説明

フェノール系化合物から得られるポリマー並びに方法

【課題】 シトロネラ油のような安価で無毒性でしかも再生可能な資源である天然精油から新規フェノール系化合物を誘導し、該フェノール系化合物をモノマーとして用いてポリカーボネートを合成する。
【解決手段】 2以上の官能基を有していてその1以上がフェノール部分であるフェノール系化合物を反応性条件下でビスフェノールAのような二価フェノール1種以上及びカーボネート前駆体と共重合することにより、ポリカーボネートを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノール系化合物及び該化合物から誘導されるポリマーに関する。本発明は、フェノール系化合物の製造方法並びに該化合物から誘導されるポリマーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノール系化合物は多種多様な化学製品の合成、特にプラスチックその他の特殊大量生産品の製造に用いられている。2以上の反応性官能基を有していてその1以上がフェノール部分であるフェノール系化合物はポリマー、特に縮合ポリマーの製造に多用されている。その一例はビス(フェノール)類とホスゲンとの重合によるポリカーボネートの合成である。場合によっては、得られるポリマーの特性を調節するため、各々2以上の求核性基を有する2種以上のモノマー混合物が2つの親電子性基を有する別のモノマーと共に重合プロセスに用いられる。その一例は、ビスフェノールAのような「ハードブロック」モノマーと脂肪族α−ωジカルボン酸(例えばドデカン二酸)のような「ソフトブロック」モノマーの混合物とホスゲンとの反応によるポリエステルカーボネートの製造である。かかるポリエステルカーボネート類(例えばGeneral Electric Plastics社のLEXAN)は、通例、ポリカーボネート樹脂の特徴である優れた衝撃強さを保持しつつ、ソフトブロックモノマーなしで製造した対応ポリカーボネートよりも優れた溶融特性、流動特性を有する。
【0003】
脂肪族α−ωジカルボン酸のようなソフトブロックモノマーは、通例、再生不可能な石油化学原料を用いる転化プロセスで製造される。これらの多段化学転化プロセスでは通例不要な有害副生物が生成するが、かかる有害副生物は収率を低下させ、また環境に放出する前に処分しなければならない。有害な廃液の処理は製造コストを大幅に増加させる。さらに、長鎖二酸の有機化学合成は使用原料による制約を受け、各化学的合成プロセスでは1種類の二酸しか製造できない。脂肪族α−ωジカルボン酸のようなソフトブロックモノマーは、米国特許第6066480号に記載されているように生物学的発酵で製造することもできる。しかし、発酵プロセスは、経済的な生産という観点からみて最適な生産性及び空間−容積比に届かないことが多い。
【特許文献1】米国特許第3030331号明細書
【特許文献2】米国特許第3169121号明細書
【特許文献3】米国特許第3207814号明細書
【特許文献4】米国特許第4238596号明細書
【特許文献5】米国特許第4238597号明細書
【特許文献6】米国特許第4552949号明細書
【特許文献7】米国特許第4983706号明細書
【特許文献8】米国特許第5025081号明細書
【特許文献9】米国特許第5321114号明細書
【特許文献10】米国特許第5494997号明細書
【特許文献11】米国特許第5959064号明細書
【特許文献12】米国特許第6066480号明細書
【特許文献13】欧州特許出願公開第0433716号明細書
【特許文献14】欧州特許出願公開第0439829号明細書
【特許文献15】欧州特許出願公開第0546639号明細書
【特許文献16】英国特許出願公開第1378094号明細書
【非特許文献1】A.C. Davis, ”Synthesis of 2,7−bis−p−hydroxyphenyl−2,7−dimethyloctane”, Journal of The Chemical Society, 3081−3082 (1959)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば縮重合プロセスでモノマーとして使用できる新しいタイプのフェノール系化合物が絶えず求められている。特に、縮重合においてソフトブロックモノマーとして使用できる、2以上の官能基を有していてその1以上がフェノール部分である新しいタイプのフェノール系化合物が求められている。また、比較的低分子の炭化水素フラグメントからの合成のような一般的方法よりも経済性に優れたフェノール系化合物の新規製造方法も必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、その一つの態様では、シトロネラ油のような天然精油から誘導できるフェノール系化合物に関する。かかる精油は一般に安価で無毒性であり、再生可能資源であるという利点を有する。そこで、第一の態様では、本発明は、2以上の官能基を有していてその1以上がフェノール部分であるフェノール系化合物に関する。この態様では、本発明は、式Iのフェノール系化合物を包含する。
【0006】
【化1】

式中、R及びRは各々独立にアルキル又はアラルキルであり、アリール環をα炭素原子に連結する自由原子価結合は各々独立にフェノール基に対してオルト位又はパラ位にあり、R、R、R、R、R、R、R及びR10は各々独立に水素、アルキル又はアラルキルであり、R11は各々独立にアルキル又はハロゲンであり、nは各々独立に0〜3であり、x、y及びzは各々独立に0〜4であり、各原子団のx+y+zの和は1以上であり、kは1又は2であり、
kが1のとき、GはCHOH、CHO、COH、COCl、CO12、COM又は次の式IIであり、
【0007】
【化2】

12はアルキル、アラルキル、アルカリール又はアリールであり、Mはカチオンであり、R11及びnは上記で定義した通りであり、式II中の自由原子価結合はフェノール基に対してオルト位又はパラ位にあり、
kが2のとき、Gは連結部分であり、該連結部分は、式IIIに示すカーボネート結合、
【0008】
【化3】

式IVに示すモノエーテル結合CHO、
【0009】
【化4】

式Vに示すジエーテル結合CHO]13
【0010】
【化5】

式VIに示すモノエステル結合(C=O)OCH
【0011】
【化6】

式VIIに示すジエステル結合(C=O)O]14、又は
【0012】
【化7】

式VIIIに示すジエステル結合CHO(C=O)]15である。
【0013】
【化8】

ただし、R13、R14及びR15はアルキル、アラルキル、アルカリール又はアリールである。
【0014】
別の実施形態では、本発明は、A)次の式IXの前駆体化合物とB)次の式XVIの1以上のオルト又はメタ位が非置換であるフェノール系反応体とを酸性物質の存在下で混合することを含んでなる、フェノール系化合物の製造方法を包含する。
【0015】
【化9】

【0016】
【化10】

式IX中、R及びRは各々独立にアルキル又はアラルキルであり、R、R、R、R、R、R及びR10は各々独立に水素、アルキル又はアラルキルであり、x、y及びzは各々独立に0〜4であり、各原子団のx+y+zの和は1以上であり、kは1又は2であり、
kが1のとき、QはCHBr、CHCl、CHOH、CHO、COH、COCl、CO12、COM、R16C=CR1718又は次の式IIであり、
【0017】
【化11】

アリール環をα炭素原子に連結する自由原子価結合はフェノール基に対してオルト位又はパラ位にあり、R11は各々独立にアルキル又はハロゲンであり、nは0〜3であり、R12はアルキル、アラルキル、アルカリール又はアリールであり、Mはカチオンであり、R16、R17及びR18は各々独立に水素、アルキル又はアラルキルであり、
kが2のとき、Qは連結部分であり、該連結部分は、
vii)式Xに示すカーボネート結合CHO](C=O)、
【0018】
【化12】

viii)式XIに示すモノエーテル結合CHO、
【0019】
【化13】

ix)式XIIに示すジエーテル結合CHO]13
【0020】
【化14】

x)式XIIIに示すモノエステル結合(C=O)OCH
【0021】
【化15】

xi)式XIVに示すジエステル結合(C=O)O]14、又は
【0022】
【化16】

xii)式XVに示すジエステル結合CHO(C=O)]15であり、
【0023】
【化17】

ただし、R13、R14及びR15はアルキル、アラルキル、アルカリール又はアリールであり、
式XVI中、R11は各々独立にアルキル又はハロゲンであり、nは0〜3である。
【0024】
別の実施形態では、本発明は、式Iのフェノール系化合物から製造されるポリマー並びに該ポリマーの製造方法を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、「残基」、「基」及び「部分」という用語は互換的に用いられることが多い。本発明に関して、「アルキル」という用語は直鎖アルキル、枝分れアルキル及びシクロアルキル基すべてを表す。直鎖及び枝分れアルキル基は好ましくは炭素原子数1〜約22のものであり、その非限定的な具体例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル及びノニル基がある。シクロアルキル基は好ましくは環炭素原子数3〜約12のものである。かかるシクロアルキル基の非限定的な具体例には、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、シクロヘプチルなど、ビシクロアルキル基、例えば[2.2.1]ビシクロヘプチルがある。アラルキル基には炭素原子数7〜約22のアリール置換アルキル基が包含され、その具体例としてベンジル、フェニルブチル、フェニルプロピル及びフェニルエチルが挙げられるが、これらに限定されない。アルカリール基には炭素原子数7〜約24のアルキル置換アリール基が包含され、その具体例としてトリル、キシリル、エチルフェニル、プロピルフェニル及びノニルフェニルが挙げられるが、これらに限定されない。アリール基には環炭素原子数6〜約12の芳香族基が包含され、その具体例としてフェニル、ナフチル及びビフェニルが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の様々な実施形態で用いられるハロゲン基はフッ素、塩素及び臭素、好ましくは塩素又は臭素、さらに好ましくは臭素である。
【0026】
一実施形態では、本発明は式Iのフェノール系化合物を包含する。
【0027】
【化18】

式中、アリール環をα炭素原子に連結する自由原子価結合は各々独立にフェノール基に対してオルト位又はパラ位にある。代表的な実施形態では、各自由原子価結合は基本的にオルト位又はパラ位いずれかのみにあってもよいし、或いは各自由原子価結合はオルト位とパラ位の位置異性体の混合物であってもよい。式Iのフェノール系化合物においてフェノール基に対する位置異性体が可能な場合、オルト位置異性体、パラ位置異性体及びその混合物いずれも本発明の技術的範囲に属すると理解すべきである。好ましい実施形態では、kが1のとき、自由原子価結合は基本的にパラ位のみ、又は少なくとも主としてパラ位にある。同じく好ましい実施形態では、kが2のとき、各自由原子価結合は基本的にパラ位のみ、又は少なくとも主としてパラ位にある。この文脈において、「主として」という用語は50モル%超を意味する。
【0028】
及びRは各々独立にアルキル又はアラルキルである。好ましくはR及びRは各々独立にC1−4アルキル基であり、さらに好ましくはR及びRは各々独立にC1−2アルキル基であり、最も好ましくはR及びRは同一であって各々メチル基である。
【0029】
、R、R、R、R、R、R及びR10は各々独立に水素、アルキル又はアラルキルである。R、R、R、R、R、R、R及びR10は好ましくは各々独立に水素又はC1−4アルキル基、さらに好ましくは水素又はC1−2アルキル基である。x、y及びzの適当な値は各々独立に0〜4であり、各原子団のx+y+zの和は1以上である。好ましくは、x、y及びzは各々独立に0〜2であり、各原子団のx+y+zの和は2以上である。
【0030】
好ましい実施形態では、CR、CR及びCR10の各部分における1以上の置換基は水素であり、x、y及びzは各々0より大きい。別の好ましい実施形態では、置換基R、R、R、R、R、R、R及びR10の2つだけが各々独立にC1−4アルキル基、特にメチル又はエチル基であり、これらの残りの置換基は水素であり、x、y及びzの値は各々1である。別の好ましい実施形態では、置換基R、R、R、R、R、R、R及びR10の2つだけが独立にC1−4アルキル基、特にメチル又はエチル基であり、これらの残りの置換基は水素であり、x、y及びzの少なくとも1つの値は0であり、x、y及びzの和は3以上である。そこで、好ましい実施形態では、xは0、yは2、zは1であり、R、R、R及びRは各々水素であり、R及びR10は各々独立にC1−2アルキル基、好ましくはR及びR10はメチル基とエチル基又はいずれもメチル基である。さらに別の好ましい実施形態では、置換基R、R、R、R、R、R、R及びR10の1つだけがC1−4アルキル基、特にメチル又はエチル基であり、これらの残りの置換基は水素である。そこで、好ましい実施形態では、xは2、yは1、zは1であり、R、R、R、R、R、R及びR10は各々水素であり、RはC1−2アルキル基、好ましくはRはメチル又はエチル基、最も好ましくはメチル基である。
【0031】
11は各々独立にアルキル基(好ましくはC1−22アルキル基)又はハロゲンであり、nの適当な値は各々独立に0〜3である。好ましくはnの値は各々独立に0〜2、さらに好ましくは0〜1、最も好ましくは0である。nの値が0でない場合、R11は好ましくはメチル又は臭素又はこれらの組合せであり、該置換基(単数又は複数)はフェノール基に対してオルト位にあることが多いが、他の位置も可能である。したがって、別の好ましい実施形態では、nの値は各々独立に1であり、R11はフェノール基に対してオルト位にあるメチル基である。また、別好ましい実施形態では、nの値は各々独立に1であり、R11はフェノール基に対してメタ位にあるペンタデシル基であり、式XVIのフェノール系反応体はヒドロカルダノールから誘導される。
【0032】
kが1のとき、GはCHOH、CHO、COH、COCl、CO12、COM又は次の式IIを表す。
【0033】
【化19】

式中、R12はアルキル、アラルキル、アルカリール又はアリール、好ましくはアリール又はアルカリール、さらに好ましくはフェニル又はo−メチルフェニルであり、Mはカチオンであり、R11及びnは上記で定義した通りであり、式II中の自由原子価結合は基本的にオルト位又はパラ位いずれかのみにあってもよいし、或いは自由原子価結合はオルト位とパラ位の位置異性体の混合物であってもよい。好ましくは、R11が水素でnが0、又はR11がo−メチルでnが1である。好ましくはMは、第四アンモニウムカチオン、グアニジニウムカチオン、第四ホスホニウムカチオンのような有機カチオン、又はアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属カチオン、特にナトリウムのような無機カチオンである。
【0034】
kが2のとき、Gは連結部分であり、該連結部分は、
i)式IIIに示すカーボネート結合CHO](C=O)、
ii)式IVに示すモノエーテル結合CHO、
iii)式Vに示すジエーテル結合CHO]13
iv)式VIに示すモノエステル結合(C=O)OCH
v)式VIIに示すジエステル結合(C=O)O]14、又は
vi)式VIIIに示すジエステル結合CHO(C=O)]15
のいずれかであり。ただし、R13、R14及びR15はアルキル、アラルキル、アルカリール又はアリールである。好ましい実施形態では、R13、R14及びR15は各々C1−10アルキレンもしくはアルキリデン基又はフェニレンであるが、該フェニレン連結基における2つの原子価結合は互いにオルト位、メタ位又はパラ位、好ましくはメタ位又はパラ位にある。特に好ましい実施形態では、R13及びR14はビスフェノールA、ヒドロキノン、レゾルシノール又はメチルレゾルシノールから誘導されるアリール残基であり、R15はテレフタル酸、イソフタル酸又は2,6−ナフタレンジカルボン酸から誘導されるアリール残基である。
【0035】
式Iの化合物が連結部分を有する場合、この新規化合物は複数の末端フェノール基を有するビスフェノールである。末端フェノール基は、同じ化学式のものでも異なる化学式のものでもよいという意味で同一でも異なるものでもよい。化学式の異なる末端フェノール基の例は、(フェノールから誘導される)ヒドロキシフェニルと(o−クレゾールから誘導される)o−メチルヒドロキシフェニルである。好ましくは末端フェノール基は同じ化学式のもので、例えば各々ヒドロキシフェニルである。末端フェノール基が同一で2以上の位置異性体が可能である場合、各基は同じ位置異性体であってもよいし(例えば各々4−ヒドロキシフェニルでもよいし、各々2−ヒドロキシフェニルでも、各々4−ヒドロキシ−3−メチルフェニルでも、各々2−ヒドロキシ−4−ペンタデシルフェニルでも、各々3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニルでもよい)、異なる位置異性体であってもよい(例えば4−ヒドロキシフェニルと2−ヒドロキシフェニルの組合せ、又は4−ヒドロキシ−3−メチルフェニルと2−ヒドロキシ−3−メチルフェニルの組合せなど)。特に好ましい実施形態では、各末端フェノール基は4−ヒドロキシフェニルである。
【0036】
特に好ましい実施形態では、本発明のフェノール系化合物は、以下の(a)〜(d)に規定する式Iで表される。
【0037】
(a)以下の式XVIIに示す通り、kが1であり、R及びRが各々メチル基であり、R及びRが水素であり、R及びRが水素であり、xが2であり、Rが水素であり、Rがメチルであり、yが1であり、R及びR10が水素であり、zが1であり、R11が水素であり、GがCOH、COCl、CHOH、CHO、CO12又はCOMであり(ただし、R12はアルキル、アラルキル、アルカリール又はアリール、好ましくはアリール又はアルカリール、さらに好ましくはフェニル又はo−メチルフェニルであり、Mは第四アンモニウムカチオン、グアニジニウムカチオン又はナトリウムである。)、アリール環をα炭素原子に連結する自由原子価結合は主としてフェノール基に対してパラ位にある。
【0038】
【化20】

GがCOHのとき、当該フェノール系化合物は3,7−ジメチル−7−ヒドロキシフェニル−オクタン酸であり、以下、7−ヒドロキシフェニル−シトロネル酸と呼ぶこともある。
【0039】
(b)以下の式XVIII(3,7−ジメチル−7−[ペンタデシル−ヒドロキシフェニル]−オクタン酸)に示す通り、kが1であり、R及びRが各々メチル基であり、R及びRが水素であり、R及びRが水素であり、xが2であり、Rが水素であり、Rがメチルであり、yが1であり、R及びR10が水素であり、zが1であり、R11がフェノール基に対してメタ位にあるペンタデシルであり、GがCOHであり、アリール環をα炭素原子に連結する自由原子価結合は主としてフェノール基に対してオルト位、ペンタデシル基に対してパラ位にある。
【0040】
【化21】

(c)以下の式XIX(2,6−ビス[メチルヒドロキシフェニル]−2,6−ジメチルオクタン)に示す通り、kが1であり、R及びRが各々メチル基であり、R及びRが水素であり、R及びRが水素であり、xが2であり、Rがエチルであり、Rがメチルであり、yが1であり、zが0であり、R11がフェノール基に対してオルト位にあるメチルであり、nが1であり、Gが式II(式中、R11はフェノール基に対してオルト位にあるメチルであり、nは1である。)のフェノール基であり、アリール環をα炭素原子に連結する自由原子価結合は各アリール置換基について主としてフェノール基に対してパラ位にある。
【0041】
【化22】

(d)以下の式XXに示す通り、kが2であり、各原子団においてR及びRが各々メチル基であり、R及びRが水素であり、R及びRが水素であり、xが2であり、Rが水素であり、Rがメチルであり、yが1であり、R及びR10が水素であり、zが1であり、R11が水素であり、Gが連結基である。
【0042】
【化23】

当該連結基はカーボネート結合CHO](C=O)、モノエーテル結合CHO、ジエーテル結合CHO]13、モノエステル結合(C=O)OCH、ジエステル結合(C=O)O]14、又はジエステル結合CHO(C=O)]15のいずれかである。ただし、R13、R14及びR15はアルキル、アラルキル、アルカリール又はアリールである。好ましい実施形態では、R13、R14及びR15は各々C1−10アルキレンもしくはアルキリデン基、又はフェニレン基であってフェニレン連結基における2つの原子価結合は互いにオルト位、メタ位又はパラ位、好ましくはメタ位又はパラ位にある。さらに好ましい実施形態では、R13及びR14はビスフェノールA、ヒドロキノン、レゾルシノール又はメチルレゾルシノールから誘導されるアリール残基であり、R15はテレフタル酸、イソフタル酸又は2,6−ナフタレンジカルボン酸から誘導されるアリール残基である。特に好ましい実施形態では、式XXIに示す通り、Gはジエステル結合CHO(C=O)]15であって、R15はフェニレン基、好ましくはメタ−フェニレン又はパラ−フェニレン(それぞれイソフタル酸又はテレフタル酸から誘導されるアリール残基)であり、2つのフェノール環の各々を2つのα炭素原子の各々に連結する自由原子価結合は主としてフェノール基に対してパラ位にある。
【0043】
【化24】

別の特に好ましい実施形態では、式XXIIに示す通り、Gはモノエステル結合O(C=O)CHであり、2つのフェノール環の各々を2つのα炭素原子の各々に連結する自由原子価結合は主としてフェノール基に対してパラ位にある。
【0044】
【化25】

式Iのフェノール系化合物に光学異性が可能な場合、異性体を特に表示しないが、あらゆる光学異性体及び光学異性体混合物が本発明の技術的範囲に属する。
【0045】
別の実施形態では、本発明は、式IXの前駆体化合物と式XVIの1以上のオルト又はパラ位が非置換であるフェノール系反応体とを酸性物質の存在下で混合することを含んでなる、フェノール系化合物の製造方法である。式IXの前駆体化合物には以下のものが包含される。
【0046】
【化26】

式中、R及びRは各々独立にアルキル又はアラルキルである。好ましくはR及びRは各々独立にC1−4アルキル基であり、さらに好ましくはR及びRは各々独立にC1−2アルキル基であり、最も好ましくはR及びRは同一で各々メチル基である。
【0047】
式IX中のR、R、R、R、R、R及びR10は各々独立に水素、アルキル又はアラルキルである。好ましくはR、R、R、R、R、R及びR10は各々独立に水素又はC1−4アルキル基であり、さらに好ましくはR、R、R、R、R、R及びR10は各々独立に水素又はC1−2アルキル基である。x、y及びzの適当な値は各々独立に0〜4であり、各原子団のx+y+zの和は1以上である。好ましくはx、y及びzは各々独立に0〜2であり、各原子団のx+y+zの和は2以上である。
【0048】
好ましい実施形態では、式IX中のCR、CR及びCR10の各部分における1以上の置換基は水素であり、x、y及びzは各々0より大きい。別の好ましい実施形態では、置換基R、R、R、R、R、R及びR10のうち2つだけが各々独立にC1−4アルキル基、特にメチル又はエチル基であり、これらの残りの置換基は水素であり、x、y及びzの値は各々1である。さらに別の好ましい実施形態では、置換基R、R、R、R、R、R及びR10のうち2つだけが各々独立にC1−4アルキル基、特にメチル又はエチル基であり、これらの残りの置換基は水素であり、x、y及びzの少なくとも1つの値は0であり、x、y及びzの和は3以上である。そこで、好ましい実施形態では、xは0、yは2、zは1であり、R、R及びRは各々水素であり、R及びR10は各々独立にC1−2アルキル基、好ましくはR及びR10はメチル基とエチル基又はいずれもメチル基である。さらに別の好ましい実施形態では、置換基R、R、R、R、R、R及びR10のうち1つだけがC1−4アルキル基、特にメチル又はエチル基であり、これらの残りの置換基は水素である。そこで、好ましい実施形態では、xは2、yは1、zは1であり、R、R、R、R、R及びR10は各々水素であり、RはC1−2アルキル基、好ましくはRはメチル又はエチル基、特にメチル基である。
【0049】
kが1のとき、式IX中のQはCHBr、CHCl、CHOH、CHO、COH、COCl、CO12又はCOMのいずれかであり、R12はアルキル、アラルキル、アルカリール又はアリール、好ましくはアリール又はアルカリール、さらに好ましくはフェニル又はo−メチルフェニルであり、Mは、第四アンモニウムカチオン、グアニジニウムカチオン、第四ホスホニウムカチオンのような有機カチオン、又はアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属カチオン、特にナトリウムのような無機カチオンである。或いは、kが1のとき、Qは次の式IIの部分を表す。
【0050】
【化27】

式II中の自由原子価結合は基本的にオルト位又はパラ位いずれかのみにあってもよいし、或いは自由原子価結合はオルト位とパラ位の位置異性体の混合物であってもよい。式IXの前駆体化合物でフェノール基に対する位置異性体が可能な場合、オルト位置異性体、パラ位置異性体及びその混合物が本発明の技術的範囲に属する。
【0051】
式II中のR11は各々独立にアルキル又はハロゲンであり、nの値は各々独立に0〜3である。好ましくはnの値は各々独立に0〜2、さらに好ましくは0〜1、最も好ましくは0である。nの値が0でない場合、R11は好ましくはメチル又は臭素又はこれらの組合せであり、該置換基(単数又は複数)は大抵はフェノール基に対してオルト位(単数又は複数)にある。好ましくはR11は水素又はメチルである。そこで、好ましい実施形態では、nの値は1であり、R11はフェノール基に対してオルト位にあるメチル基である。さらに別の好ましい実施形態では、nの値は1であり、R11はフェノール基に対してメタ位にあるペンタデシル基であり、式IIのフェノール系化合物はヒドロカルダノールから誘導される。
【0052】
或いは、kが1のとき、QはR16C=CR1718であり、R16、R17及びR18は各々独立に水素、アルキル又はアラルキルであり、好ましくはR16、R17及びR18は各々独立に水素又はC1−4アルキルであり、さらに好ましくはR16、R17及びR18は各々独立に水素又はC1−2アルキルである。
【0053】
kが2のとき、Qは連結部分であり、該連結部分は、
vii)式Xに示すカーボネート結合CHO](C=O)、
viii)式XIに示すモノエーテル結合CHO、
ix)式XIIに示すジエーテル結合CHO]13
x)式XIIIに示すモノエステル結合(C=O)OCH
xi)式XIVに示すジエステル結合(C=O)O]14、又は
xii)式XVに示すジエステル結合CHO(C=O)]15
のいずれかである。R13、R14及びR15はアルキル、アラルキル、アルカリール又はアリールである。好ましい実施形態では、R13、R14及びR15は各々C1−10アルキレンもしくはアルキリデン基又はフェニレンであるが、該フェニレン連結基における2つの原子価結合は互いにオルト位、メタ位又はパラ位、好ましくはメタ位又はパラ位にある。特に好ましい実施形態では、R13及びR14は各々ヒドロキノン、レゾルシノール又はメチルレゾルシノールから誘導されるアリール残基であり、R15はテレフタル酸、イソフタル酸又は2,6−ナフタレンジカルボン酸から誘導されるアリール残基である。
【0054】
特に好ましい実施形態では、本発明のフェノール系化合物への前駆体化合物は以下の(a)〜(e)に規定する式IXで表される。
【0055】
(a)以下の式XXIIIに示す通り、kが1であり、R及びRが各々メチル基であり、Rが水素であり、R及びRが水素であり、xが2であり、Rが水素であり、Rがメチルであり、yが1であり、R及びR10が水素であり、zが1であり、QがCHBr、CHCl、COH、COCl、CHOH、CHO、CO12又はCOMのいずれかである。ただし、R12はアルキル、アラルキル、アルカリール又はアリール、好ましくはアリール又はアルカリール、さらに好ましくはフェニル又はo−メチルフェニルであり、Mは第四アンモニウムカチオン、グアニジニウムカチオン又はナトリウムである。
【0056】
【化28】

(b)式XXIVに示す通り、kが2であり、各原子団においてR及びRが各々メチル基であり、Rが水素であり、R及びRが水素であり、xが2であり、Rが水素であり、Rがメチルであり、yが1であり、R及びR10が水素であり、zが1であり、Qが連結部分を示す。
【0057】
【化29】

連結部分はカーボネート結合CHO](C=O)、モノエーテル結合CHO、ジエーテル結合CHO]13、モノエステル結合(C=O)OCH、ジエステル結合(C=O)O]14、又はジエステル結合CHO(C=O)]15のいずれかである。ただし、R13、R14及びR15はアルキル、アラルキル、アルカリール又はアリールを示す。好ましい実施形態では、R13、R14及びR15は各々C1−10アルキレンもしくはアルキリデン基又はフェニレンであるが、該フェニレン連結基における2つの自由原子価結合は互いにオルト位、メタ位又はパラ位、好ましくはメタ位又はパラ位にある。特に好ましい実施形態では、R13及びR14はビスフェノールA、ヒドロキノン、レゾルシノール又はメチルレゾルシノールから誘導されるアリール残基であり、R15はテレフタル酸、イソフタル酸又は2,6−ナフタレンジカルボン酸から誘導されるアリール残基である。
【0058】
(c)式XXVに示す通り、kが1であり、R及びRが各々メチル基であり、Rが水素であり、R及びRが水素であり、xが2であり、Rが水素であり、Rがメチルであり、yが1であり、zが0であり、QがR16C=CR1718である。ただし、R16、R17及びR18は水素を示す。
【0059】
【化30】

(d)式XXVIに示す通り、kが1であり、R及びRが各々メチル基であり、Rが水素であり、R及びRが水素であり、xが2であり、y及びzが0であり、GがR16C=CR1718である。ただし、R16はメチル、R17は水素、R18はメチルを示す。
【0060】
【化31】

(e)式XXVIIに示す通り、kが1であり、R及びRが各々メチル基であり、Rが水素であり、R及びRが水素であり、xが1であり、y及びzが0であり、GがR16C=CR1718である。ただし、R16は水素、R17はメチル、R18はエチルを示す。
【0061】
【化32】

式IXの前駆体化合物に不飽和が存在する場合、かかる異性体の片方しか示していないが、シス及びトランス異性体いずれも本発明の技術的範囲に属する。また、式IXの前駆体分子に光学異性が可能な場合、異性体を特に示していないが、あらゆる光学異性体及び光学異性体混合物が本発明の技術的範囲に属する。
【0062】
式IXの好ましい前駆体化合物は、ジエン類、例えば2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン、3,3−ジメチル−1,5−ヘキサジエン、3,4−ジメチル−1,5−ヘキサジエン、2,6−ジメチル−1,5−ヘプタジエン、2,6−ジメチル−2,5−ヘプタジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、5,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、2,6−ジメチル−2,6−オクタジエン(ジヒドロミルセンともいう)、2,6−ジメチル−2,5−オクタジエン、3,6−ジメチル−2,5−オクタジエン、2,7−ジメチル−2,6−オクタジエン、2,6−ジメチル−2,7−オクタジエンなどである。
【0063】
反応条件下で式IXの化合物に転化することのできる化合物を前駆体化合物として使用することもその化合物の種類を問わず本発明の技術的範囲に属する。例えば、反応条件下で脱水して式IXの化合物を形成するジオール又はモノアルコールを使用することは本発明の技術的範囲に属する。かかるアルコールの具体例としては、式XXIII、XXIV、XXV、XXVI及びXXVIIの化合物のいずれかを水和して得られるジオール類又はモノアルコール類がある。かかる式IXの化合物への前駆体化合物は、実質的に純粋な化合物として使用してもよいし、或いは式IXの化合物との混合物(例えば適当なジオール又はモノアルコールと式IXの化合物との混合物)のような混合物として使用してもよい。
【0064】
さらに、反応条件下で異性化して式IXの化合物を形成することのできる化合物を化合物を前駆体化合物として使用することもその化合物の種類を問わず本発明の技術的範囲に属する。例えば、2,7−ジメチル−1,7−オクタジエンのように異性化して式IXの前駆体化合物となる2つの末端CH基を有するジエンを使用することは本発明の技術的範囲に属する。たとえ実質的に1種類の式IXの前駆体化合物を反応混合物に添加したとしても、反応条件下での異性化(特にオレフィン異性化)によって式IXの前駆体化合物の混合物が得られることも当業者には自明であろう。したがって、本発明は、式IXの複数の化合物の混合物が式IXの2種以上の化合物の使用によって得られたものであろうが或いは当初は実質的に1種類の式IXの化合物であったものが反応条件下での少なくとも部分的な異性化によって得られたものであろうが、その原因を問わず、式IXの複数の化合物の混合物の使用を包含する。したがって、本発明は、式Iの複数のフェノール系化合物の混合物が式IXの2種以上の前駆体化合物の使用によって得られたものであろうと或いは当初は実質的に1種類の式IXの前駆体化合物であったものが反応条件下での少なくとも部分的な異性化によって得られるものであろうと、その原因を問わず、式Iの複数のフェノール系化合物の混合物を包含する。
【0065】
式IXで表されるフェノール系化合物への前駆体化合物は、どのような適当な原料から誘導してもよい。本発明の各種実施形態の利点の一つは、天然精油をフェノール系化合物の前駆体として使用できることである。具体的には、直鎖ジテルペン類、例えばシトロネラ油からの誘導体を式Iのフェノール系化合物の前駆体化合物として使用することができる。シトロネラ油又はその各種成分の原料資源としては、ジャワ又はセイロン産のシトロネラ、ユーカリ、テレピン抽出物及び蒸留物がある。シトロネラ油は通例、シトロネラール(3,7−ジメチル−6−オクタナール)とシトロネロール(3,7−ジメチル−6−オクテン−1−オール)とゲラニオール(3,7−ジメチル−2,6−オクタジエン−1−オール)の混合物である。ゲラニオールを当技術分野で周知の方法で還元及び酸化すれば式IXの前駆体化合物を得ることができる。シトロネラール及びシトロネロールを当技術分野で周知の方法で酸化すれば対応カルボン酸とすることができる。好ましい実施形態では、シトロネル酸(3,7−ジメチル−6−オクテン酸)及びシトロネレン(3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン)が前駆体化合物である。
【0066】
連結基を有する式IXの前駆体化合物は当業者に周知の方法で製造できる。例えば、式Xのようにカーボネート結合で結合した化合物は、QがCHOHである式IXの化合物2当量とホスゲンのようなカーボネート前駆体1当量との反応で製造できる。式XIのようにモノエーテル結合CHOで結合した化合物は、例えば、QがCHOHである式IXの化合物1当量とQがCHBrである式IXの化合物1当量とのウィリアムソン条件下での反応によって、或いは式XIIIの対応モノエステルの還元によって製造できる。式XIIのようにジエーテル結合CHO]13で結合した化合物は、例えば、QがCHOHである式IXの化合物2当量とアルキルビス(ハライド)又はアリールビス(ハライド)1当量とのウィリアムソン条件下での反応によって、或いはQがCHBr又はCHClである式IXの化合物2当量とアルキルビス(アルコール)又はアリールビス(アルコール)1当量とのウィリアムソン条件下での反応によって、或いは式XIVの対応モノエステルの還元又は式XVの対応ジエステルの還元によって製造できる。式XIIIのようにモノエステル結合(C=O)OCHで結合した化合物は、例えば、QがCHOH又はCHBrである式IXの化合物1当量とQがCOHである式IXの化合物(又はそのアシルハライド、無水物、エステルその他の反応性誘導体)1当量との適当な条件下での反応によって製造できる。式XIVのようにジエステル結合(C=O)O]14で結合した化合物は、例えば、QがCOHである式IXの化合物(又はそのアシルハライド、無水物、エステルその他の反応性誘導体)2当量とアルキルビス(アルコール)又はアリールビス(アルコール)1当量との適当な条件下での反応によって製造できる。式XVのようにジエステル結合CHO(C=O)]15で結合した化合物は、例えば、QがCHOH又はCHBrである式IXの化合物2当量とアルキルビス(カルボン酸)又はアリールビス(カルボン酸)(又はそのアシルハライド、無水物、エステルその他の反応性誘導体)1当量との適当な条件下での反応によって製造できる。
【0067】
式XVIのフェノール系反応体において、R11は各々独立にアルキル又はハロゲンであり、nの適当な値は0〜3である。好ましくはnの値は0〜2、さらに好ましくは0〜1、最も好ましくは0である。nの値が0でない場合、R11は好ましくはメチル又は臭素又はこれらの組合せであり、該置換基(単数又は複数)は大抵はフェノール基に対してオルト位にある。そこで、別の好ましい実施形態では、nの値は1であり、R11はフェノール基に対してオルト位にあるメチル基である。また別の好ましい実施形態では、nの値は1であり、R11はフェノール基に対してメタ位にあるペンタデシル基であり、式XVIのフェノール系反応体はヒドロカルダノールから誘導される。
【0068】
本発明のフェノール系化合物の合成は、式IXの1種以上の前駆体化合物と少なくとも化学量論量の式XVIの1種以上のフェノール系反応体を、触媒量で添加された1種以上の酸性物質の存在下、反応性条件下で混合することによって実施できる。典型的には、フェノール系反応体は前駆体化合物よりも過剰に添加される。このプロセスは回分式、半連続的又は連続的に実施し得る。
【0069】
酸性物質の種類は、式IXの前駆体化合物と式XVIのフェノール系反応体との反応を誘起するものであれば、さほど重要でない。代表的な酸性物質には、硫酸、塩酸のような無機酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸のような有機酸;酸性白土、酸性ゼオライト又は酸性樹脂のような固体酸性物質がある。好ましい酸性物質は1種以上の酸性ポリマー樹脂である。酸性ポリマー樹脂は通例固体であり、反応後に濾過で反応混合物から簡単に除去できる。樹脂の種類は、触媒量で存在するときに前駆体化合物とフェノール系反応体との反応を誘起し得るものであればさほど重要ではない。適当な酸性ポリマー樹脂としては、架橋ポリスチレン、架橋アクリレート及びこれらの共重合体をベースとした樹脂がある。具体的な酸性官能基には、カルボン酸及びスルホン酸があるが、スルホン酸が好ましい。特に好ましい部類の酸性ポリマー樹脂は、Rohm and Haas社からAMBERLYSTという商品名で市販されている巨大網状(MR型)スルホン酸官能化ポリスチレン樹脂である。
【0070】
反応体に対して溶剤又は希釈剤を使用してもよいが、反応は溶剤又は希釈剤を添加せずに行うのが好ましい。反応混合物は典型的には反応を生起するのに有効な温度域まで加熱する。反応混合物は、好ましくは約30℃から混合物の沸点までの範囲内の温度、さらに好ましくは約40℃〜約120℃の温度、最も好ましくは約50℃〜約70℃の温度に加熱する。反応は通例反応が完結するまで加熱され、反応が完結したか否かは例えば出発材料の完全な消費によって判定する。反応時間は好ましくは約0.5〜24時間、さらに好ましくは約1〜16時間、最も好ましくは約2〜12時間である。反応後、酸性ポリマー樹脂を適当な手段で除去すればよく、例えば1段階以上の遠心分離及び好ましくは濾過で除去し得る。酸性ポリマー樹脂を回収し、必要に応じて慣用手段で再生して、以降の反応に再利用してもよい。過剰な反応体及び(存在する場合には)溶剤又は希釈剤は抽出や減圧蒸留のような公知の手段で混合物から除去し得る。特に、フェノール系化合物を後段の重合工程に使用する場合、残留するすべての過剰フェノール系反応体をこの時点で除去するのがよい。フェノール系化合物生成物は、それ以上精製せずにそのまま次のプロセスに使用してもよいし、或いは抽出、洗浄、再結晶、蒸留、乾燥のような適当な手段でさらに精製してもよい。
【0071】
本発明のフェノール系化合物は、2以上の反応性官能基を有していてその1以上がフェノール部分である化合物の典型的な用途に使用することができる。例えば、式Iのフェノール系化合物は、ポリマー、特に縮合ポリマーの合成用モノマーとして有効である。したがって、本発明の別の実施形態には、式Iのフェノール系化合物から製造したポリマーが包含される。
【0072】
特に、2つのフェノール部分を含む式Iのフェノール系化合物(以下、式Iのビスフェノール化合物又は適当な式のビスフェノール化合物ともいう。)は、ポリカーボネート合成における脂肪族「ソフトブロック」として役立つ。かかるポリカーボネートは、例えばソフトブロックセグメントを含まない一般的ポリカーボネートよりも優れた流動性及び低いガラス転移温度が必要とされる用途に有用である。本発明のポリカーボネートは、式Iのビスフェノール化合物1種以上を二価フェノール1種以上及びカーボネート前駆体と反応性条件下で混合することで製造できる。
【0073】
好ましい実施形態では、ポリカーボネートは、kが1でGが式IIのフェノール部分である式Iのビスフェノール化合物、又はkが2でGが連結部分であって該連結部分が上記i〜viに挙げる6種のうちのいずれかである式Iのビスフェノール化合物から得られる。好ましい実施形態では、R及びRは各々独立にメチルである。好ましくは、ポリカーボネートは、R、R、R、R、R、R、R及びR10が各々独立に水素又はC1−4アルキル、好ましくはR、R、R、R、R、R、R及びR10が各々独立に水素又はC1−2アルキルであり、x、y及びzが各々独立に0〜2であり、各原子団のx+y+zの和が2以上である式Iのビスフェノール化合物1種以上から得られる。特に好ましい実施形態では、ポリカーボネートは、式XIXの2,6−ビス[メチルヒドロキシフェニル]−2,6−ジメチルオクタン、又は式XXIに示すジエステル結合を含むビスフェノール化合物、又は式XXIIに示すモノエステル結合を含むビスフェノール化合物のいずれかに相当するビスフェノール化合物から得られる。
【0074】
別の実施形態では、フェノール部分とカルボン酸又はその誘導体を含む式Iのフェノール系化合物(以下、式Iのフェノール−酸化合物ともいう。)はポリエステルカーボネート合成における脂肪族「ソフトブロック」として役立つ。かかるポリエステルカーボネートは、ソフトブロックセグメントを含まない一般的ポリエステルカーボネートよりも優れた流動性及び低いガラス転移温度が必要とされる用途に有用である。本発明のポリエステルカーボネートは、式Iのフェノール−酸化合物1種以上を二価フェノール1種以上及びカーボネート前駆体と反応性条件下で混合することで製造できる。
【0075】
好ましい実施形態では、ポリエステルカーボネートは、kが1でGがCOH、COCl、CO12又はCOMであり、R12がアルキル、アラルキル、アルカリール又はアリール、特にフェニルであり、Mが第四アンモニウムカチオン、グアニジニウムカチオン又はナトリウムである式Iのフェノール−酸化合物1種以上から得られる。好ましい実施形態では、R及びRは各々メチルである。好ましくは、ポリエステルカーボネートは、R、R、R、R、R、R、R及びR10が各々独立に水素又はC1−4アルキルであり、好ましくはR、R、R、R、R、R、R及びR10が各々独立に水素又はC1−2アルキルであり、x、y及びzが各々0〜2であり、x+y+zの和が2以上である式Iのフェノール−酸化合物1種以上から得られる。特に好ましい実施形態では、ポリエステルカーボネートは、式XVIIの7−ヒドロキシフェニル−シトロネル酸に相当するフェノール−酸化合物から誘導する。
【0076】
ポリカーボネート又はポリエステルカーボネートの製造に適した二価フェノールには、次の式XXVIIIで表されるものがある。
【0077】
(XXVIII) HO−D−OH
式中、Dは二価芳香族基である。好ましくは、Dは次の式XXIXの構造のものである。
【0078】
【化33】

式中、Aは、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレンのような芳香族基を表す。Eは、メチレン、エチレン、エチリデン、プロピレン、プロピリデン、イソプロピリデン、ブチレン、ブチリデン、イソブチリデン、アミレン、アミリデン、イソアミリデンのようなアルキレン基又はアルキリデン基であってもよい。Eがアルキレン基又はアルキリデン基のときは、Eは2以上のアルキレン基又はアルキリデン基が、芳香族結合、第三アミノ結合、エーテル結合、カルボニル結合、含ケイ素結合、又はスルフィドやスルホキシドやスルホンのような含イオウ結合、又はホスフィニルやホスホニルのような含リン結合等のアルキレン又はアルキリデンとは異なる部分で結合したものでもよい。さらに、Eは、脂環式基(例えば、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン、メチルシクロヘキシリデン、2−[2.2.1]−ビシクロヘプチリデン、ネオペンチリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン、アダマンチリデン等);スルフィドやスルホキシドやスルホン等の含イオウ結合;ホスフィニルやホスホニル等の含リン結合;エーテル結合;カルボニル基;第三窒素基;又はシランやシロキシ等の含ケイ素結合であってもよい。R19は、水素、又はアルキル、アリール、アラルキル、アルカリールもしくはシクロアルキル等の一価炭化水素基を表す。Yはハロゲン(フッ素、臭素、塩素、ヨウ素)等の無機原子;ニトロ等の無機基;上記R19のような有機基又はOR等のオキシ基であればよく、Yに必要とされるのはYがポリエステルカーボネートの製造に用いられる反応体及び反応条件に対して不活性であるとともにそれらによって影響されないことだけである。添字mは0から置換可能なA上の部位の数までの整数を表し、pは0から置換可能なE上の部位の数までの整数を表し、tは1以上の整数を表し、sは0又は1であり、uは0を含めた整数を表す。
【0079】
Dが上記式XXIXで表される二価フェノール化合物において、2以上のY置換基が存在する場合には、これらのY置換基は同一でも異なるものでもよい。同じことはR19置換基についてもいえる。式XXIXでsが0でuが0以外のときは、芳香環は、アルキリデンその他の橋かけ基を介さずに直接結合する。炭化水素残基(A)の2以上の環炭素原子がY基及びヒドロキシル基で置換されている場合には、芳香核残基A上でのヒドロキシル基及びYの位置はオルト位、メタ位又はパラ位で種々異なっていてもよく、各基はビシナルな関係でも、非対称な関係でも対称な関係のいずれにあってもよい。
【0080】
式XXVIIIの二価フェノールの非限定的な具体例には、米国特許第4217438号に名称又は式(一般式又は特定式)で開示されているジヒドロキシ置換芳香族炭化水素がある(その開示内容は文献の援用によって本明細書の内容の一部をなす。)。二価フェノールの好ましい例には、6−ヒドロキシ−1−(4′−ヒドロキシフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4′−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールAとして知られる。)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,4′−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−3−メトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2−クロロフェニル)エタン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、レゾルシノール、C1−3アルキル置換レゾルシノールがある。
【0081】
適当な二価フェノールには、式XXXで表されるようなスピロビインダン構造単位を含むものがある。
【0082】
【化34】

式中、R20は各々独立に一価炭化水素基及びハロゲン基から選択され、R21、R22、R23及びR24は各々独立にC1−6アルキルであり、R25及びR26は各々独立にH又はC1−6アルキルであり、各nは独立に0〜3の値を有する正の整数から選択される。R20で表される一価炭化水素基には、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基及びアルカリール基がある。R20で表されるアルキル基は、好ましくは炭素原子数1〜約12のものであり、枝分れアルキル基及び直鎖アルキル基が包含される。かかるアルキル基の非限定的な具体例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシルがある。R20で表されるシクロアルキル基は、好ましくは環炭素原子数3〜約12のものである。かかるシクロアルキル基の非限定的な具体例には、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、シクロヘプチルがある。R20で表されるアリール基は、好ましくは環炭素原子数6〜12のものである。かかるアリール基の非限定的な具体例には、フェニル、ビフェニル、ナフチルがある。R20で表される好ましいアラルキル基及びアルカリール基は、炭素原子数7〜約14のものである。かかる基には、ベンジル、エチルフェニル、フェニルブチル、フェニルプロピル、プロピルフェニル及びフェニルエチルがあるが、これらに限定されない。R20で表される好ましいハロゲン基は、フッ素、塩素及び臭素である。
【0083】
式XXXの二価フェノール化合物において、2以上のR20置換基が存在する場合には、これらのR20置換基は同一でも異なるものでもよい。芳香核残基上でのヒドロキシル基とR20の相対的な位置はオルト位でもメタ位でもよい。各ヒドロキシ基の位置は独立に各芳香族環上のどの非置換部位にあってもよい。さらに好ましくは、各ヒドロキシ基は独立に各芳香環の5位又は6位と5′位又は6′位にある。最も好ましくは、各ヒドロキシ基は各芳香環の6位と6′位にある。
【0084】
好ましくは、各R20は独立に塩素、臭素及び炭素原子数1〜約5の低級アルキル基から選択され、R21、R22、R23及びR24は各々独立にC1−6アルキルであり、R25及びR26は各々独立にH又はC1−6アルキルであり、各nは独立に0〜3である。さらに好ましくは、各R20は独立に塩素、及び炭素原子数1〜約3の低級アルキル基から選択され、R21、R22、R23及びR24は各々独立にC1−2アルキルであり、R25及びR26は各々独立にH又はC1−2アルキルであり、各nは独立に0〜2である。さらに好ましくは、R21、R22、R23及びR24は各々メチルであり、R25及びR26は各々Hであり、各nは0である。
【0085】
式XXXのスピロ二価フェノールは当技術分野で公知の化合物であり、市販品として入手できるし、或いは公知の方法で容易に製造することもできる。製造方法には、米国特許第4701566号に記載の方法、R.F.Curtis及びK.O.Lewis, Journal of the Chemical Society(England),1962,p.420に記載の方法、及びR.F.Curtis, Journal of the Chemical Society(England),1962,p.417に記載の方法がある。非限定的な具体例では、かかるスピロ二価フェノールは、(i)2モルのフェノール化合物をアセトンのような含カルボニル化合物1モルと反応させ、(ii)しかる後に、酸性条件下で(i)の生成物3モルを共反応させてスピロ二価フェノールと4モルのフェノール化合物を生じさせることによって、簡単に製造することができる。(ii)で使用し得る酸には、無水メタンスルホン酸及び無水塩酸のような酸がある。
【0086】
本発明での使用に好適なポリエステルカーボネートの合成に最も好ましいスピロ二価フェノールは、6,6′−ジヒドロキシ−3,3,3′,3′−テトラメチル−1,1′−スピロビインダン(「SBI」)であり、この場合、式XXXのnは0であり、ポリマー分子の残りの部分との結合は芳香環の特定の位置にある。
【0087】
適当なポリエステルカーボネートの製造に当たっては、上述の二価フェノールを単独で用いてもよいし、2種以上の異なる二価フェノールの混合物として用いてもよい。入手性及び本発明に格好の適性から、好ましい二価フェノールは2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(すなわち、ビスフェノールAつまりBPA)であり、この場合、式XXVIIIのDはビス(4−フェニル)イソプロピリデンである。式Iのフェノール系化合物と共にポリカーボネート又はポリエステルカーボネート合成に使用し得る2種以上の二価フェノールの混合物の好ましい例には、ビスフェノールAと1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサンの混合物がある。
【0088】
ポリカーボネート又はポリエステルカーボネートの製造に用いるカーボネート前駆体はカルボニルハライド、カーボネートエステル又はハロホルメートの1種以上とすることができる。本発明で使用し得るカルボニルハライドには、塩化カルボニル、臭化カルボニル及びこれらの混合物がある。本発明で使用し得るカーボネートエステルの例には、ジフェニルカーボネート、ジ(ハロフェニル)カーボネート、例えばジ(クロロフェニル)カーボネート、ジ(ブロモフェニル)カーボネート、ジ(トリクロロフェニル)カーボネート、ジ(トリブロモフェニル)カーボネートなど;ジ(アルキルフェニル)カーボネート、例えばジ(トリル)カーボネートなど、ジ(ナフチル)カーボネート、ジ(クロロナフチル)カーボネート、フェニルトリルカーボネート、シクロフェニルクロロナフチルカーボネートなど、或いはこれらの混合物がある。本発明での使用に適したハロホルメートとしては、二価フェノール類のビスハロホルメート(例えばヒドロキノン、ビスフェノールA、6−ヒドロキシ−1−(4′−ヒドロキシフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4′−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサンなどのビスクロロホルメート類、並びにヒドロキノン、ビスフェノールA、6−ヒドロキシ−1−(4′−ヒドロキシフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4′−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサンなどのビスクロロホルメート末端ポリカーボネートオリゴマー類)或いはグリコール類のビスハロホルメート(例えばエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコールなどのビスハロホルメート類)がある。ハロホルメート類の混合物を使用してもよい。ホスゲンと呼ばれる塩化カルボニルが好ましい。
【0089】
本発明のポリカーボネートを製造するための反応条件には、界面法及び溶融法がある。界面法を用いる場合、各種相間移動触媒の添加は任意である。適当な相間移動触媒には、トリエチルアミンのような第三アミン、テトラブチルアンモニウムブロミドのようなアンモニウム塩、ヘキサエチルグアニジニウムクロリドなどがあるが、これらに限定されない。
【0090】
上述のポリカーボネートは溶融法つまりエステル交換法でも製造できる。この方法では、ホスゲンや溶剤を使用する必要がなく、最終ポリマー中での環状及び線状低分子量オリゴマーのような低分子量夾雑物の生成が最小限に抑えられる。通例、カーボネート源(ジアリールカーボネートなど)及び少量の触媒(アルカリ金属水酸化物や水酸化アンモニウムなど)と共にモノマーを混合し、反応混合物上のヘッドスペースの圧力を周囲圧力から約1Torrに下げながら段階的に温度を上昇させるというプロトコルに従って減圧下で加熱する。
【0091】
適当なカーボネート源、触媒及び反応条件は米国特許第5880248号及びKirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,第4版、第19巻、585〜600頁に記載されており、その記載内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。各段階の時間及び温度は、発泡などによる材料の機械的損失が避けられるようにする。フェノールと過剰のジフェニルカーボネートを塔頂から除去して重合プロセスを完了させる。高分子量ポリマー生成物はメルトとして単離されるが、そのペレット化の前に安定剤や離型剤のような他の添加剤を配合し得る。溶融法で合成した生成物は、界面法で合成した生成物に比べ、非溶解粒子の数が少なく、環状オリゴマーのような低分子量夾雑物の含有量が少ない。
【0092】
ポリカーボネートは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィでポリスチレンを標準として測定して、好ましくは約5000〜100000、さらに好ましくは約10000〜65000、最も好ましくは約18000〜36000の重量平均分子量を有する。
【0093】
ポリカーボネート樹脂の製造に用いる各反応体の比率は、樹脂の最終使用用途に応じて異なる。一般に、樹脂中の式Iのフェノール系化合物の量は、二価フェノール系化合物に対して、約0.5〜30モル%、好ましくは約1〜20重量%、さらに好ましくは約1〜10重量%とし得る。式Iのフェノール系化合物の上記量は、ポリカーボネートの製造に1種類のみの二価フェノールを単独で用いる場合にも、2種以上の二価フェノールの混合物を用いる場合にも適用できる。
【0094】
本発明のポリエステルカーボネートを製造するための反応条件には、界面重合又は相境界分離、エステル交換、溶液重合、溶融重合及びエステル交換等の公知のプロセスがある。様々な従来技術の重合プロセスが開示されており、例えば、米国特許第3030331号、同第3169121号、同第3207814号、同第5025081号、同第5321114号及び同第5494997号等に開示されている。
【0095】
プロセスは種々変更し得るが、幾つかの好ましいプロセスでは、通例、水と非混和性の適当な溶媒中に反応体を溶解又は分散させて、適当な触媒及び酸受容体の存在下、制御されたpH条件下で、ホスゲン等のカーボネート前駆体と反応体とを接触させることからなる。最も多用されている水と非混和性の溶媒には、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン及びトルエン等がある。代表的な触媒には、第三アミン、例えばトリエチルアミン、第四ホスホニウム化合物、第四アンモニウム化合物、ヘキサアルキルグアニジニウムハライド、クラウンエーテルなどがあるが、これらに限定されない。適当な酸受容体の例には、第三アミン、アルカリ金属又はアルカリ土類金属水酸化物などがある。代表的な実施形態では、水酸化ナトリウムが酸受容体として好ましい。重合反応を進行させる温度は0℃未満から100℃超までの範囲とすることができる。重合温度は好ましくは約−20℃〜約100℃であり、最も好ましくはほぼ室温(25℃)〜約50℃である。この反応は発熱反応であるので、ホスゲン等のカルボニル前駆体の添加速度を利用して反応温度を調節することができる。カルボニル前駆体の必要量は一般に二価フェノール反応体の添加量に依存する。
【0096】
別の製造方法では、アルカリ性条件下で、1種以上の二価フェノールを式Iのフェノール−酸化合物又は酸ハライドのようなその反応性誘導体1種類以上と、ヒドロキシ末端ポリエステルオリゴマーを生じるようなモル比で反応させる。ポリエステルオリゴマーの重合度(DP)は約4以上、好ましくは約10以上、さらに好ましくは約20以上、最も好ましくは約30〜約150である。次いで、オリゴマーを常法によって二価フェノール及びカーボネート前駆体で処理して、カーボネートブロックのDPが一般に約10以上、好ましくは約20以上、最も好ましくは約50〜200のポリエステルカーボネートを形成する。好ましい実施形態では、二価フェノールはビスフェノールAであり、式Iのフェノール−酸化合物は7−ヒドロキシフェニル−シトロネル酸であり、カーボネート前駆体はホスゲンである。
【0097】
ポリカーボネート又はポリエステルカーボネート製造方法の如何を問わず、反応体とカーボネート前駆体との接触前又は接触時に、任意成分として分子量調節剤(すなわち連鎖停止剤)を反応体に添加してもよい。有用な分子量調節剤には、フェノール、クロマン−I、p−tert−ブチルフェノール、イソオクチルフェノール、イソノニルフェノール、p−クミルフェノール等の一価フェノール類があるが、これらに限定されない。連鎖停止剤は、二価フェノールの使用量を基準にして、通常約0.1〜10モル%のレベルで存在するが、好ましくは約4〜10モル%、さらに好ましくは約4〜7モル%で存在させる。1種以上の連鎖停止剤の使用法は当技術分野で周知であり、ポリエステルカーボネート樹脂の分子量制御のためのあらゆるプロセスに使用し得る。
【0098】
2種以上の二価フェノール及び/又は2種以上の式Iのフェノール系化合物を含むコポリマー及びターポリマーを始めとするポリエステルカーボネートは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィでポリスチレンを標準として測定して、好ましくは約5000〜100000、さらに好ましくは約10000〜65000、最も好ましくは約18000〜36000の重量平均分子量を有する。
【0099】
ポリエステルカーボネート樹脂の製造に用いる各反応体の比率は、樹脂の最終使用用途に応じて変わる。一般に、樹脂中の式Iのフェノール系化合物の量は、二価フェノール系化合物に対して、約0.5〜30モル%、好ましくは約1〜20重量%、さらに好ましくは約1〜10重量%とし得る。式Iのフェノール系化合物の上記量は、ポリエステルカーボネートの製造に1種類のみの二価フェノールを単独で用いる場合にも、2種以上の二価フェノールの混合物を用いる場合にも適用できる。
【0100】
ポリカーボネート又はポリエステルカーボネートから製造された物品は本発明の別の実施形態をなす。かかる物品には薄肉成形品及び光学媒体がある。本明細書中で用いる「光学媒体」には、光ディスク及び光情報記憶媒体、例えばコンパクトディスク(オーディオCD、ビデオCD又はCD−ROM)、DVDとしても知られるデジタルバーサタイルディスク(ROM、RAM、書換型)、光磁気(MO)ディスク、CD−R及びCD−RWドライブのようなコンピュータハードドライブなど;光学レンズ、例えばコンタクトレンズ、眼鏡用レンズ、望遠鏡用レンズ、及びプリズム;光ファイバー;導波管;情報記録媒体;情報転送媒体;高密度情報記憶媒体、ビデオカメラ用ディスク、スチルカメラ用ディスクなど、並びに光学記録材料が貼り付けられた基材が包含される。光学製品の製造材料としての用途に加えて、本発明のポリカーボネート及びポリエステルカーボネートはフィルムやシートの原料としても使用できる。
【実施例】
【0101】
当業者による本発明の実施を容易ならしめるため、以下の実施例を例示として挙げるが、これらは限定のためのものではない。分子量測定はすべて、ポリスチレンを標準としてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で行った。
【0102】
実施例1
本例では、式IXの前駆体化合物からの式Iのフェノール系化合物の合成例を例示する。100mL三首丸底フラスコに窒素導入管と還流冷却器を取り付けた。このフラスコに、0.5gのAMBERLYST−15樹脂、10.15g(0.0734モル)のシトロネレン(3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン)及び31.29g(0.289モル)のo−クレゾールを入れた。反応混合物を磁気攪拌子で撹拌し、70℃に2日間加熱したところ、その時点で出発材料が完全に消費されたことがガスクロマトグラフィ(GC)分析で確認された(GC収率>90%)。ガスクロマトグラフィ−質量分析(GC−MS)で、主生成物が式XIXの化合物に一致することが確認された。材料の試料を、メタノール−クロロホルムによる濃度勾配溶出法によるシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製した。精製試料のプロトン核磁気共鳴分光法(H−NMR)スペクトルは、全オルト:パラ比約2:3の化合物の混合物としての式XIX(2,6−ビス[メチルヒドロキシフェニル]−2,6−ジメチルオクタン)と一致していた。
【0103】
実施例2
本例では、フェノールとシトロネル酸から得られる本発明のフェノール系化合物の合成例を例示する。不活性雰囲気下のフラスコ中で162g(1.72モル)のフェノールを64g(0.376モル)のシトロネル酸(3,7−ジメチル−6−オクテン酸)及び3.25gのAMBERLYST−15樹脂と混合した。フラスコの内容物を70℃に4時間加熱した。混合物を100mLの熱トルエンで希釈し、次いでガラス濾過器で迅速に濾過してAMBERLYST樹脂を除いた。粗反応生成物から減圧下で過剰のフェノールをストリッピングし、若干黄色味を帯びた粘稠オイルを得た。H−NMR及びGC−MSによるオイルの分析から、オルト:パラ比約3:7の3,7−ジメチル−7−ヒドロキシフェニル−オクタン酸と一致する構造であることが確認された。生成物を160℃/100mTorrでクーゲルロール蒸留して無色のモノマーを得た。
【0104】
実施例3
本例では、ヒドロカルダノールとシトロネル酸から得られる本発明のフェノール系化合物の合成に使用し得る手順を例示する。不活性雰囲気下のフラスコ中で、有効量のAMBERLYST−15樹脂の存在下、シトロネル酸を約4.5モル当量のヒドロカルダノールと混合する。フラスコの内容物を約70℃に約4時間加熱する。混合物を熱トルエンで希釈し、次いでガラス濾過器で迅速に濾過してAMBERLYST樹脂を除く。粗反応生成物から減圧下で過剰のヒドロカルダノールをストリッピングする。H−NMR及びGC−MSによるオイルの分析で、3,7−ジメチル−7−[ペンタデシル−ヒドロキシフェニル]−オクタン酸と一致する構造であることが確認される。
【0105】
実施例4
本例では、7−ヒドロキシフェニル−シトロネル酸のビスフェノールとの溶融重合を例示する。オーバーヘッド式攪拌機を備えたガラス反応器で、ビスフェノールA(5.09g、2.23×10−2モル)、ジフェニルカーボネート(5.00g、2.33×10−2モル)、7−ヒドロキシフェニル−シトロネル酸(0.233g、8.808×10−4モル)及び水酸化ナトリウム水溶液(9.8×10−8モル、0.001M溶液98μL)を不活性雰囲気下で混合し、220℃に加熱した。反応混合物を大気圧で約4時間攪拌し、次いで減圧(100mmHg)してフェノールの蒸留を開始した。100mTorrで290℃に達するまで3時間温度と減圧を徐々に高めた。この時点で、ポリマーは粘稠でごくわずか黄色味を帯びていた。ポリマーを減圧下で放冷した。ブレンダー内で、ポリマーを最小量の塩化メチレンに溶解し、過剰のイソプロピルアルコールで沈殿させた。ポリマーを濾過し、イソプロピルアルコールで洗浄し、真空下100℃で12時間乾燥して綿状の白色粉末を得た。H−NMRによる粉末の分析結果は、m:p比が約100:5の以下の式XXXIの繰返し単位をもつ構造と一致した。ポリマーは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィでポリスチレンを標準として測定して、28086の重量平均分子量(Mw)及び13417の数平均分子量(Mn)を示した。ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、窒素中昇温速度20℃/分での示差走査熱量分析(DSC)で測定して、135.7℃であった。
【0106】
【化35】


実施例5
本例では、ビスフェノールXIXとビスフェノール混合物との溶融重合を例示する。オーバーヘッド式攪拌機及び蒸留トラップを備えた円筒形ガラス反応器で、ジフェニルカーボネート(12.280g、0.057モル)、ビスフェノールA(11.547g、0.051モル)及びビスフェノールXIX(2,6−ビス[メチルヒドロキシフェニル]−2,6−ジメチルオクタン)(1.993g、0.006モル)を混合した。次に触媒溶液(0.001M水酸化ナトリウム水溶液75μL及び1.0M水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液14μL)を注入した。酸素含量が実質的に最小限に下がるまで、反応器の排気とアルゴン再充填を繰り返した。アルゴン下で上記モノマーを140〜180℃で溶融し、30分間攪拌した。次いで、215分間にわたって温度を300℃に上げ、真空度を0.5ミリバールまで下げた。重合中終始、フェノールが反応器から蒸留トラップに留出するのが観察された。反応器をアルゴンで再度加圧し、ポリマーを室温まで放冷した。樹脂のH−NMRは試料中に約10モル%のXIXを含むポリマーと一致した。この材料の数平均分子量(Mn)は37030、Tgは138℃であった。
【0107】
実施例6
本例では、モノエステルビスフェノール化合物とビスフェノール混合物との溶融重合に使用し得る手順を例示する。ビスフェノールA(BPA 0.493モル)、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン(BHMC 0.493モル)、ジフェニルカーボネート(1.153モル)、式XXIIのモノエステルビスフェノール化合物(0.063モル)、水酸化ナトリウム水溶液(1.048×10−6モル、0.001M溶液の形態で添加する。)及び水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(2.62×10−4モル、1.0M溶液の形態で添加する。)を不活性雰囲気下で混合する。酸素含量が実質的に最小限(好ましくは100ppm未満)に下がるまで、反応器の排気とアルゴン再充填を繰り返す。窒素下で上記モノマーを(140〜180℃に加熱して)溶融し、30分間攪拌する。次いで、210分間にわたって温度を約310℃に上げ、真空度を約1.5ミリバールまで下げる。重合中終始、フェノールが反応器から隣接した蒸留トラップに留出する。反応器を窒素で再度加圧し、溶融ターポリマー樹脂を得る。生成物のH−NMR分析は、BPA:BHMC:化合物XXIIのモル比が約47:47:6に等しい予想構造を示す。この樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィでポリスチレンを標準として測定して、10000〜65000の重量平均分子量(Mw)を示す。
【0108】
実施例7
式XXIIのモノエステルビスフェノール化合物に代えて7−ヒドロキシフェニル−シトロネル酸を用いる以外は、実施例6の手順を繰り返す。生成物のH−NMR分析は、BPA:BHMC:7−ヒドロキシフェニル−シトロネル酸のモル比が約47:47:6に等しい予想構造を示す。この樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィでポリスチレンを標準として測定して、10000〜65000の重量平均分子量(Mw)を示す。
【0109】
実施例8
本例では、7−ヒドロキシフェニル−シトロネル酸とビスフェノールAとの界面重合を例示する。500mLモートンフラスコに、ビスフェノールA(22.8g、100mmol)、7−ヒドロキシフェニル−シトロネル酸(2.5g、10mmol)、p−クミルフェノール(0.84g、4モル%)、塩化メチレン125mL、水90mL及びトリエチルアミン(125μL、2モル%)を入れた。50wt%水酸化ナトリウムでpHを8.5に調節した。ホスゲンを0.6g/分で添加した。7.0gのホスゲン(70モル%相当)を添加したところで、水酸化ナトリウム溶液を添加して1分間にわたってpHを10.5に上げた。添加量が20モル%過剰(12.6g、126mmol)となるまでホスゲンの添加を続けた。ポリマー溶液をブラインから分離し、0.1N塩酸で1回、脱イオン水で4回洗浄し、次いでブレンダー内で沸騰水で蒸気団粒化した。ポリマーを濾過し、水洗し、真空下110℃で16時間乾燥した。H−NMR分析は、m:p比が約100:9に等しい式XXXIのポリマー構造と一致した。ポリマーは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィでポリスチレンを標準として測定して、27400の重量平均分子量(Mw)及び10600の数平均分子量(Mn)を有していた。ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、窒素中昇温速度20℃/分のDSC分析で測定して、124.5℃であった。
【0110】
実施例9
本例では、7−ヒドロキシフェニル−シトロネル酸とビスフェノール混合物との界面重合に使用し得る手順を例示する。100Lのホスゲン反応器に、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン(BHMC 22.2モル)、BPA(22.2モル)、7−ヒドロキシフェニル−シトロネル酸(2.83モル)、塩化メチレン(42L)、蒸留水(42L)、p−クミルフェノール(600g、2.83モル、6.0モル%)、トリエチルアミン(89mL、1.35モル%)及び塩化メチルトリブチルアンモニウム(33wt%水溶液1067mL、3.18モル%)を仕込む。水酸化ナトリウム(50wt%水溶液500g)を添加し、反応混合物を約5分間混合する。ホスゲン(3273g、33.1モル、70モル%相当)を125g/分で添加し、この間NaOH溶液を添加してpHを8.5に維持する。pHを約1.5分にわたって10.5に急上昇させ、61.5モル(30モル%過剰)となるまでホスゲンの添加を続ける。ポリマー溶液を塩化メチレン(35L)で希釈し、ブラインから分離し、1N HClで2回、蒸留水で6回洗う。ポリマーを蒸気析出で単離し、窒素中120℃で一晩乾燥する。乾燥ポリマーは、(ポリスチレン標準に対するGPCで)10000〜65000の重量平均分子量(Mw)を示す。BHMC/BPA/7−ヒドロキシフェニル−シトロネル酸比が48/48/4及び49/49/2であるターポリマーを同様の手順で製造することができる。
【0111】
以上、例示を目的として代表的な実施形態を開示してきたが、以上の説明は本願発明の技術的範囲を限定するものではない。当業者であれば、本発明の技術的思想及び技術的範囲内での様々な変形、修正及び置換に想到することができよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二価フェノール1種以上及びカーボネート前駆体を反応性条件下で次の式Iのフェノール系化合物1種以上と混合することにより製造したポリカーボネート。
【化1】

式中、R及びRは各々独立にアルキル又はアラルキルであり、アリール環をα炭素原子に連結する自由原子価結合は各々独立にフェノール基に対してオルト位又はパラ位にあるか或いはオルト及びパラ異性体の混合物であり、R、R、R、R、R、R、R及びR10は各々独立に水素、アルキル又はアラルキルであり、R11は各々独立にアルキル又はハロゲンであり、nは各々独立に0〜3であり、x、y及びzは各々独立に0〜4であり、各原子団のx+y+zの和は1以上であり、kは1又は2であり、
kが1のとき、GはCHOH又は次の式IIであり、
【化2】

11は各々独立にアルキル又はハロゲンであり、nは各々独立に0〜3であり、式II中の自由原子価結合はフェノール基に対してオルト位又はパラ位にあるか或いはオルト及びパラ異性体の混合物であり、
kが2のとき、Gは連結部分であり、該連結部分は、式IIIに示すカーボネート結合、
【化3】

式IVに示すモノエーテル結合CHO、
【化4】

式Vに示すジエーテル結合CHO]13
【化5】

式VIに示すモノエステル結合(C=O)OCH
【化6】

式VIIに示すジエステル結合(C=O)O]14、又は
【化7】

式VIIIに示すジエステル結合CHO(C=O)]15である。
【化8】

ただし、R13、R14及びR15は二価のアルケニル、アラルケニル、アルカリーレン又はアリーレンである。
【請求項2】
界面法で製造した、請求項1記載のポリカーボネート。
【請求項3】
溶融法で製造した、請求項1記載のポリカーボネート。
【請求項4】
前記二価フェノールがビスフェノールAであり、前記カーボネート前駆体がホスゲンであり、前記フェノール系化合物が2,6−ビス[メチルヒドロキシフェニル]−2,6−ジメチルオクタンである、請求項1記載のポリカーボネート。
【請求項5】
前記二価フェノールがビスフェノールAと1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサンの混合物であり、前記カーボネート前駆体がジフェニルカーボネートであり、前記フェノール系化合物が式XXIIのモノエステルビスフェノール化合物である、請求項1記載のポリカーボネート。
【請求項6】
ビスフェノールA及びホスゲンを反応性条件下で次の式XIXのフェノール系化合物1種以上と混合することにより製造したポリカーボネート。
【化9】

式中、各アリール環を各α炭素原子に連結する自由原子価結合は主としてフェノール基に対してパラ位にある。
【請求項7】
請求項1、請求項4又は請求項5記載のポリカーボネートから製造した物品。

【公開番号】特開2006−89758(P2006−89758A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−353191(P2005−353191)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【分割の表示】特願2002−514075(P2002−514075)の分割
【原出願日】平成13年6月4日(2001.6.4)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】