説明

フィールドシーケンシャルカラー表示装置用色光源

【要 約】
【課 題】 従来のカラー表示装置は色再現域を要求されたものに合わせることが容易でない。
【解決手段】 フィールドシーケンシャル方式において、3原色の各色の光源2〜4ごとおよび色フィールドごとに光量を制御できる調光手段10を有する制御できる調光手段10を有する。これを用いて、各色フィールド内で該色フィールドを担当する色の光源およびそれ以外の色の光源の光量を調整することにより、該色フィールドの表す色度座標を変更し、かつ、色フィールド内の光量の比率を保ったまま色フィールド間の光量比を調整してホワイトバランスをとり、色域を(色域6から色域7へ)変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィールドシーケンシャルカラー表示装置用カラー光源に関する。
【背景技術】
【0002】
フィールドシーケンシャルカラー表示装置は、通常、3種類の異なる波長ごとに分割されたモノクロ映像信号をシーケンシャルに表示する表示素子(表示パネル)と、異なる波長ごとに設けられた光源例えばLED光源とを有し、該光源を対応波長の映像信号の表示に同期させて発光させることによりカラー画像を表示するように構成される(例えば特許文献1)。
【0003】
上記従来の構成ではCIE表色系の色度図における色再現範囲がRGB(赤緑青)の3色光源で再現できる面積範囲に制限され、表示しきれない色範囲が存在する。色再現範囲を広げるために別途E(エメラルド)色のLEDを加えて、4色の光源を用いて4フィールドの駆動を行うことで、色再現範囲を拡大可能であるが、新たなLEDの追加およびそれ用の制御回路増設によるコストアップを伴う。このコストアップを伴わずに色再現範囲を拡大する手段として、特定色のLEDを駆動する電流の波高値と幅を変えて意図的にピーク波長をシフトさせることにより、3原色光源以外の発光色を得ること、および、この発光色と光源の3原色とにより4フィールドを構成し、RGBの3原色を超えた色数で混色し、ホワイトバランスを取ることが知られている(特許文献2)。
【0004】
フィールドシーケンシャル方式は、個々の色表示画素の表示色の3原色成分(特許文献2ではもう一色)を、前記表示色の表示期間(1フレーム)を時分割した3つ(特許文献2では4つ)の分割時間域(フィールドまたは色フィールド)内に順次表示し、1フレーム内の順次加法混色によりマルチカラー表示やフルカラー表示を行うものである。
一方、これとは異なるカラーフィルタ方式のLCD(液晶表示装置)が広く用いられている。カラーフィルタ方式では、白黒双方向表示の光シャッタ機能をもつ液晶セル3個とRGB3原色マイクロカラーフィルタが1対1に組み合わされて個々の色表示画素を構成し、各色表示画素内で空間分割されている3色の同時加法混色によりマルチカラー表示やフルカラー表示を行う。カラーフィルタ方式のLCDでは、全体光透過率はかなり低いのでバックライトの付加が必須である。バックライトとしては白色光源あるいは3色光源(3波長蛍光ランプ)が用いられるが、カラーフィルタのRGBの吸収スペクトルはブロードであるため、高い色純度を得るには3色光源を用いるとよい(非特許文献1)。
【0005】
RGBマイクロカラーフィルタ方式と比べてフィールドシーケンシャル方式のLCDは、液晶パネル(セル)の応答速度が3倍高速であることが要求されるが、偏光子以外に光を吸収するカラーフィルタなどが不要なので、明るい表示が実現できる。また、液晶パネルの各々の電極ドットそのものが1対1で個々のカラー表示画素に対応しているので、3個組みの電極ドットが1個のカラー表示画素に相当しているRGBマイクロカラーフィルタ方式に比べ、3倍の高解像度のカラー表示が実現できる(非特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−280607号公報
【特許文献2】特開2007−101802号公報
【非特許文献1】松本正一編著「液晶ディスプレイ技術―アクティブマトリクスLCD―」1996.11.8初版、産業図書発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、カラー表示装置に求められる色再現域は用途によって異なる。例えば放送機器でsRGB、またDTP(机上出版)や印刷業界で標準のAdobeRGBなどである。そのため、カラー表示装置そのものに色の調整機能すなわちカラーマネジメント機能が求められている。
通常のカラーフィルタ型に代表されるLCDは、色再現域、ホワイトバランスなどの色に関する仕様は設計時に固定されてしまうので、使用時に任意に光源を調整するのは困難である。そこで、現状では代替として画素データを演算で補正することによって色調整を行ってはいるが、それには高性能で高価な専用の画像処理LSIを開発して搭載しなければならない。この補正を行うと光を絞るため光量は低下し、液晶の表示階調が低下するので本質的な色調整とはならない。
【0007】
また、放送機器で仮定されているsRGBなどに対して、LEDをバックライトとする表示装置の色域(gamut::色度座標空間で3原色の色度座標が囲む、表現可能な領域)は広く、映像データを加工せずに表示すると本来の色とは異なった極彩色の色が表示されてしまうので、色再現域を狭めたいという要求が存在する。
ところが、従来のフィールドシーケンシャルカラー表示装置では、特許文献2のように色再現域を拡大しようとする工夫は見られるものの、上述のような色再現域を狭めたいという要求に合わせてカラーマネジメントを行おうとするものは見当たらない。
【0008】
このように、従来のカラー表示装置では、色再現域を要求されたものに合わせることは容易ではないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するためになされた本発明は、次のとおりである。
(請求項1) フィールドシーケンシャルカラー表示装置に用いるカラー光源であって、3原色の各色の光源ごとおよび色フィールドごとに光量を制御できる調光手段を有することを特徴とするフィールドシーケンシャルカラー表示装置用カラー光源。
(請求項2) 前記3原色に代えて4原色以上の色群とし、前記色フィールドの数を3あるいは4以上としたことを特徴とする請求項1に記載のフィールドシーケンシャルカラー表示装置用カラー光源。
(請求項3) 請求項1または2に記載のカラー光源を駆動する方法であって、前記調光手段を用いて、各色フィールド内で該色フィールドを担当する色の光源およびそれ以外の色の光源の光量を調整することにより、該色フィールドの表す色度座標を変更し、かつ、色フィールド内の光量の比率を保ったまま色フィールド間の光量比を調整してホワイトバランスをとり、色域を変更することを特徴とするフィールドシーケンシャルカラー表示装置用カラー光源の駆動方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、色再現域を要求仕様に合わせることが容易であり、また、カラー/モノクロの切り替えも容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図4は本発明のカラー光源の1例を示す概略ブロック図である。2、3、4はそれぞれRGBの各色を発光する光源(R光源、G光源、B光源)であり、例えばLEDで構成される。各光源2〜4には、3原色の各色の光源ごとおよび色フィールドごとに光量(=発光時間×光強度)を制御できる調光手段10が設けてある。かかる調光手段10は、ICを用いた小規模の調光制御回路(光源への印加電流および該電流のオン/オフタイミングの制御を行う回路)で構成でき、コスト負担は軽い。
【0012】
3色フィールド構成の場合、RGBの3色光源のみを用いるが、4色フィールド構成とする場合は、RGB以外の色Xを発光する光源(X光源)5を追加し、これにも同様に調光手段10を設ければよい。X光源5は前記特許文献2に記載のE光源であってもよい。
これらの光源2,3,4(あるいはさらに5)および調光手段10を有する本発明のカラー光源は、表示パネル20が各色フィールドに対応する白黒(中間調も含む)画像を順次表示するのに同期して駆動される。
【0013】
表示パネル20としては、液晶セルで構成された液晶パネルが好ましいが、これに限定されず、例えばDMD(デジタルミラーデバイス)を用いたDLP(デジタルライトプロセッシング:TI社の登録商標)方式のものであってもよい。
次に、本発明によるカラー光源の駆動方法について説明する。以下では3色フィールド構成の場合を例として説明するが、4色以上の色フィールド構成の場合についても同様である。
【0014】
従来のフィールドシーケンシャル方式の光源駆動シーケンスは、例えば図3に示すように、赤、緑、青の各色フィールドにおいては、その担当の色の光源のみ点灯するというものである。このような光源駆動シーケンスでは、各色フィールド内の点灯色の色度を変更することはできない。
これに対し、本発明では、カラー光源が前記調光手段10を有するがゆえに、この調光手段で各色の光源ごとに光量を制御することにより、例えば図1に示すような光源駆動シーケンスをとることができる。すなわち、各色フィールド内でその担当の色の光源のみならず、他の色の光源も点灯させる。そして、この点灯に際しては、前記調光手段により、各色フィールド内で該色フィールドを担当する色の光源およびそれ以外の色の光源の光量を調整することにより、該色フィールドの表す色度座標を変更し、かつ、色フィールド内の光量の比率を保ったまま色フィールド間の光量比を調整してホワイトバランスをとり、色域を変更するのである。
【0015】
例えば、赤フィールドではR光源のみならず、他の2色の光源も、R光源よりも低い光量に設定して、点灯させる。これにより赤フィールド内の点灯色の色度を所望のレベルに合わせることができる(赤、Rが、緑、G、または青、Bであっても同様)。ホワイトバランスは、各色フィールド内での3色光源間の光量比率を保ったまま、色フィールド間で光量比を調節することで任意に制御可能である。よって、色域を容易に狭めることができ、かつ、ホワイトバランスも容易に所望のレベルに保持できる。
【0016】
なお、図1では、光源ごとおよび色フィールドごとに、発光時間を一定として光強度を変えることで光量を変えているが、これに限らず、光強度を変えずに発光時間を変え、あるいは光強度と発光時間の両方を変えることで光量を変えるようにしてもよい。
これにより、例えば図2の色度図上に示すように、RGBの色度座標を制御して、変更前の色域6をこれより狭い色域7に変更することが容易となり、かつ、この色域7を保持しながらホワイトバランスも所望のレベルに保持できることになり、それゆえ、色再現域を容易に要求仕様に適合させることができる。
【0017】
これに対し、単一光源(例えば白色光源)のカラーフィルタ方式ではカラーフィルタの透過波長特性によって3原色の色度座標がほぼ一義的に決まり、調整の余地はない。
また、複数の色の光源を持ったカラーフィルタ方式ではホワイトバランスの調整は可能であるが、3原色の色度座標はホワイトバランスの調整に伴って意図しない方向にシフトするから、複雑な画素データ演算を行わない限り、3原色の色度座標とホワイトバランスとを独立に制御することは困難である。
【0018】
本発明に基づくカラーマネジメント方法と、画素データ演算によるそれとを比較してみると、表1に示すように、本発明に基づく方が格段に有利であるといえる。
【0019】
【表1】

【0020】
また、従来のフィールドシーケンシャルカラー方式では、図3のように1つの色フィールドで発光する光源の色が1原色に限定されているので、白黒表示はできないのであるが、本発明では、調光手段により1つの色フィールドで2原色以上を同時に発光させることができるので、カラー/モノクロの切り替えが容易である。
【実施例】
【0021】
R,G,Bの各色光をそれぞれ発光するLEDからなる各光源と、ICを用いて前記調光手段の制御機能を実現するように構成した調光制御回路とを組み合わせて本発明のカラー光源となし、これをOCB(光学補償ベンド)モード液晶表示パネルのバックライトに用いて、3フィールド構成のフィールドシーケンシャル方式液晶ディスプレイ(FS-LCD)を作製した。このFS-LCDにおいて、調光制御回路で赤、緑、青の各色フィールド内の3色光源点灯による発光色の色度を調整することにより、sRGBの要求に適合した色再現域が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による光源駆動シーケンスの1例を示す説明図である。
【図2】CIE表色系の色度図である。
【図3】通常(従来)のフィールドシーケンシャル方式光源駆動シーケンスの1例を示す説明図である。
【図4】本発明のカラー光源の1例を示す概略ブロック図である。
【符号の説明】
【0023】
1 可視色領域
2 光源(R光源)
3 光源(G光源)
4 光源(B光源)
5 光源(X光源;XはRGB以外の色)
6 色域(変更前)
7 色域(変更後)
10 調光手段(調光制御回路)
20 表示パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィールドシーケンシャルカラー表示装置に用いるカラー光源であって、3原色の各色の光源ごとおよび色フィールドごとに光量を制御できる調光手段を有することを特徴とするフィールドシーケンシャルカラー表示装置用カラー光源。
【請求項2】
前記3原色に代えて4原色以上の色群とし、前記色フィールドの数を3あるいは4以上としたことを特徴とする請求項1に記載のフィールドシーケンシャルカラー表示装置用カラー光源。
【請求項3】
請求項1または2に記載のカラー光源を駆動する方法であって、前記調光手段を用いて、各色フィールド内で該色フィールドを担当する色の光源およびそれ以外の色の光源の光量を調整することにより、該色フィールドの表す色度座標を変更し、かつ、色フィールド内の光量の比率を保ったまま色フィールド間の光量比を調整してホワイトバランスをとり、色域を変更することを特徴とするフィールドシーケンシャルカラー表示装置用カラー光源の駆動方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−180907(P2009−180907A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19406(P2008−19406)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、経済産業省、地域新生コンソーシアム研究開発事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(503354044)財団法人21あおもり産業総合支援センター (27)
【Fターム(参考)】