説明

フォトクロミック組成物

【課題】 ポリカーボネート樹脂などからなる光学シートを接合するための接着層として機能するフォトクロミック組成物であって、該組成物使用した積層体が、優れた密着性、耐熱性、フォトクロミック性を示すフォトクロミック組成物を提供する。
【解決手段】 分子内に2つの水酸基を有する分子量400〜3000のポリジオール化合物(A1成分)、分子内に2つのイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物(A2成分)、分子内に2つのイソシアネート基と反応しうる官能基を有する分子量50〜300の鎖延長剤(A3成分)、分子内に少なくとも1つ、または2つのイソシアネート基と反応しうる基を含有し、例えば、分子内にピペリジン構造を有する機能性付与化合物(A4成分)を反応させて得られるポリウレタン樹脂(A成分)と、フォトクロミック化合物(B成分)を含むフォトクロミック組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトクロミック性接着剤、特にポリカーボネート樹脂製の光学シート又はフィルム同士を接合するためのフォトクロミック性接着剤として好適に使用できる新規なフォトクロミック組成物に関する。また、本発明は、該フォトクロミック組成物からなる接着層を介して光学シート又は光学フィルムが互いに接合されてなる積層構造を含む光学物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年米国を中心として、防眩性を有するサングラスなどに、透明で優れた耐衝撃性を有するポリカーボネートを用いたプラスチック基材の需要が急速に高まっている。そして、このようなプラスチック製サングラスにおいては、フォトクロミック色素と組み合わせることによって、周囲の明るさに応じて透過率が変化することにより防眩性を調節できるプラスチック製フォトクロミックサングラスが急速に人気を得ている。
【0003】
このようなプラスチック製フォトクロミックサングラスは、様々な方法で製造されている。具体的には、プラスチックレンズの表面にフォトクロミック色素を含むコーティング組成物を塗布する方法、プラスチックレンズの材質自体にフォトクロミック色素を混合し、レンズを形成する方法が挙げられる。
【0004】
また、部分的な加工ができること、平滑なフォトクロミック層を形成できること、及び射出成型でプラスチックレンズを製造する際に同時にフォトクロミック特性を付与できるという点で、以下の方法も検討が進んでいる。具体的には、フォトクロミック色素と、アクリレート樹脂、又はポリウレタン樹脂とを含むフォトクロミック性接着剤を使用する方法である(特許文献1〜5参照)。より詳細に説明すると、該フォトクロミック性接着剤でポリカーボネート樹脂製の光学シート同士を接合した「フォトクロミック積層シート」をレンズ成型用の金型内に装着し、射出成型を行うことにより、該積層シートを有するプラスチック製フォトクロミッサングラスを製造する方法である(特許文献1〜4参照)。
【0005】
この「フォトクロミック積層シート」を使用する方法は、生産効率のよい方法であるが、以下の点で改善の余地があった。例えば、フォトクロミック積層シート自体を作製する方法であるが、特許文献2、3には、連続してフォトクロミック積層シートを製造する方法が記載されている。しかしながら、これらの方法では、フォトクロミック性接着層を形成するに際し、トルエンやテトラヒドロフランといったポリカーボネートシートなどの光学シートを溶解する溶媒を使用していた。そのため、外観不良が生じたり、溶出した光学シート成分により、フォトクロミック特性が低下するといった問題が生じていた。
【0006】
また、上記特許文献1〜5に記載の方法では、該接着剤からなる層を形成する樹脂、具体的には、ポリウレタン樹脂、又はアクリレート樹脂の耐熱性が影響していると考えられるが、ポリカーボネートシートと射出成型されたレンズとの密着状態が不良となる場合があり、得られる光学物品において剥離が生じたり、光学歪が生じたりするといった問題があった。そのため、該接着剤からなる層のマトリックス樹脂自体の耐熱性を向上することが求められていた。
【0007】
さらに、プラスチック製フォトクロミックサングラスは、光に曝されるため、フォトクロミック色素の耐久性が重要となる。このフォトクロミック積層シートを利用した場合において、例えば、特許文献1に記載の方法では、耐久性を向上させるために、酸化防止剤、及びヒンダードアミンのような添加剤を配合したフォトクロミック性接着剤を使用している。添加剤を配合することにより、フォトクロミック色素の耐久性は十分に確保できる。しかしながら、本発明者等の検討によれば、上記フォトクロミック性接着剤では、該接着剤からなる層(フォトクロミック性接着層)とポリカーボネートシートとの密着性が十分でなく、該シートが剥離する場合があった。
【0008】
一方、フォトクロミック材料の耐久性を改善する方法として、マトリックスとなる樹脂分子内に、ヒンダードアミンのような機能性付与構造を導入する方法が知られている。例えば、ヒンダードアミン官能基をグラフトさせたポリウレタン樹脂とフォトクロミック色素とを組み合わせた組成物が、添加剤を使用した組成物よりも、フォトクロミック特性を阻害することなく、耐久性に優れた組成物であることが知られている(特許文献6参照)。この特許文献6に記載された方法は、3つのイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物、2つの水酸基を有するジオール化合物、水酸基を有するヒンダードアミン化合物、及びフォトクロミック色素とを含むコーティング組成物を使用して、フォトクロミック材料を製造するものである。そして、特許文献6には、フォトクロミック材料の製造方法として、プラスチック支持体上で前記コーティング組成物を硬化させることにより、ヒンダードアミン官能基をグラフトさせたポリウレタン樹脂とフォトクロミック色素とを含むコート層を形成する方法が具体的に記載されている。このコーティング組成物は、3つのイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物、2つの水酸基を有するジオール化合物を含むため、高架橋ウレタン樹脂が形成されている。
【0009】
この特許文献6に記載の方法は、コーティング組成物を使用する点で特許文献1〜5に記載の方法とは異なるが、特許文献6に示されたコーティング組成物を、例えば、特許文献1におけるフォトクロミック性接着剤として使用すれば、添加剤の使用量を低減することができ、密着性を改善できるものと考えられる。また、高架橋のポリウレタン樹脂を使用することになり、耐熱性も向上するものと考えられる。
【0010】
しかしながら、本発明者等の検討によれば、分子内にヒンダードアミン構造を有し、高架橋したウレタン樹脂を単に使用しただけでは、ポリカーボネート同士の密着性を改善できないことが分かった。また、特許文献6の方法に従いポリカーボネートシート上で高架橋ウレタン樹脂を重合しようとすると、重合収縮などの影響により該シートが変形するおそれがあり、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許公開2004096666号公報
【特許文献2】WO2002/099513パンフレット
【特許文献3】特開2002−196103号公報
【特許文献4】特表2003−519398号公報
【特許文献5】特開昭61−5910号公報
【特許文献6】特表2000−515904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、第一に、光学シート又はフィルムを接合するときの接着層として使用した場合に、優れた密着性、耐熱性を有し、優れたフォトクロミック性を発揮するフォトクロミック組成物を提供することである。
【0013】
また、本発明の第二の目的は、光学シート又はフィルム上がフォトクロミック性を有する接着層により接合された積層構造を含んでなる光学物品であって、該積層構造における優れた密着性、並びに優れた耐熱性および優れたフォトクロミック特性を有する光学物品を提供することである。
【0014】
さらに、本発明の第三の目的は、上記したような光学物品を製造するに当たり、光学シート又はフィルムとしてポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂からなるものを使用した場合であっても外観不良を起こすことなく光学物品を製造することができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者等は上記課題を解決すべく、フォトクロミック性接着層の構造と得られる光学物品の特性との関係について鋭意検討を行った。
【0016】
その結果、(1)ピペリジン構造のような機能性を付与できる機能性付与化合物、特定のジイソシアネート化合物、特定のポリジオール化合物、及び特定の鎖延長剤とから得られるポリウレタン樹脂とフォトクロミック化合物とを含むフォトクロミック組成物を、上記フォトクロミック性接着剤に使用することにより、得られるフォトクロミック積層体シートの密着性、フォトクロミック性、耐久性を改善することができ、さらには、該接着剤からなる層と光学シートとの密着性を向上できることを見出した。
【0017】
さらに、(2)溶媒を使用しないで上記フォトクロミック性接着層を形成するか、或いは溶媒を用いてキャスト膜を形成してから乾燥(溶媒除去)することによって、上記フォトクロミック性接着層となる“フォトクロミック化合物が分散した、分子内に機能性付与基を有する特定のポリウレタン樹脂を含んでなるフォトクロミック性接着シート”を別途準備し、該“フォトクロミック性接着シート”を用いてフォトクロミック積層シートを製造した場合には、溶媒による悪影響が回避でき、フォトクロミック性が低下しないこと、を見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
即ち、本発明は、下記〔1〕〜〔10〕に示されるものである。
【0019】
〔1〕(A)分子内に、ピペリジン構造、ヒンダードフェノール構造、トリアジン構造、またはベンゾトリアゾール構造を有するポリウレタン樹脂、並びに
(B)フォトクロミック化合物を含んでなるフォトクロミック組成物であり、
前記(A)成分が、
(A1)分子内に2つの水酸基を有する分子量400〜3000のポリジオール化合物と、
(A2)分子内に2つのイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物と、
(A3)分子内に2つのイソシアネート基と反応しうる官能基を有する分子量50〜300の鎖延長剤と、
(A4)分子内に1、または2つのイソシアネート基と反応しうる基を有し、かつ、分子内に、ピペリジン構造、ヒンダードフェノール構造、トリアジン構造、またはベンゾトリアゾール構造を有する機能性付与化合物と、
を反応して得られるポリウレタン樹脂であることを特徴とするフォトクロミック組成物。中でも、前記(A4)機能性付与化合物が、ピペリジン構造を有する化合物であることが好ましい。
【0020】
〔2〕 前記(A)ポリウレタン樹脂を得るに際して使用する前記(A1)成分、(A2)成分、(A3)成分、及び(A4)成分の量比が、前記成分(A1)に含まれる水酸基の総モル数をn1とし、前記成分(A2)に含まれるイソシアネート基の総モル数をn2とし、前記成分(A3)に含まれるイソシアネート基反応しうる官能基の総モル数をn3とし、前記成分(A4)に含まれるイソシアネート基反応しうる官能基の総モル数をn4としたときに、
n1:n2:n3:n4=0.30〜0.89:1.00:0.10〜0.69:0.01〜0.20となる量比である〔1〕に記載のフォトクロミック組成物。
【0021】
〔3〕 前記(A1)ポリジオール化合物が、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリカプロラクトンジオール、及びポリエステルジオールより選ばれる少なくとも1種のポリジオール化合物である請求項1記載のフォトクロミック組成物。
【0022】
〔4〕 前記(A2)ジイソシアネート化合物の30質量%以上が脂肪族ジイソシアネート化合物である〔1〕に記載のフォトクロミック組成物。
【0023】
〔5〕 前記(A3)鎖延長剤が、ジアミン化合物、アミノアルコール化合物、アミノカルボン酸化合物、アミノチオール化合物、及びジオール化合物から選ばれる少なくとも1種の鎖延長剤である〔1〕に記載のフォトクロミック組成物。
【0024】
〔6〕 前記(B)フォトクロミック化合物の含有量が、前記(A)ポリウレタン樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部である〔1〕に記載のフォトクロミック組成物。
【0025】
〔7〕 前記(A)ポリウレタン樹脂100質量部に対して5〜900質量部の(C)有機溶媒を更に含んでなる〔6〕に記載のフォトクロミック組成物。
【0026】
〔8〕 互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルムが〔1〕に記載のフォトクロミック組成物からなる接着層を介して接合されてなる積層構造を含んでなる光学物品。
【0027】
〔9〕 前記積層構造における、互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルムの少なくとも一方が、ポリカーボネート樹脂よりなることを特徴とする〔8〕に記載の光学物品。
【0028】
〔10〕 前記〔9〕に記載の光学物品を製造する方法であって、
(I)平滑な基材上に前記〔7〕に記載のフォトクロミック組成物を延展せしめた後に乾燥することにより(C)有機溶媒を除去し、(A)ポリウレタン樹脂と、該(A)ポリウレタン樹脂中に分散した(B)フォトクロミック化合物とを含んでなるフォトクロミック性接着シートを準備する工程、および
(II)互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルムの間に上記フォトクロミック性接着シートを介在させて該2枚の光学シート又は光学フィルムを接合することにより前記積層構造を作成する工程、
を含んでなることを特徴とする方法。
【発明の効果】
【0029】
本発明のフォトクロミック組成物は、接着剤またはバインダーとして機能し、該組成物からなる接着層によりポリカーボネート樹脂などからなる光学シート又はフィルムを接合して積層体(フォトクロミック積層シート)を製造した場合、得られた積層体は優れた密着性およびフォトクロミック特性を示す。さらに、上記接着層は優れた耐熱性を示すため、上記積層体を金型に装着し、次いで該金型にポリカーボネート樹脂などの熱可塑性樹脂を射出成形することによって光学物品を製造した場合でも密着性やフォトクロミック特性が低下し難く、光学歪が生じ難い。
【0030】
また、本発明の方法によれば、光学シート又はフィルムとして耐溶剤性に劣るポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂からなるものを使用しても、溶媒による悪影響が回避できるので、フォトクロミック性を低下させることがない。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明のフォトクロミック組成物は、(A)分子内に、ピペリジン構造、ヒンダードフェノール構造、トリアジン構造、またはベンゾトリアゾール構造を有するポリウレタン樹脂(以下、単にA成分ともいう。)、並びに(B)フォトクロミック化合物(以下、単にB成分ともいう。)を含んでなることを特徴とする。以下、これらA成分およびB成分について説明する。
【0032】
A成分:ピペリジン構造、ヒンダードフェノール構造、トリアジン構造、またはベンゾトリアゾール構造を有するポリウレタン樹脂
従来のフォトクロミック性接着剤又はバインダーに使用されているポリウレタン樹脂は、ヒンダードアミン光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を添加し、フォトクロミック化合物、さらにはポリウレタン樹脂の耐久性を向上している。これに対し、本発明のフォトクロミック組成物のA成分は、ヒンダードアミン光安定性能、酸化防止性能、または紫外線吸収性能等の機能性を付与する構造を、分子内に有するポリウレタン樹脂である。そして、下記に詳述する特定のモノマー成分から得られる該ポリウレタン樹脂を含むフォトクロミック組成物が、優れた耐熱性、耐久性、フォトクロミック特性を示し、かつ、ポリカーボネートのような光学シートとの密着性を向上できる。
【0033】
A成分として使用するポリウレタン樹脂は、分子の側鎖、骨格、又は末端などの分子内に、機能を付与する構造を有する樹脂である。そして、得られるフォトクロミック組成物が、優れた耐熱性、密着性、及びフォトクロミック特性を発揮するためには、
(A1)分子内に2つの水酸基を有する分子量400〜3000のポリジオール化合物(以下、単にA1成分ともいう。)と、
(A2)分子内に2つのイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物(以下、単にA2成分ともいう。)と、
(A3)分子内に2つのイソシアネート基と反応しうる官能基を有する分子量50〜300の鎖延長剤(以下、単にA3成分ともいう。)と、
(A4)分子内に1、または2つのイソシアネート基と反応しうる基を有し、かつ、分子内に、ピペリジン構造、ヒンダードフェノール構造、トリアジン構造、またはベンゾトリアゾール構造を有する機能性付与化合物(以下、単にA4成分、機能性付与化合物ともいう。)を反応して得られるポリウレタン樹脂を使用しなければならない。
【0034】
特に、A4成分を使用することにより、ポリウレタン樹脂の分子内に耐久性向上の機能を付与した構造を導入することができる。以下、これら成分について説明する。
【0035】
A1成分:ポリジオール化合物
A1成分のポリジオール化合物は、生成するA成分としてポリウレタン樹脂が高架橋体になり過ぎず、有機溶剤に可溶であるという理由から分子中に含まれる水酸基数は2である。
【0036】
A1成分の平均分子量は400〜3000であるが、A1成分を使用して得られるA成分の耐熱性、及びフォトクロミック特性(発色濃度、退色速度、耐候性など)、特にフォトクロミック化合物の耐候性の観点から、平均分子量は、400〜2500であることが好ましく、400〜1500であることがより好ましい。
【0037】
また、A1成分としては公知のポリジオール化合物を何ら制限なく使用することが可能であるが、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリエステルジオールなどのポリジオール化合物を使用することが好ましく、これらは単独で使用しても良く、2種類以上を併用しても構わない。その中でも、耐熱性、密着性、耐候性、耐加水分解性などの観点から、ポリカーボネートジオール、ポリカプロラクトンジオールを使用することが好ましい。以下、A1成分として使用される各種化合物について詳しく説明する。
【0038】
ポリエーテルジオール: A1成分として使用されるポリエーテルジオールとしては、“分子中に活性水素含有基を2個有する化合物”と“アルキレンオキサイド”との反応により得られるポリエーテルジオール化合物及び該ポリエーテルジオール化合物の変性体であるポリマージオール、ウレタン変性ポリエーテルジオール、ポリエーテルエステルコポリマージオール等を挙げることが出来る。
【0039】
なお、上記“分子中に活性水素含有基を2個有する化合物”としては、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールなどが挙げられ、これらは単独で使用しても、2種類以上を混合して使用しても構わない。また、前記“アルキレンオキサイド”としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の環状エーテル化合物が挙げられ、これらは単独で使用しても、2種類以上を混合して使用しても構わない。
【0040】
このようなポリエーテルジオールは、試薬としてまたは工業的に入手可能であり、市販されているものを例示すれば、旭硝子株式会社製「エクセノール(登録商標)」シリーズ、「エマルスター(登録商標)」、株式会社ADEKA製「アデカポリエーテル」シリーズなどを挙げることができる。
【0041】
ポリカーボネートジオール: A1成分として使用されるポリカーボネートポリオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−4−ブチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールA のエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類の1種類以上のホスゲン化より得られるポリカーボネートポリオール、或いはエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、及びジフェニルカーボネート等によるエステル交換法により得られるポリカーボネートポリオール等を挙げることができる。
【0042】
これらポリカーボネートジオールは、試薬としてまたは工業的に入手可能であり、市販されているものを例示すれば、旭化成ケミカルズ株式会社製「デュラノール(登録商標)」シリーズ、株式会社クラレ製「クラレポリオール(登録商標)」シリーズ、ダイセル化学工業株式会社製「プラクセル(登録商標)」シリーズ、日本ポリウレタン工業株式会社製「ニッポラン(登録商標)」シリーズ、宇部興産株式会社製「ETERNACOLL(登録商標)」シリーズなどを挙げることができる。
【0043】
本発明のA1成分としては、耐熱性、密着性、耐候性、耐加水分解性などの観点から、ポリカーボネートジオールを使用することが好ましい。特に、ポリカーボネート樹脂からなる光学シート又はフィルムを接合して積層体を製造する場合においては、接着層と被接着層とが同じ骨格を有し、親和性が向上することにより密着性が安定するため、ポリカーボネートジオールを用いたA1成分を使用することが好ましい。
【0044】
ポリカプロラクトンジオール: A1成分として使用されるポリカプロラクトンジオールとしては、ε−カプロラクトンの開環重合により得られる化合物が使用できる。
【0045】
このようなポリカプロラクトンジオールは、試薬としてまたは工業的に入手可能であり、市販されているものを例示すれば、ダイセル化学工業株式会社製「プラクセル(登録商標)」シリーズなどを挙げることができる。
【0046】
ポリエステルジオール: A1成分として使用されるポリエステルジオールとしては、“ジオール”と“二塩基酸”との縮合反応により得られるポリエステルジオールなどを挙げることができる。ここで、前記“ジオール”としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3,3‘−ジメチロールヘプタン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、3,3−ビス(ヒドロキシメチル)ヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどが挙げられ、これらは単独で使用しても、2種類以上を混合して使用しても構わない。また、前記“二塩基酸”としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、これらは単独で使用しても、2種類以上を混合して使用しても構わない。
【0047】
これらポリエステルジオールは、試薬としてまたは工業的に入手可能であり、市販されているものを例示すれば、DIC株式会社製「ポリライト(登録商標)」シリーズ、日本ポリウレタン工業株式会社製「ニッポラン(登録商標)」シリーズ、川崎化成工業株式会社製「マキシモール(登録商標)」シリーズなどを挙げることができる。
【0048】
A2成分:ジイソシアネート化合物
本発明でA2成分として使用される“分子内に2つのイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物”としては、脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環式ジイソシアネート化合物、芳香族ジイソシアネート化合物、及びこれらの混合物が使用される。これらの中でも、耐候性の観点から脂肪族ジイソシアネート化合物及び/又は脂環式ジイソシアネート化合物を使用することが好ましい。また、同様の理由からA2成分のジイソシアネート化合物の30質量%以上、特に50質量%以上は脂肪族ジイソシアネート化合物であることが好ましい。なお、A2成分としてジイソシアネート化合物を用いる理由は、有機溶剤への溶解性などを考慮した結果である。分子内に3つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を主として使用した場合には、得られるポリウレタン樹脂の架橋密度が高くなり、有機溶剤への溶解性が低下するため好ましくない。
【0049】
A2成分として好適に使用できるジイソシアネート化合物を例示すれば、
テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、オクタメチレン−1,8−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート化合物、
シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、2,4−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、2,6−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネート、1,9−ジイソシアナト−5−メチルノナン、1,1−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトシクロヘキシル)メチル]−1−メチルシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)シクロヘキシルイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネート化合物、又は
フェニルシクロヘキシルメタンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)の異性体混合物、トルエン−2,3−ジイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、フェニレン−1,3−ジイソシアネート、フェニレン−1,4−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、キシリレンジイシシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、1,3−ジイソシアナトメチルベンゼン、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメトキシ(1,1’−ビフェニル)、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルビフェニル、1,2−ジイソシアナトベンゼン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)−2,3,5,6−テトラクロロベンゼン、2−ドデシル−1,3−ジイソシアナトベンゼン、1−イソシアナト−4−[(2−イソシアナトシクロヘキシル)メチル]2−メチルベンゼン、1−イソシアナト−3−[(4−イソシアナトフェニル)メチル)−2−メチルベンゼン、4−[(2−イソシアナトフェニル)オキシ]フェニルイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート化合物
を挙げることができる。
【0050】
これらの中でも、得られるポリウレタン樹脂(得られるフォトクロミック組成物)の耐候性の観点から、上記の通り、A2成分のジイソシアネート化合物の30質量%以上、特に50質量%以上が、脂肪族ジイソシアネート化合物、及び脂環式ジイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1種のジイソシアネート化合物であることが好ましい。好適な化合物を具体的に例示すると、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、2,4−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、2,6−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネートを使用することが好ましい。
【0051】
また、このジイソシアネート化合物は、光安定性能、酸化防止性能、または紫外線吸収性能等の機能性を付与する構造を分子内に有する化合物であってもよい。以下、光安定性能を発揮するピペリジン構造を有するジイシシアネート化合物を例にして説明する。該ジイソシアネート化合物としては、分子内に3つのイソシアネート基を有するトリイソシアネート化合物と、分子内に1つのイソシアネート基と反応しうる基(アミノ基、水酸基、カルボキシル基、またはチオール基)とピペリジン構造を有する化合物との反応生成物が挙げられる。トリイソシアネート化合物としては、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8−ジイソシアナート−4−イソシアナートメチルオクタン、2−イソシアナートエチル(2,6−ジイソシアナート)ヘキサノエート、1−メチルベンゼン−2,4,6−トリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4,4’−トリイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネートなどを挙げることができる。また、分子内に1つのイソシアネート基と反応しうる基とピペリジン構造を有する化合物としては、下記のピペリジン構造を有する機能性付与化合物で説明する、一般式(1)で示される化合物が挙げられる。前記トリイソシアネート化合物の1つのイソシアネート基と、例えば、後述の一般式(1)で示された化合物のイソシアネート基と反応しうる基とを反応させることにより、分子内に2つのイソシアネート基が存在する化合物(ジイソシアネート化合物)を得ることができる。
【0052】
また、前記トリイソシアネート化合物と反応させる化合物として、分子内に1つのイソシアネート基と反応しうる基とヒンダードフェノール構造、トリアジン構造、又はベンゾトリアゾール構造を有する化合物を使用することもできる。これら化合物を使用することにより、酸化防止性能、または紫外線吸収性能を有するジイソシアネート化合物となる。
【0053】
なお、上記のような光安定性能、酸化防止性能、または紫外線吸収性能等を有するジイソシアネート化合物をA2成分として使用することにより、下記に詳述するA4成分(機能性付与化合物)を使用したA成分(ポリウレタン樹脂)を合成することができる。そのため、A2成分として、光安定性能、酸化防止性能、または紫外線吸収性能等を有する該ジイソシアネート化合物を使用する場合、A成分を合成する際、下記に詳述するA4成分(機能性付与化合物)を使用してもよいし、使用しなくてもよい。
【0054】
これらのジイソシネート化合物は、単独で使用してもよく、2種類以上を併用しても構わない。
【0055】
A3成分:鎖延長剤
本発明でA3成分として使用される鎖延長剤は、分子内に2つのイソシアネート基と反応しうる官能基を有する分子量50〜300の化合物である。該A3成分は、ポリウレタン樹脂を合成する際の鎖延長剤として機能するものであり、鎖延長剤としてA3成分を用いることにより、本発明のポリウレタン樹脂の分子量、耐熱性、フォトクロミック特性などの制御が可能となる。該鎖延長剤の分子量が50未満の場合には、得られるポリウレタン樹脂が硬くなりすぎる傾向があり、耐熱性は向上するものの密着性やフォトクロミック特性が低下する。一方で該鎖延長剤の分子量が300を越える場合には、得られるポリウレタン樹脂が柔らかくなりすぎる傾向があり、耐熱性、密着性、フォトクロミック特性のいずれも低下する。よって、該鎖延長剤の分子量は、50〜250であることがより好ましく、55〜200であることが最も好ましい。
【0056】
本発明のA3成分は、ジアミン化合物、アミノアルコール化合物、アミノカルボン酸化合物、アミノチオール化合物、及びジオール化合物から選ばれる少なくとも1種の鎖延長剤であることが好ましい。以下、ジアミン化合物、アミノアルコール化合物、アミノカルボン酸化合物、アミノチオール化合物をまとめて、アミノ基含有化合物とする場合もある。アミノ基含有化合物としては、分子内に有する2つのイソシアネート基と反応する基の内の少なくとも1つがアミノ基(−NH基、及び−NH(R)基)であり、アミノ基以外のイソシアネート基との反応性基は、水酸基(−OH基)、メルカプト基(−SH基:チオール基)、又はカルボキシル基〔−C(=O)OH基〕である。
【0057】
A3成分のアミノ基含有化合物として好適に使用される化合物を例示すれば、ジアミンとして、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、1,3−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、ピペラジン、N,N−ビス−(2−アミノエチル)ピペラジン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス−(4−アミノ−3−ブチルシクロヘキシル)メタン、1,2−、1,3−及び1,4−ジアミノシクロヘキサン、ノルボルネンジアミン、ノルボルナンジアミン、ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジン、フェニレンジアミン、4,4’−ジフェニルメタンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジプロピルエチレンジアミン、N,N’−ジブチルエチレンジアミン、N−メチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン等を挙げることができる。
【0058】
また、アミノアルコール化合物としては、2−アミノエタノール、3−アミノプロパノール、4−アミノブタノール、5−アミノペンタノール、6−アミノヘキサノール、2−ピペリジンメタノール、3−ピペリジンメタノール、4−ピペリジンメタノール、2−ピペリジンエタノール、4−ピペリジンエタノール等を挙げることができる。
【0059】
アミノカルボン酸としては、グリシン、アラニン、リシン、ロイシン等を挙げることができる。
【0060】
アミノチオールとしては、1−アミノチオール、2−アミノエタンチオール等を挙げることができる。
【0061】
また、A3成分のジオール化合物として好適に使用される化合物を例示すれば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−ビス(ヒドロキシエチル)−シクロヘキサン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等を挙げることができる。
【0062】
以上のアミノ基含有化合物、及びジオール化合物などの鎖延長剤は、単独で使用してもよく、2種類以上を併用しても構わない。
【0063】
前記鎖延長剤においては、耐熱性、密着性、フォトクロミック化合物の耐久性などの観点から、アミノ基含有化合物を使用することが好ましい。この理由は、A成分としてのポリウレタン樹脂を合成する際に、アミノ基含有化合物を用いることにより、得られるポリウレタン樹脂がウレア結合を有することになり、分子の剛直性が高くなると共に、分子鎖間の水素結合がより強固となるため、耐熱性が向上するものと推定している。また、フォトクロミック化合物の耐久性が向上することに関しては、ウレア結合の存在により分子鎖間の水素結合がより強固となることによって、空気中の酸素が該ポリウレタン樹脂中へ拡散し難くなり、フォトクロミック化合物の一般的な劣化機構として知られている光酸化劣化が抑制されたためであると推定している。さらに、密着強度が向上することに関しては、ウレア結合の存在により分子鎖間の水素結合が強固となって樹脂の凝集破壊が起こりにくくなったためであると推定している。
【0064】
A4成分:分子内に、1、または2つのイソシアネート基と反応しうる基を有し、かつ、分子内に、ピペリジン構造、ヒンダードフェノール構造、トリアジン構造、またはベンゾトリアゾール構造を有する機能性付与化合物
本発明で使用されるA4成分は、分子内に1、または2つのイソシアネート基と反応しうる基を有し、かつ、分子内に、ピペリジン構造、ヒンダードフェノール構造、トリアジン構造、またはベンゾトリアゾール構造を有する化合物である。
【0065】
前述のイソシアネート基と反応しうる基とは、アミノ基(−NH基、及び−NH(R)基)、水酸基(−OH基)、メルカプト基(−SH基:チオール基)、カルボキシル基〔−C(=O)OH基〕、又は酸クロライド基〔−C(=O)OCl基〕が挙げられる。特に、優れた効果を発揮するウレタン樹脂を得るためには、このイソシアネート基と反応しうる基は分子内に1つであることが好ましい。この理由は、明らかではないが、以下のように考えられる。該基が1つであることにより、ポリウレタン樹脂の側鎖、末端に機能性付与化合物が導入される。そのため、ラジカル等の耐久性を低下させる物質に効率よく、機能性付与化合物が作用できるものと考えられる。
【0066】
また、前述のピペリジン構造、ヒンダードフェノール構造、トリアジン構造、またはベンゾトリアゾール構造は、光安定化効果(ピペリジン構造)、酸化防止効果(ヒンダードフェノール構造)、または紫外線吸収効果(トリアジン構造、又はベンゾトリアゾール構造)を発揮する部位である。これらの構造を有する化合物を使用することにより、A成分であるポリウレタン樹脂自体、及びフォトクロミック化合物の耐久性(光安定性、酸化防止性能、紫外線吸収性能)を向上することができる。中でも、フォトクロミック化合物の耐久性を向上させるためには、ピペリジン構造を有する化合物を使用することが好ましい。以下、A4成分として使用される各種化合物について詳しく説明する。
【0067】
ピペリジン構造を有する機能性付与化合物
本発明でA4成分として使用されるピペリジン構造を有する機能性付与化合物としては、下記一般式(i)で示される構造を分子内に有する化合物が好適に使用できる。
【0068】
【化1】

【0069】
(式中、
、R、R、及びRは、それぞれ、炭素数1〜4のアルキル基であり、特に、メチル基であることが好ましい。)。そして、上記ピペリジン環の窒素原子、または、4位の炭素原子にイソシアネート基と反応しうる基を有する化合物が、ピペリジン構造を有する機能性付与化合物に該当する。
【0070】
以下、より具体的な化合物について説明する。
【0071】
本発明でA4成分として使用される機能性付与化合物の中で、ポリウレタン樹脂の末端にピペリジン構造を導入しうる化合物としては、下記一般式(1)で示される化合物などを使用することが好適に挙げられる。
【0072】
【化2】

【0073】
(式中、
、R、R、及びRは、前記一般式(i)におけるものと同義であり、
は、炭素数1〜10アルキル基、または水素原子であり、
は炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、aは0または1であり、
Xは、イソシアネート基と反応しうる基である。)。
【0074】
上記一般式(1)において、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基であるが、4つのアルキル基全てメチル基であることが好ましい。
【0075】
は、炭素数1〜10アルキル基、または水素原子である。中でも、入手の容易さの観点から、炭素数1〜4アルキル基、または水素原子であることが好ましい。なお、R〜Rが炭素数1〜4のアルキル基であるため、Rが水素原子であっても、立体障害の影響でRが結合している窒素原子とイソシアネート基が反応することはない。
【0076】
は、炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基、又は炭素数3〜10のポリメチレン基である。なお、aは、R6の数を示すが、aが0の場合は、Xが直接ピペリジン環に結合しているものを指す。
【0077】
Xは、イソシアネート基と反応しうる基であり、好ましくは、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、またはチオール基である。中でも、イソシアネート基との反応性、入手の容易さなどの観点からアミノ基、及び水酸基であることが好適である。
【0078】
上記式(1)で示される反応停止剤を具体的に例示すれば、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ヒドロキシピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−アミノピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−アミノピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−アミノメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−アミノブチルピペリジンなどを挙げることができる。
【0079】
また、ポリウレタン樹脂の末端にピペリジン構造を導入しうる化合物としては、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの反応物である下記化合物も使用することが出来る。
【0080】
【化3】

【0081】
なお、上記化合物において、nは5〜20の範囲を満足することが好ましい。
【0082】
本発明で使用されるA4成分の中で、ポリウレタン樹脂の主鎖中にピペリジン構造を導入しうる化合物としては、下記一般式(2)、(3)、(4)で示される化合物などを使用することが好適である。
【0083】
下記式(2)
【0084】
【化4】

【0085】
(式中、
、R、R、及びR10は、それぞれ、炭素数1〜4のアルキル基であり、
11は、炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、
12は、炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、bは0または1であり、
Yは、イソシアネート基と反応しうる基である。)で示される化合物も、好適に使用できる。
【0086】
上記一般式(2)において、R、R、R、及びR10は、それぞれ、炭素数1〜4のアルキル基であるが、4つのアルキル基全てメチル基であることが好ましい。
【0087】
11は、炭素数1〜20のアルキレン基、または炭素数3〜20のポリメチレン基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基、または炭素数3〜10のポリメチレン基である。
【0088】
12は、炭素数1〜20のアルキレン基、または炭素数3〜20のポリメチレン基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基、または炭素数3〜10のポリメチレン基である。なお、bが0の場合には、Yが直接ピペリジン環に結合しているものを指す。
【0089】
Yは、前記一般式(1)中のXと同様である。
【0090】
上記式(2)で示される機能性付与化合物を例示すれば、下記化合物などを挙げることができる。
【0091】
【化5】

【0092】
下記式(3)
【0093】
【化6】

【0094】
(式中、
13、R14、R15、及びR16は、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基であり、
17は、炭素数1〜20のアルキレン基、または炭素数3〜20のポリメチレン基であり、cは0または1であり、
18は、炭素数1〜20のアルキレン基、または炭素数3〜20のポリメチレン基であり、
Zは、イソシアネート基と反応しうる基である。)で示される化合物も、好適に使用できる。
【0095】
上記一般式(3)において、R13、R14、R15、及びR16は、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基であるが、4つのアルキル基全てメチル基であることが好ましい。
【0096】
17は、炭素数1〜20のアルキレン基、または炭素数3〜20のポリメチレン基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基、または炭素数3〜10のポリメチレン基である。なお、cが0の場合には、Zが直接ピペリジン環に結合しているものを指す。
【0097】
18は、炭素数1〜20のアルキレン基、または炭素数3〜20のポリメチレン基である。
【0098】
Zは、前記一般式(1)中のXと同様である。
【0099】
上記一般式(3)で示されるピペリジン環含有化合物を例示すれば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−メトキシ−4−ピペリジニル)セバケートなどを挙げることができる。
【0100】
【化7】

【0101】
(式中、
19、R20、R21、及びR22は、それぞれ、炭素数1〜4のアルキル基であり、
23は、炭素数1〜20のアルキレン基、または炭素数3〜20のポリメチレン基であり、R24は、炭素数1〜20のアルキレン基、または炭素数3〜20のポリメチレン基あり、
V及びWは、それぞれ、イソシアネート基と反応しうる基である。)
上記一般式(4)において、R19、R20、R21、及びR22は、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基であるが、4つのアルキル基全てメチル基であることが好ましい。
【0102】
23は、炭素数1〜20のアルキレン基、または炭素数3〜20のポリメチレン基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基、または炭素数3〜10のポリメチレン基であり、
24は、炭素数1〜20のアルキレン基、または炭素数3〜20のポリメチレン基あり、好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基、または炭素数3〜10のポリメチレン基である。なお、dは0または1であり、dが0の場合には、Vが直接ピペリジン環に結合するものを指す。
【0103】
また、V及びWは、前記一般式(1)中のXと同様であり、同一の基であっても、異なる基であってもよい。
【0104】
上記一般式(4)で示されるピペリジン環含有化合物を例示すれば、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールなどを挙げることができる。
【0105】
ヒンダードフェノール構造を有する機能性付与化合物
本発明でA4成分として使用されるヒンダードフェノール構造を有する機能性付与化合物としては、下記一般式(ii)で示される構造を分子内に有する化合物が好適に使用できる。
【0106】
【化8】

【0107】
(式中、
25、R26、R27、及びR28は、それぞれ、炭素数1〜18アルキル基、または水素原子であり、
25、またはR26の少なくともどちらか一方は、炭素数4以上のアルキル基である。)。そして、上記構造の1位の炭素原子にイソシアネート基と反応しうる基を有する化合物が、ヒンダードフェノール構造を有する機能性付与化合物となる。上式(ii)における4位の水酸基は、R25とR26の少なくとも一方がアルキル基であるため、その立体障害の影響からイソシアネート基とは反応しにくい。そのため、4位の水酸基は、イソシアネート基と反応しうる基とはならない。
【0108】
上記のような構造を分子内に有し、イソシアネート基と反応しうる基を2つ有する化合物は、前記ピペリジン構造を有する機能性付与化合物で説明したとおり、A成分のポリウレタン樹脂の主鎖中にヒンダードフェノール構造を導入することができる。また、イソシアネート基と反応しうる基が1つの場合には、該ポリウレタン樹脂の側鎖、末端にヒンダードフェノール構造を導入することができる。
【0109】
ヒンダードフェノール構造を有する機能性付与化合物の中でも、好ましい化合物としては、下記一般式(5)を挙げることができる。
【0110】
【化9】

【0111】
(式中、
25、R26、R27、及びR28は、それぞれ、炭素数1〜18のアルキル基、または水素原子であり、R25、またはR26のうち少なくともどちらか一方は、炭素数4以上のアルキル基であり、
29は、炭素数1〜10のアルキレン基、または炭素数3〜10のポリメチレン基であり、eは0または1であり、
Uは、イソシアネート基と反応しうる基である。)。
【0112】
上記一般式(5)において、R25、およびR26は、炭素数1〜18のアルキル基、または水素原子であり、どちらか一方は、炭素数4以上のアルキル基である。好ましくは、R25、及びR26のどちらか一方が、tert−ブチル基である。一方の基が炭素数4以上のアルキル基であることにより、得られるフォトクロミック組成物の耐久性をより向上できる。
【0113】
27、及びR28は、炭素数1〜18のアルキル基、または水素原子であり、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、または水素原子である。
【0114】
また、Uは、イソシアネート基と反応しうる基であり、アミノ基、水酸基、チオール基、カルボキシル基、または酸クロライド基であり、特に、好ましくは、アミノ基、水酸基、チオール基、カルボキシル基である。
【0115】
29は、炭素数1〜10のアルキレン基、または炭素数3〜10のポリメチレン基であり、好ましくは炭素数1〜5のアルキレン基、または炭素数3〜5のポリメチレン基である。また、eは、R29の数を示すが、0または1である。eが0の場合は、Uが直接ベンゼン環に結合しているものを指す。好ましくは、eが0である化合物である。
【0116】
ヒンダードフェノール構造を有する機能性付与化合物を具体的に例示すれば、3−メチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−t−ブチル−6−メチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−t−ブチル−5−エチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−t−ブチル−6−エチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−t−オクチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−t−オクチル−5−メチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−t−オクチル−5−エチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−t−オクチル−6−メチル−4−ヒドロキシ安息香酸、2−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸、2−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸、2−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸、2−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸、2−(3−t−ブチル−6−メチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸、2−(3−t−ブチル−5−エチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸、2−(3−t−オクチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸、2−(3−t−オクチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸、2−(3−t−オクチル−6−メチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸、3−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、3−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、3−(3−t−ブチル−6−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、3−(3−t−ブチル−5−エチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、3−(3−t−ブチル−6−エチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、3−(3−t−オクチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、3−(3−t−オクチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、3−(3−t−オクチル−6−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、3−(3,5−ジドデシル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、4−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)酪酸、4−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)酪酸、4−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酪酸、4−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酪酸、4−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)酪酸、4−(3−t−ブチル−5−エチル−4−ヒドロキシフェニル)酪酸、4−(3−t−ブチル−6−メチル−4−ヒドロキシフェニル)酪酸、4−(3−t−ブチル−6−エチル−4−ヒドロキシフェニル)酪酸、4−(3−t−オクチル−4−ヒドロキシフェニル)酪酸、4−(3−t−オクチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)酪酸、4−(3−t−オクチル−6−メチル−4−ヒドロキシフェニル)酪酸、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニルアミン、3,5−ジイソプロピル−4−ヒドロキシフェニルアミン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアミンなどを挙げることができる。
【0117】
この中でもより好ましい化合物として、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−t−ブチル−6−メチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−t−ブチル−5−エチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3−t−ブチル−6−エチル−4−ヒドロキシ安息香酸、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸、2−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸、2−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸、2−(3−t−ブチル−6−メチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸、2−(3−t−ブチル−5−エチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸、3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、3−(3−t−ブチル−6−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、3−(3−t−ブチル−5−エチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、3−(3−t−ブチル−6−エチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、4−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酪酸、4−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酪酸、4−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)酪酸、4−(3−t−ブチル−5−エチル−4−ヒドロキシフェニル)酪酸、4−(3−t−ブチル−6−メチル−4−ヒドロキシフェニル)酪酸、4−(3−t−ブチル−6−エチル−4−ヒドロキシフェニル)酪酸、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアミンを挙げることができる。
【0118】
トリアジン構造、またはベンゾトリアゾール構造を有する機能性付与化合物
本発明でA4成分として使用されるトリアジン構造、またはベンゾトリアゾール構造を有する機能性付与化合物としては、下記一般式(iii)、(iv)で示される構造を分子内に有する化合物が好適に使用できる。
【0119】
【化10】

【0120】
【化11】

【0121】
上記のような構造を分子内に有し、イソシアネート基と反応しうる基を2つ有する化合物は、前記ピペリジン構造を有する機能性付与化合物で説明したとおり、A成分のポリウレタン樹脂の主鎖中にトリアジン構造、またはベンゾトリアゾール構造を導入することができる。また、イソシアネート基と反応しうる基が1つの場合には、該ポリウレタン樹脂の側鎖、末端にトリアジン構造、またはベンゾトリアゾール構造を導入することができる。
【0122】
トリアジン構造、またはベンゾトリアゾール構造を有する機能性付与化合物の中でも、好ましい化合物としては、下記一般式(6)及び、(7)を挙げることができる。先ず、トリアジン構造を有する化合物について説明する。
【0123】
下記一般式(6)
【0124】
【化12】

【0125】
(式中、
30、R31、R32、R33、R34、及びR35は、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基、アルキルオキシ基、水素原子、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、またはチオール基であり、
前記アルキル基、及びアルキルオキシ基は、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、及びチオール基から選ばれる置換基を有していてもよく、
ただし、R30〜R35のうち、1つ、または2つの基は、イソシアネート基と反応しうる基である。)で示される化合物が好適に使用できる。
【0126】
上記一般式(6)において、R30、R31、R32、R33、R34、及びR35は、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10アルキルオキシ基である。より好ましくは、炭素数1〜5のアルキル基、または炭素数1〜5のアルキルオキシ基である。また、これら基は、イソシアネート基と反応しうる基、好ましくはアミノ基、水酸基、カルボキシル基、またはチオール基を置換基として有していてもよい。
【0127】
また、上記一般式(6)におけるR30、R31、R32、R33、R34、及びR35は、水素原子、またはイソシアネート反応しうる基であってもよく、好ましくは、水素原子、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、又はチオール基である。
【0128】
但し、R30、R31、R32、R33、R34、及びR35のうち、1つ、または2つの基が、イソシアネート基と反応しうる基、好ましくは、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、又はチオール基でなければならない。
【0129】
中でも、R30、R31、R32、R33、R34、及びR35は、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、tert−ブチル基、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシエチルオキシ基、3−ヒドロキシプロピルオキシ基、2−ヒドロキシプロピルオキシ基、水素原子、または水酸基であることが好ましい。そして、そのうち1つ、または2つの基が、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシエチルオキシ基、3−ヒドロキシプロピルオキシ基、2−ヒドロキシプロピルオキシ基、または水酸基であることが好ましい。
【0130】
具体的な化合物を例示すると、2−(2, 4−ジヒドロキシフェニル)−4, 6−ジフェニル−s −トリアジン、2−(2, 4−ジヒドロキシフェニル)−4, 6−ビス(2, 4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2, 4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2−メトキシフェニル)−s−トリアジン、2−(2, 4−ジヒドロキシフェニル)−4, 6−ビス(4−メトキシフェニル)−s−トリアジン、2−(2, 4−ジヒドロキシフェニル)−4, 6−ビス(2, 4−ジメトキシフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルフェニル)−4, 6−ジフェニル−s−トリアジン、2−(2ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルフェニル)−4, 6−ビス(2, 4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル)−4, 6−ジフェニル−s −トリアジン、2−(2ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル)−4, 6−ビス(2, 4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)フェニル)−4, 6−ジフェニル−s−トリアジン、2−(2ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエチルオキシ)フェニル)−4, 6−ビス(2, 4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシプロピル)フェニル)−4, 6−ジフェニル−s−トリアジン、2−(2ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシプロピル)フェニル)−4, 6−ビス(2, 4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル)−4, 6−ジフェニル−s−トリアジン、2−(2ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル)−4, 6−ビス(2, 4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル)−4, 6−ジフェニル−s−トリアジン、2−(2ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル)−4, 6−ビス(2, 4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−(4−ヒドロキシブチル)フェニル)−4, 6−ジフェニル−s−トリアジン、2−(2ヒドロキシ−4−(4−ヒドロキシブチル)フェニル)−4, 6−ビス(2, 4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシブチル)フェニル)−4, 6−ジフェニル−s−トリアジン、2−(2ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシブチル)フェニル)−4, 6−ビス(2, 4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)フェニル)−4, 6−ジフェニル−s−トリアジン、2−(2ヒドロキシ−4−(4−ヒドロキシブチルオキシ)フェニル)−4,6−ビス(2, 4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−フェニル−4, 6−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−s−トリアジン、2−(2, 4−ジメトキシフェニル)−4, 6−ビス(2−ヒドロキシフェニル)−s−トリアジン、2−(2, 4−ジメチルフェニル)−4, 6−ビス(2−ヒドロキシ−4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−フェニル−4, 6−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−メトキシ−4−エチルフェニル)−4, 6−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−エトキシ−4−メチルフェニル)−4, 6−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−メチル−4プロピルフェニル)−4, 6−ビス(2−(4−ヒドロキシブチルオキシ)−4−メチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−メトキシ−4−プロピルフェニル)−4, 6−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−エトキシ−4−プロピルフェニル)−4, 6−ビス(2−ヒドロキシプロピルオキシ−4−ジメチルフェニル)−s−トリアジンなどを挙げることができる。
【0131】
次に、ベンゾトリアゾール構造を有する好ましい機能性付与化合物について説明する。好ましい化合物としては、下記一般式(7)で示される化合物が挙げられる。
【0132】
【化13】

【0133】
(式中、
36、及びR37は、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルキルオキシ基、水素原子、アリール基であり、
前記アルキル基、及びアルキルオキシ基は、イソシアネート基と反応しうる基を有していてもよく、ただし、該イソシアネート基と反応しうる基は、1つのみであり、
前記アリール基は、炭素数1〜5のアルキル基を置換基として有していてもよく、
38は、水素原子、又はハロゲン原子である。)
上記一般式(7)において、R36、及びR37は、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数1〜10アルキルオキシ基である。これらの基にはイソシアネート基と反応しうる基、具体的には、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、酸クロライド基、またはチオール基を有していてもよい。ただし、該イソシアネート基と反応しうる基は、1つのみである。
【0134】
また、R36、及びR37は、炭素数1〜5のアルキル基を置換基として有するアリール基、好ましくは、炭素数1〜5のアルキル基を置換基として有するフェニル基、または水素原子であってもよい。
【0135】
好適なR36、及びR37を例示すれば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、フェニル基、ベンジル基、1,1−ジメチルベンジル基、カルボキシル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基、アミノ基、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、及びカルボキシル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基に対応する酸クロライド基等が挙げられる。
【0136】
具体的な化合物としては、3−[3’−(2’’H−ベンゾトリアゾール−2’’−イル)−4’−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸、3−[3’−(2’’H−ベンゾトリアゾール−2’’−イル)− 5’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸、3−[3’−(2’’H−ベンゾトリアゾール−2’’−イル)−5’−エチル−4’−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸、3−[3’−(2’’H−ベンゾトリアゾール−2’’−イル)−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸、3−[3’−(5’’−クロロ−2’’H−ベンゾトリアゾール−2’’−イル)−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸、3−[3’−(2’’H−ベンゾトリアゾール−2’’−イル)−4’’−ヒドロキシ−5’’−(1’,1’−ジメチルベンジル)フェニル]プロピオン酸、3−[3’−(2’’H−ベンゾトリアゾール−2’’−イル)−4’’−ヒドロキシ−5’’−(1’’,1’’,3’’,3’’−テトラメチルブチル)フェニル」プロピオン酸、及びそれらの酸クロライド化合物、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α, α-ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(ヒドロキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(ヒドロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(ヒドロキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−メチル−5’−(ヒドロキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−メチル−5’−(ヒドロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−メチル−5’−(ヒドロキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(ヒドロキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(ヒドロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(ヒドロキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−t−オクチル−5’−(ヒドロキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−t−オクチル−5’−(ヒドロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−t−オクチル−5’−(ヒドロキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(ヒドロキシエチル)フェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾールなどを挙げることができる。
【0137】
上記A4成分は、ポリウレタン樹脂、及びフォトクロミック化合物の耐候性の向上を目的として、得られるポリウレタン樹脂の末端、主鎖、側鎖などのいずれにも導入することが可能であるが、ウレタン樹脂本来の耐熱性、機械的強度(剥離強度)を損なわないという観点から、ポリウレタン樹脂の末端に導入することが好ましい。
【0138】
次に、上記A1〜A4成分を使用したA成分の合成方法について説明する。
【0139】
A成分の合成方法
これらA1成分、A2成分、A3成分およびA4成分を反応させてA成分を得る場合には、所謂ワンショット法又はプレポリマー法を採用することができ、たとえば次のような方法によって好適にA成分を得ることができる。
【0140】
合成方法1(末端に機能性付与構造を有するA成分)
A1成分とA2成分とを反応さてウレタンプレポリマーを得、次いで該ウレタンプレポリマーとA3成分を反応させる。得られたウレタンポリマーに残存する末端イソシアネート基と分子内に1つのイソシアネート基と反応しうる基を有するA4成分を反応させることにより、本発明のA成分を製造することができる。
【0141】
上記方法において、A1成分とA2成分との反応は、溶媒の存在下または非存在下で両者を窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下中、25〜120℃で0.5〜24時間反応させればよい。溶媒としては、メチルエチルケトン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)などの有機溶媒が使用できる。反応に際しては、A2成分であるジイソシアネート化合物中のイソシアネート基と不純物としての水との反応を避けるため、各種反応試剤及び溶媒は、予め脱水処理を行い、十分に乾燥しておくことが好ましい。また、上記反応を行う際には、ジラウリル酸ジブチルスズ、ジメチルイミダゾール、トリエチレンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサジアミン、テトラメチル−1,2−エタンジアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンなどの触媒を添加してもよい。触媒を使用する際の添加量としては、該A成分の合計100質量部に対して0.001〜1質量部であることが好ましい。
【0142】
このようにして得られたウレタンプレポリマーとA3成分との反応は、溶媒の存在下または非存在下で両者を窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下中、25〜120℃で0.5〜24時間反応させればよい。溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブタノール、2−ブタノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、DMF、DMSO、THFなどを使用することができる。
【0143】
さらに、得られたウレタンポリマーとA4成分との反応は、溶媒の存在下または非存在下で両者を窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下中、25〜120℃で0.5〜24時間反応させればよい。溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブタノール、2−ブタノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、DMF、DMSO、THFなどを使用することができる。
【0144】
合成方法2(主鎖に機能性付与構造を有するA成分)
A1成分とA2成分とを反応さてウレタンプレポリマーを得、さらに分子内に2つのイソシアネート基と反応しうる基を有するA4成分を混合・反応させることにより、機能性付与構造を有するウレタンプレポリマーを得、次いで該ウレタンプレポリマーとA3成分を反応させることにより、本発明のA成分を製造することができる。
【0145】
上記方法において、A1成分とA2成分との反応、さらにA4成分との反応は、溶媒の存在下または非存在下で両者を窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下中、25〜120℃で0.5〜24時間反応させればよい。溶媒としては、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)などの有機溶媒が使用できる。反応に際しては、ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基と不純物としての水との反応を避けるため、各種反応試剤及び溶媒は、予め脱水処理を行い、十分に乾燥しておくことが好ましい。また、上記反応を行う際には、ジラウリル酸ジブチルスズ、ジメチルイミダゾール、トリエチレンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサジアミン、テトラメチル−1,2−エタンジアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンなどの触媒を添加してもよい。触媒を使用する際の添加量としては、該A成分の合計100質量部に対して0.001〜1質量部であることが好ましい。
【0146】
このようにして得られたウレタンプレポリマーとA3成分との反応は、溶媒の存在下または非存在下で両者を窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下中、25〜120℃で0.5〜24時間反応させればよい。溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブタノール、2−ブタノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、DMF、DMSO、THFなどを使用することができる。
【0147】
合成方法3(側鎖に機能性付与構造を有するA成分)
まず、分子内に1つのイソシアネート基と反応しうる基を有するA4成分と、イソシアネート基を3つ有するトリイソシアネート化合物を反応させ、側鎖に機能性付与構造を有するジイソシアネート化合物を合成する。このジイソシアネート化合物とA1成分、及びA2成分とを反応さてウレタンプレポリマーを得、次いでA3成分と反応させることにより、本発明のA成分を製造することができる。
【0148】
上記方法において、トリイソシアネート化合物とA4成分との反応は、溶媒の存在下または非存在下で両者を窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下中、25〜120℃で0.5〜24時間反応させればよい。溶媒としては、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)などの有機溶媒が使用できる。反応に際しては、ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基と不純物としての水との反応を避けるため、各種反応試剤及び溶媒は、予め脱水処理を行い、十分に乾燥しておくことが好ましい。
【0149】
上記の方法により得られた側鎖に機能性付与構造を有するジイソシアネート化合物、A1成分、及びA2成分との反応は、溶媒の存在下または非存在下で両者を窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下中、25〜120℃で0.5〜24時間反応させればよい。溶媒としては、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)などの有機溶媒が使用できる。反応に際しては、ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基と不純物としての水との反応を避けるため、各種反応試剤及び溶媒は、予め脱水処理を行い、十分に乾燥しておくことが好ましい。また、上記反応を行う際には、ジラウリル酸ジブチルスズ、ジメチルイミダゾール、トリエチレンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサジアミン、テトラメチル−1,2−エタンジアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンなどの触媒を添加してもよい。触媒を使用する際の添加量としては、該A成分の合計100質量部に対して0.001〜1質量部であることが好ましい。
【0150】
このようにして得られたウレタンプレポリマーとA3成分との反応は、溶媒の存在下または非存在下で両者を窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下中、25〜120℃で0.5〜24時間反応させればよい。溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブタノール、2−ブタノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、DMF、DMSO、THFなどを使用することができる。
【0151】
各成分の配合割合、A成分の特性
上記方法において反応に使用するA1成分、A2成分、A3成分、およびA4成分の量比は適宜決定すればよいが、得られるポリウレタン樹脂の耐熱性、接着強度、フォトクロミック特性(発色濃度、退色速度、耐候性など)などのバランスの観点から、次のような量比とすることが好ましい。すなわち、A1成分に含まれる、“イソシアネート基と反応しうる官能基”(具体的には水酸基)の総モル数をn1とし、A2成分に含まれるイソシアネート基の総モル数をn2とし、A3成分に含まれる、“イソシアネート基と反応しうる官能基”(具体的にはアミノ基、水酸基、メルカプト基及び/又はカルボキシル基)の総モル数をn3とし、A4成分に含まれる“イソシアネート基と反応しうる官能基”(具体的にはアミノ基、水酸基、メルカプト基及び/又はカルボキシル基)の総モル数をn4としたときに、n1:n2:n3:n4=0.30〜0.89:1.00:0.1〜0.69:0.01〜0.20となる量比、特にn1:n2:n3:n4=0.35〜0.84:1.00:0.15〜0.64:0.01〜0.18となる量比とすることが好ましく、n1:n2:n3:n4=0.40〜0.79:1.00:0.20〜0.59:0.01〜0.15となる量比とすることが最も好ましい。
【0152】
このような反応により得られたポリウレタン樹脂は、反応溶媒に溶解しているまま使用しても構わないが、必要に応じて溶媒を留去する、或いは水などの貧溶媒中に反応液を滴下し、ポリウレタン樹脂を沈降・濾過後、乾燥させるなどの後処理を行って、A成分として使用すればよい。
【0153】
A成分のポリウレタン樹脂は、得られるポリウレタン樹脂の耐熱性、接着強度、フォトクロミック特性(発色濃度、退色速度、耐候性など)などの観点から、その分子量は、1万〜100万、特に3万〜90万であることが好ましく、5万〜80万であることが最も好ましい。なお、上記ポリウレタン樹脂の分子量は、ポリスチレン換算によるゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)を用いて、カラム:Shodex KD−805、KD−804(昭和電工株式会社製)、溶離液:LiBr(10mmol/L)/DMF溶液、流速:1ml/min、検出器:RI検出器、ポリウレタン樹脂試料溶液:0.5%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液の条件により測定した数平均分子量を意味する。
【0154】
また、上記と同条件で測定したポリウレタン樹脂の分子量(数平均分子量)をポリエチレンオキシド換算にすれば、その分子量は、5千〜15万であることが好ましく、さらに8千〜10万であることが好ましく、特に1万〜6万であることが好ましい。
【0155】
A成分であるポリウレタン樹脂は、本発明のフォトクロミック組成物を用いて光学シート又はフィルムどうしを貼付し、積層体とするとき、或いは得られた積層体を用いた光学物品を製造するときの加工性の観点、さらにはこれら積層体又は光学物品の表面にハードコート層を形成する場合において、ハードコート液を塗布したり、硬化させたりするときの加工性の観点から、60〜200℃、特に80〜150℃の耐熱性を有していることが好ましい。なお、ここでいう耐熱性とは、熱機械測定装置(セイコーインスツルメント社製、TMA120C)を用いて、下記条件で測定した軟化点を意味する。
〔測定条件〕 昇温速度:10℃/分、測定温度範囲:30〜200℃、プローブ:先端径0.5mmの針入プローブ。
【0156】
次に、B成分であるフォトクロミック化合物について説明する。
【0157】
B成分:フォトクロミック化合物
本発明のフォトクロミック組成物でB成分として用いるフォトクロミック化合物をとしては、クロメン化合物、フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、スピロピラン化合物などの公知のフォトクロミック化合物を何ら制限なく使用することが出来る。これらは、単独使用でもよく、2種類以上を併用しても良い。
【0158】
上記のフルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、スピロピラン化合物およびクロメン化合物としては、例えば特開平2−28154号公報、特開昭62−288830号公報、WO94/22850号パンフレット、WO96/14596号パンフレットなどに記載されている化合物を挙げることができる。
【0159】
特に、クロメン化合物としては上記特許文献に記載されたもの以外にも、優れたフォトクロミック性を有するクロメン化合物が知られており、このようなクロメン化合物はB成分として好適に使用できる。このようなクロメン化合物としては、特開2001−031670号、特開2001−011067号、特開2001−011066号、特開2000−344761号、特開2000−327675号、特開2000−256347号、特開2000−229976号、特開2000−229975号、特開2000−229974号、特開2000−229973号、特開2000−229972号、特開2000−219678号、特開2000−219686号、特開平11−322739号、特開平11−286484号、特開平11−279171号、特開平09−218301号、特開平09−124645号、特開平08−295690号、特開平08−176139号、特開平08−157467号、米国特許5645767号公報、米国特許5658501号公報、米国特許5961892号公報、米国特許6296785号公報、日本国特許第4424981号公報、日本国特許第4424962号公報、WO2009/136668号パンフレット、WO2008/023828号パンフレット、日本国特許第4369754号公報、日本国特許第4301621号公報、日本国特許第4256985号公報、WO2007/086532号パンフレット、特開平2009−120536号、特開2009−67754号、特開2009−67680号、特開2009−57300号、日本国特許4195615号公報、日本国特許4158881号公報、日本国特許4157245号公報、日本国特許4157239号公報、日本国特許4157227号公報、日本国特許4118458号公報、特開2008−74832号、日本国特許3982770号公報、日本国特許3801386号公報、WO2005/028465号パンフレット、WO2003/042203号パンフレット、特開2005−289812号、特開2005−289807号、特開2005−112772号、日本国特許3522189号公報、WO2002/090342号パンフレット、日本国特許第3471073号公報、特開2003−277381号、WO2001/060811号パンフレット、WO00/71544号パンフレット等に開示されている。
【0160】
これら他のフォトクロミック化合物の中でも、発色濃度、初期着色、耐久性、退色速度などのフォトクロミック特性の観点から、インデノナフト「2,1−f」ナフト「2,1−b」ピラン骨格を有するクロメン化合物を1種類以上用いることがより好ましい。さらにこれらクロメン化合物中でもその分子量が540以上の化合物は、発色濃度および退色速度に特に優れるため好適である。その具体例として、以下のものが挙げられる。
【0161】
【化14】

【0162】
【化15】

【0163】
【化16】

【0164】
【化17】

【0165】
【化18】

【0166】
【化19】

【0167】
【化20】

【0168】
【化21】

【0169】
【化22】

【0170】
本発明のフォトクロミック性組成物におけるB成分の配合量は、フォトクロミック特性の観点から、A成分100質量部に対して0.01〜20質量部とすることが好適である。上記配合量が少なすぎる場合には、十分な発色濃度や耐久性が得られない傾向があり、多すぎる場合には、フォトクロミック化合物の種類にもよるが、A成分に対しフォトクロミック組成物が溶解しにくくなり、組成物の均一性が低下する傾向があるばかりでなく、接着力(密着力)が低下する傾向もある。発色濃度や耐久性といったフォトクロミック特性を維持したまま、プラスチックフィルムなどの光学基材との密着性を十分に保持するためには、B成分の添加量はA成分100質量部に対して0.5〜10重量、特に1〜7質量部とすることが、より好ましい。
【0171】
任意成分
本発明のフォトクロミック性組成物は、A成分およびB成分以外に、任意成分として(C)有機溶媒(以下、単にC成分ともいう。)、その他成分を含んでいてもよい。以下、これら任意成分について説明する。
【0172】
C成分:有機溶媒
本発明のフォトクロミック組成物に有機溶媒を添加することにより、ポリウレタン樹脂(A成分)とフォトクロミック化合物(B成分)、さらには、必要に応じて添加されるその他の成分が混合しやすくなり、組成物の均一性を向上させることができる。また、本発明のフォトクロミック組成物の粘度を適度に調整することができ、光学シート又はフィルムに本発明のフォトクロミック組成物を塗布するときの操作性および塗布層厚の均一性を高くすることもできる。なお、光学シート又はフィルムとして有機溶媒に侵され易い材質のものを使用した場合には、外観不良が生じたり、フォトクロミック特性が低下したりするという問題が発生することが懸念されるが、このような問題は、前記〔10〕として示した本発明の方法を採用することにより回避することが出来る。また、本発明のフォトクロミック性組成物においては、後述するように、様々な種類の溶媒が使用できるので、溶媒として光学シート又はフィルムを侵し難い溶媒を選択して使用することによっても上記問題の発生を防止することができる。
【0173】
C成分として好適に使用できる有機溶媒を例示すれば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等の多価アルコール誘導体;ジアセトンアルコール;メチルエチルケトン、ジエチルケトンなどのケトン類;トルエン;ヘキサン;ヘプタン;酢酸エチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチルなどのアセテート類;DMF;DMSO;THF;シクロヘキサノン;及びこれらの組み合せを挙げることができる。これらの中から、使用するA成分の種類や光学シート又はフィルムの材質に応じて適宜選定して使用すればよい。たとえば、光学シート又はフィルムとしてポリカーボネート樹脂製のものを使用し、直接本発明のフォトクロミック組成物を塗布する場合には、溶媒としては、アルコール類、又は多価アルコール誘導体を使用することが好ましい。
【0174】
また、光学シート又はフィルムに本発明のフォトクロミック組成物を塗布したときの塗布層或いは前記〔10〕に示した本発明の方法を採用した場合におけるフォトクロミック性接着シート平滑性を保持しながら、有機溶剤が残りにくく、乾燥速度を速めることができるという理由から、C成分としては90℃未満の沸点を有する有機溶媒と、90℃以上の沸点を有する有機溶剤を混合して用いることが好適である。
【0175】
また、C成分を添加する場合の添加量は、前記したようなC成分添加により得られる効果の観点から、A成分100質量部に対して、5〜900質量部、特に20〜750質量部とすることが好ましく、40〜400質量部とすることが最も好ましい。
【0176】
その他の成分
さらに、本発明で使用するフォトクロミック組成物には、フォトクロミック化合物の耐久性の向上、発色速度の向上、退色速度の向上や製膜性のために、界面活性剤、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料、可塑剤等の添加剤を添加しても良い。添加するこれら添加剤としては、公知の化合物が何ら制限なく使用される。
【0177】
例えば、界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の何れも使用できるが、フォトクロミック組成物への溶解性からノニオン系界面活性剤を用いるのが好ましい。好適に使用できるノニオン性界面活性剤を具体的に挙げると、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール・ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロール・フィトスタノール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン・ラノリンアルコール・ミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物、単一鎖ポリオキシエチレンアルキルエーテル、さらにはシリコーン系やフッ素系の界面活性剤等を挙げることができる。界面活性剤の使用に当たっては、2種以上を混合して使用しても良い。界面活性剤の添加量は、ポリウレタン樹脂(A成分)100質量部に対し、0.001〜5質量部の範囲が好ましい。
【0178】
また、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤としては、ヒンダードアミン光安定剤、ヒンダードフェーノール酸化防止剤、フェノール系ラジカル補足剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、トリアジン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物等を好適に使用できる。これら酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤は、2種以上を混合して使用しても良い。さらにこれらの添加剤の使用に当たっては、界面活性剤と酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤を併用して使用しても良い。これら酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤の添加量は、ポリウレタン樹脂(A成分)100質量部に対し、0.001〜20質量部の範囲が好ましい。但し、これらの添加剤を使用しすぎると、ポリカーボネート樹脂製の光学シート又はフィルムなどへのフォトクロミック組成物の密着性が低下するため、その添加量は好ましくは7質量部以下、より好ましくは3質量部以下、最も好ましくは1質量部以下である。
【0179】
フォトクロミック組成物の製造方法
本発明のフォトクロミック組成物は、上記A成分及びB成分、並びに必要に応じて使用するC成分及びその他の成分を混合することにより製造することができる。各成分を混合する順序は、特に制限されるものではなく、該フォトクロミック組成物は上記各成分が上記の好ましい範囲を満足するように混合されればよい。
【0180】
たとえば、有機溶媒を使用しない場合、各主成分を溶融混練してフォトクロミック組成物としペレット化することも可能であり、そのままシート成型することも可能である。また、有機溶剤を使用する場合には、各主成分を有機溶剤に溶かすことでフォトクロミック組成物を得ることができる。
【0181】
このようにして得られた本発明のフォトクロミック組成物は、フォトクロミック性接着剤、特にポリカーボネート樹脂製の光学シート又はフィルムどうしを接合するためのフォトクロミック性接着剤として好適に使用できる。そして、本発明のフォトクロミック組成物からなる接着層を介して光学シート又は光学フィルムを互いに接合することにより、前記〔8〕として示した本発明の光学物品を得ることができる。以下、該本発明の光学物品及び該光学物品の製造方法について説明する。
【0182】
本発明の光学物品
本発明の光学物品は、互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルムが本発明のフォトクロミック組成物からなる接着層を介して接合されてなる積層構造を含んでなる。このような光学物品としては、上記積層構造のみからなる積層シート又はフィルム(以下、単に、本発明の積層シートともいう。);これら積層シート又はフィルムに光学シート又はフィルムを更に積層したり、表面にハードコート層などのコート層を形成したりした複合積層シート又はフィルム;これら積層シートあるいはフィルム、又は複合積層シートあるいはフィルム(以下、総称して単に、本発明の積層シート等ともいう。)をプラスチックレンズ本体などの光学基材と一体化した光学物品などを挙げることができる。プラスチックレンズ本体などの光学基材と一体化する方法としては、たとえば、上記本発明の積層シート等を金型内に装着した後にポリカーボネート樹脂などの光学基材(たとえばレンズ本体)を構成するための熱可塑性樹脂を射出成形する方法(以下、単に射出成形法ともいう。)、光学基材の表面に接着剤などにより上記本発明の積層シート等を貼付する方法などを挙げることができる。また、光学基材を形成できる重合性モノマー中に上記積層体(複合積層体であってもよい)を浸漬した後、該重合性モノマーを硬化させることにより、光学基材中に該積層体を埋設させて一体化することもできる。そのため、該光学物品は、熱可塑性樹脂、又は熱硬化性樹脂よりなるプラスチック光学基材上に、上記積層体(複合積層体であってもよい)を積層したものであってもよいし、該プラスチック光学基材中に、上記積層体(複合積層体であってもよい)を埋設したものであってもよい。以下、本発明の光学物品を構成するこれら材料或いは部材について説明する。
【0183】
光学シート又はフィルム、及び光学基材
本発明において、光学シート又は光学フィルム、及び光学基材としては、光透過性を有するシート又はフィルム、及び光学基材が特に制限なく使用できるが、入手の容易性および加工のし易さなどの観点から樹脂製のものを使用することが好適である。光学シート又は光学フィルム、及び光学基材の原料として好適な樹脂を例示すれば、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ナイロン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール樹脂などが挙げられる。その中でも、密着性が良好で射出成形法に対する適用性が高いという理由からポリカーボネート樹脂が特に好ましい。また、偏光フィルム(例えば、ポリビニルアルコール製の偏光フィルムをトリアセチルセルロース樹脂フィルムではさんだもの)も、本発明の光学フィルムとして使用することが可能である。
【0184】
本発明の積層シートの製造方法
本発明の積層シートは、互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルムを本発明のフォトクロミック組成物からなる接着層を介して接合させることにより製造される。なお、上記接着層の厚さは、フォトクロミック化合物の発色濃度、耐候性および接着強度などの観点から、5〜100μm、特に10〜50μmとすることが好ましい。
【0185】
上記接着層は、用いるフォトクロミック組成物の性状に応じて、次のような方法により得ることができる。すなわち、溶媒を添加することなどにより本発明のフォトクロミック組成物が適度の粘度に調整されている場合には、一方の光学シート又は光学フィルム上に本発明のフォトクロミック組成物塗布し、必要に応じて(加熱)乾燥をなった後、他の光学シート又は光学フィルムを(加熱)圧着すればよい。このとき、フォトクロミック組成物の塗布方法としては、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ディップースピンコート法、ドライラミネート法などの公知の方法が何ら制限なく用いられる。このような方法を採用する場合には、特許文献3に記載されているような装置を用い連続的に積層体を製造することもできる。
【0186】
また、溶媒を含む本発明のフォトクロミック組成物を使用する場合には、(1)平滑な基材上に本発明のフォトクロミック組成物を延展せしめた後に乾燥することにより(C)溶媒を除去し、A成分と、該A成分中に分散したB成分とを含んでなるフォトクロミック性接着シートを準備し、次いで(2)互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルムの間に上記フォトクロミック性接着シートを介在させて該2枚の光学シート又は光学フィルムを接合することにより、本発明の積層体を製造することもできる。
【0187】
上記平滑な基材の材質としては、本発明で使用する溶剤に耐性があるもの、また本発明のポリウレタン樹脂が剥離しやすいものが好ましく、具体的に例示すれば、ガラス、ステンレス、テフロン(登録商標)、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、さらにはシリコン系やフッ素系などの剥離性を向上させるコート層を積層させたプラスチックフィルムなどが挙げられる。フォトクロミック性接着シートは、該基材を剥がすことにより得ることができる。
【0188】
このような方法を採用した場合には、溶媒の種類及び光学シート又は光学フィルムの種類によらず、溶媒の使用に起因する悪影響を排除することが可能である。
【0189】
得られたフォトクロミック性接着シートは、互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルムの間に介在させる。そして、両者を接合する。前記光学シート又は光学フィルムを接合する工程において得られた積層シートは、そのまま使用することもできるが、以下の方法により、その状態を安定化させて使用することもできる。具体的には、接合したばかりの積層体を20℃以上60℃以下の温度で4時間以上静置しておくことが好ましい。静置する時間の上限は、特に制限されるものではないが、50時間もあれば十分である。また、静置に際しては、常圧で静置することも可能であるし、真空下で静置することも可能である。さらに、この静置した積層体を80℃以上130℃以下の温度下、30分以上3時間以下放置しておくことが好ましい(以下、加熱処理とする)。この加熱処理して得られた積層体は、その状態が非常に安定なものとなる。
【0190】
有機溶媒を含まない本発明のフォトクロミック性組成物を使用する場合には、共押し出し成型などにより、フォトクロミック性接着シートを作製することも可能である。このような方法で得られた接着性シートを使用する場合においても、光学シートを接合した後には、その状態を安定化させるため、上記と同じ方法で静置する時間を設け、加熱処理することが好ましい。
【実施例】
【0191】
以下に例示するいくつかの実施例によって、本発明をさらに詳しく説明する。これらの実施例は、単に、本発明を説明するためのものであり、本発明の精神及び範囲は、これら実施例に限定されるものではない。
【0192】
以下に、実施例及び比較例で各成分として使用した化合物等の略号を纏める。
【0193】
A1成分;ポリジオール化合物
PL1:旭硝子株式会社製エクセノール(ポリプロピレングリコール、平均分子量400)。
PL2:旭硝子株式会社製エクセノール(ポリプロピレングリコール、平均分子量1000)。
PL3:旭硝子株式会社製エクセノール(ポリプロピレングリコール、平均分子量2000)。
PL4:旭化成ケミカルズ株式会社製デュラノール(1,5−ペンタンジオールとヘキサンジオールを原料とするポリカーボネートジオール、平均分子量500)。
PL5:旭化成ケミカルズ株式会社製デュラノール(1,5−ペンタンジオールとヘキサンジオールを原料とするポリカーボネートジオール、平均分子量800)。
PL6:旭化成ケミカルズ株式会社製デュラノール(1,5−ペンタンジオールとヘキサンジオールを原料とするポリカーボネートジオール、平均分子量1000)。
PL7:旭化成ケミカルズ株式会社製デュラノール(1,5−ペンタンジオールとヘキサンジオールを原料とするポリカーボネートジオール、平均分子量3000)。
PL8:ダイセル化学株式会社製プラクセル(ポリカプロラクトンジオール、平均分子量500)。
PL9:DIC株式会社製ポリライト(アジピン酸と1,4−ブタンジオールから成るポリエステルジオール、平均分子量1000)。
PL10:宇部興産株式会社製ETERNACOLL(1,4−シクロヘキサンジメタノールを原料とするポリカーボネートジオール、平均分子量1000)。
PL11:旭硝子株式会社製エクセノール(ポリプロピレングリコール、平均分子量4000)、分子量が3000を超え、本発明のA1成分には該当しない。
【0194】
A2成分;ジイソシアネート化合物
NCO1:イソホロンジイソシアネート。
NCO2:水添ジフェニルメタンジイソシアネート。
NCO3:ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート。
NCO4:トルエン−2,4−ジイソシアネート。
NCO5:ノルボルナンジイソシアネート。
NCO6:1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート。イソシアネート基を3つ有するため、本発明のA2成分には該当しない。
NCO7:1−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンと1−メチルベンゼン−2,4,6−トリイソシアネートとの反応生成物。
NCO8:1−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンと1,6,11−ウンデカントリイソシアネートとの反応生成物。
【0195】
A3成分;鎖延長剤
CE1:イソホロンジアミン。
CE2:エチレンジアミン。
CE3:1,6−ジアミノヘキサン。
CE4:2−アミノエタノール。
CE5:6−アミノヘキサノール。
CE6:1,4−ブタンジオール。
CE7;2−アミノエタンチオール。
CE8:ピペラジン。
CE9:N,N’−ジエチルエチレンジアミン。
CE10:1,10−デカンジオール。
【0196】
A4成分;機能性付与化合物
HA1;1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ヒドロキシピペリジン。
HA2;1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−アミノピペリジン。
HA3;下記式で示される化合物(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製チヌビン622LD、平均分子量3100〜4000)。
【0197】
【化23】

【0198】
HA4;4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノール。
HA6;3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシ安息香酸。
HA7;3−[3’−(2’’H−ベンゾトリアゾール−2’’−イル)−4’−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸。
【0199】
B成分:フォトクロミック化合物
PC1:下記式で示される化合物。
【0200】
【化24】

【0201】
C成分:有機溶媒
C1:イソプロピルアルコール。
C2:プロピレングリコール−モノ−メチルエーテル。
C3:トルエン。
C4:酢酸エチル。
C5:シクロヘキサノン。
C6:THF。
C7:ジエチルケトン。
【0202】
その他の成分
・Irganox245:エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製
ポリウレタン樹脂(U1)の合成
撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三口フラスコに、平均分子量400のポリエーテルジオール90g、イソホロンジイソシアネート100g、DMF800mlを仕込み、窒素雰囲気下、120℃で5時間反応させ、その後、25℃まで冷却し、鎖延長剤であるイソホロンジアミン34gを滴下し、25℃で1時間反応させ、次いで、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ヒドロキシピペリジン8gを加え、120℃5時間反応させ、溶媒を減圧留去し、ウレタン樹脂の末端にピペリジン環を有するポリウレタン樹脂(U1)を得た。得られたポリウレタン樹脂の数平均分子量はポリスチレン換算で15万、ポリオキシエチレン換算で1万(理論値;1万)であり、耐熱性は120℃であった。ここで言う数平均分子量の理論値とは、原料に用いたA1成分、A2成分、A3成分、及びA4成分が、架橋することなく理論的に直線状にポリウレタン樹脂を精製した場合の分子量のことである。表1に反応条件を示す。
【0203】
ポリウレタン樹脂(U2)〜(U30)、及び(U33)〜(U45)の合成
表1、表2、表3に示すポリジオール化合物(A1成分)、ジイソシアネート化合物(A2成分)、鎖延長剤(A3成分)、機能性付与化合物(A4成分)、及び反応溶媒を用い、表1、表2、表3に示す反応条件を用いた以外は、前述のU1の合成方法と同様にして、U2〜U30、及びU33〜U45の合成を実施した。
【0204】
ポリウレタン樹脂(U31)の合成
撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三口フラスコに、平均分子量800のポリカーボネートジオール180g、イソホロンジイソシアネート100g、DMF1200mlを仕込み、窒素雰囲気下、100℃で5時間反応させた。次いでこの反応液に、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノール4.5gを加え、窒素雰囲気下で、さらに100℃で5時間反応させた。その後、25℃まで冷却し、鎖延長剤であるイソホロンジアミン30.4gを滴下し、25℃で1時間反応させ、溶媒を減圧留去し、ウレタン樹脂の主鎖中にピペリジン環を有するポリウレタン樹脂(U31)を得た。得られたポリウレタン樹脂の数平均分子量はポリスチレン換算で27万、ポリオキシエチレン換算で9千(理論値;7千)であり、耐熱性は130℃であった。表3に反応条件を示す。
【0205】
ポリウレタン樹脂(U32)の合成
a)撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三口フラスコに、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート6.5g、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ヒドロキシピペリジン8gを加え、120℃で5時間反応させた。このようにして、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ヒドロキシピペリジンと1,6,11−ウンデカントリイソシアネートとが反応したジイソシアネート化合物を得た。
【0206】
b)撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三口フラスコに、平均分子量800のポリカーボネートジオール180g、イソホロンジイソシアネート100g、a)の反応で得られた化合物、さらにDMF1200mlを仕込み、窒素雰囲気下、80℃で5時間反応させた。
【0207】
c)次いで、b)より得られた反応物に、鎖延長剤であるイソホロンジアミン30.7gを滴下し、25℃で1時間反応させ、溶媒を減圧留去し、側鎖にピペリジン環を有するポリウレタン樹脂(U32)を得た。得られたポリウレタン樹脂の数平均分子量はポリスチレン換算で32万、ポリオキシエチレン換算で9千(理論値;7千)であり、耐熱性は150℃であった。
【0208】
表3に反応条件を示す。
【0209】
【表1】

【0210】
【表2】

【0211】
【表3】

【0212】
以上、ポリウレタン樹脂U1〜U45のA1、A2、A3、A4成分の配合割合、数平均分子量、耐熱性の結果を表4にまとめた。
【0213】
【表4】

【0214】
実施例1
フォトクロミック組成物の調製
ポリウレタン−ウレア樹脂(U1)5g、フォトクロミック化合物(PC1)0.25gに、有機溶剤としてイソプロピルアルコール20gを添加し、80℃で攪拌しながら、超音波により溶解し、フォトクロミック組成物を得た。
【0215】
フォトクロミック積層体の作製
得られたフォトクロミック組成物を、ガラス板上に塗布し80℃で1時間乾燥させた後、ガラス板を分離することにより、厚み30μmのフォトクロミックシートを得た。次いで、得られたフォトクロミックシートを厚み400μmのポリカーボネートシート2枚の間に挟み、40℃で12時間静置した後、さらに100℃で30分加熱することにより、目的のフォトクロミック特性を有する積層体を得た。
【0216】
得られたフォトクロミック積層体を評価したところ、フォトクロミック特性としての発色濃度は1.0であり、退色速度は90秒であり、耐久性は95%であった。また、該フォトクロミック積層体の剥離強度60N/25mmであった。なお、これらの評価は以下のようにして行った。
【0217】
フォトクロミック特性
得られた積層体を試料とし、これに、(株)浜松ホトニクス製のキセノンランプL−2480(300W)SHL−100をエアロマスフィルター(コーニング社製)を介して23℃、積層体表面でのビーム強度365nm=2.4mW/cm、245nm=24μW/cmで120秒間照射して発色させ、積層体のフォトクロミック特性を測定した。
【0218】
1)最大吸収波長(λmax):(株)大塚電子工業製の分光光度計(瞬間マルチチャンネルフォトディレクターMCPD1000)により求めた発色後の最大吸収波長である。該最大吸収波長は、発色時の色調に関係する。
【0219】
2)発色濃度〔ε(120)−ε(0)〕:前記最大吸収波長における、120秒間照射した後の吸光度ε(120)と最大吸収波長における未照射時の吸光度ε(0)との差。この値が高いほどフォトクロミック性が優れていると言える。
【0220】
3)退色速度〔t1/2(sec.)〕:120秒間照射後、光の照射をとめたときに、試料の前記最大波長における吸光度が〔ε(120)−ε(0)〕の1/2まで低下するのに要する時間。この時間が短いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
【0221】
4)耐久性(%)=〔(A48/A0)×100〕:光照射による発色の耐久性を評価するために次の劣化促進試験を行った。すなわち、得られた積層体をスガ試験器(株)製キセノンウェザーメーターX25により48時間促進劣化させた。その後、前記発色濃度の評価を試験の前後で行い、試験前の発色濃度(A0)および試験後の発色濃度(A48)を測定し、〔(A48)/A0〕×100〕の値を残存率(%)とし、発色の耐久性の指標とした。残存率が高いほど発色の耐久性が高い。
【0222】
剥離強度
得られた積層体を、25×100mmの接着部分を有する試験片とし、試験機(オートグラフAG5000D、島津製作所製)に装着し、クロスヘッドスピード100mm/minで引張り試験を行い、剥離強度を測定した。
【0223】
以上の評価結果を表5に示す。
【0224】
実施例2〜41
表5、表6に示すポリウレタン樹脂、有機溶媒を用いた以外は、実施例1と同様な方法でフォトクロミック組成物の調整、及びフォトクロミック積層体の作製とを実施した。得られた各種フォトクロミック積層体の評価結果を表5、表6に示す。
【0225】
【表5】

【0226】
【表6】

【0227】
比較例1〜6
表7に示すポリウレタン樹脂、有機溶媒を用いた以外は、実施例1と同様な方法でフォトクロミック組成物の調整、及びフォトクロミック積層体の作製とを実施した。得られた各種フォトクロミック積層体の評価結果を表7に示す。
【0228】
【表7】

【0229】
上記実施例1〜41から明らかなように、本発明に従って、ポリジオール化合物(A1成分)、ジイソシアネート化合物(A2成分)、鎖延長剤(A3成分)、および分子内に、ピペリジン構造、ヒンダードフェノール構造、トリアジン構造、またはベンゾトリアゾール構造を有する機能性付与化合物(A4成分)を好適な比率で用いた合成したポリウレタン樹脂は、優れたフォトクロミック特性、剥離強度(密着性)、耐熱性を有していることが分かる。
【0230】
一方、比較例1のようにピペリジン環を分子内に持たないポリウレタン樹脂に、ヒンダードアミン光安定剤(ピペリジン環を有する化合物)を添加した場合には、剥離強度が低下しており、いずれの場合においても、全ての物性を同時に満足することができなかった。比較例2では、分子量4000のポリジオール化合物をポリウレタン樹脂に使用したことにより、耐候性、及び耐熱性が低下した。比較例3では、鎖延長剤(A3成分)に分子量400のポリジオール化合物を用いたことにより、耐候性、耐熱性、さらには剥離強度が低下した。また、トリイソシアネート化合物を使用した比較例4(ポリウレタン樹脂;U41)では、有機溶剤に溶解することができなかったため評価することができなかった。また、比較例5のように分子量が400以下のジオール化合物をA1成分として用いた場合、軟化点が高くなりすぎ発色濃度、退色速度といったフォトクロミック特性が低下するとともに、剥離強度も著しく低下した。比較例6のように、鎖延長剤であるA3成分を用いずにウレタン樹脂を合成した場合には、逆に軟化点が低くなりすぎ、耐久性(フォトクロミック特性)、剥離強度が低下した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子中に、ピペリジン構造、ヒンダードフェノール構造、トリアジン構造、またはベンゾトリアゾール構造を有するポリウレタン樹脂、並びに
(B)フォトクロミック化合物を含んでなるフォトクロミック組成物であり、
前記(A)成分が、
(A1)分子内に2つの水酸基を有する分子量400〜3000のポリジオール化合物と、
(A2)分子内に2つのイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物と、
(A3)分子内に2つのイソシアネート基と反応しうる官能基を有する分子量50〜300の鎖延長剤と、
(A4)分子内に1、または2つのイソシアネート基と反応しうる基を有し、かつ、分子内に、ピペリジン構造、ヒンダードフェノール構造、トリアジン構造、またはベンゾトリアゾール構造を有する機能性付与化合物と、
を反応して得られるポリウレタン樹脂であることを特徴とするフォトクロミック組成物。
【請求項2】
前記(A4)機能性付与化合物が、ピペリジン構造を有する化合物であることを特徴とする請求項1記載のフォトクロミック組成物。
【請求項3】
前記(A)ポリウレタン樹脂を得るに際して使用する前記(A1)成分、(A2)成分、(A3)成分、及び(A4)成分の量比が、前記成分(A1)に含まれる水酸基の総モル数をn1とし、前記成分(A2)に含まれるイソシアネート基の総モル数をn2とし、前記成分(A3)に含まれるイソシアネート基反応しうる官能基の総モル数をn3とし、前記成分(A4)に含まれるイソシアネート基反応しうる官能基の総モル数をn4としたときに、
n1:n2:n3:n4=0.30〜0.89:1.00:0.1〜0.69:0.01〜0.20となる量比である請求項1に記載のフォトクロミック組成物。
【請求項4】
前記(A1)ポリジオール化合物が、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリカプロラクトンジオール、及びポリエステルジオールより選ばれる少なくとも1種のポリジオール化合物である請求項1記載のフォトクロミック組成物。
【請求項5】
前記(A2)ジイソシアネート化合物の30質量%以上が脂肪族ジイソシアネート化合物である請求項1に記載のフォトクロミック組成物。
【請求項6】
前記(A3)鎖延長剤が、ジアミン化合物、アミノアルコール化合物、アミノカルボン酸化合物、アミノチオール化合物、及びジオール化合物から選ばれる少なくとも1種の鎖延長剤である請求項1に記載のフォトクロミック組成物。
【請求項7】
前記(B)フォトクロミック化合物の含有量が、前記(A)ポリウレタン樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部である請求項1に記載のフォトクロミック組成物。
【請求項8】
前記(A)ポリウレタン樹脂100質量部に対して5〜900質量部の(C)有機溶媒を更に含んでなる請求項7に記載のフォトクロミック組成物。
【請求項9】
互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルムが請求項1に記載のフォトクロミック組成物からなる接着層を介して接合されてなる積層構造を含んでなる光学物品。
【請求項10】
前記積層構造における、互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルムの少なくとも一方が、ポリカーボネート樹脂よりなることを特徴とする請求項9に記載の光学物品。
【請求項11】
請求項10に記載の光学物品を製造する方法であって、
(I)平滑な基材上に請求項8に記載のフォトクロミック組成物を延展せしめた後に乾燥することにより(C)有機溶媒を除去し、(A)ポリウレタン樹脂と、該(A)ポリウレタン樹脂中に分散した(B)フォトクロミック化合物とを含んでなるフォトクロミック性接着シートを準備する工程、および
(II)互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルムの間に上記フォトクロミック性接着シートを介在させて該2枚の光学シート又は光学フィルムを接合することにより前記積層構造を作成する工程、
を含んでなることを特徴とする方法。

【公開番号】特開2012−167245(P2012−167245A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169286(P2011−169286)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】