説明

フェルト球作成具

【課題】フェルト化させた後の羊毛の洗浄及び水切りを容器体に入れたまま行なうことができる使い勝手の良いフェルト球作成具を提供すること。
【解決手段】底部6a,16aが凹球面状に形成された収容部6,16を備えた容器体5,15を2個で1組とし、それら収容部6,16の開口端6c,16c同士を合わせることによりフェルト球fを作成可能な内空間部2が形成されるように設けられ、各収容部6,16の底部6a,16aに多数の小穴8,18を形成し、容器体5に係止突起10、10を、容器体15に係止穴20、20を設け、前記開口端6c,16c同士を合わせて係止突起10と係止穴20とを雌雄の関係で嵌合させることにより2個の容器体5,15が一体化されるように設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ほぐした羊毛からフェルト球を作成するための器具に関する。
【背景技術】
【0002】
手芸等で使用されるフェルト球を手作業で作成するための器具の例として、特許文献1に開示された球状の密閉容器がある。その文献に記載されたフェルト球作成方法は、4工程からなり、第1工程で直径20mm程度の発泡スチロール製球体に羊毛を巻きつけ、第2工程で羊毛を巻きつけた球体と、羊毛のキューティクルを開かせる石鹸液などの液体を球状の密閉容器に入れ、第3工程で球体を密閉容器の内面に対して衝突部位を変更しつつ連続的に衝突させることにより、球体に巻きつけられた羊毛に圧力を加えて液体により開いた羊毛のキューティクル同士を絡めさせて羊毛をフェルト化させ、第4工程で密閉容器内から球体を取り出して羊毛を洗浄後、水分を落としてから球体の球面に沿って羊毛を丸めて乾燥させることにより、球体にフェルト化した羊毛を密着させたフェルト球が得られる。
【0003】
上記フェルト球作成方法では、第4工程で球体を密閉容器に入れたまま洗浄することができないため、密閉容器内から球体を取り出して水道水等で洗い流し、球体を手で絞ったり振ったりして水分を落とさなければならない。このため、不慣れな人であると洗浄の際にフェルトが偏り、水切りを行なう際に形が崩れてしまって綺麗な形のフェルト球を作成することができないという虞がある。
【特許文献1】特開2004−339657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、フェルト化させた後の羊毛の洗浄及び水切りを容器体に入れたまま行なうことができる使い勝手の良いフェルト球作成具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために請求項1に記載した発明は、底部が凹球面状に形成された収容部に取っ手を備えた容器体を2個で1組とし、それら収容部の開口端同士を合わせることによりフェルト球を作成可能な内空間部が形成されるように設けられ、各収容部の底部に多数の小穴が形成されていることを特徴とする。
【0006】
同様の目的を達成するために請求項2に記載した発明は、底部が凹球面状に形成された収容部に取っ手を備えた容器体を2個で1組とし、それら収容部の開口端同士を合わせることによりフェルト球を作成可能な内空間部が形成されるように設けられ、一方の収容部の底部にのみ多数の小穴が形成されていることを特徴とする。
【0007】
同様の目的を達成するために請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載のフェルト球作成具において、各容器体の所定箇所に雌雄の関係で嵌合させる係合部を夫々設け、前記収容部の開口端同士を合わせて該係合部を嵌合させることにより2個の容器体が一体化されるように設けたことを特徴とするものである。
【0008】
同様の目的を達成するために請求項4に記載した発明は、請求項1から3の何れかに記載のフェルト球作成具において、前記小穴を有する収容部の周囲に、多数の長穴が形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
同様の目的を達成するために請求項5に記載した発明は、請求項1から4の何れかに記載のフェルト球作成具において、前記容器体に取っ手を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
(請求項1の発明)
このフェルト球作成具は、ほぐした羊毛を石鹸液等の液で湿らせた状態で収容部に入れて容器体を適宜振ることによりキューティクル同士を絡めてフェルト球を作成するのであるが、収容部に設けた小穴から液や水分が外へ排出される構造としているため、フェルト化させた後の羊毛の洗浄及び水切り作業を収容部に入れたまま行なうことができ、大変使い勝手が良い。加えて、水切りを行なうまでフェルト化させた羊毛を外に取り出さないので、綺麗な形のフェルト球が得られ易い。
【0011】
(請求項2の発明)
このフェルト球作成具は、収容部に小穴を設けていない容器体を上側にして振れば、内部から飛び出す液や水分が上方へ飛び散りにくいので手や被服を濡らすことが少なくなる。
【0012】
(請求項3の発明)
このフェルト球作成具は、収容部の開口端同士を合わせて係合部を嵌合させることにより2個の容器体が一体化されるので、使い勝手が良い。
【0013】
(請求項4の発明)
このフェルト球作成具は、収容部の周囲に形成された長穴から洗浄液が排出される構造としているため、中のものを取り出すことなく洗浄を行なうことができる。
【0014】
(請求項5の発明)
このフェルト球作成具は取っ手を備えているので、フェルト化させた後の羊毛の洗浄及び水切り作業が行ない易い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の最良の形態例を図面に基づいて説明する。図1は第1実施形態に係るフェルト球作成具の分離斜視図、図2は使用状態におけるフェルト球作成具の断面図、図3は一方の容器体の説明図(イ)及び(ロ)、図4は第2実施形態に係るフェルト球作成具の分離斜視図、図5は第2実施形態に係る容器体の説明図(イ)及び(ロ)である。
【0016】
(実施形態例1)
本発明に係る第1実施形態のフェルト球作成具1は、図1に示すように、2個のプラスチック製容器体5,15で1組とされている。一方の容器体5は、図3に示すように、底部6aが凹球面状に形成された収容部6の周縁6bから直線状に延びる取っ手7を一体に設けている。収容部6の底部6aには多数の小穴8を形成し、収容部6の周囲には開口端6cから底部6aに向かうように延びる多数の長穴9が等間隔に設けられている。10,10は収容部6の開口端6c側で取っ手7に所定間隔に設けられた係止突起である。この係止突起10と後記他方の容器体15の係止穴20とは、雌雄の関係で嵌合するように設けた係合部の一例である。
【0017】
なお、この実施形態例では容器体5に取っ手7を一体に設けているが、別途用意した取っ手を容器体に固定する構造とすることもできる。また、容器体のみで取っ手を設けない構造とすることも可能である。
【0018】
他方の容器体15は、図2に示すように、底部16aが凹球面状に形成された収容部16の周縁16bから直線状に延びる取っ手17を一体に設けている。収容部16の底部16aには多数の小穴18を形成し、収容部16の周囲には開口端16cから底部16aに向かうように延びる多数の長穴19が等間隔に設けられている。20,20は前記開口端16c側で取っ手17に所定間隔に設けられた係止穴である。
【0019】
しかして、各収容部6,16の開口端6c,16c同士を合わせて係止突起10と係止穴20とを嵌合させることにより、2個の容器体5,15を一体化する第1実施形態に係るフェルト球作成具1が構成される。そして、二つの収容部6,16によりフェルト球fを作成可能な内空間部2が形成される。
【0020】
つぎに、第1実施形態に係るフェルト球作成具1を使用したフェルト球の作り方について説明する。
(1)ほぐした適宜量の羊毛をキューティクルを開かせ易くするための石鹸液等の液体に浸し、これをフェルト球作成具1の収容部6に入れる。
(2)収容部6,16の開口端6c,16c同士を合わせて係止突起10と係止穴20とを嵌合させることにより2個の容器体5,15を一体化させる。
(3)フェルト球作成具1を適宜振って内部の羊毛に振動を与えることにより、石鹸液により開いた羊毛のキューティクル同士を絡めさせて羊毛をフェルト化させる。
(4)ついで、フェルト化して丸くなった羊毛をフェルト球作成具1に入れたまま水道水等で洗浄後、再び何度も振って水分を落とす。このときに、収容部6,16の小穴8,18や長穴9、19から水や水分が外へ排出される。
(5)フェルト球作成具1から丸くなった羊毛を取り出し、形を整えつつドライヤー等で適宜乾燥させることによりフェルト球fが得られる。
【0021】
なお、この実施形態例では、球体を用いずにフェルト球を作成しているところ、従来のように球体に羊毛を巻きつけるようにしてフェルト球を作成してもよい。
【0022】
(実施形態例2)
第2実施形態に係るフェルト球作成具1´は、図4に示すように、前述した第1実施形態のフェルト球作成具1の他方の容器体15に代えて図5に示す容器体25を用い、一方の容器体5をそのまま流用した構成としている(請求項2の発明に対応)。
【0023】
使用時に上側とされる容器体25は、図5に示すように、天部26aが凹球面状に形成された収容部26の周縁26bから直線状に延びる取っ手27を一体に設けている。28,28は前記係止突起10に対応するように開口端26c側で取っ手27に所定間隔に設けられた係止穴である。
【0024】
しかして、各収容部6,26の開口端6c,26c同士を合わせて係止突起10と係止穴28とを嵌合させることにより、2個の容器体5,25を一体化する第2実施形態に係るフェルト球作成具1´が構成される(図4)。
【0025】
かかる構成になる第2実施形態のフェルト球作成具1´によれば、容器体25を上側にして振れば、内部から飛び出す石鹸液や水分が上方へ飛び散りにくいので、第1実施形態のフェルト球作成具1に比べて手や被服を濡らすことが少なくなる。
【0026】
以上に述べた通り、このフェルト球作成具は、ほぐした羊毛を石鹸液で湿らせた状態で収容部に入れて容器体を適宜振ることによりキューティクル同士を絡めてフェルト球を作成するのであるが、収容部に設けた小穴から液や水分を外へ排出する構造としているため、フェルト化させた後の羊毛の洗浄及び水切りを収容部に入れたまま行なうことができ、綺麗な形のフェルト球が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態に係るフェルト球作成具の分離斜視図
【図2】使用状態を示すフェルト球作成具の断面図
【図3】一方の容器体の説明図(イ)及び(ロ)
【図4】第2実施形態に係るフェルト球作成具の分離斜視図
【図5】第2実施形態の容器体の説明図(イ)及び(ロ)
【符号の説明】
【0028】
1・・・フェルト球作成具(第1実施形態)
2・・・内空間部
5,15・・・容器体
6,16・・・収容部
6a,16a・・・底部
6c,16c・・・開口端
7,17・・・取っ手
8,18・・・小穴
10・・・係止突起
20・・・係止穴
f・・・フェルト球
1´・・・フェルト球作成具(第2実施形態)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部が凹球面状に形成された収容部を備えた容器体を2個で1組とし、それら収容部の開口端同士を合わせることによりフェルト球を作成可能な内空間部が形成されるように設けられ、各収容部の底部に多数の小穴が形成されていることを特徴とするフェルト球作成具。
【請求項2】
底部が凹球面状に形成された収容部を備えた容器体を2個で1組とし、それら収容部の開口端同士を合わせることによりフェルト球を作成可能な内空間部が形成されるように設けられ、一方の収容部の底部にのみ多数の小穴が形成されていることを特徴とするフェルト球作成具。
【請求項3】
各容器体の所定箇所に雌雄の関係で嵌合させる係合部を夫々設け、前記収容部の開口端同士を合わせて該係合部を嵌合させることにより2個の容器体が一体化されるように設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のフェルト球作成具。
【請求項4】
前記小穴を有する収容部の周囲に、多数の長穴が形成されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のフェルト球作成具。
【請求項5】
前記容器体に取っ手を備えたことを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のフェルト球作成具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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