説明

フェノール樹脂微粒子の製造方法およびフェノール樹脂微粒子

【課題】粒度分布がシャープで粒子径の極めて小さく、凝集の起こりにくいフェノール樹脂微粒子を製造する方法、及びこの方法により得られたフェノール樹脂微粒子を提供する。
【解決手段】フェノール類(A)と、アルデヒド類(B)とを、マイクロ波を照射して反応させることを特徴とするフェノール樹脂微粒子の製造方法、ならびにこの製造方法により得られたフェノール樹脂微粒子であり、前記マイクロ波の周波数帯は、890〜940MHz、2400〜2500MHz、及び5725〜5875MHzの中から選ばれた1種以上を用いることが好ましく、また、前記フェノール樹脂微粒子の平均粒子径は、500nm以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノール樹脂微粒子の製造方法およびフェノール樹脂微粒子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂微粒子を合成する方法として、懸濁重合、エマルジョン重合による方法が試みられてきた。このプロセスは安価なものであるため、汎用プラスチックであるポリスチレン、架橋ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート粉体やポリエステル樹脂等の製造分野などで利用されてきた。近年、ソープフリー乳化重合やシード乳化重合が注目されてきている。これらは、従来の懸濁重合や乳化重合とは異なり、懸濁剤や乳化剤、界面活性剤を一切使用しないため、後工程の洗浄が省略できるという非常に大きなメリットがある。また、数μmから数十nm程度の非常に径の小さな粒子の合成が容易であり、さらに粒度分布がシャープな微粒子を合成することが可能である。
【0003】
一方、フェノール樹脂の懸濁重合プロセスによる樹脂微粒子の合成について下記内容の技術が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。これらの技術は、懸濁重合プロセスによりフェノール樹脂微粒子を得るものであるが、懸濁重合プロセスでは、粒径が一般的な懸濁重合の粒度分布の範囲である数μm〜2mmとなってしまい、ナノメートルオーダーの微粒子は、得られていないのが現状である。さらに、懸濁重合プロセスでは、懸濁安定剤を添加して反応を行うため、反応終了後に洗浄工程を必要とするため、小粒径になるほど洗浄−分離工程が困難になるという問題点がある。
更に、セルロース類を懸濁安定剤として、粒径が0.1〜10μm程度の樹脂微粒子を合成する方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながらこの方法でも、樹脂製造後に熱水抽出を行って、反応に関与しないセルロースを除去する工程が必要となり、しかも、完全に除去を行うことは困難であり、また、粒子が独立した球とならずに二次凝集してしまうという問題点がある。
【0004】
また、懸濁安定剤を全く使用しない系での微小粒径フェノール樹脂の合成も試みられている(例えば、特許文献4、5参照)。これらの方法では、懸濁安定剤を全く使用していないため、粒度分布が1〜20μmの微粒子は得られるものの、形状が真球状とならなかったり、凝集物になりやすいという問題点があった。
【0005】
【特許文献1】特開昭61−127719号公報
【特許文献2】特開昭62−235312号公報
【特許文献3】特開平10−338728号公報
【特許文献4】特公昭62−30210号公報
【特許文献5】特開平07−18043号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、粒度分布がシャープで凝集が起こりにくいナノメートルオーダーの粒子径を有するフェノール樹脂微粒子を簡易に製造する方法、及びこの方法で得られたフェノール樹脂微粒子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明(1)〜(10)により達成される。
(1)フェノール類(A)と、アルデヒド類(B)とを反応させてフェノール樹脂微粒子を製造する方法であって、前記フェノール類(A)と、アルデヒド類(B)とをマイクロ波を照射して反応させることを特徴とする、フェノール樹脂微粒子の製造方法。
(2)前記マイクロ波の周波数帯は、890〜940MHz、2400〜2500MHz、及び5725〜5875MHzの中から選ばれた1種以上の周波数帯用いるものである(1)に記載のフェノール樹脂微粒子の製造方法。
(3)前記フェノール類(A)が、ベンゼン環1個当たりフェノール性水酸基を2個以上有する化合物を含むものである(1)または(2)に記載のフェノール樹脂微粒子の製造方法。
(4)前記ベンゼン環1個当たりフェノール性水酸基を2個以上有する化合物が、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、フロログルシノール、ピロガロールの中から選ばれた1種以上である(3)に記載のフェノール樹脂微粒子の製造方法。
(5)前記アルデヒド類(B)が、アルデヒド基、メチレンエーテル基、メチロール基、メチロールエーテル基の中から選ばれた基を有する化合物を含むものである(1)〜(4)のいずれかに記載のフェノール樹脂微粒子の製造方法。
(6)前記アルデヒド類(B)がホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、グリオキザール、フタルアルデヒド、トリオキサン、ポリオキシメチレンの中から選ばれた1種以上である(1)〜(5)のいずれかに記載のフェノール樹脂微粒子の製造方法。
(7)前記フェノール類(A)と、アルデヒド類(B)とのモル比(A:B)が1:0.8〜1:3である(1)〜(6)のいずれかに記載のフェノール樹脂微粒子の製造方法。
(8)懸濁安定剤を実質的に用いないものである(1)〜(7)のいずれかに記載のフェノール樹脂微粒子の製造方法。
(9)(1)〜(8)のいずれかに記載のフェノール樹脂微粒子の製造方法により得られたものであることを特徴とする、フェノール樹脂微粒子。
(10)前記フェノール樹脂微粒子の平均粒子径は、500nm以下である(9)に記載のフェノール樹脂微粒子。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、フェノール類(A)と、アルデヒド類(B)とを、マイクロ波を照射して反応させることを特徴としており、粒度分布がシャープで凝集が起こりにくいナノメートルオーダーの粒子径を有するフェノール樹脂微粒子を合成することができる。
また、前記マイクロ波の周波数帯として、890〜940MHz、2400〜2500MHz、及び5725〜5875MHzの中から選ばれた1種以上の周波数帯を用いることで、反応系のマイクロ波の吸収効率が良くなり、特に効率よく微粒子を製造できる。
また、前記フェノール類(A)として、ベンゼン環1個当たりフェノール性水酸基を2個以上有する化合物を用いることにより、粒子表面の親水性が上がり、特に粒子径の小さい粒子を得ることができる。
更に、前記アルデヒド類(B)として、アルデヒド基、メチレンエーテル基、メチロール基、メチロールエーテル基の中から選ばれた基を有する化合物を用いることにより、特に真球状の粒子を効率よく製造することができる。
また、前記フェノール類(A)と、アルデヒド類(B)とのモル比(A:B)を1:0.8〜1:3とすることにより、更に真球状の粒子を効率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
まず、本発明のフェノール樹脂微粒子の製造方法(以下、単に「製造方法」ということがある)について説明する。
本発明の製造方法は、フェノール類(A)と、アルデヒド類(B)とを、マイクロ波を照射して反応させることを特徴とする
【0010】
本発明の製造方法においては、フェノール類(A)を用いる。
前記フェノール類(A)としては、ベンゼン環1個当たりフェノール性水酸基を2個以上有する化合物を用いることが好ましい。
前記化合物としては、特に限定されないが、例えば、ベンゼン環1個当たりフェノール性水酸基を2個有する化合物としては、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン等が挙げられ、ベンゼン環1個当たりフェノール性水酸基を3個有する化合物としてはフロログルシノール、ピロガロール等が挙げられる。これらを単独もしくは併用して使用しても良い。この中でもレゾルシノール及びフロログルシノールが好ましい。これらを用いることで、アルデヒド類との反応性を向上させることができ、重合反応が進行した時に水との相溶性が良好なフェノール樹脂微粒子を得ることができる。
【0011】
本発明の製造方法においては、アルデヒド類(B)を用いる。
前記アルデヒド類(B)としては、特に限定されないが、アルデヒド基、メチロール基、メチロールエーテル基、メチレンエーテル基の中から選ばれた基を有する化合物を用いることが好ましい。
前記アルデヒド基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、フタルアルデヒド、ベンズアルデヒド、プロピオンアルデヒド、クロラール、フルフラール、ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、フェニルアセトアルデヒド、o−トルアルデヒド、サリチルアルデヒド等が挙げられる。
前記メチレンエーテル基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、パラホルムアルデヒド、ポリオキシメチレン、トリオキサン、環状ホルマール等が挙げられる。
また、前記メチロール基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、フェノール、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、フロログルシノール、ピロガロール、クレゾール、ベンゼン、キシレン、ナフタレン、アントラセン、ピレン等のポリ (ヒドロキシメチル) 置換誘導体が挙げられる。また、フェノール、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、フロログルシノール、ピロガロール、クレゾール、ベンゼン、キシレン、ナフタレン、アントラセン、ピレン等のアルキル誘導体等のポリ (ヒドロキシメチル) 置換誘導体、及び前記ポリ (ヒドロキシメチル) 置換誘導体の縮合物等が挙げられる。
前記メチロールエーテル基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、前記ポリ (ヒドロキシメチル) 置換誘導体とのメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類とのポリ (ヒドロキシメチルエーテル) 置換誘導体、およびその縮合物等が挙げられる。
これらを単独もしくは併用しても良い。
【0012】
更に、上記アルデヒド類(B)としては、特に限定されないが、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、グリオキザール、ポリオキシメチレン、フタルアルデヒド、トリオキサン等が挙げられ、これらを単独もしくは併用しても良い。
【0013】
また、フェノール類(A)とアルデヒド類(B)のモル比(A:B)については、1:0.8〜1:3とすることが好ましい。モル比を前記範囲とすることで、安定してフェノール樹脂微粒子を得ることができる。更に、1:1.5〜1:2.5が好ましい。モル比を前記範囲にすることで、特に効率良く生産することができる。モル比が前記下限値未満では樹脂が熱溶融し、凝集を起こして微粒子を得るのが難しくなることがあり、また、前記上限値を上回ると反応が急激に進行するために、二次凝集を起こし、真球状の微粒子を得るのが困難となることがある。
【0014】
本発明の製造法では、重合溶媒を用いることができる。
前記重合溶媒としては、後工程となる乾燥工程における作業性や安全性の観点から水が好ましいが、有機系の溶剤を使用しても構わない。有機系の溶剤としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等が挙げられる。これらを単独もしくは併用しても構わない。
【0015】
本発明の製造方法においては、フェノール類(A)と、アルデヒド類(B)との反応に際して、マイクロ波を照射する。これにより、粒度分布がシャープで粒子径の小さい、凝集の起こりにくいフェノール樹脂微粒子を合成することができる。
マイクロ波を反応のエネルギー源として用いた場合、このようなフェノール樹脂微粒子を合成できる理由は明確ではないが、マイクロ波を照射することにより、マイクロ波が物質の深部まで浸透し、内部より直接加熱されるために、局所的に物質の沸点以上になる超高温のスポットが発生するローカルスーパーヒーティングという現象が起こり、瞬時に粒子が生成し、粒子表面が安定化するためではないかと推測される。
【0016】
本発明の製造方法において、反応のエネルギー源として用いるマイクロ波は433.05〜434.79MHz、890〜940MHz、2400〜2500MHz、及び5725〜5875MHz、及び、24.000〜24.250GHzの周波数帯を用いることができる。この中でも、890〜940MHz、2400〜2500MHz、及び5725〜5875MHの中から選ばれた1種以上の周波数帯が好ましい。更に好ましくは2400〜2500MHzの周波数帯である。前記周波数帯のマイクロ波を用いることで、反応系のマイクロ波の吸収効率が良くなり、特に効率よく微粒子を製造できる。
前記以外の周波数帯は、現在の日本国内においては、電波法により使用が規制されているため、使用することが困難である。さらに、前記以外の周波数帯においては、反応系のマイクロ波吸収効率が低いため、効率よく微粒子を製造できない場合がある。
【0017】
上記マイクロ波の照射時間は、1〜360分であることが好ましい。更に好ましくは3〜180分であり、特に好ましくは5〜90分である。前記照射時間未満ではエネルギーが不足し、粒子が生成できないことがある。また前記照射時間を超えて照射しても、実質的に反応が終了しているため、マイクロ波を照射する事のメリットが得られないことがある。
【0018】
また、マイクロ波の出力については特に限定されず、製造装置の規模、合成するフェノール樹脂微粒子の反応性などに合わせて、適宜選択することができる。
【0019】
本発明の製造方法では、フェノール樹脂微粒子の合成工程において、その一部あるいは全部にマイクロ波の照射を適用することができる。あるいは、マイクロ波の照射と、通常の加熱方法とを併用することもできる。
【0020】
本発明の製造方法において、前記マイクロ波の照射を実施する形態としては特に限定されないが、例えば、反応容器にマイクロ波を吸収しにくい素材を使用し、反応容器の外部よりマイクロ波を照射する方法、または反応容器の内部にマイクロ波発振装置を設置し、反応系中でマイクロ波を照射する方法などが挙げられる。
【0021】
本発明の製造方法では、実質的に懸濁安定剤を用いることなくフェノール樹脂微粒子を反応させることができる。ここで懸濁安定剤の配合量は、フェノール樹脂全体に対して実質的に0.1重量%以下である。
実質的に懸濁安定剤を用いることなくフェノール樹脂微粒子を反応させることができる理由は、フェノール類(A)がベンゼン環1個当たりフェノール性水酸基を2個以上有する場合、表面の親水性が高くなり、粒子表面が安定化し、粒子同士の凝集が起こりにくくなるためと推測される。懸濁安定剤を実質的に用いないことで、懸濁安定剤を除去する工程を省くことができるため、特に効率よく製造できる。
【0022】
本発明の製造方法におけるフェノール類(A)と、アルデヒド類(B)との反応は、触媒がなくても反応は進行するが、炭酸ナトリウムなどの金属系のものや、アミン系の触媒を使用しても良い。
【0023】
本発明の製造方法は、フェノール類(A)と、アルデヒド類(B)とを混合するだけで重合反応が進行することが特徴の一つであるが、攪拌等による混合を行いながらフェノール樹脂微粒子を合成しても差し支えない。なお、混合方法は特に限定されるものではない。
【0024】
次に、本発明のフェノール樹脂微粒子について説明する。
本発明のフェノール樹脂微粒子は、前記本発明の製造方法により得られたものであることを特徴とする。
【0025】
本発明のフェノール樹脂微粒子においては、その平均粒子径が500nm以下であることが好ましい。さらに好ましくは5〜400nmである。平均粒子径が前記上限値を越えると微粒子としての特徴を有さなくなることがある。
【0026】
前記平均粒子径はレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置、動的光散乱式粒度分布測定装置により測定することができるし、電子顕微鏡写真のようなもので、直接観察することもできる。本発明のフェノール樹脂微粒子においては、前記平均粒子径はレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定を行った。
【0027】
以上に説明したように、本発明の製造方法により得られるフェノール樹脂微粒子は、粒度分布がシャープで、粒径が極めて小さい安定した粒子である。
【0028】
以下、本発明の製造方法及びフェノール樹脂微粒子について、実施例を用いて詳細に説明する。ここで記載されている「部」は全て「重量部」を示す。
【0029】
(実施例1)攪拌機及び温度計、還流冷却管を備えた三口フラスコ中に、レゾルシノール100部、純水1000部、炭酸ナトリウム0.15部を加え、完全に溶解するまで撹拌した。37%ホルムアルデヒド水溶液147重量部を添加して攪拌後、前記フラスコを、マルチモード型マイクロ波照射装置を備え、アースされたシールドケース内に設置して、周波数2450MHzのマイクロ波を出力600Wで30分間照射し、100℃、還流条件下で反応させた。その後、遠心分離機を用いて水と微粒子を分離して、乾燥及び解砕を行うことでフェノール樹脂微粒子Aを得た。
【0030】
(実施例2)攪拌機及び温度計、還流冷却管を備えた三口フラスコ中に、レゾルシノール100部、純水1000部、炭酸ナトリウム0.15部を加え、完全に溶解するまで撹拌した。37%ホルムアルデヒド水溶液147重量部を添加して攪拌後、前記フラスコを、マルチモード型マイクロ波照射装置を備え、アースされたシールドケース内に設置して、2450MHzのマイクロ波を出力600Wで5分間照射し、100℃、還流条件下で反応させた。その後、遠心分離機を用いて水と微粒子を分離して、乾燥及び解砕を行うことでフェノール樹脂微粒子Bを得た。
【0031】
(実施例3)攪拌機及び温度計、還流冷却管を備えた三口フラスコ中に、レゾルシノール100部、純水1000部、炭酸ナトリウム0.15部を加え、完全に溶解するまで撹拌した。37%ホルムアルデヒド水溶液147重量部を添加して攪拌後、前記フラスコを、マルチモード型マイクロ波照射装置を備え、アースされたシールドケース内に設置して、2450MHzのマイクロ波を出力600Wで120分間照射し、100℃、還流条件下で反応させた。その後、遠心分離機を用いて水と微粒子を分離して、乾燥及び解砕を行うことでフェノール樹脂微粒子Cを得た。
【0032】
(比較例)攪拌機及び温度計、還流冷却管を備えた三口フラスコ中に、レゾルシノール100部、純水1000部、炭酸ナトリウム0.15部を加え、完全に溶解するまで撹拌した。37%ホルムアルデヒド水溶液147重量部を添加して攪拌後、前記フラスコをオイルバスで加熱して、100℃、還流条件下で30分間反応させた。その後、遠心分離機を用いて水と微粒子を分離して、乾燥及び解砕を行うことでフェノール樹脂微粒子Bを得た。
【0033】
実施例および比較例で得られたフェノール樹脂微粒子について、平均粒子径、粒径の標準偏差及び凝集の起こりにくさを評価するため1ヶ月間保管後の平均粒子径を測定した。結果を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
実施例1〜3は、エネルギー源としてマイクロ波を照射してフェノール類(A)と、アルデヒド類(B)とを反応させる本発明の製造方法により得られたフェノール樹脂微粒子であり、通常の加熱手段を適用した比較例から得られた微粒子と比べて、平均粒子径が小さく、粒径の標準偏差が小さく、粒度分布がシャープな微粒子であった。また、1ヶ月後の平均粒子径も当初の粒子径とほとんど変わらず、凝集が起こりにくいことを証明できた。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、フェノール類(A)と、アルデヒド類(B)とをマイクロ波を照射して反応させることを特徴とするフェノール樹脂微粒子の製造方法である。
そして、この製造方法により得られる本発明のフェノール樹脂微粒子は、粒度分布がシャ―プで粒子径が極めて小さく凝集が起こりにくいため、各種フィラー、液晶のスペーサーや研磨材、潤滑剤のみならず、このような性状を要求される用途、例えば、フィルムへの添加剤や、画像表示用材料としての利用が可能である。また、固定炭素が高いことから、炭素材料としての応用も可能であり、トナー用炭素材、電極材料に好適に適用できるものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール類(A)と、アルデヒド類(B)とを反応させてフェノール樹脂微粒子を製造する方法であって、前記フェノール類(A)と、アルデヒド類(B)とをマイクロ波を照射して反応させることを特徴とする、フェノール樹脂微粒子の製造方法。
【請求項2】
前記マイクロ波の周波数帯は、890〜940MHz、2400〜2500MHz、及び5725〜5875MHzの中から選ばれた1種以上の周波数帯を用いるものである請求項1に記載のフェノール樹脂微粒子の製造方法。
【請求項3】
前記フェノール類(A)が、ベンゼン環1個当たりフェノール性水酸基を2個以上有する化合物を含むものである請求項1または2に記載のフェノール樹脂微粒子の製造方法。
【請求項4】
前記ベンゼン環1個当たりフェノール性水酸基を2個以上有する化合物が、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、フロログルシノール、ピロガロールの中から選ばれた1種以上である請求項3に記載のフェノール樹脂微粒子の製造方法。
【請求項5】
前記アルデヒド類(B)が、アルデヒド基、メチレンエーテル基、メチロール基、メチロールエーテル基の中から選ばれた基を有する化合物を含むものである請求項1〜4のいずれかに記載のフェノール樹脂微粒子の製造方法。
【請求項6】
前記アルデヒド類(B)がホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、グリオキザール、フタルアルデヒド、トリオキサン、ポリオキシメチレンの中から選ばれた1種以上である請求項1〜5のいずれかに記載のフェノール樹脂微粒子の製造方法。
【請求項7】
前記フェノール類(A)と、アルデヒド類(B)とのモル比(A:B)が1:0.8〜1:3である請求項1〜6のいずれかに記載のフェノール樹脂微粒子の製造方法。
【請求項8】
懸濁安定剤を実質的に用いないものである請求項1〜7のいずれかに記載のフェノール樹脂微粒子の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のフェノール樹脂微粒子の製造方法により得られたものであることを特徴とする、フェノール樹脂微粒子。
【請求項10】
前記フェノール樹脂微粒子の平均粒子径は、500nm以下である請求項9に記載のフェノール樹脂微粒子。

【公開番号】特開2006−335953(P2006−335953A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−164361(P2005−164361)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】