機、
70:天井、
100(100a,100b):フィンチューブ熱交換器、
101:室外熱交換器、102:送風機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体が通過可能に互いに所定の間隔をあけて積層して配置された複数枚の板状フィンと、該板状フィンを貫通すると共に蛇行するように構成され、内部を冷媒が通過する伝熱管とを備えたフィンチューブ熱交換器において、
前記板状フィンには、複数枚の前記板状フィンを積層した方向に切り起された複数のスリット部を備え、
前記複数のスリット部のうち、気体の流れに対して最上流に位置するスリット部の前記板状フィンからの突出高さ(Hs1)を、前記気体の流れに対して2番目に位置するスリット部の前記板状フィンからの突出高さ(Hs2)よりも大きく構成していることを特徴とするフィンチューブ熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載のフィンチューブ熱交換器において、前記板状フィンは、該板状フィンの一方の面側に突出する複数の前記スリット部からなる第1スリット群と、前記板状フィンの他方の面側に突出する複数の前記スリット部からなる第2スリット群とを備え、
前記第1スリット群及び第2スリット群の中のスリット部のうち、気体の流れに対して最上流に位置するスリット部の前記板状フィンからの突出高さ(Hs1)と、気体の流れに対して2番目に位置するスリット部の前記板状フィンからの突出高さ(Hs2)との関係が、
1.2≦Hs1/Hs2≦1.6
となるように構成していることを特徴とするフィンチューブ熱交換器。
【請求項3】
請求項2に記載のフィンチューブ熱交換器において、前記第1スリット群を構成しているスリット部の高さを同一高さとし、また前記第2スリット群を構成しているスリット部の高さも同一高さに構成されていることを特徴とするフィンチューブ熱交換器。
【請求項4】
請求項2に記載のフィンチューブ熱交換器において、気体の流れに対して最上流に位置するスリット部の前記板状フィンからの突出高さ(Hs1)と、前記気体の流れに対して2番目に位置するスリット部の前記板状フィンからの突出高さ(Hs2)との関係を、
Hs1/Hs2=1.3
となるように構成していることを特徴とするフィンチューブ熱交換器。
【請求項5】
請求項2に記載のフィンチューブ熱交換器において、前記板状フィンの積層方向に切り起された前記複数のスリット部のうち、前記フィン列方向中心に位置する中心スリット部の立ち上げ高さをゼロ(立ち上げ無し)に構成していることを特徴とするフィンチューブ熱交換器。
【請求項6】
請求項2に記載のフィンチューブ熱交換器において、前記伝熱管の外径(D)が4〜6mmであることを特徴とするフィンチューブ熱交換器。
【請求項7】
請求項6に記載のフィンチューブ熱交換器において、複数枚の前記板状フィンには、前記蛇行するように構成されている伝熱管の直管部が前記板状フィンの段方向(長手方向)に等間隔に複数段に貫通され、各前記直管部の段方向の間隔である段ピッチPtを、
12mm≦Pt<14mm
の範囲になるように構成したことを特徴とするフィンチューブ熱交換器。
【請求項8】
請求項7に記載のフィンチューブ熱交換器において、複数枚の前記板状フィンで構成されているフィンの列が気体の流れ方向に複数列設けられ、各列の伝熱管直管部間の間隔である列ピッチPLを、
8mm≦PL≦10mm
の範囲になるように構成したことを特徴とするフィンチューブ熱交換器。
【請求項9】
請求項8に記載のフィンチューブ熱交換器において、前記各スリット部の幅(Ws)を0.8〜1.4mm、フィンピッチ(Pf)を1.0〜1.5mmとしたことを特徴とするフィンチューブ熱交換器。
【請求項10】
請求項1に記載のフィンチューブ熱交換器において、前記板状フィンにその積層方向に切り起された前記複数のスリット部の板状フィンからの突出高さが、フィン列方向中心線から外側に位置するスリット部ほど高くなるように構成すると共に、前記各スリット部の立ち上がり傾斜部の立ち上がり位置を伝熱管の同心円状に配置したことを特徴とするフィンチューブ熱交換器。
【請求項11】
請求項1に記載のフィンチューブ熱交換器において、前記板状フィンにその積層方向に切り起された前記複数のスリット部の板状フィンからの突出高さが、フィン列方向中心線に対して左右対称になるように構成されていることを特徴とするフィンチューブ熱交換器。
【請求項12】
請求項1に記載のフィンチューブ熱交換器において、前記板状フィンの列方向の両端部近傍に山形形状のリブが形成されていることを特徴とするフィンチューブ熱交換器。
【請求項13】
請求項8に記載のフィンチューブ熱交換器において、前記フィン列が気体の流れ方向に3列設けられると共に、前記各列のフィンを貫通する前記伝熱管の直管部が、気体の流れ方向に3列で千鳥状に配置されていることを特徴とするフィンチューブ熱交換器。
【請求項14】
フィンチューブ熱交換器を備えた空気調和機において、前記空気調和機は天井埋込型の空気調和機であり、且つ前記フィンチューブ熱交換器は請求項1に記載のフィンチューブ熱交換器であることを特徴とするフィンチューブ熱交換器を備えた空気調和機。
【請求項15】
フィンチューブ熱交換器を備えた空気調和機において、前記空気調和装置は天井吊り型または床置き型の空気調和機であり、且つ前記フィンチューブ熱交換器は請求項12に記載のフィンチューブ熱交換器であることを特徴とするフィンチューブ熱交換器を備えた空気調和機。
【請求項16】
請求項14に記載のフィンチューブ熱交換器を備えた空気調和機において、前記天井埋込型の空気調和機には冷媒を必要量流すための冷媒可変減圧機構を備えていることを特徴とするフィンチューブ熱交換器を備えた空気調和機。
【請求項17】
請求項16に記載のフィンチューブ熱交換器を備えた空気調和機において、前記空気調和機は、単一の冷凍サイクルに対して室内機が複数台接続された多室型の空気調和機であり、前記複数台の室内機のうちの少なくとも一部が天井埋込型の空気調和機(室内機)であることを特徴とするフィンチューブ熱交換器を備えた空気調和機。
【請求項18】
請求項15に記載のフィンチューブ熱交換器を備えた空気調和機において、前記空気調和機は冷媒を必要量流すための冷媒可変減圧機構を備えており、且つ前記空気調和機は単一の冷凍サイクルに対して室内機が複数台接続された多室型の空気調和機であって、前記複数台の室内機のうちの少なくとも一部が天井吊り型または床置き型の空気調和機(室内機)であることを特徴とするフィンチューブ熱交換器を備えた空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−93073(P2012−93073A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76619(P2011−76619)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】